───地上最強猫列伝『第十九章◆来訪!CAT安心時空旅行!の巻』───
───……スタッ。
悟り猫「ほい、到着っと」
悠介 「ここは……」
見渡す限りの草原に、朽ち果てた屋敷。
そう、ここは……弦月屋敷前。
悠介 「どうしてここに転移したんだ?ていうか……ここはもう未来なのか?」
悟り猫「イエス。約50年くらい先の未来。この座標で構わんよね、リヴァっち」
リヴァ「ああ。わたしが転移した座標ぴったりだ。さて……これからどうするかだが」
悠介 「だから。どうして敢えてここに転移したんだ?」
悟り猫「静かだし盗み聞きするようなヤツが居ないから。それだけ」
悠介 「……なるほど」
リヴァ「検察官。お前の居るべき時代の悠介は随分と思考の回転が鈍いんだな。
これくらい、この時代の悠介なら簡単に思いつくぞ」
悠介 「悪かったなっ……平和ボケしててっ……」
リヴァ「ああ悪い。犯罪級に悪いぞ。改めろ」
悠介 「……なにやらやたらとむかつくお嬢さんだな……」
悟り猫「まあまあ。んじゃあまずそのロディエルさんとやらに会う前に、
未来の皆様に挨拶回りでもしますか」
リヴァ「そういえば検察官。お前の時代に刀女が居たようだが……。
あれはここ最近、晦神社に現れた次元の歪みと関係はあるか?」
悟り猫「ウィ。オイラが暇潰しに攫ったようなものですじゃ」
リヴァ「そうか、まあいい。まずはどこから回るんだ?」
悟り猫「当然、レイヴナスカンパニー!」
悠介 「はあ……彰利の記憶を見たからって、
俺はこの世界のこと知ってるわけじゃないんだぞ……。
なんだって俺までこの時代に……」
悟り猫「それにはちゃんと理由がありますぜ?ま、それはおいおいね」
悠介 「はあ……」
悠介の溜め息を余所に、俺は再び転移をしたのでした。
───……昂風街、レイヴナスカンパニー。
凍弥 「はっはっはっはっは!!ほ〜ら高い高〜い!」
紅花 「ひゃうっ!きゃうっ!」
凍弥 「はぁ〜あ、紅花は可愛いなぁ……。こんな娘を持てて、俺は幸せだ……」
悟り猫「とりあえずムカツクから耳そぎ」
ドシュッ!!
凍弥 「豪()ォオオオァアアアアアアアッ!!!!!」
紅花を抱きかかえてデレデレしてた小僧の耳にチョップを一閃。
少々力が入ったためか、小僧はゴロゴロと転がり回った。
まったく……転移した途端になんて場面見せるんだか。
凍弥 「だ、だだだ誰だぁっ!!」
悟り猫「俺だ!!」
凍弥 「───……」
沈黙。
悟り猫「やあ、すごいぞ悠介。一発で黙らせた」
悠介 「いや、今のこいつの気持ち、よく解る」
リヴァ「同感だ。わたしもDNA鑑定で検察官の前々世を見た時は驚いたものだ」
凍弥 「検察……官?───えぇっ!?あ、彰衛門!?この猫がっ!?」
紅花 「あーう、あうー……あーひ、えもんはん……」
よたよた……。
転がっていた小僧の手から解放された紅花が、よちよちと俺の方へ来る。
いやはや……少々成長してますね。
生後一年から三年と見た!!
悟り猫「ほっほっほ、元気にしとったかね?それから俺は『あひえもんはん』ではないぞ」
紅花 「あいっ!」
ゾブシュッ!!!
悟り猫「キャオラァアアアーーーーーーッ!!!!!!」
大激痛再来!!
俺の目の前までよちよち歩きでやってきた紅花は俺にサミングをしてきたのです!!
悟り猫「あぁあ〜〜〜……目がぁあ〜……目がぁああ〜〜〜……!!」
ムスカくん、キミは英雄だ。
つーかね!この娘ッ子まだ根に持ってますよ!?
しゃあないじゃない!
同じ時代に同じ背格好の『みさお』を置いておくわけには参りませんもの!!
解るでしょ!?悠介の方は背格好が同じでも、ロディエル倒したらすぐ戻るわけですし!
この世界に置いておくわけじゃないんですから!
凍弥 「うわっ!こら紅花っ!猫に目潰しなんかしたら黴菌が伝染るだろっ!」
悟り猫「まずすることがそっちの心配かよ!!」
凍弥 「あ〜ほらばっちぃなぁ〜。手、綺麗にしようなぁ〜」
紅花 「あぅう……うぅ〜!」
凍弥 「嫌がってもだめ。ほら、手ぇ出して」
あの……なんでしょうこの溺愛っぷり。
すっげぇデレデレ顔ですよ。
これが……これがかつては剣聖と呼ばれた男か……。
悟り猫「すまん、悠介、リヴァっち。俺ひとまずこいつ殴りたい」
悠介 「よく解らんが応援した気分だ」
リヴァ「遠慮はいらない。その腑抜けにキツイ一発入れてやれ」
悟り猫「御意」
こうして俺は腕だけ爆肉鋼体させた状態で、
デレデレで隙だらけな馬鹿野郎へ拳を思いっきり振るのでした。
ベゴキャドゴォッシャァアアアアアアアアアアアンッ!!!!!
パキッ、ペキン……カシャン、ゴシャッ……。
───……。
悟り猫「さて、ピクリとも動かなくなりましたね。ザマァミロですクソ野郎」
悠介 「うお……こりゃひどいな……」
リヴァ「隙をつくるバカが悪い。治療はわたしの魔導にやらせておこう。次へ行くぞ」
悟り猫「そうでゴワスな。んでは、後を頼みましたよ紅花」
紅花 「うー……」
頼んでみると、紅花はつまらなそうな俺達を見送るのでした。
───で、廊下に出た途端。
メイ 「あ───リヴァイアさま」
リヴァ「メイか」
メイさんと遭遇。
いつ見ても素晴らしいメイド服の着こなしようです。
素人では真似できない何かを感じさせますよ。
悟り猫「メイさん、ヘロウ」
メイ 「───……彰利さまですね。お久しぶりです」
悠介 「解るのかよ……」
メイ 「はい。声帯パターンと言語パターン、
さらにはわたしに話し掛けてくださる人物の個人パターンを検索しました。
わたしにこういう話し掛け方をなさいますのは彰利さまのみです」
悠介 「悟られてるんだな……」
悟り猫「友達ですから」
メイ 「はい」
ニッコリと笑うメイさん。
さて……そんなメイさんだが、なにやら物腰が変わったような気が……
悟り猫「のうリヴァっち?なにやらメイさんの物腰が変わったような気がするのじゃが」
リヴァ「ああ。ちょっとあってな。葉香に訊いた方が早いと思うぞ」
悟り猫「ヨ、ヨウカンですか……」
出来れば会いたくなかったが……パンパンッ!!
悟り猫「これ!葉香!葉香はおるかね!!」
アタイは手を鳴らして、まるで従属者を呼ぶかのようにヨウカンの名を謳った。
すると、次の瞬間には辺りに立ち込める殺気とマールボロの香り。
マールボロってのはタバコの名前です。
ここでは手早くマルボロと呼びましょう。
でも決してCOSMOSのマルボロとは関係ありません。
などと思った瞬間、俺の体は遙か遠くの景色まで蹴り飛ばされていました。
悟り猫「おげげげげ……」
蹴られた勢いで廊下の先の壁に顔面打ち付けてしもうた……。
例の如く鼻血が止まりません……。
葉香 「人を従属者のように呼ぶな……。
わたしはこれでもこのカンパニーの家族だぞ……」
悟り猫「そうなんですか!?」
私は大変驚きました!!
つーかそうは見えません。
もうちょっと……いや、かなり清楚に行きましょうよ。
葉香 「しかし……なんなんだその珍妙な格好は。正直情けない」
悟り猫「イカスっしょ!!」
葉香 「『情けない』と言った」
悟り猫「あらそう……」
なんとも寂しい瞬間でした……。
ハッ!そ、そうだ!この時代には紅花がおるんや!!
せっかくだから体を元に戻してもらいましょうぞ!!
悟り猫「あ、ちょほいと待っててーな」
葉香 「……わたしを呼びつけといて待たせる気か。いい度胸だな」
悟り猫「すげぇだろ」
葉香 「……ああいい。行け、さっさと行け」
悟り猫「な、なんですかねまったく……」
物凄く鬱陶しそうに追い払われたぞ畜生。
でもいいや、まずは体を治さねば。
アタイは開けっ放しのドアから再び中に入ると、
未だにこちら(主にアタイ)を見ていた紅花の傍に歩いたのでした。
悟り猫「これ紅花さん?アタイに時操反転を掛けてはくれまいか。
いい加減、人の姿に戻りとうございます」
紅花 「や〜……」
悟り猫「ほっほっほ、まあそうシュテンドルフと」
紅花 「しゅて……?」
悟り猫「『言わん』という意味です。とにかく頼ンまぁ。
このままではこの人類に危機が!!」
紅花 「う〜……」
悟り猫「……あのね。キミをここに置いていったのは、
『両親』にたっぷり甘えさせてやるためでしょうが。
それをなにかね、逆恨みのようにしおってからに」
紅花 「あ〜き、えもんさん、と……もっと……あそ、び〜……たい……」
悟り猫「なんと!喋りおったわ!でもだめです」
紅花 「うー……!!」
悟り猫「ごねてもだめですじゃ!よいからじいやを元に戻しなされ!」
紅花 「や〜!!」
悟り猫「なんと!?どうしろというのかね!あまり聞き分けが悪いと吊るしますよ!?」
紅花 「あそんで……。もっといっしょにいたいです……」
悟り猫「なんと!ハッキリと喋りおったわ!
これ葉香!赤飯の準備じゃ!今日はめでたい日じゃぞーーっ!!!」
次の瞬間には俺は血だるまになっていました。
───……。
悟り猫「あいでででで……!!なんてことをするのかねまったく……!
これ葉香!じいやに向かってこげなことをして!許されると思っておるのかね!」
葉香 「思っている」
悟り猫「……そういう人じゃったよね、キミ……」
しかしね、まさかヨウカンが『鎌』使ってくるとは思わなんだよ。
驚きですが、ヨウカンは自分の内なる死神と融合を果たしたケースの人らしい。
強いのも頷けるね、まったく。
鎌の名前は“微動無き時操の理()”というらしい。
秒針の凍結って意味みたいざます。
だから一瞬でボコボコにされたんですねー。
悟り猫「あのー……キミだけでも十分にロディエルさんブッ潰せるんでないかい?」
葉香 「わたしはわたしに被害が及ばない限り、知ったことじゃない」
悟り猫「うわー、すっげぇ自己中心的思考」
こりゃああきまへんえ?
なんつーかまあ、人として。
葉香 「ところで紅花。お前、喋れたんだな。この男になにかされたのか?」
悟り猫「男チガウ!漢イウ!!サンハイ!!」
葉香 「うるさい」
悟り猫「ゲッ……!」
一言だった……。
これほど解りやすく、人を虚しくさせる言葉があるだろうか。
いや、無い…………反語。
紅花 「じつは……わたしは、
ははうえのてによってかこにとばされた『このか』なのです」
葉香 「過去へ?どういうこだ」
悟り猫「きっとこういうことだぜ?
この時間軸じゃない場所では小僧と椛は幸せにはなれず、
椛は紅花がこの時代では幸せになれないと判断したのだぜ。
だから椛は紅花を過去へ飛ばしたんだぜ。わざわざ俺が居る時代にだぜ」
葉香 「わざわざ『だぜ』を付けるな。鬱陶しい」
悟り猫「いいでないの別に……だッぜーーーィ!!」
葉香 「……それで?過去に飛ばされた紅花がどうしてここに居るんだ」
悟り猫「俺が持ってた刀があっただッぜーーーィ!?
その中に紅花……えーと、
過去で名前は変えられてたから『冥月』だけどねだッぜーーーィ!!
この娘っ子の人格が眠っていたわけだッぜーーーィ!!
してね?このまま刀の中の人格のままじゃあ可哀相だと思っただッぜーーーィ!!
だから俺がシェイドに頼んで、
冥月の魂を紅花の中に埋め込んでもらったわけだッぜーーーィ!!」
葉香 「……待て。そうなると元の『紅花』の魂や人格はどうなる」
悟り猫「馴染んでいくから大丈夫だッぜーーーィ!!
元は同じ魂なんじゃから、その内完全にひとつの魂になるだッぜーーーィ!!
俺は他人の人格を破壊するようなゲスなことはしねぇ漢だッぜーーーィ!?」
葉香 「……わざわざ語尾に意味の無い言葉をつけるな、たわけ」
悟り猫「たわっ……!?」
ひでぇ……なにもたわけとまで言わんでも……。
悟り猫「そんなわけで、俺を彰利に戻してくれません?」
紅花 「いやです」
悟り猫「……ね?子供っぽいでしょ?これが赤子の紅花の人格の表れでござんす」
葉香 「……なるほど」
紅花 「うー……!」
葉香 「それはそれとしてだ。『彰利』に戻してくれっていうのはどういうことだ」
悟り猫「へえ。実はアタイ、もうひとりの紅花さん……
我らで言うみさおさんに、前々世にまで時間をブッ飛ばされてしまったんですよ。
だからね?いい加減人に戻りたいなぁって」
葉香 「……そういうことは先に言え馬鹿」
悟り猫「バカとはなんだコノヤロウ!!」
葉香 「黙れ。……わたしの鎌は時間干渉に長けている。
存在を時間因果律で殺すことなく『世』を飛び越えることくらい容易いぞ」
悟り猫「……とんでもないねキミ」
葉香 「お互い様だ。いくぞ───“微動無き時操の理()”」
パキン……───……。
葉香 「おい。……おい」
彰利 「───ハッ!?」
あ、あれ!?景色が高い!?手が───人だ!
彰利 「ば、馬鹿な!何が起こったのかまるで解らない……!私は大変驚きました!」
葉香 「時間凍結させてから遡った『時』を元に戻しただけだ。
自信はあったが、時が止まっていれば生命の危機に陥ったら中断が出来るだろ?」
彰利 「……とんでもないねキミ」
葉香 「だから……お互い様だ。───おい、頭に手を当てて“時操反転()”と唱えろ」
彰利 「?……“時操反転()”」
言われた通りに頭に手を当てて唱える。
と───シャキィンッ!!
悟り猫「………」
我輩は猫だった。
葉香 「戻る時は“時操回帰()”。覚えておけ」
悟り猫「あ、“時操回帰()”!」
シュキィンッ!!
彰利 「………」
戻った……やべぇ!!おもしれェ!!
葉香 「お前の中に時の理を埋め込んでおいた。
いつかは消えるとは思うが、必要になったら使え」
彰利 「……───ふ、ふは……ふははははは!!ついに!ついに来たのだ!
ついに!俺が変身ヒーローになる時が!!」
葉香 「猫がヒーローか?とんだお笑い種だな」
彰利 「………」
嫌よもう……。
この人、人の喜びに水差すの天才的だよ……。
彰利 「もういいっす……。
んでさ、メイさんの物腰が以前と違う気がするんじゃけんど?」
葉香 「うん?ああ、あれか。……まあ、複雑なもんだがな。
出会いたかった人にようやく会えたってところだ」
彰利 「会いたかった人?……誰()?」
葉香 「わたしの息子だ。最近はここで働いてもらってる。
いつまでも若いままの男が普通にどっかの会社で仕事してたらヘンだろ」
そらそうだが、キミの知る範囲から話されても正直わけが解らん。
教える気があるんかねこの人。
……ないんでしょうなぁ。
彰利 「えーと、なに?つまりはその息子さんも月空力使えんの?」
葉香 「いいや。いたって普通の人間だ。
身体能力は継承されたみたいだが、月空力は持って生まれなかった。
開花することは出来るだろうがな。
恐らくわたしが能力の主となる死神と融合したことに原因があるんだろう」
彰利 「ン〜……つまり、死神としての能力が十分に流れなかった、と?」
葉香 「死神と融合したんだ。子供に流れるべき『死神側』の要素も当然減る。
本来は死神の要素が流れると、それが子供とともに成長するらしいんだがな。
わたしの代で死神と融合してしまった。
ようするに、本来流れるべき死神の要素がさほど流れなかったんだ」
彰利 「明らかなる月操力不足でございますか。
ヨウカンの息子っつーから強いんかと思ったのに」
葉香 「『アレ』はただ身体能力が高いだけのただの人だ。なんの能力もない」
彰利 「したら、息子さんが若いままってのは?」
葉香 「わたしがそうしてる。メイと紫穏に頼まれたからな」
彰利 「紫穏?……ああ、息子さんの名前かね」
葉香 「ああ。まったく……面倒なことになったもんだ」
ヨウカンは面倒くさそうにそう言うと、タバコに火をつけて歩いていってしもうた。
彰利 「……面倒ならやめりゃあいいのにねぇ」
紅花 「………」
彰利 「紅花?」
紅花 「あぅ〜……」
……子供のフリしてます。
何故に?───って、ああ。
起きだした小僧を見て納得。
さすがに馴染むまでは子供のフリをしなきゃいかんと思っておるのでしょう。
凍弥 「いっててて……!!な、なんてことするんだよ彰衛門……!」
彰利 「デレデレしとる貴様が悪い!!シャキッとせんかぁっ!!」
凍弥 「で、でもさ。紅花を見てると、こう……」
紅花の顔を見た途端に顔の筋肉をだらしなく緩ませる小僧。
……なんでしょうね、この顔ってめっさムカツキます。
彰利 「小僧!貴様のことはもういい!椛はおるかね!!」
凍弥 「椛?ああ、椛なら多分、社長室に居ると思う」
彰利 「社長室、か」
何故に?……まあいいコテ。
彰利 「悠介〜、社長室行くぞ社長室〜」
悠介 「あ、ああ……」
未だに少々戸惑ってる悠介を促して社長室へ。
まったくねィェ〜、普段通りにドンと構えておりゃあいいのに。
……つーか、この様子はあれじゃね。
日本好きが反発してますね。
ここ、洋館ですから。
なにやらストレス溜まっていってるようにも見える。
───……。
彰利 「椛!椛はおるかね!」
ズバームとドアを開けて社長室へGO。
するとそこにおわすはおなご達。
むう……椛と菜苗さんと、
確か双子の片割れとベッドの上に居たおなご……シルフィーとか言われてたヤツぞね。
椛 「え……あ、あれっ!?おとうさんっ!?」
彰利 「まだおとうさんと呼びますか……。
まあそれはそれとして、元気にしとったかね椛」
椛 「……あ、う、うん……」
彰利 「ややっ!?」
なにやら暗い顔をする椛さん。
もしや───彼女の身になにか!?
次回!地上最強猫列伝改め、CAT()!安心時空旅行!
『まさかの事実!不倫をした小僧!』の巻!
……ごらん、あれ……。
椛 「凍弥さんは浮気なんてしないよっ!!」
彰利 「ゲッ!?な、なぜそれを!───って、また声に出てた?」
菜苗 「はい〜、惜しげもないくらいに〜」
彰利 「そ、そうすか……」
シルフ「あの……なにかご用なのでしょうか。見ての通り、少し立て込んでいるのですが」
言って、胸に抱いた赤子を見せるシルフィーとやら。
彰利 「あら?もしかしてキミの子供かね?」
シルフ「そうですが」
彰利 「それではそちらは……」
菜苗 「はい〜。わたしの子供です〜」
彰利 「な、なんとまあ……マジすか」
なんともめんこい赤子が、そこにおがったとしぇ。
ここで俺が猫姿で入ってたらボコボコにされてたんでしょうね。
『猫毒が回るわYO!!』とか言って。
彰利 「それはそれとして椛よ。
だったらいったいどうしたというのかね、その元気の無さは」
椛 「う……お、おとうさんっ……!!」
彰利 「ウィ?なんザマス?」
椛 「凍弥さんが……凍弥さんが紅花にばっかり構って、
わたしに全然構ってくれないの!!
わたし、妻なのに……ヒドイよね!ずるいよねっ!!紅花ばっかり!!」
彰利 「───……」
みなさま……ここに自分の娘にヤキモチ妬いてるおなごがおるよー……。
彰利 「あのねですね……自分の娘に嫉妬してどうすんの」
椛 「ふぐっ……!で、でもっ!凍弥さんは仕事ばっかりで構ってくれないし、
仕事が終わっても紅花のことばっかりで……!」
彰利 「あのデレデレ顔からそれを想像するのは容易いけどのぅ。
だが耐えるんじゃ。耐えて耐えて、隙あらば怒るのじゃ。
しかし『離婚』だのと言ってはなりませぬ。
離婚はじいやの一番嫌いな言葉じゃからの。
一体いくつ『一番嫌い』があるかは自分でももう覚えておらぬが……
強く生きなさい、椛や。おまえはじいやの自慢の娘じゃあ……」
椛 「おっ……おとうさんっ……!!」
うるるっと涙を溜める椛の頭を、久しぶりに撫でてやった。
したっけ、ポロポロとこぼれる涙。
彰利 「ほっほっほ……涙もろいのは相変わらずだねぇ」
椛 「っ……おとうさんが……おとうさんがやさしいからっ……」
彰利 「……ああ、ありがとな。じゃが人は変わるものじゃ……。
この世界に変わらないものが無いように……人もまた、変わってゆく……。
なぁ椛や……。じいやはの、一度は憎まれもしたが……
じいやを受け入れてくれたこの世界が愛しい……。
もしこれが幸せだというのであれば……
じいやはその世界のために戦うことも厭わないじゃろう……。
……なぁ椛や。椛も、そして小僧も……そんな世界に生まれたお子じゃ。
じいやはおぬしらが大事じゃ。
だから……辛くても、紅花が親離れするまで。
小僧が子離れするまで……じっと耐えておくれ……」
椛 「おとうさん……」
彰利 「辛かったらじいやの時代に遊びにくればいい。
じいやの時代にはただただ平和がある。
悠介は平和な状況に生きてしまったために、
この時代の悠介とは雰囲気も違うが……じゃが、そんな知り合いが大勢おる。
それはその場所で『未来』が開けたからこそ存在する平穏。
腑抜けになるのが悪いというわけではなく、
そこに平和があるからこそ、笑って『明日』を迎えられる。
なにひとつの『辛い、悲しい』を背負う必要も無い世界があれば、
その世界では新しい未来が目指せるのじゃからの……。いつでも遊びにきなさい」
椛 「うんっ……うんっ……」
抱きついてきた椛を抱いて、その頭をやさしく撫でる。
懐かしい感触。
思えばこの時代で椛が小僧と結婚してからというもの、
こんなことももうやっていなかった。
だっていうのにその体はあの頃と同じ小さなままで、
椛はまだきっと、人に甘えたかったのではないだろうかと……そう思った。
早く結婚することが悪いとは言わない。
だが、もっとありたいこともあったんじゃないだろうかと。
俺は……椛に決断を早まらせたのではないかと……そう思った。
彰利 「“時操反転()”」
俺はひとつ思い当たったことを実行に移すため、頭に手を当ててそう唱えた。
するとポムッと、まるで創造の理力で何かを出したような軽い音とともに、
俺の体が猫になり、体には黒衣と帽子と刀とブーツが装着される。
椛 「え……?」
悟り猫「椛……じいやはちとこれから、ひとつの荒行事出る。
じゃが心配はいらんよ……椛はここで待っておるとええ。
これが吉に向かえば、きっと小僧も変われる。
椛……小僧を憎んではいけないよ……?
じいやもな、楓巫女や楓を愛でたからの……今の小僧の気持ちは解るんじゃ。
その時のじいやには『妻』がおらなんだから事無きがあった。
じゃが、椛がこうして悲しい思いをしていると知った以上、
じいやはそれを黙って見過ごすことは出来ん……」
椛 「おとうさん……なにをするつもりなの……?」
悟り猫「なぁに……なにも怖いことはない。ただ……『遊んでやる』だけじゃよ」
それだけ言うと、俺は社長室のドアをブチ破って廊下を駆け出した。
目指すは───小僧の居る部屋!!
悠介が蹴破ったドアの先に居たので一緒に来てくれと叫んで、さらに走った。
その過程で、素早くリヴァっちからとある情報を得た。
これで安心です。
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