───FantasticFantasia-Set51/エレメンタルドラゴンマスターさんの華麗なる悩み───
【119:弦月彰利/ドルジェフに愛の手を】
───瞑想(めいそう):目を閉じて深く考えること。
……なにについて?
彰利 「………」
いや、一応言われてからずっと、死神の力に意識を飛ばしてはいるが。
彰利 「コピーした鎌の数だけ限界を目指せ、かぁ……」
簡単に言ってくれますなぁ。
オイラ、まだ片鱗すら見えてないんですけど?
ベリー「んー……退屈。ねぇツンツン頭?休憩にしてまた漫談やってくれない?」
彰利 「おんどりゃ人の訓練なんだと思ってんの……ってそうだ、なぁヤムヤム。
死神の在り方って解る?オイラ、それを課題に出されてるんだけど」
ベリー「知ってるわよ。けど教えたげない。スピリットオブノートに釘刺されてるし」
彰利 「なんと!?」
い、いつの間に……!
そりゃあまあ自分で足掻けって言われたのは確かだけど───しゃあない、頑張るか。
彰利 「まずはレオから行ってみようか」
意識を集中させて、自分の奥に存在するレオの気配を探す。
が───それは案外あっさりと見つかり、俺は拍子抜けした。
彰利 「えーと……確か、
鎌と鎌の持ち主の力のパターンを鮮明にイメージするんだったよな」
レオのパターンならよく知っている。
生まれた時からの付き合いみたいなもんだ、当然だ。
といっても発現したのは俺の公開処刑の日みたいなもんだから……
言っちまえば何度も死と生を同じくした分身みたいな感じなんだよな。
いや、俺がヤツに対してこんな感情抱くなんて、あの頃は思いもしなかったよ。
……などと思っていた時、俺のイメージが目の前に具現化された。
レオ 『………』
彰利 「あ、あら?」
目の前に出現したレオは俺を見るとニィと笑い、その手に鎌を出現させた。
えっと……もしかしてヤバイ?
彰利 「ちょ、ちょっとノートさぁん!?いきなり戦闘体勢とられてるんですけど!?」
離れた場所で悠介にいろいろ教えている最中にノートさんに物申した。
返答は───『汝の力となろうとしているだけだ』とのこと。
戦闘態勢からしてどうしてそうなるのか───などと考えておったら、
レオが自分で出した鎌へと溶け込んでゆく。
それが終わると───鎌はザサッと音を立てて草原に落ちた。
彰利 「……?これをどうしろと?」
ノート『それは汝の意思がレオの力を鎌へと封じ込めた結果だ』
彰利 「ぬおっ!?」
いつの間にかノーちゃんがオイラの傍らに立っておりました。
しかも唐突に訊きたかったことを話してくれる。
ノート『汝の中には確かに鎌の力はある。だが鎌の持ち主の力は無い。解るな?』
彰利 「おぉそりゃね。けどそれがどぎゃんしたと?」
ノート『この黄昏の世界は知識の宝庫だ。
マスター晦悠介から始まり、その裡に存在する神や死神の知識さえ繁栄される。
当然、今現在その世界の中に居る汝の知識や私の知識もだ。
だがそれは【鮮明にイメージしなければ】具現されない。
今出現したレオ=フォルセティーは汝が望んだからこそ、
誰かの知識か汝自身の知識から創造されたものだ』
彰利 「……そんじゃあ、俺がイメージしたものが不完全だとしても、
他の誰かの知識と合わせれば完璧だったとしたら───」
ノート『ああ、きちんと創造される。ただし汝の場合のみだ。
そうなるように私が改良した』
彰利 「ほえ?って待たれよ、それじゃあ悠介がイメージしてもそうならないってこと?」
ノート『そうだ。というよりは汝の周りのみに【私の世界】を展開している。
先に【この黄昏の世界は知識の宝庫だ】と話したが、
それが具現出来なければ意味が無いだろう。
故に汝のみを条件とし、知識の結合を可能にした』
彰利 「参考までに───なんで?」
ノート『うん?おかしなことを訊くな。汝は貰い物の力でも満足出来るのだろう?
黄昏に宿る知識と性能は間違いなく汝の願うそれを実現させるだろう。
それを理解させた上で訊く。そこで【何故】と訊くことになんの意味がある?』
彰利 「………」
や、まいったねこりゃ。
つまりノーちゃんたら俺が強くなることに文句なんて無いけど、
逆にオイラの文句……というか意見も知ったこっちゃないって感じになってる。
そりゃ確かに『楽して強くなろうがワイのモットーやしなぁ』とか、
ジョルジュ=クレイグの真似をした思考はあるけどさ。
ノート『質問は終わりか?ならば続けろ。
持ち主を鮮明に具現化し、鎌に吸収することが出来ればそれだけ汝も強くなる』
彰利 「グウウ……」
そりゃね、オイラの鎌はコピーした鎌を合わせた状態で骨子にするから、
鎌のひとつひとつに持ち主の力が宿ればそれだけ強くなるとは思うけど───
なんつーか向こうの方で苦しみながらも修行してる悠介に申し訳なく思えてきたよ俺。
ノート『汝が選んだ修行方法だ。今さら変えるなどとは言うなよ』
彰利 「ゲッ……」
見破られてます。
まぁしゃあないか、いいコテ。
彰利 「しっかしノーちゃんっていろんなこと知ってるよね。
考えてることも読めるようなところもあるし。
もしかして全知全能?解らないこと無し?」
ノート『いいや、そうでもない。身近なもので───そうだな。
マスターの中に居る神のことはマスターと出会った頃から読めないままだ。
ハッキリと言うが、相当の実力者だろう。
自慢するようで癪だが、今まで解らないことは無かった』
彰利 「あ〜ぁ……」
そらそうだろうなぁ。
ソードもルドラも相当の実力者だし。
ンマー、同一人物のようなもんなんだから当たり前なんだが。
彰利 「あ〜……けどさ、前に智英と荒焼きを返す時に悠介がソードと交代したろ。
それでソードがどういうヤツか解ったっしょ?」
ノート『……?なんのことだ。交代……?』
彰利 「………」
わあ……凄いことが判明しましたトニー。
これはあくまでオイラの推測に他ならないが、ソードって相当の使い手さんだよ?
もしかしてこれって、
ソードがノーちゃんに認識の誤りをさせる何かとかを行使したってこと?
……つーか何故?意味あるん?
声 《己のことを勝手に知られて喜ぶ馬鹿が居るか、たわけ》
彰利 「ああ、そりゃそうだ───って」
ノート『……?どうした』
彰利 「………」
なんか今、ソードさんの声が聞こえた。
話聞いてたのか……やりおるやりおる。
彰利 (……ありゃ?)
声が聞こえたからにはチェンジしてるんじゃなかろうかと悠介が居た方を見るが、
そこに居たのは紛れも無く悠介自身だった。……倒れて痙攣してるけど。
いや〜、もし俺があの修練をやることになってたらと思うとゾッとするね。
悠介でさえあれじゃあ、オイラきっと耐えられないよ。
……ってイカンイカン、なんでも諦めすぎだとノーちゃんに怒られたばっかじゃないか。
気を引き締めなければ。
彰利 「うっし、じゃあ続けますか。具現出来ればいいわけだよね?」
ノート『その通りだ。具現が出来れば具現された持ち主は鎌の中へ消えてゆく。
いわば融合だ。成功する度に融合行使の分だけマスターが苦しむことになるが、
それは汝が心配することではないな。マスターもそれは承知している』
彰利 「うへぇ……つくづくガンバルマンだね」
しかしそうか……具現された持ち主が鎌と融合すると、悠介は苦しむのか。
ちと心苦しいが、それは悠介も覚悟した上らしいし……って、
融合くらいならオイラにも使えるんだが。
ノート『自分で融合をしようなどと思うなよ。
月癒力の融合は汝が思うよりも完璧ではない。
完璧ではないからこそ私でも融合分離が出来るのだ。
仮に汝の能力で融合させたとして、
融合分離を行使する相手と出会えば汝は即座に不利になるのだぞ』
彰利 「うおう……」
そりゃそうだ。
分離させられるってことは、持ち主の力がオイラから抜け落ちるってことだし。
そうなったらもうボコボコ……おぉ怖い。
悠介には悪いが、ここはノーちゃんの融合に任せておいた方がよさそうだ。
彰利 「んじゃ、続けるから具現出来たら融合ヨロシク」
ノート『解っている、続けろ。
マスターの方はもうじき竜人力の全てが身体に馴染むところだ。
許容を超えているから少しずつ苦しみながらでも許容を増やしているが、
まあなに、地面を跳ね転がって苦しむマスターもあれで貴重だ。堪能する』
彰利 「………」
ノーちゃんって何気に性格悪い?
いやでも実際には悠介のことを思ってのことだろうし……微妙だ。
ともあれ悠介がぐったりとしている場所へと戻ってゆくノーちゃんを眺めつつ、
オイラも修練に戻ることにしましたとさ。
彰利 「しかし……やっぱイメージって難しいよね〜ィェ。
考えるのは簡単だけど、簡単だからこそ余計な考えまで混ざってくるし」
連鎖反応ってやつだろう。
例えばラーメン食う時は絶対にご飯を食う人がラーメンをイメージするとする。
そしたら、そうしたかったわけでもないのに自然にご飯までイメージに混ざる……と。
人にはそういう連鎖反応があるから、正直悠介の想像と創造は人の域を超えている。
イメージしたものをそのまま出せるヤツはとんでもないものだ。
フッ……やはり才能というやつか。
彰利 「や、さすがにそれは冗談だが」
頑張ってる人の努力が才能の一言で片付けられるのって好きじゃないし。
あれってひどい侮辱だよね。
彰利 「とまあいろいろ悩んでるわけですが───みさおさん?そっちはどう?」
みさお「どうもこうもないですよ。鎌なんて全然出せません」
彰利 「まだ鎌の発現を頑張ってたんか……。
キミの場合、死神の要素より神側の要素の方が多そうだし、
神側の修練した方がいいんでないかい?」
みさお「むっ……彰衛門さんはわたしにひとりだけ神として生きろっていうんですか?」
彰利 「誰もそげなことは言っとらんが……なに拗ねとんのキミ」
みさお「なんでもないです。どうせわたし、足手まといですから。
ここに来て全然強くなれてないのはどうせわたしだけですから」
彰利 「あー」
ナルホロ、ようするにそれで拗ねてたと。
彰利 「まあ気にすんなお嬢様。
お嬢様はのんびりとメシの上達のみを考えてなさい。ひとまず粥だ、粥を作れ」
みさお「わ、わたしだって強くなりたいんですっ!ひとりだけ弱いままなんて嫌ですよ!」
彰利 「なんと!?マッチョになりたいとな!?」
みさお「そんなんじゃありません!!」
彰利 「なにぃ、だって今の体躯で筋肉付けたら背ェ伸びませんよ?
キミはそれでもいいのかね?」
みさお「うぐ……全然よくないです」
彰利 「というわけで、弦月流の修練を開始しましょう。
炊事洗濯掃除、相手を出し抜く方法から卑劣技の数々をキミに伝授します」
みさお「……わたしは───強くなる必要は無いっていうんですか?」
彰利 「正直言って無い。ここには俺しか居ないけど、
悠介の意識がハッキリしてたらきっと同じことを言うよ。
“バケモノ相手は俺達だけで十分だ”ってな」
みさお「彰衛門さん……でも───」
彰利 「家系のつまらねぇ重みを背負うのも、
とびきりの悲しみとか苦しみを背負うのも、もう俺達だけで最後にしたいんだよ。
次の世代には家系に産まれたことを後悔するだとか……そんなことが無いように。
だからな、みさお。『その世代』であるお前は笑ってろ。ずっと、笑ってろ」
ポンと久しぶりにみさおの頭を撫でた。
みさおは数瞬の間きょとんとしていたけれど、
その行為の意味に気づくと……小さく、けれど仕方ないですねというふうに笑った。
彰利 「頼りないないかもしれないけど、きっと変えていけるから。
今だって人と違うってだけで嫌われた頃とは違う筈だ。
でももっと変われると思う。
まあ俺達が強くなるのと嫌われるのとは意味が違うけど、
もしイジメなんかが発生したら俺が地界を支配してイジメを撲滅するから」
みさお「……少しいいこと言ってるって思うとこれなんですから……。
世界征服なんてしちゃいけませんよ?それじゃあまるで荒焼きさんみたいです」
彰利 「よしやめよう」
あとで聞いた話によると、
その時の俺の表情はガイアにも負けないくらいの極上な笑顔だったそうな……。
全然嬉しくなかったのは言うまでもない。
【ケース120:晦悠介/アージラム・グランドゥーダヤ】
フィィイイイイイイーーーキキキキィイイイイーーー……───ン……!!
バジュンッ!!
悠介 「かはっ……!はぁっ!はぁっ……!!」
ノート『……ふむ。魔力も大分扱えるようになってきたな。
この調子で鍛錬を重ねれば、ブレイバーにもメイガスにもなれるだろう。
ああいや、両方だな。それこそ勇者のようなものだ』
悠介 「あ、あ、あのなぁ……!!」
修行四日目。
問題であったウンディーネとウィルオウィスプとの同調をようやく終えた俺は、
それだけの魔力があるのに行使が出来ないのは勿体無いというノートの提案を受け、
現在魔力の使い方を教わっている最中である。
ベリー「でもねー、魔力が強力なだけに小さく発動させるってことが出来ないみたい」
ノート『ふむ、それは私も思っていたことだが』
で、『魔力といえば私』と言って名乗りを上げたのがベリー。
ノートと一緒になって、俺に魔力の在り方を熱心に語りまくっている。
ベリー「あ、じゃあこういうのはどうかな。
まずは魔力や諸力を抑えて行使する練習をするの」
ノート『ほう?その方法は』
ベリー「え?えと……どんなのがいい?」
悠介 「俺に訊くなよ……」
ノート『やれやれ、頭がキレると思えばこのザマか。
得意分野でそれではこれまで生きてきた時間が泣くな』
ベリー「うぅ……申し訳もないわ……」
魔力の勉強をするようになってから解ったことだが、
ベリーはどうにもノートに頭が上がらないらしい。
それは俺なんかと比べてもかなりの上がらなさぶりのようで、一度訊いてみたところ───
『魔法、魔導、魔術、式に精通する者なら誰でも頭なんか上がらないわよ!』と、
ものの見事に怒られた。
それはそうかもしれない。
なんたって世界そのものが精霊体になったようなヤツなのだから。
それこそ魔導などに精通する者ならば、一度は会ってみたいと夢にまで見るほどらしい。
しかしそれにしたってあのベリーがなぁ……。
ノート『いいだろう。マスター、まずは精霊召喚と召喚獣の召喚で実践する。
細々とした話で解するよりも実践でやった方が身に付くだろう』
悠介 「召喚で魔力の強弱が解るのか?」
ノート『解る。いいかマスター。これから汝に精霊召喚をしてもらう。
妥当なところで一番コントロールの効く雷の精霊、ニーディアがいいだろう』
悠介 「ニーディアか。それで?」
ノート『まずは教えたように指輪に諸力を込める。
普段ならばそれをすぐに解放して召喚するだけだが───』
悠介 「へ───?」
パキィンッ!!
ノートが言うより早く、俺は癖で召喚工程まで一気に行ってしまった。
指輪から弾け出た雷がニーディアとなり、
その口が『何用だマスター』と言うのとほぼ同時。
その場が再び世界で塗り替えられ、
俺ととばっちりを受けたベリーの絶叫が黄昏の世界に響き渡った。
───……。
……。
ノート『話は最後まで聞け』
悠介 「わ、悪い……」
ベリー「な、なんでわたしまで……」
プスプスとところどころから煙を出しながら正座をしている俺とベリー。
その前に呆れ顔のノートが居るんだが、神父服と相まって教師のように見えなくも無い。
ベリーもそう思ったんだろうか、小さく笑いの吐息を吹き出した。
ノート『……言い直すぞ。まずは教えたように指輪に諸力を込める。さっき言った通りだ。
普段ならばそれをすぐに解放して召喚するだけだが、今回やるのはそうじゃない。
諸力を指輪に送った状態で、少しずつ反応を小さくしていくんだ。
大きな力を小さく纏めるのと同じ原理だ』
悠介 「それが成功すると……どうなるんだ?」
ノート『精霊、または召喚獣を小さな状態で召喚出来る。
汝の場合は竜人の力もあるからな、ワイバーンにそれを行使することも可能だ。
ただし、飛竜が珠の中に居ることが条件だ。
外に出した状態でやろうとしても成功はしないだろう。
【小さく召喚する】という意識が重要だ。出来るか?』
悠介 「ん、やってみる」
指輪に諸力を込めてゆく。
なんだかんだで諸力の扱いも大体は慣れたもので、
意識して行使出来るようにはなっている。
まあ……ひとえにノートのスパルタ教育の賜物なわけだが。
俺もう何回諸力の暴走で気絶したか覚えてないぞ?
悠介 「───ん」
指輪に雷の諸力が流れ込むのが解る。
それを確認してからゆっくりとその反応を小さくするように意識して、
しかし潰えないように注意する。
……中々大変な作業だ。
けど、一定の法則があることに気づいた。
つまり───ポムッ。
ベリー「わっ!」
ノート『……よし、成功だ』
頭の中にイメージされた法則をそのまま具現化した。
すると案外あっさりと召喚は成功し、今現在目の前には小さなニーディアが浮いている。
ベリー「わはー!かわいいかわいい!ね、撫でてもいい!?」
言って、ベリーが小さいニーディアをギュムと抱き締めた。
確認する意味が無いと思うが───
悠介 「ベリー?予想が正しければ多分───」
ノート『小さいとは言っても、圧縮状態で召喚されたようなものだ。
普通に召喚された状態と全く変わらん。迂闊に触れれば』
バヂィッ!ゴロロガバッシャァアアアアアアアアンッ!!!!
ベリー「はぎゃあああああーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
ノート『とまあ、こうなるわけだ』
悠介 「召喚した本人だから予想はついてたけどな……」
ゴトリと倒れた黒炭を見つめて、ノートとともに溜め息を吐いた。
こうなるとどうしようもない。
ここまでヒドイ有様ではノートくらいにしか回復が出来ないわけで、
しかし俺の中にはまだノートの諸力は無い。
つまり───精神力を使うという意味だから、思いっきり疲れるということだ。
はぁ……。
ノート『ふむ、まあ丁度はいいか』
悠介 「……ノート?」
ノート『マスター、全ての精霊の諸力はあるな?』
悠介 「ああ。あとはノートだけだ。それが?」
ノート『よし。こうして傷ついた者も居るわけだ、次は少々複雑なことを学ぼう』
ノートは黒炭を見下ろして小さく笑った。
そして言う。
ノート『汝の中にあるそれぞれの精霊の諸力を合わせて【魔法】を精製する。
魔術や魔導と違い、精霊の力である諸力を融合させて作り出す神秘だ。
上手く精製出来れば空界広しといえど、これを使える人間は汝のみとなるだろう』
悠介 「……?なんでさ」
ノート『たわけ。魔法は諸力を合わせなければ精製出来ん。即ち精霊の存在が不可欠だ。
それを理解させた上で訊くが、
全ての精霊と契約している汝は他の者にどうやって魔法を精製させるつもりだ?』
悠介 「あ〜……」
いかんな、最近考えが短絡的になってきてる。
確かにノートの言う通りだな、気をつけないと。
悠介 「解った、もう少し考えてから発言することにする。
それはそれとして、まずはどうすればいいんだ?」
ノート『ああ。まずは癒しの魔法からいくとしよう。
いいか、癒しの力は主に水の諸力から生まれる。
例えば───【水】と【風】の諸力で【ヒール】、
【水】と【光】で【キュアライト】。
他にもあるが───まあ喩えの段階だ、これ以上は後でいいだろう。
ともかく水の諸力は癒しに回り、他属性の大半は攻撃魔法になる』
悠介 「なるほど……じゃあ癒しの魔法を習得したい場合は、
とにかく水と合わせればいいわけか」
ノート『そうなるな。専門的な話になるが、汝の中にある諸力は未だ成長段階だ。
たとえ以前精製が確立しなかった他属性の諸力でも、
汝の中の諸力が強まれば精製出来るようになるものもある。
一度精製しなかったからといって、組み合わせを諦めるな』
悠介 「ん、解った。じゃあ早速ベリーを癒したいんだけど───ヒールで足りるか?」
ノート『初めの内は無理に高い魔法を行使しようなどと考えるな。
言ったように汝の諸力は成長段階にある。
無理をすれば折角開花した諸力の泉が枯渇するぞ』
うぐ……それは困るな。
じゃあ───
悠介 「………………んっ」
意識を集中させて、自分の中で水の諸力と風の諸力を合わせる。
それが自分の中で成功すると、今度はそれを外に出すように放つ。
すると───キィイイイン……
悠介 「お───おおぉ……」
横に倒れていた黒炭が再生するように、人の肌へと戻る。
さらには動き出し、どうやら死んでなかったことが確認された。
ノート『ふむ。まずは初級、ヒールの精製は完了した。
次からは今行った工程を一纏めにしてすぐに放てるようになれば、
創造の理力で回復するまでもなく瞬時に回復出来るぞ。
なにせイメージする必要がない』
悠介 「あ───そか、そうだった」
考えてみれば、いつもいつも戦いになると回復にイメージを回す暇なんてなかった。
けど───これならなんとかなりそうだ。
悠介 「あ、なぁノート。もしかして精霊が使う能力も魔法だったりするのか?
ほら、グランドダッシャーとか」
ノート『その通りだ。それと、汝が続ける疑問はこうだろう。
【自分は諸力を融合して魔法を使うのに、
何故精霊ひとりひとりは普通に魔法を使えるのか】』
悠介 「なんでもお見通しなのか……?」
ノート『そういうわけでもない。
さて答えだが、汝が戦った精霊達は自分の属性以外の魔法を使ったか?』
悠介 「え───いや、全部自分の属性のものだった」
ノート『それ故だ。精霊ひとりひとりは己の属性の魔法を高めたものしか使えない。
無理をすれば使えるだろうがその代わりに酷く疲労する。
その属性の諸力が無いにも関わらず、その属性の魔法を行使するのと同じだ』
……なるほど。
つまり無属性の諸力が無いのに、ノートが俺の精神力を使って魔法を使うのと同じなのか。
よく解るぞ、うん。
悠介 「ん、それは解った。
けど俺が魔法を使えるようになるために諸力を合わせるのはどうしてだ?
属性それぞれの魔法が使えるなら、合わせる意味なんて無いんじゃないか?」
ノート『精製だと言っただろう。
精霊でもない存在が、契約しただけで魔法を使えるだなどと思うな。
精製とは精霊の力である魔法を人間でも使えるようにする方法だと考えればいい』
悠介 「そか。ん、解った。訊きまくって悪かった」
ノート『何を謝る。考えても理解に至らんことを訊くのは当たり前のことだ。
だが、考えもせずに訊くのはいただけない。精進しろ、マスター』
それは解ってるんだけどな。
ノート『それでは修行を続けよう。魔法の精製は休憩の時にでもやっておくといい』
悠介 「あのなぁ……!そうすると休憩時間が休憩時間じゃなくなるだけだろうが……!」
ノート『弱音は聞かん』
悠介 「アア、ソウダロウヨ……」
今まで何言ったって聞かなかったんだ、そんなことは解りきっている。
さて……頑張りますかぁ……。
───……。
……。
悠介 「───“雷光剣”!!」
コォッ───バヂィッ!!ズガガガァアアアアアアアンッ!!!!
手にした雷の大剣を草原に振り下ろした。
すると雷鳴が轟いたかのような轟音とともに、
振り下ろした部分が落雷でも落ちたかのように砕ける。
ノート『……よし、雷の魔法は大体覚えたな。他に精製したい魔法はあるか』
悠介 「ちょ、ちょっと待て……!少しは休ませてくれ……!
大体、魔法の精製は休憩時にやれって言ったのは誰だよ……!」
ノート『気紛れだ。気にするな』
問答無用なようだった。
ここまで来ても周りに振り回されるのは相変わらずなのな、俺……。
悠介 「はぁ……まあいいか。
無理だとは思うけど───イレヴナルラインゲートはどうだ?」
ノート『ふむ……あれは確かに雷の属性だが、
魔法ではないうえに汝が使用するには他の属性の馴染みが足りないな。
光以外の全ての諸力を今以上に高める必要がある。現段階では使用不可能だ』
悠介 「そか……予想はしてたからいいけど。
じゃああれだ、グランドダッシャー。何気に一度使ってみたいと思ってたんだ」
ノート『【地】と【闇】の諸力を合わせれば精製出来る。が、今の汝では無理だ』
悠介 「そ、そか……」
なんか今なら、レベル不足で仲魔を合体出来ないサマナーの気持ちが解る気がする。
悠介 「じゃあどんなものなら精製出来るんだ?」
ノート『そうだな……今の汝なら───ふむ。
【火】と【雷】の諸力を合わせて放て。人の居ない方向へだぞ』
悠介 「よしきたっ」
意識を集中させて諸力を合わせる。
こう言うのもなんだが、実は魔法を精製する瞬間っていうのはとんでもなくわくわくする。
ノートもそれを知ってか、組み合わせて精製出来る魔法のことは言わない。
ただあれとそれを合わせてみろと言うだけだ。
だから、精製出来た時はとんでもなく嬉しかったりする。
悠介 「融合完了───放つ!」
諸力の融合を完了、それとともに放った。
すると空から小さな光の玉のようなものが地面に落ち───
バァッガァォオオオオオオオンッ!!!!
悠介 「おわぁあああーーーーーーーーーーっ!!!!」
ベリー「へやぁあああーーーーーーッ!!!?」
凄まじい爆発、爆煙をあげるとともに、
結構離れた位置で寝転がってたベリーを吹き飛ばした。
ノート『よし、精製成功だ。覚えておくといい、今のがエクスプロードだ』
悠介 「あ、あ……ああ……」
……半端じゃない爆発だった。
事実、爆発した箇所は巨大なクレーターが出来ていて、
黄昏の上空にあった雲が焼け飛んでしまうほどの爆発だった。
今回ばっかりは……精製の喜びより驚きの方が勝ってしまった。
ノート『まだ魔法は幾つもあるが、それはまた今度にするとしよう。
今の汝では扱えきれまい』
悠介 「了解。……“チャージ”」
消費した諸力に【然】と【水】の諸力を合わせた魔法をかける。
すると大分少なくなっていた【火】と【雷】の諸力が少し回復した。
まあつまり……【然】の諸力をふたつの諸力に分けたってことだ。
【然】系の魔法はかなり便利であり、状態異常回復から防御系魔法、
諸力回復や集中力アップなど、様々なサポート面の魔法を揃えている。
その分使用回数も多いので、今のところ雷に続いて二番目に諸力が充実している。
諸力の回復も速いのがありがたい。
ノート『さて。では先ほどの続きだ。精霊を小さい状態で召喚するんだ』
悠介 「ああ、解ってる。“コンセントレート”……」
【然】の魔法、コンセントレートを使用する。
これがさっき言った集中力増加の魔法だが、
正直これはイメージする者としては相当にありがたい魔法だ。
余分なことが気にならなくなって、想像も創造も上手くいく。
ただ問題なのは、集中しすぎて他のことに目が回らなくなることだ。
でもありがたいという事実はてんで変わらなかったりするのだから、
感情ってのは上手く出来ている───ような気もする俺であった。
ベリー「あーあーちょっと待った待ったー!」
悠介 「って、ベリーか。生きててなによりだ」
ベリー「死んだって方向で思考を働かせないでもらいたいけどね。
どうせならさ、魔導魔術と魔導錬金術と式と魔術も覚えてみない?
今なら空界では世界的に有名な魔女っ娘ベリーちゃんが教えたげるけど」
悠介 「おのれは……これ以上俺を苦しめて楽しいのか……?」
ベリー「……?苦しいの?」
悠介 「………」
苦しい。
苦しいのは事実だが───はぁ。
悠介 「悪かったな……どうせ楽しんでるよ。
しょうがないじゃないか。ファンタジーで、しかも魔法だぞ?
精霊との契約なんてことが成功して、しかも魔法ときたらお前……
喜ばない男なんてただのひとりだって居ないぞ、絶対」
ベリー「ならそのついでに空界の技術を全部覚えちゃいましょ。
悠介の魔力だったら絶対に賢者にだってなれるって」
悠介 「賢者ねぇ……」
ベリー「式や魔導は初級から禁呪まで教えてあげるし、エクスカリバーだって教えるよ?
錬金術なら……まだ作ったことはないけど、
賢者の石について熱く語ることも出来るし、
スピリットオブノートが居るなら錬成方法くらい解るかもしれないし。
魔術に関しては任せて。わたし開祖だからなんだって教えられるわよぅー」
悠介 「マテ。そもそもどういう風の吹き回しなんだ?
無償で俺にいろいろなものを教える理由がまず解らん」
って、誰も無償だなんて言ってなかったな。
というとなにかが狙いとか───?
ベリー「べつに何か欲しいわけじゃないわよ。
ただ『限界』っていうのを見せてもらいたいだけ。
わたし魔女だからね、そういうのって気になりだしたら止まらないのよ」
悠介 「………」
目をジッと見てみるが、ウソ偽りのないマジな目だった。
ただ『限界を見たい』という純粋な好奇心だ。
あとは───その全てを俺が乗り越えられるかを見届けたい。
その目にはそういった意思がこめられていた。
ようするに───迷惑なことこの上ない。
悠介 「……ノート?」
ノート『マスター、黒竜王と戦うのはもう少し後にしろ。
いろいろ考えていたが、今の汝ではあまりに分が悪い。
言ったことを守りたいのは解るが、守った結果で死んでは話にもならん。
それに───忘れるな。
いくら汝が【自分はどうなってもいい】と思ったとしても、
汝を思う心は汝の中に存在している。
汝が死ねば汝を信じて契約した精霊や召喚獣はどうなる』
悠介 「い、いきなり説教は勘弁してもらいたいんだが……
なぁ、本当に今の俺じゃ勝てないか?」
ノート『無理だ。それ以前に、
ジハードを止めてもらうつもりの弦月彰利があのザマではな』
ノートが彰利が居る方向をチラリと見る。
俺も釣られるように見たが、
そこに居た彰利はみさおと一緒に料理を作っているところだった。
それに段落をつけると瞑想に入るんだが、集中力が長続きしないらしくすぐに挫折する。
……あぁ、あのドアホゥ……。
ノート『そういうわけだ。ひとまず汝らの気配を空界から消しておく。
その間、汝らはこの世界のこと、
魔導魔術、魔導錬金術、魔術、式、その全ての基礎を学んでこい。
今勇んで黒竜王と戦おうと、負けるのは目に見えている』
悠介 「………」
これだけ修行してもまだダメなのか……。
ゼット……黒竜王か。
とんでもないバケモノと戦うことを決意したもんだ、我ながら呆れる。
悠介 「……それで。俺達はなにをすればいいんだ?学べ、って言われたけど、何処でだ」
ノート『魔術都市クグリューゲルス。そこへ行け。
そこでマナの基礎を学び、錬金術を覚えろ。
それから魔導魔術、魔導錬金術を鍛えていけ。
講師は貴様───ヤムベリングにしてもらうといいだろう』
ベリー「え?わたし?いいの?」
ノート『汝の悪名は聞いている。
アカデミーに脅しの一言でも贈れば即座に講師になれるだろう』
ベリー「わはー、ノーちゃんたら解ってるー♪
ん、解った。じゃあ───って、いつ行くの?わたしは今でもいいけど」
ノート『ひとまず黄昏を解いて明日まで休め。全てはそれからだ。
黒竜王やジハードに探知されないよう気配は抹消しておく。好きに動け』
悠介 「解った。なにからなにまで悪い、ノート」
ノート『……おかしなことを言うな。汝は私の初めてのマスターだぞ。
主が強くなることを喜ばぬ者など居るものか。……精進しろ、マスター』
言いたいことだけ言って、ノートは指輪の中に戻ってしまった。
しかし───
ノート『いや、少々待て。ひとまずバハムートの融合状態を乖離しよう。
そして全ての精霊、召喚獣を小さな状態で召喚したまま過ごせ。
辛いだろうが、諸力や魔力の成長は非情に期待できる』
悠介 「全員か……そっか、全員……全員!?
ちょ、ちょっと待て!そんなの体力も諸力も精神力もなにもかも保たないぞ!?」
ノート『さてマスター。汝がそういったことを言う場合、私はどう返していた?』
悠介 「………」
『弱音は聞かん』……その一言でした。
ノート『理解しているのなら弱音など吐くな。全ては汝の望むべき未来のためだ』
ノートはそう言うと俺にバハムートを召喚するように言う。
俺は涙がこぼれそうになるのを堪えながらバハムートを召喚。
するとノートは俺が再び首に下げていた皇竜珠もろとも『乖離』を実行。
バハムートと皇竜珠は分離され、それぞれが元である姿に戻った。
そうして───久しぶりに俺はグリフォンやフェンリル、そして四飛竜と再会した。
フェンリル『元気そうだな、王。また会えて嬉しいぞ』
グリフォン『困ったものだ。融合などされては己として王と話せない』
悠介 「……ん、久しぶり、フェンリル、グリフォン」
アーガ 『ひゃっはーーーっ!!久しぶりのシャバだぜーっ!!』
ヴァル 『王、お変わりなく……いえ、
お変わりすぎたようでなにより……でしょうか?』
悠介 「ハッキリ言っていいぞ……変わりすぎだとでも……」
ヘイル 『あまり会う機会は無かったが、今一度よろしくと言っておこう』
ディル 『……ふぅ。やはりこの状態が一番落ち着く』
悠介 「あのな……会えて嬉しいが、いっぺんに喋らないでくれ」
個々として降り立ったアーガスィーとヴァルトゥドゥスとヘイルカイトとディルゼイルは、
それぞれが思い思いに喋り出した。
が───俺は聖徳太子なんぞじゃないからいっぺんに喋られても困る。
まあそれでも、それぞれ会いたかったやつらに触れ、うんと頷いた。
本当に懐かしい。
またこうして会えるなんて思ってもみなか───
悠介 「オワッ!!?」
穏やかな心とともに振り返った場所を見て、思わず驚愕の声が漏れた。
いや、考えてみれば居るのは当然なんだが……驚くなって方が無理だ。
リヴァイアサン『……召喚獣として会うのは初めてだな、主よ』
ベヒーモス 『我らを打倒してみせた貴様だ、もはや敗北は有り得まいよ。
いいだろう、我らも貴様に忠誠を誓おう』
そう、振り向いた方向にはリヴァイアサンとベヒーモスが居た。
もちろん双方ともにとんでもなくデカい。
もしかして……こいつらも小さな状態で召喚しなきゃいけないのか……?
悠介 「あ、あは……ははははは……」
あ、悪夢だ……いや、悪夢か……?夢じゃないから悪夢じゃないよなぁ……。
ほら、頬抓ったら痛いし……あはは……はぁあああ〜〜〜…………。
ノート『なにを苦労人の顔をして溜め息など吐いている。
───っと、ああ忘れていた。マスター、バックパックを出せ』
悠介 「へ……?ま、まだなにかあるのか……?」
なんかもういいや、どうにでもなれだ。
俺は半ば疲れきった思考のままにバックパックを開いた。
疲れているのはノートの力の行使の所為というのが大半である。
言ってしまえば今すぐ倒れて気絶したいくらいに疲労が溜まっている。
───が。その疲労はバックパックの中にあったオーブを見た途端に絶望に変わった。
オウ……なんでしょうかこれは。
神さま、俺には解りません。
ノート『ゾーンイーターのオーブだな。早速契約しろ』
悠介 「イ、イヤァアアアアーーーーーーーーッ!!!!」
その時、俺は『晦悠介らしからぬ悲鳴』とやらをあげたんだそうな。
正直よく覚えていないが、多分それは事実なんだろうなぁと本気で思った。
何故なら───
……。
彰利 「……そんで。キミなに引き連れてんの?ペット大集合の図?」
悠介 「言うな……」
俺の周りには精霊十四人───即ちノーム、ウンディーネ、サラマンダー、シルフ、
ニーディア、ウィルオウィスプ、シェイド、ネレイド、ドリアード、オレアード、
ナイアード、ナパイア、アルセイド、スピリットオブノートと、
召喚獣五体───即ちグリフォン、フェンリル、ベヒーモス、リヴァイアサン、
ゾーンイーターと、
飛竜四体───即ちディルゼイル、アーガスィー、ヴァルトゥドゥス、ヘイルカイト。
その計二十四体が、小さくなった状態で存在していた。
その数に圧倒されることも確かだが、
なによりも精神力の消費が激しいことに辛さを感じる。
もちろんその原因はただひとつ。
というよりひとり。
全員を小さい状態にした途端に俺と同調してきたスピリットオブノートにある。
一応同調は成功し、無の属性の開花も成功したわけだが───
俺の器はこの高位精霊が住むには小さすぎるわけだ。
だから無の属性の諸力で補えない分は俺の精神力で補っているわけで……
ようするに誰か助けてくれ。
みさお「うーわー……よくそんなに召喚してられますね……」
悠介 「言うな……」
これでも限界状態で耐えてるような状態だ。
『全ての精霊の諸力も持っていることだ、そろそろいいだろう』とか言って同調されたが、
そろそろどころか全然ダメそうなんだが?
そこんとこどうなんだスピリットオブノートさんよ……。
ノート『知らんな』
小さなノートが人の心に返答してきた。
そのあまりに無情な返答に、思わず泣けてきた。
みさお「でも飛竜さんたちってなんだかカワイイです。
パピィ、っていうんでしょうか。小さな子供の竜みたいです」
ベリー「姿形はちっこいけど強さはそのままだから気をつけなさいな……。
引っかかれたりしたら肉が削げて骨が砕けるわよ……」
みさお「ひえっ!?」
悠介 「ベリー、脅すなよ……」
彰利 「そうじゃよ。こげにちっこいのにそんなパワフリャなわけないじゃない」
ケタケタと笑う彰利がベヒーモス(柴犬より少し小さいくらいの大きさ)の頭を叩く。
命知らずな───そう思った瞬間には、彰利の腕がボチューーン!と空を飛んでいた。
彰利 「……あれ?ってギャォオオオオーーーーーッ!!!」
ベヒーモスの尾撃一発で肘から先が飛んでいた。
やはり強さはそのままらしい。
しかし彰利の腕は地面に落ちると同時に、腕自身の影に飲み込まれてゆき───
そうした次の瞬間には彰利の肘から先の部分からズズズ……と生えてきていた。
彰利 「フフフ、影を支配するというのはこういうことだ」
悠介 「少し見ない内にまた随分と人外になったな……」
彰利 「キミには完敗さ!最強!」
悠介 「………」
自覚しても足りないくらいに自覚してるのが悲しいな……。
彰利 「で、これからどないすんの?」
悠介 「明日に備えて寝る……。
この状態で休んでも休まるのかは謎だけどとにかく寝る……」
みさお「疲れきった顔してますね……」
彰利 「うむ。なんていうか最強の苦労人の顔をそのままトレースしたような顔じゃね」
みさお「実際に苦労人ですからね。
わたし、悠介さんほどの苦労人って見たことありませんよ」
彰利 「うむ、俺もじゃね。なんてーかこう……最初はいい顔してるんだけど、
物事が深いところに行くと大体苦労してるっつーか。
考えてみりゃあ悠介ってそんなんばっかだよね」
悠介 「やかましい」
ともあれ黄昏を解除した俺は、瞬間的に襲ってきた気だるさと疲れをいっぺんに受け、
まるで気絶するかのように倒れ───やがて眠ったそうだ。
いきなり意識が遠退いたもんだから、俺自身全然覚えていないのも当然だった。
Next
Menu
back