───たわけモン道中記08/バッキャローマン───
【ケース23:死神悟り猫/ベックさん】
悟り猫「アイワズメイドゥユゥットィン・アメリカァ〜♪……歌詞解らん」
やってぇんきましたアメリカの国!!
時差のためか明るいその世界で、空を浮きつつキャメラを破壊!
一応日本の分は全て滅亡してきたから最強さ!
悟り猫「ステルス効果も万全!
アメリカンさん達は何が起こったのかも解らずにキャメラを破壊されるのです!」
あとは観光気分で自由の女神を見に行きましょう。
どれくらい大きいのか、一度己の目で見て見たかった。
悟り猫「最後はエロマンガ島でいいかな」
世界一周旅行は長い。
その終着がエロマンガ島ってのも面白いかもしれんし。
シェイドの話じゃあ記憶もキャメラも破壊したらしいから、
あとは適当に遊ぶだけで十分なんですけどね?
悟り猫「サー!後悔するなら今が旬!
我が過去を見たことを、カメラの代金とともに後悔するがよいわぁ〜〜っ!!」
飛翔せよ!疾空の刃!ていうか俺の体!
悟り猫「ムッ!カメラ小僧発見!
しかもあやつは過去視の中で我が過去を撮っておったヤツ!
キスティス先生、俺に力を!メーザーアイ!!」
ビムッ───ドゴッチュゥウウウウウウン!!!!
小僧 「AAAAAAGH!?」
カメラ小僧が持っていたカメラを目から出したレーザーで破壊!
OH!これぞ冥罰ネー!!
悟り猫「HAHAHAHAHA!!パパラッチどもに愛を語る資格はねィェーーーッ!!
そらまあ権利なんてものはなんにだって無いって言葉には、
確かに頷けるところはあるけどね!?
でも俺にしてみりゃ『自己を守る』って事柄に関しては、
『権利』は存在すると思うんですよ!」
誰にともなく叫び、更に加速して過去視を展開する。
『破壊』に該当する過去を見つけては、極力細めたホーミングブラストを放って破壊する。
家の壁を針ほど細く穿ち進み、目標にぶつかって爆発する黒い光。
それは誰にも気づかれることなく、気づかれた時には確実に破壊する黒光だった。
もちろんホーミングブラストですから、標的以外は避けて襲い掛かります。
ここで言う『標的以外』とは生き物でござる。
悟り猫「どんどんいきますよどんどん!うわぁっはっはっはっはぁっ!」
街中から聞こえてくる『Nooooooo!!!』とかいう声を完全無視して、
次から次へと破壊行動を続けてゆく。
呪うのなら、あの映像を録画してしまった自分を呪うのですな……南無。
【ケース24:過去悠介/懲りない鍛錬者】
悠介 「ぎ、ぎぐぐぎぎ……!!」
目覚めれば朝。
黄昏はいつの間にか消えてしまったらしく、俺の体はお堂に倒れて風に吹かれていた。
幸い黄昏が消えたのはつい先ほどらしく、体はそう冷えてない。
ああ、それは本当に問題じゃない。
問題があるとしたら───この恐ろしいほどの筋肉痛だろう。
悠介 「くうっはぁあああ……!!!」
微動するだけでも相当にキツイ。
これは正直キツすぎるし困る。
なにが困るって、鍛錬が出来ないことがなにより困る。
悠介 「ええいっ、反則だがボーッとしている暇はないっ!
未来の俺だってリヴァイアに協力してもらって肉体作りをしたんだ、
俺だって───!」
体の時間を早める霧を創造した。
それが体に浸透してゆくと、みるみる内に筋肉痛は消えた。
その痛みのしこりが全て消えてから霧を消して、頭の中で詩を詠って黄昏を創造。
昨日と同じように、自己の鍛錬を始めた。
悠介 「───お」
一番最初に気づいた違和感……というよりは達成感だろうか。
ともかくそれに似たものは、両手に創造した50キロの脇差が少し軽く感じたことだ。
ああもちろんまだまだ重い。
これに慣れるには、もっともっと鍛錬が必要だろう。
それでも自分が高まっていると感じることが出来るのは、
なんていうかくすぐったくもあるし嬉しくもある。
悠介 「よし、これなら───」
体を跳ねらせて連続的に動かす。
突き、払い、風を切り、草を薙ぎ、空気を穿つ。
体は思ったより軽く動き、昨日のようにすぐに疲れるといったことはとりあえずはない。
悠介 「───……」
まず土台が、完成したってところだけど……それでもやたらと嬉しい。
悠介 「よっしゃあもっともっと上を目指すぞぉっ!」
見る人が見れば10人中10人が『地味だ』とか言うだろう。
だが俺の中には『地味でも結構』って言えるような感情がある。
自分を高めることが出来る事実に『地味』かどうかなんて関係無い。
自分が強くなっているって実感を感じることが出来るなら最高じゃないか。
悠介 「よ、よし。今度こそ……!」
再びイメージを沈め、『朋燐』を創造する。
すかさず合図も無しに勝負を開始し───
───……30秒後、草原にブッ倒れて黄昏の空を眺めている自分に頭を痛めた。
悠介 「……まだまだ甘いかぁ……」
でもこれはいいかもしれない。
こうして強さの実感を覚えた時に朋燐と戦ってボロ負けすれば、図に乗ることも無い。
……あいつに負けるっていうのは凄まじく嫌なんだが、
その悔しさは鍛錬への励みにしようか。
悠介 「次だ次!休むのは体が動かなくなった時だ!」
なんていうかそろそろ周りが見えなくなってきた俺は、
なにやら大事なことを忘れている気が……少しだけした。
したはしたんだが、燃え滾る男としての修行への情熱が、
そんな考えを微塵切りにして掻き消してしまった。
悠介 「眠っていた心の目覚めだ……!俺の拳が血を求めている!」
それは大袈裟だが、とにかく強くなりたいと訴えかけてくる。
せめて人として光の武具や奥義に頼らずに朋燐を打ち負かせるくらいになりたい。
そのためには1に鍛錬2に鍛錬!3、4に休息5に実戦!!
おおぉ……!古来より日本人に伝わると云われる修行魂が俺の体を熱くさせる……!
ありがとう日本、ありがとう過去の人。
俺は日本人に産まれたことを心より嬉しく思う。
悠介 「ぬおぉおおおおっ!!!」
目指せ限界突破!忘れていることなど忘れたままで十分だ───!!
悠介 「我、光の武具を精製せん!」
中空に光を散りばめる。
それは即座に鋭い刃と化し、
数にして50はあろうかという凶器が、俺に向けて構えられた。
そう、それこそまさに聞きしに名高い、ある意味で『伝説』の武器。
これを知らぬ者は人を画し、これを知らぬ者に語れる浪漫は存在しない。
その概念、『一にして大量』。
意は『大量生産』であり、男の浪漫の中では『店に行きゃあとにかく買える』。
故に『イメージは一』にして『精製は大量』。
さあ唱えよその名。
知らぬ者は無しとされる、その名を。
其は『刃渡り90センチほどの鉄製の長剣』なり───!!
悠介 「“無限襲雨の鉄製剣()”!!」
空に無数の刃が煌く。
言ってしまえば『光の武具』として数えるのもおこがましいもの。
だが次から次へと精製され、愚直なまでに飛翔するその刃はおそらく『対人無敵』。
よほどの化け物ではない限り、これを防げる方法などあるまい───
悠介 「来いっ───!!」
それを脇差二刀で捌き切る!
捌き切れないまでも、どれだけ弾けるか試してやる!!
ギィンッ───ガォンッ!ガガォンガォガォオンッ!!!
空に弾かれるように飛翔する無数の刃。
構える得物は重く、だがそれを以って弾いてゆく。
ガギンッ!ギギギギンッ!ガシャンッ!ゴギィンッ!!
弾く度に、得物と刃との重さに体が持っていかれる。
だがその反動さえ利用し、体を回転させるなりして降り注ぐ刃を弾く。
悠介 「ぐ───!!」
10───20───30───……!!
悠介 「か、あ───はっ!はぁっ!」
腕が痺れる。
肺は酸素を欲しているくせにすぐに吐き出し、意識さえも朦朧とさせる。
50───……!60───……!!65───ゾフィィンッ!!
悠介 「づあっ───!!」
刃のひとつが腕の厚さの3センチを切りつけていった。
血を吸ったロングソードは草原に突き刺さり、それを確認する間もなく次弾が降り注ぐ。
悠介 「あ、やべ……」
そんな時に思い出した事柄がひとつ。
放った光の武具へのイメージが、完璧に『無限襲雨』だったこと。
それはつまり、降り止むことなど無いわけで───
悠介 「だぁああっ!!何処まで考え無しか俺はぁーーーっ!!!」
すぐさまにイメージを弾かせて『超越』を実行。
目の前かに迫るロングソードより強いイメージを弾かせて、それを破壊していった……。
しかしそれも『黄昏を消せばいい』という事実に後になってから気づき……
俺は、朝っぱらから自分のアホゥ加減に心底溜め息を吐いたのだった……。
【ケース25:晦水穂/バッドモーニング】
きゅるるるる……。
水穂 「…………」
くぅ〜ゅるるるるるぅぅぅぅぅ……。
若葉 「………」
木葉 「………」
くきゅ〜……。
セレス「………」
ゼノ 「………」
春菜 「………」
粉雪 「………」
……お腹、空きました……。
水穂 「はあ……」
昨日の夜までは聖ちゃんとみさおちゃんが作ってくれたお蔭で助かりましたが……
そのふたりも彰利さんの家に帰ってしまって、今朝は朝食が用意されていません……。
お兄さんはお堂で何かやってるみたいで、
呼びに行ったルナさんがとばっちりを受けて現在気絶中。
どうやら『光の武具』とかいうものの鍛錬をしていたらしく、
その余波にやられて目を回してます。
水穂 「あの……どうしましょう」
若葉 「店屋物───は無理ね。ここに店屋物を頼むことは自殺行為だから」
木葉 「麺類は冷めて伸び、ピザは凍てつき不味くなる。
高すぎる場所に住むのも考え物ですね、姉さん」
若葉 「……かといって、家の中で料理が出来るのはおにいさまだけ……」
春菜 「えっと……日余さん、料理とか出来たり……しないかな」
粉雪 「ごめん、無理……。
彰利が上手すぎるから料理で勝負するのが嫌で、習わなかった……」
春菜 「うぅ……」
絶望的だった。
ゼノ 「この箱にはもう何も入っていないようだが?」
セレス「戸棚にも小麦粉すらありませんね。
この家で食料が残っているとしたら、ルナの大根畑の大根くらいですね」
あれですか……。
でもガトリングカノン搭載の案山子が居る畑になんか入りたくないです。
春菜 「悠介くんになんとかお願いできないかな」
セレス「ルナの後を追いたいならどうぞ、止めはしません」
春菜 「うぅう……」
ルナさんの額には大きな痣。
なんでもお兄さんは剣の雨を自分に向けて降らせて、
それを全て弾くという修行をしていたらしい。
で、その弾かれた剣の柄が額にクリティカルヒット。
それだけならよかったんだけど、その後にお兄さんは別の武具を創造したらしい。
その余波に吹き飛ばされて、ルナさんは気絶に導かれたそうです。
木葉 「……姉さん、ここはわたしが」
若葉 「妙な使命感は出さなくていいです。座ってなさい」
木葉 「ですが姉さん、断食は美容によろしくありません。
わたしはそのようなこと、耐えることなど出来ないでしょう」
若葉 「材料も無いのにどうやって調理する気ですか」
木葉 「……女体だけ盛り?」
若葉 「全力で却下っ!」
木葉 「さすがに冗談ですが」
若葉 「当たり前です!」
ぜーはーと息をする若葉お姉さんに対し、木葉お姉さんはどこかツヤツヤです。
多分、からかったことで少し気が紛れたんだと思います。
水穂 「あの……やっぱり我慢するしかないと思います」
春菜 「うん、そうだよね……」
粉雪 「わ、わたしはお邪魔してるだけだし……」
水穂 「……あれ?そういえば篠瀬さんは?」
ふと、朝からまだ見ていない人が気になって訊いてみる。
と、『滝壺で精神鍛錬をしてくる』とか言っていたと、春菜お姉さんが教えてくれた。
水穂 「じゃあ……ハンバーガー食べます?」
若葉 「朝からそれじゃあ胃が持たないでしょう……」
水穂 「あぅ……で、でもでも、食べないよりはマシだと思うんですよっ?
学校もありますし、あまりのんびりもしてられませんし……」
若葉 「……背に腹は代えられない、ということですか……。解りました、いいでしょう」
若葉お姉さん、意を決して居間へと向かう。
そこには昨晩のハンバーガー398個があった。
ニ個は篠瀬さんとみさおちゃんが食べたから減ったわけですけど。
若葉 「……朝がハンバーガーなんて……。晦家始まって以来の奇妙空間ですよ……?」
木葉 「姉さん、ファイト。300は軽いです」
若葉 「重いわよっ!軽いっていうなら木葉っ、貴女も食べなさいっ!」
木葉 「わたしは減量中ですので遠慮させていただきます。
どうぞ、わたしのことなど構わずに肥えてください姉さん」
若葉 「うぐぐぐぐ……!!同じ体型で肥えるとか言わないで欲しいわっ……!」
木葉 「いいえ姉さん。姉さんとわたしとでは、1kgの差があります。
それで同じ体型と言われるのは些か不愉快です」
若葉 「なっ───」
水穂 「うあ……」
その場に殺気が立ち込めました。
もうもう、これでもかってくらいに濃度の高いものが。
そんなものを感じ取れてしまうあたり、わたしもこの家での生活が長いなぁと思うんです。
……慣れたかどうかなんてものは二の次にして。
若葉 「木葉あぁあああああっ!!!そこに直りなさぁあああああいいっ!!」
木葉 「お代官様、堪忍してー」
若葉 「ふざけるにしてももっと覇気を込めなさい!なんですかそのやる気の無い声は!」
木葉 「……実際問題としてやる気が無いのに。
無いものねだりは性質が悪いですよ、姉さん」
若葉 「はっ───」(ブチリ)
……地襲警報発令……。
わたしは静かに、その居間から立ち去りました……。
【ケース26:桐生真穂/ライラライラライ】
───……はぐはぐ、こくん、こくこく……。
桐生 「〜♪」
真穂 「………」
桐生家の朝は……まあまあ早い。
わたしは早めに大学に向かうし、お母さんは学校に。
何故かわたしの部屋で朝食を取る母の考えは今もよく解らないけど、
せめて人が着替えるまでは待ってほしい。
桐生 「あははははは」
真穂 「………」
箸を銜えたまま、部屋のテレビを見て笑う母。
母に言わせれば『ご飯はみんなで食べた方が美味しい』らしい。
それは確かにそうなのだけど、この場合は『みんなで食べてる』とは言わないと思う。
ツッコミどころ満載の母だが、それでも嫌いになれないのはどういった因果なんだろう。
真穂 (因果云々にこじつけるほど、嫌ってわけでもないんだけど)
むしろ自分はこんな母が好きである。
天真爛漫、というのか……どんな時でも自然体である母が羨ましく思える。
けど妬みには程遠い感情なので、やっぱり母が嫌いになるなんてことはない。
真穂 「美味しい?」
桐生 「……アキちゃんの料理が恋しい」
真穂 「はあ……」
弦月くんの料理を食べてからというもの、お母さんはこの調子である。
確かにどんな料理よりも……その、なんて言うのかな。
『家庭的』……『愛情がある』……『心にじんわりとくる』……ああ多分全部だ。
とにかく懐かしいくせに飛び抜けて美味しい料理って感じだと思う。
ただ『美味しい』だけなら、きっと誰にでも出来ることだ。
でも弦月くんの料理はちょっと違う。
本当に心にじんわりと何かが溶けていくような、
それでいて懐かしさが込み上げてくる料理だ。
『ああ、食事で幸せが得られる人の気持ちって、きっとこういうものなんだ』って、
簡単に納得出来るような味だ。
それをお母さんも感じたってことだろう。
桐生 「ね、真穂。アキちゃんお婿に貰いなよ。
わたし、アキちゃんとだったらうまくやってけると思うんだ」
真穂 「却下だよ、そんなの。わたしべつに弦月くんのこと好きじゃないし、
そもそも友達としてしか見てないもん。
それにね、そんなの弦月くんが怒るよ。
料理が美味しいから結婚してくれ、なんて……。
弦月くんの場合、恋愛感情なんかよりも友情を優先しちゃうんだから」
桐生 「むー。アキちゃんが婿養子に来てくれたら、最高に面白いと思うんだけどなぁ。
それにさ、真穂。貴女昔に言ってたじゃない。
『弦月くんのお蔭でお友達が出来た〜』って。
その恩を返すのって、今なんじゃない?」
真穂 「却下だってば。そんなことしたら本気で怒られるよ?
友達関係だって無くなるし、罵倒のひとつじゃ済まされないと思う。
弦月くんはやさしいけど、でも筋の通ってないやさしさはくれない。
こっちが間違ったことをしたらちゃんと怒る人だもん」
桐生 「……うん。やっぱり真穂って『幼馴染』だよね〜。
アキちゃんのこと良く解ってるよ、うん。お母さんは嬉しいぞ〜」
真穂 「………」
言葉通り、嬉しそうにウインナーをつつくお母さん。
……ああ、やられた。
ようするにお母さんは、
わたしがどれだけ弦月くんのことを理解してるかを知りたかったんだ。
真穂 「う〜……」
にこにこ顔でわたしを見上げる母の視線がたまらなく恥ずかしくて、
わたしは目を逸らしながら着替えを始めた。
うう……たぶん顔真っ赤だよ……。
……なんて、パジャマのボタンを外して脱ぎ捨てた時だった。
シャキィンッ!!
彰利 「真穂さん真穂さん!見てよコレ!
アメリカで本場のドナルドに会ってサイン貰っちゃった!!」
目の前に、弦月くんが現れたのだ。
しかもその視線が、わたしの顔から下の方に移り───
彰利 「───……ややっ!?」
就寝時にはブラを付けるタイプとはいえ、
下着姿を見られたわたしの絶叫は───
弦月くんの鼓膜を破りかねない勢いで放たれたのであった。
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