───ホルマジオ彰利───
───……。
ある日のこと。
どういう因果かは知らんが、俺は図書委員に祭り上げられてしまった。
嫌だって言ったのに、みんなが僕を図書委員にしようとしやがったんだ。
俺は嫌だって言ったんだ。
それなのに……それなのにみんながやれって言うから……
彰利 「しょぉおお〜〜〜がねぇええなぁ〜〜〜〜っ!!!
そこまで言うならよォオオオオ〜〜〜〜〜!!!!
しょぉお〜〜〜がねぇええ〜〜〜なぁ〜〜〜っ!!!!
みんな俺に任せろよぉナランチャ〜〜〜〜ッ!!!!!
言っとくけど図書委員やらせたら俺の右に出るヤツ居ませんよ!?
うはははははははははははは!!!」
……こんなことになってしまったがね……。
おなご「あの、これ、貸し出しお願いします」
彰利 「あいよ〜……」
カリカリ……パタム。
彰利 「あい、おっけ〜」
ぱたぱた……
おなごは本を受け取ると、何も言わずに走り去っていった。
……まいったなぁ〜、図書委員って図書室に人が居なくなるまで帰れねぇんだよなぁ。
彰利 「はぁ…………」
放課後って長いんだね、初めて知ったよ……。
……………………
…………
……夜である。
おなご「………」
彰利 「………」
いつまで居る気だあのおなご……。
てゆうか見回りはどうしたんだよオイ……。
ぐきゅ〜〜……
うおお、腹減った……帰りてぇ。
しかし私利私欲であのおなごの集中力を途切れさせるのは、やるせない。
彰利 「……いいや、寝よ……」
……ぐー。
………………
…………
彰利 「う、むむ……む、むおお……」
今、何時だ……俺はいったい、何時間……?
おなご「………」
うおっ!?
まだ居た!!
あ、あの……外、もう明るいですよ……!?
これは注意せねばなるまい!!
あのおなごの親御さんのためにも!
彰利 「これ!そこなおなご!!」
おなご「………」
彰利 「これ!!」
おなご「………」
……本に集中しすぎてて、完全にシカトされてます。
彰利 「いい度胸ォオオ……!!!」
俺はズンズンと歩いていき、そのおなごの横に立った。
で、大声を出してみようと思ったが……何を見ているのか気になって、覗いてみた。
彰利 「………」
それは文字だらけの本だった。
見てるだけで頭が痛くなる。
このおなご……もしや勉強マン!?いや、ウーマン!?
ウハァ、嫌だねぇ。
勉強がダメとは言わんが、朝まで学校にこもってまでする勉強っていいもんか?
俺は呆れながら───幽霊の真似をすることにした。
彰利 「いちまい〜にまい〜さんまい〜よんまい〜」
おなご「………」
彰利 「ごまい〜ろくまい〜……いちまいたりない……あな口惜しやぁーーーっ!!!」
おなご「………」
完全に無視されました。
実はショックです。
しゃあない。
彰利 「ジュテェ〜ム」
フゥッ。
おなご「きゃわぁああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」
甘い息を耳に吹き込むと、おなごは絶叫して飛び上がった。
おなご「な、う、なな……!?」
彰利 「きさん、いつまで図書室におるったい!
親御さんが心配しとるぞ!とっとと帰れ!」
おなご「……あれ?」
むお?怒ってやったのに、何かに気づいたかのようにアタイを見ましたよ?
おなご「弦月、くん……?」
彰利 「む?いかにも、おいどんが弦月彰利だが……なにかね?」
おなご「………」(じぃ〜〜〜〜……)
彰利 「……惚れた?」
おなご「!!」(ふるるるるる!!)
彰利 「いや、そんな力いっぱい否定せんでも……」
泣きますよ?もう……。
彰利 「で、貴様は何者?何故俺の名を?」
おなご「……同じクラスだから……」
彰利 「…………ドッキリ?」
おなご「……っ!」(ふるふるふる)
彰利 「なんと……」
いや、正直知りませんでした。
初めて知りました。
我がクラスにこげなおなご、おったっけ?
彰利 「まあよいわ、本見るんだったら借りていってくれ。
貴様が読み終わるまでここで待つのは酷だ……」
おなご「あっ……ご、ごめんなさい……ごめんなさい……」
彰利 「む……おい貴様!」
おなご「っ……!は、はいっ……!?」
彰利 「なにをビクビクしておるのかね!
おいどんが貴様になにかをしたのかね!えぇーーっ!!?」
おなご「み、耳に息かけました……」
彰利 「ごめんなさい」
そうでしたね……。
彰利 「それにしたってですね、貴様は謝りすぎですよ?
こっちが疲れちまわぁな」
おなご「…………あの、これ、借ります」
俺の言葉から逃げるように、本を差し出すおなご。
俺は息をつきながらも貸し出しカードを差し出し、名前を記入してもらった。
そこには……『桐生真穂』という文字。
……桐生?んー……まさかねぇ。
真穂 「それじゃあ……」
真穂さんはペコリとお辞儀をして、パタパタと走っていってしまった。
……本を持っていかずに。
彰利 「こ、こりゃああーーーっ!!!」
俺は慌てて廊下へ飛び出し、そう叫んでいた。
しかしその大声に驚いたのか、肩を跳ね上げたあとに一目散に走り去ってしまった。
彰利 「逃すかぁーーーっ!!」
ギャオッ!!
ドラゴンボールZでよくありそうな効果音とともに、俺は真穂さんを追うのでした。
もちろん本を渡すために。
忘れもののためにこんな朝っぱらまで残されてたってオチは冗談じゃあねぇ!!
───……チィくそう!!見失った!!
野郎、どこに隠れやがった〜〜〜っ!!
彰利 「ここか!?ここかぁっ!!お、おのれ〜〜〜っ!!」
くそう!スカウターが無けりゃ敵を探すことも出来ないドドリアさんの気分だ!!
何処にいやがる……!
彰利 「みなごろしだ〜〜〜っ!!」
て、ドドリアさんの真似は置いておくとして、と。
……ゴトッ。
彰利 「むっ!?」
物音を聞いたぞッッ!
どこからだ……?───ゴトッ。
彰利 「───そこかぁっ!!」
俺はわき目も振らずにそのドアを開け放った!!
そしてその先には仁王立ちしてる───桐生センセ。
桐生 「……やっと来た……!!」
彰利 「失礼しました〜」
ふるふると震えている桐生センセをシカトし、そのままドアを閉めようとガシィッ!!
……捕まりました。
桐生 「ゆ〜みは〜りくん♪わたし、弦月くんに言いたいことたっぷりあるんだ〜♪」
彰利 「おいどんはねぇでゴワス。だからさよならゴワス」
『さよならでゴワス』と言わないのが通である。
桐生 「弦月くんにはなくてもわたしにはあるのっ!!」
彰利 「馬鹿野郎〜〜〜っ!!会話はキャッチボールって言葉を知らんのか〜〜〜っ!!
俺に話すことがないのに、
キャッチボ〜ル会話が出来るわけねぇええだろうがよォオオオ〜〜〜ッ!!!」
桐生 「だったらわたしの言葉に頷くか返事をするだけでいいよ!」
彰利 「ウワァ、塾の時間ダー。早く家に帰らないとママに怒られるYO〜」
桐生 「弦月くん、塾になんか通ってないでしょ!!」
彰利 「ゲゲッ!!な、なぜそれを!?」
桐生 「……あのね。弦月くんが全然話に来てくれないから、家の方に訪ねたの」
彰利 「なんと!!では、雪子さんに!?」
桐生 「うん。弦月くんがその……『力』の所為で苦労したことも、全部聞いた」
彰利 「なんとまあ……マジすか」
雪子さん……アータ、一体何をなさっておるの……?
桐生 「でも、でもさ、『癒す力』なら、怖がられることなんてないと思うんだよ?」
彰利 「へ?」
桐生 「弦月くんの『力』って傷を治すだけなんでしょ?だったらそんなに……」
彰利 「………」
まいった。
さすが雪子さん……。
全てを話したと見せかけて、実はてんで話してない。
つまるところ、俺の能力は『癒しだけ』ってことになってるわけね?
この時代の雪子さんは、俺が能力もってること知っておるからねぇ。
……包丁で指切ったのを治してあげたら、
『能力あるじゃない!役立たずなんかじゃないじゃない!』って怒られたんだけどね。
彰利 「あー、ちょいと桐生さんや?本音を聞きたいんでゴワスが」
桐生 「本音……?」
彰利 「そ。傷を治せるバケモノを、センセはどう思う?」
桐生 「弦月くんなら問題ないと思うけど」
彰利 「それだけ?」
桐生 「……ほかになにか言わなきゃだめなのかな」
彰利 「………」
平和な人じゃのう。
桐生 「あ、じゃあこれはわたしと弦月くんだけの秘密にしよっか。
そうすればまた、一緒に楽しめるよ?」
彰利 「いやでゴワス」
桐生 「え……なんで……?わたしのこと、嫌い……?」
彰利 「拙者、もとより人との接触は避けてるでゴワス。
波風の立たないスクールライフを送っていれば、
雪子さんにも迷惑がかかることもねぇでゴワス。
だから……貴様の告白は受け取れねぇでゴワス」
ボゴシャアアーーッ!!
彰利 「ぐおおぉぉーーーーーっ!!!!!」
目にもとまらぬゲンコツが閃きました……。
桐生 「告白なんかじゃないよっ!!」
彰利 「フッ、その割には顔が赤いぜ?一丁前に照れてやがる」
桐生 「弦月くんがヘンなこと言うからだよっ!!」
彰利 「お?なんだコラ。人の所為にするってのか?お?」
べちーーん!!
彰利 「ぶべぇーーーっ!!」
桐生 「そんな態度で人にモノ訊いちゃだめでしょ!!」
だからって平手打ちはヒドイと思いますが!?
おお痛ぇ……!!
彰利 「この小娘が……。なんでも体罰に訴えやがって何様だ?お?」
桐生 「小娘って……。
わたしこれでも一児の母だし、その子供も弦月くんと同い年だよ?」
彰利 「フッ……根拠の無い強がりを言いやがって……。それはなんの冗談かね?
貴様みてぇな子供っぽい性格の童顔教師が一児の母なわけがあるまい」
桐生 「こ、子供っぽい……?童顔……?」
彰利 「高校生……いや!中学生でも通用するかもしれませんよ!!」
桐生 「……人が気にしてることを」
彰利 「あ、あれ?」
急に空気が沈んで……!?
ば、馬鹿な……この俺が動けんだと……!?
桐生 「あはははは……」
彰利 「ふ、ふははははは……」
桐生センセが乾いた笑いを漏らす中、俺は負けじと笑ってみせた。
動けないんだからこれくらいの抵抗はしたいもんですからねぇ?
ドカバキ!! ギャアアアーーーーーーッ!!!!
真穂 「ひゃうっ……!?」
校内を走りまわって疲れてきた時、宿直室から妙な音と叫び声が聞こえた。
なんだろう、とは思うけど……中に入って調べるほどの勇気がなかった。
……こんな時に思う。
お母さんみたいになんでもできれば、って。
真穂 「う、ううう……うー……」
気づけば足が震えていた。
明るいとはいえ、まだ薄暗い世界。
物陰がやけに気になってしまう校舎は、わたしの心を冷たくさせた。
……怖い。
弦月くんと一緒に居ればよかった。
お母さん、心配してるかな……ごめんなさい。
ドスボゴベキゴキ!! ギャアアアーーーーーッ!!!!!!
真穂 「っ……!!」
また叫び声。
わたしは怖くて、その場から動けなくなってしまった。
真穂 「うう……怖い……!!怖いよぅ……!!」
ドスドスガス───ボゴシャアアア!!! ウギャアアアーーーーーッ!!!
真穂 「っ!?」
叫び声とともに、窓が割れる音がした。
───しばらくすると、廊下を駆ける音が聞こえた。
真穂 「やっ……やぁっ……!!」
怖い。
なにが来るのか解らない。
怖い……怖い……!!
声 「おのれぇーーーっ!!絶対に許さんぞムシケラがぁーーーっ!!
よくも!よくもこのフリーザさまをーーーっ!!
じわじわとなぶり殺しにしてやるーーーっ!!」
真穂 「きゃあっ……!!」
声 「ややっ!?きゃあとな!?───って、真穂さん?」
真穂 「え……?」
廊下の先から走ってきた影……それは、弦月くんだった。
───……。
彰利 「どぎゃんしたとよ!こげんとこさヘタリこんで!
廊下に座るなとは言わぬが、おなごが腰を冷やすもんじゃあありません!!」
俺は廊下に座り込んでいた真穂さんにガミガミと説教を飛ばしていた。
だが……何故ですかね?
真穂さんの表情が異様に安堵に包まれてるのは。
と、その時!視界の先にある宿直室のドアがバタム!と開き、
その中から俺を蹴り飛ばした張本人が現れた!!
桐生 「た、大変だぁっ……!さ、さすがに今のはアブナ───あれぇっ!?」
彰利 「ややっ!貴様!よくもおめおめと姿を現せたものですね!!
俺に飛び蹴り食らわせて、
窓ブチ破っても止まらない勢いへいざなった貴君の行為……
忘れたわけではござらん!!」
桐生 「よ、よかったぁ……無事だったんだね弦月くん!」
彰利 「死ねーーーっ!!」
桐生 「えぇっ!?」
馬鹿め!こうも簡単に隙を作るとは!
殴ってくださいと言ってるようなものよーーーっ!!
くらえワンツーパンチ!!ドカバキ!!
彰利 「ギャアアアーーーーッ!!!!!」
……あっさりと返り討ちに合いました。
俺は支えを失った人形のように崩れ落ち、大の字に倒れた。
真穂 「お、お母さん!なにを……!?」
桐生 「───へ?あ、あれれぇっ!?ま、真穂!?どうしてこんな時間にここに……」
彰利 「逢い引きしてました!!」
桐生 「………」
その瞬間、俺は桐生センセにシャレにならんほどボコボコにされました。
しくしくしくしくしくしく…………
宿直室に鬱陶しい泣き声が響き渡る。
誰のでもなく、弦月くんのものだ。
彰利 「ひどいよぉ〜〜〜……ほんの冗談だったのにここまで殴るなんてぇ〜〜〜……」
桐生 「あ、あー、あの、ごめんねぇ……?」
彰利 「許して欲しかったら金だせや金。オウ?」
べちーーーん!!
彰利 「ぶべぇーーーっ!!」
うわっ……痛い……!!
見るからに痛そうな平手打ちが、弦月くんの頬を叩いた。
桐生 「お金をたかるのは最低な人のやることだよ!!」
彰利 「それではなにかね!?
生徒に飛び蹴りをするのは先生のすることだとでも言うのかね!?」
桐生 「えっ……そ、それは、その……」
……叩かれたというのに、弦月くんは平気なようだ。
わたしのお母さんとはいえ、教師に向かって様々な言葉を放ってる。
……すごい。
彰利 「お?なにかね?考えもなしにやったのかね!!えぇーーーっ!!?」
桐生 「うぐ、うぐぐぐぅううう……!!!」
お母さんが押されてる。
お母さん、子供っぽい人だとは思ったけど、ここまでなんて……。
でも楽しそうだった。
こんなお母さんを見るのは初めてだ。
彰利 「このジョルノ=ジョバァーナには夢がある!!
だからその軍資金として金が必要なんです。だからくれ」
桐生 「だ、だから!たかったりしちゃだめでしょ!!」
彰利 「お、おいどんまだ子供だから働けねぇんでゴワス!!
だから───500円ちょ〜だい?」
桐生 「あげないよっ!」
彰利 「なんと!?謀ったなブッチャー!!」
桐生 「誰も謀ってないでしょ!!」
彰利 「ぬうう!!アレもダメこれもダメで人生が勤まるものかァーーーッ!!!
おいどん、もう勘弁ならぬでゴワス!!ほりゃあーーーっ!!」
弦月くんがお母さんに向かって走ってゆく。
けどその途中でお金を落としてしまい、おろおろとした。
桐生 「あ、あわわっ!?」
お母さんはびっくりしながらもそれを拾おうと屈む。
───その途端!
彰利 「死ねぇーーーっ!!!」
桐生 「えぇっ!?あわぁっ!?」
弦月くんが両腕を十字にして飛んだ。
けどあっさりと叩き落されて……ドカバキ!!
彰利 「ギャアアーーーッ!!!!」
お母さんにボコボコにされた。
言う言葉自体は偉そうなのに、とんでもなく弱かった。
彰利 「い、いでででで!!ちくしょ〜〜っ!!
よくもやりやがったなチンチクリンめが〜〜〜っ!!
ママに言いつけてやる〜〜っ!!マ、ママーーッ!!」
ガバァッ!!
なにごとか、弦月くんがわたしの後ろに回って───あ、あれぇっ!?
彰利 「動くなァーーーッ!!動くと真穂さんの首がコキリ、だぞーーーっ!!」
桐生 「なっ───最低だよ弦月くん!!」
彰利 「フハハハハハ!!なんとでも言うがよか!!
だがなーーっ!!最後に立ってた者が勝者なのだ!!
そして───それはこのディアヴォロさまだーーーっ!!!」
桐生 「ディ、ディアヴォロ!?」
彰利 「貴様には後悔する時間すら───与えん!!」
桐生 「いらないよそんなの!」
彰利 「なんと!?」
格好つけて言った言葉が即答で否定されたのがショックだったようだ。
弦月くんは驚いていた。
わたしはその隙になんとか逃げようと思ったけど、弦月くんが小声で言ってきた。
『もうちょいからかったら離すから、待ってくれ』って。
その言葉は本気のようで、どうやらからかう以外に他意は無いみたいだった。
……弦月くんって変わり者。
でも……お母さんが家でよく弦月くんの話をする理由も解る気がした。
重くないんだ、この人の性格は。
……この歳でこんな性格ってゆうのもどうかと思うけど。
桐生 「真穂を離して……」
彰利 「それは出来んなぁ〜……こ、これ!なにを近づいてきとるんだッッ!!
位置は───俺が上、貴様が下だァーーーッ!!!
それ以上近寄るとポキリですよ!?本気だぞ!?
う、うわーーーん!!近寄るなぁーーーっ!!」
真穂 「………」
弦月くんが泣きながら後退る。
わたしを盾にしたまま。
桐生 「子供の弦月くんにそんなことする力はないし、弦月くんはそんなことしない。
だから、わたしは安心して近寄ればいいんだよ」
彰利 「ゲゲェエーーーッ!!!」
桐生 「げ、げげぇって……もうちょっと子供らしい驚き方しようよ……」
彰利 「じゃ、じゃあくすぐり地獄だ!!それ以上近寄ったらくすぐりますよ!?」
桐生 「んー……我慢してね、真穂♪」
真穂 「えぇっ!?」
冗談じゃない。
わたしはくすぐられるのが滅法弱いんだ。
そう思った瞬間、お母さんは走り、わたしのくすぐりポイントにはくすぐったさが走る。
真穂 「ひゃあっ!?あひゃっ───や、やだっ……!!くっ……くふふふふ……!!」
彰利 「どうだーーーっ!!真穂さんの苦しむ姿を見たくなかったら止まるのだ!!
俺はやると言ったらやる男だぜ!?さあ!!」
真穂 「くぅっ!?う、きゃあああっ!!」
ゴチャアッ!!
彰利 「シメサバーーーッ!!」
くすぐったくて暴れたわたしの後頭部に、柔らかいものが砕ける感触が走った。
その途端に弦月くんの手はわたしから離れて、
振り向いてみれば鼻から鼻血を盛大に流している弦月くん。
彰利 「ぐあっ……!こんなッ!!馬鹿なッ(!!!このディアボロがッ(……!!」
ディアボロってゆうのがなんなのかは解らないけど、
わたしの所為で弦月くんが怪我をした。
あんなに血がいっぱい出てる。
それだけでわたしは、とんでもないことをしてしまったんだと感じた。
桐生 「形勢逆転、だね」
彰利 「くまかかか……!!だが甘いぞ……!
俺にはこのような傷、傷とは言えんことくらい知っておるでしょう……!!」
弦月くんの手が光ったかと思うと、急に鼻血が止まった。
そして何事もなかったかのように、蹲らせていた体を起こす。
真穂 (……え?なに……?なにをしたの……?)
見ていたのに、なにをしたのかまるで解らなかった。
彰利 「さあこいっ!久しぶりに稽古をつけてやろう!
思う存分かかってこぉーーーい!!」
桐生 「言われなくてもっ!!」
お母さんが走る。
そしてすぐに足を伸ばして蹴ろうとした。
彰利 「フッ───桐生センセ、貴様の弱点はその大振りの攻撃にあ」
ボゴシャアッ!!
彰利 「ぶべぇーーーっ!!!」
喋り途中だった弦月くんの顔面に、お母さんの蹴りが埋まった。
彰利 「ぶべっ!ふべべっ!!な、なんてことするんですか!!
説明中の人に攻撃するなんて、武闘家の風上にも置けませんよ!?」
かなり痛そうな攻撃だったのに、弦月くんはケロッとしていた。
桐生 「真剣勝負の最中に喋ったりする人なんて居ないよ!!」
彰利 「な、なに〜〜〜っ!?雷電ナメんなよこの小娘がぁ〜〜〜っ!!」
桐生 「目上の人にそんな口の利き方しちゃだめでしょ!!」
ドカバキドゴボコガンゴンガン!!!
彰利 「ぎゃああああーーーーーっ!!!!!」
そのあとはもうボコボコだった。
タコ殴りというものだと思う。
息つく暇もなく、弦月くんはお母さんに空手の奥義を教えられた。
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