───この場所から、もう一度……─── ───…… 凍弥 「……ああ、手伝ってくれ」 サクラ「………」 ……サクラは一瞬、すごく悲しそうな顔をした。 けど次の瞬間には笑ってみせて、俺の手を取った。 ……天界の法衣が揺れる。 そして……─── サクラ「……約束、してください。わたしはあなたを必ず幸せにしますから……」 凍弥 「………」 サクラ「だから……もう、突き放さないでください……」 …………サクラは涙していた。 それは過去の傷痕だった。 いつからかサクラとのわだかまりが消えてきた頃、俺とサクラはよく遊ぶようになって。 なにをするにも一緒になって、俺達は仲のいい兄妹のように笑い合った。 ……いや。 兄妹と思ってたのは俺だけだったんだ。 いつしかサクラは俺を『男』として見るようになって、兄妹では居られなくなった。 俺にはその感情が辛過ぎて、飛鳥に悪い気がして。 サクラの気持ちに気づいた時から、サクラに対する態度が急変した。 サクラを突き放すような態度と口調。 いつもにこにこと笑っていたけれど、 本当は心の弱いサクラは俺の急変に混乱しながら……いつしか怯えるようになっていた。 ───それでも、サクラは俺には笑顔を向けた。 いつだっただろう。 俺はそんなサクラの気持ちが本当に辛くなって、その笑顔を叩いてしまった。 その顔が『わからない、どうして、どうして』と言っていて、 俺は泣きたくなるくらいに後悔した。 それでも態度を改めるわけにはいかなかった。 ……本当は謝りたかった。 ごめんって言って、また笑い合いたかった。 でも謝ったとして、許されたとしても……もう兄妹に戻れないことを知っていたから。 俺は俺の行動を貫くしかなかった。 ……やがて、サクラは俺の目を見ることがなくなった。 凍弥 「………」 サクラ「お願いですから……」 凍弥 「……ああ。約束、するよ」 その目を見て、言った。 涙に濡れた目は弱々しく、 自分に好意をもってくれた女の子に対する俺の態度がどれだけひどいものかを理解した。 けど、俺も飛鳥を裏切るわけにはいかなかったから。 ───でも、もういいだろう……? 俺は生きる理由だった人に見捨てられて、なにが正しかったのかが解らない。 だから……もういいよな、飛鳥……。 凍弥 「……どうか、俺を幸せにしてくれ。怒りやすくて不器用な俺でよければ……」 サクラ「……はい」 目の前の少女が涙を拭って微笑む。 サクラ「でも、順序は守らせてくださいね」 凍弥 「うん?」 サクラ「わたし……サイファー=クレイ=ランティスは、 小さい頃から凍弥さんが好きでした。 そして、その気持ちは……今も変わってませんっ」 それは小さな告白だった。 そして、俺の返事も待たずに───自分の唇を俺の唇に押しつけた。 サクラ「……ただの慰めなんかじゃ……ないんですからね」 凍弥 「……当たり前だ。 お前が慰めなんかでキスするようなヤツだったら、俺は本気で怒ってる」 サクラ「でも、本当にいいんですか?朧月さんのこと……」 凍弥 「───……いいさ。お前こそいいのか?俺は近いうちに消えちまうんだぞ?」 サクラ「構いません。わたしは……馬鹿ですから。 一緒に居られる分だけ、一緒に居てくれたら、それで十分です」 凍弥 「……そっか」 ……どちらともなく、手を握った。 そして、ゆっくりと歩き出す。 あの日、ここで出会ったことから始まった俺とサクラとの時間。 それらを否定するわけじゃないけど…… これから歩む道はきっと、今俺が立っている歴史とは違う未来を築けるだろう。 たとえその先に消滅が待っていたとしても───それまでは、その未来を堪能しよう。 ───あの頃とは違う 今の俺達の未来を Menu back