───人間超人ジェロニ椛の巻───
で、来てみれば───
彰利 「ゲーーーッ!!」
椛が、血塗れで倒れていた。
そしてその傍らに立つのは───
彰利 「ややっ!貴様は!」
逝屠 『うん?ああ、なんだ、弦月じゃないか。来てたなら言ってくれよ。
そうしたら直々に殺してやったのに』
彰利 「俺を殺す?貴様が?……ほっほっほ!!面白い冗談じゃい!
残念ながら貴様に俺は殺せん!」
逝屠 『へえ、なにか策でもあるのか?』
彰利 「策などない。ただ、貴様は俺には勝てん……それだけだ」
逝屠 『忘れたのか?俺には退魔の壁がある。アンタは俺に指一本───』
彰利 「甘いわ!ザ・ワァーールドォオオッ!!時よ止まれ!!」
逝屠 『な───!?』
ピキィン!!
なんつーか話すのも面倒だったアタイは、月空力で時を凍らせて逝屠目掛けて大激走!!
やがてその傍らまで間合いを詰め───
彰利 「死めぇーーーっ!!」
妙な掛け声とともに四方八方からボコボコにして、
アンリミテッドストリームを撃っておいた。
彰利 「───そして時は動きだす」
ドゴォオオン!!!
逝屠 『ぐあはぁっ!!』
瞬時に体に殴痕が出現し、
それを痛がる暇もなくアンリミテッドストリームで吹き飛ばされる逝屠。
いやはや、絶景!
彰利 「ホレ!とっとと起きるんだ椛!敵はまだまだ倒れませぬぞ!」
すぐさまに椛に月生力を流し、傷を塞ぐ───が。
彰利 「……ややっ!?」
椛は一向に目を覚まさない。
彰利 「えーと……リヴァっち〜?これどうなっとんの〜?」
声 『……やれやれ。あのな、検察官。
精神ってのは傷つけられればダメージは相当だ。
それに加え、そいつはその逝屠ってやつに心の傷を広げさせられたんだ。
いわば、今のそいつは心を閉ざしているような状態だ』
彰利 「………」
いや、なんつーか……最近こんなんばっかりでいい加減にしてほしいんですが……
彰利 「起こすには?」
声 『不安を取り除いてやればいい。
今は精神の状態だからな、言葉は聞こえてないようで聞こえてる』
彰利 「ふむ……不安ねぇ」
椛の不安って言ったらアレだよな?
うむ、アレっきゃねぇ!!
彰利 「よーし行こう!きっと治りますぜ!?」
アタイは椛を抱え、勇み足で走りだした!
逝屠 『待てよ、てめぇ』
しかし回り込まれた!!
彰利 「あら、やっぱ生きとったか」
逝屠 『俺はこの世界では無限の存在なんでね……。
何度倒されようが消されようが、また出現できるんだよ……』
彰利 「でも他の『影』どもと体の作りは一緒なわけね?」
逝屠 『───?それがどうした』
彰利 「だったら……イメージ開始!」
アタイはひとまず椛を降ろし、両手に光を込めた!
あ、もちろんイメージですけどね?
彰利 「み〜ぎ〜手〜に〜勇気を〜♪ひ〜だり手〜に〜涙を〜♪
こ〜こ〜ろ〜に〜やさしく〜♪愛を抱き締めィェ〜♪」
それを一度合掌で合わせ、それからさらに光を伸ばす。
彰利 「マトリフ師匠───俺に力を貸してくれ!」
逝屠 『……なんの真似だ?』
彰利 「“極大消滅呪文”!!」
逝屠 『なっ───』
我が両手から、創造された光が放たれる!
逝屠 『ハッ!家系の力は俺には』
ドッゴォオオオオオオオオオオン!!!!
逝屠 『ギ───!!』
メドローアが、余裕を見せてた逝屠を飲み込んで、空の彼方まで吹っ飛んでいった。
彰利 「馬鹿め……この創造の世界では全てが思う様。
アタイの攻撃だからと、月操力と決めつけたのがお主の敗因じゃわい……」
いやしかし、いいね〜この精神世界。
思うがままにモノを作れるってのはいいことだ。
しかも体力使わないし。
彰利 「さ、行きますよ椛」
椛を抱え直して歩き出す。
目的地は───あそこしか無いッッ!!
…………。
凍弥 「───!も、椛っ!」
目的地に着くと、小僧が小走りに寄ってきた。
凍弥 「椛……そんな、どうしてこんなことに……!」
目を覚まさない理由を知らせると、小僧はとてつもない後悔の念を抱いてみせた。
だが案ずることなかれ!
彰利 「小僧!」
凍弥 「椛……もみじぃ……」
彰利 「聞け小僧!」
凍弥 「彰衛門……なんだよ……」
彰利 「よいかね小僧!貴様に椛を助けるための秘術を授ける!」
凍弥 「な───あるのか!?椛を助ける方法が!」
彰利 「あるとも!……さ、耳を貸したまえ」
凍弥 「あ、ああ……!」
ゴニョゴーニョ・ゴ・ゴニョラ・ゴニョリータ……
凍弥 「なっ……!?」
彰利 「許さん」
凍弥 「そんなの出来───先に言うなっ!」
彰利 「いいからやれ。やらねば椛は助かりませんよ?」
凍弥 「け、けどなっ……!」
彰利 「あ〜ん?なんじゃあ貴様!椛を助けたくねぇってのか〜〜〜っ!!」
凍弥 「そんなわけあるかっ!俺は椛を助けるためなら───!!」
彰利 「じゃあやれ」
凍弥 「ぐっ───」
アタイが小僧に言ったこと。
それは目覚めのキスである。
椛が塞ぎ込む理由っていったら、小僧と喧嘩してることくらいだろうし。
というわけで───
彰利 「ちなみにちゃんと愛情込めなきゃダメですよ?」
凍弥 「愛情もなしにキスなんか出来るかっ!!」
彰利 「それじゃあなにかね!?
なかなかキスしない貴様には椛に対する愛情が無いというのかね!?」
凍弥 「そ、そんなんじゃないっ!!誤解だって解ったし、嫌う理由なんて無いさ!」
彰利 「だったらやりたまえ!俺が凝視しといてやるから!!」
凍弥 「それがイヤだって言ってるんだよ!!」
彰利 「なんだとてめぇ!!アタイのステキな親心が解らないというのかね!?
俺はおめぇ、アレだぞ!?
娘の成長の記録をつけておきたいオトウサマの代表だぞ!?」
凍弥 「そんなものの代表になるなっ!!」
彰利 「断わる!」
凍弥 「断わるなぁっ!!」
彰利 「いいからとっととやるのです!毎度毎度アタイに面倒ごとを振りかけおって!
キミはなにかね!?アタイに恨みでもあるのかね!?」
凍弥 「……それは単に、彰衛門が首突っ込みまくってるだけだろ」
彰利 「返す言葉もねぇや……」
でも実際、巻き込まれてるのも確かだと思うけど。
凍弥 「───っ!」
彰利 「ややっ!?」
ちと考え事を巡らせた瞬間、小僧が椛にチスをした!
……しかし、椛は目を覚まさない。
凍弥 「……おい、彰衛門」
彰利 「カスが……。そげな勢いだけのチスで目覚めるわけねぇだろうが……。
もっと濃厚に、愛情を極限まで込めたチスをするんじゃ!」
凍弥 「なっ……!!け、けどなぁっ……!!」
彰利 「お?なんだ?椛がこのまま死んでもいいってのか?お?」
凍弥 「っ……!!お、覚えとけよ彰衛門……!!」
彰利 「忘れましたじゃ!!」
───……。
───………………。
彰利 「………」
そして早くも後悔。
今目の前では、小僧が椛に濃厚なチッスをしておりますが……
いやはや、顔が灼熱するような状況ですな。
半ば感情が浮上したもんだから、こういう場面が恥ずかしゅうて仕方ない。
さて、ここで問題になるのが───ホントにこれで目覚めるかどうかだ。
かれこれ一分近く熱いベーゼを見せつけてくれてる小僧だが、
一向に椛が目を覚まさんとです。
彰利 「リヴァっち〜?」
声 『待て。今映像をお前の頭の中に送る』
彰利 「へ?映像って……ってそれより、心を塞いだ理由って?」
声 『だから。その映像を送るっていってるんだ』
彰利 「言われてませんよ?」
声 『……いいから黙って見ろ』
…………。
彰利 「ゲェーーーッ!!ま、まさか椛が超人ではなく人間で、
その状態でサンシャインを倒しただなんてーーーっ!!」
声 『……なんの話をしている』
彰利 「え?なにって……椛が超人じゃなかった所為で倒れてるって話じゃないの?」
声 『……違う』
彰利 「超人強度を譲れば復活できるはずさ!」
声 『人の話を聞け。真面目にやらないなら、帰りの面倒を見ないぞ』
彰利 「冗談です」
ようするに、椛はクソバカ逝屠に言葉巧みに煽られて、心を閉ざしてしまったと。
まったく、馬鹿ですねィェ〜。
彰利 「よし椛よ!聞こえておるな!?この際だからハッキリ言ってやろう!!」
ズイ、と椛に近寄る。
てゆうか、まだ濃厚なチスしてる。
彰利 「お前が塞ぎ込み、心を閉ざしていることにはなんの意味も無し!!
逆上せ上がるなこのたわけが!
貴様が塞ぎ込むことで我らが癒されるとでも思うたか!!
もしそうなら自意識過剰だバカモンが!!
故に今、貴様がしていることは全くの無意味!!
お主ごときが家系の全てを支えられるわけねぇだろうがよォオ〜〜!!
えぇ〜〜〜っ!?しょぉおおおがねぇえなぁああナランチャァ〜〜〜〜ッ!!
というわけで、無駄な抵抗はやめてさっさと起きやがれ!!
パパは『自分の所為だ』と塞ぎ込み、うじうじしてるヤツなど大嫌いです!
うじうじするくらいならそいつのために出来ることをすりゃあいいだろうが!
解るかね!?言ってる意味が解るならとっとと起きれ!!」
───…………ぽたっ。
彰利 「むむっ!?」
ふと、椛の目から涙がこぼれた。
やがてゆっくりと目を開き───驚愕した。
椛 「んむっ───!?」
だって、まだ小僧が濃厚なチッスしてたし。
椛 「………」
一瞬抵抗した椛だったが、すぐに抵抗をやめてチスに身を委ねた。
なんともはや……愛ですなぁ。
彰利 「さて……この場合俺はどうしたらいいんデショ」
FUUUUUM(……。
よし、俺らしくいこう。
彰利 「キャーッ!公衆の面前でぶっちゅの嵐なんてステキ!
とってもトキメキファンタジー!
……ファンタジー?まあいいや、ファンタジー!!」
凍弥&椛『ッ!?』
ビクンと肩を跳ねらせたふたりがババッと離れる。
そしてそれを見守るのは、アタイとアタイがイメージした所為で現れた観衆達。
彼らは役目を終えると、ス〜ッと消えていった。
凍弥 「彰衛門……てめぇ……」
椛 「お、おとうさん……」
彰利 「あら?やめちゃうん?」
凍弥 「普通やめるだろっ!ほんと彰衛門って状況壊すの好きだよなっ!」
彰利 「ハハ、よせよ。褒めたって何も出ねぇぜ?」
凍弥 「出る出ない以前に褒めてねぇよ……」
彰利 「あらら……」
まあ別に、だからどうってこともないんだが。
彰利 「しかし小僧よ。貴様、口が悪いぞ」
凍弥 「そんなことない。俺は元からこんな口調だったんだ。
それが隆正や鮠鷹の影響で落ちついてただけだろ」
彰利 「ホホー……ま、いいコテ。
それより先に進みますぞ。また逝屠が出てきたら厄介だ」
凍弥 「ああ」
椛 「………」
返事をしない椛がちと気になったが、気にせず行くことにした。
───……。
椛 「あのっ……おとうさんっ!」
彰利 「む?なんじゃね」
歩き始めてからしばらくして、椛が声を張り上げた。
振り向いてみれば、俯きながら何かを言おうとしてる椛。
……もしや廁(?
彰利 「……いかんぞ椛。我慢は大敵だ。行ってきなさい」
椛 「え?……………………ぁやっ!ち、違うよぉっ!!そうじゃなくてっ!!」
凍弥 「?」
ならば一体なんだというのだ……!?
小僧がクエスチョンを飛ばす中、俺は考えた。
彰利 「───そうか!腹が減ったんだな!?
よしよし、しょォオ〜〜がねぇええなぁ〜〜〜っ!!
今美味いものを創造してやるよォナランチャァア〜〜〜ッ!!」
椛 「それも違うぅっ!」
彰利 「なんとまあ……ならば……」
なんだ……?考えろ……!
俺にはそれが出来る筈だっ……!!
彰利 「……フッ」
凍弥 「ヘンにニヤケると怖いよな、彰衛門って」
彰利 「黙ップ!!……ようするに椛よ。貴様はマツタケモドキが食いたいんだろ。
えぇーーーっ!?あたしにゃちゃーーんと解るよ!!」
凍弥 「腹が減ったわけじゃないって言ったじゃないか」
彰利 「もちろんだ。知ってて言った」
凍弥 「……ほんと彰衛門って、話の腰折るの好きだよな」
彰利 「任せろ」
凍弥 「どういう返事だよ……」
呆れる小僧を余所に、アタイは椛に向き直る。
しっかし解らん。
隆正の時代じゃあ楓巫女の考えてることは手に取るように解ったもんじゃが……。
ウウム、アタイもモウロクしたかいのぅ。
───否!断じて否!
彰利 「わ、解ったぞッッ!!貴様ッッ!
アタイが小僧との接吻を邪魔したことを怒っているなッッ!!」
椛 「───……違うよぅ」
彰利 「あの……間がありましたよ?」
微妙ではあるが、やはり恨まれてるらしい。
いやん。
彰利 「では……そうさのぅ」
その時、アタイの思考回路は驚くべき躍動をしてみせたッッ!!
彰利 「はっ!そ、そうか!そうだったのかッツ!」
凍弥 「かッツってなんだよ」
彰利 「お黙り日溜り吹き溜まりーーーッ!!
よいかね!椛はね!アタイにこう言いたかったのYO!!」
アタイは小僧の耳に言葉をそっと囁いたッッ!!
凍弥 「───そ、そうだったのか……」
彰利 「解ったかね!それもこれも、貴様がハッキリしないからだよッッ!!」
凍弥 「あ、ああ!解った!───椛!」
椛 「えっ!?は、はい……?」
凍弥 「俺はこれから、どんなことがあってもお前だけを愛していく!」
椛 「───………あ、え……?な───」
グボンと真っ赤になった椛がうろたえ始める。
クォックォックォッ……小僧を騙すことなぞ容易い容易い……!
ちなみにアタイが小僧に言った言葉は、
『また気まずくなるのが嫌だからアタイに相談しようとしてるのYO』ということ。
小僧はあっさりそれを信じ、椛に赤裸々告白をしてみせた。
これで椛と小僧の中は元通りYO!
彰利 「………」
しかし……なんじゃね?
やっぱからかうにしても、こう……なんてゆうのかのぅ。
彰利 「やはりからかうなら夜華さんか……」
イマイチ反応が甘いんだよなぁ小僧は。
夜華さんはもう、なんてゆうか……体全体で騙されてくれるから面白いってゆうか。
彰利 「さて……」
再び後悔。
目の前では今、小僧と椛が抱き合ってぶっちゅしとります。
あー、よいザマスねぇ、いちゃいちゃ出来る相手が居て。
アタイなんてここ百数年、粉雪とご無沙汰で寂しゅーて寂しゅーて。
今頃なにやってるかなぁ粉雪。
彰利 「───」
凍弥 「……椛……」
椛 「ん……」
ふと思い出すことは粉雪のこと。
で、目の前では人目を憚らずにぶっちゅしまくる小僧と椛。
彰利 「キョッ───キョェエエエーーーーーッ!!!!!」
凍弥 「うわっ!?」
椛 「きゃっ───!?」
彰利 「ウダラなに見せつけてくれとんじゃいわりゃわりゃあーーーっ!!
おどれらアタイがひとりだからってなんば見せつけとるったい!?
あた自分がなんしょっとか解っとーと!?はらくしゃあ!!
今ひとり身の男がデートスポットに放り込まれた時の気持ちが解ったわ!
目の前でイチャイチャイチャイチャ……!!
ウダラ人馬鹿にすんのも大概にせいやぁーーっ!!」
凍弥 「あ、彰衛門がやれって言ったんだろ!?」
彰利 「知らん!」
凍弥 「うっわズリぃっ!!」
彰利 「ア、アタイだってなーーっ!!アタイだって愛しの粉雪が居ればなーーーっ!」
凍弥 「あ……そういえば彼女居たんだっけ。
彰衛門を好きになるヤツってどんなヤツだ?バケモノ?」
彰利 「こっ……粉雪を珍獣みたいに言うんじゃねぇーーっ!!」
凍弥 「うるせぇっ!日々日頃の仕返しだっ!!」
彰利 「おーーーっ!?やるかコナラァーーーッ!!」
凍弥 「やってやる!今日こそは殴らないと気がすまない!」
スカァン!
開幕のベルが鳴った!!
凍弥 「先手必勝ッ!!くらえ彰衛門!!」
ブシィッ!!
凍弥 「ぐはぁーーーっ!!?」
拳を振り上げ走ってきた小僧に毒霧一閃!!
クォックォックォッ!!浅はかよのぅォ〜〜〜ッ!!
彰利 「ほぉっほっほっほ!!あっさりと毒霧をくらいおったわ!!
解るかね!如何に簡単に勝つかが戦略というものなのだよ!!」
凍弥 「て、てめぇーーっ!!」
彰利 「死めぇーーーっ!!」
凍弥 「おわっ!ちょ、ちょっと待───」
彰利 「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!!」
ドゴドゴドゴドゴドゴドゴバコボゴドゴドゴ!!!!
彰利 「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!!」
ボゴボゴドゴボゴベゴシャドゴシャ!!!
彰利 「駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無!!!!」
ベゴボゴドゴベコモキメキ!!!!
彰利 「URYYYYYYYYY(ッ!!!!」
ドゴボゴドゴドゴボゴベコ!!!!!
彰利 「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァーーーーーーーーッ!!!!」
ガゴドカドスベキガゴガゴズドドドボゴッシャーーーッ!!!!
凍弥 「ヤッダァアアバァーーーッ!!!」
彰利 「成敗!!」
欲求不満を満たすが如く、月生力と慈しみの調べを駆使して小僧をボコった。
いやー殴った。
100年分は殴ったかな、うん。
小僧なんて拳圧で浮いてたし。
すげぇサワヤカだよ俺。
なんてゆうか……うん、地球の平和を守りたいと思ってしまうくらい。
守りたいからこそ、早く平和が乱されて欲しいと思う武士のごとく。
椛 「おとうさん……」
彰利 「なんじゃね?」
椛 「あの……あまり無茶しないで……。凍弥先輩、死んじゃうよ……」
彰利 「じゃーじょーぶじゃーじょーぶ!!
月生力流しながら、尚且つ月奏力・慈しみの調べを使って殴ったし!
だから事実上のダメージなぞ鬼塚先生の本気デコピンくらったくらいだって!」
……もっとも、人が吹っ飛ぶデコピンが『くらい』程度の話で済むかどうかは謎だが。
彰利 「で、だ。椛が言いたかったのは家系のことについてだろ?」
椛 「……解ってたの……?」
彰利 「うむ。解ってたうえで遊んでた」
椛 「………」
呆れられております。
しかしまあ、そんなもんでしょ。
俺はもう、なんつーか、誰がどうしようが己を貫くことを旨とすると決めたのです。
彰利 「聞こえてたとは思うが、俺達家系の子孫のこと考えたってどうにもならんぞ。
椛は俺じゃない。俺は椛じゃない。だったら、それで苦悩するのはバカだ」
椛 「でも……わたしの所為で……」
彰利 「……あのな、本気で怒るぞ?逝屠にも聞いたんだろ?
椛に、俺達の辛さは背負えやしない。妙な気を使うのはやめてもらおうか」
椛 「おとうさん……」
椛の表情に『怯え』の色が現れる。
それでも俺は構わず言葉を繋いだ。
彰利 「よいかね?お前さんにはお前さんの辛さがある。
逝屠がどう言おうが、それが椛が背負うべき重さじゃろうが。
それと同じで、俺達は俺達の背負うべき重さがあるんじゃよ?
その個々の重さを比べる必要など、どこにあろうか」
椛 「………」
彰利 「うぬがじいやのことで『悪い』とか思っておるのなら、それは気の所為じゃ。
じいやは家系の子として産まれたお蔭で真の友情を知った。
普通に生きておったら、一生かかったって解らぬことじゃった」
椛 「あ……」
彰利 「辛さがあるから解ることがあり、学んだことを忘れぬものなのじゃ。
連鎖反応といってな、
辛いことを思いだした時、学んだことさえ思い出せるんじゃ。
一度犯した過ちを繰り返さぬよう、心に戒めをつける。
そうして少しずつ成長していくのが人なのじゃ。
その過程で、誰にも迷惑をかけない者などおらんのじゃ。
楓巫女や楓、飛鳥や椛も、そうやって成長したんじゃ。
もちろんじいやも悠介も小僧もそうじゃ。
『迷惑』を恥じるでない。それが、人との繋がりと思うんじゃ」
椛 「迷惑が……人との繋がり……?」
彰利 「世界には、300年生きても解消しきれないくらいの『楽しい』がある。
それと同じで、抱えきれない迷惑もある。
しかしな、迷惑は人との接点のひとつじゃ。
辛いことを誰かが支えてくれたら、それはとっても幸せなことじゃ。
そして……椛には、それを支えてくれる者がおるじゃろ」
椛 「───!」
椛が、地面に転がって黙って架空の空を見る小僧を見た。
彰利 「じいやにとって、それは今まで会ってきた様々な武士どもじゃ。
そして、支えてくれる人に迷惑をかけることの何処が迷惑になる?
それはもはや迷惑ではなく、ひとつの絆じゃ。
じゃから───の、椛……。迷惑を恥じるな。辛さを恥じるな。
お主には既に辛さを支えてくれる者が居て、それも絆になっておる。
わざわざじいやや他の者の辛さを背負うこたぁないんじゃ」
椛 「おとうさん……───っ……おとうさぁん……っ!!」
涙をこぼした椛が、俺の胸に飛び込んできた。
彰利 「ほっほっほ……椛はいつまで経っても泣き虫で、恥ずかしいねぇ……」
椛 「うっく……う、うあぁあああん……!!おとうさん……おとうさん……!!」
俺の胸に顔うずめ、子供のように泣きじゃくる椛。
そんな椛の頭をやさしく撫でてやり、倒れたままの小僧に向けて言葉を放った。
彰利 「……小僧、椛のことを頼んだぞ。その生の限り、支えてやれ」
凍弥 「…………ああ。約束、するよ……彰衛門……」
鼻声っぽく聞こえた声に苦笑する。
ほんと、いつまで経っても手のかかるヤツらだ、と。
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