───UnlimitedBlackOrder-No.03友のために出来ること───
───……。
彰利 「……魂の崩壊……千年分のツケ、か……」
ガラにも無いと思う。
けど……俺は今、確実に『恐怖』というものを抱いていた。
死ぬことが怖い───俺はそう感じている。
これが恐怖だ、これが。
かつて……ここまで不愉快な感情に抱かれたことはなかった。
───否。
弦月宗次やその妻のことを出されれば、これくらい不愉快にはなっただろう。
感情に流されるままに『破壊』を実行したくなるのを押し留めるので精一杯だ。
だから悠介と別れた。
あのままじゃあいつか俺が爆発していた。
彰利 「くそっ……感情が制御できねぇ……!!
俺はっ……俺はこんなものを手に入れるために頑張ったのか……!?」
俺が欲しかったのはこんなものじゃあなかった筈だ。
ただ、知ってるヤツと対等に喜んだり笑ったりしたかっただけだ。
こんな吐き気がするくらいの気分に襲われるためじゃない。
彰利 「月清力じゃ足りねぇ……!!
なにか……なにか決定的に感情を黙らせるなにかを……!」
死ぬわけにはいかないのは確かだ。
やっと手に入れられた未来を手放すようなことはしたくない。
やっと……そうだ、やっと開けた未来なんだ。
怖いさ……ああ怖い。
だから死ぬわけにはいかないんだ。
彰利 「は……ハデス……」
───っ……だめだ。
ラグナロクコピーで沈静創造したところで、自分の消滅を促すだけだ。
使わなければ死にはしないんだ……落ち着け……!!
彰利 「くそっ……早く出て来いバグ野郎!!
居るんだろっ!?コソコソ隠れてんじゃねぇよ!!」
煮えたぎる。
感情の波が、ただ煮えたぎる。
制御の出来ないものは苛立ちを誘い、その苛立ちが制御を余計に邪魔する。
なんていう悪循環。
気が狂いそうだ……人ってのはこんな馬鹿みたいなものを背負って生きてるのか……?
いや……違う。
……よく考えろ。
俺は南無……かつて弦月彰利だったものと融合した。
それはつまり、人格がふたつあったって言ってもいいものだ。
彰利 「っ……」
早い話はこうだ……俺には人一倍に濃い感情が潜在している。
だから怒る時は異常に怒るし、落ち込む時は極端に落ち込む……。
彰利 「……ちくしょう……なにが未来が開けただ……。
なぁ悠介……俺……いつまでこんな風に苦しまなきゃいけないんだろう……」
そう呟いた時、俺は……ただ自然に悲しい気持ちを抱き、涙した。
『いつか』なんてものがあるのなら、
今すぐその『いつか』を『今』と唱えて創造したかった。
これ以上、泣きたくなるような苦しいことが、自分の未来に訪れませんようにと。
ただ、そんな願いを……創造したかった。
……辛くないわけがないのだから。
俺はずっと怖かったんだ。
それが……今やっと解った。
感情が無かった俺はいろんなことをやってきた。
死神と立ち向かったり、殺人鬼と戦ったり、化け物と戦ったり。
当時は回りに気を使って、ふざけながら戦っていた。
……その心の中を、一体誰が知っていただろう。
自分でさえ気づかなかった自分の心を、一体誰が知っていたのだろう。
……そう、今だからこそ解る。
俺は強くなんてなかった。
いつだって怖くて、いつだって誰かに交代して欲しかった。
周りが俺を『日常だ』と喩えれば喩えるほど俺はふざけて、笑って。
気づけばそんな行為が周りにとっては自然になっていて、
俺もまた、そんな行為から逃げられなくなっていた。
……それまで生きてきた自分が、どんな風な俺だったのかが思い出せなくなっていたんだ。
だから、俺はみんなが望む『弦月彰利』であろうとした。
『笑ってくれるならいいじゃないか』とふざけ、
『でも、だったらそれは【俺】じゃなくてもいいんじゃないか』と戸惑い。
そうなって初めて、自分の存在に疑問を感じた。
笑わせるなら誰にでも出来るだろう。
誰かの心の拠り所になるのなら誰にだって出来るだろう。
だったら俺はなんだ?俺は、何を『自分』として認めればいい?
月操力か?家系の血か?それとも……この制御できない感情をか?
彰利 「やめろ……やめろやめろやめろやめろぉっ!!
ちくしょう止まれよ!!なんで考えが止まらねぇんだよ!!」
感情が無いとされていた時、思考なんてものは止められたものだ。
だがどうだ。
手に入れたくて躍起になっていたソレは、俺にとって迷惑なものでしかなかった。
人間らしさってなんだ?
こんな邪魔なものを背負うのが人間らしさか?
だったら俺は……化け物だと言われようが、
全てを否定する存在になるべきだったのかもしれない。
───ビジッ……ジジッ……
彰利 「………」
もし伝えるのなら。
黒く染まる心を映し出したかのような光景だった、と唱えるかな。
情けない顔で泣いているであろう俺の目の前に、かつての俺の死神が創造された。
それは考えるまでもなく、『蝕み』が寄越したバグの創造なんだろう。
レオ 「腐った顔をしているな、宿主」
……いや。
もしかしたらこいつはホンモノなのかもしれない。
もし、ルドラの力で俺の中の『子供の頃の精神のカケラ』が再生されたとするなら、
それはずっと俺の中に居たレオにも言えることなのだから。
そのレオがこの世界に存在するであろう潜在的なモノを利用して実体化したなら、
こいつは紛れも無く……
彰利 「………」
……ああ、そうか……そうなのか……。
レオ 「なんとか言ったらどうだ。それとも、そんな気力もないか?」
彰利 「……いや。消滅の空間に居るのはどんな気分なんだ?」
レオ 「言う必要は無いな」
彰利 「……そっか」
よっぽど俺の心は腐っているのか。
なんだってこんなヤツを創造してしまったのか。
精神の中心に近づいたことで、
『創造の世界』に入っていたのであろう俺は溜め息を吐いた。
彰利 「やっぱり……戦うのか?」
レオ 「……たわけが。何故俺がお前ごときと戦わなければならない。
元より俺は敗北した存在だ、今更足掻く気など欠片も無い」
彰利 「……意外な返答だ。お前、案外諦めがいい方なのか?」
レオ 「『闘争』とは純粋であるべきだ。
俺は全力で戦い、ルドラはそれに対して全力を出した。抗う言葉は不要だ」
彰利 「………」
驚いた。
その後、なんだかおかしくなって声を上げて笑った。
こいつもやっぱり『俺』だったんだと思ったからだ。
妙なところで意地っ張りで、妙なところで潔い。
そんなこいつを見ていたら、俺の中で成長したってのも笑って受け入れられた。
ああ、まったく……俺はこいつの何を知った上で、あんなに嫌ってたのか。
こいつは確かにチチオヤだった存在と、その他の月の家系の人物を殺した。
けれどもそれは、俺から言わせてもらえば『正当防衛』に他ならない。
事実、俺は彼らに殺されそうになったのだ。
考え方を変えれば、こいつは汚れ役を被ったということになる。
既に『人殺し』を自分の中の戒めとして受け取っている俺にとって、
目の前の死神は……もう『恐怖』ではなかったのだ。
彰利 「……で、何か俺に用があって創造を受け入れたんじゃないのか?」
レオ 「……ほざけ。腑抜けた貴様に、
愚痴のひとつでもこぼしてやろうと思ったまでのことだ。
宿主がそんな調子では困るのだ。俺の品位までもが疑われる」
彰利 「品位ね……よく言うよ。既に精神しか残ってないくせに」
レオ 「阿呆が。ここが創造の世界だということを忘れたか。
ここで俺が強くイメージを働かせれば、どうなると思う」
彰利 「うんにゃ、お前はそれをしないよ。俺はお前でお前は俺。だから解る。
ここで『肉体』なんてものを出したら精神崩壊にしか繋がらない」
レオ 「………」
彰利 「……お前さ、不器用だよな。ほんと俺にそっくりだ。
誰かとぶつかることでしか、『自分』を表現出来なかったんだろ」
レオ 「……黙れ宿主」
言われるまでもない、と言うかのようにフンと息を漏らすレオ。
彰利 「強者と戦えば戦うほど、自分としての在り方が実感できる。
……俺だってそうだったんだ、深淵に存在したお前がそう思わないわけがない」
レオ 「黙れ」
彰利 「───なぁ、提案があるんだ。聞いてくれないか」
レオ 「……チッ……貴様、大概にしろ。提案があるのは俺も同じだ。
貴様は喋るな、俺が言う」
彰利 「………」
その言葉を聞いて、俺はただヤレヤレと格好で示した。
レオ 「俺と融合しろ、弦月彰利。そして、ただ友を守る修羅として在れ。
それが『俺達』の生き方だ。
……まったくなんて邪魔な思考を糧にさせるんだ貴様は。
貴様の所為だぞ、誇り高き死神である俺までもが『友がどうの』と……」
彰利 「仕方ないさ。俺にとっての生き甲斐は『晦悠介』だった。
全てに否定される永い永い歴史の中で、
ただひとりあいつだけが……変わらずに俺を見てくれた。
それを思っちまうのは仕方ないことだろ?
そして……お前もそれを成長の糧に生きてきた。
だったらそれを否定する理由なんてないじゃないか。
死神で結構。誇り高くて結構。
……けどな、どれだけそいつが偉くても手に入らないものだってある。
生涯を賭けてでも守りたいって思った存在のために、また生きる……。
そんな人生があってもいいんじゃないかって思えるんだ」
レオ 「ああいい、貴様の御託はうんざりだ。俺は『癒合しろ』と言った筈だぞ。
貴様の道徳を聞きたいと言った覚えなど無ければ言うつもりもない。
……そんな道徳は貴様の中で成長すれば嫌でも思考に残る」
彰利 「……それもそうだな。───んじゃあ」
レオ 「……ああ。我が死神の力、貴様にくれてやる。
誓ってやろう、我は貴様に危害を及ぼすことは無い。
貴様とともに在り、貴様とともに守るべきもののために生きることを誓う。
……俺が貴様に潜ったその後、月癒力を使え。
融合をより完璧なものにすれば、あの骨の力とも完全に繋がるだろう。
貴様の感情とやらも落ち着く。
残りカスのような力で融合をするからこんなことになる」
彰利 「説教すんなよ馬鹿。勝手に融合しやがったのは南無の野郎だ。
文句があるならあいつに言いやがれ」
レオ 「無論そのつもりだ。もっとも、融合してしまえばそんなことは関係ないがな」
レオはもう一度フンッと言うと、俺の体の中に沈みこんでいった。
俺はそれを最後まで見届けてから、ゆっくりと月癒力:融合を発動させた。
深く、より深く融合するために。
するとどうだろう、先ほどまであれほど波立っていた感情が落ち着き、
心無しか不安定だった気持ちも纏まった気がした。
声 『言うまでもないが、貴様はこれで子孫を残すことは出来なくなった』
彰利 「ああ、解ってるよ。死神は子供を作れない。
異端の死神じゃない限り、子供は作れないって聞いてる。
確かに家系に住む死神は純粋な死神じゃないから異端だ。
でも俺の中にはもう南無っていう死神が居て、そこにお前が融合した。
……決定的だ。既に俺は人や神側じゃなく、完璧に死神側の存在だ。
それも、純粋な死神よりも濃度の濃い死神。……解ってて受け入れたことだ。
俺はもう誰も好きにならないって決めたんだ、
子供が作れるかどうかなんて関係ない」
声 『それを聞いて安心した。じゃあ俺は寝るぞ。好きな時に呼び掛けろ。
その鎌の名の下に、特別に力を貸してやる』
彰利 「偉そうに……素直に手助けしてやるとは言えないのかねぇ」
でも、まあいい。
俺は試しに鎌を出現させて、その形状に驚きを覚えた。
鎌の形が……変わっていたのだ。
声 『……名を呼べ。それが新たなその鎌の名となる。
貴様だけの鎌だ。南無のものでも、俺のものでもない』
彰利 「俺だけの……」
強く、その鎌を握ってみる。
するとそれに呼応するかのように、閉じていた鎌がパキィンッと開いた。
彰利 「……意思があるのか」
声 『当然だ。俺と貴様と南無、その三つの意思の下に自ら形状を変えた鎌だぞ。
意思が無ければ出来ぬ芸当だ』
彰利 「………ん。で、この鎌にはコピー機能もついてるのか?」
声 『無論だ。意思ある鎌に退化は無い』
彰利 「そか。それじゃ───」
人の身でありながら、己の鎌を持つ存在。
その存在に、かつては憧れた。
そして、それはきっと今も。
彰利 「……名付けよう。お前の名は───“無限を刻む真闇の魔人”。
俺とともに、無限を刻む共志()であれ」
……キィンッ。
鎌が小さな音を鳴らし、呼びかけに応えたような気がした。
声 『“無限を刻む”か。
“魔人”として生き、世界の終わりを見届けることを決めたか?』
彰利 「さぁね、どうだか。でもまあ……それもアリだよな」
小さく苦笑して、ゆっくりと歩き始めた。
誰が来ても構わない。
ただ俺は、親友と、その親友が大事にするものを守る存在となろう。
誰に理解されなくてもいい。
これが、俺の生き方なのだから。
声 《……早まった真似をしたな、検察官》
彰利 「ん……よぉリヴァっち。っつーか止めなかったキミが何を言うか」
声 《意思は尊重する。踏みとどまらなかったのはお前の意思だし、
それについてどうのこうのと言うつもりなんてない。
わたしはわたしの意志として『早まったな』と言っただけだ》
彰利 「相変わらず理屈屋さんねィェ〜。でも、そげなリヴァっちは嫌いじゃないよ」
声 《妙ちくりんなこと言ってないで構えろ。悠介がバグと遭遇した》
彰利 「───そか。方位は?」
声 《左を向いて一直線だ。
急げ、今の悠介はルドラの発動の所為で満足な創造が出来ない》
彰利 「ラーサー!!」
タンッと体を弾ませ、全力で草原を蹴った。
するとどうだろう。
今までの俺の脚力とは段違いの速度がそこにあった。
あまりの速さに次の足を出すタイミングを完全に逃しドゴシャベキボキゴガガガガ!!!
彰利 「魚影()ェエエーーーーーッ!!!!!」
……容赦なく転倒。
一回転では済まない、凄まじいほどのボリショイを体感してしまった。
彰利 「ウバラガガガガガガガガ……!!」
ところどころをしこたま打ち付けました。
これは痛いです……。
声 《検察官……解っていると思うが、ラグナロクは使うなよ。
レオと同化したとはいえ、お前が千年生きたことに変わりはない。
それどころか、レオの分の生命をも請け負ったことになる》
彰利 「状況が悪化してることくらい俺でも解るよ。
でもな、俺はそれを代償に手に入れた力で悠介を救えるなら本望なんだよ」
声 《……まったく、お前というヤツは……。死ぬのが怖くないのか?》
彰利 「親友のためならな。それ以外は怖いよ」
声 《反論を見せろばかっ!聞きたかったのはそんな言葉じゃない!》
彰利 「どう言おうが俺の勝手!親友を第一に考えることの何が悪か!!
ああ思い出したね俺は!子供の頃の純粋な心を!!
俺はなによりも悠介の未来が大事だ!それが友情!それが親友!!
俺が守りたいもののために死力を尽くしてなにが悪いかね!!
えぇーーーっ!!?文句があるなら返してみなさい!!」
声 《死力を尽くすのは勝手だ。ああ、それはいい。
だが検察官?お前が死んだら娘の聖はどうなる》
彰利 「え?守護霊になって守り続けるけど」
声 《………》
彰利 「もう言うことはなさそうですね?では俺は悠介を救いに行きます!
止めても無駄だぜ!?今の俺は
心にやさしく愛を抱きしめているキン肉マンよりも勇気リンリンですからね!」
声 「よく解らないぞ」
彰利 「それで構いません!」
そう言い放つと、今度は失敗しないように足を弾かせた。
その速度は既に神の領域であろう。
死神の域がこんなにも凄まじいものだったとは……ガスッ!
彰利 「ゲッ───お、おわぁああ〜〜〜〜〜っ!!!!!!」
ドゴシャバキベキドゴシャシャシャーーーーッ!!!!
彰利 「ブゲベボゲゲゲオゲゲゲゲ!!!!」
お蔭でまた、盛大に転倒してしまいましたとさ……。
嗚呼……めでたくねぇなぁチクショウ。
彰利 「くそ……こりゃあ馴れるのに時間が必要だぞ……」
足をパンパンと叩き、シュバッと起き上がった。
……感覚が鈍いとかじゃないんだよな。
ただ、肉体の基本運動値が人間のソレ……まあその、
月の家系のモノを超越しちまってるのだ。
だから思考で考えるよりも先に体が動くというか……いや違うな。
思ったことが刹那に行動に移されるって言った方がいいな。
つまり神経伝達が究極に速いし、それについてこれるほどの身体能力が今の俺にはある。
つまりはそういうこと。
彰利 「だからって泣き言が許される状況じゃないけどね。
うっし、いっちょ気合入れてくかぁっ!!」
その場でトントンと軽いジャンプをしてから、
ただひたすらに走ることのみに意識を集中させる。
彰利 「───GO!!」
バシュンッ───!!
遠くで黄昏の草原の草が散った。
それだけ速度が速く、さっきまで立っていた場所が既に解らなくなった。
───それから悠介を見つけたのは、ものの数秒も経たない内だった。
つまり速すぎ。
しかし、遠くに見える悠介が置かれている状況が瞬時に理解できるってのも……
いやいや、死神ってスゲーわい。
……さて、それはそれとして悠介さんですが。
どうやらかなりの苦戦を強いられている模様です。
バグの正体は───悠介のシャドウだ。
ご丁寧に創造の理力を使ってやがる……しかも黄昏モード。
悠介の方は槍を避けるので精一杯だ。
───さあどうする?
死神の力を得たからといって、俺がラグナロクに対抗できる保障なんてものは一切無い。
だが悠介を命に代えても守るという意思はある。
だったら俺はどうするべきだ?
……そんなの決まってる。
こうするまでだ。
彰利 「呼応せよ汝!“無限を刻む真闇の魔人()”」
鎌を出現させる。
そしてイメージをする。
彰利 「出来ねぇなんて泣き言は聞かねぇぞ……!
その黄昏を映し出せ!“黄昏を抱く創造の世界()”!!」
悠介 「っ───彰利!?」
声 《検察官!?よせ!死にたいのか!!『いつかを思え』と言っただろう!!》
彰利 「リヴァっち───『いつか』って『今』さ!!」
今、力を持て余しすぎている俺がシャドウとぶつかったところで、
自滅するか悠介を巻き込むか、だ。
そんな二択を俺は認めないし、実行する気なんて微塵にもない。
だったら───これしかねぇだろうが。
彰利 「グッ───!」
眩暈。
そして、割れるような頭痛と吐き気。
瞬時に意識を閉ざしかけるが、俺は踏みとどまった。
その鎌の先にある、小さいけど確かな黄昏を見たから。
彰利 「俺は……馬鹿だから……。こんな不器用な方法しか思いつかねぇ……。
けどな……!平穏を邪魔しやがる馬鹿野郎を消すのに、
立派な方法を考える時間なんて───必要じゃねぇんだよ!!」
イメージが溢れては崩れ、固まっては砕けてゆく。
けど、そんな中───ふと誰かが背中を押してくれた気がした。
声 『戸惑うな。友を守ることだけを考えろ』
───それは、レオの声だった。
それがおかしくて笑った瞬間、
俺の中に少なからずあったであろう死への恐怖は希望へと代わり───
彰利 「黄昏より出でよ───“創土を司る姿無き槍()”」
ふと気づけば俺はその言葉を呟いていた。
小さな黄昏からは何も出ない。
だが、それは確かに存在していたのだろう。
───ドパァンッ!!
シャドウ「ギッ!?」
見えない何かはシャドウを貫き、
目に見えぬものに貫かれたシャドウは首を傾げたまま草原に倒れた。
悠介 「っ……梃子摺らせ……やがって……!これで───終わりだっ!!」
バガァンッ!!
意識が途切れるその瞬間に、
拳を落とした悠介の目の前で、静かに散ってゆくをバグを見た。
それを見届けたからだろうか。
俺は心底安心して、やがてゆっくりと……意識を消していった。
おそらく、二度と目覚めないであろう深い眠りに。
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