───兇國日輪守───
彰衛門「………」
祈りを終えた俺は、ゆっくりと立ち上がった。
そして嗄葉に向き直───あれ?
彰衛門「なんと!?嗄葉がおらん!」
見渡してみるが、部屋の中に嗄葉の姿が見つからんっちゃあ!!
どげんなっちょっとよ!?
彰衛門「───ハッ!ははぁ〜〜ん、読めたぞ愛いヤツめぇ〜〜〜っ」
これはアレじゃな?
かくれんぼとかゆうヤツじゃな?
彰衛門「仕方ないのう、お子様なんだかるぁ〜ん♪」
アタイは立ち上がり、きょろきょろと辺りを見渡した。
彰衛門「───聞こえる!闇の中に蠢く、何者かの気配が!
身を潜め、息を殺して!ヤツらアタイの命を狙っている!!」
………………。
彰衛門「返事が無い、ただの屍のようだ……」
この部屋には居ないようだ。
しゃあない、隣の部屋へ行こうか?
───……
彰衛門「でっでげで〜で〜で〜で〜んで・でっでげでげでげでげで〜ん♪」
アタイは忍び足を駆使しながらヒタヒタと歩いた。
彰衛門「ムウ!しまったわゴメス!
忍び足を使ってても音楽なんぞを口ずさんでたら意味がないわ!!」
これは盲点ナリ!ということで静かにしましょう!
彰衛門「………」
いや、ただこうして歩くだけってのもつまらん。
ここはひとつ───
彰衛門「───フンッ!!」
バッ───ガッシィッ!!
アタイはその場で跳躍し、天井に張り付いたッ!!
彰衛門「これぞ秘技、ゲンバリングボイ……!」
またの名をフルフル。
シコルスキーに勝るとも劣らぬ指力が成功を可能とさせる技よ〜〜〜っ!!
さて、これで嗄葉さんには悟られずに動くことが出来ようぞ!
彰衛門「………」
のたのたのたのたのた……
彰衛門「………」
のたのたのたのたのた……
彰衛門「いや……こりゃまたなんとも……」
意外に疲れる。
てゆうか当然というべきか。
でも面白いから続けます。
限界が来たら落ちましょう、潔く。
彰衛門「しかしこうへばり付いてると、ぶら下がって胃液を落としたくなりますな」
それぞまさしくフルフルですが。
詳しくはモンスターハンターをどうぞ。
彰衛門「───ム!感じるわ!幼子の気配!」
……そんなもんを感じられるアタイも相当ヤバイんですがね。
何気にちょっとショックだった。
けどな?そげんこつば気にさすてたらぁ、どうにもなんでねが?
んだども、オラさ行動はきっと明日さ繋がるだよ。
彰衛門「……訳が解らん」
自分で言っておいて謎だった。
彰衛門「さて……この部屋からだな」
アタイは天井から側面の壁に張り付き、ゆっくりと障子を開けてゆく。
するとそこには───
彰衛門「…………?」
巻物やらその他いろいろな書物を読み漁る嗄葉が……おがったとしぇ。
読書の秋ですか?
彰衛門「………」
アタイはゲンバリングボイを駆使しながら、その姿を見守り続けた。
彰衛門「安心せい……じいやは四六時中、いつでも貴様を見守っておるよ……」
……変態ですな、それは。
気をつけよう。
嗄葉 「…………!!」
彰衛門「む?」
嗄葉は何かに驚いたように、体をビクンと撥ねさせた。
アタイはのたのたと嗄葉の真上までゲンバリングし、その書物を見ようと試みる。
が、遠くて見えん。
彰衛門「フッ……仕方あるまい。ここで再びこの技を使うことになろうとは……」
お覚悟、よろしいな?
彰衛門(ピエロアイ〜〜〜ン!!!)
グミミミミ……!!
眼球を伸ばし、その先の書物を見る!
おっほっほ、よぉおおお〜〜〜く見えるぜぇええ〜〜っ!!
───『彰衛門はやさしい。彰衛門が居ると、心がとても暖かくなる。
それは鮠鷹さまと一緒に居る時とは別の心地良さがある。
暖かくて、心地良くて、一緒に居ると顔が緩んでしまう。
わたしはきっと、鮠鷹さまが好きなのと同じくらいに彰衛門が好きなんだと』
彰衛門(ギャア!?)
こ、これってば……楓の書いたもの!?
なんてもんば見とるったい!!
しまったのう……記憶は消えても、記録は残るもんなぁ……。
気が向いたら消しておきますか?
……悠介に、消したい文字だけ消せる筆とか創造してもらって。
嗄葉 「…………!」
とか思ってたら、嗄葉がぱたぱたと書物などを片付け、部屋から出ていってしまった。
彰衛門「………いや、まいったねどうも……」
おそらくあれだ。
アタイが本当に夜華さんの知り合いかどうかを調べるのは、楓のことを調べた方が早い。
だって、夜華さんは楓の守衛者だったわけだから。
その楓のことを調べれば、その知り合いの名前くらいは出てくる。
だって……この社で暮らしながらも、楓たちは下の村との交流が少なかったんだから。
彰衛門「石段が長すぎたって所為もあるだろうけど」
書物を見ようと思ったが、それは楓に悪い気がした。
そして、それらもひっくるめてこの社を守ったであろう夜華さんにも。
彰衛門「………」
俺はこの部屋に居るべきじゃないな。
戻ろう。
───……。
のたのたのたのたのたのた……
彰衛門「………」
のたのた、のたのた……
彰衛門「………」
のた……ババッ!
彰衛門「………」
ポタポタ……ジュウウ〜〜……
彰衛門「ハッ!?」
ふと気づくと、アタイは天井からぶらさがりながら胃液を落としていた。
その胃液が床を溶かしてゆく。
いかん!何気にフルフルになっとるよアタイ!!
彰衛門「てゆうか俺の胃液って何?」
まさか本当に溶けるとは……
彰衛門「それはそうと、嗄葉さんは何処にいったのかのう」
探しても、おらんたい。
何処に行っとっちょお?
……しかしこの時、アタイの頭に閃くものがあった。
彰衛門「……ああ、あそこかな?」
アタイはのたのたと天井を移動しつつ、その場を目指した。
……っていっても、途中で降りなきゃならんけど。
───ザァ……
彰衛門「グウウ……ムムウ……!!」
心地良い風が大樹の葉を揺らす。
俺はそれを見上げながら伸びをした。
そう、閃く場所といったらこの場所くらいだった。
彰衛門「いやしかし、あまり変わっておらんのぅ」
アタイが消えてから数年は経っておるでしょうに。
ま、大きな樹ってのはそういうもんなのかもね。
さてさて、そげなことよりも嗄葉じゃい。
アタイの予想じゃあ、上の方に居ると思うが……
彰衛門「だがしかし、あの小さな体で果たして、登れるかどうか……」
小僧にはアタイが木登りのスキルを教えたから大丈夫だったが……
嗄葉は見るからにヘナチョコ娘だ。
というわけで、下の方を見ましょう。
彰衛門「………」
アタイが大樹の前に立つと、草木が分かれて部屋に入れるようになる。
そしてそこに、嗄葉が居た。
嗄葉 「………」
彰衛門「む?」
しかもじぃ〜〜〜〜っとアタイを見てるし。
嗄葉 「やっぱり、あきえもん……」
彰衛門「なんとな?」
嗄葉 「……ここ、おかあさまとあきえもんだけしかはいれないってかいてあった……」
彰衛門「なんと!!」
しまったハメられた!!
だからどうということもありませんが、言い当てられるのは悔しいものなのです。
彰衛門「な、なにを申されるか!じいやはアレですよ!?
『球』を持ってるから入れたのですよ!?」
嗄葉 「……どうして、たまではいれるってしってるの……?」
グムウ!?
グ、グウウムムウ……!!
彰衛門「旅の僧に聞いたんじゃ!」
嗄葉 「……………」(じぃ〜〜〜〜)
彰衛門「お?なんだ?ヤんのかコラ」
じっと訝しげに見る嗄葉に対し、アタイはピーカブースタイルで迎えた。
嗄葉 「……たま、みせて」
彰衛門「な、なんと!?アタイのタマタマを!?」
嗄葉 「…………?たま、たま……?」
彰衛門「ギャオォーーーッ!!!!」
ウギャア自己嫌悪!!
子供に何言わせてんだ俺!!
彰衛門「な、なんでもござらん!なんでも!!」
嗄葉 「……たま、みせて……。こはくだまか、ひすいだま……」
彰衛門「グ、グウウ……!!」
そう来たか……!
さてどうする……?
当たり前だが、琥珀球も翡翠球も持ってねぇザマスよ……!?
彰衛門「───」
よし作ろう。
そして見せれば納得するじゃろう!!
というわけで冥月刀に手を添え───アレェ!?
彰衛門「あ、あら……!?冥月刀が───ない!?」
アレェーーーッ!!?
なんで!?どして!?
彰衛門「ゲェーーーッ!!ゲェーーーッ!!!!
も、もしやここに転移する際に冥月刀が触媒となった所為で、
冥月刀は時空の狭間で時の調整をしていて、
我が手元に来ることはないというのかーーーっ!!!
こうなってしまった今、俺にはどうすることもできーーーん!!!!」
嗄葉 「………」
彰衛門「───ハッ!?」
うあ……めっちゃ怪しまれてる……。
彰衛門「しょぉおお〜〜〜がねぇなぁあああ〜〜〜〜っ。
見せてやるよぉおお〜〜〜ナランチャァア〜〜〜〜ッ」
精一杯の虚勢として、まずホルマジオの真似をしてみた。
しかし余計に怪しまれるだけだった。
彰衛門「───見せるぞ。まず目ェ瞑っとき」
嗄葉 「………?」(……こくり)
首を傾げたが、とりあえず頷いてくれた。
物分りの良い子で助かった。
───では、まいる!
彰衛門「“雷治金”!!」
アタイはかつて琥珀球と翡翠球を作った時のように、力を解放した。
精製時の言葉がエネルだったのは気にしちゃならない。
やがてその手には球が精製され───ゲゲッ!?
嗄葉 「………」
いつの間にやら、嗄葉がアタイのこと見ておりました。
彰衛門「…………見た?」
嗄葉 「………」(こくり)
バッチリ見られてたようです。
彰衛門「キャアァーーッ!!!エッチィーーッ!!」
嗄葉 「……えっち?」
彰衛門「キャア!?な、なんでもござらん!気にしないでトニー!!」
てゆうかしまった!
見られたんじゃアタイの正体バレバレじゃないですか!
嗄葉 「……やっぱり、あきえもん」
彰衛門「グ、グウムッ……!いや、確かにじいやは彰衛門じゃが、
キミの言う彰衛門とは限らんじゃろォ〜〜〜ッ?」
嗄葉 「……じぶんのこと、じいやっていってる」
彰衛門「グムッ!?」
嗄葉 「『ぐうむ』っていってる……」
彰衛門「グウムム!?」
嗄葉 「『たま』をつくれた……」
彰衛門「グ、グムーーーッ!!!」
嗄葉 「このへやにもはいれた……」
彰衛門「グッ……!!気の所為ですじゃ!!」
嗄葉 「……あきえもん」
彰衛門「なんぞね!」
嗄葉 「……おかあさまがすきな、あきえもん」
彰衛門「違うぞね!!じいやは彰衛門にして彰衛門にあらず!」
嗄葉 「………」
きゅむ。
彰衛門「ギャオオォーーーッ!!?」
なんと!嗄葉がアタイの腕にしがみつくように抱きついたッッ!!
彰衛門「なにをなさる!」
嗄葉 「………」(……にっこり)
彰衛門「グ、グムーーーッ!!」
いけません!このままではいけませんよ!
アタイにも我慢の限界といふものがありましゃう!!
このまゝ流されてしまうといふのは大変に失礼でございまする!!
ただちに離れませう!
さもなくばかつてのやうに脳内が切れてしまうでせう!
そうなつてしまつたら、無意識に嗄葉さんを襲つてしまうかもしれませぬ!!
ていふかなんでせうこの思考回路!こりヤアたまらん!!
ぬおゝゝゝゝゝゝゝゝゝゝ!!!!
いかん!既に頭がやられているといふことだ!!
このままではいかん!
彰衛門「秘技───無関心心理法『イ・ヤン』の章!!」
説明しやう!!
無関心心理法『イ・ヤン』の章といふのは、
なにをやられても『いやん』と思うだけで乗り越えてしまふ秘技である!!
嗄葉 「……あきえもん」
彰衛門「………」
いやん。
嗄葉 「……あきえ、もん?」
彰衛門「………」
いやん。
───…………といふわけで、現在に至る。
嗄葉 「……あきえもん」
彰衛門「………」
いやん。
嗄葉 「………」
嗄葉が訝しげに見上げてくる。
だがしかし、この不動の精神を動かすわけにはいかない。
ていふか……そんなに何度も『あきゑもん』と呼んでくれるな……。
こちらのイ・ヤンもそう長くは続かないのだ。
嗄葉 「………」
トサッ。
彰衛門「ッゝ!!」
ぐはあゝゝゝゝゝゝゝッ!!!!
嗄葉さんがアタイの股の間に座つて───ギヤアゝゝゝゝゝゝゝゝッ!!!!
普通、初対面の人にさうゆうことしますか!?
楓サン!?アアタ一体なにを書いたのですか!?
イ・ヤンが!イ・ヤンが崩れてしまふ!!
───プチッ。
彰衛門「ア」
切れた。
我慢の限界が破壊されてしまつた。
こりヤアやばい。
彰衛門「………」
嗄葉 「?」
嗚呼、アタイの豪腕が嗄葉の小さな体に伸びて……!!
さ、させるかぁーーーーっ!!!
欲望 「ふはははは……また抗おうというのか、馬鹿め」
理性 「黙れ!貴様のやうな奴には負けはしない!」
欲望 「負けない?その妙な口調でよく言うものだ」
理性 「くつ……!」
欲望 「『くっ……』とも言えないザコめが!これで終わりだ!」
理性 「ぐ、ぐわあゝゝゝゝゝゝゝっ!!!!!」
だめでした。
理性があつさりと負けてしまいました。
アタイの腕は欲望のままに嗄葉へと伸びた───その時だった!
声 「たわけぇええーーーーーーっ!!!!!」
めごしゃあああああ!!!
彰衛門「ベップマァーーン!!!」
聞こえた声とともに、顔面に凄まじい痛みが走る!!
グボッ……という音とともに視界が開けると、血に濡れた靴を履いた悠介が!!
悠介 「お前なっ!勝手に居なくなったと思ったら子供を襲おうとしてたのか!?
そこまで堕ちたかこの変態!!」
彰衛門「………」(ぐっ!)
アタイは血を撒き散らしながら、うつ伏せに倒れた。
その際、悠介に向けて親指を立てておいた。
最低男にならずに済みましたし。
悠介 「……変態行為を認めるってか……」
ゲェーーーッ!!?
ひでぇ……完全に誤解された……。
誤解をとこうにも意識が薄れ、アタイはそのまま気絶してしまった。
───……。
彰衛門「う、むむ……」
目を覚ますと、そこは畳の上だった。
彰衛門「む、むおお……」
お決まりの覚醒をして、辺りを見渡した。
するとすぐ傍に居る謎の小僧。
小僧 「……あ、よかった、目が覚めたみたいだ」
彰衛門「………」
……誰(?
彰衛門「お前、誰(?」
小僧 「僕は蒼麻風太。あなたは?」
彰衛門「おいどん、弓彰衛門と申す者でござる。以後、よろしゅう」
風太 「はい、よろしゅう」
彰衛門「……」
風太 「………」
なにこの小僧。
さっきからずっとニコニコしてますよ?
もしかしてアタイ、どこかヘン?
彰衛門「…………ム、ムム……?」
ところどころを見てみるが、おかしなところは無し。
なんだってんデショ?
いいや、こういうのは訊いた方が早い。
彰衛門「あ〜〜ん?なにがおかしいんやワレェ」
風太 「あはは、何も可笑しくなんかないよ」
彰衛門「………」
風太 「…………?」
……すんげぇニコニコボーイですこの人。
ああまあ、こいつはこういうヤツだって理解しといた方がよさそうだ。
さて、それはそれとして……
彰衛門「おめェ……アレだ、あるか?名前」
風太 「蒼麻風太」
彰衛門「バカとはなんだコノヤロウ!!」
風太 「あはは、バカじゃないよ。風太だよ」
彰衛門「………」
もう一度名前を訊いたにも関わらず、普通に返す風太。
すげぇ、ここまでサワヤカかよ。
彰衛門「ムー……背格好からして、嗄葉と同い年あたりか?」
風太 「そうだね、うん。確かめたことはないけど、きっとそうだと思うよ」
彰衛門「………」
やりづらい。
なんかよく解らんけどやりづらい。
こやつ、絶対アタイとは逆の属性だ。
そう……『穏やかメン』だ!!
そして俺の命を狙いに来たに違いない!!!
彰衛門「フッ……意識がない俺をこげな場所に連れてきて、
どうするつもりだったのかね?
言っとくけど俺ャアあれだぞ?強ェエぞ?」
風太 「へえ……凄いんだね」
彰衛門「オウヨ!すげぇのよ!」
風太 「瓦とか割れるのかな」
彰衛門「瓦!?余裕!!」
風太 「見せてもらってもいいかな」
彰衛門「オウヨ!!オウヨ〜〜ッ!!」
───……
彰衛門「瓦割り……考えてみたら初めての体験……」
アタイは積まれた瓦を見て、フンッと鼻で笑った。
彰衛門「こんなせんべい程の土の塊を……何枚割ったところで何の目安にもなるまいが」
瓦に手を乗せる。
指を広げて、本当に乗せるだけ。
彰衛門「───ッ!!」
バガキャァッ!!ゴワシャシャシャーーーッ!!!
そのままの状態で力を込め、割るというよりは押し潰す!!
その数、40枚。
その全てを砕き、立ち上がった。
彰衛門「……どうよ」
風太 「本当に強いんだね」
彰衛門「………」
ニコニコ顔で言われました。
驚くもなにもありませぬ。
いや、あれで驚いてるってんなら別だけど。
風太 「床を汚しちゃったね、掃除しないと」
彰衛門「……そうね」
理解した。
ちゃんと脳に刻みこんだ。
『蒼麻風太』という小僧は、こういうヤツだと。
───…………。
彰衛門「んでさ、どういう経緯であの小僧と一緒になったわけよ」
悠介 「うぐ……」
起きてきた彰利は、俺を見つけると開口一番にそう言ってきた。
悠介 「……そこで会っただけだ」
彰衛門「お?ほんとかね?お?」
悠介 「なんなんだよお前は……」
妙にねちっこく絡んでくる。
なにがやりたいのかは……知らん。
彰衛門「では風太!話して聞かせい!」
風太 「うん。この人が団子屋さんに捕まっているところを、僕が立て替えたんだ」
悠介 「ぐは……!」
彰衛門「ブフゥーーーッ!!」
彰利、凄まじい風圧で吹き出した。
彰衛門「むはははは!!天下のダーリンが小僧に立て替えだってブフゥーーッ!!
立て替えってあれだよね!?代金払ってもらったんだよね!?
なに!?やっぱ金が無いことに気づかずに全部食っちゃったわけ!?
そんでもって『美味かった……』とか言って立ち上がったけど、
ものの見事に金が無かったわけ!?ブフゥーーッ!!
だっせぇーーーっ!!ダッサダサだぁーーーッ!!」
悠介 「て、てめ……!!これを機に笑いまくろうってハラか……!!」
彰衛門「だってさぁ!ダーリンともあろうものが金のことに気づかないなんてさぁ!!
よっぽど舞い上がってたんでしょダーリン!
えぇーーーっ!?アタイにゃちゃーんと解るよ!!」
悠介 「ぐ、ぐぐぐっ……!!」
超絶に悔しいが図星だ……!!
クハァ殴りてぇ……!!けど図星で殴ると虚しいことこの上なし……!!
しかも今回ばっかりは自業自得だ……!!
彰衛門「ウヒャホウヒャホヒャウヒャヒャヒャヒャ!!!!
ブハッ!!ブホハハハハハ!!!ゲフッ!!ゲフフッ!!
ぶはははははは!!はぁーーーっ!!ブハァーーーッ!!
ひひゃはははははは!!ヤブハッ……!!やべっ……!!
ツボ入った……!!ぶはははははは!!ウヒャホウヒャホハハハハハ!!!!」
悠介 「………」
……この時、俺は心の底から篠瀬に謝った。
一方的に笑いまくって悪かった。
笑われる人の気持ち、今……痛いほどに感じてる……。
彰衛門「ぶはふっ……くははは……!!な、なあ風太……!!
捕まってたダーリンてどうだったの?ねぇ、どうだったの……!?」
風太 「うん。『お金がないのに何爽やかな顔で美味しかったとか言ってるの!』って、
団子屋さんに怒られてたんだ」
彰衛門「ブヒャファーーーーーッ!!!!!」
悠介 「ぐぅうう……!!」
彰衛門「ブヒャッホ!ブフヘハッ!!ゲホッ!ゲホッ!!
ウヒャハハハハ……!!イ、イヤァーーーーッ!!腹痛ェーーーッ!!!」
悠介 「こ、このっ……!いい加減にしろっ!!」
彰衛門「だってだってさブフゥッ!!だぶっ……ぶ───ブハハハハハハ!!!!!
こうまで予想通りだとは思わな───ぁああああひゃひゃははは!!!!」
ぐあああ……!!
誰に笑われるよりムカツク……!!
もういい!開き直ろう!
俺だってこいつと同じバカだってことを、こいつに思い出させてやる!!
悠介 「このタゴサクがァーーーッ!!!!!!!」
彰衛門「ブハッ!?ア、アレェーーーーッ!!!?」
ボゴドゴベキボキ!!
彰衛門「ギャアアアーーーーーーッ!!!!!」
───…………。
突如、なにやらどこか清々しい顔になったダーリンに散々ボコられた。
彰衛門「いてぇよぉお〜〜〜っ!!いてぇよぉお〜〜〜〜っ!!!」
悠介 「お前が笑いすぎるのが悪いッ!!」
彰衛門「お?なんだコラ!アタイが夜華さんからかってた時に散々笑ってたくせに!
自分の正当化かね!?」
悠介 「そうだ!」
彰衛門「ゲゲッ!?」
なんと!ダーリンが認めた!?
彰衛門「……フッ……とうとうてめぇもこっちの仲間入りか」
悠介 「ああすまん、それだけは勘弁してくれ」
彰衛門「うわヒデェ!!」
『こっち』ってのがどういうことかも考えんと断わり入れやがった!!
まあいいけど。
彰衛門「しかし……アレじゃね?」
悠介 「んー?」
彰衛門「なにやらヤケに清々しい顔してんじゃん。なにかあった?」
悠介 「……ああ、そのことか。
別にな、なにか特別なことがあったわけじゃないと思う。
ただ昔の自分を思い出したってゆうのかな、そんなところだろ」
彰衛門「ほへー……よう解らんな」
悠介 「そんなもんだ」
ダーリンは笑ってみせ、ダーリンを見上げてる嗄葉と風太に向き直った。
が、何かを言われてこちらを向く。
そしてアタイに近づき、ネックロックをしてくると、静かに喋った。
悠介 「───お前さ、この時代だと『彰衛門』って呼ばれてるんだな……」
彰衛門「んあ?ああ、そっか。ダーリンには言ってなかったねぇ。
そう、アタイは彰衛門。次元の野武士、『弓彰衛門』ぞ!!」
悠介 「……偽名、か。たしかに面白そうだ」
彰衛門「お?乗り気かね?」
悠介 「ま、そんな日もある」
彰衛門「そっかそっか。で……なんと名乗る気かね?」
悠介 「んー……やっぱお前みたいに自分の名前をもじってつけたいよな。
なにがいいだろうか……」
彰衛門「んー……スケロクというのはどうだろうか」
悠介 「却下」
即答ですか……。
彰衛門「じゃ、日毎悠介(とか。……キャア斬新!」
悠介 「却下だ」
即答ですね……。
彰衛門「んじゃ……悠之慎なんてどうだ?昔の人っぽくていいと思うが」
悠介 「江戸時代の人っぽいぞ?」
彰衛門「俺なんて彰衛門だ。こういうのはいっそ、バカっぽい方がいいんだよ」
悠介 「……そんなもんかね」
彰衛門「カタッ苦しいこと考えずに居られるんだから、いいんじゃないか?
せっかくの過去の時代なんだし、面白いじゃん」
悠介 「………そうだな」
渋ってたダーリンだったが、やがて笑うと頷いた。
さすがダーリン!
ここぞというときは馬鹿に付き合ってくれる!
彰衛門「というわけで、こやつがアタイの親友、『兇國日輪守悠之慎』だ」
悠之慎「ちょっと待てコラァッ!!!」
紹介してやった途端、悠之慎が怒気を孕みまくった声を張り上げた。
彰衛門「ど、どうしたのかね悠之慎!なにか問題でも!?」
悠之慎「ありまくりだっ!!なんなんだよその苗字は!!」
彰衛門「え……?だって苗字あった方がカッコイイじゃん!!」
悠之慎「その苗字のどこがカッコイイんだ!!無駄に長くて邪魔だよ!」
彰衛門「なんで!?すげぇカッコイイじゃん!なに言ってんのアータ!!」
悠之慎「お、お前なぁ……!」
ダーリンの体から力が抜けるのが解った。
彰衛門「え?なに?どしたの?」
悠之慎「ハッキリ言うぞ……カッコイイと思ってるのはお前だけだ」
彰衛門「なんと!?」
馬鹿な!こんなにカッコイイ苗字なのに!?
彰衛門「こ、これ!そこな嗄葉さんと風太さん!貴殿らは如何にお考えか!!
存分に披露されませい!!カッコイイよね!?兇國日輪守!!」
風太 「あはは、すっごく格好悪いよ」
嗄葉 「………」(こくこく)
彰衛門「ゲゲェエエーーーーーッ!!!!!」
そ、そんな……すげぇカッコイイのに……!!
い、いや!きっとみんな、突然の紹介だったから驚いてるだけさ!!
馴れればきっと気に入ってくれるさ!!
彰衛門「よいかね!そこなふたり!
誰がなんと言おうが、こやつの名は兇國日輪守悠之慎なのだ!!よいね!?」
悠之慎「あっ!て、てめえっ!!」
風太 「うん、『弓彰衛門(』に、『兇國日輪守悠之慎(』だね?」
嗄葉 「きょうごくー!」
風太 「きょうごくー!」
悠之慎「こ、こらっ!人を指差して兇國言うな!!俺はそんな名前じゃあっ……!!」
ポムッ。
悠之慎「あぁっ!?」
ダーリンの肩に手を置き、振り向く顔ににっこりと笑みを贈った。
彰衛門「よろしく!兇國!!」
───当然と言うべきか否か。
この後、ブチ切れた兇國に飽きるまでボコボコにされた。
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