───UnlimitedBlackOrder-No.11悩み多きモミアゲ苦労人───
【ケース27:未来悠介(再)/兵士長ってのは大体なにもしない】
バサァッ───ストン。
悠介 「……ふう。サンキュ、ディル」
ディル『構わん』
チャイルドエデンの城壁の上に降りると、みさおと聖の姿を───ピキィイインッ!!
悠介 「うおっ!?」
降りて一息すると、いきなり耳を劈く音。
剣と剣を高速で擦り合わせたような音が頭に響く。
カルナ「誰だ───って、アンタか」
悠介 「あ」
瞬時に現れたのは七草とかいう男。
悠介 「王国の馬鹿は黙らせてきた。で───みさおと聖は?」
カルナ「………」
悠介 「おい?」
カルナ「中に居る。けど、子供以外を中に入れるわけにはいかない。
───返す言葉は予想出来るから言うけど、
俺が中に居るのは俺がエデンの番人だからだ。
文句なんて腐るほどあると思う。でもこれはずっと昔からの決まりなんだ。
ここに入ることの出来る大人は番人だけだ」
悠介 「お前、歳は?」
カルナ「?……19だけど」
悠介 「………」
俺の中の年齢じゃあ子供なんだが。
20以下は子供だって認識してるからなぁ。
悠介 「どうしてもダメならそれでいい。ただ───千年の寿命だけはくれないか。
それがあれば助けられる命がある。
方法があるのにそれを捨てることなんて出来ない」
カルナ「………」
七草は少し俯いて、思考を始めたようだった。
けど何かに思い当たるように静かに顔をあげると、
カルナ「……王国は本当に攻撃をやめるのか?」
───と。そう訊いてきた。
当然だ。
今この場所を脅かすのは王国以外のなにものでもないのだろう。
悠介 「黙らせたのは王国───いや、ルーゼンなんだ。
あいつに干渉をやめるように言っておいた。それじゃあダメか?」
カルナ「───……ルーゼンを、黙らせた?」
悠介 「うん?ああ、そうだけど」
カルナ「……嘘をついても、ためにならないぞ。
ルーゼンは空界に住む人間の中じゃあ最強クラスだ。
あいつの出すフェンリルを怖れて、王国ですら文句も言えない」
悠介 「だから。そのフェンリルもコロがしてきた。安心していい」
カルナ「でたらめ言うな!人間がフェンリルを倒せるわけがないだろう!」
悠介 「………」
信じられないのは解る気もするが、
ふざけるんじゃなくて真面目に融通が利かないヤツはちょっと困りものだ。
……まあ、『コロがす』で通じるのはもう空界の伝統ってことにしておこう。
悠介 「どうすりゃ信じてもらえるのか───
って、召喚されたヤツにも落とすアイテムってのはあるのか?」
ふと思い立ち、バックパックに触れてアンテと唱えた。
すぐさまに出てくるバックパック……だが……えっと。
悠介 「……また随分と大きくなってないか……?」
一応開けてはみるが───うおう。
悠介 「氷狼の毛皮に……氷狼の牙。氷の結晶に……なんだこれ」
またしても珠みたいなものがあった。
それに隠れるようにもうひとつ。
その横にはグリフォンの羽。
悠介 「……なあ、これじゃあ証拠にならないか?
確かにどこかのモンスターをコロがして、
毛皮を剥いだだけって見えるかもしれないけど」
カルナ「………」
悠介 「七草?」
カルナ「……解った、信じる。
あ、いや……正直信じられないが……そのオーブがあるなら間違いない。
ルーゼンを黙らせたなら他の王国も手を出さないだろう。
結局、王国全部はルーゼンを怖がってたってこともあったわけだし。
しかし……地界人がオーブをねぇ……」
悠介 「……?オーブって……」
手にしたふたつの珠をシゲシゲと見る。
オーブ?なんのオーブだ?
ディル『王よ。それは召喚獣のオーブだ。グリフォンとフェンリルのものだな』
悠介 「え───しょ、召喚獣のオーブ!?これが!?」
ディル『ああ。通常、召喚獣はこの世界の狭間にある狭界()という世界に住んでいる。
魔導術師はそこから触媒を介して召喚獣を召喚するのだ。
だがそれはあくまで【呼び出してエサで釣っている状態】だ。
命令したことの全てを実行するわけでもなく、好き勝手に暴れる者も居る。
ルーゼンの場合、獣に効果のある媚薬のようなものを使用したのだろう』
悠介 「へえ……あ、じゃあこれはなんなんだ?
普通にその狭界って場所から呼び出せるなら───って、そっか。
纏めればこうだな?召喚獣は呼び出すだけでは自分のものにはならない。
従えるのは、呼び出した召喚獣を自分の手で倒して強さを知らしめた時。
で、倒すとこうやってオーブが手に入る───ってなにぃっ!!?」
自分で言ってて叫んだ……っていうか驚いた。
悠介 「え───じゃ、じゃあ俺、召喚獣に認められたってことか!?」
ディル『そうなるな。さすがは王だ、誇らしいぞ』
悠介 「………」
呆然。
なにをどう言えばいいのかも纏まらず、ただオーブをシゲシゲと見つめた。
カルナ「……ホウケてるところ悪いんだが。俺と話してたってこと忘れてないか?」
悠介 「え?ああすまん忘れてた」
カルナ「………」
おお、番人が頭に手ェ当てて溜め息吐いた。
カルナ「……ワイバーンと話せるんだな」
悠介 「ああ一応。シュバルドラインが持ってた黄竜珠のおかげだと思う」
カルナ「───……」
あ、固まった。
なんなんだこいつ。
カルナ「ちょ、ちょっと待て。じゃあなにか?
ちょっと前に向こうの方でシュバルドラインと戦ってたのって───」
悠介 「?……俺だけど」
カルナ「か、かかか勝ったのか……?」
悠介 「……あのな。勝たなきゃドラゴンスレイヤーもなにもないだろ……。
そりゃあ俺も驚いたけど、まぐれだったなんてことは言わない。
全力出して勝ったんだ、まぐれだなんて言ったらシュバルドラインに失礼だ」
カルナ「───……」
……また固まった。
大丈夫かこいつ……。
(注:無敵と言われたドラゴンに勝った『地界人』が目の前に居れば、
空界に住んで長い者ならば絶対にこうなると予測されます)
悠介 「まあいいや、本題に入ろう。この手袋をみさおか聖に渡してくれ。
干渉払いの手袋、だっけ。これ使わないと千年の寿命が持って帰れないらしい。
それと───ああ、あいつの好物は西瓜だったな」
好物を食べれば月操力も回復する。
紅花の好物が西瓜だったし、多分みさおもそうだろう。
聖は───彰利が作った料理、だったな。
特に好きなのがレタスチャーハンだった筈だ。
悠介 「瑞々()しい西瓜と、あっさりホカホカレタスチャーハンが出ます、と」
大き目の西瓜と、皿も一緒にイメージしたアツアツのレタスチャ−ハンを創造する。
彰利の料理は何度も食べたこと……というか、
喰わされたことがあるから今でも鮮明に覚えてる。
悔しいことに、未だあいつには料理で勝てる気がしない。
悠介 「これをみさおと聖に渡してくれ。
一応、レタスチャーハンには神力回復のイメージも流しておいたから」
カルナ「…………───お、お前……創造者か?」
悠介 「はぁ……あのな、本気で怒るぞ?
今必要なのは驚くことか、それとも弱ってる子供を助けることか、どっちだ」
カルナ「子供を助けることに決まってる」
ビッシィ!と、『子供』という言葉を聞いて真面目顔になる七草。
なるほど、よほどに子供が好きと見える。
……ロリコンとかじゃなくて。
悠介 「ああくそ……別に勘ぐりしたいわけでもないのに、
すぐロリコンだとか出てくる自分が嫌だ……」
それもこれもあの変態オカマホモコンの所為だ……。
あいつはあいつで、随分と俺の性格に影響を及ぼしてくれたよほんと……。
などと、少し落ち込み具合を見せたところで、七草が西瓜とチャーハンを受け取った。
悠介 「……じゃ、頼む。っと、これ忘れないでくれ。干渉払いの手袋だ」
ひょいっと西瓜の上に手袋を投げる。
が───それを見た七草は少し顔をしかめた。
悠介 「……おい、まさか『千年の寿命を持っていくのはだめだ』とか言わないよな?」
カルナ「人の命がかかってるんだろ、そんなこと言うか。
それに───目を見れば解る。信用できるヤツだ」
悠介 「じゃあその顔はなんなんだよ」
しかめっ面をしてる七草の目を見て返答を待つ。
が、待つまでもなく七草は開口した。
カルナ「この干渉払いじゃもうダメだ。宝玉が氷付けになって壊れてる」
悠介 「へ?」
言われてから手袋手に取って見つめる───と、確かに手の平の部分の宝玉が壊れてた。
……あれか、白銀の息吹。
確かになぁ、あんな強力なものを吸収すれば壊れもするよなぁ……。
どうしよう……戻ってリヴァイアに治してもらうか?───って……あ。
なんか今、トンデモナく嫌な予感が頭に……
悠介 「ま……待て待て待て、ちょっ……待てよ……!?」
いや、嫌な予感どころか実にヤバイ。
俺とみさおと聖、確かにこの空界に千年の寿命を取りに来た。
ああ、それは良しだ。
彰利を助けるためなんだ、当然だろう。
でも……『帰り』はどうなるんだ?
俺達にリヴァイアと交信する手立てなんて……無いぞ?
悠介 「………」
ギャア……。
知らず、そんな言葉が漏れた。
カルナ「……どうした?」
悠介 「あ、いや……」
よし落ち着こう……ていうか落ち着け。
リヴァイアのことだ、あとで連絡のひとつでも入れてくれるかもしれない。
……連絡って……どうやって?
悠介 「……はぁ〜〜〜ぁぁぁあ……」
責任を追及するばかりが正攻法じゃない。
どんなヤツにだって失敗例はあるってことじゃないか。
悪態つくなら誰にだって出来るんだ、それから学ぶことなんて腐るほどある。
悠介 「なぁ、この手袋……直せるか?」
カルナ「無茶言うな。干渉払いの式ってのは高度な式だぞ?
それに、その手袋自体が魔導錬金術じゃないと作れないものだ。
宝玉が壊れてるんじゃ、最初の工程から作り直さないと使えない」
ぐあ……!
悠介 「まいったな……リヴァイアが作ったものだから、
軽いものだとは思ってなかったとはいえ……」
地界に戻る術が無い上に、
知り合い中じゃあ魔導錬金術と魔導魔術を使えるヤツなんて───
悠介 「……………」
居た。
ていうかさっきまで会ってた。
しかも落ちた。
一応『知り合って』はいる。
悠介 「でも俺、もうあいつとは対面したくねぇぞ……」
頭を抱えるように落ち込んだ。
その様は、見る人が見れば状況に悩むクロマティ高校の前田くんに見えたことだろう。
……てんで嬉しくないどころか、
『幸薄いところとかそっくりYO』って彰利に言われそうなところがまた悲しい。
悠介 「………」
でもそれしか思い当たるものがないんだよなぁ……くそう。
悠介 「ディル、ちょっとここで待っててくれ。すぐに───戻れるといいなぁ」
ディル『?よく解らぬが、承知しよう』
頷く飛竜を確認してから王国へ続くブラックホールを創造して、中に入った。
王国っていっても上空じゃなく、塔の上だ。
───……。
……。
悠介 「……で、と」
塔の上に立ってはいるが……ルーゼンはどこだろう。
塔の下を見てみるも……人が倒れてるような様子は無い───ていうか高すぎて解らん。
悠介 「降りてみるか。じゃなきゃ解らん」
よし、と頷いてから飛び降りた。
風圧が俺の身体を迎える中、地面が近づいてきたところで風を創造した。
突風は俺にかかる重力を和らげて、なんの重みもなく地面に着地させる。
兵士 「うわっ……うわーーっ!!侵入者だーーーっ!!」
……で、いきなりである。
空から降ってきた俺を発見した兵士が騒ぎ、
その場にはあれよあれよと言う間に兵士の群れが。
悠介 「……ファンタジーにある王国で兵士に囲まれるのは王道……かぁ」
つくづくファンタジーな世界である。
だが考えてもみてほしい。
ゲームなどのファンタジーものの場合は兎角、
主人公どもは抵抗(戦闘)もなく捕まるものである。
抗うと言っても戦闘画面に入ることはなく、イベントで捕まってしまうのは如何なものか。
悠介 「……ふっ」
ならば全力で抗おう……我が全力を以って。
兵士1「むっ───抵抗する気かっ!?」
兵士長「構わん!やってしまえ!」
兵士 『解りましたッ!!』
モシャアアアアと闘気を上げながら動いただけで、兵士どもは突っ込んできた。
上等だ……ファンタジーの壁、俺が崩してやる───!!
兵士1「いやぁーーーーっ!!!」
剣兵が剣を振るってくる。
カシィン!ガコンッ!!
兵士1「おぐっ!?」
俺はそれを創造した槍で弾き、石突きで頭を打突した。
すぐさまに後ろから襲い掛かる斧兵の脇腹に蹴りをキメ、
その脇腹に体重を込めて跳ね上がる。
兵士3「なっ───飛んだ!?」
悠介 「疾───!!」
槍を強く握る。
それとともに身体の中に戦斧石の力が流れ込み、身体能力を向上させる。
兵士長「狙え狙え!空中では身動きは取れまい!!」
兵士 「ウォーーッ!!」
兵士どもがガーディアンヒーローズの王国兵士のような声を出す中、俺はクッと笑った。
身動きなら十分に取れるさ───こんな風に!!
悠介 「はァッ!!」
所狭しと駆け寄り、地面を覆いつくさんとする兵士どもの眉間に石突きを突き立てる。
戻す槍はやはり刹那。
一秒に六は放たれる人外の身体能力を以って、俺を見上げる兵士どもを次々と倒してゆく。
兵士長「ば、馬鹿な……ば、馬鹿な……!弓兵!撃てっ!!」
弓兵 「ハッ!!」
キリリ……バツッ!!
悠介 「───!」
放たれた矢を、兵士の顔面を踏んで跳躍することでかわす。
お返しとばかりにブラストを創造して放ち、離れて構えていた弓兵全員を吹き飛ばした。
兵士長「ば、ばかな……ば、ばかな……!こんなことが……」
……どうでもいいけどこの兵士長、どうして『ば、ばかな』を二回言うんだ?
悠介 「焚ッ!!」
ドカァッ!!
兵士29「ぴぎゅっ!?」
何人目かの兵士の顔面を踏んで、塔の壁へと跳躍した。
すぐさまに兵士が追ってくるが───丁度いい。
塔の壁を蹴り弾くようにして地面へと降りて、槍を棒に創り変える。
流石に刺すのは気が引ける。
悠介 「いざ───」
兵士長 「進め進めぇっ!!相手はひとりだぞ!我が王国兵士の力、存分に発揮せよ!」
兵士×39『オォオオーーッ!!!!』
向かってくる姿はまるで、スズメバチに立ち向かうミツバチの如く。
ひとり相手に闘える数はせいぜいで四。
武器を持っているのならばその数は六以上いくこともある。
だがそれでいい。
悠介 「当たれば痺れるイメージ付きだ、当たったらアウトだぞ───!」
兵士達にそう言ってから構える。
背後には塔の壁。
後ろからの奇襲は有り得ないので存分に戦える。
兵士×3『うおぉおっ!!』
ガキィンッ!!
単純に振るわれた三つの剣を、棒を横にして受ける。
悠介 「“衝撃()”!!」
バジィンッ!!
兵士×3『ギャーーーッ!!!』
しかし鍔迫り合いをする気なんてさらさら無かった俺は、
イメージした衝撃を放って兵士を吹き飛ばした。
兵士28「こ、こいつ、おかしな術を使うぞ!」
兵士長 「魔導術師か!?ええい構わん!たため、たためぇえーーーいっ!!」
悠介 「喋ってる暇があったら来い、ダァホ」
兵士長 「───!?」
相手にとっては当然の指令だっただろう。
だが、指令を待てば当然行動は遅れる。
その瞬間に俺はブラックホールを創造して通り、兵士長の頭上に転移していた。
兵士長「は───」
悠介 「“突く()”」
パゴォンッ!!
兵士長「ひぎゅっ!!」
ビリヤードでキューを放つが如く。
瞬時に繰り出された突きは兵士長の額に赤い痣を残し、兵士長をあっさりと倒した。
兵士30「へ、兵士長がやられたぞーーーっ!!!」
兵士31「弱()ッエェエーーーッ!!!」
悠介 「フッ───」
兵士どもがどよめく隙は逃さない。
すぐに間合いを詰めると、その軍勢の中に身を滑り込ませ───
兵士32「うわっ───ま、待───」
悠介 「疾───!」
ガコンッ!ドカカカゴドゴキガコココォンッ!!!
兵士ども『ギャーーーッ!!!』
───雑に立つ兵士ども悉くの額を打突することで黙らせた。
悠介 「……終了」
あとに残るのは、痺れて動かない兵士ども。
別に痺れる霧とか出してもよかったんだが……ほら、そこはそれ。
兵士との戦いもファンタジーならではだし。
悠介 「さて……ルーゼンはどこに居るやら……」
槍にイメージを流して消すと、トコトコと歩き出した。
悠介 「…………」
で、ふと。
シュバルドラインとの戦いで、あの黄昏を創ってからというもの───
自分の中から、本当に『枷』ってものが外れた気がする。
今まで創造したものにイメージを上乗せするだなんてこと、滅多にやらなかったのに。
というより、上手くいかなかったのだ。
『創ったものはその時点で確立している』
そんな考えが、きっと自分の中にあったんだと思う。
『創り変える』だなんてこと、考えるにも至らなかった。
驚いたことに、創った物は自分の体力を糧に創造される所為なのか……
イメージを流して消すと、自分の中に体力が戻ってくるのだ。
だから今では、体力が尽きるなんてことがあまり想像できないでいる。
さすがにブラストとか、消費系のものは回収出来ないが。
悠介 「………」
レベルアップ、ってことでいいのかな。
……いいか、ファンタジーの王道ってことで。
謎は残るけど……うん、いつかは謎も解けるだろう。
すぐかもしれないし先のことかもしれない。
今は考えが届かないなら、後回しでもどうでもいい。
悠介 「今はとにかく、ルーゼンを探すことが先だな」
まったく、何処に居るやら……。(注:落ちてミンチになったとは微塵にも考えない)
───なんて、物思いにふけっている時だった。
鎧兵 「ややっ!?兵士達が倒れてる!なにごとか!」
頑丈そうな鎧を着た兵士が、ガッシャガッシャと走ってきたのだ。
しかも───その後ろからも次々とアーマーナイトが。
鎧兵 「見慣れぬヤツ!成敗!」
さらに俺を見るなり『成敗』だ。
……礼儀ってものを知らないらしい。
【ケース28:簾翁みさお/前田くんと林田くんと神山くんもどき】
───……。
カルナ「落ち着いたか?」
みさお「はい……」
聖 「………」(こくこく)
総合寝室に運ばれたわたしと聖ちゃんは、それぞれの好物を食べ終えて一息をついた。
好物で神力は回復しないだろうと思ったけど、聖ちゃんは不思議と回復。
カルナさんが言うには、悠介さんがなにか細工をしたらしかった。
……何気にいろんな世界との繋がりを持ってしまっている人ですからね、
そういうことに詳しくならざるをえなかったのかもしれません。
……その、幸が薄いとかそういう方向ではなくて。
みさお「それで、悠介さんは?」
カルナ「多分ルーゼンのところだろ。
千年の寿命を手にするためには干渉払いのアイテムが必要だからな。
最初っから持ってたみたいだけど壊してしまったらしい。
だから今は、それの修理か製作かをするために駆け回ってるところだろ」
みさお「そうですか……」
忙しい人だ。
でもまさか、竜に乗って登場するとは思わなかった。
カルナ「お前らはどうする?あいつを追うか、ここで休んでるか」
みさお「えっと……ここで待ってます。
動き回って行き違いになると、目も当てられないので」
カルナ「そっか」
それに……好物を食べたとはいえ、まだ能力が完全に回復したわけじゃない。
一気に力を解放した反動か、回復がいつもより遅いのだ。
それは聖ちゃんも同じようで、さっきから言葉を発しようとしない。
ただ寂しそうに、チャーハンの無くなった皿をじーーーっと見つめてるだけだ。
って……もしかして。
みさお「………」
聖 「…………パパ……」
やっぱり。
小さい声だけど、耳を澄ませば『パパ……』と呟いてる聖ちゃん。
郷愁()……というよりは、彰衛門さんに会えないのが寂しいといった風だ。
レナ 「カルナ兄さん、遊ぼ〜」
ハヤ 「いや!今こそこのエデンで誰が最強なのかを決めよう!アキの作業場で!」
アキ 「掃除したばっかなんだよ!やるなら外でやれ!」
カミ 「そうだよハヤくん。そんなことより今は別のことを考えるべきだ」
ハヤ 「えぇ!?なんでぇ!俺はとにかく暴れたいんだよアキの作業場で!」
アキ 「お前……ほんとコロがすぞ……」
カルナさんに纏わりついて騒ぐ子供たちを、聖ちゃんは黙ってみつめる。
……でもその目が次第にうるうると潤んできて───あ、布団に潜り込んじゃった。
ようするにあれか、彰衛門さんに会いたい症候群か、彰衛門さんに甘えたい症候群か。
郷愁……地界に帰りたいとかそんなのじゃなくて、彰衛門さんに会いたいだけだ。
カルナ「ほら、ふたりは寝るんだから外に出ろ。……じゃ、ゆっくり休んでくれ。
作業はやめられないから少し五月蝿いかもしれないけど」
みさお「いえ、頑張ってください」
カルナさんを送り出して、わたしも布団の中に潜り込むと、
隣で布団に潜り込んだままの聖ちゃんを見てから、静かに目を閉じた。
【ケース29:未来悠介/悠介くんの素材集め】
声 「まあダーリン!」
悠介 「ダーリン言うな!!」
突如聞こえてきた声に振り向くと、転移してきたらしいルーゼン。
で、ルーゼンの視界にあるのは鎧兵士と乱闘騒ぎを繰り広げている俺。
悠介 「っ───丁度いいのかどうかは解らんが……っ!
だぁっ!タックルしてくんな馬鹿兵士ども!
俺は侵入者ではあるだろうが危害を加えるつもりはねぇーーーーっ!!!!」
とか言いつつ、鎧兵士どもの鎧を蜂の巣も真っ青なくらいに槍で穿ちまくり、黙らせる。
悠介 「なにか文句は!!」
ドゴォンッ!!
鎧兵士?『ひ、ひぃいいっ!ありませんっ!!』
鎧がボコボコになり、既に『鎧兵士?』になったやつらに、石畳を石突きで破壊して一喝。
鎧兵士達は声をそろえて叫ぶなり、逃走した。
ルーゼン「何処かへ行ったと思ったのに、私が愛しくて戻ってきたのね!?」
悠介 「いや、それは極限状態でも有り得ないから」
前置きも無しに世迷言を叫ぶルーゼンに対して冷静に返す。
こんなもん、彰利とのやり取りで慣れてしまっている。
悠介 「実はな、直してもらいたい───魔導具……って言えばいいのか?
まあとにかく、直してもらいたいものがあるんだ」
ルーゼン「まあそうなの?私に出来ることなら協力してもよくてよ?」
そう言うルーゼンに手袋を見せる。
と、ルーゼンは途端にしかめっ面になり───
ルーゼン「……これ。リヴァイアさんの魔導具ね?」
悠介 「ああ、やっぱり魔導具でいいのか。って、それよりもよく解ったな」
ルーゼン「え〜え、あの人のことはよ〜く覚えてますわよ。
変わり者のくせに至高魔導術師に数えられた人なんて、
そうそう忘れられないわ」
悠介 「そうなのか。で、直せるのか?」
ルーゼン「直せるか、ですって?直せるかもなにも、『直しません』わ」
悠介 「へ?」
ルーゼン「私、リヴァイアさんのことが大嫌いですの。
だからあの人が作ったものに手をかけるなんてこと、
いくらダーリンの頼みでもお断りよ」
悠介 「ダーリン言うな」
ルーゼン「ハ」
悠介 「ハニーとも言うな!!」
ルーゼン「……よく言おうとしていたことが解りましたわね」
悠介 「解らいでかっ!!」
ああもう頭痛い……!
なんだって彰利系の性格の女と会うハメに……!!
悠介 「じゃあ直さなくてもいい。作れるか?」
ルーゼン「あら……クリエイターのダーリンなら自分で創れるんじゃなくて?」
悠介 「干渉払いの手袋の効果は見もしたし触りもした。
けど『式』は俺にとっては未知の部分が多い。
それを友人の命と引き換えに試すくらいなら、
多少時間がかかっても確実な方を選ぶ」
ルーゼン「まあ……お友達の命がかかっているの?」
悠介 「ああ。だから急ぎたい。創れるか創れないか、どっちだ?」
ルーゼン「余裕で創れますわね。ええ、当然の如く余裕」
悠介 「じゃあ───」
ルーゼン「……素材があれば、の話ですけどねぇ」
悠介 「へ───?」
素材って……もしかしてファンタジーでは王道である、
なんとかの牙を持って来いとかいうアレか……?
ルーゼン「私は準備をしているから素材を持ってきてくださいますこと?
えぇと?干渉払いの魔導具の素材は……」
ルーゼンが紙を取り出し、式を描いて───紙に文字を焼き付けた。
ルーゼン「さ、これを。集めたらこの塔にいらしてくださいな、すぐに作りますわよ?
お〜っほっほっほっほっほ!!」
ビジュンッ!!
悠介 「あっ───ちょ……」
……紙を渡すだけ渡したら、とっとと逃げやがった……。
しかもなんだよこりゃ……空界文字じゃねぇか……。
悠介 「まずはこれの解読が先か……」
ルーゼンに訊き直すって手もあるが、出来る限り係わり合いを持ちたくない。
……七草なら解るかな……。
───……。
……。
ズズズズ……ストン。
ブラックホールから出ると、すぐ目の前にディルゼイルが待っていた。
俺はそれに軽く挨拶。
悠介 「ただいま」
ディル『うむ、王よ』
どっちが王だか解らんような言葉で迎えられた気がする。
……っと、そうだ。
悠介 「なぁディル、空界文字って解るか?」
ディル『解るぞ。黄竜は知性竜とも呼ばれている。
その下に就く者が馬鹿ではどうにもなるまい?』
まったくだけど、もし知らなくても別に責めたりはしなかった……
というか知らない方が普通な気がするから、むしろ『そうだよな』と納得したと思う。
悠介 「で、これなんだけど……なんて書いてあるんだ?」
ディル『む……』
ディルゼイルが紙に書かれた文字を解読していってくれた。
簡単に言うとこうだ。
加齢樹の枝……………………1
神々の泉の水…………………1(量は一滴でもいいらしい)
スネークマンの抜け殻………1
ジェットモモンガの体毛……1(JET!の部分の毛)
スライムの粘液………………50
ソーサラーラットの杖の珠…1(干渉払いを封じる石。必須)
悠介 「スライムの粘液が50って……」
どのくらいだよ……ていうかこれ、ソーサラーラットの杖の珠だけで十分なんじゃないか?
ディル『言っておくが杖の珠だけではどうにもならんぞ。
能力の無い者が能力を引き出すには、ソレ相応の触媒が必要なのだ』
悠介 「それが他の材料か……。スライムの粘液なんて何に使うんだよ……」
だがぶつくさ言っても仕方が無い……行くか。
悠介 「ディル、それぞれのアイテムがある場所、解るか?」
ディル『ああ。まずはスネークマンの抜け殻からいくとしよう。
あれは奴隷都市レブロウドで探した方が早い』
悠介 「……そっか、そういえばあそこ、スネークマンが腐るほど居たし」
じゃ、ブラックホールでパパッと行くか。
ディル『待て王よ。お前は行くたびに私に場所を訊く気か?』
悠介 「うん?そのつもりだけど」
ディル『……背中に乗れ。役にも立たん家臣に意味は無い』
悠介 「いいのか?」
ディル『何度も言わせるな。とうに忠誠は誓った。
王の役に立てるのなら言うことなど何も無い』
悠介 「……サンキュ」
トンとディルゼイルの背に乗ると、その手綱をクンと引いた。
それとともにディルゼイルが伸びをするように飛翼を広げ、咆哮する。
悠介 「くあぁああっ!!耳痛ぇって!もっと静かにやれ!」
ディル『すまぬな、怠けた身体には丁度いいのだ。
それもこれも転移などをして私を使わない王の所為だ』
悠介 「……お前、いい性格してるな」
ディル『そんなことはお互いさまだろう、王よ。
王が言ったのだぞ、【お前が俺なら、俺がお前ならそうすると信じてる】と』
悠介 「む」
確かに言ったな。
とするなら、俺がディルゼイルだとして……今のこの状況が俺に与えられたら……
悠介 「……王で遊ぶな、たわけ」
ディル『気づくのが遅い王が悪い』
俺がこいつなら、こんな時にすることは軽いふざけ合いだ。
ディルゼイルが言った『私を使わない王の所為だ』っていうのは、
きっとその状況の引き金だったんだろう。
ディルゼイルがいい性格をしているなと言われる存在なら、
ディルゼイルからしてみれば俺もまた、いい性格をしているって言われる存在なのだろう。
悠介 「じゃあ行くか。レブロウドからだな?」
ディル『ああ。手早く済ませよう』
ディルゼイルの身体が、振り下ろされた飛翼から発する風に浮く。
立て続けに上げられては降ろされる翼から発する風圧は凄まじく、
俺とディルゼイルはあっと言う間に空に居た。
悠介 「……で。やっぱり飛ばすわけか」
ディル『手早く済ませよう、と言ったな?』
悠介 「ああ……言ったね……」
ゴォオッ───!!
悠介 「おぉおおおわぁあああああああああっ!!!!!」
やっぱりディルゼイルは空を飛ぶことに加減を知らない。
というか……もしかしてスピード中毒とかいうやつじゃなかろうか……。
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