───UnlimitedBlackOrder-No.10ドラゴンスレイヤー英雄伝説───
【ケース26:未来悠介/神々の黄昏】
悠介 「って……お、おい……?どうした、落ち着け……」
突然わんわんと泣き出したみさおを、飛竜に跨りながら宥めた。
男 「ド、ドラゴンナイト……!?んな馬鹿な……実在するなんて……!」
その横で驚愕している男を確認。
よし、誰だこいつ。さっぱり解らん。
悠介 「あ……もしかしてこの飛竜が怖かったのか?
大丈夫だぞ?こいつは俺の味方だ……───困ったことに、本当に俺だけの」
そう……困ったことに、黄竜珠の意は黄竜王の証そのものだった。
珠を掲げ、竜を呼んでしまってから現れた飛竜は俺に忠誠を誓っちまい、今に至る。
とどのつまり、事実上……この空界の『東の王』は、現在『晦悠介』となっている。
飛竜の話じゃあそれぞれの方角の竜王は自分の地にしか興味が無いらしく、
人が王になったからどうのとか言うつもりは無いらしい。
……正直、『東の王はお前だ』と飛竜に言われた時は、
あの黒竜王に目をつけられるのではと本気でビビったもんだ。
───ああ、えーと……補足すると、
それぞれの竜王の下には『飛竜』が付いて、
その飛竜自体には王の『色』は関係無いらしい。
黄竜の下に付く飛竜だからって黄色い飛竜ってことはない、ということだ。
ああ、あと黄竜珠は竜の声も聞こえるようにしてくれるらしい。
男 「黒輝のランクカードに……ドラゴンスレイヤーのランクネーム……!?
本物か……!?ドラゴンを倒したのか……!?」
悠介 「……俺は晦悠介だ。名も名乗らんやつに答えることなどない男だ覚えとけ」
男 「…………ち、地界人ッ!!?地界人がドラゴンを!?
あ、俺は七草霞流那。よろしく」
悠介 「……驚いたり平常になったり、忙しいな───って、ああそっか。
あんたがチャイルドエデンの番人のカルナ=ナナクサか」
カルナ「俺を知ってるのか?」
悠介 「ああ、リヴァイアに聞いた。
早速で悪いんだが『千年の寿命』のある場所を教えてくれないか?」
カルナ「───……リヴァイア=ゼロ=フォルグリムの知り合いか?
『千年の寿命』をどうするつもりだ」
悠介 「親友が死にかけてる。助けるためにどうしても必要なんだ、譲ってくれ」
カルナ「……それを証明できるものは?」
悠介 「疑り深いヤツだな」
カルナ「悪いとは思ってる。
けど、悪用しようと嘘をつきまくったヤツも腐るほど居たんだ、解ってくれ」
悠介 「………」
少し考える。
ああ、悩むことなんか無いんだが、証明できるものってのが無い。
どうしたものか───とか悩んでいると、遠くから光が放たれてきた。
カルナ「っ───またか!三発とも撃ってくるなんて馬鹿か!?」
悠介 「……ディルゼイル」
飛竜 『解っている、王よ』
ディルゼイル、という名の飛竜に呼びかけ、空に舞った。
カルナ「おいお前!あの光は───」
悠介 「知ってる。対人消滅魔導砲だろ?ディルゼイルから聞いてるよ。
……聞いてるからこそ、
こんな馬鹿げた方法で国を作ろうとする王国と敵対してんだよ。文句あるか」
カルナ「……!」
左手に手綱、右手には創造した槍。
口に光を溜めているディルゼイルとともに、俺も手にある槍を打突から投擲へ。
ディル「グォオッ……ゴワァアアォオオオオオォォォォォッ!!!!!」
ガボォッ───チュゥウウウウウウウウウウンッ!!!!
吐き出す光はシュバルドライン級。
いや───堕とされていた黄竜に比べればこちらが上だろう。
その圧縮された光は、飛翔してきた光をあっさりと掻き消してもなお突き進む。
───当然だ。
あの魔導砲がどれだけの威力を持っているとしても、所詮は『対人用兵器』。
我が身を誇りと謳い、その在り方のみで最強を誇るドラゴンの力が負ける訳が無い。
あの光を消すために必要なのが、
標的を一瞬にして消せるくらいの力ならば───
そんなもの、竜にしてみれば息を吸って吐く程度で十分なのだから。
悠介 「“戦闘開始()”!」
ディル『王よ。人と戦ったところでランクは上がらぬぞ』
悠介 「解ってるよ。でも人間相手に馬鹿できるなんて今くらいだろ?
楽しむことは全力で楽しむ!それが俺のポリシーだ!」
ディル『……王よ』
悠介 「なんだ?気に障ったか?」
ディル『いいや。実に同感だ───!!』
ゴオッ───!!
悠介 「ぐあっ!!……ぐっ……!!こ、こらっ!
急にスピード上げるなって言っただろ!?」
ディル『ならばしかと掴め!』
悠介 「無茶言うな、くそっ……!あ、いいかっ!?殺しはご法度だからなっ!?」
ディル『フッ───つくづく共感が持てる王だ!気に入ったぞ!!』
ヴオォオオオッ───!!!!
悠介 「ぐ、ぐおおおおおおっ!!!!だ、だだだからスピードを……ゲホッ!!」
シュパァンッ!!
悠介 「ぬおっ!?草がっ!草が掠っただけで頬が切れた!!時速何キロだよお前!!」
ディル『時速───?なんだそれは。
よく解らぬが───我ら竜族はその気になれば、
東の果てから西の果てまでを10分もあれば攻略できるぞ』
悠介 「速ッ!!?速すぎッ!!お前この世界の東から西が何キロあると思ってんだよ!」
ディル『知らぬ!!』
悠介 「即答かよ!」
なんにせよ俺とディルゼイルは流星……ああ、うん……
他者が見かければ、それは本当に流星のようなものだったんだろうよ……。
だって一瞬にしてひとつの王国の上空まで来てしまったのだから。
民1 「……!?」
民2 「……!?……!!」
飛竜に乗る男(まあ俺なんだが)を見て、王国の民が騒いでる。
悠介 「フッ……民の視線が痛ぇ痛ぇ」
ディル『何を言っているのだ王よ』
悠介 「いや……一度は言ってみたかったんだ」
シュッ───ボヂュウンッ!!
ディル『む……』
ふざけながらも、放たれた魔術を槍で潰すのを忘れない。
その行為に感心したのか、ディルゼイルが声を漏らした。
ディル『王よ。お前は油断をしているようでしていないのだな』
悠介 「ああ……まあいろいろあってね。
油断すると酷い目に合うって事実を、痛いくらいに味わったから」
ディル『そうか。それで───これからどうするのだ?』
悠介 「王様ってヤツにチャイルドエデンから手を引け、って……説得したいところだが」
ディル『無駄だろうな。
人間の全てが王のような理解ある人間ならばどうにでもなっただろうが』
悠介 「……お前さ、何気に俺のこと『単純』って認識してないか?」
ディル『直情。真っ直ぐに前も見ている輩は好感が持てる。
そして王よ、お前は我が思考と似通ったものを持っている。実にいい』
悠介 「………」
喜んでいいのか解らん。
悠介 「……あー……少し降りてくれ」
ディル『心得た』
バサッ───バサッ……!!
ヒィンッ、ドガチュチュチュチュゥウウウン!!!!
悠介 「───はぁ……たわけ」
少し降りた途端に、王国から魔術の嵐が飛翔する。
ヒュッ……ボガシャシャシャシャシャァアンッ!!!!
俺はそれを冷静に突き連ね、全ての光を殺していった。
ディル『……感心に値する槍さばきだ。人間のそれを超越している』
悠介 「……まあ一応、創造者と超越者を兼ねているもんで」
それよりも戦斧石の効果が一番役立ってるんだが。
ディル『───来たぞ、気を引き締めろ』
悠介 「ああっ!」
見下ろす王国から、デカい物体が飛んできた───ていうか……グリフォン!?
俺相手でも怯まない───ってことは
悠介 「も、もしかして召喚獣とかそういうヤツか!?」
ディル『察しがいいな、実にいい』
悠介 「“───戦闘開始()”!!狂おしいほど“戦闘開始()”!!」
グリフォン!!しかも空中戦!!
竜に乗って空中で戦うなどということ、恐らくは生涯で今この瞬間のみ!!
嗚呼……今ならオリバと勇次郎を前にしたシコルスキーが猛っていた気持ちが解る……!!
召喚獣ト空中戦……コノ浪漫ヲ同時ニ味ワウ機会ナド、二度トナイト断言デキル!
悠介 「いっけぇディルゼイル!!全力でぶっコロがすぞ!!」
ディル「グォオオオッ!!!」
ディルゼイルが咆哮を放ち、俺の高揚を受け止めるかのように空を飛翔する。
その先には一直線に俺へと突っ込んでくるグリフォン───!
悠介 「空気を捻り、貫き通せ!!“螺旋は在りしを突き穿つ()”!!」
手にしたロンギヌスにイメージを上乗せし、グリフォン目掛けて投擲する。
ロンギヌスは戦斧石の力を受け取って紅く輝き、一直線にグリフォンへと降下する!
グリフォン「コアァアアッ!!!」
だが、当たる───と思ったその一撃は、
予想を上回るグリフォンの飛翔にあっさりとかわされる。
悠介 「おっ───おぉお……」
素直に感心。
投擲したロンギヌスが王国の城の一部分を捻り穿っていったが、
こっちはそれどころじゃない。
平行に位置する場所まで飛んできたグリフォンを見据えながら、新たな槍を創り出す。
くはっ……たまんねぇ……!喜びで思考がとろけそうだ……!
やっぱりドラゴンナイトといえば空中戦、そして武器は槍だろう……!
ディル『王たる者が締まりの無い顔をするな。来るぞ』
悠介 「うぐっ……わ、解ってるっ!」
しゃあないだろう、憧れてたんだから。
乗馬もしたことがなかった俺が、飛竜に乗って、しかも召喚獣と戦ってるんだぞ?
緩んじまうものは、それこそ仕方ない。
グリフォン「シャウゥッ!!!!」
ヴァサッ───
グリフォンが、その大きな翼を広げる。
おかしなことは、その翼を下ろす方向が地面ではないこと。
悠介 「───!ディル!上ッ!」
ディル『いいぞっ、よくぞ気づいた!』
ディルゼイルが飛翼をはためかせ、一気に今より高く飛翔する。
その下を、グリフォンが放った何枚もの翼の羽が飛んでゆく。
悠介 「漫画とかで読んだことがあったにはあったが……
実際にやられるとは思わなかった」
ディル『ボーッとするな、戦闘中だぞ』
悠介 「応ッ!!」
槍を構え、手綱をクンと引く。
それを待っていたかのようにディルゼイルは急降下し、
俺は羽を放った状態から立ち直っていないグリフォンの眉間目掛けて槍を突き出す!
悠介 「“突き穿つ()”!!!」
乗せるイメージは衝撃。
かつてのシュバルドラインの皮膚の硬さも踏まえ、
たとえ眉間で受け止められたとしても、衝撃が内部を破壊するイメージ……!
グリフォン「コアッ!」
ガヂィンッ!!
だが目の前のそいつは眉間で受けるどころか、その強靭なクチバシで槍を受け止めた。
その力は凄まじく、突き出した筈の槍がそれ以上は進まない。
ディル『鳥の使役獣相手にクチバシの傍を狙うのは感心せんぞ、王よ。
否───どのような生き物にせよ、
顎よりも破壊的かつ単純な力を込められる場所などあるまい』
悠介 「っ……!!く、はっ……!確かにとんでもない力だ……!
イメージごと噛み砕かれそうだ───……っ……けどなぁっ……!!」
この槍にはもうイメージを存分に込めてある。
あとは───唱えればいい。そのスイッチを。
悠介 「“衝撃()”」
───ギンッ!!
グリフォン「クオッ!?」
槍が紅蓮に輝く。
その槍に込めた衝撃のイメージと、戦斧石の力が鬩ぎ合い───やがて放たれる!!!
グリフォン「クォオオオッ!!!!」
その輝きに何を感じたのか。
グリフォンは槍を噛み挟んだまま叫び───ジョゴォンッ!!
槍の先から放たれた紅蓮の衝撃の前に、頭部を砕かれて絶命に至った。
悠介 「───よし、イカレた王様の前までまっしぐらだ」
ディル『解っている、王よ』
頭部が無いグリフォンが塵に還る頃、
ディルゼイルは大きく旋回するように羽ばたいたのち───
やがて落下するように王国へと風を切った。
ディル『振り落とされるなよ』
悠介 「言われるまでもっ!」
その速度はハンパじゃない。
普通に自分が落下する方がまだ遅いくらいだ。
ディル『───!王よ、塔の頂上を見ろ』
悠介 「塔……?───人が居るな」
ディル『ああ、ヤツが空界に住まう三人の至高魔導術師の一、ルーゼンだ。
先のグリフォンもヤツが召喚したものだろう』
悠介 「あいつが……」
その存在は、しっかりとディルゼイルに跨る俺を見据え、笑ったような気がした。
悠介 「───ディルゼイル、止まってくれ」
ディル『む───?』
ゴォッ……バサァッ!!
落下する勢いを翼の羽ばたきで止め、ディルゼイルが止まる。
俺は塔の上に居るその存在を黙って見つめ、塔の人間もそれに習うように俺を見つめた。
悠介 「攻撃はするな!話がしたい!!」
ルーゼン「………」
ルーゼンは不気味に笑んだまま、言葉を返す様子を見せない。
……まいったな、もしかしてイカレ系の魔術師か?
悠介 「今すぐチャイルドエデンへの干渉をやめろ!
あそこは人ひとりが所有権がどうのとか言っていい場所じゃない!!」
ルーゼン「…………、……」
悠介 「───……?」
ルーゼンはやはり返事をしない。
だが───その口が、小さく動いていることに気づいた───次の瞬間。
キュバァンッ!!
悠介 「なっ───」
ディル『ぬうっ───!?』
塔の上空、その何もなかった虚空に黒と紫を混ぜたような、巨大な穴が出現した。
ルーゼン「……答えを聞かせてあげましょう。───ええ、当然ノーね」
巨大な混沌の渦が蠢くように、巨大な穴からは予想外のものが吐き出された。
それは───巨大な、銀色の狼だった。
ルーゼン 「さあ、私の可愛いフェンリルよ。そこのオモチャで存分にお遊びなさい」
フェンリル「フオォオオオオオオオオオオオォォォンンッ!!!!」
巨大な狼は巨大な塔にようやく乗れるくらいの馬鹿デカさ。
その大きさといったら、狼のくせにシュバルドラインくらいもあった。
悠介 「……なぁディルゼイル……。俺、デカいモンスターに縁でもあるのかな……」
ディル『知らぬがな、呆けている暇なぞないぞ』
悠介 「ああもうっ───!!」
こうなったら最初から全力。
すぐにラグナロクを創造して、なんとかするしかない。
ルーゼン「もし謝るなら私の下僕にしてあげてもよくてよ?
ドラゴンナイトなんて、普通では有り得ないクラスだからねぇ」
悠介 「ハッ───冗談」
ルーゼン「……そう。気が変わったらいつでも言いなさい?
氷付けでも可愛がってあげるから」
キュバァッ!!
悠介 「ディルッ!右だっ!」
ディル『解っている』
シャァアンッ───バキパキ、バキンッ……!!
フェンリルの口から放たれたその銀色の光は空気さえも凍らせたのか、
何も無い虚空に氷結の痕を残した。
それもすぐに重力に誘われて落下する。
悠介 「疾()───!!」
白銀の息吹を吐いたフェンリルに向けて槍を放つ。
様子見、ということもあるが、全力で投げたことには変わりない。
だが───戦斧石の赤い光を帯びた槍の飛翔を前にしても、
フェンリルは避けようとはしなかった。
悠介 (───そうか!足場が無いから動けないのか───!)
ただ俺は、そう単純に思った。
だが違う。
その銀色の獣は、元から『避ける必要』などなかったのだ。
ゾフィィイインッ!!
槍がフェンリルの体に突き刺さる。
悠介 「───……?なっ……」
否。フェンリルの体毛に突き刺さった槍はその実、刺さってなどいない。
皮膚が槍を通さないのだ。
フェンリル「クォオオゥウ……」
悠介 「っ……!!眠いかよ、氷狼……!!」
貫こうと突進を続ける槍を身に受けてなお、目の前の巨体は欠伸をしやがった。
だが俺が新たな槍を創造すると、
その隙を待っていたかのように白銀の息吹を吐き出してきた。
悠介 「ディルッ!」
ディル『解っている』
ディルゼイルはそれを避け、その状況はもう一度俺に攻撃を機会を齎した。
悠介 「“螺旋は在りしを突き穿つ()”!!」
創造した槍にイメージを乗せて投擲する。
狙うはその瞳。
凄まじい速度で空気を捻りながら突き進む槍は、
確かに一直線にフェンリルの目を目指して飛んでいた。
ギキィイイイイインッ!!!!
───だが、その槍が虚空で火花を散らす。
悠介 「───!!あれは……」
ディル『ああ……王よ、気づいたか』
螺旋の槍が虚空で火花を散らす。
こんなことが普通に起こり得ることは有り得ない。
だがその火花が、熱くなっていた思考回路を落ち着かせてくれた。
……そう、槍は元より皮膚になど届いていなかった。
虚空に展開された小さな、だが想像を絶する硬さの氷によって受け止められていたのだ。
ルーゼン「あらあらもう気づかれたのかしら?
けど気づいたところでどうにもなりませんわよ。
“絶氷なる繋がりの無い膜()”。これを破る術など無いのだから」
ルーゼンがクスクスと笑う。
つまり……フェンリルはあそこから動く必要も無ければ、
元より足場など必要じゃあなかった。
悠介 「動かなくてもいい、か……。
ルドラと対面したヤツもこんな心境だったんだろうな、くそ……!」
だったらこちらも本気の本気を出すべきだ───
っていうか最初からそのつもりだったってのに、
なんだってまだラグナロクも展開してねぇんだ俺はっ……!!
ルーゼン 「さ、遊んでおあげフェンリル。
追い詰められればきっと、ペットにだってなってくれるわ」
フェンリル「ォオオオオオオオンッ!!!!」
白銀の息吹きが放たれる。
一度や二度じゃない───矢継ぎ早にだ。
悠介 「ディル、回避は任せたぞ!」
ディル『承知───!!』
それを、高速で飛翔することで避ける。
避け続ける俺達の姿はよほどに滑稽なのか、
さっきからルーゼンは声高らかに笑ってやがる。
悠介 「このっ───ブラストッ!」
その笑いが気に入らなかった。
瞬時に弾けさせたブラストのイメージが具現化され、ルーゼンへと飛翔する。
ルーゼン「フフン?ぼうや、私と遊びたいの?」
それを。
ルーゼンは微笑とともに人差し指ひとつで消して見せやがった。
ルーゼン「あはははははは!!!!こんな力じゃ無理よ無理!
千年経ったところで相手にもならないわ!!」
悠介 「っ……!!」
魔力がどうのなんて俺には解らない。
だが、視界の先に居るそいつの魔力は───この世界でもトップクラス中のトップクラス。
あいつの自身はそういう自己への絶対的自信からくるものだと理解できる。
───ガクンッ!!
ディル『グゥウウウウッ!!!』
悠介 「ディルッ!?」
ディルゼイルの体が傾く。
見れば、右翼の外側が白く凍りついていた。
ディル『王よ!次にすることは解るな!?』
悠介 「───……!ああっ!やれっ!」
落下してゆくディルと俺は、次の行動へと移る。
ディルは口から放つレーザーで己の飛翼を破壊し、俺がそれを───創造する!!
悠介 「“創造の理力”()!!」
キィッ……バサァアアッ!!!
瞬時に弾かれるイメージ。
刹那に出現した翼が風を受け止め、ディルゼイルはすぐに体勢を立て直す。
悠介 「違和感は!?」
ディル『案ずるな!王の下に就く者は王を信頼するものだ!』
つまりそれは。
信頼していなかったら、自分の体を誇りに思う竜族がよもや、
己の体の一部を作り物に変えるわけがないということ。
……悪くない。
いや、悪くないどころか最高にいい。
悠介 「ディルゼイル、これからは自分の意思で行動してくれ。
お前が俺なら、俺がお前なら同じことをするって信じてる」
ディル『案ずるなと言ったろう、王よ。お前が言わなければ私が言っていた』
飛翔する。
再び巨大な狼と対面し、その顔面目掛けて創造した槍を発射した。
ルーゼン「ふふっ、懲りないぼうや」
ルーゼンが笑う───が、これは攻撃を目的としたものじゃない。
悠介 「“塵と砕く()”!」
ビギッ、パガシャァアアンッ!!!!
ルーゼン「え───?」
氷の壁がある場所はさっきの投擲で理解した。
目に見えないのであれば、見えるように砂でも灰燼でもかけてやりゃあいい。
そしてそれが目眩ましにもなるのなら、それを一石二鳥と謳わぬ手は無い。
悠介 「染まれ───!!」
思考を灼熱させる。
心を思考と繋げ、思考は黄昏に変え。
思考は想像と化し、想像は創造へと変わり。
想像が無限の自由であるならば、それに続く創造こそが自由なる世界───!!
悠介 「“黄昏を抱く創造の世界()───”!!!」
噛み合わさる歯車。
瞬時、空の只中であった筈のその場が草原の幻視を創り、
その場に存在する意を、純粋なる『創造』へと創り変える。
ルーゼン「なっ───なに……!?な、なんなのこれは───まさか!
投擲した筈の槍を次々に取り出す矛盾の正体はそれ───!?」
悠介 「“超越せよ汝()”!!」
手応えは我が内にあり。
既に体験したことは深淵にあり、
その深淵に手が届きさえすれば叶えられぬものなど何もない。
それが創造。
無より虚像を創り、虚像を真実へと変える力。
悠介 「我は誘う!神の名、死神の名、果てに見える主の御名を!
剣は全てを切り裂き、槍はその剣さえも折り砕く!
故にその槍は全てを破壊し、抗える者を世には創世しまい───!
砕け!抗う風をも捻り穿ち、汝は全てを切り裂く神槍たれ!!
“魔剣を砕く主神の輝槍()”!!」
連ねる言葉が虚空に文字の連なりを創り、
やがて円を描く文字から極光を解き放った───!!
ガォオオオオオオオオンッ!!!!!
ルーゼン「くっ……創造者()……実在するなんて───!!」
眩い光を前に、そいつは驚愕の声を漏らした。
永い永い時の中、恐らくその驚愕は最高のものだっただろう。
ルーゼン 「───!防げない……フェンリル!
ダイヤモンドダストを解除なさい!攻撃をするのよ!!」
フェンリル「クォオオオンッ!!!」
───予想通り。
何故俺が槍を放つ際にフェンリルが攻撃を仕掛けなかったのか。
その理由がここにあった。
フェンリルはその絶対的なる防御のあまり、その膜を通してする攻撃の術がなかったのだ。
だから、攻撃をするのは俺の武器が無くなり、創造する瞬間のみだった。
だが今、その防御は相手自らが解除した。
これからようやく真剣勝負だ───!!
コァッ───ゴバァアアアアアアアアアッ!!!
悠介 「ッ───!!」
瞬時に放たれた白銀の息吹は重い。
ブチ当たった光と白銀が、その場に眩いくらいの光の塵を雪のように降らせる。
ったく……!地界じゃ恐らく一番の極光だろうに、
この空界じゃあまるで歯が立たないってのはどういうことだよ……!!
悠介 「“超越せよ()”……!!」
さらに深くイメージをし、纏まると片っ端から弾いてゆく。
深淵は既にせり上がり、想像と創造を結合させている。
ならば詠え、その、『人の詩』を───!
悠介 「ッ……“神槍、是総てを無限と穿つ()”!!!」
爆発的なイメージを極光に上乗せする。
それは確かな勝利の確信を一身に受け止め、確かに白銀の息吹を殺し───
悠介 「ブチ貫()けぇえええええっ!!!!!」
ガチュゥウウウウウンッ!!!!!
その勢いを忘れることもなく、ついにはフェンリルの身体に突き刺さった!!
ルーゼン「そんな、まさかっ!!くっ───“The Play of───()”」
ドチュゥンッ───バッガァアアアンッ!!!!
ルーゼン「きゃぁああっ!!?」
ディル 『下郎が!王への不意打ちなど、この私が許すと思うたか!!』
式を描こうとしたルーゼンの立つ塔の端を、ディルゼイルのレーザーが破壊する。
その威嚇たるや、人ならば逃げ出してしまうであろう絶対なる迫力だった。
悠介 「“重ねよ、重ねよ、重ねよ……()”」
イメージを重ねる。
それは、見る者が見ればシュバルドラインとの戦いを思い出させる光景だっただろう。
───だが。
フェンリル「ク───」
その銀色の獣が、確かに笑んだ。
その刹那に思い返す。
かつて、神々の黄昏()にてオーディンが放った神槍は……
いったい何を、唯一貫けなかったのか───!
悠介 「ディル───」
ディル『任せると言っただろう!口出しは無用だ!』
全ての言葉を放つよりも早く、ディルゼイルはより上空に飛翔していた。
その間に、自己の中にある最大の光はフェンリルによって砕かれ、
その目が俺とディルゼイルを見据えた。
悠介 「っ……!!」
そう……グラムを砕いたグングニルは、唯一一匹の獣を貫けなかった。
獣の名はフェンリル。
巨大にして俊敏なる、銀色の氷狼だ───!
どうする……!?グングニルが効かないとなると、どうすれば……
フェンリル「フォオオオオオォォォーーーーンッ!!!!」
遠吠えのように繰り出される獣の咆哮。
シュバルドラインのように空気を震わせるまでには至らないが、
それはそんなことのために吐かれたものではなかった。
悠介 「───っ……」
辺りの一面の温度が急激に激減した。
手が一気に痺れるように冷え、槍を創造した途端に落としてしまった。
ルーゼン「あ───あ、あはっ、あはははははっ!!!
驚かせてくれるぼうやだわ……───でも、そこまでのようね」
聞こえる笑いは何度目か。
いい加減耳障りでしかないその声に、脳内に撃鉄の音が高鳴った。
がぢん、というその音が思考に残る。
ああ、まったく……。
なんだって高みの見物している厚化粧オバンに笑われっぱなしなんだ俺は。
苛立ちを覚える前に出来ることがあるだろう?
見たもの、感じたものならそれを超越すればいいだけのことだ。
───だったら。
悠介 「“───超越せよ汝()”」
パキ、ン……
ルーゼン「え……?」
だったら超越しろ。
そして、口煩い場違いな馬鹿は早々に黙らせろ。
悠介 「“絶氷なる繋がりの無い膜()”」
ルーゼン「っ───!?」
驚愕は刹那か、式を描こうと思った瞬間にはもう、そいつは氷像と化していた。
殺しのイメージは無い……溶かせば元気に喚くだろう。
ああ、凍傷くらいは大目に見てもらうとしようか、人の必死を笑った代償だ。
悠介 「じゃ───行くぜ、ディルゼイル」
ディル『言われるまでもない』
意識をより深く染め上げ、その手に槍を創造する。
手にある槍はゲイボルグ。
『その時』まで熱を放ち続けるというイメージを付加させた魔槍だ。
さらに俺はイメージを弾かせ、ディルゼイルに黄金の膜を貼った。
ディル『……王、これはなんだ』
悠介 「すぐに解る。いいか、これから無茶なことを言うが、俺を信じてくれ」
ディル『二言を唱えさせるな。この身は既に忠誠で出来ている』
悠介 「───OK。俺も心の底から信頼してる」
───……準備は整った。
あとは度胸とリヴァイアを信じるだけだ。
悠介 「“───戦闘、開始()”!!」
ディル『応ッ!!』
ゴォウンッ!!
ディルゼイルは俺の言葉を合図に、天高く舞い上がった。
その姿を見据える銀色の獣から、俺は目を逸らさない。
ディル『いくぞ───覚悟はいいな』
悠介 「覚悟なんてものはとっくの昔に出来てる!いくぞ!!」
雲を貫いてなお天空。
その頂から跳躍し、俺は氷狼目掛けて落下する。
それを追い、さらには追い抜く深い紫の流星───ディルゼイル。
俺はその姿を信頼し、ただ相手を穿つことのみイメージした。
───雲を抜け、見えてくる氷狼は己の真下。
槍を構え、ただ一点を貫くことをイメージする。
───その身体、恐らくはその者自体と例外以外を受け付けぬ身。
紫色の流星は勢いを更に加速させ、銀色の獣へと落ちてゆく。
───手にある槍は例外にあらず。ならば───
流星が獣へと落下する前。
獣は白銀の息吹を放った。
が、流星は落下する王を信じてか、より加速するのみだった。
悠介 「頼むぜリヴァイア───!」
俺はその白銀の息吹をしかと見据え、手袋の甲にあるスイッチを押した。
すると手の平にある宝玉が、上空へと放たれた白銀の全てを吸い上げた!
フェンリル「グッ───!?」
銀色の狼の顔に、初めて驚愕の顔が現れた。
だがそれも実に刹那的。
その口目掛けて、黄金の膜を帯びた流星が降り注ぐ───!!
フェンリル「ルォオオオオッ!!!!!」
だがその存在とて馬鹿ではない。
白銀の息吹を吐き、開いたままの口を狙われれば閉じるのみ。
そう───噛み砕いてしまえばいい。
そして確かにその顎()は、流星を噛み砕こうと閉ざされた。
───だが。砕けたのは狼の鋭い牙だった。
黄金の膜は、恐らく下手な魔槍よりも強固だったであろうその歯を、容易く砕いてみせた。
その黄金の膜こそ“氷狼砕く魔法の具足()”。
オーディンの息子ヴィーダルが、フェンリルを殺すためのみに用いた具足。
そのイメージを載せた黄金の膜を、ディルゼイルに纏わせたのだ。
目の前に存在する狼が、真実神槍さえも弾く氷狼・フェンリルだとするならば、
これ以上に効果のあるイメージなどは存在しない───!
悠介 「っ───あとは!」
吸収した白銀の息吹を解放する。
その先にはゲイボルグ。
白銀の息吹をその身に浴びせることを条件に、その槍からは熱が消えてゆく。
元よりそうイメージを付加させたのだ。
空気をも凍らせるその息吹を受けたゲイボルグは、光を乱反射させる氷となる。
それを両の手でしかと掴み、真下に存在する巨大な獣を見据える。
悠介 「これでこの槍は『お前の出した氷』を纏った例外だ───!!」
落下のスピードは緩まない。
歯を砕き、その勢いとともに喉を貫通したディルゼイルを追うように、
俺はその氷狼の眉間へと落下した。
悠介&ディル『“竜槍は対を成す流星()”!!!!』
ドッガァアアアアッ!!!!
フェンリル「ギッ───グゥウウォオオオオオォォォォッ!!!!!」
ゲイボルグがフェンリルの眉間に深々と突き刺さる。
その穿つ勢いは凄まじく、対象の脳を破壊してなお勢いを止めない。
やがて槍が一気に握った部分まで突き刺さると、その瞬間に氷狼は塵と化した。
悠介 「っ───う、あ───」
当然、足場が塵と化した俺は落下する。
信じられないくらいの高さからの落下に、俺の足は既にズタズタだ。
───だが、それを受け止める姿があった。
ディル『……まったく、無茶をする王だ』
悠介 「ディル……」
その姿に安堵する。
が、それも束の間。
思い出したように襲い掛かる激痛に、すぐに身体の修復を開始した。
───……。
……。
悠介 「…………で、こいつどうしようか」
氷付けのルーゼンの頭を、木の棒でコツコツと叩く。
手でやらないのは、やると手の皮が張り付いて裂けるからだ。
ダイヤモンドダスト……創造しておいてなんだけど、
ほら……俺さ、創造する時に既存の超越をしただろ?
だからちょっとばかし心配といえば心配なわけで……。
ディル『炎であぶってみせようか?』
悠介 「いや、多分一瞬にして溶かさないと危ないと思う」
ていうか……うん、あれでいこう。
悠介 「創造物の効力を破壊する針が出ます」
ポムッ。
ディル『針?』
悠介 「そ、針だ。や〜、一度でいいから石化した人を金の針で復活させたかったんだ」
氷結だけど。
悠介 「まあそんなわけで───あたぁっ!」
カツンッ───パキィンッ!!
勢いよく突き立てた針はあっさりと氷を貫き、
身体全体の氷を完全に砕いた───ブスッ!
ルーゼン「キャーーーッ!!!!」
ぶしーーーっ!!!
悠介 「おわ〜〜〜っ」
だが勢いが強かったため、針はルーゼンの鼻の頭に突き刺さった。
おお、勢いよく血が出とうぜ。
ディル『……わざとだな?』
悠介 「もちろんだ」
俺こいつ嫌いだし。
ルーゼン「はっ───あ、あ……?フェ、フェンリルは……!?」
悠介 「コロがしたぞ」
ルーゼン「っ───!?う、うそ……!!」
悠介 「……どうでもいいけど、『コロがす』で通じてるのが凄いな」
ディル 『よく解らんな』
うん、俺もよく解らないし。
悠介 「で、どうする?チャイルドエデンから手を引かないなら、
何度だって付き合うぞ」
ルーゼン「っ……じょ、冗談言わないで……!
フェンリルを倒す相手じゃあ、なにやったって無駄じゃない……!」
悠介 「じゃ、手を引くな?」
ルーゼン「……いいわ、手を引く。ただし───ひとつだけ条件があるわ……」
悠介 「条件?……なんだよ」
ルーゼンはキッと俺を見ると、手をバッと前に突き出した。
ルーゼン「あっ───握手なさい!」
悠介 「───……へ?」
ルーゼン「握手よ握手!それで手を引くと、このわたしが言ってるのよ!?早くなさい!」
悠介 「………」
言われるまま、どこか気の抜けた状態で握手をした。
すると、ほう……と息を漏らすルーゼン。
ルーゼン「全力を出して負けるなんてどれくらいぶりかしら……。
それも、幼い頃から憧れていた創造者()に……。
しかもその創造者がドラゴンナイトだなんて、夢のような状況よ……」
悠介 「………」
なんだろう。
目の前のルーゼンから、得体の知れない……いや。
『俺のよく知る波動』が流れてきている。
これは……これは、まさか───!!
ルーゼン「ああっ!私あなたに惚れましたわ!もう愛してる!結婚して!!」
悠介 「ぐわゎわぁあああああああっ!!!!!」
予感的中。
目の前に、女版彰利が居た。
ルーゼン「まずは接吻しましょ!?ね!?ぶっちゅしましょ!さ、ささささぁ!!」
当然俺は抱きつこうとするその手を熟練の技でひらりと避け───
ルーゼン「あらっ───?」
ここが塔の上だということを忘れていたルーゼンは、その勢いとともに───落下。
ルーゼン「あぁああああああああああっ!!!!!!」
……えーとまあ、その……なんだ?
ディル『助けなくて……ああ、いいな。放っておくとしよう』
悠介 「そうしてくれ……。あいつが真実彰利と同じ属性のやつなら、
あれくらいじゃ絶対に死なない」
ディル『そ、そうなのか。逞しいことだな』
まったくだ。
悠介 「じゃ、戻るか。みさおと聖を安心させてやりたい」
ディル『国王には会わぬのか?』
悠介 「ああ。なんていうか戦ってみてなんとなく、って言えばいいのかな。
この国動かしてたの、国王でも王子でもなくて……ルーゼンだよ」
ディル『そうなのか。鋭い観察眼を持っているな、王よ』
悠介 「まあ……って、ディルゼイルさぁ、俺のこと『王よ』って呼ぶの、やめない?」
ディル『王……ならばお前もディルゼイルと呼ぶのはよせ。
戦闘中の通り、ディルで構わない』
悠介 「………」
ディル『………』
悠介 「想像してみたけど、
お前に『悠介』だの『晦』だの呼ばれるのって違和感しか無い」
ディル『そうか?私は別に構わんが』
悠介 「ヘンな感じだけど、『王よ』でいいや。
お前のことは───ああ、ディルって呼ばさせてもらう」
ディル『ああ。物解りのいい王で助かるぞ』
悠介 「……じゃ、戻るか」
ディル『承知』
ディルゼイルの背に乗ると、その手綱を握って飛翔を促した。
で───チャイルドエデンに戻るためのその速度が想像を絶していたことは……
もう俺の中では言うまでも無い事実になっていた……。
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