───黄昏の片鱗───
───既存のイメージを捨て、創造を開始する。
悠之慎「───クリ、エイション……」
意識がぶっ飛ぶ。
景色が虚ろに見え、だが───どういうわけか、
その虚ろの世界の先に……黄昏を見た気がした。
声 「………悠……!」
彰衛門の声が聞こえた気がした。
景色が弾ける。
けど……それが自然だと思えた。
───始めようか、黄昏の創造を。
悠之慎「………」
視界が染まる。
赤く、朱く、紅く。
自分の深淵から、聞いたこともない声が聞こえる。
染まれ 染まれ 染まれ 染まれ
赤く 紅く 朱く 緋く
それと同時に、景色が光に包まれる。
悠之慎「───“黄昏を抱く創造の世界”………」
黄昏の景色が広がり、キィンと乾いた音が鳴る。
それと同時に空中に創造された光が形となる。
それは……槍だった。
化け物「オメェ……ごろしでやる!」
化け物が走る。
が、その前に勢いよく飛んだ光の槍が化け物目掛けて突っ込む。
化け物「アァ……?」
悠之慎「貫け……“三十矢の地槍(”」
俺はその槍がそのまま刺さると思った。
だが───口が勝手に言葉を放つのと同時に槍は霧散し、
やがて幾つもの光の矢となり……化け物に降り注いだ。
化け物「ア───」
それで、終わり。
化け物はあっという間に光の雨に当てられ……カケラも残らなかった。
はぁ……。
悠之慎「疲れた……」
無茶な創造はするもんじゃない。
彰衛門「お前……とんでもない創造するなぁ」
疲れから、座っていた俺に彰衛門が声をかける。
悠之慎「あー……なんかもうよく解らんが疲れた……」
座ってるのもだるくて、俺はその場に寝転んだ。
彰衛門「ま、いろいろツッコミどころが満載だけど……いいコテ。
で、どうする?さっきからそこら中にバケモノの気配があるんだけど」
悠之慎「な……マジか?」
彰衛門「オウヨ。数はおよそ……12ってとこか」
悠之慎「うわ……勘弁してくれ、動けないぞ……」
楽な体勢を取ろうとするのでさえ一苦労だ、そんなヤツらとは戦ってられん。
彰衛門「そかそか。んじゃ───いくぞタナーカ!!
今こそ貴様の潜在能力を見せる時だ!!」
彰衛門はヒョンッと竿を回し、あらぬ方向に石を投げた。
その方向からボコッという音が鳴ると、そこから瘴気を感じた。
いや……そこから、なんてものじゃなく……随分といろいろな場所から。
彰衛門「タナーカ・メタモルフォーゼNo.1!!神罰の杖!!」
竿を回し、バッと構える。
彰衛門「説明しよう!タナーカ・メタモルフォーゼとはタナーカの潜在能力である!
タナーカは自分が思う通りのカタチに変身できるのだ!!」
田中 「……できねぇっての」
グギギギギイ……!!
田中が曲げられてゆく。
田中 「あぁ〜〜〜っ!!痛い痛い〜〜っ!!た、助けてくださいそこの人〜〜〜っ!」
田中が俺に助けを求めたが無視した。
田中 「そんなぁ〜〜〜っ!!」
彰衛門「お前ほんとにただの竿なのな!役立たずめ!!」
田中 「失礼な!私をそんじょそこらの竿と一緒にするだなんて!
やれやれ、まったくなんてしょうのない人だ……」
彰衛門「や・か・ま・しぃいいい〜〜〜〜……!!!」
グギギギギギイ……!!
田中 「あぁあ〜〜〜っ!!やめてくださいぃ〜〜〜っ!!」
彰衛門「タナーカ!お前なんか出来ないの!?」
田中 「フフン、その質問を待っていたんですよ。
こう見えてもただの竿ではありませんからねぇ。
私の能力……それは、狙った魚は逃がさないことですよ。
どうです?すごいでしょう」
彰衛門「………」
グギギメキメキメキ……!!
田中 「あぁあ〜〜〜〜っ!!な、なにするんですかぁ〜〜〜っ!!」
彰衛門が無言と冷めた顔で竿を曲げてゆく。
……気持ちは解る。
化け物『グォオオーーーッ!!!』
悠之慎「うお……」
が、気づけば囲まれてた、と。
バカなことしてる場合じゃなかった。
彰衛門「えーと……」
化け物「ォオ……!!まりょぐ、がんじる……!ぞのざお、よごぜ……」
彰衛門「どうぞ」(0.5秒)
田中 「そんなぁ〜〜〜っ!!」
化け物「おお……!おめ……はなじのわがるやづ……!!」
彰衛門「誰が鼻血だこの野郎!!」
田中 「『話の解るやつ』って言ったんですよ……やれやれ、なんて低脳な人だ……」
彰衛門「こいつ食っていいよ」
化け物「いだだぎまぁず!!」
田中 「あぁーーーっ!!!」
ぱっくんちょ。
化け物「うぅううううまぁあああああいぃいいいいぞぉおおおおおおおっ!!!!!」
彰衛門「うおっ!?」
竿を食った化け物が、口から光を吐いた。
てゆうか……味皇さま!?
化け物「ゲェエアアア……」
どちゃっ。
光を吐いた化け物は皮だけの姿になり、やがて粉微塵になって消えた。
田中 「はぁ……本当に食べさせるなんて……やれやれ、なんてひどい人だ」
彰衛門「タナーカ、貴様……そげな能力が」
田中 「私はただの竿とは違って神聖な力があるんですよ。
まあ、低脳なあなたがたに言っても解らないとは思いますがねぇ」
彰衛門「折っていい?」
彰衛門が血管をムキムキにしながら竿を握る。
田中 「あぁ〜〜〜っ!や、やめてくださいぃ〜〜〜っ!!」
彰衛門「お前さ、他になにが出来る?」
田中 「それが人にものを尋ねる態度───あぁ〜〜〜っ!!
や、やめてくださいぃ〜〜〜〜っ!!」
有無も言わさぬ状況で、どうして敢えて有無を言おうとするのかが解らん。
どうやら自己主張の強い竿らしい。
田中 「わ、私の力は……破邪と呪いなどの解呪くらいですよ〜〜〜っ!!!」
彰衛門「あ〜〜ん!?ほんとにそれだけなんだろうなぁ〜〜〜っ!!」
田中 「失礼な!私をそこらの竿と一緒にしないでもらいたいですねっ!
私は神聖な竿として誇りを持っているんですからねっ!
ウソなんかついたりするわけないじゃないですか!
やれやれまったく……これだから低脳な人と話すのは」
メキメキメキ……
田中 「あぁーーーーっ!!!た、助けてくださいぃ〜〜っ!!!」
彰衛門「……お前さ、偉そうなくせにすぐに人に頼るのな……」
確かに。
だが今はそれより……
悠之慎「おーい彰衛門……さっきから囲まれてるんだが……どうすんだよ」
彰衛門「こうする。ほーら取ってこぉーーーい!!」
ドシュゥウウウウウウウウウウン!!!!!!
田中 「きゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー--------…………」
化け物『うおぉおおおおおおおっ!!!!はらへっだーーー!!はらへっだーーー!!』
彰衛門が竿を力一杯投げると、それを追うように化け物達が走っていった。
彰衛門「悪は去った……」
悠之慎「お前なぁ……あれじゃあ犠牲にしたみたいじゃないか」
彰衛門「おう、そこで提案なんだがさ。化け物の親玉を倒さないか?」
悠之慎「……なんでまた」
彰衛門「親玉を倒せば子分も消えそうじゃん。だって化け物だし!」
悠之慎「………」
こいつの思考の中を見てみたいと思った瞬間だった。
───あれから悠之慎の体力の回復を待って、俺達は行動を開始した。
彰衛門「で、適当に見つけた化け物をボコって、逃げてるのを追ってるわけですが」
悠之慎「お前、何者よ……」
彰衛門「俺だ」
悠之慎「そういう意味じゃなくて……はぁ。
人が散々疲れて倒した化け物を圧倒的に退けるなよ……」
彰衛門「そりゃ悠之慎が無茶な創造したからだろ。
普通にやれば疲れることもなかっただろうし」
悠之慎「……まったくだ」
悠之慎が溜め息を吐くのと同時に、ひとつの洞窟が目に入った。
その中に、ボコった化け物が入ってゆく。
悠之慎「あそこか」
彰衛門「そのようで」
ふたりしてニヤリと笑う。
クォックォックォッ……やはり何かを暴くのは面白いもんじゃい……!!
悠之慎「んじゃ……フラッシュグレネードが出ます」
彰衛門「……おお、そりゃ面白いかもしれん」
悠之慎「だろ?よっ」
栓を抜き、洞窟目掛けてそれを投げる。
それを確認するとふたりでその洞窟に背を向けて目を閉じた。
ゴカァァアアアッ!!
声 『グォオオオオオオオオオッ!!!!!』
……と、そんな絶叫が聞こえたところで目を開け、突貫。
悠之慎はさっき使わなかった雷神剣を構えた。
彰衛門「それ、ほんに雷属性?」
悠之慎「触ってみるか?」
彰衛門「え、遠慮しとく……」
もう雷はまっぴらじゃわい。
歴史を繰り返す中で散々と月鳴の裁きをやられましたし。
彰衛門「……おお」
───洞窟に入ると、いろんな化け物が目を押さえて蹲っていた。
こりゃ楽だ。
悠之慎「どっちに行けばいいか解るか?」
彰衛門「適当でいいだろ。ようはこいつらの目が治るまでにボスを叩けばいい」
悠之慎「そりゃそうだ」
化け物「グオオッ!!」
彰衛門「おわっ!?」
間取りカドを曲がったその時でした!!
フラッシュグレネードの光が届かなかった化け物が現れた!
悠之慎「雷神閃!」
ビジュンッ!!
化け物「ゲアッ───」
彰衛門「お───」
化け物の首が一瞬にして飛ぶ。
悠之慎「急ぐぞ、さっさと済ませる」
彰衛門「………」
何気にノッてますね。
でもまあ……魔物退治は男の浪漫。
自分の実力を知りたいことも確かなら、ゲームの世界に憧れるのもまた男。
子供だろうと笑わば笑え!!
彰衛門「ハァッ!!」
化け物「ウガッ!?」
また出てきた化け物の額に手を当てる。
そして息を吸い───
彰衛門「排撃(ォッ!!」
ドォンッッ!!
小さく溜めていた月壊力を一気に爆発させた。
悠之慎「うおっ……!?」
結果、化け物は跡形も無く消し飛んだ。
気ン持ちいぃ〜〜っ!!
彰衛門「がはっ……でも骨に響くわこれっ……!!いちちち……っ!!」
さすが戦士ワイパーの技。
一筋縄では真似られん。
……でも爆発系っていったら月醒力か月壊力だしなぁ。
月醒力はアタイには蝕みが高いし、月壊力の方が馴染んでるしね。
彰衛門「よ、よーし、どんどん行くかぁ」
悠之慎「……ほれ、これ使え」
彰衛門「なんと!?」
悠之慎がもうひとつ剣を創造して俺に投げた。
それを受け取ってみると、何故だかとてもしっくりくる手応え。
彰衛門「……月壊力の剣か」
悠之慎「ご名答。今の……排撃、だっけ?
それのお蔭で月壊力のみの波動が解ったんでな。
どれくらいの威力かどうかは知らんが、役には立つと思う」
彰衛門「おうサンキュウ!よっしゃあああああああ!!」
剣を構え、猛然と走る!!
そこらへんに出てきた化け物をばったばったと切り倒ドゴォンッ!!
彰衛門「うごぉわっ!!」
斬りつけた途端に爆発。
こ、この威力……排撃と同じくらい!?
彰衛門「………」
悠之慎「ん?どした?」
つい、信じられんものを見る目で悠之慎を見てしまった。
これだけの威力を出せる剣を作るとは……しかも振っただけですよ?
特に何かを消費するようなこともないし……創造の理力っていいよなぁ。
悠之慎「どうしたんだよ」
彰衛門「んーにゃ。ただ創造の理力っていいなぁと」
ただ、衝撃が骨に伝わって痛いッスけど。
化け物「だぁ〜〜〜っ!!」
彰衛門「排撃(ォッ!!」
バガァンッ!!
化け物「アァーーッ!!」
彰衛門「いででででぇええーーーっ!!!!!」
痛い痛い痛い!!やっぱ痛ェッ!!
彰衛門「…………返す」
悠之慎「……早いな」
悠之慎に剣を返す。
これ、月壊力とかは使わなくても済むけどさ……
痛みを和らげるために月生力使うから……すこぶる意味がない。
悠之慎「じゃ───剣を融合させる霧が出ます」
彰衛門「なにぃ!?」
ヒィン───ガションッ!!
悠之慎「よし、完成」
彰衛門「………」
悠之慎「壊剣【雷神】が出来たぞ」
彰衛門「くれ!」
悠之慎「早いなオイ……」
とか言いつつ、悠之慎が剣を渡してくれる。
彰衛門「あ……でも待てよ?ちっと試してもらいたいことがあるんだけど」
悠之慎「へ……?」
───……。
………………。
悠之慎「ぐええ……」
彰衛門「あー……悪い」
とりあえず、試してもらった。
そして出来ました!『月操剣-ルナカオス-』!!
俺の持つ月操力と悠介の持つ月操力の全てをイメージの剣として創造!
そして融合させたのがコレだぁーーーっ!!
このっ……俺の手の中にある美しい剣……!!
冥月刀には劣るが、これほどの剣は無二だろう!!
……まあ、悠之慎はグロッキーになってしまったが。
彰衛門「試し切りしてぇ!!めっちゃしてぇ!!」
化け物!化け物はおらんのか!?
化け物「おめ……ぞごでなにやっでる……!?」
彰衛門「ちょえぇ〜〜〜っ!!」
出て来た化け物に向けて剣を振るった!!
が、振り向き様だった所為で思いっきり遠かっバガァアアアアアアアアアアアン!!!
彰衛門「え……?」
化け物、消滅。
彰衛門「あんなに離れてたのに……」
剣からアルファレイド並の波動が出て、化け物をブチ殺したのだ。
……強過ぎ。
すげぇや創造の理力って……こりゃ勝てねぇよ……。
彰衛門「そっか……そうだよな。アルファレイドもいろんな月操力混ぜたものだしな。
この剣ってば全月操力入ってるわけだからなぁ……。
しかも振れば自動で波動が出るし。
そうなれば……俺が天界でやろうとした、
フルブレイクカタストロファーが簡単に出せるってわけだ……」
冥月刀みたいに効果を倍化するわけじゃないから、威力は下がるが……十分だ。
彰衛門「………………」
いいなぁ、創造の理力。
俺もこんな能力欲しかった。
彰衛門「まあそれはそれとして、と」
化け物「あらいいぎがぎごえるぞ……めし……めし……?」
化け物が悠之慎の息遣いを感じ、ゾロゾロと降りてきた。
創造のしすぎで疲れてる悠介は、容赦無く息を吐きまくっている。
化け物「にんげんだぁ〜〜っ!!はらへっだーーーっ!!はらへっだーーーっ!!」
化け物「だぁ〜〜〜っ!!」
化け物「もぉ我慢できねぇなぁ〜〜〜っ!!!」
化け物「るぅううううぅぅえぇえうぅうぉおぁあああああううぅぅっ!!!」
……ところで、どうしてここの化け物って『妖怪腐れ外道』を標準装備なんだ?
喋り方がそのまんま腐れ外道だし。
彰衛門「───悠介に触るな」
化け物『我慢できねぇなぁ〜〜〜っ!!!!』
彰衛門「聞いちゃいねぇ……」
化け物『だぁ〜〜〜っ!!』
化け物の跳躍!!
俺はそれを冷静に捉え、剣を振った!!
そこから巨大にして混沌なる光が放たれ、化け物を消し去った!!
彰衛門「うわ……」
ちょいとシャレになりませんよ!?
強過ぎ!これ強過ぎ!
彰衛門「巨大な力は幸せを破壊しますよ!?いけません!
これはいずれ封印せねば……!!」
悠之慎「お、おまえなぁ……!人に創造させといて……!」
彰衛門「あ、ごめん」
……うむ、これはここのボスを屠ったら封印するとしよう。
彰衛門「立てるか?」
悠之慎「───……しばし待て」
彰衛門「オウ?」
なんだ?
悠之慎の声が悠介じゃないみたいに聞こえたけど……
悠之慎「───……ん?なんか言ったか?」
彰衛門「へ?あ、いや、立てるか?って」
悠之慎「あ、ああ、そっか……余裕で立てる」
悠之慎はそう言うと、スックと立ちあがってみせた。
軽い身のこなし……疲れがあるようには見えなかった。
彰衛門「体力は?」
悠之慎「体力?あ、ああ……なんか知らんけど完全に回復してる」
彰衛門「……なんだそりゃ」
訳が解らん。
そんなすぐに回復するものなのか?
……けどまあ、それにこしたことはないし……いいか、べつに。
彰衛門「じゃ、ボス目指していきますかぁ」
悠之慎「ああ」
まったく大丈夫そうに歩く悠之慎を確認してから、俺も歩き出した。
───……。
男 「……珍しい、客人か」
で……奥まで来たんだが……
悠之慎「お前がボスか?」
ボス?「その喩えは的確ではないな……。私は司令塔のようなものだ……あいつらのな」
悠之慎「いや、だから……それがボスだろ?」
ボス 「違うな……私は『知識』だ。『食う』だけしか脳のないあいつらの」
彰衛門「タイムマシンのラスボス?」
横で話を聞いてた彰衛門がなにか言ったが、気にしないことにする。
こいつと一緒に居ると、どうにも話がズレていく。
悠之慎「『知識』ってことは、あんたを滅ぼせば化け物どもは消えるってことだな?
俺としてはあの化け物はあんたが動かしてるようにしか思えない」
ボス 「ああそうだな。動かしているのは私だ。
だが、滅ぼすという言葉が実行できるかな?」
悠之慎「───できるさ」
そう返事をした時点で戦いは始まっていた。
俺は彰衛門に目で合図すると駆け出し、
まずは力量を測るために月醒の矢を創造して放つ。
ボス 「フンッ!」
ボスはそれを掌で受け止めた。
……ダメージはないようだ───できる。
彰衛門「トタァーーーッ!!」
そこへ彰衛門の───フライングボディアタック。
悠之慎「もっとマシな攻撃しやがれダボがァーーーッ!!!!」
バジィッ!!バリバリバリィーーッ!!
彰衛門「ホゴゲゴガゴゲゲオゴゴギャアアアーーーッ!!!!」
宙を舞っていた彼がスパークする。
もちろん、雷を落としたからだ。
彰衛門はそのままの勢いでボスへと飛んだが、
ハエを叩くようにあっさりと叩き落され、地面と熱いベーゼを交わした。
彰衛門「なにすんじゃいダーリン!嫉妬!?アタイが他の男に飛んだから嫉妬したの!?
でもこれはあんまりよ!ヒドイわ!でも愛してる!!」
悠之慎「寝言は寝て言えっ!!」
彰衛門「あ、あなたっていつもそう……!
いつもそうやって人にキツいツッコミして、
自分が何を言われても『寝言は寝て言え』って……!!」
悠之慎「お前に愛される筋合いがないって言っとるんだ!!」
彰衛門「なにをぅ!?愛を馬鹿にすんなよ!?愛はなぁ!!」
悠之慎「愛愛叫ぶな恥ずかしい!!お前ちょっと黙ってろ!!」
彰衛門「なにさ!ダーリンなんて……愛してる!!」
悠之慎「やめんか気色悪い!!」
彰衛門「それ言い過ぎ!ヒドイ!」
ボス 「………お前ら、痴話喧嘩なら余所でやれ……」
悠之慎「『痴話』言うなっ!!そんなんじゃないっ!!」
存在を忘れていたボスに、イヤなツッコミをされた。
それに痴話喧嘩ってのは『男女』の事情のもつれから発する喧嘩のことであり、
男同士ではその言葉は適当じゃない。
悠之慎「お前が言ったんだろうが、ボスを倒そうって。やる気あるのか?お前……」
彰衛門「超絶に!」
悠之慎「あー……その輝かしい笑顔がウソだったパターンは数知れずだが……。
今回は信じよう。信じるから、真面目にやれ……」
彰衛門「え……俺究極に真面目だったけど」
悠之慎「阿呆ゥ……」
彰衛門「うあ……そんなどん底に突き落とすような低い声で言わんでも……」
やっぱこいつには振りまわされるのか……?
ああもう疲れる……。
ボス 「お前ら、ここに何しに来たのだ?」
悠之慎「あんたを始末しに来た……筈」
自信が無くなってきたよ、俺。
彰衛門「そう!貴様を屠りに来たのだ!……そして宝を全部奪う」
ボス 「……そうか、貴様らは強盗のようなものなのか」
彰衛門「過言ではない」
悠之慎「過言だっ!!」
彰衛門「強盗団『アグレッシブ・タオチェイズ』!!ちなみにリーダーはこの人です」
彰衛門が俺を指差す。
ボス 「そうか、貴様が……」
悠之慎「ウソだっ!!甚だしいウソだっ!!あんたも簡単に騙されるなよっ!!」
ボス 「恥じることはない。なにかしらの誇りを持つことはいいことだ」
悠之慎「虚言に誇りなんぞ持ってるのはこいつだけだ!」
ズビシと彰衛門を指差す。
彰衛門「なんですと!?俺が虚言に誇りを!?」
悠之慎「真実だろうが!」
彰衛門「そうかもしれん」
悠之慎「…………お前さ、少しは否定した方がいいと思うぞ」
彰衛門「だってさ、ホラ!俺、ウソ嫌いだし!!」
輝かしい笑顔で言う彼だったが、それ自体がウソだろう。
悠之慎「幸せそうでいいよな、お前の脳って」
彰衛門「すげぇだろ」
悠之慎「誉めてないから威張るなボケ」
彰衛門「うわヒドイ!!」
ボス 「………」
ふと見ると、ボスが心底呆れていた。
ボス 「お前ら……戦う気があるのか?これから殺し合いをするというのに」
彰衛門「殺し合いではない!死ぬのは貴様だけだ!だから殺し合いとは違う!死ね!」
ボス 「そ、そうか……攻撃していいのだな?」
彰衛門「いいだろう、ボス……。存分に───かかってこい!!」
ボス 「そうか───ならばいくぞ。出でよ餓鬼!この者らを食らいつくせ!」
悠之慎「───!」
ボスは自分の腕を傷つけ、出てきた血を地面に落とした。
するとそこから化け物が沸いて出る。
彰衛門「うおお気色悪ィ!!ボスの血から出てきてたヤツだったのかよ!」
化け物「だぁ〜〜〜っ!!」
一滴の血が巨大な化け物を作り出す。
これは分が悪いか……!?
悠之慎「彰衛門!一旦退くぞ!」
彰衛門「えぇっ!?なんで!?ボス目の前じゃん!」
悠之慎「多勢に無勢だろうが!」
彰衛門「馬鹿かねキミは!!
多勢がどうであろうと、退けばまた化け物作られるだけでしょう!
今だからいいのだよ!まだ数の少ない今だから!!」
そう言って、彰衛門は剣を構えた。
その剣が光を帯びると、それを確認してから突貫。
彰衛門「トテアーーーッ!!」
……どうでもいいが、その気の抜けるような掛け声はなんとかならんのか彰衛門……。
彰衛門「魔神剣!!」
突貫しながら振る剣が衝撃波を生じさせる。
それは大地を滑り、化け物の足を吹き飛ばした。
彰衛門「所詮は知能の少ない化け物!動くことが出来なきゃなにも出来ん!!」
化け物「だぁ〜〜っ!!」
ブチッ!ドボォッ!!
彰衛門「ギャーッ!」
彰衛門が吹き飛ぶ。
化け物は首を千切って頭だけを飛ばしてきたのだ。
彰衛門「いでででで……!!どこまで腐れ外道なんだお前らは!!」
一緒に転がった化け物の頭を蹴り飛ばすと、彰衛門は苛立ったようにボスを睨みつけた。
彰衛門「ったく……妙なところで中途半端だし……」
『外道さんなら頭も戻っていけよ』と愚痴をこぼす。
よく解らんが、緊張感がまるで無いことは確かだった。
そうこうしている間にも化け物の数は増え、彰衛門が頬をカリコリと掻いた。
彰衛門「面倒だから全部吹き飛ばしていい?」
悠之慎「へ?あ、ああ……出来るなら」
彰衛門「オッケン!」
彰衛門がもう一度剣を構える。
その剣が光を帯びるところまでは一緒だ。
……が、その光が混沌の光を産み出し、景色が歪むのを見て『こりゃやべぇ』と思った。
逃げるが勝ちだ。
彰衛門「即席剣術奥義!えーとえーと……“名前募集中”(!!」
彰衛門が混沌の渦を放った。
剣から解放された光はその内に『相反する属性』を秘めており、
その光が破れたらどうなるかってことくらいは理解できた。
だから全力で逃走。
気づけば彰衛門も隣を走っていた。
───反発するモノは破裂する。
まるで、熱された油に水を入れるのと同じように。
それは他のものでも言えることで、
それはその力が大きければ大きいほど、破裂の規模も大きい。
───さて。
それが月操力だったらどうなるだろうか?
そう考えた末の結果が、この逃走だった。
彰衛門「うおおおおおおおお!!!目一杯飛ばせぇーーっ!!」
悠之慎「言われるまでもねぇーーーっ!!」
全力だ。
全力で走った。
いきなり逃げ去る俺達を見送ったボスの唖然とした表情などどうでもいい。
ただ走った。
ブラックホールとホワイトホールを創造して逃走した方が早いっていうのに、
それすらも忘れて走った。
いわゆる……本能ってやつだった。
───その日、ひとつの洞窟とその辺一体が消し飛んだ。
彰衛門「……派手に消えましたなぁ」
感想はそんなもん。
巨大なクレーターを見て、俺と彰衛門は呆然としていた。
彰衛門「……これさ、俺がゼノ戦で撃ったアルファレイドよりも強力だぞ……?」
『ルナカオス』と名づけられた剣を掲げて、彰衛門が溜め息を吐く。
その様子はどことなく悔しそうだった。
彰衛門「いいなぁ、創造の理力。ね、俺にくれない?」
悠之慎「無茶言うな、出来るかよそんなこと」
彰衛門「いやほら、リヴァっちに頼めばさぁ」
悠之慎「だとしても遠慮する。この能力は俺が墓まで持っていくよ」
彰衛門「そか?ま、いいけど」
ハフゥと息を吐く彰衛門だったが、そこは別に悔しそうじゃあなかった。
言ってみたかっただけなんだろう。
彰衛門「じゃ、帰るか」
悠之慎「そだな」
欠伸をしながらその場をあとにした。
───その時……俺も彰衛門も気づかなかった。
まだ『終わり』じゃなかったことに。
デゲデデッテデーーン!!
マキィーーン!!
彰衛門「闇を照らす霊訓!!……なんだっけ?」
悠之慎「いきなりなんだよ……」
神社への石段を登ってる時、彰衛門は突然奇声をあげた。
が、意味不明だった。
彰衛門「えーと……のんのん?」
悠之慎「だから、なんのことだよ」
彰衛門「……覚えてません」
そんな遣り取りをしながら登る。
こいつの行動が意味不明なのは今に始まったことじゃないとはいえ、これは疲れる。
けど退屈しないのは確かだった。
人って奇妙なバランスで保たれてるんだなぁと思う秋の日だった。
───
神社に戻った俺達は、そのお堂に座りながら話をしていた。
いい加減に考えなきゃならないことだ。
悠之慎「どうしてこの時代に飛ばされたんだと思う?」
つまりはこういうこと。
解らないのは俺達がこの時代に来た理由だ。
彰衛門「俺に『その後』を見せたかったとか」
悠之慎「それにしたってだ。
普通、お前が連れてきた女の子が苦しんでる時に飛ばすか?」
彰衛門「む……そりゃ確かに」
解らないことだらけだ。
けど、無意味だとは考えたくない。
彰衛門「考えてみりゃあ夜華さんもほっぽったままだった。
社には寝かせてきたけど、それからどうなったか……」
悠之慎「篠瀬?あいつ確か具合が悪いって……原因はなんだったんだ?」
彰衛門「ヤボですよ、悠之慎さんや」
悠之慎「へ?……あ、なるほど……」
意味も無く、双方ともに溜め息が出た。
彰衛門「もしかしてこの時代にアレに効く薬でもあるんかな」
悠之慎「この際ソレは忘れていいと思うぞ。
あるんだったら現代まで伝わってると思うし」
彰衛門「そりゃそうか。じゃあ……娘ッ子に関係することかな?」
悠之慎「娘ッ子?……ああ、お前が連れてきたヤツか?」
彰衛門「そそ。南城菜苗とかいったかな。
そのおなごに関することが、この時代にあるのやも」
そうかもしれないが、あったとしてもそれは俺達が気づけることなんだろうか。
いささか不安である。
悠之慎「これからどうする?もしその菜苗って子のことがこの時代にあるとしても、
俺達がそれに気づけるかどうかは別問題だろ?」
彰衛門「む。そりゃそうだ。
でもまあ解りづらすぎるってんなら、
冥月刀もこんなところに飛ばしたりはしないでしょ。気楽に行こう気楽に」
悠之慎「……ほんと、平和で羨ましいよお前……」
呆れを含んだ溜め息が出た。
───その時だった。
彰衛門「───おい、悠之慎」
悠之慎「ああ、急ぐぞっ!!」
悲鳴が聞こえた。
それは驚いたとか、そんな次元のものじゃない。
恐怖の悲鳴だ。
俺と彰衛門は急いでお堂から出て、その声の発生源を探した。
そして───
彰衛門「悠之慎!こっちだ!」
悠之慎「ああっ!」
彰衛門の声のした場所に駆け、その場へ辿り着く。
そこに……アイツが居た。
ボス 「グ……アアアア……!!死なぬ……マダ……だ……」
化け物のボスだ。
あの爆発で生きてやがったんだ。
嗄葉 「っ……!!」
そしてそいつの視線の先には、嗄葉だけが居た。
ボス 「感じるぞ……!アイツラと同じ……だが、それよりも元に近しい力……!!
ソウカ……!違和感を感じたが、貴様が祖なのだな……!!」
嗄葉 「え……?」
ボス 「時間転移か……!!忌々しい……!!根絶やしにしてくれる!!」
襲いかかるボス。
俺と彰衛門は駆けた。
今度は転移もブラックホールも使って。
だがあいつの死に際の一撃には間に合わない。
絶望を感じた。
───が、その時。
嗄葉を庇うように飛び出したひとつの影があった。
ボス 「ナッ───!?」
嗄葉 「あ───!!」
それを見ていた俺達は叫んだ。
ボスが突き出した腕はソイツにめり込み、一瞬で致命傷だと解った。
だが───そこに傷は無く、腕がめり込んだ場所にボスの影が埋まってゆく。
ボス 「グッ……!一度発動させた呪いは止められン……!!
だが……クックック……!庇ったということは大事な人なのだな……!?
せいぜい苦しむがいい……!
まずは貴様を蝕み、そして……貴様と魂を同じくした者をも蝕んでくれる!!」
ボスはそう言い残し……嗄葉を庇った者。
つまり……風太の中に消えていった。
風太 「あ……」
嗄葉 「ふーたくんっ!」
風太が倒れた。
俺と彰衛門はすぐに駆け寄り、その状態を見た。
彰衛門「……!すげぇ汗と熱だ……!」
悠之慎「呪い、とか言ってたよな……!どういうことなんだ……?」
彰衛門「……!」
彰衛門は首を振った。
俺だって訳が解らない。
ただアイツが俺達を恨んで、そして……その先祖である嗄葉を狙った。
それを庇った風太は、アイツの言う『呪い』に侵された。
だが……呪いってのはなんだ?
治せるものなのか……?
……考えてみたが、まるで思考が纏まってくれなかった。
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