───L・R・D・T80%Yさん───
───ズズズ……
彰利 「……まいったな」
これで何回目か。
悠介の影ばっかりを出してきたこの世界だったが、とうとう……
影若葉『………』
影木葉『………』
……女を出しやがった。
しかも、若葉ちゃんに木葉ちゃんだ。
お前の精神、性質悪ィぞ悠介……。
彰利 「……ま、消すけどね」
ハハオヤだったものの呪縛から解放された俺には、もう男も女も関係ない。
消せる者を消すだけだ。
彰利 「似てるからって、偽者に手加減するほど甘い人生生きたわけじゃないんでね」
腕を振る。
ソレは闇を切り裂く鎌のように鈍く閃き、そこにあった闇を薙ぎ払った。
彰利 「……とはいえ、これだけ続くとムカツクな」
さっさと底の底とやらに行きたいものだが……
彰利 「む───ややっ!夜華さんでねがーーーっ!!」
闇ばっかりの世界で夜華さん発見。
でも闇っぽい。
てゆうか黒いしね、ありゃ闇だ。
影夜華『………』
彰利 「なんですかその無表情は!夜華さんらしくもねぇ!オウコラ影テメコノヤロウ!
夜華さん真似るんならそげなことではいかんぞオラ!!」
影夜華『───!』
影夜華さん、何も言わずに刀で居合い斬り。
彰利 「ホアッ!」
アタイはそれを避けてみせた!
影夜華『………』
彰利 「フフフ、これはいわゆるアレだな。
『抜きな、どっちが早いか勝負だ』ってヤツだ」
アタイは微笑をもらしつつも、こげな西部劇っぽい状況を楽しんでいた!
なんてゆうかね、影でも夜華さんとの掛け合いは楽しいもんです!
……もっとも、ホンモノはこの影の十倍は楽しめますが。
だってこの影ったら無反応なんですもの!
彰利 「夜華さんったら、遊びに行ってもぐったりだし。
アレが治るまでアタイは何で暇を潰しゃあいいのでしょうなぁ」
まったくもって解りませんぜ。
それはそれとして、夜華さんが刀に手をかける中、アタイも冥月刀へと手を伸ば
彰利 「………アレ?」
……したんだけど、伸ばした先に刀が無い。
彰利 「アレアレェッ!?なんで!?
って、しもうた!精神世界に刀を持ってこれるわけがなかった!!」
影夜華『…………』
チキ、と夜華さんの刀が鳴りました。
その音がヤケに生々しく聞こえたりします。
彰利 「えーと……見逃してくれ!」
影夜華『───!』
夜華さん、俺に目掛けて疾走!!
刀がキュヒィンと居合いされ、アタイの髪の毛を切りました!!
彰利 「キャアーーッ!!銃刀法違反YOーーッ!!誰かたっけてーーっ!!」
影夜華『!』
シュバァッ!!
彰利 「ヒャアーーッ!!」
居合いの返す刃がアタイの服を刻む!
キャア!燕返しというやつね!?
夜華さんステキ!
彰利 「だが貴様は夜華さんであって夜華さんではなーーーい!!
だから即刻に攻撃をやめたまえ!キミは今、ラピュタ王の前に居るのだぞ!」
ザクシュ。
彰利 「ギャオオォォォーーーーーッ!!!」
あっさり斬られた!やっぱ夜華さんっぽいや!さすが影!!
問答無用なところなんてそのままじゃん!!
彰利 「だが負けなぞ認めんぞ!結果が出てないのに負けを認めるなぞ漢じゃねぇ!
そう───まるでテストの空欄を埋められずに悩んだ際、
自分の直感を信じて答えを描くあの頃のように!」
俺の中に、懐かしきあの頃が思い流れる。
俺は歴史のテストを受けていて、いろいろな文字がズラーと並ぶ中───
『いい国作ろう( )』の空欄に『いい国作ろう(風刃縛封()』と書いたこと。
そして、英語等のテストで英文の訳に、
『ディスイズ……ワッペン!オーウ!マイネームイズワッペェ〜〜ン!』と書き、
センセに呼び出しくらって……中井出に『センセが呼んでたぞ』と言い、逃げたこと。
俺は空欄が許せない男なのだ。
たとえ解らなくても、書けることは書くのが漢である。
そう───それが点数にならなくても、『考えたこと』こそが大事なのだ!
たとえそれによりセンセに呼び出しをくらっても、苦しむのは中井出だったのだ!
うう……今思えば、なんてクラスメイツ思いなエロビマニアだったんだ……!!
……ま、それはそれとして。
彰利 「こうなったら───
アタイのカーフブランディングであの世へ送ってやるぜ〜〜〜っ!!」
そのためにはまず動きを止めんとね。
彰利 「轟天弦月流───フェイスフラッシュ!!」
ギシャアア!!
その場に閃光が走り、人々の視界を真っ白に染める!
影夜華『………』
彰利 「………」
でも影には効かないみたいです。
いやーーーん!!
彰利 「こうなりゃ無理矢理にでもカーフブランディングを決めてやるぜーーーっ!!」
キン肉系チックに叫びつつ、夜華さんに突進。
オラ、きっとやってみせるだ!ウララーーーッ!!
ザクシュドシュザクドシュドシュズバシャア!!
彰利 「ギャアアアーーーーーーーーッ!!!!!」
突進したけど完膚なきまでにザクザクに斬られました!
普通なら死ぬっつーの!
彰利 「し、しかし……ジェロニモの真似した途端にザクザクとは……」
流石だジェロニモ。
オイラ体が痛いよ。
だがこうなったらもう消すしかあるまい!
アタイにはダーリンを救うという大業があるのだ!!
彰利 「さよなら夜華さん!轟天弦月流奥義───月壊力突っ張りィーッ!!」
掌に月壊力を込めての張り手!
避けられるモンなら避けてみさらせ〜〜〜っ!!
───ピタッ。
彰利 「ウィ?」
グ、グググ……
彰利 「……なにコレ」
夜華さんへ伸ばした掌が止まりやがりました。
……なんで?
彰利 「………」
手をワキワキと動かしてみる。
別に普通に動く。
彰利 「───フンッ!フンッ!」
試しにDIOさまのスタンド、ザ・ワールドの真似をして夜華さんに攻撃!
しかし手が止まる。
彰利 「……ギャア」
なんでしょうこれ。
訳解らん。
ただこれだけは言える。
『俺に夜華さんは殺せない』。
彰利 「アホですか俺の深層意識!!影の悠介消しといて、夜華さん消せないなんて!」
影夜華『───』
シュヒィン!!シュパァン!ヒィン!!
彰利 「ノヘラァーーーッ!!」
居合いを避ける!避ける!避ける!!
彰利 「や、やめたまえ!ここは平和的に話し合いで解決しようじゃないか!
どっちかが攻撃出来ないなんて、フェアじゃないだろう!!」
影夜華『───』
とか言ってる間にも居合いは続く。
その全てを月視力で先読みし、避けているわけだが───
彰利 (ふっ……読めてきたぜ……。これはおめぇ、アレだ。
アタイがこいつに『夜華さんに似てる部分』を見つけた時点で、
その分だけこいつを夜華さんだと思ってしまっとうぜ。
影は消せても、もう人殺しなんぞしたくはないアタイにとって、
『夜華さんに近い』ってだけで、もう殺せない……と)
分析完了!
さてどうしましょ……
───……。
椛 「あ……」
ふと辿り着いた景色。
どこをどう歩いたかは解らないけれど、わたしはいつの間にか石段を登っていた。
目に見える景色は暗くて、この精神の中が夜だということが窺えた。
椛 「う……」
感じるのは死気。
血の匂いや、苦しげな声。
でも、その声はすぐに消えた……いや、消されたんだと思う。
この石段の先に、それをした存在が居る。
そう、感じた。
椛 「………」
避けられる戦いは避けるべきだって教えられた。
けど、幻像とはいえ人が殺されているところを見捨てることなんて出来ない。
椛 「ごめんなさい、おとうさん……!」
わたしは意を決して、石段を───登りきってしまった。
椛 「───!!」
そしてわたしは後悔した。
よりにもよって、この景色がここにあるなんて、と。
彰利 『………』
視界の先には、子供のおとうさんが居る。
手は真っ赤に染まり、目は完全に深紅に変異して。
そして、向き合ってみて初めて解る。
コレは『おとうさん』なんかじゃない。
これは……死神の目だ。
椛 「……そう、だったんだ……」
そうだ。
おとうさんは人殺しなんてしない。
全てを殺したのは───レオ=フォルセティーだったんだ。
ショックで目覚めたおとうさんの人格の隙をついて、
あたかも自分がやったように記憶を植え付けた。
そのうえで、体を乗っ取ろうとしていたんだ……。
椛 「許せない……!!
あなたなんかに……!おとうさんの苦しみが解ってたまるもんか!!」
そう叫んだ瞬間、影は走っていた。
その深紅がわたしを射貫いたけど、動じるわけにはいかない。
影は、かつてのように自分を自分で貫くようなことはしないで、わたしに向かってくる。
狂喜の顔で。
殺すことを楽しむ目───……そう感じた。
影彰利『───!』
真っ赤な腕が振るわれる。
わたしはそれに月醒力を放って、吹き飛ばした。
影彰利『───ギ』
けどその影は、吹き飛んだ腕を掴むと強引に腕の根元に捻り込み、
もう一度向かってくる。
振り上げた腕はボロリと落ちるけど、それでも向かってくる。
椛 「───っ……!」
正直、気持ち悪かった。
狂ったようにただ攻撃だけを繰り返すソレは、
産まれたばかりの子供のようなものだった。
そして理解する。
この時、この歴史で、ハハオヤを殺されたことで産まれた人格ってゆうのは───
影彰利『ギィッ!』
椛 「あっ!」
危ない、って思考が動いた。
けど、避けるには間に合わない。
振られたもう片方の腕が、わたしのお腹目掛けて近づいてくる。
避けられない。
───避けられない。
ふと視界に入った、血塗れに転がっている人垣が見えて、
叫び出したくなるほどの恐怖を感じた。
そして───誰かに助けてもらいたい。
その思考に辿り着いた時、思い浮かんだのは凍弥先輩の姿だけだった。
ざくっ!
椛 「っ……!」
その音が聞こえて、わたしは目を瞑った。
けど……痛くない。
声 「───ってぇなぁ……っ!女の子はもっとやさしく扱うもんだろうが……!」
え……?
聞こえた声に、うっすらと目をあけてみる。
すると、そこに……居た。
居てくれた。
椛 「っ……〜〜っ……!!凍弥先輩!!」
凍弥先輩がその腕を強引に止めて、影を睨んでいた。
影彰利『ギ……!?ギィッ!!』
凍弥 「終いだ。あんたは逆立ちしたって彰衛門にはなれない」
影彰利『ギ───』
凍弥先輩は持っていた木刀を下から上に振り上げるようにして、影を消し去った。
その手にある木刀は、いつかおじいさまが創造した木刀みたいで───
そして、その木刀から放たれた光の大きさが、わたしの心を癒してくれた。
椛 「せんぱっ……凍弥先輩……っ」
凍弥 「……───」
それが嬉しくて、わたしは凍弥先輩に抱きついた。
けど、凍弥先輩は最初からそこに居なかったみたいに消え去った。
椛 「え……?」
唖然とする。
けどなんとなく引っ掛かりを感じて、イメージをしてみた。
すると、自分の手の平にリンゴが現れる。
椛 「じゃあ……」
この世界は『創造の世界』で、さっきのは……わたしが強く願ったイメージ……?
椛 「………」
でも、十分だ。
わたしはやっぱり、どう転んだって凍弥先輩が好きらしい。
あの瞬間、おとうさんを思い描くことだって出来た筈なのに、
真っ先に思い浮かんだのは……
椛 「……あ、あはは……」
こういうのは、ちょっと照れる。
でも決心は固まった。
謝ろう、ちゃんと。
許してくれるまで。
また、わたしと一緒に居てくれるようになるまで。
何度でも、何度だって。
───……。
チャ〜ンチャカ〜ンチャ〜ンチャ〜♪
彰利 「あははははは!こっちだよ夜華さぁ〜〜〜ん!!」
影夜華『───』
シュヒンシュバァッヒュフォンッ!!
彰利 「こうしてるとアタイ達、恋人同士みたいだね?」
影夜華『───』
シュバッ!シュピッ!シュパン!
えー……さて。
アタイはただいま、小力疾走しながら逃げておるわけですが……
この影夜華さんたら、結構足速いのよ。
しかもやっぱり斬りつけてくるし。
せっかくの恋人ごっこが台無しじゃないですか。
恥じを偲んで砂浜を駆けるラヴラヴバカップルを演出しとるのに。
───サクッ。
彰利 「いたやぁーーーっ!!」
NO!逃げながら上の空の考え事はイカンね!
思わず斬られてしまったがよ!
よし逃げよう!
彰利 「うおおおおおおお!!とんずらぁーーーっ!!」
小力疾走を全力疾走に切り替えて、アタイは走った!!
狂おしいほどに!時に切なく時には甘く!嗚呼、これぞラヴロード……!!
ザクシュッ。
彰利 「いたやぁーーーーっ!!!」
足速ェーーッ!何者ですかアータ!!
消せもしない、逃げられもしない!
これではアタイに為す術がねィェーーーッ!!
彰利 「───いや待てよ?消そうと思わなけりゃいいんじゃあねぇか?」
ハタ、と気づく。
そうだよなぁ、消す=殺すに繋がるってんなら、適当に弱らせればいいわけだ。
彰利 「クォックォックォッ……!そうと解れば話は簡単よ〜〜〜っ!!
さあ夜華さん!どっからでも……かかってきなさい」
ターちゃんファイティングポーズを構え、夜華さんを迎え撃つ!
まずは───
彰利 「ポセイドンウェーイ!!」
ボゴッシャアン!!
影夜華『───!!』
夜華さんに反動ラリアットが決まる!
夜華さんは大きく吹っ飛び、地面を滑ったがすぐさま起き上がった。
彰利 「……もしこの夜華さんがオリジナルを投影してるとしたら、
夜華さんて相当頑丈ってことだよね」
気絶してもらうつもりでやったんだけどなぁ。
それとも影には攻撃っつーもんが効かないンかな?
彰利 「まあどちらにせよ、勝つのは俺だ!貴様ではない!いくぞ夜華さん!」
影夜華『───』
こうしてアタイは、夜華さんに体術の奥義を教えることとなったのだった!
ドシュシュ!バオバオッ!ビッ!ブバッ!!
でげででげででげでで〜ん♪
彰利 「成敗!!」
影夜華『………』
……ほんとに成敗できたらどれだけよいことか。
夜華さんはムクリと起き上がり、また向かってくる。
彰利 「やっぱ効かないみたいやね……まいったなぁ」
でもそれなら手加減もなしに戦えるってものよ!
……もちろん、全力では絶対にやらないけど。
てゆうかね、この夜華さんってばどんどん強くなってるような気がするんスョ。
彰利 「もしかしてアタイが思った『夜華さんは強い』ってイメージが、
この世界じゃあ具現されてるんだったりしてー。
あはは、ンなわけねぇよねィェ〜……イメージ?」
イメージっつーと……アレ?
もしや……
彰利 「………」
いやん、最悪の状況かもしれない。
この世界は悠介の精神の中であって、創造が可能な場所だとしたら。
創造の理力ってのはおめぇ……アレだ、イメージを吸収して力にするわけだからよォ……
彰利 「……アタイが思ったことが、夜華さんに流れてる、とか……」
…………もしそうなら、今の夜華さんは不死身ですよ?
『もしかしたら絶対死なないんじゃねぇのか』とか思っちゃったし。
彰利 「あ、いや、ま、落ちつけ。アタイの仮説なんてそうそう当たるわけがねぇやい」
と言いつつも、レタスをイメージして、それを弾けさせる。
……と、掌に現れるレタス。
彰利 「………」
影夜華『………』
滝のような汗を流しながら夜華さんを見た。
その姿が、もはや敵無しに見えた……。
彰利 「フンッ!!」
ドボォッ!
影夜華『ッ……!』
彰利 「ぬっ!?」
試しにレタスを投げてみたら、それが当たった。
てゆうか……初めて痛そうな顔をした。
もしや───
彰利 「フッ……読めたぜアロマ・タクト。
これは匂いで伏せているカードを見極めてるんだ。
てゆうかカードを見ずにデュエルするのって、
規則違反とか言ってなかったっけ。遊戯ボーイがそれで怒られてた筈だけど」
そもそも今、デュエルは関係なかった。
彰利 「つまり貴様ら影は!創造されたものに弱いと判断した!」
影夜華『………』
無反応。
やっぱ影なんてそんなもんか。
彰利 「……いや、待てよ?アタイのイメージが反映されるんなら───」
……おお、面白いかもしれん!
というわけで、イメージ開始!!
──……。
彰利 「ぐっははははははははは!!うわははははははは!!」
そしてアタイ爆笑。
てゆうかいい!!この世界すっげぇいい!!
夜華さんがっ!!あの夜華さんがっ!!
影夜華『ドラゴンボォ〜ルカァ〜ドゲェ〜〜ムゥ〜〜♪♪』
ドシューーン!!
彰利 「ぶはははははははは!!ぐっは!ぐっはははははは!!ぶはっ!げほっ!!」
し、知らんかったわアタイ!!
純粋に『笑う』ってこんなにステキな感情だったのね!!
腹痛ェ!!めっさ腹痛ェ!!
彰利 「夜華さんが!夜華さんがドラゴンカードゲーム爺さんの踊りをしながら……!
かめはめ波ッ……ぶはっ!!ウハハハハハハ!!
イヤァーーーッ!!俺を笑わせまくってどうする気だ夜華さぁーーーん!!」
影夜華『ホイジィチィンシャィンハァ〜イ・チィンカァ・リィエンリィエィハァ〜♪』
彰利 「やめれーーーっ!!もうっ、もうやめてくれーーーっ!!
涙が止まらねぇーーっ!!だ、誰か助けてぇーーーーっ!!!!
腹筋が壊死しちまうーーーっ!!!」
前世と会うことで癒された傷の所為かは知らんけど、
いつの間にか浮上していた『笑う』という感情に、アタイは完璧に翻弄されていた。
思えばアタイ、誰かをからかって『フハハハハ』って役っぽく笑ったことはあっても、
こんなに大声で笑いまくったことはなかった気がした。
確かに悠介……ってゆうか兇國日輪守悠之慎の団子屋事件の時には笑ったけど、
あれはただ悠之慎をからかうためだけに笑ってみせたのにすぎませんし。
影夜華『サイガイサンチュンドゥリィ〜ン・カァ〜ン・リィ〜ンファ〜ンハァ〜イ♪』
ドシューーン!!
ドゴォン!!
彰利 「ギャーーーッ!!」
夜華さんが放ったかめはめ波が、アタイの顔面に直撃した。
驚いたことに、期待はしてなかったかめはめ波までもが実現可能なんですここ。
だからより一層笑ったわけですが。
影夜華『ドラゴンボォ〜ルカァ〜ドゲェ〜〜ムゥ〜〜♪♪』
ドシューーーン!!
ドゴォン!!
彰利 「ギャーーーッ!!」
また当たった。
痛みは大したことないが、それよりも笑いのダメージが高い。
涙が止まらなかった。
ま、まさかこの俺が、誰かに泣かされる時がこようとは……!!
夜華さん……アンタ最強だぜ……!
影夜華『………』
ググッ、モリモリ……
彰利 「ゲゲッ!?」
『最強』と考えた途端、夜華さんの筋肉が隆起した。
それはもう、戸愚呂(弟)の80%爆肉鋼体のように。
彰利 「イヤァキモイィイイーーーーーーーーーッ!!!!」
影夜華『ぬおぉおおおおーーーーっ!!!』
しかも『戸愚呂(弟)』のイメージまでも反映されちゃったみたいでもう大変。
髪型まで戸愚呂(弟)になり、
サングラスのようなものをつけた夜華さんは、既に笑撃の塊でしかなかった。
彰利 「ぶはははははははは!!ぐっは!がははははははは!!!
げはーーーっ!!!ぐはははははははは!!ぶっははははははは!!!!
サ、サイコッ……!!夜華さん最高ーーーッ!!」
てゆうかここまでくるともう夜華さんじゃなかった。
彰利 「うはははははは!!!戸愚呂がッ……!!戸愚呂が巫女装束着てッ……!!
イヤァ腹痛ェーーーッ!!クヒィーーッ!!ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」
でも服はどうしてか巫女装束のままで、それがまたツボに入ったようだ。
アタイはしばらく、無防備に転がりまわってるしかないようです。
───……。
凍弥 「……うん?」
なにやら遠くで笑い声が聞こえる。
それは……なんていうんだろう。
彰衛門の声に似てるんだけど、彰衛門っぽくないってゆうか。
俺の知ってる彰衛門の笑い声は、人をからかう気の含まれる笑い声だった。
でも今聞こえるのは、純粋な笑い声だ。
凍弥 「………」
考えてみれば、知った風なつもりでも……
彰衛門のことって知らないことばっかりなんだよな。
隆正の頃から世話になったけど、イマイチ掴み所がないし。
それに……なにより、本当に『感情をぶつけられてる』って感じがしなかった。
でも……今聞こえる笑い声は……
凍弥 「感情がこもってる、って言えばいいのか解らないけど」
なんだか、一緒になって笑いたくなるような、無邪気な笑い声だった。
凍弥 「行ってみるか。これが彰衛門だってゆうなら、その笑ってる顔もみてみたい」
うんと頷いてから、俺は笑い声の聞こえる方向へ走り出した。
───で。
彰利 「ウヒャハヒャヒャ!!うっひゃあっははははは!!ブハァーーッ!!」
大地を転がり回って涙と汗を大量に流して笑ってる彰衛門を発見した。
その近くには───ぶはっ!?
凍弥 「な、なんだありゃーーーっ!!!」
思わず絶叫。
視線の先には筋肉ゴリモリで、
ちょっと刈り上げしたような髪をした巫女服姿の……性別がわからん!!
俺が驚いてる間にも彰衛門は笑い転げ、
しきりに『ナイス……!ナイスよ夜華さぁーーーん!!』と言っている。
つまり……?
凍弥 「……ブッ!!」
つまりアレは、『彰衛門が想像して創造した篠瀬』ってことだ。
元が篠瀬だということと、閏璃凍弥の記憶の中の『戸愚呂(弟)』とが照合された途端、
笑いが込み上げて吹き出してしまった。
凍弥 「し、篠瀬か……?」
影夜華『なんだ鮠鷹』
凍弥 「ブフゥーーーッ!!」
筋肉ゴリモリ篠瀬の返事に、思いっきり吹き出した。
やがて俺も声を上げて笑った。
声がそのまま『玄田哲章(戸愚呂弟の声優)』だったからだ。
凍弥 「くっ……ははははははははっ!!あははははははははっ!!」
彰利 「ぶはははははは!!ウヒィーーーーッ!!クヒィーーーッ!!」
影夜華『………』
やがて俺も立ってられなくなり、大地に転がり回りながら笑い続けた。
人間、笑いがツボに入ると弱いものだなぁと、つくづく思った瞬間だった。
───……
椛 「……?」
凍弥先輩を探しながら精神の世界を歩いてると、妙な笑い声が聞こえた。
妙、ってゆうよりは……無邪気な笑い声がふたつ。
椛 「う───」
ふたつの笑い声、と意識すると、あの溶けたニンゲンを連想してしまった。
椛 「あっ!」
そして、いけない!と思った時にはもう遅かった。
女性 『ク……クフフ……ガボッ……!』
男性 『ブググ……グベベベ……!』
椛 「……!」
嫌な想像というのは鮮明に残るもの。
わたしが思考してしまったイメージはそのまま恐怖となり、創造されてしまった。
声 『解ってないな。恐怖するということは、克服できていないってことだ』
椛 「っ!この、声……!」
忘れもしない、忌々しいこの声は……!
逝屠 『まずはお久しぶり、かな?会えて嬉しいよ、神魔の祖』
椛 「……櫂埜上喜兵衛……!!」
逝屠 『おいおい、あんたもか?今の俺は十六夜逝屠だ。
そんな古い名前なんて出さないでくれ』
クッ、と笑むと、喜兵衛……逝屠はゆっくりと歩み寄ってきた。
逝屠 『気持ち悪いだろう、こいつら。いつまでも想像の中で笑い、溶け、死に続ける。
いい加減鬱陶しいとは思うが……ああまあ、こんなモノでも俺の親だ。
せめて永く永く、末永く苦しんでもらいたいもんだ。
こいつらが精神に残ってる限り、悠介も忘れることなど出来ないんだから』
椛 「───親……!?」
逝屠 『ああそうさ。こいつらは俺の親だ。金のことしか頭にないクズどもだ。
ほんとは俺が殺したかったんだけどな、
一家心中なんて馬鹿な自殺をしやがった』
逝屠は指をコキ、と鳴らし、そこに居たふたつのカタチを引き裂いた。
女性 『ギ───』
男性 『ガ……』
逝屠 『ハハッ、見ろよこいつら。抵抗もしない。
誰かのイメージを取りこまない限り、ずっと笑ってるだけなんだ。
ああそうだな、俺や悠介なんかより、よっぽど人形って言葉が合ってる』
椛 「……やめなさいっ!死者への冒涜は───」
逝屠 『許さない、かな?甘いなぁアンタ。
アンタもきっと、こいつらが悠介にしたことを見れば気が変わる。
そしてそれを知らないアンタは、よっぽど楽に生きてきた。
思えば幸運だよアンタは。自分で【死ぬこと】を選べたんだから』
椛 「幸運……?わたしが……?」
逝屠 『だが。俺や悠介、そして弦月は違う。
死すらも選べぬ世界の中、本来頼るべき親も無く生きてきた。
時に血を流し、時に感情を殺し。
すべてをさかしまに見てきた俺たちに比べれば、
開祖である筈のアンタの苦しみなど……苦しみの内にすら数えられない』
椛 「な……っ!」
冗談じゃない。
わたしは苦しんできた。
あれが苦しみの内に数えられないなんて、そんなことは決してない。
逝屠 『ふざけるな、って顔だな。
……だから知らないっていうんだよ、苦しみってものを』
椛 「え……?」
逝屠 『死を選べるってことは幸福だ。まだ自分に【選択権】ってものが残ってる。
だが、俺達は違う。
アンタみたいに誰かを追って死ぬなんてことを、
軽々しくするわけにはいかなかったんだよ』
椛 「どういう……こと?」
逝屠 『解らないヤツだなぁアンタ。俺達はアンタの尻拭いのために生きたんだ。
開祖だかなんだか知らないが、
月の家系なんて人から離れたものを作ったから俺達は苦しんだ。
それがアンタの恋心のためだって?ほら、考えれば考えるほど馬鹿らしい。
俺や悠介───特に弦月は、アンタの軽率な色恋沙汰の所為で苦しんだ。
お前らがこの精神世界に来たのだって、
無限地獄へ弦月を落としちまった悠介への罪悪感が招いたこと。
ますます馬鹿らしい。無限地獄は月空力と月癒力が無ければ始まらなかった』
椛 「あ……」
逝屠 『悠介の親だって、俺が月鳴力を持ってなければ殺せなかったかもしれない。
なにせ、あの頃はガキだったからな』
椛 「……っ」
逝屠 『この無限地獄の製作者は悠介でも弦月でもない。……アンタだよ、神魔の祖』
椛 「わ、わたし……わたしが……?」
わたしは……なんてことを……!
わたし、自分のことしか考えてなかった……!
逝屠 『さてと。懺悔なんて冥府までとっとけよ。
アンタはここで殺されてくれればいい。いい悲鳴を聞かせてくれ』
椛 「………」
目の前のヒトが駆けてきた。
けど……なにも考えられない。
───自覚がなかったわけじゃない。
けど、やっぱりわたしは誰かに言われることを恐れていたんだと実感した。
でもわたしは誰かを巻き込みたかったわけじゃない。
ただ幸せになりたくて、あの人を追い続けただけだった。
もしそれが許されないことだったのなら……
わたしはいったい、なにに幸せを求めればよかったんですか……?
誰でもいい……教えてください……。
デゲデデッテデーーーン!!
マキィーーーン!!
彰利 「闇を照らす霊訓!過剰な想像はやめましょう!」
凍弥 「はっ……げほっ……!ばはっ……!!」
彰利 「これ!そこは『はい!吾郎さん!』と言わなきゃダメでしょう!!」
凍弥 「無茶言うなよ……!腹痛くてそれどころじゃない……!」
彰利 「俺は月生力で治したからどってことないけど。
いやしかし、まさか100%中の100%やって真っ白に燃え尽きるとは……。
もう少し堪能したかったのに、夜華さんたら大胆なんだもの」
凍弥 「あれだけ笑えば十分だろ……あ、い、いてて……!!」
彰利 「筋肉痛むほどに笑いつづける貴様が悪いのよ!」
夜華さんが真っ白に燃え尽きて消えてから少し。
アタイと小僧は歩きながら適当な会話をしていた。
というよりは……なんてーの?
嫌な予感のする場所へと歩いておるわけだが。
彰利 「ン───……この気配」
凍弥 「彰衛門?───って、……こりゃあ……」
小僧も感じ取ったのだろう。
あの忌々しい気配を。
凍弥 「そんな……さっき消してやったのに……!」
彰利 「お馬鹿!精神内で『消した』もなにもあるか!
精神に住みついてるなら、
何度だって復活できるってことくらい想定しておくんじゃ!」
凍弥 「う───と、とにかく行こう!……いでっ!いででで……!!」
彰利 「ああもうお前アホ!ゆっくり歩いて来んさい!!」
凍弥 「わ、悪い……」
アタイは小僧を置いて、嫌な予感のする方へと走り出した。
考えてみれば、小僧とは会ったのに椛とは会ってない。
それが、ヤケに思考にこびりついて消えやしなかった。
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