ふと、その景色が目に入った。
気づけば自分はソコに居て、───いや。
ソノ景色を見ているだけの傍観者として、そこに存在していた。
つまり自分は誰にも見えず、自分はソノ全てを傍観できた。
声 「〜、……、……」
聞こえるのは小さな声。
いや、自分がソノ声に馴れていないだけなのか。
とにかく自分はその声を聞こうと、耳を傾けた。
男性 「そうか……そうかっ!でかした───!!」
男性が喜んでいた。
その顔が印象的で、とても喜んでいたのが解った。
でも自分には理解出来ない。
一体、なにがそんなに嬉しいのか。
男性に抱き締められた女性も、とても嬉しそうに微笑んでいた。
ナンダロウ、ナンダロウ……
景色が変わると、見えていた男性と女性も変わっていった。
特に女性。
お腹が膨らんできてて、男性がなにか、そのお腹を見る度に頬を緩ませていた。
よく解らない。
男性がお腹に耳をつけてみると、やっぱり微笑む。
女性はそんな男性の行動が面白いのか、クスクスと笑っていた。
コレハ、ナンダロウ───
男性は仕事に出かけた。
帰ってくるのは遅くなる、そう言って。
女性はそんな男性を元気よく送り出して、とたとたと家に戻った。
掃除をするつもりらしい。
女性の意識が流れてきて、それを教えた。
子供が生まれてきて、汚い部屋だったら嫌だから、と。
ワケガワカラナイ、ナンダロウ───
その世界は幸せに違いなかった。
ふたりはいつでも微笑んでいて、
帰ってきた男性は真っ先に女性の傍に行って『大丈夫か』と言っていた。
女性もくすぐったそうに笑って、それに頷いていた。
間違いなく、ふたりは幸せだった。
その幸せの意味が、よくワカラナイ。
ある時のこと。
無理するなと釘付けされたにも関わらず、女性は掃除や洗濯などをした。
傍観しているだけでもわかるほど、
大きくなったお腹が行動の邪魔をしているにもかかわらず。
それでも女性はそれを邪魔とは思わず、笑顔で掃除や洗濯をこなしていた。
けど。
ふとした瞬間、眩暈に襲われた女性は体を傾け、階段から落ちた。
彼女は体を少し打った程度で済んだが、お腹の方はそうはいかなかった。
倒れた女性から、タダ、真ッ赤ナモノが流レテタ。
イシャ、と呼ばれる人が言った言葉は、『子供ハ助カラナカッタ』という言葉だった。
女性は絶望に頭を抱え、取り乱して泣いてしまった。
男性は女性を、辛そうな顔で抱き締める。
まだお腹の中に存在するらしいソレは、既に肉の塊にすぎないのだ。
ワカラナイ、ワカラナイ。
『流産』。
イシャが言った言葉は、ふたりにとってとても絶望的なものだったらしい。
その肉塊を摘出しようと言われると、ふたりはやはり泣いた。
ダガ───
イシャはただ驚くだけだった。
取り上げられた、肉塊だった筈のソレは産声をあげたのだ。
イシャが驚くのは当然。
女性も驚いていた。
そして、絶望を胸に抱えながら廊下で待っていた男性も、その産声に耳を疑った。
ワカラナイ、イシャはそう言った。
死んだ筈の赤子が、ドウシテ、と。
ワカラナイ。
産まれた子はオトコノコだった。
確かな産声をあげ、女性に涙を流されながら抱かれていた。
イシャからそのことを知らされた男性は、それはもう喜んだ。
そんな喜びから『その子が死んだ』という事実はいつの間にか忘れ去られていった。
それが、とても残酷なこととも知らずに。
オトコノコは成長していった。
気が弱く、どこかおどおどした風だけど、確かに生きていた。
どこにも異常はなく、その子を見た全員が全員、安心したものだ。
……ただひとりを除いて。
ソイツの異常に気づいたのはひとりの少女だった。
やさしい微笑みをする、とてもかわいい少女。
オトコノコはその子を好きになり、ずっと一緒に居たいと願った。
───だが、それは叶わなかった。
ドウシテ?ドウシテダッタダロウ……
───ちょっと時間は遡り……───
悠介 「ん、んー……」
ふと、目が覚めた。
目を開けてみると、見慣れない場所。
しばらくしてからそこがリヴァイアの工房だったことを思い出す。
悠介 「………」
リヴァ「………」
リヴァイアはなにやら大きな画面を見たままで、俺が起きたことにも気づかなかった。
見ているものはなにか、と覗いてみれば……
悠介 「……ドラえもん?」
モニターに映っているのはドラえもんだった。
しかもどこか歪なドラえもん。
悠介 「……なぁリヴァイア?これ……なに?」
大方の予想はついていたが、敢えて訊いてみる。
そして返ってきた言葉はとても予想通りだった。
悠介 「あの馬鹿……」
なんだって精神世界から救ってやった次の場面でドラえもんになってんだあいつは……。
しかも『ドラえもんです!』って名乗った途端に逃げられてるし。
リヴァ「……なぁ、検察官は何をしたいんだ?」
悠介 「検察官?……ああ、彰利のことだよな?
あいつが何をしたいかなんて、考えるだけ無駄だぞ」
リヴァ「ふむ……」
リヴァイアは複雑そうな顔で画面に視線を戻した。
その瞬間、ドラえもんがサミングと称して顔面振り抜きストレートを女にキメていた。
ごしゃー、と吹き飛ぶ女を見てかなり戸惑うドラえもんだったが、さっさと逃げた。
……相変わらずの逃げ足の速さであった。
椛 「ん……?ん〜……っ」
悠介 「んお?おお椛か。そういやお前と篠瀬とで来たんだったな」
夜華 「う……なにか頭がぼ〜っとする……」
ドンッ!
声 『ひゃうっ!』
……どさっ。
奇妙な声に反応してモニターを見てみると、
ドラえもんが女に刀背打ちをしているところだった。
……彰利が持ってた刀、だな。
もはや疑いようが無い。
あれの中身は彰利だ。
なんだってあんなものを着ているのかは謎だが───
彰利 『とんずらぁーーーっ!!!!!』
何があったのかは知らんが、
ドラえもんな彰利はメイドさんを信じられなくなっていたらしい。
涙を散らしつつ逃げ出すその姿は、とてもメイド好きな彰利の言葉とは思えなかった。
声 『誰だ』
彰利 『ぼくドラえもんです!』
声 『うそつけ!』
……前言撤回。
あいつは彰利だ。
落ち込んでたと思ったらいきなり純粋に人をからかえるヤツなんて、あいつくらいだ。
彰利 『うっ……うっうっ……』
で、現在モニターでは着ぐるみを脱げなくてないているドラえもん。
椛 「……誰ですか?この人」
悠介 「知らない方がいいことってあると思うんだ、俺は」
夜華 「どちらにせよ馬鹿だな」
その意見は大いに賛同。
彰利 『あたぁっ!』
コキンッ!
女 『きゅっ!?』
ドラえもん、女をチョークスリーパーで堕とす。
嫌な絵だ。
子供の夢をブチ壊す光景だなこりゃあ。
夜華 「なっ……なんと見下げたヤツだ!女性に手を上げるとは!」
悠介 「……普通に対立するよりよっぽど安全だけどな。
変態モードじゃなくてよかったよ」
椛 「ひどい人……きっと心も醜いのでしょうね……」
……何も知らないって幸せだね。
てゆうか、言われてんぞ彰利。
彰利 『ィヤッハッハッハァッ!荒れ狂え月鳴力!“神の裁き”!!』
椛 「えぇっ!?」
月鳴力。
そう聞いた途端、椛の表情が変わった。
……ああ、なんとも居心地悪そうな顔だ。
椛 「……あの、おじいさま……?もしかして、あの着ぐるみの中身は……」
悠介 「……そういうこと。彰利だ」
椛 「あうっ!」
夜華 「あ、彰衛門だと!?馬鹿な!彰衛門は腐っても女性に手を上げる者では!」
悠介 「それは違うぞ篠瀬。さっき気絶させられた女は彰利を止めようと必死だった。
普通に立ち会えばもしもってことがある。
だから、転移してから気絶させたんだ」
夜華 「なっ……解るのですか?」
悠介 「伊達や酔狂であいつの唯一無二の友達やってたわけじゃない」
夜華 「………」
椛 「そうだったんですか……。そうとは知らずに、『醜い』なんて……」
悠介 「いや、気を落とすな椛。心が醜いのは確かだろ」
椛 「そ、そんなことありません!」
悠介 「そうか?ほら」
俺は顎でモニターを促した。
その映像の中では
彰利 『ィヤッハ……訊くだけ無粋よ。覗き見する』
彰利がそんなことを口走っていた。
椛 「………」
悠介 「な?」
椛 「な、なにかの間違いです!そうに決まってます!」
悠介 「……いや、多分10分もしないうちに後悔するぞ、その言葉」
椛 「そんなことありません!」
ガチャア。
女 『え?』
彰利 『ややっ!?』
女 『きゃぁあーーーっ!!!』
彰利 『ゲェエーーーッ!!?』
で、あっさりと後悔した椛。
モニタには、女性の部屋にノックもしないで入る彰利。
椛 「おとうさんのばかぁ……」
椛は大層呆れてる。
そうこうしてる間に彰利は『エロドラ』のレッテルを張られ、とても落ち込んでいた。
さすがに同情するぞ彰利。
で、何故こんなよく解らん屋敷に彰利が居るのかが解った。
というのも、リヴァイアがその状況をモニターで再現してくれた。
───ガカァッ!!どがしゃああああああん!!!!
彰利 『ギャアアアアアーーーーーッ!!!!!』
それだけで十分だった。
ようするに住処を雷によって追われたのだ。
屋敷には金目のものを探すために乗り込んだってわけだな。
つくづく堕ちてゆくヤツだが、こいつのこういう根性はスゴイと思う。
椛 「………」
まあその、自分に送られている信頼をかなぐり捨ててまですることかどうかは別だが。
しかも彰利本人は『酢だこさん太郎』を買い占めるために盗みを働くつもりらしい。
それにより、椛の呆れゲージはMAXに達したようだ。
彰利 『むむっ!?大変よゴメス!魔物の咆哮が聞こえたわ!』
モニターの中の彰利が何か言った。
そして振り向いた先には───女の子。
それが『人間』ではないことはなんとなく解った。
椛 「───!おじいさま、この子……!」
悠介 「ああ、人間じゃない……!」
椛も瞬間的に感じたらしい。
モニター越しにでも感じ取れる、その禍々しい気配を。
椛 「おとうさん……大丈夫ですよね?」
悠介 「あいつが誰かに負けるなんて想像出来ないって。大丈夫だろ」
……いや。
本当はそうは思っていない。
相手が『女の子』というのが一番危険だ。
あいつは……女に対して、せいぜい自分の命を守る程度の抵抗しか出来ない。
相手が子供なら尚更だ。
だってのに……
彰利 『ワーオ!素晴らしいです遊戯(ボーイ!ワタシ驚いたデース!』
あいつは首を絞められながら、相手をからかいまくっていた。
しかも少女が霊だということにすら気づいてない。
夜華 「……何度も訊くようですが……彰衛門は馬鹿なのですか?」
悠介 「何度でも言ってやる。馬鹿だ」
椛 「お、おとうさんの悪口は言わないでください!」
悠介 「……椛」
ポム。
俺は椛の両肩に手をやさしく置いて、微笑んだ。
悠介 「理解するんだ椛……あいつは並大抵の馬鹿じゃないんだぞ……?」
椛 「そんなことありません!おとうさんは何か考えがあって行動してるんです!」
悠介 「……あれでもか?」
椛 「え?」
モニターに視線を促す。
そのモニターでは───
彰利 『離せっつーのデース!!遊戯(ボーイ!
そのへんにしとかんとワタシ怒るぞこの野郎デース!!
離せデース小娘!離さないとヒドイデース!ワーオ!!
離せってのが聞こえねぇのかこの野郎デース遊戯ボーイ!!
離すデース偽ニンテンドウ!!ワーオデース!!WOW!!』
幽霊 『くるしい……!うぅうう……!!』
彰利 『苦しいって……便所我慢してるんなら行ってきたらどうかね?』
幽霊 『うあぁああああああ!!!!』
彰利 『ややっ!?これ真里菜さん!頚動脈はマズイよ!
便所行きてぇなら、ぼく鑼衛門に構ってる場合じゃなかろうがオォ!?』
幽霊 『くるしい……!痛い……!わたしは静かに眠りたかっただけなのに……!』
彰利 『痛いとな!?最大級MAX便秘ですか!?
いかんぞ真里菜さん!便秘はおなごの天敵ですよ!』
幽霊 『うあぁああああーーーっ!!!』
彰利 『ゴゲゲェエーーーーッ!!!!』
散々に幽霊をからかい、思いっきり首を絞められている彰利が。
椛 「あ、あぅ……」
悠介 「認めるんだ椛……それはべつに悪いことじゃない。
むしろあいつの馬鹿さ加減を知らなかった椛が珍しかっただけだ」
椛 「そ、そんなことは……!」
ない、と言おうとしたのだろうか。
だが、その言葉はモニターの映像によって途切れることになった。
彰利 『うおぉーーーっ!!ラブリィーーーーッ!!!』
幽霊 『うあっ……あわっ……』
彰利 『ラ、ラ……ラブリィッ……!!』
幽霊 『あわっ……わ……』
彰利 『うおーーっ!!ラブリィーーッ!!ちゅうーーーっ!!!』
幽霊 『ッ!!うわぁああああああん!!!』
彰利が幽霊を抱き締め、さらにキスをしようとムニューリと唇を伸ばしていたのだ。
椛 「───っ!!お、おとうさんっ!?」
夜華 「彰衛門貴様っ!!子供に手を出すとは!!」
椛 「わたしにだって『らぶりー』とか言って抱き締めてくれたことなかったのに!」
夜華 「おのれ痴れ者が!!貴様にそのような嗜好があったとは!!見損なったぞ!」
椛 「おとうさんのばかーっ!!」
夜華 「いつもいつも人のことをカスだのと言って!貴様こそ真のカスだ!!」
……言われてんぞ彰利……。
だがそんな言葉もその後の言葉に掻き消される。
彰利 『───ぎゃあああああああ!!!!おばけぇぇええええっ!!!!』
……消えた幽霊に驚いての一言。
なんとも情けない声だったが……
悠介&夜華『今更気づいたのか馬鹿がっ!!』
やはり彰利は彰利だ。
あいつの馬鹿は何度死んでも治らん。
───やがて、『おばけ……出たー……』とか言った途端に投げられた様々なブツが、
彼の黄金にメガヒットした刹那。
彼の意識は途切れた。
……もちろん、この場に居る誰もが呆れ果てたのは言うまでもない───
───……。
彰利 『う、むむ……む、むおお……』
モニターがもう一度景色を映した時、彰利が目覚めた。
悠介 「始まったぞー」
俺は眠っていた椛と篠瀬に声をかける。
すると、弾かれたように起きあがるふたり。
なんだかんだ言うわりに気になるらしい。
彰利 『む……ここは何処ぞ?……って、そうでござった。
確か俺はこの屋敷に金品強奪しにきて、
メイさんに会ってマルボロ魔人に会って死にかけてドラえもんになって……
そう!そんでおばけに会ったんだ!
そんでもっておなご達がアタイの黄金に熊の置物を投擲して……うう……』
よく解らんが泣いてるな。
女に邪険にされたのがショックだったのか?
彰利 『……いやいや、泣いてる場合じゃねィェ〜。金品強奪をせねば。
目的を忘れちゃいかんよね。ということでうろついてみますかぁ』
がちゃっ!ボイーーーン!!!
彰利 『おわっ!?』
女 『きゃあっ!!』
男 『うおっ!?』
歩き出した途端、ひとつの部屋のドアが開け放たれ、
そこから出てきた女が彰利にぶつかって倒れた。
椛 「……あれ?この人……確か凍弥先輩の友達の……」
悠介 「?」
椛が小声で何か言ったが、聞き取れなかった。
しかし……ビッグバン・クラッシュとは懐かしい名前を……。
しかも無意味に『ゴワスゴワス』言ってるし。
夜華 「……悠介殿?何故彰衛門は語尾に『ゴワス』をつけているのですか?」
悠介 「意味は無いんだと思う」
彰利の口調に疑問を持った篠瀬にそう言うと、俺は溜め息を吐いた。
───さて。
男が彰利のDSC彰利エディションをくらってぐったりしている中、
俺と篠瀬はやっぱり溜め息を吐いた。
悠介 「なにをしたいんだあいつは……」
彰利は男と女を同じベッドに寝かせ、さっさと逃走してしまった。
椛 「おとうさんのばか……。
わたしには『美麗でステキ』だなんて言ってくれたことないのに……」
椛は椛で妙なところで拗ねてるし。
彰利の言う『記憶』ってやつが戻ってからというもの、椛は変わりすぎたと思う。
とにかく彰利にべったりだ。
なんで『おとうさん』なんだかもまるで謎だったし。
彰利 『キャアーーーッ!!』
で、部屋を出た途端に使用人に見つかり、彰利は一目散にとんずらした。
忙しいヤツだ。
やがて、どこか広い場所に辿り着いた彰利は息を吐いた。
彰利 『FUUUM……何故この偽神であるアタイが逃げねば……』
そりゃお前が覗きとかするからだろうが。
夜華 「しかし……安心しました。いつもの彰衛門ですね」
悠介 「あいつの精神の中のことは気にしないほうがいいぞ。
あの世界は彰利の中であって彰利の中じゃあなかった」
椛 「どちらかというと死神寄りの世界でしたね。もう二度と行きたくないです」
悠介 「……そうだな。あいつが深い傷を受けないことを祈るよ」
……そもそもあいつが人をからかいすぎなけりゃ余計な血を流すこともないんだが。
彰利 『───キャア!ここならアタイのロンリーライヴが可能!?
ならいろいろ用意しなきゃ!
えーと太鼓と太鼓と太鼓……太鼓しかねぇんかい!』
大広間には太鼓しかなかったようだ。
だが何かを閃いたのか、彰利はニヤリと笑った。
彰利 『えーと……』
ドンドコドンドコ、ズンバコズンドコ、ドンドンドンドンドン!!
彰利 『アイヤーーーッ!!!』
うわ……懐かしいことやってるなぁ……。
サクラテツ(対話偏)だったっけ?
椛 「………」
夜華 「………」
篠瀬と椛はそれはもうポカンとしていた。
気持ちは解る。
あいつの行動はいつだって不可思議だ。
椛 「……たのしそう」
ドシャアッ!!
夜華 「うわっ!?ど、どうなされたのです悠介殿!」
いや……なにが解らないって……。
椛の感性がまるっきり解らんよ俺……。
悠介 「ズッコケてる状況じゃないな……。
椛、アレのどこをどう見れば楽しそうに見えるんだ」
椛 「え?楽しそうじゃないですか、自分の好きなことを目一杯できるだなんて」
悠介 「……太鼓叩いて叫んでるだけだが?」
椛 「立場などを捨てて叫べば、きっと楽しいと思いますよ?
だって……みんなで騒ぐのは楽しいのですから」
悠介 「………そうか?」
彰利に関しては……まあ退屈はしないだろうが。
みんなで騒ぐって部分も納得も出来るが……
太鼓叩いて『アイヤー』って叫ぶのは果たして……?
夜華 「悠介殿。楓さまは過去、
立場に囚われて『遊ぶ』などといったことは出来なかったのです。
それを解放したのが彰衛門です。やりかたには……不満はありましたが」
『わたしも彰衛門が現れてからは随分と久しく騒ぎました』と続ける篠瀬。
それは頷ける。
あいつと一緒に居て騒げない筈が無い。
……怒るってことも含めて。(というか大半)
彰利 『ィヤァーーーッハッハッハッハッハァーーーッ!!!!ハッ!!』
ドンドコドンドコズンバコズンドコドンドンドンドンドン!!
彰利 『アイヤーーーッ!!!』
…………一気にその場が静まった。
モニターを見やれば、大広間の高い場所に座っている彰利。
その視線の先には───
椛 「───凍弥先輩っ!?どうして───」
凍弥とさっきの男とひとりの女が居た。
しかも例の如く訳の解らん言葉で相手を翻弄し、戦うことが決定した途端に
彰利 『“神の裁き”(!!』
ゴガァッ!ドシュゥーーーンッ!!
彰利が構えた刀から、巨大な雷の波動が勢いよく放たれた。
まるでゲームにあるみたいな波動砲だ。
その光に飲み込まれた男と女は、その場に倒れた。
夜華 「なっ!ば、馬鹿者め!そんな攻撃をしたら相手がただでは済まぬぞ!!」
悠介 「───いや、あいつが人を傷つけるってことはまずしない。
あいつは精神世界に居たあいつとは違うさ。現に───」
凍弥がふたりを介抱しようとしたところ、
ふたりは痺れているだけだということが解った。
足痺れた時って大変だよなー、うん。
夜華 「……信頼、しているのですね」
悠介 「───友達だからな」
夜華 「………」
断言する俺を、篠瀬はどこか羨ましそうな顔で見てきた。
だが俺はモニターに釘付けである。
何故って、これから彰利がどう出るかが気になるのだ。
彰利 『“神の裁き”(!!』
凍弥 『バーリヤ!!』
男 『おお!ってギャーッ!!』
バッシャアアアアアアアン!!!!
男 『ホゴゲェーーーッ!!!』
彰利の行動は単純だった。
だがそれに対し、凍弥が取った行動は……なんというか、ハイ。
悠介 「……お前の婿さん、俺とは気が合いそうだ」
椛 「凍弥先輩のばかぁ……」
俺も傍に転がってたヤツが彰利だったら絶対にああしていた。
彰利 『“神の裁き”(!!』
さて、彰利の次弾。
それをどう避けるか凍弥───って、あ───
男 『へ───?キャッ……キャーーッ!!!』
バッシャァアアアアアン!!!!
男 『アガゴギャアアアアアアア!!!!』
凍弥 『ああっ!浩介!』
すげぇ、また盾にした。
凍弥 『浩介……身を呈して俺を守ってくれるなんて……』
男 『お、のれ……同志……』
がくっ。
凍弥 『だ、だめだ浩介!寝るな!寝ちゃだめだ!
お前が気絶したら俺は誰を盾にしたらいいんだ!!』
……うおう。
悠介 「お前の婿さん、スゴイ無茶なこと言ってるぞ」
椛 「はうっ……」
なーるほど、こりゃ凄まじい婿殿だ。
夜華 「なにやら彰衛門のようなことを言っていますね……」
悠介 「だな。あいつなら言いそうだ」
夜華 「いえ、真実言われました。過去のことですが、
『身を呈して俺を守ってくれるなんて』ということを言われました」
悠介 「………」
なんだかなぁ。
さすがに彰利みたいな婿はどうかと思うが。
……んー、いや、『彰利みたいな』じゃないな。
なにかが違う。
確かにふざけた時に感じるその雰囲気は似てそうな感じはあるが───
どこだったか、いつだったか……
今の『ふざけた調子』の凍弥には会ったことがある気がする。
リヴァ「……おい、お前」
悠介 「リヴァイア?今までどこに───」
リヴァ「凍弥のことで話しておきたいことがある。来い」
悠介 「話したいこと……?」
椛 「おじいさま?」
悠介 「あ、いや、なんでもない。ゆっくり見ててくれ」
椛 「?はあ……」
───……。
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