───翼をもがれた自由な鳥───
───…………幸せは訪れると思ってた。
でも……彰利が目覚めることはなかった。
植物人間、とでも言うのだろうか。
厳密に言えば、目覚めてはいる。
けど……『彰利としての意識がない』。
それは抜け殻と一緒で……
夜華 「あ……悠介殿……」
悠介 「……よう」
車椅子を押す篠瀬に話し掛ける。
彰利がこんな状態になってから、彰利の身の回りの世話は篠瀬がやっている。
何も喋らず、なにもやらない彰利。
以前と比べて……あまりにも変わり果ててしまった彰利を。
夜華 「もう……一年になるのですね……」
悠介 「ああ……」
彰利が倒れてから一年。
ずっと見守ってきても、彰利はずっとこのままだった。
それでも……篠瀬はイヤな顔をせず、ずっと彰利の傍に居た。
悠介 「すまない、ずっと任せっきりで」
夜華 「構いません。わたしが……勝手にやっていることですから。
それに……わたしは、彰衛門の傍に居られれば……」
悠介 「……そっか」
篠瀬は、ひどくやさしい目で車椅子に座る彰利を見下ろした。
けど、その彰利の目に生気が宿ることはなく───
悠介 「……じゃあ、俺は用があるから」
夜華 「はい。またいつでも会いにきてやってください」
背中に篠瀬の声を聞きながら、その場をあとにした。
……ずっと気づいてた。
きっと。
それは篠瀬もだと思う。
あの彰利には、もう……誰も居ないんだ。
抜け殻……ただの入れ物でしかないんだ。
魂というカタチでしか残留してなくて……
『弦月彰利』という人格も、『レオ=フォルセティー』という人格もない。
抜け殻なんだ……。
悠介 「………」
それでも篠瀬は彰利を守ろうとするだろう。
解っていたってどうにもならないものだってあるんだ。
そして……あの時。
『過去に留まる』と言った彰利を引きとめることが出来なかった俺には、
篠瀬に言ってやれる言葉なんてあるわけもなかった……───
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