───滅人刀への道───
───……
菜苗 「お待たせしました〜」
菜苗さんが戻ってきた。
その手には、クレイステーションとゲームCD。
彰利 「あら?ゲームは持ってたわけ?」
菜苗 「いえ〜、乙子ちゃんに借りてきました〜」
そう言って見せるゲームソフトは───MyMerryMeyCry。
人間と機械の子供ってゆう滅茶苦茶な男が主人公のスタイリッシュアクションだ。
普通はプレイヤーひとりしか操作できないが、実は2Pがモンスターを操れたりする。
モンスターなんぞ腐るほど居るから、なかなか飽きない人気の品だ。
菜苗 「では〜、わたしがモンスターを〜」
凍弥 「うお……普通主人公選ばないか?」
菜苗 「わたしこう見えましても〜……」
凍弥 「み、見えましても?」
菜苗 「……主役より脇役の方が好きなんですよ〜」
そう言ってコントローラーを握る菜苗さん。
ゲームはもう始まっていて、画面の中では棍棒を握るゴブリンが、
早くも主人公の『ツクール=ワン』に襲いかかっていた。
彰利 「うおっ!?」
ザシュッ!ドシュドシュズガガガガ!!!
危うかったが、剣と銃のコンボを決めて斬り抜ける。
が、安堵するのも束の間。
別のゴブリンが襲いかかってきた。
彰利 「なんのっ!ハイホレハァッ!!」
ザシュッ!ドシュドシュッ!!ガンガンガン!!
ボゴシャア!
彰利 「あれぇっ!?」
一匹に気を取られてる内に後ろから攻撃される。
いつの間にか操作モンスターを切り替えていたらしい。
菜苗 「畳み掛けますよ〜」
彰利 「やっ!ちょ、ちょっと待───」
ごしゃごしゃごしゃごしゃ!!
ワン 『ギャーーーッ!!』
画面内で、ツクール=ワンが素直な叫びで撲殺されてゆく。
で……画面にはあっさりとゲームオーバーの文字が。
彰利 「ひでぇ……画面スクロールする間もなく最初の場面で殺された……」
ヤツ……閏璃凍弥にコントローラーを渡しながらそう言う。
モンスター強過ぎだよこれ……。
───……。
凍弥 「ふむ。アクションゲームをやるのもどれくらいぶりかな」
今のゲームのことなどからっきしだ。
というか……弦月がプレイしている画面を見て、
ちょっとしたカルチャーショックを覚えたほどだ。
ゲームとは……ここまで進化するものか。
───ということで瞬殺された。
凍弥 「なぁ……もしかして」
彰利 「ああ……間違いない。
菜苗さんたら純粋なる遊びのプロだ……天賦の才ってやつだ……」
恐らく、初めてやったゲームでも好成績を残してしまうという、アレだ。
ただ南城の場合それが何気なく身について、次回からも奮闘するというものだろう。
なんということだ……。
菜苗 「ゴブリンさん……おもしろいです〜♪」
うっとりと目を潤ませながら、画面内のゴブリンに魅入ってる南城。
ある意味凄く、ある意味で不気味だ。
菜苗 「さぁ〜、どんどんやりましょう〜」
凍弥 「え───……なあ、もしかして……」
彰利 「……ああ……間違い、ない……。菜苗さんたら……」
……俺達が勝つまで、帰らせないつもりだ……。
カタカタカタカタ……
彰利 「グ、グウウ……!!」
弦月が揺れていた。
恐らく20回以上も最初のゴブリンに殺されたことで、飽きてきたのだろう。
てゆうか飽きてるのだろう。
俺だってそうだ。
ゴブリンごときに勝てない。
彰利 「ここだ!」
ザシュッ!ドシュッ!ジュバァア……───!
───しかし、弦月は何かを見切ったのか順調に進んでゆく。
そして……ボスへ。
菜苗 「まあまあ〜、ボスさんも操れるなんて夢みたいです〜」
彰利 「ふっ……俺に“至高なる未来視の墓標(”がある限り、もう負けはない!」
その言葉がどういう意味かは解らないが、弦月は順調に進んでいった。
やがてラスボスへ。
菜苗 「はぁぅ〜〜〜っ……♪なんて素晴らしいラスボスさんなんでしょう〜〜……♪」
画面には超巨大なメカボス。
巨大なレーザー撃ったりなんだりと、反則チックだ。
彰利 「トタァーーーッ!!その隙、もらったァーーーッ!!」
隙なんてなかったのに突っ込む弦月。
様々な攻撃を見事に掻い潜り、しかし───ゴシャーーーーーーッ!!!!
ワン 『ギャーーーーッ!!!!』
彰利 「あ……」
圧倒的なゲーム性能の差に、見事に敗れた。
素直な叫びを発しながら超巨大レーザーに消滅させられてゆくツクール=ワン。
ひどく痛々しい瞬間だった。
菜苗 「まだまだ、帰すわけにはいきませんね〜」
彰利 「グ、グググ……グキャーーッ!!!!」
凍弥 「おわっ!?お、落ちつけ弦月!!」
クリアを目前に滅ぼされた弦月が発狂。
頭をぐしぐしと掻き毟りながらハッとして
彰利 「とんずらーーっ!!」
その体が光に包まれてゆく!
───野郎!!ひとりだけ逃げようってハラか!!
凍弥 「させるかァーーッ!!」
ガッシィ!
彰利 「ゲゲッ!?なにしやがる離しなさい!!」
凍弥 「てめぇだけ逃げようったってそうはいくか!逃げるなら俺も連れてけ!」
彰利 「馬鹿野郎!菜苗さんのあの寂しそうなツラが目に入らねぇのか!」
凍弥 「寂しそうとか思うならツラとか言うなよ!」
彰利 「ゴメンナサイ!というわけで離せ!」
凍弥 「断わる!」
彰利 「離せ!!」
凍弥 「断わる!!」
引き剥がされそうになるのを必死に堪えながら、なんとかしがみつく。
だがその時、俺達に話し掛ける存在があった。
というか南城くらいしか居ない。
菜苗 「あらあら〜、たしかに45回も続けてやりますと疲れますね〜。
それでは次はこれにいたしましょう〜」
彰利 「む───ややっ!?それはっ!!」
凍弥 「お───」
南城が出したゲーム。
それは『ONE PIECE-グランドバトル3-』だった。
どうしてこの世代でまだこのゲームがあるのかは知らんが、これならやったことがある。
彰利 「望むところ!」
凍弥 「フッ……俺はかつて、このゲームで地区チャンピオンになったほどの実力者だ」
彰利 「俺なんてそれを買う金が無くて年中パイロットウィングスをやってた実力者だ」
凍弥 「………」
彰利 「な、なにかねその同情と哀れみを含んだ目は!!
なめンなよ!?パイロットウィングスなめンなよ!?」
凍弥 「じゃ……やろうか」
菜苗 「はい〜」
こうして、ゲームはどんどんと奇妙な方向へ。
───……。
エネル『ィヤッハッハッハッハ!!!』
彰利 「ィヤッハッハッハッハ!!!」
弦月、エネルを操作して超ご機嫌。
しかし次の瞬間には『ゴムゴムの黄金牡丹』でボコボコにされて昇天。
彰利 「…………はい」
さっきまでの無邪気な顔がウソのようにしこたま悲しそうな顔で、
俺にコントローラーを渡すのだった。
凍弥 「よし」
弦月にコントローラーを渡された俺は画面に向き合う。
結局取るのはエネルなわけだが……
菜苗 「よろしくお願いしますね〜」
凍弥 「こちらこそ」
お互いペコリと礼をした開始。
かつての戦い方を思い出しながら戦う。
菜苗 「あら〜、本当にお強いですね〜」
凍弥 「これでも結構やったんでねっ……!おっと!ほっと!」
彰利 「死ね!」
凍弥 「自分があっさり負けたからって八ツ当たりすんな!っと、お、あわっ!?」
ルフィ『ゴムゴムのォオオオ……!!黄金牡丹!!』
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォオオオッ!!!
凍弥 「あー……あらららら……負けちった……」
彰利 「殺った!!勝った!!仕留めた!!」
凍弥 「お前の所為で死んだんだぞ!帰れ!」
彰利 「うわっ!なにその子供みてぇなセリフ!
でもお言葉に甘えさせてもらうわ!プレイスジャンプ!!」
凍弥 「させるかぁっ!!」
ガッシィッ!!
彰利 「なにぃ!?離せ貴様!」
凍弥 「いいからこのまま転移しろ!!もう一日経っちまっただろうが!」
彰利 「だめだ!貴様はここで菜苗さんを楽しませるのだ!俺は知らんから!」
凍弥 「ふざけんなぁーーっ!!」
彰利 「失礼な!俺は究極に真面目で、ふざけてなどおらん!!」
菜苗 「さ〜、次は彰利さんの番ですよ〜」
彰利 「グムッ!?」
凍弥 「ご指名だぞ。まさか……逃げないよな?」
彰利 「逃げる!?この俺様がかね!?冗談ではないわ〜っ!!勝負だ菜苗さん!!」
菜苗 「はい〜」
───……さて。
自分のことにはてんで疎かった俺だが、他人事となるとそうでもない。
そして……そこなお嬢さんは弦月に好意を抱いている!!
……いや、ウソだぞ?
ただ南城が誰かを好きなのは確かだ。
ありゃああれだ、いつかの由未絵みたいな目だ。
由未絵(凍弥くんっ!それってどういう意味!?)
凍弥 (なんでもない。
てゆうかお前、夕の中から出てきてからというもの怒りやすいぞ)
由未絵(そんなことないもん)
凍弥 (まあべつにどうでもいいが)
由未絵(うぅ〜……凍弥くん、構ってよぅ〜)
凍弥 (また今度な)
ルフィ『黄金ライフルゥーーーッ!!!』
ドゴォオオオオン!!
彰利 「ゲゲーーーッ!!」
ふと気づくと負けてる弦月。
それとは逆にほくほくと勝利を噛み締めている南城。
彰利 「………………恐れ入りました」
菜苗 「いえいえ〜」
凍弥 「なぁ、そろそろおいとましたいんだが」
菜苗 「お帰りですか〜?それはしょうがありませんね〜」
パチッ、とゲームの電源が落ちる。
南城がゲームから離れて立ちあがる。
菜苗 「それでは、またいつかお相手してくださいね〜」
彰利 「オウヨ!次こそは勝たせてもらうぜ!?」
凍弥 「俺もこのままでは終わりたくないな」
……もっとも、また来れるかどうかは解らない。
こうして霧波川凍弥の中に入ってはいるが、それは『奇跡の魔法』との同化に近い。
霧波川凍弥の中には大きな存在として『奇跡の魔法』が存在する。
その中に入って消滅しないように手伝うってことは、やがて同化へと向かうこと。
俺の意識がいつまでこうして現れることが出来るのかも解らない。
恐らく、そう長くはないだろう。
凍弥 「また、出来るといいな」
菜苗 「はい〜」
彰利 「……そうだな。また、出来るといいな」
凍弥 「───?」
弦月もなにか思うことがあるようで、寂しげな顔をしながらそう言った。
それがどうしてかはよく解らなかった。
けどそんな寂しげな顔も数瞬で、すぐにもとに戻った。
彰利 「じゃあな、菜苗さん。刀、ありがとう」
菜苗 「はい〜、またいらしてくださいね〜」
凍弥&彰利『───ああ』
多分、もう来れない。
すぐに思い立って寄らない限り。
けど、それをするほど俺達には余裕が無いのかもしれない。
どうしてか解らないけど……そんな感じがした。
───……。
彰利 「うっしゃあ次だ!次は───晦神社の地下だ!」
凍弥 「地下?」
というか、何故俺は連れ回されてるんだ?
……不思議だ。
凍弥 「なぁ、別に俺を連れ回さなくてもいいんじゃないか?」
彰利 「そうはいかん。貴様は大事な」
凍弥 「……ああ、解った。スケープゴートだって言いたいんだろ?」
彰利 「なにぃ!?何故解る!」
凍弥 「俺がお前なら絶対にそうするからだ」
彰利 「オオ、いい度胸しておるわ」
ニヤリと笑う弦月。
けど、俺は遠慮することにする。
凍弥 「けどな、俺はここらでおいとまさせてもらうぞ」
彰利 「……なにを言っているのだ?」
凍弥 「へ?なにって」
彰利 「貴様を晦神社に連れていくことは用件としてちゃんとあるんだぞ?
貴様が断わろうと、小僧は連れていかなけりゃならんのだ」
凍弥 「……ふむ。あの女のことでか?」
彰利 「ま、そんなとこだ。っつーわけだから、もうちょい付き合え」
凍弥 「……やれやれ、面倒なことになったな……」
結局逃げられないらしい。
ちょっと柾樹と話そうかと思ってたのに。
───キィンッ!!
彰利 「よっしゃ到着!」
凍弥 「便利だな」
彰利 「だろ」
晦神社に到着。
見渡してみても───ぬう、夜華さんが居ないな。
まだぐったり中かな?
そんなに長引くもんなのかな。
彰利 「ま、いいか。えーと地下室への入り口はっと……」
凍弥 「お、おいおい、勝手に入っていいのか?」
彰利 「あ〜ん?そんなもん俺なら顔パスだぞ?ほれ行くぞ」
凍弥 「……滅茶苦茶不安なんだが」
彰利 「じゃーじょーぶじゃい!ほれ行くぞえ!」
うだうだ言う閏璃を導く。
たしかお堂に隠し通路があったんだったよな。
───……。
コツ、コツ、コツ……
暗い通路の階段を降りてゆく。
彰利 「寒いし湿気臭いし……。ええい、手入れされてねぇな」
凍弥 「気をつけろよ、コケで滑るかもしれない」
彰利 「コケでコケッと?プッ、ダセェ」
ズルドシャゴシャゴシャベキャキャキャキャアアア!!!!
彰利 「オベボベゴゲガボグベベベベベ!!!!!」
階段に生えたコケでコケた弦月が階段を踏み外した上で豪快に落ちてゆく。
やがて見えなくなるまで叫びは続き、
しばらくしてからようやく『グビグビ……』という声が聞こえた。
どうやら落ちついたらしい。
しっかし……足下がてんで見えないな。
こりゃヘタすると俺もズリャア!!
凍弥 「おひゃあっ!?わっ!?とっ!たわっ!たっ!とっ!!
あ、あわぁああああっ!!!!」
どがしゃしゃしゃしゃしゃあああああ!!!!!
凍弥 「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」
………………
ガタッ!ゴトトッ!
彰利 「むぎっ!」
凍弥 「う、ぐ……?」
ふと気づくと、彰衛門を潰していた。
体の節々が痛いが……何事?
俺、確かにあの木の下に居て───あれぇ?
閏璃凍弥の人格がどうのこうのと関係あるのか?
彰利 「て、てめぇ……人に『松平さんの全体重』をかけるとは……」
凍弥 「まつだいら?だ、誰だよそれ……」
彰利 「どうでもいいからどけっ、さっき落ちた時に冥月刀落としたっ」
凍弥 「冥月刀?彰衛門がよく持ってるアレか?」
彰利 「……彰衛門?ってことは貴様、小僧か?」
凍弥 「……なんだいそれ。って、そっか」
俺の中には閏璃凍弥の人格があるんだっけ。
ってことは、やっぱりここに来たのは閏璃凍弥の仕業か。
彰利 「冥月刀はどこだ……冥月刀は……!」
凍弥 「……?」
彰衛門はなにか焦った風に冥月刀を探した。
それは……なんてゆうか、人を心配するような感じで。
コツンッ。
凍弥 「うん?」
足に何か当たった。
拾い上げて見ると、それは長い棒状のようなものだった。
キィン!キィン!!
凍弥 「うわっ!?」
彰利 「オウ!?」
それは刀だった。
音を鳴らしながら、また『泣いている』ように感じた。
刀は淡く光を漏らし、俺の手元を輝かせる。
それを見た彰衛門がそれを手に取ろうとして───思い留まった。
凍弥 「……彰衛門?」
彰利 「お前が持ってろ」
凍弥 「え……どうして」
彰利 「いいから」
凍弥 「………?」
訳が解らなかったけど、刀は鳴り響いていて五月蝿かった。
どうしたもんかなぁ。
あ───もしかして奇跡の魔法かなんかに同調してるのか?
それなら有り得るかも。
どうして泣いてるように聞こえるのかは解らないけど。
彰利 「月醒力───月醒光」
彰衛門が暗闇に光を放った。
それは闇の虚空に留まり、その部屋を照らす。
彰利 「ほほう、こうなってるのか」
どこか肌寒い石造りの隠し部屋の中、彰衛門が辺りを見渡す。
言ってみればそこは本当に隠し部屋って感じで、
床には何処から流れているのか、幾筋の溝に水が流れていた。
そしてその幾筋もの溝の集中する、部屋の中央。
そこは大きな穴になっていて、そこに水が溜まっていた。
それがどうやって一定の水量が保たれているのかは謎だ。
凍弥 「………」
彰利 「………」
ああ、アレだ。
中央の水の底に、刀がある。
……サビたりしないのか?
彰利 「ン〜〜〜♪」
ピチョンッ。
彰利 「クヒィイイーーーーーーーッ!!!!!」
水に触れた彰衛門がその指を押さえて歯を食い縛った。
とんでもなく冷たいようだ。
彰利 「……こ、氷並の冷たさなんだけど……」
凍弥 「んなバカな」
傍に寄って触ろうする。
彰利 「シャラッ!」
ガツッ。
凍弥 「へっ───?」
その刹那、彰衛門が俺の足に刀の鞘を引っ掛けた。
凍弥 「とわっ!?お、おわぁっ!?」
ガボシャアアアン!!!
凍弥 「ヒギャーーーーーッ!!!!」
───…………。
───ガチガチガチガチガチ……!!
凍弥 「が、がががが……!!」
気づけば俺は凍えそうになっていた。
こりゃ冷たい。
どうしてか冷たい。
なんで俺がこんな目に……!?
彰利 「貴様……閏璃?」
凍弥 「そうだよっ……!!てゆうかお前、なにしやがった……!!」
体が冷たくてしょうがない。
気を抜くと気絶してしまいそうだ。
彰利 「なに、ただその水に落としてから引き上げただけだ。
ホレ、見えるだろ?その水の中にある刀が必要なんだ。だから行け」
凍弥 「お前が行けっ!」
彰利 「なんだとてめぇ!俺に凍え死ねってのか!?」
凍弥 「ああそうだ、死ね」
彰利 「直球!?てめぇ人の皮を被った魔王だね!?この魔王フロスティン!」
凍弥 「魔王言うな!」
やがて始まる悶着。
俺と弦月は取っ組み合いと同時に言い合いを始め、ギャアギャアと騒いだ。
その時だった。
ズルッ。
彰利 「あらっ?」
凍弥 「ぬおっ?」
足が滑った。
やがて俺と弦月の体は部屋の中央の水へと───!!
彰利&凍弥『イ、イヤァーーーーーッ!!!!』
ガボシャアアアアン!!!
凍弥&彰利『ッッ───…………!!!
キィイイイイイイヤァアアアアアーーーーーーッ!!!!!!』
───後、鼓膜を破壊せんばかりの絶叫。
思わず泣き叫びながら石床へと上がった。
彰利 「キャーーーーアアアア!!キャアアアアア!!!」
凍弥 「ギャアーーーーッ!!!!ウギャアアアア!!!」
あまりの冷たさに体が麻痺したような感覚に陥る!!
寒ッ!!冷たッ!!死ぬッ!!これは気絶モンだッ!!
ぬおお、ただの外気がここまで暖かく感じられるとはッ!!
彰利 「ヒョッ……ヒョーーッ!!ヒョーーーッ!!!死ぬ!死ぬってこれ!!」
凍弥 「お前なら逝ける!!逝け!!」
彰利 「お前何気に俺に死ねって言ってるだろ!!
『いけ』の部分にあの世行きの思いを感じたぞコラ!!」
凍弥 「安心しろ、俺はお前がどうなろうと祝福する」
彰利 「死んで祝福されても嬉しくねぇ!!」
凍弥 「大丈夫、お前なら出来るさ……」
彰利 「う、閏璃……って結局死ねってことじゃねぇか!!グーで殴るぞこの野郎!!」
凍弥 「その前に取ってこい」
彰利 「イエッサー!!なんて言うと思うかてめぇ!」
凍弥 「言ったじゃないか」
彰利 「───ああっ、確かに!そんじゃ行ってきま〜す♪」
ガボシャアアアン!!!!
彰利 「ギィイイイイイイイイャアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!
ンンンンンンンンンンンンンォオオオオオオオオオッッッ!!!!!!」
ばしゃっ!がぼしゃっ!ざぼ、ざぼ……ざ……ぶくぶくぶく……
あ、沈んだ。
ああ……弦月の体が刀の傍へと沈んでゆく。
凍弥 「助けないとなぁ……───ん?」
ふと、自分の手にある刀を見た。
これは確か、弦月が持っていた刀だった筈だ。
……試しに刀を抜いてみる。
そして語りかけてみる。
この刀には強い意思が感じられるからである。
凍弥 (───なんとか出来ないか?)
刀 (───…………)
凍弥 (流石に見捨てるようなことは出来ないんだ。頼むよ)
刀 (───当たり前です。見捨てられるわけがありません。
ですが、わたしは一定の能力が無ければ───)
凍弥 (ふむ……俺じゃあ無理か?)
刀 (……できます。けど、使わせるわけにはいきません)
凍弥 (───なるほど、奇跡の魔法か)
刀 (はい。ですから)
凍弥 (ああ、解ってる。俺だってこいつにも誰にも消えてほしくないからな)
刀 (すいません)
───さて困ったぞ。
どうする?
刀 (と───いえ。あの、すいません)
凍弥 (うん?)
刀 (わたしを水の中に投げてください。
触れることが出来れば、能力を発動出来ます)
凍弥 (いいのか?)
刀 (なにがあっても折れも錆びもしませんから。どうぞ、安心してください)
凍弥 (───わかった)
刀の言葉を聞き入れ、水の中に刀を投げ入れた。
───やがてその刀が弦月の手に当たると───ヒィンッ!ボゴォンッ!!
彰利 「ブッハァーーーーーーーーーッ!!!!死ぬところだったぁーーーーっ!!!」
少々の蒸気を上げる水───いや、お湯から這い出る弦月。
彰利 「がはっ……!あ、ああ……!助かったよ……!」
刀に語りかける弦月。
どうやら───刀のなんらかの力で水を沸騰させたらしい。
彰利 「っつーわけで……刀持ってきたぞぉ……」
で、水の底から拾ってきたであろう刀を見せる弦月。
が、喜びも束の間、ガコンという音が聞こえた。
見れば水がズゴゴゴゴゴと吸い込まれてゆく。
ああ、イヤな予感がする。
彰利 「……えーと。
そういや前に刀の合成やった時、
滅人刀はルナっちが持ってきてくれたんだっけ。
俺、これからどうなるか解らんのだけど」
凍弥 「とんずらぁーーーっ!!」
彰利 「おわっ!?ひでぇ!ひとりで逃げるかよ普通!ま、待てコラァ!!」
ドッパァーーーン!!
凍弥 「おぅわっ!?」
彰利 「キャーッ!?」
吸い込まれていってた水が一気に噴き出した。
そして一定量を無視して、どんどん増えてゆく。
凍弥 「水死させる気かぁっ!なんとかしろ弦月!」
彰利 「無茶言うな!どうしろっていうんだよ!」
もちろん逃げるのみだ。
俺と弦月は我先にと石段を駆け登った。
しかしコケがあるため、思うようには走れない。
すげぇ、この罠作った人天才だ……。
彰利 「ゴールドエクスペリエンス!!」
ドッゴォ!
彰利 「コケに月然力を吹き込んだ。
これによりコケは急成長をし、しっかりとした足場を作る」
ズルドシャア!!!
凍弥&彰利『ぐはぁーーーーーっ!!!』
思いっきり滑った。
凍弥 「ボケなのかお前は!コケ増やせばコケるの当たり前だろうが!」
彰利 「コケでコケるだって……プッ、ダセェ」
凍弥 「そんなこと言ってる場合かっ!」
ズゴゴゴゴ……!!
彰利 「ゲェーーーッ!!水かさが増すのが早い!!」
凍弥 「ああくそっ!!」
形振り構わず、俺は両手両足で這うようにして石段を駆け上った。
彰利 「あ……そういや俺、空飛べたよね。それ以前にプレイスジャンプできるし」
凍弥 「………」
彰利 「いやん、そう睨むなよ。というわけでプレイスジャンプ!」
キヒィン!!
凍弥 「な、なにーーーーっ!!?」
なんということか!
弦月は俺を置いて自分だけ逃げやがったのだ!!
凍弥 「あ、あの野郎!!絶対スリッパで殴ってやる!!」
迫り来る水に襲われながら、俺はまた這うのだった。
てゆうか水冷たッ!!冷たさが戻っちまってる!!
凍弥 「こっ……根性ーーッ!!」
それでも……というか、だからこそ走る!!
凍弥 「お───ってなにぃ!?」
やがて見えて来た入り口付近。
しかし上から石が降りてきて、その出入り口を塞ごうとしている。
ああもう!ここまでするかね普通!!
まさか日本でこんな冒険するとは思わなかったよっ!!
凍弥 「ほぅりゃあっ!」
ズザザーーッ!!
石が降りかけようとした時、俺は石床を滑るようにして、それをくぐった。
邪魔で仕方が無かったコケが、滑りを手伝ってくれたのだ。
そして俺の後ろでは、ズズンと石が降りる音。
それを見て、安堵の溜め息を吐きまくった。
しかし……これで見事に生還!
俺は喜び勇んで先のお堂への道へと振り向く。
凍弥 「キャーッ!?」
喜んでなどいられなかった。
今度はそのお堂へと通じる道の天井が降りてきているのだ。
凍弥 「あ、あいつ殺してやる!!」
俺はひとりでさっさと逃げやがった弦月へと、そんな言葉を贈った。
───ズズゥン……!!
凍弥 「げはっ……げはーーっ!!げはーーーっ!!」
し、死ぬかと思った……!!
あと少し遅かったら、今頃……!!
凍弥 「はっ……はー……!!」
息を吐き散らしながら、お堂にある掛け軸の裏を見てみる。
と、入り口のようなくぼみの先には石だけがあった。
ゴツゴツと、容赦無く硬い。
あと少し遅かったら今頃、これの下に居たってことだ。
凍弥 「こんな墓標……冗談じゃ済まないぞ……」
どれだけ迷っても成仏出来ないなと思った。
彰利 「やあ友よ。壮健かい?」
凍弥 「助けに来いよお前ぇえっ!!」
彰利 「知らんの?自己が危険にさらされた場合、誰かを犠牲にしてもいいんですよ?」
凍弥 「お前の場合、別に俺を見捨てなくても十分に助かっただろうが!!」
彰利 「すまん、あまりの恐怖に逃げ出してしまったんだ」
凍弥 「目ェ見て言え!」
彰利 「愛してる!」
凍弥 「そんな気持ち悪いこと、人の目ェ見て言うな!」
彰利 「ええいアレもだめコレもだめと、口五月蝿ェ野郎だね!!」
凍弥 「俺ゃたった今死ぬところだったんだよっ!この体は俺の体じゃないんだぞ!?
巻き込んだんなら丁重に扱え!!」
彰利 「すまん、あまりの恐怖に逃げ出してしまったんだ」
凍弥 「それはさっきも聞いたわい!!」
声 「五月蝿いな……なんの騒ぎだよ」
───!
彰利 「なにやつ!?」
凍弥 「まさか盗人!?」
悠介 「それはお前らだろうが」
ごもっとも。
彰利 「なんだ悠介か。なに?なんの用?」
悠介 「なんの用か、じゃなくて……。
お前ら勝手に人の家宝を持ち出して、どういうつもりだ」
凍弥 「ほらみろ、やっぱり確認とるべきだっただろうが」
彰利 「なにを言うか。あー、ホレ、アレだよ悠介。
冥月刀作るためにいろいろするって言ったじゃん。今それの最中」
悠介 「……だったら話くらい通せ。そしたら罠の解除くらいしてやった」
彰利 「………」
凍弥 「………」
ふたりして固まった。
特に、死にかけた俺はかなり固まった。
凍弥 「お前……」
彰利 「お、落ちつきたまえ!俺はトラップがあるなんて知らなかったんだ!
仕方ないじゃない!!ね!?解るでしょ!?」
凍弥 「解るかっ!!お前に礼節ってもんがないからこんなことになったんだ!!
お前の所為で俺はあの石の下敷きになってたところだったんだぞ!!」
彰利 「な、なんだって〜〜〜っ?そうなのか〜〜〜い?」
凍弥 「───晦、手伝ってくれ」
悠介 「解った、任せておけ」
彰利 「え?あ、あれぇ?なんでふたりして俺に近寄ってくるのかな……?
しかも指ポキポキ鳴らして……はは、やだなぁほんの茶目っ気じゃないか。
え?え?な、なんで?どうして拳を振り被るの?どうしてアタイ目掛けてなの?
ちょっと待ってほしいな───待───」
ボゴシャドゴシャゴシャドカゴチャゴチャ……!!
───……。
彰利 「グビグビ……」
弦月が殴られ続けてノビた。
その原因のほとんどは、容赦ない晦の拳によるものだ。
凍弥 「は〜ぁ……しばらく居ない内にこの世界も変わったんだなって思うよ……。
なんだってこんな目に遭わなきゃならないんだか……」
悠介 「それだけ巻き込まれるような場所や人に恵まれたってことだろ」
凍弥 「そりゃそうだ。俺だって騒がしいのが好きな男だしな。
しかしだ。さすがに命をかけてまで喧噪の中に居たいとは思わないぞ」
悠介 「同感、だな。俺はそれを味わいすぎてる」
凍弥 「……お前の事情がどんなのかは訊かないでおくよ」
悠介 「素直に感謝する」
感謝されてしまった。
凍弥 「ってわけで晦。俺を気絶させてくれないか?」
悠介 「気絶?なんでだよ」
凍弥 「霧波川凍弥と話したいこと、いっぱいあるだろ?
弦月の話じゃあ、俺───じゃないな。
霧波川凍弥をここに連れてくることも必要だったそうだし」
悠介 「それはそうだけどな。……ま、いいか。そんじゃ───」
晦は掌に何かを作って見せると、それを俺に向かって投げた。
それは俺の体に触れると電気ショックを流し───……思考、停止。
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