───ヘクター彰利───
コンコン。
朝の自室にノックの音が聞こえた。
フェイ「カムイン」
頼んでいたものが来たのだろう、私はその一言で招き入れた。
やがて開くドアからは使用人。
使用人「失礼します」
思った通り、使用人はコーヒーを持ってきてくれた。
いつもの景色だ。
心が落ち着く。
使用人「コーヒーを……………お持ちしました」
フェイ「すまない」
デスクに置かれたコーヒーを一口飲み、息を吐く。
フェイ「お……ブルーマウンテンか」
使用人「恐れ入ります」
私の言葉にペコリとお辞儀をし、一歩下がる使用人。
だが私が調べていた侵入者の写真を見ると、興味を引かれたように近づいてきた。
使用人「うわァ恐い顔……」
フェイ「恐い男さ……」
使用人「屋敷のどこかに隠れているのね」
フェイ「ああ……意外に近くかもしれん……」
使用人「真後ロニイタリシテ……」
フェイ「───!?」
突然変わった声質に驚き、すぐさまに振り向いた。
が。
使用人「アハハッ、そんなことあるわけないじゃないですか」
そこには、驚いた私を見る穏やかな使用人の顔があるだけだった。
フェイ「……おいおい、あまりからかわないでくれ……」
気が抜けた。
でも丁度いいリラックスにはなったか……
使用人「……トカユウノモ冗談ダッタリシテ……」
フェイ「もう騙されんぞ。いい加減に」
使用人「シャラッ!!」
ボゴシャアッ!!!
フェイ「ベップ!!」
───……どしゃっ。
彰利子「ミスターカフェインに質問──────」
どしゃっ。
倒れたカフェインとやらに言葉を放つ。
彰利子「弦月彰利は現在───この屋敷の中に居る───。
果たして、捕まっているのでしょうか、いないのでしょうか───」
……なんて、もう意識はございませんね。
彰利子「さーてと、それはともかくとして。
この旦那さまの端末なら屋敷の事柄がいろいろ見えるだろ。
まずは適当にいじって───おっしゃ!監視カメラチェ〜〜ック♪」
カメラってのは霊体を写すってゆうからな。
真里菜が見つかれば、大体どのへんによく出るかってのが解るだろ。
もともとそのためにコーヒー運ぶおなごに眠ってもらったんザマスから。
───と、おお?
彰利子「いきなり見つかりましたな……」
それはどれくらい前のやつなのかよく解らん。
だが、真里菜さんは大体、大広間に出現していた。
あそこになにかあるんかね……。
あ、どれ。
最近のデータでも───
彰利子「む、むむむ……流石にどれをどうやりゃいいか完全には解らんな。
この人が整頓好きで良かった。
暗号みたいな名前で保存されてたらどうにもならんかった」
えーと、今の日付に近いのは───オウ?
彰利子「なんだ、今の映像をダイレクトに見れるんじゃねぇの。どらどら?」
カタッ。
Enterキーを押すと、その画面が映し出された。
そこには───
彰利子「……あら、あの三人まだ転がってたんだ。
でもおなごの方は痺れは治ってるみたいじゃね」
よし、様子見に行ってみますか。
あそこに何かがあるんなら、さっさと離れさせた方がよかギン。
あ、プレイスジャ〜ンプ♪
キィン!
彰利子「アキ!トシ!」
シュゴォオオオ……ズシャッ!
彰利子「スーパーアキトシセカンド2ダッシュ!デュアルレベル99発進!!」
大広間の天井近くに転移したアタイは、浮遊しつつゆっくりと床に降り立った。
菜苗 「はぅ……?」
で、転がっている……確か『菜苗』とか呼ばれてたおなごを見下ろす。
菜苗 「あなたは〜……どなたでしょう〜」
彰利子「オウ?オ、オー……」
いかんな。
ここであっさりとアタイだとバラしたらつまらん。
って言ってもこのおなごはアタイがドラえもんだったことを知らんだろう。
別に本名を名乗ってもいいが……いやいや、人生とはからかったモン勝ち。
というわけで偽名だ!
彰利子「わたしは……えーと、あれです。弓叢亜季(というメイドです。
本日付でこの屋敷に配属されることになりました」
菜苗 「まあ〜、そうだったのですか〜。よろしくおねがいしますね〜」
亜季 「うわ……いきなり騙されてくれた」
どうやらデフォルトで頭の中が温泉たまご作製に適温なおなごらしい。
ようするに温かい。
これは貴重ですよ。
かなりの南アルプス『水』抜きおなごだ。
ようするに天然。
亜季 「して、キミの名は?」
菜苗 「はい〜、わたしは南城菜苗ともうします〜。
この屋敷にお邪魔させていただいております、親戚筋です〜」
亜季 「親戚……ふむ」
なら何故にメイド服を着ているのか……謎だ。
まああれじゃね?
仕事をしたかったとか。
亜季 「それで、菜苗さんは何故に寝転がっておるの?」
菜苗 「はい〜、それがですね〜、何故だかドラえもんさんに襲われまして〜」
亜季 「ほほう」
菜苗 「よく解らない光を当てられたと思いましたら〜、体が痺れていたのですよ〜」
亜季 「なんとまあ……」
うむ、どうにもどう対処したらいいか解らん。
『南アルプス−水=天然』さんを相手にしたことなんてないし。
『の』のことは気にするな。
方程式なんてそんなもんだきっと。
って落ち着け、なんの思考をしてるんだ俺は。
亜季 「まあそんなことよりも……
もう動けるでしょう、一刻も早くこの場を離れてつかぁさい」
菜苗 「はぅ……?どうしてでしょうか〜」
亜季 「ここには……おばけが居るのです!」
菜苗 「まあ〜、そうなんですか〜?それは是非見てみたいですね〜」
亜季 「いや、見たでしょ……しかもいきなり気絶してくれたし」
菜苗 「はぅ……?」
亜季 「ああいやいや、なんでもござーませんのよウォ〜ホホホホ」
あぶねぇ、アタイが鑼衛門だということがバレるところだった。
それだけはバレちゃならねぇ、からかい甲斐が減る。
亜季 「さあ、このふたりを運びましょう。
そうじゃないと乗り移られるかもしれないわ」
菜苗 「まあ〜、そうなのですか〜。わかりました〜」
何故かず〜っと寝転がってた菜苗さんはようやく起き上がり、
トテトテと片割れ1に歩み寄った。
そして後ろから抱くようにして運ぼうとする。
ああ、あれだ。
自動車学校とかで見る怪我人の運び方みたいなヤツだ。
腕を回して、片割れ1の腕を掴んでるし。
亜季 「ノゥッ!違いますよ菜苗さん!
淑女たる者、殿方をそのように運んではいけません!」
菜苗 「はぅ……?そうなんですか〜?」
亜季 「いかにも!よいですか菜苗さん!
淑女たる者、殿方を運ぶにはこうしなければなりません!
よく見ておいてください!見本を見せます故!」
菜苗 「はい〜、それではお願いしますね〜」
亜季 「御意」
菜苗 「……あの〜、なぜ『御意』だけ、そのように低く仰るのでしょうか〜……」
亜季 「その方が重みがあるからです!さあ見ていてくださいませ!」
アタイは小僧を仰向けにしてから足を引っ掴み、それを脇に担ぐように持つ。
亜季 「フゥウウウンリァアアォオッ!!!」
やがて遠心力をつけていき───ジャイアントスイング!!
菜苗 「あの〜、それがどういう役に立つのでしょうか〜」
亜季 「覚えておいてください菜苗さん!
物体というものはジャイアントスイングで重みが無くなるのです!」
菜苗 「まあ〜、そうなんですか〜?」
亜季 「いかにも!」
……回してる間だけですけど。
でも言うだけ無粋ですな。
亜季 「さあ菜苗さんも!」
菜苗 「はい〜、解りました〜」
がっし!
菜苗 「うう〜〜〜ん……!!」
ずっ、ずずず……!
菜苗 「はぅ……重いです〜……」
亜季 「ムウ!こりゃいかん!トタァーーッ!!」
ヴォッ!!
───ヒョオォオオオーーーー───どかぁああああああああん!!!!
凍弥 「ギムゥッ!?」
ジャイアントスイングで投げ飛ばした小僧が妙な声を上げたが無視。
アタイは菜苗さんに近寄って、手伝ってあげることにした。
亜季 「よいですか?まず足を抱えます」
菜苗 「はい〜」
亜季 「そして回す!」
菜苗 「はい〜」
菜苗さんが抱えている足の余りの部分を掴んで回してやる。
すると───
菜苗 「は、はぇぇええ〜〜〜……!?」
やがてぐるぐると回り出す片割れ1と菜苗さん。
アタイは回転が軌道にノッて来たところで退散しましたが。
菜苗 「は、はぅうう〜〜……!!回ります〜……!目が回ります〜……!」
ふたりは回る。
完全に勢いに流されるだけになった菜苗さんは、
助けを求めるように片割れ1の足を強く掴み、
だがそれが災いして離されることなくぐるぐる回る。
まるで終わることのないメリーゴーラウンドのようです。
オルセン万歳。
菜苗 「と……止めてください〜……止めてください〜……」
菜苗さんてバランス感覚いいんだな〜、あれだけ回ってまだ倒れないや。
浩介 「う、うう……!……う!?うおおおっ!?なんじゃあこりゃぁああああっ!!!」
おお、片割れ1が目覚めた!
浩介 「な、なにがどうなって……うわっ!?
菜苗さんっ!?ちょ……なにやってるんだ!離してくれ!」
菜苗 「いやです〜……いやです〜……!
わたしを見捨てて自分だけ助かる気なんですね〜……!?」
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる……!!
浩介 「そ、そんなこと言ってる場合か!う、お、おええ……!!目が回る……!」
菜苗 「止めてください〜……とめてください〜……」
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる……!!!!
浩介 「だ、だから……手を、離せって……」
菜苗 「いやです〜……そんなのいやです〜……わたしを見捨てないでください〜……」
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる……!!!!
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる……!!!
浩介 「手を……離せば……助かるんだって……!た、たのむから……!!」
菜苗 「は、はい〜……手を……離せば、いいんですね〜……?」
浩介 「そ、そう……手を……───!?あ、やめっ!待った!やっぱそれ無し!」
菜苗 「は〜な〜し〜ま〜す〜……!!」
ぐるぐるぐるぐる……ぱっ。
ドシュゥウウウウウウン!!!!
浩介 「キャーッ!?」
ドゴシャァアアアッ!!!!
浩介 「ヘブラァナァアアーーーーッ!!!」
素晴らしい回転から解き放たれた片割れ1は、見事に顔面で床を滑るハメになった。
アタイはそんな片割れ1よりも、
倒れそうになった菜苗さんを受け止め、寝かせてやった。
そこに月生力と月清力を流し込んでやる。
菜苗 「はぅ……?」
亜季 「よくやった菜苗さん。おかげでふたりとも大広間から出せたよ。
よいかね?これはあなたが居たからこそ出来たんだ!
あなたがふたりの命を救ったのです!」
菜苗 「そ、そうなのですか〜……?」
亜季 「いかにも!」
菜苗 「……〜っ……はぅ……はぅう……!
こ……こんなわたしでも……誰かのお役に立つことが出来たのですね〜……!」
亜季 「菜苗さんっ!」
菜苗 「亜季さん〜っ!」
がばしっ!
ふたりの小僧がピクピクと気絶する中、アタイと菜苗さんは抱き合うのであった。
ずきっ。
凍弥 「いてっ!いててて……!な、なんだぁ……?」
ふと、目が覚めた。
なにやらとてつもなく頭が痛いが、一体何が起きたのかは実に謎であったりする。
えーと、確か昨日はドラえもんと遭遇して……解らん。
凍弥 「あ、そうだ。浩介と菜苗さんは───」
女の子「ココニイマス」
凍弥 「うわっ!?」
背後から聞こえた声に振り向いた。
するとそこに居るのは───小柄な女の子だった。
菜苗 「おはようございます〜、凍弥ちゃん〜」
凍弥 「あ、ああ……おはよう……菜苗さん。……と?」
チラリと女の子を見る。
……誰?
使用人の服を着てるところからして、やっぱり使用人さんなんだろうけど。
菜苗 「こちらのかたは〜、このお屋敷のメイドさんで〜、弓叢亜季さんです〜」
凍弥 「ゆみむら……あき?」
なにやら苗字にも名前にも喩えようの無い何かを感じるんだが。
まあ……まさかな。
いくら彰衛門でも骨格や身長までは変えられないだろう。
亜季 「はんずめますて」
凍弥 「え?あ、こりゃどうも、はんずめまして……」
田舎訛りなんかな。
つい返してしまったが……
亜季 「わたし、本日付でこのお屋敷で働くことになりました、弓叢亜季です。
どうぞよろしくお願いいたします」
ペコリとお辞儀をする亜季さん。
それは……なんてゆうか、素人っぽいお辞儀ではなかった。
90度をキッチリ守った礼ってゆうのか、その道のプロっていえばいいのか……
そもそも田舎訛りはどうなった?
亜季 「わたしの顔に何か?」
凍弥 「いえ別に」
亜季 「惚れました?」
凍弥 「惚れるかっ!」
いきなり何を言い出すかと思えば……
亜季 「フッ……アタイのメイドに対する探求心と愛情と追求心があれば、
メイドとしての振るまい方の云々など……クォックォックォッ……!」
なにやらブツブツと言っている亜季さん。
かなり謎だが、厄介なタイプなのは間違いなさそうだ。
普通、正面きって『惚れました?』なんて訊いてこないだろ……。
亜季 「それよりもここから離れてください。この大広間は呪われているのです」
凍弥 「呪い……?なんでまた」
亜季 「どういうわけか、この大広間には霊の類が寄ってくるようでして……。
だからお願いです、早くここから離れてください」
浩介 「ふむ……ワケありというやつか」
凍弥 「起きたのか」
浩介 「つい今しがた、な。ところで同志、この屋敷が建つ前、ここには何があった?」
凍弥 「うん?んーーー……知らん」
浩介 「うむ、実は我もだ」
菜苗 「わたしも知りませんね〜」
亜季 「……カスが。それくらい覚えてろってんだ」
凍弥 「へ?なんか言った?」
亜季 「いえなにも」
なんかとてもヒドイことを言われたような気がしたんだが……気の所為だったか。
しかし、この広間に霊が……ねぇ。
凍弥 「んー……あ、ほんとだ。『霊の通り道』がある」
浩介 「なに?……ぐあ、マジだ」
見上げた天井には、一箇所だけ黒い染みのようなものが存在していた。
いわゆる『霊の通り道』。
あの下とかは霊が通るっていうな。
亜季 「実は、わたしがここに派遣されたのもその霊を祓うためなんです」
凍弥 「え?キミみたいな小さな子が……?」
亜季 「人を見た目で判断すんなボケ」
凍弥 「えぇっ!?い、今……なんて?」
亜季 「え?わたし別になにも言ってませんよ?」
凍弥 「……?聞き違いかな……」
亜季 「ええ、確かに体は小さいですが、わたし、こう見えても霊能力者なんです。
いえ……幽霊専門の『殺め方』です。つまり、殺すわけですが」
凍弥 「殺すって……もう死んでる存在をか?」
亜季 「はい。ですが今回の相手は少し困ったことがあるんです。実は……」
三人 「実は……?」
亜季 「その霊……わたしの妹なんです」
凍弥 「なっ……」
浩介 「なんと!」
菜苗 「それはよかったですね〜」
凍弥 「よくないっ!全然よくない!」
菜苗 「はぅ……?」
菜苗さんは見事に大ボケをかました。
平和な和み系お嬢さまだが、このボケ度はなんとかならないものか。
菜苗 「ですが〜、亡くなった妹さんに会えるのですから〜、
良いことなのではないのでしょうか〜」
凍弥 「む……」
それは確かに、一概に『良くない』と言い切れるものじゃない。
だがしかし、亜季さんは自分を『殺め方』と名乗った。
それはつまり───
亜季 「妹はわたしを殺そうとしていますから。だから、良いとは言えませんよ」
凍弥 「やっぱり……」
なんの害も無いなら、きっと美紀や浅美みたいに霊としてでも残しておきたい筈だ。
俺だったら絶対にそうする。
悪霊じゃない限り、そうやって救ってやりたいって考える筈だ。
亜季 「わたし、殿方だったら容赦なく屠れるのですが……おなごは屠れないんです」
浩介 「む……?何故だ」
亜季 「父親が、わたしの目の前で母を殺しまして。
そのためか、父親を嫌いになるのと同時に、
女性を傷つけることにも抵抗が出来てしまったのです」
凍弥 「それは……」
キツイことを聞いてしまった。
けど、亜季さんはわりと平気な顔でその事実を語り終えた。
亜季 「それでですね、モノは相談なのですが……
どなたかわたしの代わりに屠ってくださいませんか?」
浩介 「無理」
凍弥 「勘弁して」
菜苗 「できません〜」
亜季 「……だよなぁ」
亜季さんは、ひどく重苦しい溜め息を吐いて、なにかを呟いた。
亜季 「それでは、ここから離れるだけで結構ですので。それだけは守ってください。
もしここに近づいたら───容赦なく怒りますよ」
浩介 「いや、まあいいが……」
凍弥 「なにか手伝えることはないか?」
亜季 「ありません。いいですか?絶対にここに近づかないでください。
中途半端な気持ちでわたしを救おうなどと考える、
浅はかで下賎な輩など嫌いですから」
凍弥 「うお……」
涼しい顔でスゴイこと言う人だ。
なにか、あったんかな。
でも係わり合いを完全に拒否してる感じがするし……いやいやいや……
凍弥 「なにかあったのか?まるで人を嫌ってるみたいな言い方だけど」
亜季 「いえ別に。ただわたしの力になろうという人は、
それ相応の覚悟が必要だと言っているのです。
特に───体が弱ってるくせに、人の助けになろうなんて思っている人はね」
凍弥 「───!」
な、に……?
どうして俺の体のことを……───いや、偶然だ。
知ってる筈が無い。
亜季 「いいですか、これからこの大広間を封鎖します。
絶対に入り込まないでください。入り込んだら怒りますよ」
凍弥 「……あ、ああ……解った」
菜苗 「解りました〜」
浩介 「では我の部屋にでも行くか。あそこなら落ち着けるだろう」
凍弥 「いいのか?……お邪魔じゃないか?」
浩介 「ばっ……馬鹿者!!余計なことは心配するな!」
俺はクックッと笑いながら、顔を真っ赤にした浩介の背中を押す。
そこでふと思い出して───
凍弥 「なぁ浩介、お前の部屋でくつろぐより、浩之を探さないか?」
浩介 「うん?……おお、そういえばもともとそれが目的であったな」
凍弥 「俺もすっかり忘れてた。けど───ああ、やっぱりお前は自室に居てくれ。
浩之は俺が探しておく」
浩介 「何故に?我も探すぞ」
凍弥 「いやいやいや……俺はそこまで野暮じゃないぞ。存分に恋人とラヴってくれ」
浩介 「馬鹿!違うと言っとろうが!!」
凍弥 「ぶふっ……!くはははははは!顔真っ赤だぞ浩介!」
浩介 「う、うるさい!」
いやいや、知り合いの成功(?)ってのは嬉しいものだ。
こうも冷やかしが面白いものだとは……
亜季 「さっさと出ていきなさい!!」
凍弥&浩介『うおっ!?』
突然の亜季さんの怒号。
相当怒っておいでのようで、後ろから俺達の背中を押してくる。
俺と浩介と菜苗さんはその調子で追い出され、大広間のドデカイ扉は閉ざされた。
凍弥 「……なんなんだ?」
浩介 「我が知るか」
菜苗 「焦っておいででしたね〜、なにかあったのでしょうか〜」
浩介 「まあどちらにしろ邪魔するなと釘を刺されたようなものだ。
我らも戻るとしよう」
凍弥 「だな」
菜苗 「はい〜」
こうして、大広間に亜季さんを残したまま、俺達は自分の目的に戻ることにした。
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