───図々しいこと猿の様(に───
シュィンッ───ドッバォン!!
姫桐 「げはぁああああっ!!」
容赦なく殴り倒した。
刹那に血飛沫が飛び散り、俺の頬にも服にもかかる。
彰利 「さあ立て!すみませんじゃすみませんことよ!!」
姫桐 「がはっ……て、てめぇ……!!」
彰利 「よくも刀を奪ってくれたな!
面倒事増やしやがって!これだからキミのようなヤツは嫌いなのだよ!!」
姫桐 「刀だぁ……!?知らねぇよそんなもん!!」
彰利 「あ〜ん?シラを切ろうって気かてめぇ〜〜っ!!」
姫桐 「知らねぇもんは知らねぇ!俺は野宿するのが嫌だからここに来ただけだ!」
彰利 「なんと!?それは真実かね!!」
姫桐 「当たり前だ!俺は妹の名にかけて、犯罪だけはしねぇって心に誓ってんだよ!!
それをなんだ!?いきなり犯人扱いして、話も聞かずに殴りやがって!!」
彰利 「なんとまあ……それでは貴様は、ほんに犯人ではないと?」
姫桐 「そう言ってるだろうが!」
彰利 「グウウ〜〜ムムウ〜〜〜……」
そういやそもそも盗んだのは『女』って言ってたし、
こいつは曲がりなりにも家系の男だから、あの壁越えられないし。
じゃあ誰よ。
まあそれはそれとして、ベホイミ♪
パアア……
姫桐 「なっ…………ったく解らねぇよお前……。殴ったと思ったらきっちり手当て?
お前ってあの『弦月』の子だろ?弦月ってのは冷酷だって聞いたけどな……」
彰利 「そりゃあ『弦月彰利』の親から先祖にかけてだ。
ま、『弦月彰利』の心にもそういうものがあったかもしれないけどな」
姫桐 「なんだそりゃ、訳解んねぇ。お前が弦月彰利だろ?」
彰利 「そうだけど、そうじゃない。俺のはまあ……偽名みたいなもんだな」
姫桐 「偽名……?なんだよ、それじゃあお前、弦月の子じゃないのか」
彰利 「ああ。月操力が使えるってだけの、どこの家系の子かも解らないヤツさ」
姫桐 「なんだ……それじゃあお前を殴っても賞金は入らねぇじゃねぇか」
彰利 「残念だったな」
そう、前世として浮上しただけの俺は誰の子供でもない。
ただ……弦月彰利の名を騙ってるだけの、ただひとりの血縁もない存在だ。
姫桐 「なああんた。本名聞かせてくれよ。あんたに興味が沸いた」
彰利 「本名?そんなもんねぇよ。だから偽名を使ってるんだ」
姫桐 「……そうなのか?」
彰利 「ああそうだ。だから好き勝手に呼べよ」
姫桐 「……案外さっぱりしたヤツなんだな。拍子抜けした」
彰利 「そりゃどうも」
姫桐 「なんなら自分で名前つけたらどうだ?気に入れたらそれ使えばいいじゃねぇか。
大体、どこの家系の子でもないなら文句を言うヤツも居ねぇだろうが」
彰利 「……なるほど」
そういやそうだ。
けど、偽名と断言するには……他の名前を考えるには、
俺はあまりにも『弦月彰利』で居過ぎた。
彰利 「……そーだな。俺のことは朧月和哉とでも呼んでくれ」
姫桐 「朧月和哉?なんだ、お前『朧月』の家系になりたかったのか?」
彰利 「そんなんじゃないよ。
『朧月』は俺を『おとうさん』って呼んでくれるヤツが居る場所なんだ。
そこに捨てられた名前を乗せてみただけだ。
べつに本当に呼んでほしいわけじゃない」
姫桐 「……よく解んねぇ」
彰利 「ああ、アンゴルモア=キマイラブレイン=トクホンチールでもいいぞ」
姫桐 「余計に訳解んねぇよ」
まったくだ。
でも……そうだ。
俺には俺を『おとうさん』って呼んでくれるやつらが居る。
もちろん血なんて繋がってないけど、だからこそいいって感じられる。
俺は……自分の血が好きじゃないから。
彰利 「ん───?」
おとうさん……椛……ミント……リーフ……天界……神……困った時の占いババ。
彰利 「おお!そーか!」
そうだよそう、そうじゃねぇの!
天界に居る神に訊けば、刀がどこにあるかくらいは一目瞭然(?)ぞ!!
なんてったって神だし!
解らねぇなんて言ったらおめぇ……ウソだぜ!?
彰利 「というわけで姫桐よ。俺は天界に行くのでここでお別れだ」
姫桐 「てんかい?なんだそりゃ」
彰利 「なんじゃい、そんなことも知らんのか。貴様はもっと世界のことを学ぶべきぞ?
天地空間くらい知っておるじゃろ」
姫桐 「へ?なんだそれ」
彰利 「……なにって……天地空間(」
姫桐 「……知らん」
……もしかして、こげなこと知ってるのって俺くらい?
ああいや、リヴァっちも知ってるし……結構居るよね?
コイツが馬鹿なだけだよね?
彰利 「まあいいコテ。屋敷ン中で寝るなら寝るがよか。
泥棒が来たら捕まえておいてくれ」
姫桐 「泥棒なんて出るのかよここ……」
姫桐が『ウソだろオイ』……という顔で弦月屋敷を見上げる。
そりゃね、これだけボロっちければ金目のものがあるとは誰も思わない。
彰利 「けどね、泥棒が居たからこそ刀が奪われたのだよ。
つまり、キミはその所為で殴られた」
姫桐 「───よし、そいつを殴って鬱憤晴らしてやる」
よい返事だった。
彰利 「ってわけで、プレイスジャンプ!!」
───……。
───……キィン!!
彰利 「……ふう、到着」
一息吐いて辺りを見渡す。
うん、天界である。
彰利 「さて、それでは早速神にお目通りをしなければ」
そんなわけで今からアタイはアンゴルモア=キマイラブレイン=トクホンチールです。
やっぱその場所で使った名前は使わないとねぇ?
アキト「さあ参りましょう!!神の待つ大聖堂へ!」
アタイは勇んで走り出した!
───そして5分後、迷ったことに気づいた。
アキト「……広すぎなんだよこの天界って場所はよォオオ〜……」
しょぉおおお〜〜がねぇええなぁ〜〜〜っ。
俺にどうしろっていうんだよナランチャアア〜〜ッ。
アキト「ムー……しまった!」
名前を変える前にやるべきことがあった!
これは実に迂闊!
アキト「えーとえーと……何処かに誰か……っ!」
───!おったわ!!
アキト「あ、あの!すんません!道を訊ねたいんですが!」
天界人「うん?なんだお前は───っ!?貴様、天界人じゃないな!?」
アキト「シャラッ!!」
ボゴシャア!!
天界人「ベップ!」
いきなり敵対心満々な天界人にナックルをキメた。
謎の天界人、気絶。
アキト「いや〜いやいやいや、そうそう、これですよ。
天界に来たなら天界人の服着ないとねぇ〜〜〜ィェ」
謎の天界人の服を剥ぎ取り、それを身に纏った。
アキト「へへっ……今日もキマッてるぜ」
さて、ナイトゥルースの真似なんぞは捨て置くとして。
神ぞ!神に会いに行くんだッ!!
───…………。
アキト「ここ何処?」
さらに迷った。
無駄に広いくせに、目印になるような建物が一切ないんだよなぁ天界って。
よくこの世界に居る者どもは気にせず暮らしているもんだ。
アキト「さて……」
ウーーー!!ウーーーッ!!
アキト「ウィ?なんザマス?」
なにやら警報のような音が……
声 『天界に別世界の侵入者あり!民間人は家の中へ入りなさい!!』
アキト「なんだと!?侵入者が!?」
こりゃあ大変だ!早く家の中に入らねば!おお怖い!
俺は慌てて近くの民家へと駆け込んだ!!
おなご「きゃああーーーっ!!誰よアナターーーッ!!」
アキト「俺はハーン!よろしくたのむぜ!」
メゴシャーーッ!!
アキト「ヘキャアーーーーーッ!!!」
ハーンの名を騙った刹那、俺の顔面にリンゴのようなものが投げられた。
案外硬いんだよね、リンゴって……。
アキト「なにをするだァーーッ!!ゆるさんっ!」
おなご「あ、あれ……天界人……?侵入者じゃないの……?」
アキト「へ?あ、オウヨ。俺はアンゴルモア=キマイラブレイン=トクホンチール。
アキトと呼ばれてる者だ」
おなご「あ……聞いたことがあります。ウィルスを発見した凄い人だって……」
アキト「ぬお?」
いきなり敬語?
アキト「ダメダメ、ダメですよキミ。俺は敬語使われるのは嫌いです。
だから砕けて話してもらって結構。
そして……侵入者とやらが始末されるまでかくまって?」
おなご「は、はあ……それは構いませ───あ、いえ、構わないけど……」
アキト「ウィ、よろしく」
まったく、この神聖なる天界に侵入とは……。
なにを考えておるのかね、その侵入者ってのは。
───……。
アキト「あ、そういやさ、孤児院に子供達が居ただろ?今どうなってる?」
おなご「え……知らないの?てっきり知ってるかと」
アキト「あー、いや……ほら、いろいろ忙しくてね?」
おなご「なるほど。そうだね……みんな元気でやってると思うけど」
アキト「そかそか、そりゃよかった」
ミントさんやリーフさんも大丈夫そうでなにより。
これで安心して神の居る場所へ行けるというものだ。
アキト「そんじゃ、そろそろ侵入者探しに行きますかな」
おなご「え?さっきかくまってくれって……」
アキト「気にしなさんな。仕事中にも休憩が欲しかっただけだから」
おなご「そ、そうなんだ」
アキト「では、さらばです」
おなご「はい、さらばです」
よく解らん言葉を放ち、俺はその家をあとにした。
アキト「でも結局、どこに行けばいいかは解らん、と……」
まいったなぁ。
アキト「しかし、侵入者ってのはどんな顔してんデショ。ちょっと興味あるかも」
見つけたらフェイスくらいは見てみたいな。
声 「───おいっ!あいつじゃないか!?」
声 「ああ、間違いない!天界の名簿には載っていない顔だ!」
アキト「ウィ?」
なんだか五月蝿いのぅ。
なんじゃよ?まったく。
天界人「いたぞーーー!!侵入者だーーーっ!!」
アキト「なにっ!?何処かね!!」
バッと後ろを振り向く!───居た!あいつか!
アキト「トタァーーーッ!!」
ババッ!
男 「うわっ!?」
男の後ろに回り、足と腕を極める!
いわゆるロメロスペシャルの体勢だ。
だがこれでは済まぬ!
アキト「トテアーーーッ!!ロメロスープレックスーーッ!!」
男 「うわっ!うわぁーーーーっ!!!」
ロメロで男を固めつつ、さらに跳躍してスープレックスのように頭から落とす!!
ゴチャア!!……ドサ。
アキト「……やっちまったぜ」
ケビン流ロメロスープレックスを決めると、男はぐったりと動かなくなった。
天界人「うわぁっ!な、なんてことを!!」
アキト「みんなーーっ!オイラやったよーーーっ!!侵入者をやっつけたんだーーっ!」
天界人「た、大変だ!ジョルジュさまが侵入者にやられた!」
アキト「へ?ジョルジュ?誰?」
天界人「おのれ侵入者!覚悟しろ!」
天界人のおっさん、俺に向けて槍を構えるの図。
……なに言ってるの?この人。
アキト「誰が侵入者だこの野郎!侵入者はこいつだろうが!」
天界人「なにを馬鹿なことを!そのお方は天界の長老のお孫殿、
ジョルジュ=アルテマイト=ヒルトンさまだ!」
アキト「……今……なんと?」
天界人「同じ事を言う必要はない!」
アキト「なんとまあ……マジすか」
それはヒドイんじゃなかろうか。
天界人A「お前ら、こいつを捕獲する!援護しろ!」
天界人B「ハッ!」
天界人C「了解!」
アキト 「サー!イエッサー!!」
天界人達『貴様は関係ないっ!!』
アキト 「ゲゲェーーーッ!!」
その後、俺は天界人の3人に容赦なくボコボコにされた。
───…………。
天界人「知ってるか?侵入者がとうとう捕まったらしいぞ」
天界人「ざまぁみろだな。この天界に侵入なんてするからだ」
天界人「違いない───お!来たぞ!」
ガラガラガラ……
アキト「絶景!」
えーと、ハイ?
ただいまアタイ、カゴに入れられた状態で見世物にされつつ運ばれております。
何処に向かうかって?
神の前に、だって。
可能性を考えてわざと捕まってみたけど、ビンゴだとは……。
これで迷うことなく着けるってもんです。
声 「っ……!!」
アキト「ウィ?」
なにやら人垣に紛れて懐かしい声が聞こえたような……って、
アキト「ミントさんにリーフさんじゃないですか」
泣きそうな顔───というか泣き顔でなにか叫んでます。
『おとうさんおとうさん』って叫んでるのがよく解る。
でも関係者だと思われてあのふたりに迷惑をかけるわけにはいかず、
俺はシカトを決めた。
───ガシャン。
天界人「天大神さま!侵入者を連れてきました!」
ビッ!と姿勢を正す天界人の兵士。
俺は逆に神のじいさんに向かって軽く手を挙げてみせた。
アキト「YOー、天大神のじっちゃん。あちょッス」
ジェス「おお、お主は……」
天界人「貴様!天大神さまに向かってなんと馴れ馴れしい!!」
ドカッ!ドスッ!!
アキト「ぐおおーーーっ!!」
天界兵が俺を棒で突いてきた。
ジェス「やめんか!」
天界人「───っ!?し、しかし……」
ジェス「お前ら、自分が誰のおかげでウィルスから助かったのかも解らんのか?」
天界人「……!?そ、それではこいつがあの、
ウィルスを発見してマルドゥークを倒したという……!?」
ジェス「そうじゃ。お前らは恩人を殴ったのだ」
天界人「しっ……失礼しましたぁーーっ!!」
天界人、勢い良く頭を下げる。
アキト「ほっほっほ、よいよい……。
じいやは心が広い故、お主の行いを許しましょうぞ……」
天界人「お、おお……なんという心の広い……!」
アキト「ささ、近う寄れ……。そのように離れていては話辛かろう」
天界人「はっ!」
天界人、潔く近くに寄る───その刹那!
アキト「サミング!!」
ドチュッ!
天界人「ぐわぁああああああああっ!!!」
天界人の目を指で刺してやりました。
アキト「この馬鹿め!ボコボコにした挙句にこんな狭いところに閉じ込めおって!!
許すわけねぇだろうがよォオオ〜〜〜ッ!!えぇ〜〜ナランチャ〜〜〜ッ!!」
カゴを強引に壊し、神の前にズシャアと立つ。
───その手にチェーンソーを持って。
アキト「さあ神よ……いつかの続きをしようか」
ジェス「まさかそのために来たのか……?」
アキト「へ?えーと……」
なんだっけ。
なんだかすっごく大事なことを忘れてるような……
神をチェーンソーで斬殺しようと思ったあたりから、
何かを忘れてるような気がしてならない。
ン〜〜……ま、いいやっ!
アキト「チョエェェエエーーーッ!!!」
モビィイイイイイ!!!
チェーンソーを高鳴らせて神へのダイレクトアタック!!
ジェス「やれやれ……スパークボルト」
バチィッ!バリバリバリィーーーッ!!
電撃が俺の体を包み込む!
アキト「利かんなぁ〜〜っ!!」
ジェス「なにっ!?」
アキト「甘いわ!俺の体は日々、悠介の裁きで鍛えられておったんじゃい!!
それが今更、そんなチンケな雷ごときで止められるものか!」
ジェス「ほほう……これは楽しめそうじゃわい!」
アキト「さあ始めよう!真の神を決める戦いを!」
ジェス「真もなにも、ワシは神だが」
アキト「う、うっさいわい!!」
俺はチェーンソーを抱え直して突貫した!!
アキト「───切り刻む」
ジェス「ム───!」
天大神のじっちゃんが俺の動きに反応して掌を向ける!
だが!
アキト「遅いッ!!」
ジェス「なにっ!?」
俺はその一瞬の動作を読み、天大神の背後に転移した!
命の瞬きを見せておくれ!!ああ、夜の闇よ!!
アキト「くらえ!“神獄殺(”」
ジェス「ムウウ!!」
ジュヒィンッ!!
ジェス「ほっ───!」
アキト「なにぃ!?」
なんと!神の野郎め、紙一重でチェーンソーを避けやがった!!
ジェス「フッ……お主はただ楽しんでいるだけであって、
本気でワシを殺す気がないようだな」
アキト「あ、やっぱ解る?」
ジェス「お主の目は遊ぶ者の目だ。そして、何よりもやさしい」
アキト「後者は思いっきり思い違いだろうけどね」
ジェス「ほう?やさしくないと?ではミントとリーフのことはどう説明する?」
アキト「へ?気紛れだけど」
ジェス「……ウソじゃないのが凄いが」
なんだってんだこのジジイ。
ジェス「で、この天界になんの用があったんじゃ?
まさかこれだけのために来たというわけはあるまい?」
アキト「実はそうです」
ジェス「冗談もほどほどにせい」
アキト「ぬう……実はな、目的忘れ───あれ?」
ふと、冥月刀がキィンと鳴った。
───って、思い出した。
刀の在り処だ。
アキト「おう天大神のじっちゃん、ちと頼まれてほしいんだが」
ジェス「うむ、お主は恩人じゃ、いくらでも力になろう」
アキト「そりゃサンクス。
えっとさ、断影刀ってゆう刀が今何処にあるかを知りたいんだけど」
ジェス「断影刀、じゃな?しばし待て」
じいさんが目を閉じて集中する。
もちろん、俺がその隙を逃すわけがなかった。
チェーンソーは音でバレるから……よし。
───キュポン。
ジェス「うむ、見つかったぞ」
アキト「ギャア!?見つかった!!」
ジェス「………」
アキト「え〜〜と……」
丁度、じいさんの顔に油性ペンでアートを描き終えた頃に見つかった。
でも世界初です、天界の長に悪戯描きしたのは。
ジェス「覚悟は、出来ておるな……?」
アキト「フッ……貴様こそな……」
気圧されるのが嫌で、意味もなく張り合ってみました。
───が、容赦なくボコボコにされた上に地界へと捨てられた。
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