───FantasticFantasia-Set10/空界モミアゲ王伝説───
【ケース22:ディルゼイル/王と家臣】
───光が煌いた。
気づけば強大であった気配は消え、黄昏色の空の果てで塵に帰す存在があった。
アーガ『───なんだ、死んだのかよ王サマ』
ディル『余所見は感心しないな』
アーガ『……感心なんて必要ないね。俺はただ強いヤツと戦えりゃあそれでいい』
ディル『ならば我が王と戦ってみるか?あいつは強いぞ。意志をしっかりと持っている』
アーガ『残念だが遠慮するね。マグナスの力は確実に竜王クラスのものだったんだ。
いくら誇りがどうとか言って性根から腐ってようが、それは事実だ。
勝てないって解ってる戦いはしないのが俺の主義だ。
その上で、その中で、俺と対等に戦える相手が一番なのさ。
───なぁ、ディルゼイル』
ディル『………』
レーザー、炎、鎌鼬が入り乱れる。
それらを避け、同様に返す。すると相手も同じように避ける。
ディル『退け、アーガスィー。蒼竜側の負けは明白だろう』
アーガ『へっ、先に言っただろうが。俺はあの王サマがどうなろうと知らない。
俺はな、ディルゼイル。四飛竜の中で誰が一番強いのかに興味があったんだ。
特に───俺と実力が近いお前にな』
ディル『───……ふむ。なるほど、こういう時にあの言葉は言うべきなのだろうな』
アーガ『なに……?』
ディル『いい言葉を教えてやる。───寝言は寝て言え』
キュォオオオッ───口に光を込める。
それを見た途端にアーガスィーが飛翼を伸ばし、飛翔する。
アーガ『無駄だぜディルゼイル!飛竜の速さはそこいらのドラゴンよりも速い!
その速度をソレで狙い撃ちするなんてことが出来るわけがない!』
ディル『誰が狙い打ちすると言った?』
アーガ『なに……?』
光を込めたまま飛翔する。
一気にアーガスィーとの間合いを詰め、一気にそれを解放する!
アーガ『ハッ……ハッハッハッハッハ!!
実力も似てるなら考えることまで似てるか!?つまらねぇ皮肉だな!』
ディル『なに───!?』
───それは数瞬の驚愕。
開かれたアーガスィーの口には、私と同じく光が込められていた───!!
アーガ『グォオオオオオーーーンンンンッ!!』
ガォオオオオンッ!!!───アーガスィーの口から鋭い光が放たれる。
だが私は光を放つことも出来ず───ガガガァアアアォオオオンンッ!!!
ディル『───ッ……!!チィイイイッ!!』
両飛翼、尾にてそれを受け止めた。
アーガ『ハハハハハ!!間一髪かぁ!?お前から仕掛けておいて光さえ放てないとはなァ!
やはり飛竜の中じゃあ俺が最強だ!!
実力が同じだったとしたらお前の耐久力もよく知ってる!
お前の飛翼や尾は間も無く消え失せる!
そうすれば俺が手を下すまでもなく地面に落下だ!』
ディル『……やれやれ。甞められたものだな』
アーガ『なに……?』
飛翼と尾を消さんとするアーガスィーのレーザーを、
それらを広げるようにして弾き消した。
アーガ『……!?馬鹿な……!何故傷付く程度で済んでやがる───!?』
ディル『実力も同じなら考えることも同じ、か。
残念だったな。この飛翼と尾は既に王の意思により既存から超越されている。
だが───』
コァッ───バガァアッチュウゥウウウウウウンッ!!!!
アーガ『ッ!?チィッ!!』
口から放たれた光を、私がそうしたように飛翼と尾で防ぐアーガスィー。
だがその飛翼と尾は見る内に削り殺されてゆく───!!
アーガ『な、に……!?何故───!!俺がお前に劣っているとでも───!?』
ディル『もう一度言ってほしいか?寝言は寝て言えアーガスィー。
少し考えれば解ることだ。お前が言ったのだろう?
【実力も同じなら考えることも同じ】だと』
アーガ『だからだっ!俺が、俺がお前に負ける道理が何処にある!!』
ディル『簡単だ。実力も同じなら考えることも同じ。
だがお前と私とでは決定的に違うものがある。それは───王の存在だ』
アーガ『───!!』
ディル『殺すことはしない。確かにお前と私の実力が近しいのならば、
たとえこの高さから落ちたとしても死には至らぬだろう』
アーガ『グッ……ぐぉおおぁああああああああっ!!!!』
アーガスィーの飛翼の膜が消え去る頃、私は飛翼を翻しその場から離れた。
それを追おうとしたアーガスィーだが当然飛べる筈もなく。
黄昏の景色に染まるこの世界の下方の果てへと姿を消していった。
【ケース23:弦月彰利/超至空戦闘アキトシ 〜愛、忘れてますよね?〜】
彰利 「魔導砲発射用意!」
魔導士1「チャージレベルワン!」
魔導士2「チャージレベルツー!」
彰利 「魔導力、黄昏より魔導船へと汲々!」
魔導士3「魔導力変換!20%!40%!60%」
彰利 「拡散機を魔導砲射出部へ接続!」
魔導士4「魔導砲拡散機、接続完了!!」
魔導士5「魔導力100%!チャージレベルマキシマム!!」
彰利 「標的方位72、ブルードラゴン!魔導砲───発射!!」
ガォオオオオオオオンンンッッ!!!
魔導士1「魔導砲───命中!」
彰利 「ィヤッハッハッハッハッハ!!!!空界の科学力はァアアアア!!!
世界一チィイイイイイイッ!!!!」
『世界一チィ』は誤言にアラズ!
いやぁ案外司令塔みたいなのをやるのって面白いわ!!
彰利 「エ、エクスタシィーーーーッ!!
一度でいいから指示した状態で大砲とかレーザーとか撃ってみたかったんだよね!
ファンタジィイイーーーーーッ!!!万歳!!!」
魔導士「司令!魔導砲、効いていません!!」
彰利 「ゲゲェエエーーーーーーーーッ!!!!!」
予想外!私は大変驚きました!!
魔導士1「それどころかブルードラゴンがこちらに近づいてきています!」
彰利 「そ、総員退避ーーーーッ!!!」
一目散にとんずら。
やっぱ急に司令なんてやったって上手くいく筈が無かった。
しゃあない、やっぱダークマターで───
声 「やめろぉおおおーーーーっ!!!!」
───行動、停止。
魔導船の中に映されている画面の中で、
この魔導船に近づいてきていたドラゴンの前に立ち塞がる姿があったのです。
それは……なんつーか、悠介だった。
青竜 『やめろ……?貴様、なにを言い出す』
悠介 「モノ言い出してんだ!蒼竜王は死んだ!だったらもう戦う理由なんてないだろ!」
青竜 『理由……?そんなもの、我らの縄張りへ入り込んだ時点で確立している。
攻撃されれば抗うのが【存在】だ。
人間、貴様もそうして我らの眷属を殺したのだろう』
悠介 「そんなことは解ってる!死んでやるわけにはいかないのは誰だって同じだ!
けどこっちのやつらは馬鹿な王サマに従ってやっただけなんだ!
頼む!これ以上互いを傷つけるようなことはしないでくれ!!」
青竜 『……ふざけるなよ人間……!!
ならば貴様や他の者に殺された我が眷属たちの死はどうなる!!』
悠介 「───ッ……どうとでもなる!!だから攻撃をやめてくれ!!」
青竜 『世迷言を……!なにがどうとでもなるだ!どうとでもなるものか!!
我らは貴様ら人間を殺し尽くしてくれる!』
画面の中でブルードラゴンが吼える。
それとともに口を大きく開き、真っ直ぐに青竜の目を見つめたまま動かない悠介。
彰利 「ばっ───!!」
馬鹿野郎、と叫ぼうとした瞬間には血が舞っていた。
既に何かに砕かれたのだろう血塗れの肩に前歯を突き立てる青竜と、
それでも微動だにしない悠介。
青竜 『……なんの真似だ。何故避けない』
悠介 「っ……言った言葉が、世迷言なんかじゃ……ないからだ……っ!!
相手を説得しようとしてんのに……
自分さえ信じさせることが出来ない言葉に、なんの意味があるっ……!!」
青竜 『……人間……貴様は……』
悠介 「『命を殺した罪』は洗い流せやしない……そんなことは解ってる。
それが運命だなんて言うつもりはないし、言いたくもない……。
でも解ってほしい……俺達だって同じだ。
同じ命であり、強者には逆らえない存在だって居て、
その度にこんな馬鹿な戦いをして……傷つけ合って……。
それでも───助けられるなら助けたいって思ってるヤツだって居るんだよ……」
青竜 『───……』
悠介 「……頼む。攻撃をやめてくれ……。
塵になっちまったお前らの眷属たちは俺がなんとかするから……」
肩を穿たれ、嫌になるほどの血が流れてなお、悠介は傷を癒そうとしない。
それどころか相手のことばかり考えて、自分が削れることを厭わない。
……なるほど、これが俺が悠介に対してやっていたことってわけか……。
正直見るに堪えない。
『何か』のために親友が削れてゆくのを見るのはいい気分はしないな───
青竜 『……ひとつ訊かせろ───人間、何を泣く』
悠介 「そんなこと知るか……。止めたくても出ちまうんだから仕方ないだろ……っ!」
……悠介は泣いていた。
肩の痛みのためか、それとも竜族のためなのか。
『命を殺した罪』を泣くのならば、それはこの世界には相応しくないだろう。
来て間も無い俺でもそう思える弱肉強食がここにはあるのだから。
甘い考えだと断じてしまうべきものだ。
けど───その涙は確かに本物で、悠介はその罪を背負っていこうと覚悟を決めている。
今まで塵にしてきたもののことさえも背負おうとしているのだろう。
彰利 「………」
呆れた。
なにに呆れたって、そんな悠介をずっと支えてやろうって思ってる自分に。
結局俺も馬鹿野郎なのだ。
どんな理由があるにせよ、あいつの親友をやめるのはつまらなすぎる。
だったら一緒にその罪とやらを背負って、ふたりして笑って生きていきゃあいい。
青竜 『……人間。名をなんという』
悠介 「……晦悠介」
青竜 『では悠介、バックパックを出せ。蒼竜珠がある筈だ』
悠介 「あ、ああ……ぐっ!」
バックパックを取り出そうとして、悠介は表情を歪ませた。
潰された肩が激痛を出しているんだろう。
それでもバックパックを出した悠介はその中から蒼い珠を取り出した。
青竜 『……───癪なものだがな。黄竜どもの気持ちが解ってしまった。
ここに、お前を我ら青竜の王として認める』
悠介 「へ───?」
青竜の言葉とともに蒼竜珠が光り輝く。
青竜 『最初に言っておくがな。強者の命により仕方なく戦っていたのは我らも同じだ。
……まったく、お互い禄でもない王を持ったものだな』
悠介 「───……くっ……は、あははははっ……!!」
青竜 『……?なにを笑う、王』
悠介 「いやっ……くはははははっ!!
……違うって、王を持ったのは魔導船に乗ってる皇国の民たちで、
俺はただそれに巻き込まれた可哀相な馬鹿野郎なんだ」
青竜 『───……クフッ……ク、クハハハハハ!!そうか!それは早合点だ!
おかしなものだな!笑うなど幾年ぶりか!クハハハハハハ!!!』
悠介 「はははっ……───なぁ、笑えるのに笑わないのはつまらない生き方だろ?
だからさ、笑える時には笑うべきだよ。そこに王だの家臣だのなんて関係ない。
竜族が誇りを大事にするっていうなら俺は何も言わないし、
そもそもお前らが言わせないと思う。
でも───それが間違った誇りだったなら俺だって怒るし、
それが誇りを汚すことだとしたらお前らだって怒ると思う。
……そういう感情にさ、人間だの竜族だのなんてないだろ?」
青竜 『……そうか。だからお前は泣いたのだな。
おかしなヤツだな、新たな王は。
蒼竜王と死に至らんとする死闘を繰り広げたかと思えば、次は相手の心配か』
悠介 「人間の中にはこういう特殊な馬鹿が居るってことだよ……ほっとけ」
青竜 『クッ───クアハハハハハハ!!!!実にいい!お前の傍は実に面白いぞ!!』
悠介 「………」
画面の中で悠介が苦笑していた。
その正面ではブルードラゴンが大口開けて笑ってるし……
えーと、なんだ?
もしかして悠介ってモンスターに好かれる体質?
俺なんか子供にばっかり好かれる体質だってのに。
青竜 『さぁ、おかしな王よ。お前の最初の仕事だぞ。
戦っている黄竜と青竜を止めるんだ』
悠介 「……いきなり命懸けの戦いだな。
あー……彰利ー?見てたら人間どもにも攻撃やめさせてくれ。
もう戦う理由なんてありゃしない」
彰利 「ヘっ!?あ、あら気づいてたん!?」
無線を通して言ってみると、悠介がこっちを見て笑った。
その後ろではリヴァイアが頭を痛めてる。
……そりゃそうだろ、俺だって同じだ。
だってなぁ、知り合い……俺の場合は親友だけど、そいつがふたつの竜族の王だぞ?
あたしゃもうどう反応したらいいか……ああまあとりあえず通信で気を紛らわせよう。
【ケース24:晦悠介/えらいことになった……】
───……。
声 『あー!あー!テステス!マイクのテスト中!
でも通信出来るって知ってるから意味ないねこれ!
───各員に通達!戦いは終了した!今すぐ攻撃をやめなさい!
3秒待つ!3秒経った後に攻撃したら、
ルーゼンさんこと阿修羅マンの波羅蜜多ラリアットがキミを襲うぜ〜〜〜っ!!』
脅しにもならない彰利の声が無線を通して響く。
直後に近くの魔導船の中で轟音と喧噪。
恐らくはルーゼンが彰利の居る場所に転移して喧嘩を始めたんだろう。
悠介 「───よし、行こうかフェンリル」
ディル 『いいや、王は私が運ぼう』
悠介 「ってディル?お前、さっきの飛竜は……」
ディル 『今頃大地に沈んでいるだろうな。
どちらにせよ王とともに空にあるのは私の仕事だ。
これは譲れないな───譲れフェンリル』
フェンリル『出来ない相談だな。王は私が運ぶ。貴様は大人しくそこらで───』
悠介 「じゃ、頼むディル」
ヒョイとディルゼイルの背に移動する。
ディル 『承知した』
フェンリル『なにっ!?王キサマ!!』
悠介 「フェンリルはそのままリヴァイアを運んでやってくれ。
最初から目的はそれだったんだ、重要な仕事だよ」
フェンリル『ム───王の命ならば仕方あるまい。
私としても王と仲違いになるのは好ましくない。
今日のところは譲ってやるぞ飛竜』
ディル 『常に譲ってもらわねば困るな』
悠介 「子供かお前らは……」
けど、ギスギスした感じは全然ない。
むしろじゃれあってる感じだ。
……実力じゃあフェンリルの方が数段上なわけだが。
悠介 「じゃあディル、説得に回るぞ。えーと……」
青竜 『レザードだ。好きに呼べ』
悠介 「じゃあレザード。出来ればお前にも説得を頼みたいんだけど……いいか?」
レザード『……つくづく腰の引けた王だな。
蒼竜王と戦っていた時の剣幕と豪気はどうした』
悠介 「あー……俺、そんなに凄い剣幕だったか?」
ディル 『青竜。王は普段はただモミアゲの長い男だが、戦が始まると人格が変わるのだ。
戦の中の王は凛々しいぞ、お前が王を王として選んだことは賢い選択だ』
悠介 「ディル……お前までモミアゲ言うか……」
レザード『どちらにせよだ。王ならばドンと構え、命じていればいい。
お前にはそういったものが決定的に欠けて───』
悠介 「ちょっと待った。そんなんじゃあマグナスと変わらないじゃないか。
俺はそんなのは嫌だぞ。力で従わせるのなんか冗談じゃない。
王だとか家臣だとかそんなことよりも、
普通に接していられればいいじゃないか」
レザード『………』
レザードが俺の目を見て黙りこくる。
だが次の瞬間には爆笑し始めた。
ドラゴンの爆笑なんて普通なら見れたものじゃない……貴重だ。
貴重なんだけど自分が笑われてるとなると複雑である。
悠介 「あ、あのなぁ……俺、なにかヘンなこと言ったか?」
レザード『ああ、言ったな。まったく、つくづくおかしな男が王になったものだ……。
だが、だからこそいいのかもしれないな。確かにお前は他の人間とは違う』
悠介 「それって俺が人間じゃないって言いたいのかコラ……」
レザード『それもあるがな。私はそのことになんの不満もない。
それはお前も同じだと思うのだがな。違うか?』
悠介 「───……『守れる力』があればそれでいい。
確かに人間じゃないなんて些事だけどな……」
正面きって人間じゃないなんて言われてショック受けないヤツなんてそうそう居ない。
悠介 「とにかく、俺のことは王がどうとか言うよりも普通に接してくれればいいから。
ディルだけでも大変なのに、他のヤツにまで王王言われたら正直疲れるよ」
レザード『それはそれで面白そうだな。蒼竜王さえ退けたお前が疲れる姿は興味がある』
悠介 「やめい!性格悪いぞお前!」
レザード『ああ、お前もそれくらい言える程度が丁度いい。
お前の言い分からすれば、人間や竜族の感情に種族の違いなどないのだろう?
ならば我らと接する時も遠慮などするな』
悠介 「レザード……」
ディル 『まったくその通りだ。
戦いが始まれば指示ばかりのくせに、普段のお前は平和すぎている』
悠介 「……それって悪いことか?」
ディル 『褒めているんだがな』
ウソだ。
絶対ウソだ。
レザード『さて、王よ』
悠介 「王はヤメろ!!」
レザード『早く止めなければ両竜族ともに大変なことになるのだがな』
悠介 「へっ───?だ、だわぁあああーーーーーーっ!!!!
やめろやめろお前らあぁあああーーーーーーっ!!!!」
ディルの背にある手綱をクンと引き、慌てて仲裁に入る。
一応肩の傷などを治してから挑んだわけだが───
止める行為の大半が実力行使だったことは、恐らく言うまでもないだろう……。
レーザー撃たれるわ火ィ吹かれるわ、爪で削がれるわ噛み付かれるわ……。
仲裁が終わる頃には、結局治した体もとことんボロボロになった。
───……。
……。
彰利 「馬鹿かねキミはこの野郎」
悠介 「バカとはなんだコノヤロウ!!」
彰利 「ゲゲェエエーーーーッ!!!」
それは両竜族がようやく落ち着いてからのこと。
俺はひとまず皇国の民たちと竜族とリヴァイアたちをイクスキィ蒼山に置いてきて、
現在は迷いの森の中を歩いている。
彰利にとある提案を出した途端、彰利は驚愕の顔とともに罵倒を飛ばした。
たまには返してみようと思って出た言葉が彰利を大変驚かせ、
しかし彰利はすぐに真面目な顔になった。
彰利 「いや……ですけどね?そげなことしたらキミの体が……」
悠介 「なんとかなる───じゃないな、するしかないって。
うむ、なんとかなる。なんとかなるぞーぅ」
彰利 「無茶苦茶胡散臭そうだぞキミ」
悠介 「まあまあ。───グルグリーズ、居るんだろ?泉に飛ばしてくれないか」
彰利 「グリーンジャイアント?」
悠介 「お前それ無理矢理すぎ」
そう呟いた途端、景色が変わる。
俺と彰利はひらけた草原に立っていた。
当然、草原の中心には枯れた大木と千年の寿命の泉が。
緑竜王『どうしたのだ人間。ここになんの用だ』
悠介 「あー……無茶しに来た。俺が死んだら孫呉の意思をよろしく頼む」
彰利 「俺が言うのもなんだけど、落ち着きなさい悠介くん。マジで」
悠介 「緊張をほぐしたかったんだよ……」
彰利 「ほうほう、その成果は?」
悠介 「…………訊くな」
滅茶苦茶恥ずかしかった。
緑竜王『無茶?いったいなにを───』
悠介 「悪いようにはしないつもりだから。まずは───」
助走をつけ、大木の下まで跳躍する。
足りない分は風を創造することで距離を稼いだ。
緑竜王『何をする気だ人間。よもやその木を汚しに来たとでも───』
悠介 「そんな馬鹿なことはしないって───イメージ。分析開始」
大樹の分析を開始する。
枯れたその木の肌に額をつけ、在り方の歴史を遡るように。
過去、この大樹がどんな姿をしていたのか───それを、他ならぬ大樹自身に訊くのだ。
悠介 「ッ……グ……」
頭痛が発生する。
しかしさらに深淵へと分析を潜り込ませ、この大樹の『在り方』を探す。
その過程で様々な映像を見た。
───ブチッ!
悠介 「がっ!あ……!!」
視界が真っ赤に染まる。
真紅眼によるものではない、純粋なる血液による赤。
しかしそんな赤が、この大樹の過去を映す。
緑があり、草花が咲き乱れ、鳥が巣を作って穏やかに鳴いている穏やかな景色を。
この大樹自体もその景色を懐かしみ、
だが───今やそれが決して戻らぬものだということを知っていた。
俺は……そんな大樹に語りかけた。
───諦めないでくれ、と。
悠介 「ッ……う、ぎ……!!」
赤を映していた視界が完全に潰れた。
分析によって『視ていた』ためか、理力に堪えられなくなった眼球が潰れたのだ。
それでもその景色を視ることで、大樹の思いを受け止めてゆく。
───帰りたい、帰りたいと声が聞こえる。
それが救いになるのなら、今度こそ俺は手を伸ばしたかった。
あの時、あの神社の境内でロディエルによって潰された『親』たちの代わりに。
───戻りたい、戻りたいと泣き声が聞こえる。
だったら、と手を伸ばした。
肉体としてでなく、意識として。
───伸ばした手に、冷たくなった小さな手が重ねられた気がした。
枯れたくなかった。
いつまでもみんなと一緒に、緑を生して風に揺らされていたかった、と───
そんな言葉が俺の中に流れてくる。
───だから安心させるように呟いた。泣く必要なんてないんだ、と。
悠介 「───“再生せよ、汝”……」
『在り方』を受け取った。
相手のイメージを具現させる時とやり方は同じ。
けど───この大樹の歴史は生半可なものじゃない。
黄昏を創造してもなお足りないくらいの歴史が、俺の中の理力さえも奪ってゆく。
声 「───!!〜〜〜!!!」
……親友の声が聞こえた。
でも何を言ってるのか解らない。
きっとこんな馬鹿な創造をやめさせようとしてるんだろう。
けどさ、彰利……やめることなんか出来やしないよ。
だってさ、泣いてるんだ。
寂しいって……帰りたいって……戻りたいって……。
自分の意思でも寿命でもなく、傷つけられてしまったために枯れちまったヤツらの気持ち、
俺たちならきっと解ってやれると思うんだ。
だから───やめられやしないんだ……!!
悠介 「……怖がるな。恐れないでくれ。
お前が戻りたいって思うなら、きっと戻れるから───」
小さく、頼りなく乗せられた意識の手を強く握る。
そして……暗い闇から光のある世界へと連れ出すように引っ張り上げた。
すると───
悠介 「あ───……」
急に、視界が開けた。
潰れた筈の視力は戻り、目の前には───
彰利 「う、うお、おお……!!」
緑竜王『……信じられん。まさか……』
目の前には、綺麗な大樹が立っていた。
枯れていた筈の枝も肌も瑞々しく蘇り、存在すらしていなかった草花までもが咲き乱れ。
さらに迷いの森として鬱葱としていた周りの木々までもが鮮やかな色を生し、
先ほどまで暗かった世界に光を差し込ませていた。
緑竜王『まさか……まさか!』
ズパァンッ!!
彰利 「うきゅうっ!?」
突如、緑竜王の尾撃が彰利を襲った。
当然彰利は空を舞い、しかし次の瞬間には返す尾撃に地面へと叩きつけられていた。
彰利 「おが、おががががが……!!───が?」
しかしそれもすぐに回復する。
彰利 「あ、あら?なんで?この世界って回復が遅いんじゃ……」
悠介 「───……ははっ」
その意味が俺の中に駆け巡った時、俺は大樹をコンッと小突いて笑った。
悠介 「よかったな、戻れて」
───で。その笑った瞬間。
悠介 「……あ、れ……?」
俺の体は俺の意思とは関係なく傾き、俺はその場に倒れた。
彰利 「悠介っ!?」
緑竜王『───人間!?』
意識が泥の中に吸い込まれていくようだった。
あぁ……やっぱ無茶な創造はするもんじゃないな……。
分析、控えた方がいいかも……───
───……。
……。
悠介 「…………ン───?」
ふと目を覚ました。
見えるのは少し明るい見覚えのある景色。
けれど前に見た時はもっと暗かった筈のそこは、ドワーフとエルフが居たあの集落だった。
悠介 「俺……?」
倒れていた体を起こし、辺りを見渡す。
───と、その傍にコトリと緑色の珠が落ちた。
悠介 「……これって」
声 「緑竜珠じゃ。グルグリーズがの、王の座を譲ると言っておったぞ」
悠介 「へぇ……ってなにぃっ!?───じいさんおはよう」
長老 「納得するのか驚くのか挨拶するのか……」
悠介 「出来るだけ礼儀は失いたくないんだ。日本人として」
まあそれはそれとしてだ。
悠介 「王の座を譲るってどういうことだよ」
長老 「ワシに棘のある言葉を言われても困るんじゃがの。
なんでも大樹を守るには王の肩書きが邪魔なんだそうじゃ。
蘇った大樹を守るために、自分はあそこの番人となる、と言っておった」
悠介 「番人って……今までだってそうじゃなかったのか?」
長老 「今までと今とでは明らかに違うことがあるんじゃよ。どれ、外に出てみい」
悠介 「……?」
言われるままに家の中から外に出る。
すると───一度訪れたことがあるとは思えないくらいの別世界がそこにあった。
鬱陶しいくらいに伸びていた木々が短く収まり、
確かに高い位置まで伸びてはいるものの、それが太陽を遮るようなことはない。
長老 「この森は既に『迷いの森』ではなくなったんじゃ。
大樹の復活によって『治癒』も戻った。
つまり、ブレイバ−が増えるということじゃ。
そうなれば無鉄砲で頭の悪い輩が再び大樹を傷つけるやもしれん」
悠介 「だから番人、か」
長老 「そういうことじゃ。番人……人じゃないだろうがというツッコミは無しじゃぞ?」
悠介 「そんなツッコミするかっ!!」
長老 「ワシはお主のツレにされたがの。アキトシ、といったか?」
悠介 「あの馬鹿……」
って、そういえば彰利は何処に居るんだ?
見る限りそれっぽい姿は……
声 「このボケェエーーーッ!!麦茶を馬鹿にする気ザマスかてめぇ!!」
声 「バカヤロコノヤロォ!!俺ゃレタス汁の方が美味ェって言ったんだよハゲ!!」
声 「ハッ……!!ま、またハゲって言いやがったなこのボケェエエエーーーッ!!!」
声 「なんだコラやンのかコラこのハゲこの野郎!!」
……よし、なにも聞こえなかった。
悠介 「とにかく、グルグリースがあの樹を守るからって、俺にこれを渡したわけか?」
長老 「そういうことじゃの」
シゲシゲと緑竜珠を見る。
だが……
悠介 「やっぱりダメだ。
俺がこんなの持ってたってグリーンドラゴンが俺を王だなんて認めないだろ?」
長老 「いいや。グリーンドラゴンなどという種族はもう、グルグリーズのみなんじゃ。
皆、森を汚された際の瘴気に当てられ死んでいった。
残ったのはグルグリーズと家臣の飛竜、ヴァルトゥドゥスくらいなもんじゃ」
悠介 「……そっか。でも俺、そのヴァルトゥドゥスとかいう飛竜、見たことないぞ?」
長老 「たわけモン。お前の持っておるのはなんじゃ」
悠介 「へ?何って、緑竜珠……って、まさか」
長老 「そのまさかじゃ。グルグリーズは瘴気が溢れることを察知し、
傍に居たヴァルトゥドゥスだけでもと緑竜珠に入れたと聞く。
それが正しければ、その中にヴァルトゥドゥスはおるじゃろ」
悠介 「───……」
不安に思いながらもココンと緑竜珠を突付いた。
すると───ゴォッ!バサァッ!!
確かにその中から、濃い緑の体色をした飛竜が現れた。
ヴァル『…………話は全て、珠の中で聞かせて頂きました。
新しき王よ、私はあなたとともにあることを誓いましょう。
よろしければ名をお聞かせ願えますか』
悠介 「───……晦悠介。あのさ、出来れば畏まった口調は勘弁して欲しい」
ヴァル『失礼。これが私の喋り方なのです。
元々の口調を変えるのは難しいですが、変えろというのなら』
悠介 「も、元々なのか……!?あぁ……そりゃまいったな」
ヴァル『……?何か至らぬ点でも?』
悠介 「ああいや、いい、いいんだ。
けどさ、俺を『王』として扱うのはやめてくれないか?
俺はお前ら竜族とは対等で居たい」
ヴァル『恐れながら。
三竜の王、ドラゴンルーラーであるあなたと私が対等などとは思えません』
悠介 「ド、ドラゴンルーラー?って───うあ……」
自分の首に下がってるランクプレートを見れば、
確かに『“屠竜を振るう勇者()”』と『“三竜を統べる竜王()”』の文字が。
……アア、頭イタイヤ俺……。
悠介 「と、とにかくっ!今は思えなくてもいつかはそう思えるようになってくれ!
もっと砕けた感覚で話し合えるようになろう!なっ!?」
ヴァル『……善処します。ですが……それは王、あなたの人格にも由()るものですよ。
それをお忘れなく』
悠介 「解ってる。頷いてくれただけでありがたい」
ヴァル『……そうですか。では私は緑竜珠の中に戻ります。
必要な時にはいつでも呼び出してください』
フワリとヴァルトゥドゥスが宙に浮き、緑竜珠の中へと消えてゆく。
俺はそれを見届けると、モシャアと息を吐いた。
長老 「三竜の王か……おぬし、何者じゃ?」
悠介 「晦悠介……死神……だけどなんか今、自分の在り方に頭を痛めてる……」
俺が竜族の王って───……えらいことになった……。
【ケース25:晦悠介(再)/ますますえらいことになった……】
───彰利とジークンとともにイクスキィ蒼山に転移した。
ちなみにジークンにはしっかりと麦茶を作ってもらってある。
これからすることに必要になるかもしれないからだ。
さて……俺はこの場で、俺がこれからすることの全てを話した。
───途端、人間と竜族全員から罵倒を頂いた。
悠介 「いきなり怒鳴るなっ!!なんとかするって言ったらなんとかするっ!!」
レザード『馬鹿な!無茶をするということはお前が傷つくということだろう!
王と認めたからにはそんなことは許さんぞ!』
黄竜 『そうだぞ王!!』
青竜 『王!!』
兵士1 「王!」
兵士2 「あなたに死なれたら困るのです!」
魔導士 「王!!」
悠介 「よってたかって王って言うなぁああっ!!
大体お前らの王はオウファっていう馬鹿キングだろうが!!」
兵士3 「そんな古()の記憶は忘れました」
悠介 「オイ」
忘れるの早すぎだろ……。
魔導士1「こんな王には付いていけません。どうか新たな王になってください」
魔導士2「アキトシという者から聞きましたよ。あなたは王なのだと」
悠介 「……いっぺん死ぬかコラ……」
彰利 「い、いえ……キミの未来を救うために、
もう過去に10回以上死んでるんで勘弁……」
オウファ「ふ、ふざけるな!お前らの王は私!私だ!!」
魔導士3「黙れ!至高魔導術師さまから全て聞いたぞ!前国王を毒殺したのは貴様だと!」
兵士4 「あのお優しい国王を毒殺など……許せん事実だ!!」
オウファ「くっ……だからなんだ!?貴様ら私を殺すのか!?」
リヴァ 「いいや。お前を殺すのはわたしだ。これは誰にも譲れないことだ」
オウファ「───!リ、リヴァイア……!!」
リヴァ 「随分、世話になったよなぁオウファ。
わたしに吐いたその愚言の数々、忘れたわけじゃないだろう?
こうして水晶の檻を奪い返した今、お前の命令を聞く必要もないわけだ」
リヴァイアがジリ、と歩みを進める。
オウファは体を震わせて後退するが、体は縄で縛られているために上手く歩けずに倒れた。
オウファ「ヒ───た、助けろ!お前ら、国王である私を助けろぉっ!!」
魔導士1「なにを言っているんだ?我らの王はそちらに居るモミアゲ王だ」
悠介 「あとでツラ貸せこの野郎」
魔導士1「えぇっ!?」
オウファ「くぅ……!や、やめろリヴァイア……
お、お前は人を殺すようなヤツじゃあなかっただろっ?なっ!?」
リヴァ 「ああそうだな。わたしは人を殺すようなことはしなかったな」
オウファ「そ、そうだ!お前は───」
リヴァ 「しかし困ったことに、お前の中ではわたしは『冷徹』らしいからな。
だったら国王の最後の命に従ってやるのが、
元宮廷魔導術師としての義理じゃないか?」
オウファ「えっ……!?あ、ヒ、ヒイ!!」
リヴァ 「迷うなよ。お前の進む道は地獄への片道切符のみなんだからな」
リヴァイアが式を紡ぐ。
すると突然オウファの体が起き上がり、ゆっくりと歩いてゆく。
オウファ「な、なんだこれはっ……勝手に体がっ……!!」
オウファは歩く。
先にある、下の景色さえ雲に覆われて見えないその崖へと。
オウファ「ひっ……ひぃいいいいっ!!!や、やめ───」
リヴァ 「───“餓鬼に喰われて滅してしまえ()”」
ガラッ───
オウファ「ヒッ───ヒギャァアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
声が遠くなってゆく。
足を踏み外すように落下したオウファは、恐らく瞬時に絶命することだろう。
リヴァ「……すまない。場の雰囲気を汚してしまったな」
悠介 「こういう時のために彰利が居るんだ。よし行け。一発かませ」
彰利 「お笑い担当かよ……まぁいいや、任されて悪い気はしないしね。
ハイみんな注〜〜目〜〜」
パンパンと手を叩き、既に注目されてることも無視する彰利。
彰利 「これからオイラがハイセンスダジャ〜レをかますから面白かったら拍手ヨロシク!
いきますよ〜?安藤さんがアンドーナツ食べて叫んだってね?安藤ナッツ!!」
総員 『………』
───直後、竜族と人間とが初めて協力し、ひとりの男への総攻撃を始めた。
彰利 「あ、あれ?なんでみんな俺に向かって走るの!?構えるの!?
あれ!?ここ笑うとこだよね!?『どっ!』てさ!ねぇ!?
あ、いやっ!ちょ、待って!ね、お願いだから待ってってば!!
待ってって言って待ってもらえた試しなんてないけど今こそ待って!!
竜族さんヤバイって!!ヤバイんだって!言葉解る!?プリーズテルミー!
って違う!!ドゥユゥノゥアバウトドゥ・チューインキャンディー!?違う!!
あぁああやべぇ!!説得しようとすればするほどこんがらがる!!
考える時間くださいマジで!切実に請います!希います!!
ちょっとでいいんです!本当です!!俺に時間を!!
か、かかか噛む噛むゴクン!!って違う!!えぇっ!?馬鹿にしてんのか!?
今の俺ほど真面目なヤツなんて世界中探したって居るわけねぇだろうが!!
真剣!俺真剣!だから待って!やめヴァアアァアーーーーーーッ!!!!!」
───……。
……。
彰利 「グビ……グ……───グ……」
悠介 「……で、どうしてお前って生きてられるかね……」
総攻撃を受けてなお生きてるコイツは既にタフがどうのの話じゃなかった。
とりあえずは回復の霧を浴びせておいたが、
『治癒』が回復したこの世界の中でも回復は長引きそうだった。
このままじゃ埒が開かないと踏んだ俺は、皆に向き直って言った。
悠介 「とにかく開始するから。何も言わずに見守っててくれ」
……と。
するとリヴァイアが一歩前へ出てきて───
リヴァ「それは必ず成功するものなのか?」
と訊いてくる。
俺はそれに頷いてみせ、幾つかに分けられている袋を見せた。
リヴァ「それは?」
悠介 「塵になったドラゴンの塵。ブラックホールで引っ張ってきた」
リヴァ「……なんでもありだなお前」
悠介 「言わないでくれ……。今のこの現状だけで十分だ……」
別に王になりたくてファンタジーに憧れた訳じゃないぞ俺……。
ただ……ただゴブリンと戦ったり、
リザードマンと名誉ある戦いが出来ればそれでよかった筈なのに……。
どこで間違ったんだろうなぁ……俺のファンタジー……。
リヴァ「黄昏ているところ悪いんだが。本当にやる気か?」
悠介 「ン───やる。言ったことは守らなきゃいけない。
レザードに『なんとかする』って言っちまったんだ。だから───」
黄昏を創造する。
場を紅で満たし、さらに『言』を連ねてゆく。
悠介「思考を紡げ。意識を繋げ。異端の思考よ例外を創造れ。()
矛盾を抱きつつ既存を創り、既存を抱きつつ矛盾を目指せ。()
枷は己の心にあり。臆せぬ思考が既存を潰す。()
想像は留まりを知らず、想像は無限に換わり、創造すらも無限に換える。()
生きた軌跡は至福に遠く、その思い出は黄昏へと集約せん()」
失敗は許されない、なんて思考を頭から除去してゆく。
『失敗』なんてことを考えるから失敗する。
ならば最初から無いものだと思えばそれでいい。
悠介 「───分析、開始───!!」
目を真紅に染め、塵を視る。
だが───流石に既に滅したもの。
生きていた頃の情報などは、それこそ塵程度にしかなかった。
しかしそれは、逆に言えば塵程度にはあるということだ───!!
悠介 「ッ……!!」
潜ってゆく。
塵の中へ、中へ……中へ───!!
そいつが生きていた頃の記憶を掴み取り、もう一度この世界に創造するために───!!
悠介 「───!!」
───見つけた!このドラゴンの記憶だ───!!
あとはその生きた軌跡の全てを読み取って───!!
悠介 「つッ……───」
創造を展開する。
一から誕生させるような創造工程だ、
今までやってきたなによりも無茶な創造だってことは解ってる。
現に今だって俺の内側でルドラが呆れてやがる。
けど───
悠介 「かはっ……!!づ───」
それでも創造をやめない。
次々と塵から蘇らしてゆき───残る一体となった時、視界がヒビ割れた。
悠介 「ぎっ……───!?っ……!!」
だが───そんなものは無視して創造を開始した。
ヒビが完全に砕けようとも。
誰かが何かを叫んでいた気がしたけど、それさえも雑音と断じて創造を。
あ……なんだろ。
凄く近くで何かが倒れるような音がした。
だめだ───何も見えない……
───……。
……。
彰利 「タワァアアーーーーーーブリッジ!!!!!」
メキャキャキャキャアアアアアアアアッ!!!!!
悠介 「ごわぁあああああああああああっ!!!!!」
ふと目覚めると、俺はとある一室でタワーブリッジをされていた。
どうやら視力も理力も正常なようで、ふと安堵を漏らし
彰利 「ブリッジ!ブリィイイッジ!!!ブリィイイイッジ!!!」
悠介 「いででででででぇえええっ!!や、やめろこの馬鹿っ!!」
彰利 「馬鹿に馬鹿と言われて応える馬鹿が居るか馬鹿!!
まったく人のことを馬鹿だ馬鹿だと言っておきながら
自分がここまで馬鹿だとはこの馬鹿!お話にもならんじゃねぇかこの馬鹿!!」
悠介 「馬鹿馬鹿言うな!!ていうか降ろせ!!」
彰利 「タワァアアーーーーブリッジ!!!」
ゴキメキベキバキ!!!
悠介 「うがぁああっだぁあああーーーーーーーーっ!!!!!!」
ベキベキ鳴ってる!!本気で危険だ!!
悠介 「離せ馬鹿!!離せ!離───離せっつーとるだろうが!!」
ガベキャアッ!!
彰利 「うじゅりっ!!!」
空いてる手で彰利の顎と後頭部を掴み、一気に捻った。
すると小気味の良い音が高鳴り、彰利の足が崩れるように折れた。
───ようするに倒れた。
当然掴まれていた俺も一緒になって転倒。
しかもどういう根性なのか彰利の野郎、
倒れる瞬間に俺の体を固めてデスパレーボムにゴベチャアアッ!!!!
悠介 「はぐぉあっ!!」
……見事に俺の顔面がピカピカに磨かれた床に直撃。
激痛に耐えながらも起き上がり、ヒクヒクと痙攣している彰利を無視して辺りを見渡した。
悠介 「………」
その景色を見るに……嫌な予感が全く絶えない。
恐らく神々の泉の水か、麦茶でも無理矢理飲まされたんだろう───体は本当に大丈夫だ。
理力もあるし、ルドラの反応ももちろんだ。
だが……この部屋を見ると、どうしても嫌な予感が頭から離れない。
もしかして───コンコン。
悠介 「───!!」
突然のノック。
そして開かれるドアを見て、俺は慌てて物陰に隠れた。
おっさん「失礼します、国王───ややっ!?国王が居ない!?」
誰だよ国王って!───と思わずツッコミたくなったのを耐えた。
ここでツッコんだら絶対に捕まるような気がしたからだ。
おっさん「大変だぁあっ!!国王がいらっしゃらんぞぉおおおっ!!!
衛兵を呼べ!!絶対に逃がすなぁあっ!!」
悠介 「…………」
大臣のようなおっさんがズパタタタタと走っていった。
……いやぁ……初めて『王サマが逃げ出した瞬間』ってのを見た気分だが……
なんだいこりゃあ、囚人が逃げるのとそう変わらないじゃないか。
悠介 「……まいったな。現状がよく解らないけど───」
最後のドラゴンはちゃんと再生できたんだろうか。
それが気になってしょうがない。
それに、そいつとは別に助けてやらなきゃいけない竜族があと一体居るんだ。
ここでこうしている訳にはいかない。
悠介 「悪いな彰利。助けるヤツを助けたら、一応ここに戻ってくるつもりだから」
国王(多分俺のこと)が脱走したっていうなら、
それを事実にしてしまっても問題はそうないだろう。
……ていうかな、俺は一度として頷いたつもりはないんだがな……。
そんなことを呟きながら、俺はブラックホールを展開させてとある場所を目指した。
───……。
……。
───空界南部、レックホールド地方。
俺はそこで、とある飛竜に語りかけていた。
悠介 「よっ、元気かー?」
アーガ『……黄竜王か。俺になんの用だ』
悠介 「ん?んー……用ってほどのことはないな。ただお前の体を治しに来た」
アーガ『なに……!?てめぇ……俺に情けをかける気か!?』
悠介 「そうだ」
アーガ『っ!?い、言い切りやがった!!信じられねぇ!!』
悠介 「たわけ。信じる信じないの問題か。生きれるなら生きろ」
アーガ『誰がっ……!助けられるくらいなら舌噛み切って死んでやるぜ!』
悠介 「じゃあ死ね」
アーガ『なっ、なにぃっ!?』
悠介 「もっとも舌噛んで死んだところで蘇らせるけどな。
そしたらなにか?お前、その度に舌噛んで死ぬ気か?」
アーガ『ッ……て、てめぇえええ……!!』
悠介 「別に従えとか仲間になれとかそういうことを言ってるんじゃない。
生きる希望があるなら生きておけって言ってるんだ。
強者と戦うことが願いなら、それこそ生きてそういうヤツを探せばいいだろ?」
アーガ『………』
アーガスィーは俺の目をギロリと睨み見る。
俺はその視線をまっすぐに受け止めるように睨み返した。
アーガ『……言っておくけどな。俺は負けただなんて思っちゃいねぇからな。
俺がこうして地面に伏してるのは蒼竜王の所為だ。
ディルゼイルはお前の力で力を手に入れてたんだ、こうなるのは当たり前だった』
悠介 「んー……それじゃあお前の削れてる箇所も超越で再生するか?」
アーガ『なっ───ば、馬鹿かてめぇ!!
そんなことすりゃあディルゼイルが死に近づくだけだぜ!?』
悠介 「お前が負けっぱなしで納得するなら文句なんてないけどな。それでいいのか?」
アーガ『やれ!!』
悠介 「……いい根性してるよお前」
感情が人間に近いそいつの飛翼と尾を超越にて創造再生させる。
その瞬間、アーガスィーは俺へと飛び上がり牙を下ろす。
アーガ『馬鹿が!!敵の傷を治すなんてどこまでマヌケ───』
悠介 「……マヌケ、か?」
アーガ『あ、あが、が……!!』
アーガスィーの喉元には既に屠竜剣が構えられている。
そりゃあなあ、あれだけ殺気撒き散らされてれば警戒するのは当たり前だ。
というか、絶対に攻撃を仕掛けてくるって予想はついてた。
アーガ『てめぇ汚ェぞ!!』
悠介 「不意打ちしたお前に言われたらおしまいだなオイ……」
アーガ『〜〜ッ───決めた!決めたぞ!!』
悠介 「国家公務員になるのか?」
アーガ『なんだそりゃあ!!───俺が決めたのはお前を絶対に殺すってことだ!!
だから───これから世話ンなるぜ!
せいぜい寝首かかれねぇようにしてな!モミアゲの長い王サマよ!』
悠介 『今すぐブチコロがされてぇのかコノヤロウ……!!』
ギシャアアアアンと、屠竜剣が黄金色に染まる。
アーガ『あ、いや……は、話し合おう。落ち着け。今は一緒に居てやるって言ってんだよ。
だからな?お前の最初の提案通り俺は生きるし、目的を持ってるわけだ。
そ、そんな俺を殺すのは人としてどうかと思うぞ?俺は』
悠介 「俺は死神だからそんなことは知ったことじゃあねぇ……」
アーガ『バッ───わ、解った!!俺が悪かった!!
何が気に障ったのか解らねぇけど謝る!!機嫌直せよモミアゲ王!!』
悠介 「“黄竜斬光剣()ァアアアアアアアッ”!!!!!」
アーガ『キャアァアアーーーーーーッ!!!!』
───その日。
空界の空に綺麗な極光が舞ったという……。
───……。
……。
アーガ『し、ししし失礼しました蒼竜王……!!
言うこと聞くから殺さないでください……!!』
悠介 「はぁ……」
怯える飛竜を前にして頭を掻く。
結局俺、怒りやすいのを改められてないなぁと。
悠介 「あのな、俺はべつにお前に従ってもらいたいわけじゃないって言っただろ?
普通でいてくれたらいい。仲間になれとは言わないけど、
仲良くなれればいいと思ってる。だから丁寧語はやめてくれ」
アーガ『そ、そんなこと言って、またあの光を放つ気じゃ……!!』
悠介 「するかっ!!……あのな、頼むから俺にモミアゲモミアゲ言うのはやめてくれ。
俺の存在の全てがモミアゲみたいで嫌だ」
アーガ『じゃあ切ればいいのでは……』
悠介 「はぁ……。切ろうとしたら、
『モミアゲの無い悠介なんて悠介じゃない』って言われたんだよ。悪いか」
アーガ『……………………───ブフッ!!』
アーガスィーが噴き出した。
悠介 「今すぐ何を想像したのか言ってみろコノヤロウ……!!」
アーガ『ハッ!?あ、いや!べつに……!!
と、とにかくモミアゲって言わなきゃいいわけだなっ!?
よ、よよよよしっ、任せておけっ!モミアゲだなっ!?
モミアゲって言わなきゃいいわけだな!?モミアゲって!
ははっ、簡単じゃねぇか!モミアゲね!モミア……───ゲェッ!?』
悠介 「遺言はそれでいいかコノヤロウ……!!」
アーガ『ま、待て!今のは確認のための───ギャァアアーーーーーーッ!!!!』
───その日。
空界の空に再び、綺麗な極光が舞ったという……。
───……。
……。
悠介 「えーと……そんなわけで。
今日から仲間になってくれるらしい青飛竜のアーガスィーだ」
アーガ『……ヨロシクオネガイシマス』
ディル『……王?』
ヴァル『王……貴方という人は……』
悠介 「……すまん、反省してる」
現在、飛竜たちを珠から解放してる状態なんだが……
アーガスィーがガタガタ震えながら自己紹介する様はハッキリ言って異常だった。
もちろんそうなったのはエクスカリバーが掠りそうになった所為なんだが。
ディル『アーガスィー、目を覚ませ。王は別に恐ろしい存在じゃない。
お前が失言をしただけだろう』
アーガ『ボクイイコデス。ボク、イイコデス……エクスカリバーヤメテ……』
ヴァル『逃避してますね。ほうっておけば元に戻るでしょう。それより───』
悠介 「それより?」
ヴァル『王。貴方は人間たちに必要とされているようですね』
悠介 「それって……ああ、あの国王がどうとかいうやつか?
誰でもいいんじゃないか?あれって」
ヴァル『いいえ。国民は他の誰でもない王に目を向けました。
それは王、貴方が必要とされている証拠でしょう』
……というかあれって彰利が戯言を言った所為な筈なんだが……。
悠介 「それって俺に国王になってみろってことか?」
ヴァル『何事も経験です。私は王が必要とされていることが純粋に嬉しい』
ディル『そうだな。王、なにも永久に国王であれと言うのではない。
王が【もういい】と思うまでやってみるのもいいだろう』
悠介 「そうは言うけどな……俺こそ王なんて器じゃないだろ?」
三飛竜『器だ(です)(デス)』
悠介 「………」
即答だった。
馬鹿な……俺はただゴブリンと戦いたくてこの世界に憧れたヒヨッコだぞ……!?
それが国王になるなんて間違ってるだろ……!!
ヴァル『王、では試しに一日だけ国王になる、ということで妥協してみてはどうでしょう』
悠介 「一日だけって……」
それくらいならいいだろうか。
でも───
悠介 「ああもう!うだうだ考えるのは性に合わん!!
思考展開が特技だけどそういうことにしとこう!
こうなりゃ王にでもなんでもなってやる!!」
ディル『ではこの時を以って、お前を真の黄竜王として認めよう』
ヴァル『では私は貴方を真の緑竜王として認めます』
アーガ『アナタサマ、真ノ蒼竜王……認メマス』
悠介 「ちょっと待てぇええぃいっ!!そういう意味で言ったわけじゃ───」
ディル『言ったことは守るんじゃなかったのか?王よ』
悠介 「うぐっ……」
ヴァル『これからよろしくお願いします、緑竜王』
ディル『これからも頼むぞ、黄竜王』
アーガ『ヨロシクデス、蒼竜王』
悠介 「………」
今日この時、この瞬間をもって───
俺は空界の皇国レファルドの国王となり、さらに黄竜、蒼竜、緑竜の王となった……。
……神様……俺は本当に馬鹿なんでしょうか……。
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