───気づかなかったホルマジオと兇國日輪守のその先───
───話してやる
彰衛門「しょぉおおお〜〜〜〜がねぇええなぁああ〜〜〜〜っ!!
そこまで知りたいっていうならよォオオ〜〜〜っ!!
教えてやるぜナランチャァアア〜〜〜〜ッ!!!」
みさお「ならんちゃ……?」
彰衛門「なんでもないから忘れなさい」
みさお「はい」
素直にコクリと頷くみさお。
ああ、いい娘だ。
彰衛門「あの石塚にはな、
俺と……悠之慎ってゆう俺の親友が作り上げた剣が封印されてるんだ」
みさお「剣、ですか」
彰衛門「ああ。『月操剣-ルナカオス-』。作ったはいいけど、ちょっと力が強過ぎてな。
大きすぎる力は災いを招く。だから封印したんだ」
みさお「そうだったんですか……」
彰衛門「ああ。だから興味本位で封印を解いちゃダメだぞ?
あれの封印を解くのは、
恐ろしいバケモノとかが現れてどうしようもなくなった時だけだ」
みさお「わたしには扱えませんよ、きっと」
彰衛門「……そうかもな」
神の子ってだけで、月操力との関係があるとは限らんし。
剣を持ったところで力の引き出し方もなにも解らないだろう。
……もっとも、それはあの剣が『家系の者にしか使えなければ』の話だが。
もし普通の人にも使えるなら、これほど厄介な武器はない。
彰衛門「ま、とにかく封印されてるってこと。覚えておくように」
みさお「はーい」
手を挙げて返事をするみさお。
……やっぱ可愛いかった。
───ザーーー……
彰衛門「はあ」
雨が降っている。
そんな中でも、俺は社の様子を見ていた。
みさおと遊ぶようになってから4年。
俺は相変わらずの馬鹿だった。
彰衛門「ま、馬鹿は風邪引かないって言うしな」
インフルエンザにならなるって証明はされてるけど。
彰衛門「………」
雨に濡れた大樹を撫でる。
今よりもっと過去に生やした大樹を。
彰衛門「……お前とも、もう長いな。いつも社を見守ってくれてありがとう」
ガラじゃないとは思ったけど、自然と出た言葉に偽りなんて無く。
俺は自分の言葉に妙な照れを感じて、雨の降る空を見上げた。
見上げた視界すらもすぐに雨に滲み、その先を見ることは出来ない。
彰衛門「……お?」
ふと視線を下ろすと、社の縁側(?)で俺を見上げるみさおが居た。
その顔が『なにをしてるんですか、風邪を引いてしまいます』と言っていた。
俺はみさおに『気にするな』と返し、その場に寝転がった。
大樹のてっぺんは太い枝が密集しているから寝転がったって平気なのだ。
彰衛門「……てゆうか大樹の部屋に入ればよかった」
隆正のために用意した部屋を思い出した。
けど、あれは隆正のために用意したものだ。
雨が降っているという理由程度では、入ろうなどとは思わない。
彰衛門「……そういや、ずっと風太の小屋に帰ってないな」
悠之慎達、なにやってるかな。
噂では、そこにはもう立派な屋敷が建ってるとか。
もちろん、もう『蒼麻風太』は居ない。
子を作り、やがて……呪いに蝕まれながら逝った。
俺はそれに立ち会えなかったけど、悠之慎が言っていた。
『辛そうな顔じゃあなかった』って。
……それだけで十分だった。
彰衛門「……よし、戻ってみるか」
寝かせていた体を起こすと、俺は大樹から飛び降りて走り出した。
彰衛門「忍者、人にして人にあらず!
日に百里の道をも歩む我がスピードに恐れ慄くがいい!!」
ズドドドドドド……!!
彰衛門「ごめん、歩んでなかった」
誰にともなく謝ると、俺はゆっくりと歩きだしたのだった。
…………。
彰衛門「腹減ったな……」
考えてみればここ数年、まともなモノを食ってない。
それというのも、かつて神を名乗った時に豊にした畑の爺さんの末裔の手伝いをして、
立派なレタスを育てようとしたのだ。
が、この時代の日本にレタスなど存在しとらんかった。
だから大根を育てた。
そして食った。
生で。
彰衛門「腹減った……」
ここ数年の俺の食事情の記憶は大根と果実くらいなものだ。
久しぶりに米とか麺類が食いたい。
彰衛門「……ちと月操力の消費激しいけど……プレイスジャンプするか?」
歩くのが面倒になってきた。
ちと遠いよ。
彰衛門「……いや、最近運動不足だし……走るか」
無闇に月操力使う癖は直すべきだ。
よし行こう。
───……。
男 「号外〜!号外〜!!」
彰衛門「んあ?」
ふと立ち寄った村で、謎の紙が配られていた。
それによると……
彰衛門「黒き衣を纏いし者達……?」
よく解らんが、極悪な女が村人を襲ったらしい。
つまり、そいつを捕まえてくれとか……そういう類のものだろう。
俺としてはどうでもいいんだが、その後の文字が心を擽った。
『褒美は米一年分なり』
彰衛門「米!?」
米……!?米一年分!?
彰衛門「……どのくらいなんだ?」
俺、大食らいだし……一年保つことを保証してくれるのだろうか。
謎だ。
彰衛門「ま、いっか。どうにもならんことって結構あるし。
村人が躍起になってるワリに、捕らえた報せが無いとこを見ると……
相手さんは相当の達人ってわけだ」
なにせ、この時代で『極悪』とか書かれてる女だ。
案外平気で男どもの黄金を蹴ったりするんだろう。
彰衛門「……想像したら怖くなった。やめよ……」
メシは風太小屋方面で食わせてもらうとしようか……───バサッ!!
彰衛門「ぷおっ!?」
米一年分を諦め、歩き出した途端……顔面に紙が飛んできた。
それは少し汚れていたが……どうやらさっきの号外に似たようなものらしい。
ただ……
彰衛門「食い逃げ常習犯の……桜、純之上?」
純之上……どっかで聞いた名前だな。
誰だっけ?
彰衛門「………」
思い出せん。
彰衛門「しっかしすごいなぁこの似顔絵。
意地でも極悪な顔にしようと躍起になって描いたのが手に取るように解る」
恐らくこれを描いた人は、相当にこの純之上や極悪な女に恨みがあるか……
ただ単に性格が捻れてるかのどちらかだろう。
……ああ、面白いからって方向もあるか。
彰衛門「どちらにしても、腹減った」
号外を投げ捨て、俺は先を急ぐことにした。
───……。
彰衛門「マルちゃん『赤いきつね』食いてぇ……」
腹が鳴っていた。
気をしっかり持たないと、誰かに噛みついてしまいそうで怖い。
ま、あと少しの辛抱だ。
頑張ろう。
───……。
腹減った。
目の前には新鮮野菜。
盗めば腹は膨れる。
しかし『お尋ね者』になるのはイヤだ。
ここ最近、異様にお尋ね者が増えてるみたいだし。
その一員になるような行為をするわけにゃあいかん。
俺がとっ捕まった時、仲間だと思われて尋問されるやもしれん。
……俺の目の前に、野菜なんて最初から無かったのさ。
先を急ごう。
───……。
彰衛門「……あれ?」
ふと目に付いた通行人。
てゆうか……悠之慎?
彰衛門「おーい、悠之慎───あれ?」
青年 「ん?なんだよ」
彰衛門「……誰?」
似てるんだけど、違った。
青年は俺を見ると首を傾げ、そのまま歩いていった。
もちろん俺もそのまま別れる筈だった。
───その青年の傍に浮く、死神に気づかなければ。
彰衛門「……これ!そこの貴様!」
???「………」
彰衛門「貴様だ貴様!なにシカトしてんだオラ!やンのかコラ!」
???「……え?わたし?」
彰衛門「そうだこの野郎!」
???「……先に言っておくけど。わたし、野郎じゃないわよ?」
彰衛門「そげなことはどうでもいい。
何者だてめぇ……って、死神か。貴様!名を名乗れ!」
???「いきなり失礼ね……まあいいわ、騒がれるのは嫌だし……わたしは」
彰衛門「待てぇい貴様ァーーーッ!!」
謎の死神に待ったをかけるように叫ぶ。
いや、『かけるように』どころか、思いっきりかけてるけど。
???「なによ……わざわざ大きな声出さないでよ」
青年 「……なんなんだよ、お前」
青年が訝しげに俺を見る。
だが俺は青年を無視して死神に話し掛けた。
彰衛門「俺がまだ名乗ってねぇじゃねぇか!
人の名を訊く時はまず自分から名乗らなきゃ無礼だろ!?
てめぇ俺を無礼者にする気か!!」
???「………」
青年 「………」
死神と青年に冷めた目で見られてしまった。
???「あなたが名乗れって言ったから言おうとしたんじゃない……」
彰衛門「言い訳は見苦しいですよ!?」
???「……解ったから、さっさと言って」
彰衛門「よかろう」
???「……いちいち勘に障る人ね……」
ほっとけ。
彰衛門「我が名は……弓彰衛門なり!貴様は!?」
???「わたしはフレイア。フレイア=フラットゼファー」
彰衛門「なんと!?」
ル、ルナっちのママの……あのママっち!?
彰衛門「っつーことは……」
青年 「?」
こいつ……望月恭介!?
そしてここは……俺が居るべき現代から300年前あたりの世界……?
ウソでしょう!?
フレイア「なんなの?わたしが見えるなんて……あなた何者?」
彰衛門 「漬物だ。美味いぞ」
フレイア「………」
呆れられたようだ。
まあこいつらの歴史に興味は無いし……先を急ぐか。
彰衛門「それではこれで失礼する」
俺はスチャッと手を掲げると、速やかに退散した。
フレイア「なんだってのよ……」
───……さて。
彰衛門「うおう……」
ようやく辿り着いた、かつて小屋だった場所。
そこには確かに大きな屋敷が建っていた。
門番 「止まれ」
彰衛門「何故かね!」
門番 「ここは関係者以外の立入を禁じている」
彰衛門「するってぇと俺は通してくれるのね?」
門番 「だめだ」
彰衛門「なんでじゃい!!」
門番 「通行書を見せろ」
彰衛門「馬鹿野郎〜〜〜っ、そんなものはねぇ〜〜〜っ」
門番 「ならば立ち去れ」
……野郎。
彰衛門「じゃあ取り合ってくれ。この屋敷に『兇國日輪守悠之慎』ってヤツ居るだろ?」
門番 「悠之慎さま……?貴様、悠之慎さまの知り合いか」
彰衛門「そうだ」
胸を張って答える。
だが門番は思いっきり胡散臭そうな顔をしやがった。
門番 「貴様、名を名乗れ」
彰衛門「弓彰衛門という名だ」
門番 「そうか。確認を取ってくるから貴様はそこで待っていろ」
彰衛門「オレもいくぜーーっ!!」
門番 「来るな」
彰衛門「即答かよ……」
せっかくバッファローマン先生の真似をしたってのに……。
門番 「では、待っていろ」
彰衛門「わぁったよ、勝手にしろっ」
ぶっきらぼうに答えてその場に座った。
まったく、疑り深いヤツはこれだから嫌いだ……。
…………。
門番 「通れ、許可が下りた」
彰衛門「へいへい……」
門番に通され、俺は疲れながら中へ入った。
……悠之慎、お前が居ながらなんだよこの鬱陶しい門番は……。
お前、こういうの嫌いだったじゃねぇか……。
───……。
ひとつの部屋に辿り着くと、その場に悠之慎が居た。
悠之慎「……よぅ、風来坊」
彰衛門「よぅ、嫌味野郎」
お互いを見て、出る言葉もそれぞれ。
けど嫌な気分はない。
彰衛門「……あのさ。あの門番、なんなわけ?」
悠之慎「お前がいつ帰ってきてもいいように嫌がらせを設置しただけだが」
言って、悠之慎は指をパチンと鳴らした。
よく解らなかったが、なんとなく気になって外を見てみれば……
さっきの門番の姿が無かった。
彰衛門「……手の込んだことするなよ……」
悠之慎「面白かったが」
つまりあれは創造の理力で作られた操り人形だったわけだ。
中身なんてない、ただのカタチだろう。
それを悠之慎が喋らせてた……それだけだ。
彰衛門「しかし、お前も変わらないねぇ」
悠之慎「お前だってな。ま、これだけ生きて、ほんの少しだけどお前の気持ちが解った」
彰衛門「そっか?ま、死なないだけマシだけどな」
悠之慎「ああ。だから『ほんの少し』なんだ」
彰衛門「ははははっ、ならもう解ってるか?」
悠之慎「うん?」
彰衛門「───長生きなんて、するもんじゃねぇだろ?」
悠之慎「ああ、まったくだ。いくら世界が変わるからって、こりゃ飽きる」
そうして、ふたりで笑い合った。
やがて笑いが途絶えた頃。
俺達はこれまでのお互いのことを話し合った。
───そして。
彰衛門「竿?」
悠之慎「そう、竿だ」
悠之慎がそう言った。
悠之慎「覚えてるか?あの喋る竿のこと」
彰衛門「そんなんあったっけ?」
悠之慎「……知ってるのにとぼけるな、たわけ」
見透かされてました。
で、竿っていったらアレだよな?タナーカ。
彰衛門「で、タナーカがどうかしたか?」
悠之慎「ああ。さっき話した通りいろいろ大変だったんだけどな?
今回の代には呪いがないみたいだからゆっくり考えることが出来た。
そして……可能性を見つけた。それが竿だ」
彰衛門「だから、あのタナーカがどうしたって?」
悠之慎の言いたいことがイマイチ解らない。
あの生意気な竿に何ができると?───って、あれ?
なんか引っ掛かって……
悠之慎「覚えてないか?ほら、あいつの能力。破邪と、それから───」
───あ、ピンと来た。
確かあいつの能力は、破邪と……
彰衛門「…………解呪」
悠之慎「そう、それだ」
思い出した。
あの時は破邪しか役に立たなかったし、何より生意気な竿だったから投げたけど……
もし仮説が合ってたとしたら……あのボスにかけられた呪いも解けるかもしれないんだ。
彰衛門「うわ……俺馬鹿じゃん……!!竿、どこに飛ばしたか解んねぇぞ……!?」
悠之慎「ああ、だから───」
キィイイイイン……
彰衛門「おろ?」
悠之慎「へ?」
突然、虚空に冥月刀が現れた。
そして、淡い光を漏らしている。
彰衛門「……もしかして」
悠之慎「俺達ふたりが解呪方法を知ることが、帰るきっかけだったとか……?」
……いろいろありすぎて、竿のことなんぞすっかり忘れてた。
その所為でこれまでの時間を長生きしてきたと……?
彰衛門「うわ……馬鹿みてぇ」
悠之慎「まったくだ……頭痛ぇ……」
悠之慎も同じ意見なのか、頭を押さえながら溜め息を吐いていた。
悠之慎「んじゃ、戻るか?」
彰衛門「んー……」
ふと考えることは、みさおのこと。
どうしようか……
───いや、あいつには強く成長してほしいから、このまま帰ろう
───様子を見に行ってみようか
───……どうしよ?
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