───地上最強猫列伝『第十四章◆悪夢!ながされてビスケッ島!の巻』───
全員 『ヒドイ目に合った……』
彰利ランドから脱出した我らは一斉にそう漏らした。
別に合わせようとしたわけではなく、思いっきり偶然に。
それほど疲れる場所だったということだ。
悠介 「姉さん……ひとつのことに夢中になると周り見えなくなるタイプだろ……」
春菜 「ごめんなさい……」
悟り猫「夜華さん……家屋破壊は立派な犯罪ですよ……?」
夜華 「うぐっ……め、面目ない……」
あの後、俺と悠介は彰利ランドを駆け回って負傷した『彰利』を回復させた。
いやもうきっちり100人全員がボッコボコだったから、治すの苦労しましたよ。
お蔭で今、少々能力残量が心細いです。
清水 「なぁ中井出、まさかこれで終わりってこたぁないよな?」
中井出「当たり前だ……こんなんで終わったら後味悪すぎだ……」
悟り猫「いや、後味悪いもなにも……『二度と来ないでください』って、
ゴールデンマッサカードもらったけど」
全員 『なにぃっ!!?』
悟り猫「おわっと……マジですよ?ほれ」
キラキラ輝くゴールデンマッサカードを見せる。
一日一食だが、永久的に無料カード。
中井出「うわ……マジだよ。初めて見た……」
三月 「なんだか神々しいね……」
悟り猫「でさ、中井出。次は何処行くのかね?」
中井出「ん?あ、ああ……えっとな、俺の親戚筋で旅館やってるヤツが居てさ。
そいつンところに厄介になる」
悟り猫「大丈夫なのか?」
中井出「抜かり無し。ホントは休業日らしいんだけどさ、
新婚のふたりで……まあ、練習みたいなものらしい。
一応調理師の資格とか取ってあるらしいけどメシはタダ……というか、
材料を買ってきてくれれば作るってことらしい。
宿泊費は無料でいいらしい」
夏子 「えっと……それってつまり……」
藍田 「……泊まるってことか?無料で?」
中井出「その通り!!」
全員 『───……ぉおおっしゃぁあああああああっ!!!!!』
皆様が咆哮した。
このメンバーで何処かに泊まるなど、修学旅行以来なのだ。
中井出「各員に通達!各自で今日のメニューを決め、食材を購入せよ!!」
全員 『サー・イェッサー!!』
中井出「その際、各員で嫌いなものを発言しておくこと!全員が楽しめねば意味がない!」
全員 『サー・イェッサー!!』
中井出「料理はその新婚さんが作ってくれる!腕は確からしい!喜べ!!」
全員 『サー・イェッサー!!』
中井出「では!いざゆかん───『橘旅館』へ!!」
全員 『Sir!YesSir!!()』
我らの旅は今こそ始まった。
……正直、彰利ランドが始まりだなんて思いたくないし。
悟り猫「あ。でも電車賃とか出すのを義務づけされるのはどうかと。
俺、金なんぞ持ってないし」
悠介 「……ふむ。んじゃあこの同窓会で使う費用全部は俺が持とう」
全員 『マジですか!?』
悠介 「マジだ。ただし、ただ『自分が欲しいから』って理由で買うものに干渉はしない。
全員のために使う金とする」
全員 『サッ……Sir!YesSir!!()』
今こそ人々がひとつになる時!
さあ楽しみましょう!
悟り猫「金持ちっすね」
悠介 「家には使いきれないほどの金があるからな。たまにはいいだろ」
悟り猫「無駄使いになりません?」
悠介 「ばか、こんな時に使わないでなんのための金だよ」
悟り猫「バカとはなんだコノヤロウ!……あー、まあ、そうザマスけど」
夜華 「な、なぁ彰衛門……わたしも行ってもいいのだろうか……」
悟り猫「ここまで来たら一蓮托生でしょう。行きましょうぞ夜華さん。
金なら悠介がたんまり持ってる」
悠介 「たかる気かよ……」
春菜 「あ、わ、わたしもいいかな……今月ぴんちなんだよ……」
悠介 「あーぁハイハイ……」
こうして一向は一路、橘旅館とやらへ。
広い場所だといいねィェ〜!!
───……ガラララ……。
中井出「ごめんくださ〜い!橘〜!?居るか〜!?」
電車に揺られること数時間、俺達は橘旅館に到着。
なかなか大きな概観と見受けられる……こりゃあ広そうだ。
声 「わっ……もう来ちゃったよ!?え、えっと……どうするんだっけ!?」
声 「挨拶挨拶っ!あ、落ち着いてな!」
声 「う、うん───あ、あぁあっ!!」
ドンガラガッシャンドカバキゴワシャァアアアアンッ!!!!
全員 『………』
カラカラカラ……コタン。
騒音を撒き散らした出入り口からすぐ近くの部屋……多分厨房かなんかだと思うが、
そこから鍋の蓋が転がってきた。
恐らく皆さんが思った筈だ。
『滅茶苦茶不安だ』と。
しかし程なくして、少し涙目の……うおう。
島田 「うぅわ……綺麗な人だな……」
そう、べっぴんさんが現れた。
頭を打ったのか、時々頭を押さえながら俺達の前に立つ。
おなご「よ、ようこそお越しくださいました。わたしは当旅館の女将の……───」
悟り猫「………?」
おなご「女将……女将……♪橘旅館の……女将……♪」
自分の言葉に幸せを感じている目の前のおなごを見て、
なにやら凄まじく先行きが不安になった。
それはきっと、さっきから一言も喋らない皆さんも同じなのだろう。
おなご「───ハッ!あ、し、失礼しましたぁーーっ!!
わ、わたしは当旅館の女将、橘真由美といいますっ!」
ペコリとお辞儀をする真由美さんとやら。
なにやら愉快そうだが……
真由美「えっと……それではこちらへどうぞ。お部屋にご案内します。
練習中なもので、至らない点もありますけど……そこは頑張りますので」
中井出「いえいえ、頑張ってくださいな、郭鷺」
真由美「あ、中井出くん久しぶり。鷹志なら厨房の方に居るけど……会ってく?」
中井出「荷物置いてからでいいや。案内よろしく、女将さん♪」
真由美「女将……女将……えへへ……♪」
幸せそうでなによりだった。
───……さて、各員数名ずつ案内された部屋で、
俺、悠介、中井出、藍田は一緒になって話に花を咲かせていた。
藍田 「あー……なあ中井出。さっきの若女将、名前なんつったっけ?」
中井出「ん?ああ、郭鷺真由美。この旅館の若旦那の奥さんだ。
なんでも喫茶店やる時は『郭鷺』って名乗って、
旅館の方をやる時は『橘』を名乗っていたいんだとか」
藍田 「へー、綺麗な人だったよな。ちょっと子供っぽいところもありそうだけど」
中井出「はは、第一印象ばっか気にしてると驚くぞ?
あの人は世にも珍しい完璧超人だ」
悟り猫「完璧超人?」
中井出「ああ。勉強運動炊事洗濯掃除と全て誰よりも上手くこなすという、
信じられんくらいのパーフェクト超人だ」
藍田 「あの人がか?登場シーンで鍋の蓋転がすような人だぞ?」
悠介 「少しドジが入った完璧か。まあ、中和が取れてていいんじゃないか?」
藍田 「そんな問題かね。しっかし相変わらず晦は冷静だよなぁ」
悠介 「ほっとけ、性分だ」
おなごが絡むとそうでもないけどね。
藍田 「しっかしさ、あの人……真由美さんっつったっけ?随分若いよな。
俺達と同じくらいだろ?」
中井出 「ああ、ひとつ上だ」
藍田 「それで若女将か……すげぇなぁ」
悟り猫 「そうかね?悠介なんて神社の神主だぞ?」
中井出&藍田『なにぃ!?マジか!?』
悠介 「ん?ああ、そうだが」
中井出 「……あ……そうか、だから費用を全部持つなどという大挙が……」
藍田 「なるほどな……」
中井出 「なんつゥか……かつてのクラスメイツが、
俺達の知らない間に遙か遠い頂にまで辿り着いちまったって気分だな……」
気持ちは解らんでもない。
中井出「あ……彰利?まさかお前までトンデモナイものになってるとかは……」
悟り猫「俺?俺は服売りやってる」
中井出「うっわマジかよ……そういう資格取ってるのか?」
悟り猫「うむ、ほれ営業許可証」
偽造した許可証と見せる。
すると、思いっきりホゥ……と感心の吐息を吐くふたり。
中井出「へぇ〜〜……お前が服屋ねぇ……。
なんだか遠いところに行っちまったみたいだな……」
藍田 「どんな服売ってるんだ?俺に似合う服とかあるかな」
悟り猫「へ?なに言っとるの?全部俺のお手製メイド服ですよ?」
中井出「俺今、物凄くお前を近くに感じた」
藍田 「それでこそ弦月だ」
悟り猫「どういう認識なんだよ……」
中井出「まーまーいいじゃないか。それよかさ、ひとまず風呂にでも入らないか?」
悠介 「ああ、そういえばここは露天風呂らしいな」
中井出「その通り!ここのウリのひとつ!───大!浴!場!
今すぐ行こう!隙あらば堂々と覗こう!」
藍田 「欲望の鬼だな。気持ちは解らんでもないが───」
コンコン。
藍田 「んあ?どなたで?」
ノックの後に開けられる引き戸。
その先に、ひとりの男がおがったとしぇ。
男 「よっ、中井出」
中井出「おや橘、久しいな」
どうやらこの男が橘旅館の若旦那らしい。
話によれば練習中の御仁らしいが、うむ……将来が楽しみじゃわい。
中井出「ああ、こちら俺の親戚筋の男、橘鷹志。
橘、こいつらは右から藍田亮、晦悠介、弦月彰利だ」
鷹志 「───弦月彰利?」
悟り猫「……あぁっ!」
鷹志 「おわぁっ!!?ね、猫が喋った!?」
悟り猫「思い出したぞ貴様ッッ!!確か閏璃凍弥と一緒に晦神社に登って来た男ぞ!!」
中井出「なんだ知り合いか?」
鷹志 「俺に猫の知り合いは居ないつもりだったんだが……。
ああ、でも『弦月彰利』って男には心当たりがある。
忘れようと思っても忘れられるような男じゃなかったし」
藍田 「なにやったんだよ弦月……」
鷹志 「駅の屋根から飛び降り自殺しといて、平然と走り回ってた」
中井出「普通に超人やってんのな、お前って」
悟り猫「いやそんな……スーパーマンだなんて、照れちまうぜ」
中井出「相変わらずすぎて嬉しいのか悲しいのか」
思いっきり悲しそうな物言いに聞こえるんですが……?
悠介 「……ああそっか、思い出した。確かに神社に来たことがあったな。
俺の記憶の中にも彰利の記憶の中にも見覚えがある」
悟り猫「でがしょ?で───貴様俺達になんの用があってここに来た!」
鷹志 「……いつからお前、猫と普通に喋るような男になったんだ?」
中井出「『弦月彰利』という人物を知った時から……だと思う」
鷹志 「苦労してるらしいな……まあこっちも似たようなヤツが居るから解らんでもない」
中井出「うん?……あー、閏璃凍弥か。
あいつはあいつで、橘と柿崎が居なけりゃ騒がないだろ?」
悟り猫「おや?この時代ではまだ閏璃凍弥は存在しておるのかね?」
鷹志 「おい猫……勝手に人の友を殺すな」
悟り猫「ふゥむ……して?今彼は何を?」
鷹志 「図々しい奴だなぁ……。
他人のことにそこまで干渉するのは人として感心しないぞ?」
悟り猫「だって俺、今は猫だし」
鷹志 「……それが一番どうかしてるんだけどな」
悠介 「諦めてくれ、こいつに常識は通用しない」
悟り猫「通用しますよ失礼な!!」
藍田 「はーいはい、騒ぐな騒ぐな、どうどう、どうどう」
悟り猫「どうどうって……馬ですか俺ゃ」
中井出「で、どうした?挨拶回りか?」
鷹志 「いや、男と女は時間ずらして風呂に入ってもらうって報()せ」
中井出「───」
藍田 「………」
中井出、藍田が信じられないものを見るような顔で橘氏を見た。
中井出「……橘よ。俺達は男だぞ?男として女風呂を覗かないのは犯罪だ。解るな?」
鷹志 「解るかっ!!」
藍田 「なにぃ!?貴様それでも男か!なぁ弦月、俺達ゃ男だよな!?」
悟り猫「拙者、既に男を超越した漢なり。おなごを泣かせるような行為、恥と知りなさい」
中井出「お前ってさ、中学の時に率先してビデオカメラ持って走ったんじゃなかったっけ」
悟り猫「忘れもうしたか。あれは中井出のビデオを入れておいただけでござる。
俺はおなごが嫌がるような行為はしないと誓ったのですよ」
藍田 「じゃあ更待先輩の告白受けるんだな?
フる行為はおなごが嫌がる行為だもんなぁ」
悟り猫「それは論外でござる。最初に言ったでゴワショウ、俺は誰も好きにならんと。
その信念を理解してもらわねば困りますよ?」
藍田 「……少し会わない内に立派なことを言うようになったんだな……俺は嬉しいぞ」
悟り猫「あの……キミの中で中学の俺はどれほどのカスだったんですか?」
なにやら思いっきり変態として映ってたように聞こえるんですけど?
何気なく悠介を見てみると、溜め息で迎えてくれました。
それ=よっぽどのカスだったということ。
泣くぞコノヤロウ……。
鷹志 「とにかく。女のあとに男に入ってもらう。
女の方には真由美が報せに行ってるから、『知らなかった』じゃ済まないからな」
中井出「チィイ!いつから女の味方になったのだ橘鷹志!
俺達は自然に生きる男だろう!欲望に忠実にならんでどうするか!」
悟り猫「行き過ぎた欲望は身を滅ぼしますぞ?」
中井出「……なんつーか……お前にだけはそれを言われたくなかったなぁ……」
藍田 「同感……」
悟り猫「あの……マジで中学の俺ってどう映ってたわけ?」
中井出「俺としては小学の頃のお前の方が気になるけどな」
悟り猫「誠実にして聡明な好少年でしたよ?」
藍田 「晦?」
悠介 「甚だしい嘘だ。好き勝手に教師をからかってたぞ」
中井出「やっぱりか……小学の頃から彰利は彰利だったってこったな」
藍田 「流石だな……」
納得されてしまいました……。
しかももう取り戻せないくらいに深層意識にインプットされちまった気がする。
中井出「っと、解った、他の部屋も回るんだろ?話に巻き込んで悪いな」
鷹志 「気にするな。お前は昔っからエロビデオが好きなヤツだった」
男三人『昔からだったのか……』
中井出「当然だ」
当然らしい……。
鷹志 「んじゃな、騒いでもいいけど襖とか壊すなよ」
悟り猫&中井出&藍田『御意』
悠介 「気をつけるようにする」
パタン。
引き戸が閉じられ、足音が遠ざかってゆく。
中井出「しかし……そうだよな。弦月の小学の頃のこと知ってるのって、
中学のメンバーじゃあ桐生と晦だけなんだよな」
藍田 「小学の頃から会ってたら、もっと長い間騒げたんだけどなぁ」
悠介 「それは考えから度外した方がいいな」
悟り猫「うむ、碌なことになりませぬ」
中井出「……?なんで」
悟り猫「中井出よ。貴様は我輩が猫であることを完全に信じたな?」
中井出「いきなりだな。彰利だろ?
俺は差別をする人間じゃないし、他のメンバーもそうだ。
俺達の脳の基本は『楽しめる状況は思いっきり楽しむ』だ」
藍田 「ああそうだ。たとえお前がかめはめ波とか撃っても、俺たちは驚かんぞ。
……つーかクラスメイツが猫になること自体でもう驚きすぎた」
中井出「あと更待先輩があんな怪力の持ち主だったってことも驚いた」
悠介 「……じゃあ、次はもっと驚くな」
中井出「へ?なんだそれ」
きょとんとする中井出を前に、俺と悠介はニヤッと笑った。
そう……こいつらに受け入れてもらえたら、俺達はかなり嬉しい。
輝いていた中学時代……俺達の『いい思い出』の大半はそこにあるのだから。
悠介 「ハトが出ます」
ポムッ……バササササッ!
悠介が早速、ハトを創造して中井出の頭に留める。
中井出「……へ?」
藍田 「……今、手から出た……よな?」
悟り猫「次は俺だな。
ホイジィチィンシャィンハァ〜イ・チィンカァ・リィエンリィエィハァ〜♪」
中井出「いきなり踊りかよ……つーかこれって……」
藍田 「ドラゴンボールカードゲーム爺さんのかめはめ波?」
悟り猫「サイガイサンチュンドゥリィ〜ン・カァ〜ン・リィ〜ンファ〜ンハァ〜イ♪」
ドシューーーン!!
中井出「おわぁっ!!?」
踊りの中の構えとともに、月醒力でかめはめ波を模す。
中井出と藍田は大層驚いております。
クォックォックォッ、その驚愕の顔がたまらんのぅォ〜〜〜〜ッ!!
悟り猫「ドラゴンボォ〜ルカァ〜ドゲェ〜〜ムゥ〜〜♪」
どしゅーーーん!!
藍田 「おわぁっ!!」
二回目のかめはめ波を撃つと、中井出達を見てニヤリと微笑んだ。
中井出「は───」
藍田 「い、今……かめはめ波、撃ったよな?」
中井出「ああ……なんつーか感動っていうのか感激っていうのか……」
藍田 「俺、ちょっとシビレちまった……」
悟り猫「クォックォックォッ!!驚いておるな!?驚いておるわ!
ほっほっほ、驚かないとか言ったのは何処の誰だったかね!?えぇーーっ!!?」
中井出「うあ……感動が一気に冷めた……」
藍田 「俺も……」
悟り猫「なんじゃいそりゃあ!!」
中井出「なぁ彰利!それってどう撃つんだ!?俺にも撃てるか!?」
悟り猫「撃てますとも!」
中井出「マジか!?」
藍田 「お、おおお!なぁ!撃ち方教え───」
悟り猫「ウソじゃ」
喜びに子供のように目を輝かせていたふたりが、
急に愛の殺戮マシーンのような悲しい目をした次の瞬間。
俺はふたりによってボコボコにされた。
───……。
悟り猫「ブゲッ!ブゲゲッ!!かはっ!く、くそ……!
まさかかつてのクラスメイツにまで鼻を折られるとは……!」
悠介 「お前、鼻がモロすぎ」
悟り猫「ほっといてよ!砕かれすぎて砕けやすくなってるだけなのよきっと!!」
さて……ようやく乱舞が落ち着いた頃、中井出と藍田が我らの能力について訊いてきた。
その大半が『どうして中学の頃に教えてくれなかったんだ』というもの。
そうなのだ。
こいつらは中学の頃から既に『楽しめるものは楽しむ』という奴らだった。
それがトリック無しのものだろうと関係無いのだ。
悟り猫「俺の能力は生まれつきだ。悠介のは貰ったもの」
中井出「貰った?誰に。俺も貰えるか?」
悟り猫「死神と契約して貰ったものだぞ?それでいいなら止めないが」
中井出「死神に知り合いが居るのか……面白いな、それ」
なんとも平和なヤツだった。
こういうヤツが家系に生まれたとしたら、本当に能天気に育つんでしょうねぇ。
悠介 「創造の理力っていうんだ。頭の中にイメージしたものを具現化する能力だ」
藍田 「ほへー……あ、じゃあさ、適当なもの創り出してみてくれよ。なんでもいい」
悠介 「ああ。そうだな……藍田の上半身の筋肉だけを異常発達させる薬が出ます」
ポムッ。
なにやら物騒なイメージを纏めた薬が創造される。
悠介 「飲め」
藍田 「へ?あ……だってそれ、筋肉が異常発達するんだろ?俺ヤだぞ?」
悟り猫「───!」
中井出「───?……!」
すかさず中井出にアイコンタクト。
俺と中井出は瞬時に散開し、藍田を押さえつけにかかった。
藍田 「ぐあっ!?な、なにをするっ!離せ!ええいっ……離さんかっ……!!」
悟り猫「ハ〜イ、お薬飲みましょうねィェ〜〜ッ!!」
中井出「苦くないでチュよぅぉ〜〜〜っ!!面白いだけでチュよぉ〜〜〜っ!?」
藍田 「ただお前らが楽しみてぇだけだろ!!」
悟り猫「馬鹿かてめぇ!!当たり前だろうが!!」
中井出「俺達を見縊るな!!」
藍田 「威張れることかぁっ!!」
暴れる藍田を家系の腕力を以って押さえる。
悟り猫「藍田よ……貴様の成長、しかとこの目に焼き付けさせてもらうぞ……!」
中井出「男として木村を守れる男となれ!」
藍田 「言葉の割に目が笑いっぱなしじゃねぇか!離せって!」
悟り猫「悠介!ゴー!」
悠介 「ほいきた」
悠介がゆっくりと藍田に寄ってゆく。
藍田 「や、やめろぉおおおおおおおおっ!!!!!
ギャアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
───……。
───…………。
藍田 「………」
悠介 「……えーと」
中井出 「その……なぁ?」
悟り猫 「……オリバ?」
悠介&中井出『ブフッ!!』
そう、彰利の言う通り……目の前にオリバが居た。
上半身だけだが、
ビスケット・オリバほどのゴリモリマッスルな体をした藍田がそこに居た。
中井出「かはっ───かははははっ……!!!バ、バランス取れてねぇえーーーっ!!!
下半身ヒョロっちぃーーーーっ!!!ぶはははは!バァーーハハハハハ!!!」
悠介 「くはっ……!くはははははっ……!!」
悟り猫「うむ藍田よ。これからは『ビスケット・藍田』と名乗るがいい」
藍田 「名乗るかァアーーーッ!!!」
ボゴシャァアーーーンッ!!!!
悟り猫「ブゲェエーーーーッ!!!!」
シュゴォッ───バシャァアーーーーンッ!!!!
中井出「オワッ!?」
悠介 「うお……」
元ニューヨーク州警官ジェフ・マークソンの如く。
そう……オリバのストレートナックルを喰らった彼のように、
彰利が物凄い勢いで窓をブチ破ってスッ飛んでいってしまった。
藍田 「………」
その事実に藍田が一番驚いていた。
や、凄いパンチ力だ。
ヒュキンッ!!
悟り猫「殺す気かてめぇ!!」
中井出「うわっ!?」
藍田 「どわわっ!」
すぐに転移して戻ってくる彰利。
だが……その顔は元ニューヨーク州警官ジュフ・マークソンの胸の如く、ヘコんでいた。
悠介 「彰利……生きてるのが不思議なくらいだから、ひとまずは治せ」
悟り猫「え?なにそれ」
きょとんとした顔をする彰利。
顔が陥没した状態で不思議な顔されても気持ち悪いだけなんだが……。
中井出「彰利……彰利」
悟り猫「なんぞね」
中井出「顔……」
悟り猫「ウィ?」
中井出が、部屋の鏡の前に彰利を誘導する。
やがて───
悟り猫「ゲェエエエーーーーッ!!!」
その叫びはこの部屋を揺るがすのだった。
しっかし……あれで生きてられるのは真実、超人の域に達している証拠じゃなかろうか?
毎度毎度思うが……なんとも凄まじい男───いや、漢になったもんだ。
悟り猫「ぬぅ……焚ッ!!!」
ッパァンッ!
中井出「ブフッ───ぶはははははは!!!!!」
悟り猫「ややっ!?なにを笑うのかね!!」
気合とともに陥没した顔面を治した彰利を見て、中井出が爆笑した。
気持ちは解らなくはない。
中井出「だっておまっ……ぶははははは!!!
息詰めたら『パァンッ』て戻るって……!ヘコんだゴムボールかよお前の顔!!
くははははははは!!ひひゃぁあああっはっはっはっははははは!!!」
悟り猫「………」
悲しそうな顔をする彰利。
実は少し自覚があったらしい。
藍田 「お前って瞬間移動まで出来るのか?」
悟り猫 「んあ?ああ、朝飯前ですよ?創造以外はなんでも出来ると考えてよろしい」
藍田 「へぇ〜……すげぇなぁ」
悟り猫 「俺としてはお前の上半身と下半身の差の方がすげぇと思うが」
悠介&中井出『ブハッ!!』
彰利の言葉に、俺と中井出は噴出した。
やべ……ツボだったらしい。
笑いが止まらん……。
藍田 「なぁ晦……これ治す薬作ってくれよ……」
悠介 「だ、大丈夫だオリバ……!五時間もすれば治るから……!」
藍田 「ご、五時間……!?それまでずっとこのままかよ……!
つーか普通に『オリバ』言うのやめろ!!」
悟り猫「やったな!目立つこと請け合い!これでクラスメイツの人気者だぜ!?」
瞬間!オリバの拳が彰利の顔面に放たれゴブチャア!!!
───部屋の隅。
痙攣しつつ動かなくなった彰利が居た。
悠介 「なるほど……オリバにかかれば彰利も一撃で行動不能か……」
覚えておこう。
悠介 「で、どうする?風呂の案があっさりと却下されたわけだが」
中井出「そりゃお前……なぁ?オリバ」
オリバ「オリバ言うな」
安心しろオリバよ。
今や俺達の中でのお前の認識はオリバでしかない。
悠介 「ああ解った、枕投げだな?」
中井出&オリバ『その通りだッッ!!!』
元気だなぁふたりとも……正直ペースに付いていけん。
俺としてはこういう暇な時は家の装飾刀いじったり、
和服の手入れしたり宮司服の手入れしたりしていたいんだがなぁ。
ああ、茶を飲むのもいい。
誰にも邪魔されず、静かに……かなり静かに。
時折に聞こえる『ししおどし』のカコーンという音が心を落ち着かせ……
より耳を澄ますと池に流れる水の音が聞こえてきて、
はぁ、と息をついたところに……家の馬鹿女どもが騒ぎ始めて、
せっかくの静寂が全て水の泡にア゙ァアアアアアア!!!!!
悠介 「やるぞ……!」
中井出「へ?晦?」
悠介 「へ?じゃない!枕投げだ!!とっとと用意しろ!!」
中井出「なぁオリバ、晦のヤツ……なんで怒ってんの?」
オリバ「オリバ言うな」
こうして俺達は、まず彰利を起こしてから一番広い部屋に集合し、
そこに枕を集めて構えるのであった。
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