───UnlimitedBlackOrder-No.012スライムキラーな彼女のブレイバーランク───
【ケース30:未来悠介(再)/素材集めはゲームでも現実でも面倒くさい】
───……ォォォォオオオオオオッ!!!
バサアッ!!
ディル『王よ、着いたぞ』
悠介 「………」
凄まじいスピードを出されると、どうにも脳がとろけそうになる。
本当に慣れるまで時間が必要になりそうだ……。
悠介 「ふぅ……」
なにはともあれディルゼイルから降りて、レブロウドの街を眺め───……
悠介 「………」
ディル『む?どうしたのだ、王』
固まった俺を見て、ディルゼイルがその視線を追う。
その先には……『希望都市ユウスケ』という名の立て札が。
悠介 「は……はは、ははははは……は、ははははははは!!!!」
ディル『王……?』
悠介 「皆コロがしだぁああーーーーっ!!!!」
叫んだ俺は立て札を殴り倒し、へし折り、槍で穿ち、
粉々にしてからブラックホールで掻き消した。
しかし興奮は収まらず、その勢いのまま街の中へと駆けていった。
───……。
……。
街に入ってすぐ、ホクホクと微笑むジジイを発見した俺は駆け出した。
ジジイ「むっ……?」
悠介 「ジジイィーーッ!!てめぇえーーーっ!!」
ジジイ「ヒ、ヒィイイ!!竜コロがしのユウスケじゃあーーーっ!!!」
悠介 「称()えてぇのか貶()してぇのかどっちだぁああああっ!!!」
俺を見るなり逃走しやがったジジイの首根っこを捕まえ───ビジュンッ!!
悠介 「あっ───くそっ!また逃げやがったあの野郎!!」
……捕まえようというところで転移。
つくづくむかつくジジイだ……街に人の名前つけやがったのもあいつに違いねぇ……!
悠介 「ていうか俺、あのジジイに名前教えたっけ……?」
言って、ふとランクカードを見て脱力。
これか……これを見て名前を知ってたのか……。
悠介 「あぁ……でも脱力したお蔭で少しは怒りが治まったかな……」
そう、深呼吸だ深呼吸。
怒ってても材料は集まらん。
ここは広い心で落ち着こう。
街の名前だって、ただ立て札に書いたってだけだろうし……。
俺は気を紛らわすために、
キャンプファイヤーみたいに炎を燃やして騒いでいる村人達を見た。
村人1「希望都市ユウスケばんざーーーい!!」
村人2「くそっ!なんていい名前なんだ希望都市ユウスケ!
絶対改名なんてしねぇぞ!ここから頑張ろうぜみんな!」
村人 『おおっ!なにがなんでも改名なんてしねぇぞ!!』
悠介 「うがぁあああああああっ!!!!!」
村人1「うおっ!?なんだ!?急に旅人が襲いかかって───」
村人2「と、取り押さえろ!この希望都市ユウスケで狼藉は許さん! 」
ドグシャボゴドゴドチュベキャゴシャアアアア!!!!
村人3「ブゲェッ!!だ、ダメだ!強ぇええーーーーっ!!!!」
ゴリィッ!!
村人4「い、痛ェエーーーーッ!!!」
村人5「大変だぁっ!マーティーが旅人に噛まれてるぞぉーーっ!!」
ドチュゥウッ!!
村人6「ギャアーーーーッ!!!」
村人7「ロ、ローディンが目潰しされたぞーーーっ!!」
村人6「あぁあ〜〜〜っ!!!目がぁあ〜〜っ!!目がぁああ〜〜〜っ!!
あぁあ〜〜っ!!目がぁあ〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
───……。
……。
男 「すいませんでした!本当に申し訳ないっ!!」
村人の大半が山となって倒れ伏す頃、いろいろ教えてくれたあの男が現れた。
どうやら都市の外に出かけていたらしく、ジジイの行動は知らなかったらしい。
男 「ジジイてめぇ!村長としての自覚がねぇのか!もっと真面目にやれタコ!」
ジジイ「黙れこわっぱ!!ワシに意見しようなど百億光年早いわ!!」
ジジイ、そりゃ距離だ。
悠介 「あぁもう……名前は変えてくれればそれでいいから。
でさ、ここにスネークマンが居ただろ?そいつの抜け殻が欲しいんだ。あるか?」
男 「ああハイ、それはもう腐るほどに」
悠介 「あ……そ、そっか。そりゃ良かっ───」
ジジイ「抜け殻?抜け殻ならホレ、あそこのファイヤーで燃えとるぞ。
ほっほっほ、よォ燃えるよォ燃える。
モンスターに支配されていたことを忘れるために全部燃やしてやったわい」
悠介 「ジジイィーーーッ!!!てめぇえーーーっ!!」
ジジイ「ヒャアーーッ!!?な、なにをなさる!退却じゃあーーーっ!!!!」
ビジュンッ!!!
悠介 「あ───っ……くああぁああああああっ!!!!!また消えやがった!!」
男 「どこで身に付けたんだろうなぁ……」
……男の悲しげな声が頭に残る。
どうやらあのジジイには謎が多いらしい。
男 「すいません、都市を救っていただいた英雄の探し物を燃やしてしまうなんて……」
悠介 「いや、ハッキリ言ってあのジジイ以外誰も悪くない。
だからアンタが謝るのは明らかに間違ってる」
男 「ジジイが戻って来たら、拳のひとつでも見舞いますので」
悠介 「全力で頼む」
コクリと頷く男に親指を立てて見せる。
っと、それより……
悠介 「スネークマンが居る場所とか解るか?」
男 「あ、はい。ここから北に行ったところに、
『蛇の穴』と言われてる洞窟があるんです。そこがスネークマンの巣窟です」
悠介 「蛇の穴か……解った、ありがとう」
男 「いえ。ジジイのことはこちらに任せてください」
悠介 「ああ、それじゃ」
ニッコリと笑う男は、恐らくジジイにいろいろと振り回されているのだろう。
その笑みは中々にドス黒いものだった。
───……。
……。
ディル『来たか』
悠介 「ああ、行くかディル」
言って、都市の外で待っていたディルの背に乗る。
ディル『抜け殻は見つかったのか?』
悠介 「いや、ジジイが全部燃やしてやがったから、
自分で手に入れなきゃいけなさそうだ」
ディル『……中々に苛立っているな。苛立ちは隙をつくるぞ。もっと王たる者であれ』
悠介 「そう言われたってなぁ……───うおっ!?」
ぶつくさと言う俺の言葉を吹き飛ばすかのような飛翔。
視界が一気に地面から離れた俺は、いきなりのことに驚いた。
悠介 「……はぁ。お前ってほんと、いい性格してるよ」
ディル『そうか?王が私ならば、恐らくは殴りでもしていただろう』
悠介 「……そうしないのは忠誠心からか。まいったな」
確かに腐ってても前に進めない。
悠介 「よしっ、行くかっ!」
ディル『承知!』
ゴォッ───バサァッ!!
振るう翼が空気を払うと、停留している空気は突風となる。
悠介 「ディル!北にある蛇の穴に向かってくれ!そこにスネークマンが居るらしい!」
ディル『心得ている!知性竜の家臣の肩書きは伊達ではない!』
相変わらず凄まじいスピードで飛びながらも話す。
いい加減、顔面がヒリヒリしてるんだが……シュゴォゥンッ!!
ディル『着いたぞ』
悠介 「速ッ!!」
目指そうとしてから30秒も経ってないんだが……?
だがしかし、ディルゼイルが着地する場所の目の前には洞窟が。
悠介 「………」
ディル『どうした、降りぬのか?』
悠介 「え───あ、いや、降りる」
トンと地面に降りる。
や……しかし速すぎだ。
ディルゼイルのヤツ、ほんとはこの世界の東から西まで飛ぶのに、
10分もかからないんじゃないか?……と思うくらいに速い。
悠介 「……まあ遅いよりかはいい。間違い無くいいな」
プラス思考でいこう。
よし、確かにその存在はありがたい存在だ。
なにを悩む必要がある……───いや、悩んでたんじゃなくて驚いてただけだが。
悠介 「よぅし、早速抜け殻を探すかぁ。
巣窟ってくらいだからな、それこそ腐るほどあるだろ」
ディル『……王よ』
悠介 「ん?どした?」
洞窟に向かって歩く俺を、ディルが呼び止める。
ディル『黄竜珠を出せ。私はその中で待機していよう』
悠介 「───マテ。当然の如く話を進めるのは待ってくれ。
……えーと……なにか?黄竜珠にはドラゴン収納技術まであるのか?」
ディル『詳しく言えば【竜族吸収能力】だ。
珠の中は虚構空間という場所に繋がっていて、
普段我らワイバーンはその場に身を置いている。
これまで、移動しながらも私のような飛竜と出会わなかったのはそういうことだ』
悠介 「虚構空間……つまり、この珠の中にもうひとつ世界がるってことか?」
ディル『空界には過去の存在が残した代物が多くある。
その中でも竜が所持する珠は謎を多く遺したまま現在に至る。
謎なままなのはひとえに、人間が珠を持つに至らなかったことにもある。
竜王はくだらないことに時を裂きはしないのだ。黄竜王とてそうだった』
悠介 「………」
じゃあ、つまりこの珠にも他の竜が持つ珠にも、謎が腐るほど残ってるってことか。
説明書きの無いアイテムは困りモノだったもんだが……ゲームと実際とじゃあ大違いだ。
現に、俺わくわくしてるし。
どんな力があるのかを知るときが来るのなら、その瞬間はなんとも嬉しい瞬間だろう。
悠介 「ちなみに……召喚獣のオーブの謎は解けてるのか?」
ディル『八割方、といったところだな。召喚獣の強さは上から下までに大きな差がある。
ならばその【下】の召喚獣と契約し、従えればいくらでも研究できよう』
悠介 「あ……そっか。ちなみに最弱の召喚獣は?」
ディル『棒人間という、謎の多い亜人だと言われている。
獣ではないが、どういうわけか召喚獣として数えられている』
悠介 「棒人間って……」
なんだそりゃ……。
悠介 「それってやっぱり『狭界』って場所に住んでるヤツなのか?」
ディル『そうらしかったのだがな。
棒人間は呼び出されるとその世界に住むという習性を持っている。
棒人間の数は中々に多く、
その中の【ミル・棒人間】として君臨しているのが【ジークン】だ』
悠介 「棒人間か……でも弱いんだろ?」
ディル『弱いぞ』
容赦の無い一言だった。
ディル『だが、【王】であるジークンは別格扱いしてもいい。
あれは棒人間の中では出来るほうだと言われている』
悠介 「……なんてコメントしたらいいのか解らんな」
ディル『今では棒人間の全てが空界に住んでいるため、狭界にはもう棒人間が居ない。
そのため召喚術ではもう呼び出せないとされている。
もし契約したいのなら、棒人間の集落でそいつと戦え』
悠介 「………」
どんなヤツなのか知りたいが、召喚獣として欲しいかと訊かれると……なぁ。
悠介 「参考までに。そいつらになにかしらの能力はあるのか?」
ディル『不死身、不老不死、さらには天地空間中でも最高の麦茶の製造だ』
悠介 「………」
いや……なんで麦茶よ。
でもどんな物体かは気になるところ。
行ってみるか……?
悠介 「……まあ今はとにかく抜け殻だ。黄竜珠を出せばいいんだよな?」
ディル『ああ。出すだけでいい』
悠介 「解った。アンテ」
言われた通りバックパックを出し、その中から黄竜珠を取り出す。
それをディルゼイルの前に掲げると、
俺の手の平にある小さな石に───ディルゼイルは吸収されるかのように消えてしまった。
悠介 「……魔封波?」
いや、余計なツッコミはこの際無しだ。
さてと……抜け殻抜け殻、っと……。
【ケース31:七草霞流那/年齢の無い訪問者】
ペッペケペー!!
カルナ「っと……この音は───」
年齢の上下で分かれるチャイルドエデンの音を耳に、城壁の上へと上がった。
そこから城門を見下ろしてみれば───いつ見ても奇妙でしかない存在が。
ジークン「ヘロウ」
……ジークンだった。
その手にはしっかりと、彼自慢の麦茶が。
年齢不詳、子供でも大人でもなんでもない彼がエデンに入ろうとすると、
さっきのような妙な音がする。
彼はジークン。
棒人間の集落の王である、丸顔糸目の棒人間だ。
そんな彼が俺を見上げて、太い糸のような細い手腕をくいっと持ち上げる。
……恐らく、軽く手を上げて挨拶しているつもりなんだろう。
カルナ 「あれ……今日はジークンだけか?」
ジークン「ウィ、そうザマス。他の皆さん、ラットンとの縄張り争いで忙しいから」
カルナ 「いや……ラットンなんかに梃子摺るなよ……」
(注:ラットンとはスライムをも下回る最弱ランクモンスターである。
外見はウサギのような姿で、手にした人参で襲い掛かってくる。
が、腕力が無いため、振り下ろされても痛くない。
人がペット感覚で接しているくらいに弱い)
カルナ 「棒人間の集落で強いのってお前だけだもんな……。
帰ってみて縄張り荒らされてたらどうするつもりだ?」
ジークン「ウィ?知らんよ?」
カルナ 「……お前ってそればっかだな」
ジークン「知らんもんは知らんザマス。
というわけでカルナくん、麦茶あげるから麦茶用の豆の補充を頼むよ」
カルナ 「ああ、用意してある」
そろそろだと思って腰に巻きつけておいたバックから、豆を取り出して投げ渡す。
その下からはジークンが投げつけてきたらしい、麦茶入りのポットが飛んできた。
カルナ 「サンキュー」
ジークン「ウィ。ではまたいずれどこかで会いましょう」
ヒラヒラと細い手を振り、謎の物体が去ってゆく。
平原を歩いてるってのに『ヒタヒタ』と鳴るその足音は、異常以外のなにものでもない。
カルナ「ここから棒人間の集落までどれだけ離れてると思ってんだか……」
それでもわざわざ徒歩で来るのが凄い。
ついこの前、ミノタウロスに追われてマジ泣きしたのを忘れたのだろうか。
まあ無駄に足の速いヤツだから、捕まるようなことはなかったわけだが。
【ケース32:ジークン/ヘイゲリョー(訳:ヤケクソ)】
ジークン「ある日ひとりでポクポクと〜♪街を歩くとヌシの声〜♪
(セリフ:おいどんはもう、あぎゃんこつヘタレ、御免こうむるでござるよ)」
気分はゆったりザマした。
なんともステキな陽光に当てられながら歩く平原……美しいことです。
ジークン「前はつい、知らずにミノタウロスの縄張りに入った所為で地獄を見たが……
我は同じ失敗などはしない男ぞ」
ヒタヒタヒタヒタ……。
歩く歩幅は常に一定である。
時折に跳ねる虫なんかが自然風景を感じさせてくれる。
ジークン「召喚なんてものをされた時はどうなることかと思いましたな……。
いやはやなんとも懐かしい思い出。だが今戦ったら負けねぇぜ?」
何処へともなく呟く。
それが虚勢であることは言うまでもない。───ウィ?
老人 「フガフガ……」
ジークン「おお、ご老体がこんな平原で草摘みを。精が出るなぁ」
うんうんと頷いてシカト。
目を合わせたら手伝えとか言ってきそうだし。
老人 「……これ、そこの召喚獣」
ジークン「………」
シュッ───ゴキュッ!!
ジークン「ギョオッ!!?」
老人 「無視するでない」
老人が投げた投げ縄が我の首を絞める。
老人はそのまま縄を手繰り寄せ、我の足を掴んで逆さに吊り上げた。
ジークン「なにさらすんじゃボケェーーッ!!
締まりどころ悪けりゃ死んでるだろうがこのボケ!!」
老人 「ほぉ〜〜〜……こりゃあ元気のいい召喚獣じゃあ……。
どうじゃ、小僧。ワシの下にこんか……」
ジークン「嫌ザマス。ったくなに考えてんのかねこのボケは……。
いいかボケ、我を従わせたいなら実力を行使してみろ」
老人 「ほう……大きくでたのぅ。
このワシをバルグ=オーツェルンと知っての言葉か……」
ジークン「知らんよ?」
老人 「………」
ジジイがシワだらけの顔を緩ませ、ホッホと笑う。
我はその隙を見て腕を伸ばし、我が足を掴んでいるジジイの手に刺突()を見舞う!
ザクッ。
老人 「ムグオオッ!!?」
ジークン「ホアッ!」
スタムッ!
痛みの拍子に手を離したジジイから逃れ、華麗に着地した。
ジークン「いいだろう……ジジイ。存分に───かかってこい!!」(クワッ!!)
更に、対面したジジイへと凄まじいほどの威圧(と信じている)を放ち、戦闘体勢へ。
ジークン「我はジークン!!ジジイ、貴様に決闘を申し込む!」
老人 「……空界三大至高魔導術師が壱、バルグ=オーツェルンじゃ。
その決闘、受けて立つわい……」
しわくちゃジジイがゆっくりと構える。
その威圧感は確かなものだった。
───だが。
ジークン「我の手足は凶器なり!我に貫けぬものはあらず!
さぁ来いジジイ!返り討ちだ!」
老人 「ほっほっほ……威勢だけはええのぅ」
ジークン「てめぇもね」
老人 「ワシがどれだけのことを言うたか!!」
ジークン「黙れこのボケ!!
我に勝負を挑んだこと、すぐに後悔させてやるザマス!!
ディメンション・フォース!!誘おう!我の世界へ!!」
ガカァッ!!
老人 「ムッ……!?こ、これは───!!」
(注:───……TPが足りない)
ジークン「ええっ!?TPってなにさ!!」
(注:タクティカルポイント。棒人間が技を使う時に必要です。
回復させるには麦茶が必要となります)
ジークン「えぇっ!?麦茶はカルナくんにあげたから無ェザマスよ!?」
老人 「………」
ジークン「…………えーと」
ジリ、とジジイが詰め寄る。
我はそれを冷静に見つめ───
ジークン「……!それではごきげんよう!」
すぐさま逃走。
必死に動かす足が、その場に『ヒタタタタタ!!』という音を鳴らす。
この速度、このタイミング……ご老体には追いつけまい!!
老人 「甘いわ」
ジークン「ギョォオッ!!?」
だがジジイは目の前に転移してきやがったのだ。
だから我は立ち止まることもせず、
転移後の一瞬の硬直を利用して、その鼻ッ柱に全速力の飛び頭突きをキメた。
ドゴチャア!!
老人 「ごわああっ!!?」
ジークン「アディオスボケ者!」
あとはもう形振り構わず。
我は両手を空に挙げるような状態で───全速力で逃げ出したのだった。
【ケース33:未来悠介/少女のランクネームとブレイバーランク】
スネークマン1「ギャーーーーーーッ!!!!!」
スネークマン2「ギャッ!!ギャーーーーッ!!!!」
スネークマンが走る。
その後ろには俺、晦悠介。
悠介 「待てっつーーの!!俺はただっ……」
スネークマン3「ギャーーーッ!!」
スネークマン4「ギャーーーーッ!!!」
悠介 「聞けぇえええええっ!!!!」
……素材を集めるっていう使命感ですっかり忘れてた。
そうだよ……ランク下のモンスターって逃げるんだよ……。
抜け殻が無いかと聞こうと思った途端にこれだ、正直こっちの方が驚いた。
だって、目が合った途端に『ギャーーーッ!!』だぞ?
いきなり叫ばれれば誰だって驚く。
悠介 「こ、のっ……!!待てって言ってるだろうがっ!!」
手に槍を創造して唱えた。
言()は『螺旋は在りしを突き穿つ()』。
それは引かれた弓が弾かれるが如く、スネークマンが逃げ出している方向の壁を破壊した。
スネークマン3「ギャーーーッ!!!!」
悠介 「落ち着け!別に危害を加えるつもりなんてないんだ!」
スネークマン4「ギャッ!!ギャーーーッ!!」
悠介 「俺はただお前らの抜け殻をだな───」
スネークマン1「ギャーーッ!!ギャーーーーーッ!!!!」
悠介 「……もらい……に……っ……!!!」
スネークマン2「ギャーーーーッ!!!!」
悠介 「うがぁああああああっ!!!!聞けてめぇらぁああああっ!!!!」
ドゴゴシャベキゴキャガンガンガン!!!!
スネークマン『ギャーーーーーーーーーッ!!!!!』
……この暴走より約5分後。
人の話を聞かない馬鹿野郎どもの末路が、キレた男の先にありましたとさ……。
───……。
……。
悠介 「……はぁ」
洞窟から出てきた俺は、それはもう重苦しい溜め息を吐いた。
もうモンスターのなんたらとかいう条件のものは勘弁だ……。
悠介 「でもなぁ……スライムの粘液ってのがあるだよなぁ……」
スライムっていったら随分と弱いモンスターの筈だ……絶対に逃げ回るだろう。
でも粘液ってくらいなら、倒せば手に入るものだろう。
だったら今回みたいにボコって出させるようなことはしなくてもいい筈だ。
……ああ、ホントにカツアゲでもしてる気分だったよちくしょう……。
不必要にギャーギャー叫ぶし、
最終的に抜け殻差し出してきた時なんて泣きながらだったし……。
悠介 「……次、行くか」
ディル『うむ』
キュバァンッ!!
俺の声を聞く前に珠から出てきたディルゼイルが飛翼を広げる。
俺はそんなディルゼイルの背に乗ると、手綱をクンと引いた。
悠介 「次は?」
ディル『加齢樹は一番最後でいいだろう。あれはここからしてみればほとんど裏側にある』
悠介 「そっか。じゃあ……ジェットモモンガ行くか?」
ディル『心得た』
ディルゼイルはそれだけ言うと空に舞い、再び超スピードを披露してみせた。
その先は───多分、俺が一番最初に降り立った森。
そしてその予想はあっさりと的中する。
ディル『着いたぞ、王』
悠介 「はぁ……100キロがここまであっと言う間かよ……」
ものの数秒とも思えるくらいの速さで、その森は目の前にあった。
入ろうか、とも思ったが───
悠介 「カモーーーンモモンガ!!」
試しに呼んでみた。
すると───あっさりと飛翔してくるモモンガが一匹。
多分俺が助けたモモンガだろう。
モモンガ「ギチュ───……!?」
そいつは俺の前まで飛んでくるも、
途中でディルゼイルに気づいてUターンしようと身体を逸らす。
悠介 「シャアーーッ!!」
バッシィッ!!
モモンガ「ギチュゥウーーーッ!!!!」
その姿を山崎さんの蛇使いの要領で引っ掴む……が、思いっきり暴れてくれてる。
悠介 「なあディル。『JET!』の体毛ってこれだよな?一本でいいのかな」
ディル『ああ、構わん筈だ。無くすようなことは許されんぞ』
悠介 「解ってる。じゃあ……」
グッ───ブチャアッ!!
モモンガ「クキュゥウウーーーッ!!!!」
悠介 「あ」
一本のつもりが数本抜いてしまった。
しかもこれって思いっきり動物虐待……。
───ガリッ!!
悠介 「いっ───!?」
モモンガ「ギチュウッ!!」
突如……というか当然のように俺の指に噛み付いたモモンガは、
自分を掴む力の緩みを逃さずに飛翔した。
その素早さたるや───まさにジェット。
一瞬にして目の前から消えるその姿を目で追うことが出来なかった……。
ディル『取れたか?』
悠介 「一応……。気分は最悪だが」
懐いてくる動物を殴る気分って、多分こういう感じだと思う。
罪悪感が消えん。
悠介 「なぁ、先にモンスター系を済ませないか……?
正直後回しにするよりも一気に終わらせたい……」
ディル『元よりそのつもりだ。次はスライムの粘液だ、行くぞ』
悠介 「ああ、頼む」
俺を背に乗せたままだったディルゼイルはそのまま飛び、新たな場所を目指す。
といっても目と鼻の先だったらしく、少し飛んだらすぐに降りた。
悠介 「ここは?」
ディル『アントエンハンスという街だ。この街の周辺にはスライムがよく出現する』
悠介 「そっか、じゃあ粘液50個なんて簡単だな」
スライム相手ならばと、俺はその手に竹の槍を創造した。
一応『螺旋は在りしを突き穿つ()』のイメージ付きだ。
悠介 「よしこいスライムッ!俺は逃げも隠れもしないぞぉーーーっ!!」
ディル『その前に逃げられるからな』
悠介 「それを言うなよ!!」
───……。
……。
悠介 「………」
ディル『………』
…………。
───……。
悠介 「……………………」
ディル『……………』
悠介 「…………なぁ」
ディル『…………なんだ、王よ』
悠介 「……どこに、なにがよく出現するんだっけ……」
ディル『……………』
───……。
……。
悠介 「……スライムの『ス』の字もないんだが……」
ディル『こんな筈は……』
歩けど歩けどスライムの形すら無し。
怖れてて出ないとかじゃなく、本当に居ない。
どうなってんだこりゃ……。
旅人1「なんだこりゃ……ここらへんってスライムがよく居ただろ……?」
旅人2「ああそれな。アントエンハンスの素材屋の話じゃあ、
外の世界から来たっていうふたりの子供がスライム全滅させたって」
悠介 「ぶっ!?」
聞こえた会話に吹き出した。
外の世界から来たふたりの子供って……みさおと聖か!?
ディル『王?』
悠介 「……ディル、チャイルドエデンに戻ってくれ」
ディル『?……構わんが』
凄まじい脱力感に抱かれつつ、俺とディルゼイルはチャイルドエデンへと帰還……。
なんていうか、こんな擦れ違いとかハプニングがあるから、
ファンタジーRPGって作業ゲームって呼ばれるんじゃなかろうか……。
……や、そりゃあこれは現実であってゲームではないんだが。
───……。
……。
みさお「うにゅ……もう、なんですか……」
聖 「……、……」(うつらうつら……)
チャイルドエデンに辿り着いた俺は、七草にみさおと聖を連れ出してきてもらった。
その顔はとてつもなく眠そうで、眠ってからそう時間が経ってなかったのだろう。
悠介 「みさお、聖、お前ら……スライム狩りまくったよな?」
みさお「え……はい、それはもう……」
悠介 「じゃあそのスライムどもが何か落としただろ?
その中に『スライムの粘液』って素材がなかったか?必要なんだ」
みさお「え……いえ、スライムはなんにも落としませんでしたよ……?
倒したらすぐ消えちゃったんですよ……」
聖 「………」(こくこく)
悠介 「………」
……ああ、きっとあの老人はこんな気分だったんだろうなぁ。
バックパックの存在を知らない人は、こんなにも『世間知らず』のように映るものか。
自分もそうだったのかと思うと、なんだかいたたまれない。
悠介 「聖、首に下げてるランクカードに触れて『アンテ』って言ってみろ」
聖 「……?……あん、て……?」
キュポンッ!
聖 「!!」
みさお「わっ───!?」
言葉を放つのと同時に現れた大きな袋に、ふたりは驚愕を表情で表した。
……よし、これでもう完全に目が覚めただろう。
悠介 「ちょっと見させてもらうぞ?っと……」
袋を開けて中を調べる───と、そこには……
悠介 「………」
みさお「悠介さん?なにが入ってるんですか?」
悠介 「…………お前らさ、アントエンハンスに居るスライム、絶滅させなかったか?」
みさお「え……ななななんのことですか!?そこまでするわけないじゃないですか!」
悠介 「……だってさ……」
袋の中身は極単純。
『スライムの粘液×129』と『スライムの涙×50』だけ。
これはつまり、少なくとも129以上はスライムを狩ったってことだ。
悠介 「聖……お前のランクネームとブレイバーランクってなんだ?」
一応スライムの粘液50個を、俺のバックパックに移してから疑問をぶつけてみる。
聖 「……?」
みさお「あ、ちょっと待ってください。えーと……」
みさおが辞書のような……まあ多分辞書だろうけど、
それを出して聖のプレートと睨めっこする。
で、結論。
みさお「ランクネームは前と変わらず『スライムキラー』。
で───……うあ……」
悠介 「……みさお?」
みさお「……え、えっと……悠介さん、どうぞ」
悠介 「?」
みさおが辞書を渡してくる。
俺はよく解らんままにそれを持ちながら、
聖のランクカードの、ブレイバーランク部分に書かれている文字の意味を調べ……
悠介 「……ぐあ」
固まった。
ディル『どうしたのだ王よ。困りごとか?』
悠介 「い、いや……そういう訳じゃないんだが……」
しかしこれはなんと言っていいやら……。
聖のブレイバーランクはあまりにも凄まじいものだった。
弱い者を100体以上屠った者のみに齎されるという、ある意味究極のブレイバーランク。
その名も……『“殺戮の勇者()”』……。
聖 「……?」
悠介 「………」
みさお「………」
悠介 「なぁ……みさお?悪気は……なかったんだよな……?」
みさお「はぁ……それがその、他のモンスターは解りませんけど、
スライムが『災い』だったんですよ……。
そうなると、元が災狩の死神だった聖ちゃんが黙っていなかったわけでして……」
悠介 「なるほど……」
それでジェノサイドブレイバーか……バルバトスもびっくりだな……。
なんだか悲しい気持ちになった俺は、
きっとそんなつもりじゃなかった聖の両肩にポンと手を置いて───
悠介 「強く生きろ……」
聖 「え……?」
そう言って、逃げるようにディルゼイルに乗って逃走を謀った。
だってあのままあそこに居たら、絶対に『なんなんですか』とか訊かれそうだし。
だから辞書をみさおに投げ渡し、ディルゼイルの手綱をクンと引いた。
みさお「あっ───ちょっ、待ってくださいぃっ!!!
わたしに『言え』っていうんですかぁっ!!?
待ってくださいっ!!待ってぇえええええーーーーーーっ!!!!!」
みさおも同じ気持ちだったのだろう。
すまんみさお、親しい友人だからこそお前が言ってやってくれ。
俺は子供をあやすのは究極に苦手なんだ……!
そんな思考をところせましと展開することで、
聞こえてくるみさおの罵倒の全てを風に流した。
すまんみさお……こんな俺を許してくれ……。
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