───FantasticFantasia-Set61/利用する者される者───
【ケース138:弦月彰利/ブラックンド】
彰利 「ディナータイムだアモルファス!!」
ゾパァッ───ゴプシャアッ!!
モンスターども『ギィイイイーーーーーーッ!!!!』
地面から盛り上がった巨大な影の口がモンスターどもを飲み込み、
再び大地へと消えてゆく。
困ったことにさっきから戦いづくめで正直疲れとります。
ここにみさおさんが居ると解った途端、
物凄い盛栄引き連れて襲い掛かってくるんだもんなぁ。
彰利 「みさおぉっ!そっちは大丈夫かぁっ!?」
みさお「大丈夫です!飛燕龍-刀閃-!!」
みさおさんが夜華さんに伝授してもらったらしい刀技でモンスターどもを蹴散らしてゆく。
みさおさんが持つ刀───まあ言っちまえば冥月刀を具現化したものだけど、
それから横一線の剣閃が放たれまくっている。
伝授とは言っても上手く習得出来たのは-刀閃-だけらしいけど。
それとは別に、ノーちゃんから伝授された
『モンスターを仲間にする能力』で適当数のモンスターを従えて戦っている。
みさお 「リザードマンさんGO!!」
リザードマン「ケアァッ!!」
ザグシィンッ!!
ゴブリン「ギエェエエーーッ!!!」
みさおの合図で、それまで待機していたリザードマンがゴブリンに斬りかかり、塵にする。
みさお 「キラービーさん上です!」
キラービー「キチチッ!!」
相次いで空から襲い掛かってきた鳥型モンスターに、キラービーが毒針を乱射する。
普通に戦えば明らかに鳥型のモンスターの方が強かったんだろうが、
何本も打ち込まれた毒針を前に、鳥型のモンスターは落下して動かなくなった。
むう、どうやら絶好調のご様子。
だったら俺も負けてられませんな!
ウィッチ「何処を見ているぅっ!!ボルトブラストォッ!!」
明らかにモンスターだけどフードのようなものを被った敵さんが、
魔導魔術を行使してくる。
俺はそれに対して避けることなく堂々と立つと、やがてそれが目前に迫った瞬間に───
彰利 「ドランカーシェイド!!!」
影で鏡を作り、飛翔してきた魔導魔術を跳ね返した!
ウィッチ「なにぃいっ!?ちぃいいっ!!」
だがさすがは撃った張本人───ん?人?まあいいや、張本人だ。
ウィッチさんは跳ね返ってきた魔導魔術を吸収すると、再び構えた。
でも甘い。
俺はその構えた瞬間に生じた隙を逃さずに一気に間合いを詰めるとウィッチさんを掴み、
そのまま影へと沈めていった。
ウィッチ「ギィッ!?ギギィギャアアアアアアアアッ!!!!」
当然、闇でも黒でも影でもない相手が影なんかに沈むことが出来る筈もなく。
ウィッチさんは足の先から影に食われ、血飛沫を上げながら消滅した。
ザパァンッ!!
彰利 「フィナーレの時間だぁっ!!」
気分はすっかりバサラさんである。
沈んでいた影から一気に飛び出すと、俺は大地に降り立つとともに奇妙なポーズをとった。
みさお「遊んでないで真面目にやってくださいよ!」
彰利 「これだけ数が多くちゃたまにはふざけでも入れないと疲れるわい!!
つーか真面目!それなりに真面目!!」
だがモンスターの方にしてみれば、もっと真面目なのだろう。
あれだけ残酷惨たらしい場面を見せ付けてなお、俺への突撃をやめない。
みさおを攫うには俺が邪魔だって言いたいんだろう。
俺はその意図を飲み込んでからモンスターが完全に俺を囲むまで待ったのち、
全身に闇を纏って一気に突っ込んだ。
彰利 「ダァアアアアクッ!!センチネル!!」
闇に覆われた体はしかし、闇というカタチの無い概念からかけ離れた硬質さを見せ付けた。
触れたもの悉くを蝕み、弾き、押しつぶしてみせた。
それでもモンスターどもは怯まない。
あとからあとからやってきて、これでもかってくらいの数で一気に襲い掛かってくる。
つーか……闇の行使しすぎた所為で、そろそろここら一帯にあった黒闇が消え始めてる。
いかんな、これがあったから無茶な闇行使が出来たのに。
まあ無くなったらまた作ればいいだけなんだけどね?
彰利 「闇に───」
首にぶらさげたダークマテリアを握って意識を集中させる。
空気中に漂っている闇のマナを掻き集め、それを自分のものとして行使するために。
彰利 「染まれェエエイッ!!」
その手応えが掴めればあとは楽だった。
マナが促す通りに力を増幅させ、それを結晶のように辺りに撒き散らす。
気分はサイキックフォースの刹那くんだ。
敵さんは視覚も失うし、体力も次第に奪われていくというオマケつき。
まあみさおも視力失うからあんまり濃くするのも問題なんだけど、
みさおはみさおで自分の反応を死神側に傾けて戦ってますから、
闇ごときで困ることはないのです。
彰利 「さあ存分に食らえ影達よ!!食事の時間だぁっ!!」
影 『オォオオオオオオオオオオンッ!!!!!』
影達が吼え猛る。
ああザトーさま……俺の影もこんなにも自我を持ってくれました。
俺がダークスライサー入りのルナカオスを持ってる限りは絶対に忠実です。
まあルナカオスを手放したところで従わせるだけの闇と黒を持ってるから大丈夫だけど。
みさお「あ……彰衛門さぁん……あんまりヒドイことしないでくださいよ……?
モンスターを従わせてる身としては、
影に食べられるってだけでも良い気はしませんから……」
彰利 「イんや〜ソーリーソーリー。でも影たちが腹が減ったって言うからさ。
まあ食えば食うほど強くなるんだし、それでOKさー」
みさおさんとは別に、俺がノーちゃんから伝授……というか開花させられたのは、
『意思持つ影』の行使である。
影ってのは幾つもの自分のひとつであるという。
つまり鏡に映った自分然り、他人の目から見る自分然り。
ただ俺の場合は誰よりも影の存在が強いらしく、
俺が黒や闇であればあるほど行使できるというのだ。
まあもちろん、黒と闇と、
ダークスライサーのバックアップがあって始めてコントロールが出来るものなんだけど。
きっかけはまあそんなもので、一度従わせちまえばあとは裏切ることが無いんだそうだ。
だから別にルナカオスを落としても操れる自信があるわけだ。
彰利 「さあ行けゴーレム!破壊しつくせ!」
ゴーレム『ゴォオオオオオンッ!!』
しかも、影っていうのは何にでもなれる。
一度食らったもののカタチを完全に覚え、さらにその存在へとカタチを変えられるのだ。
だから相手が多ければ多いほど、どんどん強くなれる。
これぞ───環境利用闘法!!
彰利 「や、違うか」
あ、ちなみにアモルファスは俺自身の黒と闇と影の具現ですよ?
最初は小さな影だったけど、食らってる内にどんどんと大きくなってきました。
いつか意識乗っ取られたりしないかなぁと不安ではあるんですが、
ノートに言わせると俺に限り、絶対にそんなことは無いんだそうだ。
何故ゆえ?と訊いてみれば、『それはお前が“黒の秩序”だからだ』と。
いろいろあったけど、『黒』だった自分は無駄ではなかったということだよクラースくん。
彰利 「いやぁもうあたしゃ幸せですよ?こんなにも人懐っこい影を使役できて」
もう影達ったら喜んでバキベキとモンスター食らってますしね?
黒ずんだ地面からバキベキゴキゴシュゾブリゴブリと音が鳴るなんて、
ホラーチックなことこの上無しです。
ああ、なんか俺……ネロ=カオスになった気分。
彰利 「素晴らしい……俺の中でどんどんと影が大きくなってゆくぞみさおさん!
さあ食らえ!際限無く食らい尽くせ!獲物はまだまだ居るぞ!!」
影 『クォオオオオオオオンッ!!!!』
みさお「あ、あの彰衛門さん!?お願いですから影に飲まれたりしないでくださいね!?」
彰利 「ほっほっほ!余裕!!」
実際、物凄く余裕である。
影だって俺の意思で動かしてるし、悪影響と呼べるものは一切無し。
ただ……まあその、食らうたびに少し興奮状態になるのが難点だが。
彰利 「しかも見よ!食らった先から影が俺の闇に力を流してくれてるんですよ!
あ、闇ってのは俺の中の鎌……まあ骨子ね?
んで……多分鎌の力の影響だろうけど、
モンスターの技がラーニング出来るんじゃよ!」
言って、さっきのウィッチさんのボルトブラストを放ってみせた。
じゃけんど本来なら青白い雷光が出る筈のソレは、真っ黒い雷光に変わっておりました。
うーむ、取り込んだ先から黒になるとは。
ともあれ俺の鎌はハデスディザスターとデスティニーブレイカーから昇華したような鎌だ。
コピーには慣れているようで、飲み込んだ先からモンスターの特技などを吸収している。
ちょっと意識してみれば、どれがどういう技なのかもありありと流れ込んでくる。
……おお、これステキ。
彰利 「完全体まであと僅かだな……」
ともあれもはやザコとならば一対一でも負ける気がしません。
俺はこのまま青魔道師になりましょう!!
ラーニングした特技で敵さんを存分に後悔させてやるのです!!
でもまあ後悔となるとやっぱり劈鳥でしょう。
彰利 「しかし……どっかにミノタウロス居ないかね?
是非とも“痛恨の一撃”のスキルが欲しいんだけど」
みさお「見た限りだとそれらしい姿はありませんね」
彰利 「とりあえず“毒撃”とか“剣舞”とかその他もろもろは覚えたんだけどね。
あ、毒撃はキラービーで剣舞はリザードマンね?」
みさお「予想はつきますけど」
つーかモンスターどもが食われてる中でのんびり会話ってのも気味が悪いもんだ。
なにせ、とにかく咀嚼()の音が生々しい。
なんつーかスズメバチを踏んでしまった『ペキリ』という音だとか、
カタツムリを踏んでしまった『パキャリ』という音だとか、
マグロを捌く際に『ビッ!パキッ!』と鳴るように───ともかく生々しい。
みさお「うあああ……!!あ、あのあの彰衛門さん……!?
いい加減に食べるのやめさせません……!?」
彰利 「やめさせません」
食らうたびに闇と黒と影は巨大化してゆく。
その規模は凄まじく、既に半径50メートルくらいの大地が黒く染まっている。
当然、無鉄砲にみさおへと突進しようとするモンスターどもは足元の影に飲まれ、
影の中で咀嚼されてゆく。
そのたびに影の密度と範囲は広がってゆくものだから、
遠巻きに見ていたものまでもが突如伸びた影に足を取られ、沈められてゆく。
みさお「うぅう……あ、彰衛門さぁん……」
彰利 「えぇい情けない声を出すんじゃありません!!
悠介がミルハザードをブッ潰すまでの辛抱です!!」
とはいえ、そろそろ影たちも腹がMAXになってきた様子……。
しゃあない、普通に戦いますか。
───指をパチンと鳴らすと影達が俺の影へと戻ってゆく。
で、驚いたのが……密度が高くなってしまった所為で、
影が完全に漆黒になってしまっていることだ。
普通影があるっていっても地面とかは見えるものだが、
完全に黒で塗り潰されてて土の輪郭さえ見えやしない。
おお……俺の影がある場所だけカオスだよトニー。
モンスター『ウゴバシャドアシャア!!』
と、影を引っ込めたら引っ込めたで、今こそ好機とばかりに迫り来るモンスターども。
その数は───やっぱりハンパじゃござんせん。
しゃあないのぅ……。
彰利 「ではそろそろご覧にいれましょう。
ノーちゃんの地獄の試練にて手に入れたもうひとつの能力───鎌の昇華を」
ルナカオスをチキリと持ち直す。
さらには剣の中に沈めてあるダークスライサーにさらなる闇を染み込ませ、
全ての鎌の力を凝縮して注入───のちに唱えた。
あ、言っとくけど劈鳥じゃないよ?あれはダークネスフラッシャーの強化だから。
……ともかく、鎌の昇華の要領はアンリミテッドブラックオーダーと変わらない。
アレをダークマターに変えたように、他の鎌も変えてゆけることを知る。
それが、俺に与えられた試練だった。
彰利 「染めつくせ!“耀天食らう影闇の漆黒()”!!」
ルナカオスが散るとともにその場が完全なる闇に染まる。
地面だけでなく、虚空からなる世界の全てが。
とはいえ効果範囲は確かにあり、影が大きければ大きいほど範囲も広がる。
つまりは───50メートル弱の漆黒空間が生成されたわけだ。
みさお「うぐっ……いつやられても慣れませんよこれ……」
彰利 「痛覚以外の全ての感覚が闇に飲まれるからね。
みさおさん、いつものことだけど力は死神側に傾けときんさいね。
神側だと食われるぞ」
みさお「解ってますけど……」
この空間は言わば巨大な深闇っていう生き物の胃袋の中(だ。
闇の存在には優しいが、それ以外にはめっぽう厳しい。
現に今も、影が食らい尽くしたモンスターどもの影が出現し、
闇に紛れてモンスターどもを破壊していっている。
だが塵になる前に飲み込まれ、やはり咀嚼されて死んでゆく。
この空間では闇以外の回復は一切使えず、迷い込んだものはジワジワと蝕まれてゆくのみ。
やがてその大半が闇に傾いた時、一気に食われるという空間だ。
さすがに初めて発動出来た時には吐き気をもよおしましたけどね、もう慣れっ子です。
彰利 「ンマー……でもやっぱダメ。これキッツイわ」
影の方ももう既に腹が一杯だから、弄んで蝕んでるし。
だから解除……ゾシュンッ───!!
彰利 「はぁ……」
闇に迷い込んだモンスターもろとも、影が俺の影へと戻ってゆく。
さらに、散ったルナカオスが俺の手の内へと戻り、再び剣として構築された。
みさお「……遠巻きに見てるモンスターさんたちが明らかに怯えてますけど」
彰利 「構わんさね。見た中じゃあ……全部が全部、
一度食ったことのあるモンスターみたいだし。
キミはちと城の方守っといておくれ?アレやるから」
みさお「うわ……アレですか?」
ルナカオスからダークスライサーを抜き取り、代わりにダークマターを差し込む。
さらには再び昇華の闇を流し込むと、ダークマターの中に存在する全ての鎌を昇華させた。
モンスターども『ボンゲェエエーーーーーッ!!!』
モンスターが迫り来る。
だが俺は落ち着いた動作でルナカオスを自分の中へと埋め込み───骨子(へ変えた。
彰利 「卍()ッ!解()ッ!!」
いや、べつに唱えは卍解じゃなくてもいいんだけどね?
どうにも死神の持つブツの昇華ともなると……ねぇ?
ともあれ、鎌の力の全てが俺の体の隅々まで流れ込み───刹那。
彰利 『ウゥウウウウルォオオオオオオッ!!!!』
体が指先から真っ黒な霧へと化してゆき、
だがその全てが霧散する前に影が黒を繋ぎ、その規模の分だけ俺を巨大な黒(にする。
モンスターども『キャッ……キャーーーーーッ!!?』
モンスターどもが俺を見上げて絶叫した。
これぞノーちゃんが俺に極めさせようとしていたブラックオーダーの最終形態。
昇華させた鎌の全てを骨子にすることで、
使用者を爆発的に強者にする卑劣技中の卑劣技───“黒縄天譴明王()”!!
あ、いや……グリーンジャイアントの名前は冗談ですよ?
真名は“影鎌繰り殺ぐ闇黒の秩序()”と書いてアンリミテッドブラックオーダーです。
でも影の規模だけ巨大化し、さらに密度を濃くすれば小さくもなれるこの姿は圧巻です。
俺は真っ黒な巨人と化した自分を見てニヤリと笑い、
俺を見て驚愕から冷めないモンスターへと掌を振りました。
ウィッチ「は、ああ……!!て、手が!!」
ドッパァンッ!!
ウィッチ「あべしっ!!」
ウィッチさんがまるで、フドウを前にしたザコのように消滅した。
だがすぐに別のウィッチさんが魔導を唱え発動させたが、そこには何も生じない。
ウィッチ「はっ……こ、これは……!?」
彰利 『無駄、無駄無駄無駄無駄無駄』
俺がこの姿で居る時点で、既に相手は混乱状態にある。
デスティニーブレイカーの昇華、“総て混沌に凶る未来()”によるものだ。
範囲内に居る、敵対する総ての存在の未来を捻じ曲げるものだ。
たとえば魔導を放とうとしたのに別の行動を取っていた、という風にだ。
本人がいくら懸命に何かを為そうとしたところで、それが叶うことは絶対に無い。
さらには実行することが出来なかった事柄を破壊し、二度と使用出来なくする。
いくら足掻こうが勝てる見込みは極僅かということだ。
彰利 『では……灰燼と化しなさい!!』
モンスター「ギャッ……ギャーーーッ!!!」
振るう掌がモンスターどもを消してゆく。
手に触れた者は刹那に消滅し、風圧に当てられた者は混沌と化して次元に消える。
逃げようとした者は手から放たれた闇薙の衝撃波に飲まれ、塵と化した。
モンスター『ギ、ギギギ……!!』
俺を見上げるモンスターたちが明らかに怯え始める。
でもストレイツォ、容赦せん。
彰利 『シャァアアンドラの火を灯せぇえええーーーーーーっ!!!!』
モンスターども『キャーーーーッ!!?』
あとはもうやりたい放題だ。
拳を落としたり、口から爆裂魔光砲を撃ったり、強化されたブラストを撃ちまくったり。
そうして大猿になったサイヤ人のように散々暴れ終える頃には、
俺の体力と余力はかなり底を尽いていた。
だが───そんなことはお構い無しに後から後から沸いて出るモンスターども。
彰利 「かっ……くそがっ!体が動かねぇ……!」
みさお「あんな無茶するからですよ!
よっぽどの時以外には使うなってノートさんに言われてたじゃないですか!」
彰利 「いやー……圧倒的な強さを見せれば退いてくれるかなって思ったんだけど……」
予想はあっさりとハズレた。
モンスターはむしろさっきより猛りを見せて、俺達に襲い掛かってきている。
仲間の敵討ちってやつかね───麗しいこって。
彰利 「だがなーーっ!!自分たちから突っかかってきたくせに、
殺されりゃあ敵討ちなんてアホらしいって思わんのかね!!」
モンスター「オゴゲギャアアアーーーーッ!!!」
彰利 「キャーーーッ!!?」
完全無視でした。
つーか……
彰利 「いけない……!怒りに我を忘れてる……!」
みさお「ナウシカやってる場合ですかぁあーーーーーっ!!!」
前途はとても多難でした……つーか正直長く保ちそうにない。
くっそ……どう切り抜ける───!?
【ケース139:カルナ=ナナクサ/フレイムサークル】
───ボゴォンッ!!ボゴゴガガガガァアアッ!!!!
モンスター「ギィイイイイイッ!!!」
カルナ 「ッ……は、はぁっ……!はぁっ……!!」
屠った数は幾数に渡るのか。
エデンの前でモンスターたちを向かえ打ち、既に時の経過さえ忘れるくらいに戦った。
だが相手の数は増える一方であり、こちらの疲れも増す一方だ。
カルナ「くそっ……次から次へと……!!」
両腕に灯した火が消えかかる。
だがそれを気力で燃え上がらせ、再び放った。
カルナ 「フレアボルトッ!!」
ソーサラー「甘い甘い……」
だが、放った炎はソーサラーによって弾かれてしまう。
モンスターの中に紛れている魔導使いはかなり厄介だ。
だが───
カルナ 「甘いのはそっちだ!!」
ソーサラー「───!?なっ───」
驚愕した時には既に遅い。
一気に疾駆し、
詰めた間合いから思い切り振るった拳はソーサラーの顔面を焼き砕き、塵へと変える。
それだけでは終わらず、モンスターの大群の中に身を投じると跳躍し、
虚空から波のように動くモンスターの群集へと全力を込めた炎を落とす。
その炎を見てモンスターどもは、
『こんなもので死ぬわけがない』と笑ったかのように見えた。
だがそれは間違いだ。
俺はなにも適当に戦っていたわけじゃない。
カルナ 「呼応せよ炎のマナ───六点に灯す火種より出でるは破壊の象徴!!
燃やし尽くせ炎王、ヴォルカニックブレイザァーーーーッ!!!」
モンスター『ギッ!?』
六点に灯した火種が、落とした炎に呼応し爆発する。
もちろん円を象るように灯した六点の中に存在したモンスターどもは無事に済む筈も無く。
その場に存在し、俺を見上げていたモンスターどもは完全に塵と化した。
カルナ「づっ……はぁ……!!」
着地とともに荒い息を吐いた。
さすがに無茶しすぎた……両腕に灯した炎が完全に消えてしまっている。
パチンパチンと指を弾いてみるも、火種すら生成出来ない状態だ。
とりあえずは見える景色に居たモンスターは一掃したからいい。
だがそれがいつまで続くか解らない。
またすぐに次のモンスターがやってくるかもしれない───いや、絶対に来るだろう。
相手だって馬鹿じゃない。
殺されれば殺されただけ、相手への恨みも募るものだ。
たとえ目当ての『みさお』が別の場所に居ることが解ったとしても、
仲間を殺された恨みは確実に殺した者へ向けられるだろう。
カルナ「とはいえ……まいった」
力を使い果たしてしまったのか、体が勝手に倒れ、俺は尻餅をついた。
少し休めばマナを吸収して力も回復するだろう。
だったら今はゆっくり休むのが先決だ。
……先決、なのにな。
カルナ「……くそっ」
遠くから地響きのような音が聞こえる。
もちろん地震なんかじゃない。
それは、悪夢にも似た音の具現だ。
カルナ「はは……地平線が動いてら(……」
その数は本当に悪夢としか言いようがない。
勝てる可能性はゼロ。
自分の中の火種も枯渇気味。
だってのに逃げるって選択肢が無い。
……まったく、嫌になるほどよく出来たファンタジーだ。
これがゲームならリセットのひとつでも押したい気分だな。
カルナ「いいさ……やってやる。子供たちは……絶対に俺が守ってみせる……!!」
気力を振り絞り、無理矢理火種を灯した。
力自体が枯渇気味なんだから、火種から派生できるものなんて大したものではない。
けれども出来ることは最後までやりとおす。
それが達成できるなら───本望だ!!
カルナ 「オォォオオオオオオオオオオッ!!!!!!」
モンスター『ケァアアアアアアーーーーーッ!!!!』
出来るだけエデンとの距離が離れるよう、俺は敢えてモンスターの軍勢に突っ込んだ。
その途端に攻撃の嵐が振りそそぎ、体中が切り刻まれるが───それさえ些事だと断じた。
五体の動く限りに拳を振るい、抗える限りにモンスターを塵にしてゆく。
血が出ようが血反吐を吐こうが、それをやめるつもりは無かった。
───そう。体が動く限りは───
【ケース140:篠瀬夜華/夢想】
夜華 「四聖刀覇───-乱れ紅葉-!!」
ザゴォンッ!!
モンスター「ギィイイイイーーーーーッ!!!!」
物の怪の上半身が飛ぶ。
相手の攻撃を掻い潜って放つ刀技の数々は確かに物の怪の数を減らしている。
が───その絶対数が枯渇することなど有り得ぬと断ずるかの如く、敵は次々に現れる。
南無 『ほねぇえええーーーーーっ!!!キリが無ェほねぇえーーーーっ!!!!』
だが恐らく一番に敵を屠っているのはあの骨だろう。
あいつが奔らせる鎌の一撃はまるで化け物だ。
溢れるように現れる敵が、その一撃で悉く滅んでゆく。
恐らくあの骨が居なかったなら、わたしと聖は既に力尽きていただろう。
聖 「薙ぎ払って、“不浄を滅する災狩の大鎌()”!」
聖は骨と同じように鎌を振るい、時には投擲し、物の怪を次々と破壊してゆく。
戦い方はこうだ。
骨が大多数の物の怪を屠り、屠りきれなかった物の怪をわたしと聖が屠る、というもの。
骨から提案されたものだが、なるほど、確かにこれは効率がいい。
南無 『ほねほねほねほねほね!!なにやらさっきから体の調子がいいほね!!
なんだかどんどんと力が沸いてくるようほねよ!!
さぁあああーーーーーっ!!さぁさぁさぁさぁさぁあさぁああっ!!!!』
骨は『さぁ』という言葉を何度も言い放ちながら鎌を振るう。
その剣圧が景色でも破壊するかのように、
目の前にびっしりと居る物の怪どもを蹴散らす様はまるで幻のようだ。
自分が梃子摺る相手をあっさりと滅ぼす存在というのは、
ただ居るだけで自分の存在が霞んでしまう。
だがそれでも、骨はわたしに退けとは言わなかった。
南無 『夜華ちゃーーん!!俺かっこいいほね!?惚れたほね!?』
夜華 「ほ、惚れるかばかっ!!」
南無 『ひでぇほね!』
聖 「南無さん!真面目にやってください!」
南無 『さらにひでぇほね!!俺ちゃんとやってるほねよ!?』
骨の言うことはもっともだ。
今わたしたちの中で一番物の怪を屠っているのは間違い無くあの骨だ。
悔しいが、一番屠れていないのはわたしだろう。
だが足手まといになるつもりはない。
夜華 「負けるものか───!」
○○○「まったれや」
夜華 「───なにっ!?」
刀を構え、駆け出した途端に背後から声が聞こえた。
おかしい……後ろには誰も居なかった筈なのに。
わたしは緊張を抑えきれないままにゆっくりと後ろへ振り返った。
すると───誰も居ない。
夜華 「……?」
南無 『これ夜華ちゃん!!そういう時は【なにっ!?】じゃなくて、
【な、なにーーーっ!?お、お前はーーーっ!】でしょうほね!?』
夜華 「な、なんだそれは!そんなことを言われたって知るものか!!」
南無 『知れてめぇほね!!死にたいほね!?』
夜華 「な、なに!?貴様に心配されるまでもなくわたしは死んだりは───」
南無 『ほ〜ねほねほねほね!!無理ほね無理ほね!
夜華ちゃんはさっきから心にある疑問に翻弄されっぱなしほね!
そんな状態ではいつか隙が出て死ぬほねよ!?』
夜華 「ぐっ……そ、それは貴様が教えないからだろう!!」
南無 『ほねっ!?骨の所為にするほね!?ほねほねほね……まあいいだろうほね。
ならば教えてやるからさっき言った通りに反応するほね!
チャンスは一度きりほね!!』
夜華 「なっ───ちょっと待て!心の準備が───」
と、骨に駆け寄って言いたいことを言ってやろうとしたその時───!
○○○「まったれや」
夜華 「───!」
すぐ後ろで再び声が聞こえた。
どうする、と頭の中が訴える。
死ぬ……?いやだ、死にたくなんてない。
だったら言うのか?あんなよく解らないことを?
くっ───どうにでもなれ!!
夜華 「な、なななななにーーーっ!?お、おぉおお前はーーーっ!!」
独眼鉄「ここは先輩の顔立ててもらうぜ」
南無 『ど、独眼鉄ーーーっ!!』
独眼鉄「許せねえ。自分の子分にまで手にかける血も涙もねえあのひねたガキに、
この独眼鉄さまがきついお仕置きをしてやるぜ」
聖 「いつ……誰が子分を手にかけたんですか……?」
独眼鉄「………」
聖 「………」
独眼鉄「ヘッ、口の減らねえ可愛気のねえガキだ」
南無 『失礼なヤツほねね……』
夜華 「貴様が呼び出したんだろう!!」
南無 『ほねっ!?どうして解ったほね!?』
独眼鉄「フンッ!!」
バッバッバッバッ……!!
独眼鉄とやらが飛び後転をして物の怪へと突っ込んでゆく。
ドグシャッ!
独眼鉄「ぐぎゃああーーーーーっ!!!」
南無 『ど、独眼鉄ーーーっ!!』
……が、あっさりと殺された。
夜華 「何がわたしが死ぬだ!あんな者を出すくらいならわたしが行った方がまだいい!」
○○○「まったれや」
夜華 「!?誰───だぁあっ!?」
南無 『な、なにーーーっ!?お、お前はーーーっ!!』
独眼鉄「ここは先輩の顔立ててもらうぜ」
南無 『ど、独眼鉄ーーーっ!!』
夜華 「なっ……なぁあっ……ま、待て!今そいつは物の怪に……!!」
独眼鉄「んーーーっ!?なんだその目付きは!!
まだ自分が置かれた立場が解ってねぇようだな!!」
夜華 「じ、自分の立場くらい解っている!見縊るな!」
独眼鉄「無理するな!怖い怖いと泣き叫んで命乞いをしてみせんかーっ!!」
夜華 「誰が泣くものか!貴様こそ引っ込んでいろ!また殺されたいか!」
独眼鉄「なにを寝言言ってやがる!頭かち割られて死ねいーーーっ!!」
と、何を思ったのか独眼鉄はわたしに向けて巨大な円形の物体を投げてきた。
わたしはそれを刀で弾き、さらに懐へと潜り込むと刀を閃かせる。
夜華 「飛燕龍-壊牙-!!」
ゾブシャアッ!!
独眼鉄「ぐぎゃああーーーーーっ!!!」
南無 『ほねねっ!?ダメほねよ夜華ちゃん!
ここは独眼鉄に任せて俺達ちょっと休憩しましょほね!』
夜華 「休憩だと!?こんな大きいだけの馬鹿になにが出来る!」
独眼鉄「んーーーっ!?なんだその目付きは!!
まだ自分が置かれた立場が解ってねぇようだな!!」
夜華 「黙れ貴様!貴様こそ自分の置かれた立場が解っているのか!?」
独眼鉄「ヌワッハハ!いいツラになったな!色男もカタなしだ!」
夜華 「だ、誰が色男だ!!斬られたいのか貴様!!」
独眼鉄「フッフフ、その程度の力ではこのわしの鋼の筋肉は貫けはせん!」
夜華 「なんだと!?だったら試してやる!わたしは貴様ごときに───!!」
南無 『チョップ!』
ズビシッ!!
夜華 「ふぐっ!?」
南無 『まったくもうだめほねよ?夜華ちゃんたら怒るとすぐに集中力乱すんだものほね。
冷静に、今は少し休むほねよ。いいほねね?』
夜華 「貴様ぁああ……!!なにをする!!」
南無 『ほねっ!?や、ちょ───待つほね!なんで刀構えるほね!?
俺はただ普通に休ませてやろうと配慮しただけで───ほ、ほねねねねねっ!!』
ゾブシャゴガシャベキャバキャゴシャベキャ!!!!
南無 『ほねぇえええええーーーーーーーーーーっ!!!!!』
コカカコと顎を動かして狼狽えていた骨に飛燕龍-極輪-を見舞った。
だが原型は崩れず、何かを懸念したかのようにわたしを突き飛ばした。
夜華 「っ───!?」
南無 『逃げろ夜華さ───』
ゴガシャァアッ!!
夜華 「な……ぁ……!?」
目の前で骨粉が舞った。
骨は巨大な斧でバラバラに砕かれ、
原型があったのかさえ解らないくらいに粉微塵になった。
そして───
夜華 「はっ……」
そして。
目の前に立つのは巨大な斧を持つ巨大な雄牛。
物凄い速度で現れたそいつの気迫はそれこそ悪夢。
視覚が捉えただけで、体が震えて動けなくなった。
聖 「マ───……!!」
聖が何かを叫んでいる。
だがその聖さえも動けないようで、今───動ける者は目の前の雄牛のみ。
それが何を意味するのか───
それを考えただけで、わたしの思考は考えることをやめてしまった。
【ケース141:ヤムベリング=ホトマシー/スワンチカ】
ベリー「あーもう……ヤになるなぁ」
ひとりでファウエルを引き受けたはいいけど、敵の数がハンパじゃない。
ミルハザードのヤツ、ホントに見境無しだ。
モンスター「ヘァアッ!!」
ベリー 「な〜んか……馬鹿らしくなってきたわ。バーンストライク」
ゴォッボォッゴォオオンッ!!!!
モンスターども『ギャアアアアーーーーーッ!!!』
魔導と式を織り交ぜて放った炎の塊がモンスターどもめがけて落下する。
はぁ……消しても消しても出てくるからいい加減うんざりだ。
大体わたしは空界の平和がどうとかにはあまり興味が無い。
均衡が崩れるなら一度思いっきり崩れてみればいいって思うほどだ。
でも───
ベリー「いやな方法とるわね、ミルハザードも」
どちらにしろわたしたちには救いの手は無いのだ。
たとえここでモンスターを滅ぼしても、次にはより強力な敵が現れる。
つまりこのモンスターたちは『生贄』でしかない。
かといって逃げても追ってくるし、戦えば敵の数は減るけれど、より強力な敵が現れる。
……困った悪循環だ。
ベリー 「呆れたものね、あなたたちも。利用されているのがわからないの?」
メイガス「生きる者なら解るだろう……。
利用されていることなど解ってる。だが、解っていたからなんだという。
どちらにしろ死ぬのだとしたら、ミルハザードより弱き者を狙うのは当然だ」
ベリー 「まあそうでしょうね。わたしだってそうするわ。
でも、どうして一緒に戦おうとしないの」
メイガス「一緒に?貴様らとか。笑わせる……」
ベリー 「ええ、まったくお笑い種だわ。
わたしも人間なんて研究材料としてしか見てなかったのにね。
よくもまあこんなことを言えたものだわ」
メイガス「ならば。貴様こそ我らに協力しろ。
貴様ほどの実力者が何故人間側に加担するのか解らん」
ベリー 「うん?ああ、そんなの簡単よ。
興味の対象が人間側を守ってて、それも自分よりも圧倒的に強いからよ。
その点ではあなたとそうそう変わらないかもしれないけどね、
決定的に違う部分がひとつだけあるわ」
メイガス「なに……?」
ベリー 「───悠介は、誰かを犠牲にしてまで自分の目的を達成しようとは思わない」
自分で言った言葉に呆れるとともに、覚悟が決まった。
べつにウソなんて嫌になるくらいついてきたわたしだけど、
このことに関してだけは嘘つきになりたくなかった。
ベリー 「あぁそれとね。わたしミルハザードなんかに興味無いわ。
あんなヤツの命令で死ぬくらいなら、信じたいものを信じて死ぬ。
───だ・か・ら♪」
キィイイイイインッ───!!
メイガス「───!?貴様……!」
ベリー 「せっかくだけどあなたのお誘いはお断り。
ミルハザードがもっと魅力的なヤツだったら、
あなたも生きながらえたでしょうね。でも───さようなら」
メイガス「ま、待───」
ベリー 「ボルテックライト」
小さく唱えた瞬間、目の前のモンスターメイガスの内側から雷光が溢れた。
青白い光が穴という穴から漏れ、しかし次の瞬間には大きな音を立てて爆発。
塵になったソレは、もう何も言わなかった。
ベリー 「───来なさいぼうやたち。
二千年以上のキャリアの差ってやつを思い知らせてあげる」
モンスターども『ギギギィイイッ!!』
群がるモンスターどもを一瞥して啖呵を切る。
とはいえ───この数は流石に多勢無勢かも。
まあなるようになるわね。退屈だけはしなくて済みそうだわ───
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