───FantasticFantasia-Set67/やさしさに包まれて───
【ケース160:弦月彰利/そして彼らは……】
気づけば地震はウソのように治まっていた。
見える景色はいつもの空界。
違いがあるとすれば……悠介とミルハザードとの戦いで、
一部だけが崩壊したかのような景色になってるってことくらいだ。
さて───そんなことを思っていたのが数時間前である。
彰利 「……ノーちゃんたら……とんでもねぇことしやがって……」
で、今の感想がこれである。
崩壊の一途を辿る筈だった空界はその実……
ノート……つーかやっぱノーちゃんの力でなんとか救われた。
救った力ってのが最初はイマイチ解らなかったんだが、今はよく解る。
無の精霊スピリットオブノートが使った最大の力───それは『融合』だった。
それも、一切遠慮の無い融合だ。
切り離すことも出来なければ、砕くことさえ不可能。
あー……つまりはだ。
俺達の時代の空界と、未来の時代の空界が……その、融合しちまったってこと。
それぞれの時代に住んでいた人たちさえ融合しちまって、
未来において老人だった人は今現在、二度目の若りし頃を堪能している。
融合の基準は俺達の時代の空界のようであり、
未来の老人たちや大人は皆、若人になっていた。
恐らくはミルハザードが『現代から』未来へ飛ぼうとしたのが原因であり、
まあ……つまりこの現代が未来に上書きされるのは当然だったってこと。
彰利 「ややこしいよね、まったく」
で、一番重要なのが記憶。
未来において老人だった彼らの記憶はどうなんだろう?と疑問に思うところだが、
そこはそれ───最大級の融合に抜かり無しってとこなんだろう。
戦いの終わりをリヴァイア達に報告しに行った際、俺は大変驚くこととなった。
なにせその融合ってのはしっかりと記憶まで融合させていて、
魔導術について熱く語る赤子を見た時など……腰が抜けるほど笑ったものだ。
けど───
彰利 「………」
悠介は傷をいくら癒そうが目覚めなかった。
ミルハザードとの戦いで全身をボロボロにし、
それでも立ち上がった親友は───戦いが終わってからずっと、今も眠り続けている。
ニンフが言うには、最後の一撃───
ミルハザードとともに次元を切り裂いたあの一撃が全ての影響なんだという。
最後のあの一撃には恐ろしいほどの力が加えられていて、
その力の大半が『屠竜』の効果へと流されていた。
元が屠竜剣なんだから当たり前といえば当たり前だった。
───重要なのは次だ。
竜人状態で、既に人としての鼓動が止まっていた悠介にとって、
あの一撃は諸刃以上の諸刃だったのだ。
故にところどころの部位が砕け、腕にいたっては完全に砕けて血も通っていない。
リヴァイアに訊ねてみたところで、魔導や式では手の施しようが無いと首を横に振った。
今現在はヤムヤムの工房でいろいろと調べてもらっているところだが───
今のところ、有力な情報は発見出来ていない。
そればかりが時間が経つにつれ、悠介の体は冷たくなっていっていた。
彰利 「………」
このままではいけない。
そう思った時、頭に浮かんだのが───あの場所だった。
彰利 「ヤムヤム!」
ベリー「……うん?なによツンツン頭。今悠介のこと調べてる最中───」
彰利 「レンタベイビーーーッ!!」
メゴッシャァアアアアアアアアンッ!!!
ベリー「ぷびゃっ!?」
悠介の意識調査をしようとしていたヤムヤムにドロップキック進呈。
次いで悠介を抱え上げるとすぐに転移を実行して、
すぐさま激昂するであろうヤムヤムから逃走を図った。
目的地はもちろんあそこである。
───……。
キィイイイ───ビジュンッ!!
彰利 「───はぁ」
降り立ってすぐに駆け出した。
そして叫ぶ。
彰利 「緑のおっちゃぁああああああん!!!!」
緑竜王『誰が緑のおっちゃんだ!!』
彰利 「キャーーーッ!!?」
いきなり現れた……おおビビッた。
とまあ、辿り着いた先はもちろんサウザーントレントの千年の寿命の泉の前です。
彰利 「って、よくぞすぐにご光臨なさった!!
えっとさ、悠介の記憶の映像のこと思い出したからここに来たんだけどさ!
確かここにある泉って千年の寿命の原水で、
竜にとっての神々の泉だったんだよね!?」
緑竜王『……なるほど。王を癒しにきたというわけか』
彰利 「おうそうだとも!で!?出来るのか出来ないのか!!」
緑竜王『まずは落ち着け。その前に客人だ』
彰利 「客!?誰だよ!!」
ベリー「わたしー!わたし、わたしー!!」
ズバァと振り向いた先にはヤムヤム。
顔面の蹴り痕がステキなことこの上ない。
彰利 「失せろ!!」
そんな彼女に極上の立ち退き文句を進呈。
ベリー「なっ……それが人の顔面に蹴りくれた人の言葉!?」
彰利 「言葉だから失せろ!こちとら大忙しなんじゃい!
悠介を助ける手段がここにあるのだよ!解っておるのかね!」
ベリー「そんなの最初っから解ってるわよ!でも大きな問題があるの!」
彰利 「なにを───へ?も、問題……?」
ベリー「はぁ……っ……あのね、黙って聞いてなさいよ?」
彰利 「………」
イエス、黙ることにしました。
ベリー「この泉は確かに人にとっての神々の泉と同等の癒しを竜に齎すわ。
でも解ってる?それって悠介が完全に竜人になるってことなのよ?」
彰利 「………」
ベリー「あの戦いで悠介の体の中の『人』の部分は確かに死んだ。
けどそれは今なら蘇らせられる部分よ。
まだかろうじて『死体は残ってる』状態って考えてくれればいいわ。
でもね、悠介を原水に触れさせればその『死体』さえ消滅する。
知ってるわよね?この原水は確かに竜にとっては特効薬みたいなもの。
でも人間にとっては毒でしかないの。
そんなものが死体に触れれば死体は腐って消えるわ。
それだけじゃない……完全回復するまで浸からせてたら、
寿命だって今の寿命が比じゃないくらいに膨れ上がるの。解る?」
彰利 「………」
じゃあどうしろと……?
このまま手を拱けというのかこのウスラトンカチが……!!
ベリー「いろいろ言いたいこともあるだろうけどね、
こんなことが織り交ざってなければ
わたしだってとっくに悠介を原水に沈めてたわよ。
でも本人の了承も無しにそんなこと出来る?
わたしは出来そうになかったから悩んでた。ツンツン頭、あなたは?」
彰利 「出来る。つーかする」
ドゲシッ───ボッシャァアアアアンッ!!!
ベリー「おわぁあああーーーーーーーっ!!!!」
緑竜王『ぬおぁあああああーーーーーっ!!!!』
肩に担いでた悠介を原水へと蹴落とした。
するとあっさりと沈み、泉の輝きに紛れて見えなくなってしまった。
ベリー「ななななななななにやってんのあなたぁああーーーーーっ!!!!!」
彰利 「むっ……!?あなたなんて呼ばないでもらおうか!
俺は貴様なんぞと夫婦になった覚えはない!!」
ベリー「子供みたいなこと言わない!!
ていうか今時子供でもそんなこと言わないわよ!!」
緑竜王『小僧……!貴様、王の意思を確かめもしないで……!!』
彰利 「意思?王?そんなん知るかいボケ」
緑竜王『なに───!?』
顔をしかめる緑のおっちゃんをキッと見据えると、言葉を続けた。
彰利 「いーか緑のおっちゃん。あんたや他の竜にとっては悠介は王かもしれない。
けどな、俺にとっての悠介は王でもなんでもない、たったひとりの親友だ。
その親友が死にそうになってんだぞ、
竜になるだとか人じゃなくなるなんて関係無い。悠介は悠介だ」
ベリー「あ───や、でもね!?」
彰利 「んじゃあ聞くけど。きさんら悠介が人の姿してなきゃ悠介じゃないって言うんか」
ベリー「そ、そんなことあるわけないじゃない!」
彰利 「……ならばそれが答えなんじゃないのかね?」
ベリー「う……」
ヤムヤム、押し黙るの巻。
まぁなんにせよこれでなんとかなる。
……あとは俺次第なわけだけどね。
ベリー「って……ツンツン頭?なにする気?」
彰利 「フフフ、実はなヤムヤムよ。
悠介を泉に突き落とす前に、俺と悠介を月影力の影で繋げておいたのだ」
ベリー「へー……で?」
彰利 「悠介が復活するまで影から月癒力送り続ければ、
悠介の人の部分は死ななくて済みます!押忍!!」
ベリー「え……あぁっ!!その手があったか!!
泉に沈めようがなにしようが、
ようは人間の部分を強引にでも生かしておけばよかったのよ!!」
彰利 「フフフ……その通り!つーわけでワシもう幻海……じゃなくて限界……」
ベリー「早ッ!!もっとねばりなさいよ!!」
彰利 「ネバネバネバネバ……納豆戦法ですね〜〜!ウハァ〜〜、鬼ですね〜〜!!」
ベリー「訳解んないから喋るな!!」
彰利 「あらヒドイ!!でもさ!物凄い速さで死にまくってんのよこの人!!
言っとくけど月癒力(蘇生)の消費って激しいんだかんなー!?
つーかみさおさん攫ってきてください!!
あやつなら月操力無限チックだからなんとかなります!」
ベリー「みさお、を連れてくればいいのね!?解った!」
マジュンッ───ヤムヤム退場。
ふう、これで良しと。
彰利 「ふはははは!ばぁ〜〜かめぇっ!!
このブラックオーダー弦月彰利がこれしきで参るわけなかろうが〜〜〜!!
まだまだ5分は軽いぜ〜〜〜っ!!」
緑竜王『偉そうに言っておいて五分か……』
彰利 「や、やかましい!消費が激しいってのは本当なんだよ!
つーか……これって全回復までどれくらいかかります?」
緑竜王『一時間程度だ』
彰利 「……てめぇ俺を殺す気か!?」
緑竜王『やかましい、長続きするように集中していろ』
彰利 「グ、グウウウ……!!!」
これは困ったことになった……偉そうなこと言ってごめんなさい。
早く帰ってヤムヤム……。
───……。
……20分後。
彰利 「はひょー!はひょー!!い、いかーーーん!
さすがに目の前が歪んできたーーーっ!!」
いけません!お花畑が見えます!
あの上で眠ったら気持ちいいだろうね!
なんて考えてたらジリジリと体が前に進み───ドジュウウウウウウ!!!
彰利 「ミギャアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
足がほんのちょっと泉に触れただけで激痛に襲われ、すぐに目が覚めました。
───……。
……40分後。
彰利 「ハイハイハーーイ!一発物真似しまーす!
理解できた人ってナイスYO!つーわけでいきますー!
……“いい加減目覚めなさい!!”……なにに?」
訳が解らなかった。
とうとう俺もヤバイらしい。
───……。
……50分後。
彰利 「………」
ズギュゥーーーン!!ズギュゥーーーン!!
緑竜王『……?とうとう悲鳴も上げなくなったが……平気か?』
彰利 「…………」
ズギューーン!!ズギュズギューーーーーン!!!
緑竜王『む……ハッ!?き、貴様私の影に自分の影を繋げて何をしている!!』
彰利 「………」
血液をッ!!吸い取るッ!!
ズギューーーン!!ズギュ!ズギュウーーーーーン!!!!
いや、吸い取ってるのは血じゃなくて力だけどね?
立派な竜の力を影に食わせて、影に月操力を発生させるって寸法です。
緑竜王『なにをするか貴様ァアーーーーーーッ!!!』
ズパァアーーーーーン!!!
彰利 「ぶべぇええーーーーーーーーーーっ!!!!!」
容赦無く尾撃が振り落とされました……。
それでも健気に月癒力を流す俺って健気です。
───……。
……───もう時間なんて解りません……タスケテー!タスケテー!!
などと思ってた時でした。
キィイイ───ビジュンッ!!
転移独特の次元が歪む音とともにヤムヤムが降り立ちました。
彰利 「おぉうヤムヤーーームッ!!待っとったでーーっ!!」
ベリー「あー、ごめん。みさお見つからなかったわ」
彰利 「ゲゲェーーーーーーーッ!!!!」
ベリー「まぁだけど魔導薬作ってきたから心配しなさんな。
ツンツン頭、確かあなたの月影力ってモノの効果も送信出来るのよね?」
彰利 「……人のデータ、どれくらい知ってるのかね。確かに送信出来るけど」
なに考えとんのかね?───いや、べつにいいか。
それが悠介を救う手立てになるんなら。
彰利 「うっしゃあ!そんで俺は何をすればいいのかね!?」
ベリー「この薬飲んで悠介に効果を流して」
彰利 「む?お、おっとと」
薬……とやらが投げられました。
つーか……薬かこれ。どうやって飲むのかね?
ベリー「それそのまま飲んじゃっていいから。
胃液にサラッと溶けて、しかも吸収力は無類だから飲んだらすぐに送って」
彰利 「ぎょ、御意……つーかデカくないですかコレ!喉通るん!?」
ベリー「通れ!」
彰利 「命令系かよ!ああもう!どーんとやったるでぇい!!」
機械のような物体をゴキュリと飲み込む。
途中引っかかったが、闇を動かして無理矢理飲み込みました。
するとどうでしょう……俺の胃袋の中で何かの力が───
彰利 「はっ!い、いかーーーん!!月影力よ!この薬の効果を悠介に流したまへ〜!!」
ドッッギャァアアーーーーンッ!!!!
………………。
彰利 「……んで?送ったけどさ。あれってなんの薬だったん?」
ベリー「ん?んー……人間の魂を強化させる薬。飲めば人の魂を増強させるんだけど……」
彰利 「だけど?」
ベリー「ホムンクルスって知ってる?」
彰利 「んお?おお。あれだろ?人型の……よう解らん物体」
ベリー「まあ概ね合ってるわ。で、さっきの薬はホムンクルスを擬似的に魂に宿らせる薬。
言ってみればホムンクルスを閉じ込めた玉みたいなものね」
彰利 「へー……って───」
その時、僕の脳裏にいろいろな懐かしい思い出が駆け巡りました。
悠介と一緒に魔導学科で学んだことや、一緒に錬金術をやったこと。
そして───ホムンクルスのことで語り合ったこと。
懐かしいなぁ……確かあの時、材料のこととか話し合ったんだよね。
確か人の精液と馬糞と───……ば、ば……?
ば、ばばば……馬糞……!?
馬糞!馬糞!馬糞!馬糞!
彰利 「オォオゲギャアアアーーーーーッ!!!!」
ベリー「うひゃあっ!?な、なによいきなり!!」
彰利 「イ、イヤァアアアアーーーーーーッ!!!イヤァアアアアーーーーーッ!!!!
馬糞が!馬糞が喉を通過した!!つーか精液!?誰の!?
イヤァアアア!!何か存在として大切ななにかを失ったァーーーーッ!!!!」
ベリー「やだなぁ、それは材料であって、生成されたホムンクルスとは関係無いって。
別に馬糞や精液からモコモコ生まれてくるわけじゃないんだから」
彰利 「だとしても嫌じゃあああーーーーーっ!!!!うあああ今すぐ嗽してぇ!!
粘膜裂けて血が出るほど嗽してぇ!!タスケテーーーッ!!」
ゴッド……!!これも試練なのですか!?
男から漢に戻るための試練なのですか!?
つーかもう俺悲しくて立ってられないよ!
材料の中にハーブがあるのだけが救いですか!?救われねぇよそんなの!!
などと嘆いていた時でした。
泉の中からバシャリと上がってくる存在がおがったとしぇ。
彰利 「オ───ゆ、悠介!?あぁん聞いてくれYO悠介ーーっ!!
オイラ……オイラアァアーーッ!!汚れちまったYOーーーッ!!!……お?」
…………えーと。
彰利 「……タレ?」
出てきた人影は……いや、なんつーかおなごでした。
マジでタレ?
彰利 「あ……あぁのヤムヤムー……?」
ベリー「……えーと……」
ヤムヤムまでもが首を傾げた。
えーと……マジで『えーと』な状況だ。
ベリー「え……えぇえええ……と……も、もしかして……副作用?」
彰利 「副、作用……って───え、えぇええええーーーーーっ!!!?」
ベリー「あはっ……!あははははっ……!!
あ、ははは、あー……即興で作ってきたから……大目に見て?ね?」
おなご「……?」
僕らが驚愕に襲われる時、おなごが小さく首を傾げました。
ああもうなにがなんだか解んねぇや……。
なんつーかこう……ねぇ?
正義を振りかざす時、正義は正義でなくなるっつーか……。
───……。
ジャガジャンッ!!
彰利 「次回ッ……予告ゥウーーーーーッ!!!!!」
ベリー「混乱してるのは解るけど落ち着いて」
彰利 「グ、グウムッ……!」
いやでもねぇ……えーとどうしましょう。
おなご「………」
彰利 「………」
目が合った。
ヤムヤムが言うにはこのおなごは悠介らしいのだが……
どうやら不安定な人の魂から生まれた人格らしく、記憶が曖昧だそうなのだ。
彰利 「え、えっと……どうしよっか?」
ベリー「どうしようって……あ、そだ。曖昧な記憶を別の事柄で埋めちゃいましょ。
副作用にしたって意識調査すれば大体のことは解るから。
今のところは間に合わせってことで、ね?」
彰利 「グムムー……えっとさ、この悠介って間違い無くホンマモンのおなごなの?」
ベリー「……さっき確かめたから間違いないわよ……。
まったくどういうことよ……。真性な女のわたしよりスタイルがいいって……」
彰利 「……うむ!よし!!」
ズパァン!とおなごの肩に手を置いてまずは名前を決めることにしました!
つーてももちろんアレだけどね?
彰利 「よいかね!?キミの名は悠黄奈!昏黄悠黄奈です!!くらき、ゆきな!OK!?」
おなご「昏黄……悠黄奈……?それがわたしの名なのですか……?」
彰利 「イエスアイドゥ!!で!職業はもちろんんんんんーーーッ───!!
メ・イ・ド・さぁあああーーーーーん!!!!」
悠黄奈「メイド……」
彰利 「ノゥッ!メイド違う!メイドさん!さん!解るかね!?メイドさんだ!」
悠黄奈「メイドさん……はい、メイドさん、ですね」
彰利 「うっわ!やッべぇよヤムヤム!この娘ッ子ものめっさ素直!!!」
ベリー「そりゃそうよ……情報が無いんだから言われたことから吸収するしかないでしょ。
……あんまり変なこと教えないでよ?」
彰利 「オッケン!!つ、つーわけでまずはメイドさんたる者の基礎から全てを教えよう!
ハウトゥ!!大丈夫任せなさい!
こう見えても俺は純然たるメイドさんマスター!ドーンとやったるでぇい!!」
ベリー「い、言ったそばから変なことを!!」
彰利 「変とか言うなタコ!!───さぁまずはそげな濡れた服ではなく、
このエレガントなメイド服を着なさい」
悠黄奈「……服をくださるのですか?ありがとうございます」
彰利 「───!!」
はっ……はうあっ……!!
や、やべぇ……なにドキリとしてんの俺の鼓動!!
でもヤバイんです!めんこいんですこの人!!
サラッとした髪とスラリと伸びた角とか───角!?
あ、いや、それはいい。よくないがいい。
これはこれで似合ってるし……ね!?
彰利 「と、ともかく!まずは乾かしてあげますからそこに立って!」
悠黄奈「はい」
スックと立ち上がる悠黄奈さん。
しかし悠介とは違って、その背は俺の頭ひとつ分くらいは低い……うおうマジでおなごだ。
しかもめんこい……ってそりゃもういいんだって!
彰利 「では目を閉じておいてくだされ。絶対に目を開けてはなりませんよ?」
悠黄奈「はい」
……ウワー、全然怪しむそぶりもなく頷いたよ悠黄奈さんたら。
これはいけません……これからは俺が人の汚さを嫌ってほど教えてやらねば。
ともあれ、目を閉じてくれた悠黄奈さんを影、闇、黒で包むと、
余分な水分のみを飲み込んでスッキリ爽快状態に。
さらには黒たちに悠黄奈さんの着替えをさせ、ステキなメイドさんに仕立て上げた。
彰利 「う、うおう……これは───」
ウィル『美しい……』
彰利 「うおっ!?」
いきなりでした。
突如として悠黄奈さんの隣に現れたウィルオウィスプが、
モシャアと熱い溜め息を吐いたのです。
それを合図にするかのように、悠黄奈さんの指にある指輪から次々と精霊が───
彰利 「つーか精霊って悠黄奈さんでも召喚できるもんなの?魔力とかは?」
ベリー「諸力とか魔力なら悠介の体自体に馴染んでるんだから大丈夫よ。
現にほら。彼女、角生えてるでしょ?竜の力もしっかりあるってことよ」
彰利 「や、そりゃそうだけど……」
納得しろってのは案外難しいかも。
でもまあ───いっか!OKOK!!もうどうでもいいです!
彰利 「よいですか悠黄奈さん!我が名は弦月彰利!
ボクらは親友関係であり、もっとも親しい間柄なのです!」
悠黄奈「……そうなのですか?それは申し訳ありませんでした。
あの───そんなことも解らないなんて、わたしは記憶喪失なのでしょうか……」
彰利 「グムッ!?えーと……」
チラリとヤムヤムを見た。
したっけ……GOサイン。
それでいいとのことだ。
彰利 「うむす!あなたは記憶喪失なのです!OK!?」
悠黄奈「……そうですか」
ウィル『いやいやいやいやお気になさらないでくださいマスター!
以前のマスターには誇りをかけて忠誠を誓っていた私、ウィルオウィスプ!
今のマスターには親愛と忠誠と全てを掛けて尽くしましょう!!』
悠黄奈「忠誠……?マスター……?あの、あなたは……?」
ウィル『ハッ!私はあなたに仕える精霊、ウィルオ』
ドゲシッ!!
ウィル『ウォッ!?』
ディー『少しは落ち着きなさいウィルオウィスプ……』
ウィル『落ち着くだと……!?根源精霊ごときが私に指図を……!』
ベリー「……これ始まると埒があかないから離れましょ」
彰利 「そうね」
ほんとそう。
というわけで次から次へと現れた───ノート以外の精霊達が悠黄奈さんを囲む中、
俺とヤムヤムは顔を見合わせて溜め息を吐いた。
彰利 「……どう思う?ノートのこと」
ベリー「あー……やっぱり気になってた?」
そりゃ気になる。
ノートは自分の存在を次元に投じてまで融合を崩壊を食い止めた。
気にするなってのは無理ってもんだ。
彰利 「無事なんかな」
ベリー「無の精霊スピリットオブノートよ?
次元干渉程度で大事になるとは思えないけど。でも───」
彰利 「でも?」
ベリー「世界と世界を融合させるような巨大な力よ?
いくらノートでも力を使い果たして消滅したかもしれない」
彰利 「………」
想像がつかなかった。
けど───精霊が力の集合体だと考えれば、
使い果たしてしまえば消滅してしまうのは確かだ。
でもやっぱり、想像がつかない───あのノートが消滅するだなんて。
彰利 「……生きてると、いいな」
ベリー「───そうね」
願わずにはいられなかった。
あいつには感謝してもし足りないくらいに助けられた。
必ず会って、礼を言いたい。
彰利 「……なぁ。悠介、全部が回復したら元に戻ると思うか?」
ベリー「意識調査してみないとなんとも言えないわね。でも……ま、なるようになるわよ。
このまま王になりたいならならせてみてもいいし、
嫌だっていうなら地界に帰ってもいい」
彰利 「あ、でも……地界に帰るっつーたって、どっちの地界に降りることになるん?
未来のか、それとも現代のか」
ベリー「どっちともよ。不思議なものでね、融合が済んでから時間の経過が変なのよ」
彰利 「……変って?」
ベリー「えーっと……そうね。
つまりさ、現代と未来が融合したことで時間の流れが曲がったの。
だから、地界で過ぎる一時間が五分で過ぎる軌跡もあれば、
地界で過ぎる五分が一時間な時もある」
彰利 「うぇ……じゃ、じゃあたとえば一週間とかは……」
ベリー「……そこまでは計算してないから解らないけど。
地界での一週間が三日で過ぎる、とかはあるかも。あ、でも安心して。
さっきも言ったように、逆に五分が一時間で過ぎることもある。
一応時間の平均は保たれるわ」
……それって一年経過する中で、どれだけ時間が捻じれても一年は一年ってことかね。
時の流れが遅くなる時期があっても、早くなる時期もあるって……
彰利 「……よく出来てるもんですな」
まあそこはそれ、さすがはノートってところか。
……ほんと、無事だといいな。
彰利 「あ……なぁ。もしノートが無事でもさ、
力を使い果たした状態で別の世界とかに落ちたらどうなるんだ?」
ベリー「そんなの知らないわよ。それより、いい加減悠介……じゃなかった。
悠黄奈ちゃんが困ってるようだからなんとかしてあげましょ」
彰利 「おー、そうね」
背伸びをしながら振り向いた。
と───その場にいつの間にか竜王のみなさまがその場に集まっていた。
ええ、もちろん大変驚きました。
どうやら竜王のみなさまは悠介がミルハザードと戦っているのを見ていたようで、
完全に悠介……っつーか悠黄奈さんのことをこの世界の王として見ています。
……そういや緑のおっちゃんってば悠介のこと『王』って言ってたな。
おっちゃんも見てたってことか……?
黄竜王『創造者……いや、王よ。
出来ればいい加減、我が身に存在する呪いを解いてほしいのだが』
緑竜王『無理だな。今の王は竜人ではあるがただの女だ』
蒼竜王『呪いとは、創造者を殺せば解けると言っていたな』
黄竜王『冗談を言うな。既に我が手で王は殺せぬ』
彰利 「呪いくらいならオイラぶっ潰せるぜ?力をちと借りることになるけど」
黄竜王『本当か小僧!』
彰利 「小僧言うな!!」
なんかもう面倒だから勝手に三体の竜王に影を繋げ、純粋な力を吸収しました。
それらをデスティニーブレイカーに流し込み、全力開放。
彰利 「戒めの破壊開放!!デェエストロォオオオオオオオイッ!!!!」
鎌を閃かせた瞬間、シュバルドラインの体が輝く───が、すぐに輝きが消えた。
黄竜王『呪いが消えた───が、また戻ってきたぞ』
彰利 「存在感が強すぎんのよ。でも一瞬でも破壊出来たんだからOKよね?」
黄竜王『……………』
この後、ブチギレた黄竜王にボコボコにされました。
でも……そんなことにどうしてか笑みがこぼれた。
……勝てたんだよな、俺達。
こうやってまた、なんでもない日常に───戻ってこれたんだよな。
なぁ、悠介───
彰利 「……ノーちゃん、サンキュ……。無事でいられたら、また会おうなぁ〜……」
それだけ言うと、俺の意識はブッツリと途切れた。
……もちろん、シュバルドラインにボコられたが故ですが。
それでも笑顔のままで気絶しました。ミラクルアドベンチャーの如く。
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