──断影刀への道────
───……。
悠介 「じゃ、頼むぞ」
彰利 「オウヨ!!」
悠介 「……まったく、お前はよくよく面倒事を抱え込むよな」
彰利 「そうかえ?」
悠介 「そうだよ。案外凍弥よりもお前の方がよっぽどお節介なんじゃないか?」
彰利 「知らんよ?そげなこと」
悠介 「……ま、いいけど」
悠介がはどうしてか申し訳なさそうな顔をして、少し顔をしかめた。
彰利 「悠介?」
悠介 「あ、いや……なんでもない。最近体がダルくてな」
彰利 「相変わらず夜の営みは激しいんでゲスか?ブッシャシャシャシャシャ!!」
悠介 「ばかっ、ンなことするかっ」
彰利 「いやはや、ヤボってもんですな。そんじゃあ行くわ」
悠介 「ああ、行け、行っちまえ」
悠介に見送られ、俺は晦神社をあとにする。
その手には滅人刀と壊塵刀と冥月刀。
あとは───弦月屋敷の断影刀だな。
彰利 「いや〜、やっぱ弦月屋敷って行くのためらうよな〜」
あの屋敷にいい思い出なんぞ無いし。
思い出があるのはあの草原と木だけだし。
はァ〜ンあ、面倒よのぅ。
彰利 「まあいいコテ。プレイスジャンプ!」
冥月刀を手に、月空力を発動させた。
───で、弦月屋敷。
彰利 「……うは〜、見事にボロボロだね」
ボロボロ度にも磨きがかかるわい。
彰利 「さぁてと、こげなところに長居はしたくないからちゃっちゃと済ませるか」
崩れた玄関をくぐり、中へと入ってゆく。
すると───中はまあ外見よりは見れたものだった。
考えてみれば……雪子さんに拾われてからは一度も入らなかったんだよな、ここ。
彰利 「………」
けど、懐かしさなんてものは感じない。
その感情は『弦月彰利』が持っていってしまった。
そう、この屋敷で暮らしたのも、
あの草原の木で悠介と遊んだのも『ソイツ』であり、俺じゃない。
でも───どうしてかな。
あの木の下で悠介と遊んでたのは自分なんだって思える。
だって……その時の記憶がこんなにも鮮明だから。
彰利 「………」
時々、自分が滑稽に思える時がある。
それをなんて喩えればいいのかは難しいけれど、きっと簡単なこと。
でも答えなんてものは見つかってない。
だから……今はそれでいい。
彰利 「さっさと刀を取って帰ろう」
俺はここの子供じゃないんだから───
デゲデデッテデーーーン!!
マキィーーーン!!
彰利 「闇を照らす霊訓!呪われるのが嫌なら、肝試しなんぞやらないようにしよう!」
ハイ!吾郎さん!
彰利 「ほんとね、肝試しやって呪われて自殺とかってよく聞くじゃない?
ワシャアそれは自業自得だと思うんよ。まず誘ったヤツが悪いんだけどね?
まあそうなったら誘ったヤツが殺人犯ってことになるんだろうけどね」
まったくもってけしからん!
……というわけで、ただいま弦月廃屋内部の地下室です。
ここがもう凄まじく心霊スポットっぽくてねィェ〜〜。
思わず『ほん怖クラブ』の真似をしてしまったよ。
彰利 「でも妙だなぁ。なにやら人が通ったような痕跡が……」
月醒光で辺りを照らしながら歩いてると、よく解る。
壁についた手形とか、石床にある足跡とか。
彰利 「フッ……まだ新しい。これは最近についたものだぜ」
……探偵の真似をしても虚しいだけだった。
だって誰も居ないんですもの。
彰利 「さてと……」
そんなこんなで最下部にまで来たわけだが……
彰利 「うっひゃ〜、こりゃほんと心霊スポットだな……」
今まで刀を盗みに来た者どもの遺体だろうか。
そこら中に骨が転がっていた。
でもその中に真新しい遺体などない。
ってことは……あの足跡の主、途中で引き返したんかな。
彰利 「まあいいコテ。さぁて刀は……」
広けた部屋の中央にある祭壇のようなものに近づいてみる。
すると───ガシャッ。
ガシャガシャガシャッ……!
彰利 「ウィ?───うおっ!?」
倒れていた骸どもが起き上がって、刀を構えた。
刀っつーことは……この骨ども、昔の遺体!?
風化しろよまったく!!
彰利 「てゆうかなにで動かされてんの!?アラ不思議!不思議発見!!」
骨1 『………』
カルボーンは顎をカタカタと揺らしながら刀を振ってきた。
が、動きがノロイからあっさりとかわせる。
骨2 『……て……!』
彰利 「んあ?」
カルボーンがなにかを言った気がした。
でもまた襲いかかってくる。
今度は一体じゃなく、そこら中の骨どもが起き上がってきた。
彰利 「おわっ!ちょ、ちょっと待て!集団リンチはヒドイんじゃない!?」
骨3 『て……ぇ……』
彰利 「てめぇ!?貴様今『てめぇ』と言ったか!?」
骨4 『す……け……て……』
彰利 「透けて?
あ、いや……そりゃアンタら骨の髄まで透けて見えるってゆうか骨だけど」
骨5 『たすけて……くれぇ……!!』
ブンッ!
彰利 「ノヘラァーーーッ!!」
振られた刀を救世主避けでかわす。
救世主避けの詳細はマトリックスをどうぞ。
彰利 「お前らねぇ!助けてとか言いながら刀振るのはどうかと思うよ!?」
骨6 『た……すけて……』
ブンッ!
彰利 「神谷活心流奥義!刃渡り!」
俺は骨の持つ刀の軌道をよく見て、その白刃を手で掴んで床に叩きつけゾブシャア!!
彰利 「いたやぁーーーっ!!!」
思いっきり失敗して斬られた。
だめです!弥彦くんのようにはいきません!!
刀が折れる前に俺の手が吹き飛びます!
弥彦くん!アンタすげぇよ!
彰利 「チィくそう!こうなったら───」
俺は拳を構えてファイティングポーズを取った!
所詮骨!拳やハンマーには弱い筈!!
彰利 「ほうりゃあ!」
パコーーーン!!
骨の顔面を殴ってみると、
頭骨はあっさりと首骨から分離し、壁に弾かれて石床へ落ちた。
彰利 「うあ……すっげぇモロイ……」
が、そう思うのも束の間!
頭骨は宙を浮き、首骨へと戻ったのだ!
彰利 「うおお!?こりゃ怖い!ミステリーの匂いがする!」
デゲデデッテデーーーン!!
マキィーーーン!!
彰利 「闇を照らす霊訓!!どんな霊にもまず『のんのん』だ!」
骨全員『ハイ!吾郎サン!』
彰利 「お前らに言ってねぇよ!」
てゆうかなんで知ってんの!?
まあいいや、まずはのんのんだ。
彰利 「のんのんのんのんのんのん……」
ズバシュウ!!
彰利 「オギャワアーーーーッ!!!」
思いっきり斬られました。
戦いの最中に目を閉じて『のんのん』言うなんて、
殺してくれって言ってるようなもんだと理解した。
彰利 「馬鹿な!のんのんさんが効かないなんて!下ヨシ子先生助けてぇーーーっ!!」
解説してたのは下センセじゃなかった気もするけど、そこんところはどうでもいい。
彰利 「こうなったらあれっきゃないぜ〜〜〜っ!」
俺は腕を胸の前でクロスし、その場に片膝をついて目を閉じる。
彰利 「イワコテジマイワコテジマ!!ほん怖、五字切り!!」
そしていつの間にか立ち上がり、宙に『五』の字というか『Z』を描く。
彰利 「怪!」
骨1 『祷(!』
彰利 「おお!一緒に唱えてくれるのかね!
センキュウ恩に着るぜ!って邪魔すんなァーーーッ!!」
コパキャア!
骨1 『ギャーーーッ!!』
骨1の頭骨がまた吹き飛ぶ。
何気に遊んでないか?こいつら。
そんなことより五字切りだ!
彰利 「怪(!祷(!怖(!無(!───弱気!退散!!」
もう説明する必要もないだろうが、
この五字切りをして吾郎さんの回転ジャンプをすると、
凄まじいジャンプ力を発揮できるのだ!!
そしてそのジャンプの頂点で謎のアイテムを光らせれば弱気が吹き飛ぶのだ!
とにかくそんなわけでハイジャ〜〜ンプ!!
フォンフォンフォン……(回転ジャンプの音)───ドゴォッ!!
彰利 「ギャーーーッ!!」
ジャンプしたはいいが、天井に頭をぶつけてしまった。
そういやそうだった、ここって地下だから天井低いんでした。
人知を超えた吾郎さんジャンプを受け入れられるほどの高さなど、とてもとても……。
彰利 「くそっ、どうしたもんか」
そうこうしてる間にも、ノリのいい骨どもはノソリノソリと近寄ってくる。
骨1 『ホンコワ!ゴジギリ!』
骨2 『ホンコワ!』
骨3 『ホンコワ!』
彰利 「…………?」
なにやってんだこいつら。
しきりに吾郎さんの真似してるけど?
彰利 「えーと……おたくら何やってんの?」
骨1 『たすけてくれ……!
ここでは侵入者が行った行動がそのまま我らに振りかかるのだ……』
骨2 『もういやだ……!
誰かが死に、倒れればそいつの真似をしていなければならない……』
骨3 『たすけて……殺してくれ……』
骨4 『こんなこと、もう何百年も……』
骨5 『生まれ変わったらもう盗みなどしない……だから助けてくれ……』
彰利 「こりゃあ……」
なんとも気の毒な仕掛けだ。
彰利 「気にすんな、俺は刀を手に入れたらすぐに出ていくから。
その時に月聖力で浄化してやる」
骨6 『刀……?お前も断影刀を取りに来たのか……』
骨7 『だがもう遅い……ついこの間に来た女が持っていってしまった……』
彰利 「なに!?」
骨8 『そいつがやったのだ……貴様と同じゴジギリとやらを……』
骨9 『我らは見も知らぬゴロウサンとやらへ相槌を打たねばならなかった……』
彰利 「だからか……」
可哀相に。
骨10『だが……そいつは広間を出る前に死んだフリをしてくれた……』
骨11『おかげで我らは真似をし続けることなく倒れていられたが……』
彰利 「そこへ俺が来た、と……」
まいったなぁ。
彰利 「って、刀が奪われた!?そのおなごに!?」
骨12『いかにも……』
骨13『もうあの祭壇には刀はあらず……』
彰利 「そげな……」
ブンッ!!
彰利 「うおっ!?な、なにしやがる!」
骨14『我らは人が訪れる度にその者の真似をして……』
骨15『そしてその度にその者に斬られた……』
骨16『我らはその者の真似をし……』
骨17『幾人の者の命を奪ってきた……』
彰利 「………」
骨18『助けてくれ……』
骨19『もう……誰かが死ぬのは……』
骨20『誰かを殺めるのは……嫌だ……』
……無限地獄。
弦月がやりそうなことだ。
弦月は死神の血が濃い所為で、人の命を軽んじるクセがある。
その末路がこれか……。
彰利 「───解った。今、楽にしてやるからな……」
冥月刀を輝かせる。
そこから引き出すのは月聖力と月生力。
せめて、苦痛を感じないように逝かせてやろう。
彰利 「浄化の光よ……彼らを救いたまえ……」
力を引き出して、その光を広間の中で弾けさせる。
骨1 『ああ……浄化の光だ……』
骨2 『長かった……ようやくこの苦しみから解放される……』
骨3 『ありがとう……見知らぬ男……』
骨4 『ありがとう……』
───……。
幾回ものありがとうが、その部屋に消えた。
やがて光が消え去る頃……その場には、物言わぬ骨だけが残された。
彰利 「……ゆっくり、眠ってくれ」
その骨達に小さく頭を下げた。
───もし、『弦月』に育ててもらった恩があるとするなら……これでチャラだ。
そしてそれは、この骨達には関係ない。
だから俺は、ただ頭を下げた。
弦月の尻拭いをすることになるなんて、思いもしなかったけど。
彰利 「……で、刀は無いんだよな……」
まいった。
でもまあ、案外別のものを持っていって、刀はあったりするやもしれん。
一応祭壇は覗いてみよう。
───バチィッ!!
彰利 「ガアッ!?ぐ、ぐああああああっ!!!」
祭壇に登り、その先の小さな塚に手を伸ばした途端、
言いようの無い激痛が俺の中を駆け巡った。
彰利 「これはっ……月壊力……!?ンな馬鹿なっ……!
今までの歴史の中で、開花出来たのは俺だけじゃあ……!」
でも、これで理解できた。
こんなチンケな地下室の仕掛けごときで呪われるわけもなく、
あの骨どもが彷徨っていた理由も、この中途半端な月壊力にあったわけだ。
思うに、この月壊力は完全に操れていないヤツが仕掛けたものだ。
けど、『月の家系の者を否定する』という意思が込められてる。
恐らくこうだ。
最初にここに盗みを働きに来たヤツは月の家系の誰かだった。
そしてそいつはこの激痛に襲われ、死亡。
亡者となって、次に現れたヤツに助けを求めるが、
斬られ……真似をしてそいつを斬り殺し、そいつも亡者となった。
……そこからはもう、語る必要もないだろう。
彰利 「誰だか知らねぇけどひでぇことしやがって……!!
俺の時代ではこんなモン無かったぞ……!!」
歴史はその時その時で常に変動している。
とはいえ、ここまで大きな違いがあるものなのか……。
彰利 「冥月刀……月蝕力でこの力を蝕んでくれ……!」
冥月刀を構える。
───が、その途端、俺の思考に流れてくるものがあった。
それは───
───……。
月永 「………」
小さな小屋のような家に、ひとりの男が居た。
密集した木々に隠れるようにしてある家は寂しく、けれどどこか懐かしい。
男は月永(といい、その姿は……俺みたいだった。
髪はボサボサ、ヒゲも生えて、
その顔は判断しにくいけど……どうしてか、俺だって感じた。
そいつは殺風景な部屋に座り、目の前に立つ男を見て言葉を発していた。
その男ってのが……なんか、悠介だった。
なにこれ?
月永 「どちらにしろ、さっさとこの家から出て行け。
俺はもうお前ら家系の者とは無関係だ。
今更、俺に用があるなどと言うつもりか……」
悠介 「……今が何年なのか、教えてくれないか」
月永 「……興味がない。失せろ」
悠介 「………」
景色から、ここが相当の過去のものだということが解る。
少なくとも俺の居るべき現代の300年前以内。
そしてこいつは……弦月の男なのだと理解した。
そう、こいつは弦月月永だ。
俺はこいつを知っている。
だって、こいつは───
月永 「お前、そんなことも知らずにここに来たというのか?
俺を利用しようとしたんじゃないのか……」
悠介 「利用?よしてくれ、人を利用する趣味はないよ。
純粋に今がどんな時なのか知りたいだけだ」
月永 「………」
こいつは、俺の……前世だ。
『弦月彰利』ではなく、『俺』の。
家系を裏切り、断影刀を持ち出して、人との交流の一切を断った、俺の前世だ……。
それじゃあ俺は……作られた人格なんかじゃなくて、
もともと『前世』ってカタチで『弦月彰利』の中に存在していたのか……?
月永 「悪いが俺も外界から縁を切って久しい。年月という概念はもう俺の中には無い」
悠介 「……解った、手間取らせて悪かった。それじゃ」
悠介が月永から離れて、家を出た。
そしてそこに───沙姫……いや、冥月が転移してきた。
そういえば……いつだったか、悠介が次元の狭間に飲まれたことがあった。
その時の景色なのか?これは……
月永 「……感じるぞ。見ているのだろう、我が来世よ」
彰利 『……まあな』
月永 「どうやら迷っているようだな。自分が自分であるのかを」
彰利 『馬鹿こくでね!オラは自分に自信さありまくりだべ!』
月永 「それは薄っぺらな自信でしかないな。
お前はどこかで『力』に頼っている傾向がある」
彰利 『その通りだ。すげぇだろ』
月永 「…………我が来世などと思いたくない性格だが、まあいい」
失礼なやつだ。
月永 「自分を信じろ。今よりも、もっと。力を信じるのではなく、己をな」
彰利 『開眼にはまだ遠いのだよムスカくん。
来世だと思って軽く考えてるんじゃなかろうね?』
月永 「それこそ馬鹿を言うな。お前が私の来世ならば、私が死ねばお前になるのだ。
そのような性格になるのかと思うと、楽観視など出来るものか」
彰利 『なんだとてめぇ!キミはなにかね!?俺に喧嘩売ってンのかね!?
なんだ!?お!?やンのかコラ!おぉ!?あ〜〜ん!?』
月永 「お前はもっと静かになるべきだ。前世に喧嘩を売ってどうする」
彰利 『俺らしくていいじゃん!』
月永 「……一生死にたくなくなったぞ、今」
彰利 『……とんでもなく失礼なヤツだね、キミ』
月永 「お互いさまだろう。……ああ、ゴホッ」
咳払いをして、前世は俺を見た。
彰利 『おろ?見えるんか?』
月永 「いいや、ただそこに居るような気がしただけだ。
……いいか、家系なんてものに振り回されるな。
お前が見ている恐怖は所詮お前が作り出しているものにすぎない。
お前が怖いと感じない限り、それは恐怖ではないからだ。解るな?」
彰利 『せんせー、意味がまるで解りませーん』
月永 「真面目に聞け貴様……」
彰利 『……ソーリー』
本気で睨まれてしまった。
月永 「お前の恐怖はお前がお前じゃないかもしれないということだけだろう」
彰利 『そうだ。すげぇだろ』
月永 「威張るな。……じゃあ訊くが、私はなんだ?」
彰利 『……浮浪者?』
月永 「もういい、貴様は一生迷っていろ」
彰利 『やだなぁ〜〜〜っ、冗談ですよぉっ!承太郎先輩〜〜〜っ!!
で、なにって……前世っしょ?』
月永 「そうだ。お前は私の来世で、私はお前の前世。
それ以上に『自分』という存在の証拠が必要か?」
彰利 『あー、質問。んじゃあなんで、俺って偽母が殺されるまで眠ってたの?』
月永 「……───そうか、合点がいった。そういうことか」
彰利 『ンだコラ!自分だけ納得してねぇで俺にも教えろこのヤロ!』
月永 「……性格悪いぞお前」
彰利 『任せろ』
胸を張ってみせたが、思いっきり呆れられてしまった。
月永 「……私もな、母を殺されているのだ。目の前でな」
彰利 『なんとまあ……マジすか?』
月永 「お前の母も同じ『家系』のものに殺されたのだろう?私もだ」
彰利 『だから意識が同調して、人格が浮上した、と?』
月永 「ああ。だがどうやら私は自分が思うより我が強いらしい。
来世として産まれた者とは別の人格として産まれたのだろう」
彰利 『傍迷惑な……。俺、キミの所為でかなり苦労したってことだぞ?』
月永 「そう言うな。見たところ、私の記憶など残っていないように見える。
お前はちゃんとお前として存在している。それが解っただけで十分だろう」
彰利 『……実は自分の中の死神に、その解ったばっかりの【存在】を狙われてまして』
月永 「…………おお、急に眠たくなってしまった。私は寝る。だからとっとと帰れ」
彰利 『うわヒドッ!!やっぱお前俺の前世だ!!今認めた!この最低男!ハゲ!』
月永 「だ、黙れっ!誰がハゲだ!」
彰利 『うるせぇヒゲ!だったらお前はヒゲだ!このヒゲ!ヒゲめ!ヒゲめ!』
月永 「さっさと帰れと───言っているだろうがっ!!」
バジィッ!!
彰利 『あぁ〜〜〜〜れぇ〜〜〜〜〜っ!!!』
景色が弾けるのと同時に、俺の意識はどこかへと飛ばされていった。
───…………。
彰利 「───ハッ!?」
で、ふと気がつくとそこはさっきの地下室。
彰利 「…………?」
さらに気がつくと……体にあった違和感が、少し軽くなっていた。
『傷』が……少し消えた……?
彰利 「フッ、前世の野郎……ニクイことしやがって」
まあ傷は、俺の心の問題なんだろうけど。
なにはともあれ……刀の探索を続けよう!
まあ骨のことは前世の野郎の未熟な月壊力の所為ってことで!
そして盗みを働いたあいつらが悪いってことで!
浄化もしたしドッコイです!
彰利 「さぁて刀はぁ……」
バジィッ!!
彰利 「いたやぁーーーーっ!!!」
……忘れとりました……。
まだ月壊力の壁を蝕んでませんでした……。
でもそうなるとアレだよね?
俺の前に来たってゆうおなごは、どうやってここをくぐり抜けていったんデショ?
……もしや、とは思うが───
彰利 「えーと、よし、これだ」
俺はそこらに落ちてた骨のカケラを投げてみた。
すると、弾くこともせずに骨は素通り。
……どうやらビンゴらしい。
彰利 「弾くのは家系の者だけか……。
よっぽど家系を憎んでたってことだな、前世の野郎」
もちろん俺もだが。
まさか前世譲りなんじゃねぇだろうな、この小さな感情。
彰利 「ま、いいや。今は蝕みを───」
───…………。
───ドカァアアアアアアン!!!!
弦月廃屋の屋根をブチ破り、外へと飛び出した!
彰利 「お、おのれーーーっ!!どういうことだ!刀が無いとは!!」
あれから地下の様々な場所で刀を探した。
が、断影刀がどこにも見当たらないのだ。
彰利 「まさか───やはりタオチェイ!?」
まあそうですよねぇ、これだけ放置された屋敷があれば、
どっかのバカップルが肝試しとかやって、
『戦利品だぜウヒャヒャヒャヒャ』とか言って持っていくに決まってる。
怖い話しの特集とかだと、こういうパターンだと絶対に呪われるんだけどね。
俺、そういうアホども大ッ嫌いです。
よく居るよねー、すぐに肝試しやりたがるヤツ。
そんで断わろうとしたら『絶交だよ』とかぬかすヤツね。
言わせてもらえば、
それくらいのことを断わっただけで絶たれる交流なんてものは友情じゃない。
友情ってのは誰しもが思うより気高いものであるべきだ。
そんな薄っぺらな戯言交じりの交流に付き合って呪われてどうするよ。
まあ、先に立つ後悔があれば苦労はせんけどね。
『やらずに後悔するくらいならやって後悔しろ』という言葉がある。
けど、心霊現象が起こる場所でのその行為は素直に『戯(け』だ。
彰利 「ようするにバカってことだな、うん」
さて、馬鹿話しは置いておいて……どうしましょ。
誰が盗んでいったのか、皆目見当もつかん。
彰利 「こんなことになろうとは……って、アレ?」
空を浮きつつ、屋敷の屋根に降り立つと、屋敷の中に入っていこうとする輩を発見した。
てゆうか……あいつ、見覚えある。
彰利 「姫桐、っていったっけ」
いつか現れた賞金稼ぎだ。
まあ……なんてーの?
つまり犯人はアイツですか?
彰利 「フッ……」
馬鹿馬鹿しい。
ほんと、馬鹿馬鹿しい。
もし喩えるなら、ああゆうヤツこそ肝試しで呪われるタイプだ。
そして俺はそういうヤツが大ッ嫌い。
……ああ、さて……そうなったら───やることはひとつだよな?
Next
Menu
back