───WARTRAN・TROOPERS彰利───
───……デゲデデッテデーーーン!!
マキィーーーン!!
彰利 「闇を照らす霊訓!……椛が泣き疲れて寝ちまった」
はい!吾郎さん!
彰利 「意味ねぇ!……って、ひとりノリツッコミしてる場合ではなくて……」
アタイの豪腕の中で安心しきった表情で眠る椛を見下ろす。
いやはや……無邪気な子供のようなツラァしおってからに……。
凍弥 「彰衛門、俺が背負おうよ」
彰利 「お?志願かね。よかろうッッ」
凍弥 「その元気はどっから沸いてくるんだよ……」
彰利 「脳内だッッ!そんなことも解らんのかねッッ!!」
凍弥 「……あー、いいから椛を渡してくれ。
彰衛門だからって、他の男が椛に触れてるのが嫌だ」
彰利 「最初っからそれくらい愛してやりゃよかったんだよ、たわけ。
くだらねぇことで自分の信念曲げんな。
お前はバカみてぇに椛だけを愛してりゃあいい。なに言われたって気にすんな」
凍弥 「なんかすっげぇ言われたい放題な気がするんだけど」
彰利 「当たり前だ。いいか、ホントもう勘弁してくれよ?
お前と椛が幸せになるのは俺の願いでもあるんだ。
それをお前、結婚直前で別れましたなんて言われた俺の気持ちが解りますか?
すっげぇショックだったんだからな?」
凍弥 「……悪い」
彰利 「今度別れたりしたら『真・アンリミテッドストリーム』で地獄見せるからな」
凍弥 「真……?」
彰利 「一度、開祖の力を受け入れたお前なら解るだろ?
ただ一発撃つアンリミテッドストリームじゃなくて、
無限に続く月醒光弾を撃つって言ってるんだ」
凍弥 「───っ!」
小僧の顔が一気に青ざめる。
そしてすぐにこくこくと頷いて見せた。
その気持ち、解るね〜ィェ。
アタイも一度、更待先輩殿にやられたからねィェ〜。
撃ってる最中はてんで疲れないんだけど、撃ち終わるとドッと疲れるのよね。
実際、先輩殿は倒れたし。
アレは確か……ルナっちとセレっちが電撃お茶飲み作法会をしてた時だっけ?
水穂ちゃんのオカルト友達が来て───うむ、たしかそうだ。
凍弥 「あ、勘違いしないでくれよ?
彰衛門に脅されなくても、俺は椛と別れるつもりはなかったからな」
彰利 「その言葉……お前が生きてる内に聞きたかったぜ……」
凍弥 「勝手に殺すなっ!!」
彰利 「待ってろ、今死亡確定書を創造する」
凍弥 「手の込んだことするなぁっ!!」
彰利 「どうして欲しいのかねキミはッッ!!私には全く理解できんよ!」
凍弥 「俺だって理解できんわっ!!」
グウウ……!まったく困ったちゃんだわね〜!!
まあアレだ、ひとまず椛を小僧に渡して、と……
凍弥 「……軽いなぁ。ちゃんとメシ食ってるのか?」
彰利 「小僧と仲違いしてからというもの、メシが喉を通らなかったらしい」
凍弥 「なっ……ほんとか?」
彰利 「ウソじゃ」
凍弥 「ぐっ……!ほ、ほんッッッッとに話の腰折るのが好きだよなっ!!」
彰利 「すげぇだろ!称えろ!崇めろ!」
凍弥 「ンなことするかっ!!」
彰利 「あぁホレ、あんま叫ぶでない。椛が起きるだろうが」
凍弥 「くはっ……!
人を散々からかうくせに、逃げ道だけはちゃっかり用意しやがって……!」
彰利 「……ほんとに逃げ道用意できてるなら、
今までボコボコにされませんでしたよ?」
凍弥 「───……そうだな、ごめん……」
真剣に謝られてしまった。
俺って何?
彰利 「しっかしさぁ、結局この世界の何処に辿り着ければゴールなんだ?
だだっ広すぎて解らんよ。果てしないとはまさにこのこと」
凍弥 「確かに。ここまで広いと先が思いやられるよ」
彰利 「というわけでだ。ここはひとつ、手分けして探すとしよう」
凍弥 「手分けして?……こんな広い場所で手分けしたら、
今度は会えなくなるかもしれないぞ?」
彰利 「安心するんじゃポルナレフ。手分けるのはアタイのみぞ!」
凍弥 「……へ?」
彰利 「うんだら〜かんだら〜、ナマステナマステ〜……ぬおおーーーっ!!」
ギガーーーッ!!
凍弥 「おわっ!?……って、うひゃぁあああああああっ!!!!?」
彰利×4『イエッサー!』
小僧が叫んだ。
それもその筈、今小僧の前には……
てゆうかアタイの前にも、四人のアタイが居るのですから。
四人のアタイは迷彩軍服姿で、銃をジャキッと構えてみせた。
彰利 「これぞ創造奥義!“戦術的軍隊系彰利組(”なり!
いいかヒヨッ子ども!これから始める訓練は深層探しだ!」
彰利1 『誰がヒヨッ子だこの野郎!』
彰利2 『頭あったけぇのかカスこの野郎!』
彰利3 『このカス!カスがっ!カスめ!カスめ!』
彰利4 『このクズ!クズがっ!クズめ!クズめ!』
彰利 「やかましい!いいから黙って行動開始!」
彰利×4『Sir!Yes・Sir!!(』
彰利 「よし小僧!貴様はアタイと一緒に行動だ!深層部分が見つかったら、
こいつらが野太い声で『ゴワァッ!メーデー!』って叫ぶから!」
凍弥 「あ、ああ!解った!」
彰利 『各自解散!この世界の深層部分を探せ!』
彰利×4『Sir!Yes・Sir!!(』
デンデデゲデ・デンデデンデ・デンデデゲデデッテーン♪
デンゲデゲデ・デンデデンデ・デンデデンデデ〜ン♪
デンデデゲデ・デンデデンデ・デンデデゲデデッテーン♪
デンデデゲデデンデデゲデ・デンデデゲデデーン♪
彰利 「って!なんでお前ら付いて来てんの!?」
彰利×4『うおーーっ!テリー教官に続けーーっ!』
彰利 「誰がテリーだこの野郎!!」
彰利×4『遅れをとるなーーっ!!撃てぇーーーっ!!』
ドパタタタタタタ!!!
ビスビスビスビス!!
彰利 「いででででででで!!!な、なにしやがる!!」
彰利1『テリー教官を撃ちました!Sir(!!』
彰利 「教官撃つなよ!なんなのさキミ達!!」
彰利2『いいから進めテリーこの野郎!!』
彰利 「テリーじゃねぇって言ってるだろがこの野郎!」
彰利3『ウォ〜〜〜〜〜〜イェッサ〜♪』
彰利 「歌うなタコ!」
彰利4『ウォ〜〜〜〜〜〜イェッサ〜♪』
ズパタタタタタ!!
ビスビスビスビスビス!!!
彰利 「いでででで!!う、歌いながら撃つんじゃねぇーーーっ!!」
彰利×4『Sir!Yes・Sir!!(』
彰利 「お前らそれ、ノリで言ってるだけだろ!!」
彰利×4『NoSir!!(』
彰利 「ウソつけこの野郎!!」
デンデデゲデ・デンデデンデ・デンデデゲデデッテーン♪
デンゲデゲデ・デンデデンデ・デンデデンデデ〜ン♪
ガラタタタタタ!!
ビスビスビスビス!!
彰利 「ギャッ───ギャヤヤァーーーッ!!
WARTRAN・TROOPERS(の音楽流しながら銃乱射すんなぁーーっ!!」
デンデデゲデ・デンデデンデ・デンデデゲデデッテーン♪
デンデデゲデデンデデゲデ・デンデデゲデデーン♪
ガラタタタタタタ!!!
ビスビスビスビス!!
彰利 「や、やめろーーっ!!よってたかって卑怯だぞてめぇらーーーっ!!」
カチッ!カチッ!
彰利1『おやっ!?弾切れだ!どうするハリケーン二等兵!!』
彰利2『銃を下に向けることで次弾リロードだ!』
彰利3『流石だぜハリケーン二等兵!!』
彰利2『誰がハリケーンだこの野郎!!』
凍弥 「……うわぁ」
小僧が、呆れとも哀れみともとれない声を出した。
凍弥 「なんてゆうか……彰衛門って創造されてもあんなのなんだ……」
彰利 「あんなの扱いかよ……」
こいつ、ここに来てから遠慮が無くなったんじゃねぇですか?
まあ、俺としてはそっちの方が気楽でいいけど。
彰利1『全員リロードは済んだか!?』
彰利4『まだだ!ちょっと待てコラ!』
彰利3『早くしろスレンダー二等兵!!』
彰利4『誰がスレンダーだこの野郎!!』
彰利3『お?なんだ?やンのかコラ!』
彰利2『喧嘩しよ〜って気かコナラァ!』
彰利1『あ〜〜ん!?』
イチャモン付け合い、やがて争いを始めるトルーパーズ。
いや……もうなんてゆうか……。
凍弥 「……てんで協調性がないのな……」
彰利 「言うな……自分で見てて情けねぇ……」
まさにその通り。
アタイってば自己主張が強いから協調性ってもんが取れやしねぇのです……。
そげな自分の珍態を見られるのはとんでもなく恥ずかしいものでした。
しかもしばらく傍観してたら、
トルーパーズどもは互いに打ち合って勝手に消滅していったし……。
なにやりたかったんだよ、あいつら……。
───……。
彰利上等兵『イェッサァッ!』
彰利 「………」
凍弥 「………」
……で。
俺と小僧の前には、勝ち残った彰利2。
勝ち残った所為かどうかは解らんけど、階級章がグレードアップしてやがる。
仲間殺しといて階級上げんなっての……。
彰利上等兵『オラ!てめぇテリーこの野郎!さっさと進めこの野郎!』
しかも階級上がったからって、すげぇ偉そうだ……。
彰利 「さっきまで人のこと教官とか言ってたくせに……」
彰利上等兵『うるせぇハゲ』
彰利 「ハッ───ハゲとな!?」
凍弥 「……どうだ?ハゲてもないのにハゲって言われる気分は」
彰利 「他のヤツはどうでもいいが俺に向けては許さん!」
凍弥 「少しは申し訳無いとか思ってくれよ頼むから!!」
彰利上等兵『なにやってんだハゲテリーこの野郎!!いいから進めこの野郎!!』
彰利 「…………ところでさ、俺ってあんなに『この野郎』って言ってた?」
凍弥 「自覚がないって素晴らしく愚鈍って意味だと思わないか?」
彰利 「いえ、微塵にも。なに言ってんのかね、このカスは」
凍弥 「きッ……訊いておいてこの言い草ッ……!!」
さて、血管ムキムキにして怒ってる小僧は無視するにしてもだ。
彰利 「んじゃ、当てずっぽうで走りまわってみるか。
見る限りじゃあただただ草原が続いてるだけだし」
凍弥 「……そだな。ここでこうやって立ってたってどうにもならないし」
彰利 「立ってたって、って……小僧よ。そのギャグ、とてもつまらんぞ……?」
凍弥 「ギャグじゃないっ!!可哀相な人を見る目で俺を見るなぁっ!!」
彰利 「あーだこーだと注文の多いヤツだな───どうしてほしいんだお前は!!」
凍弥 「あーだこーだ言わせる原因の塊が偉そうに胸張ってんじゃねぇーーーっ!!!」
彰利 「お黙り!いいから行きますわよ!」
凍弥 「あっ!まだ話は終わって───」
小僧を無視してダッシュ!
アタイには執着地点がなんとなく読めていたのだよっ!
今この景色にあるのは草原!
しかも夕暮れと来たら、あれっきゃあるまいて。
アタイはよ〜〜〜く周りに注意しながら走った。
そう……あの『約束の木』を目指して。
小僧も俺に遅れないようについてきてくれた。
さあ、あいつを救ってやろう。
他の誰でもない、俺達の手で……!
デンデデゲデ・デンデデンデ・デンデデゲデデッテーン♪
デンゲデゲデ・デンデデンデ・デンデデンデデ〜ン♪
デンデデゲデ・デンデデンデ・デンデデゲデデッテーン♪
デンデデゲデデンデデゲデ・デンデデゲデデーン♪
彰利 「お前は付いてくんなァーーーッ!!!」
彰利上等兵『イェッサァッ!!』
彰利 「イエッサーって言ったなら去(ねやっ!!」
彰利上等兵『ノォサーッ!!』
彰利 「こ、こンのわらしゃあ!!」
凍弥 「てゆうかふたりとも足が速すぎだ!もうちょっとゆっくり走ってくれ!!」
彰利 「椛抱えてんだから無茶な走り方するんじゃありません!
もし椛を起こしたりなんかしたら殴りますよ!?」
彰利上等兵『俺は撃つ』
凍弥 「無茶苦茶言うなぁっ!!」
───…………。
やがて。
ふと見えた影に向かって走ると───景色が変わった。
傍には弦月屋敷があって、その先の裏には……忘れもしない、あの草原。
間違い無い───もし悠介がこの世界に居るとしたら、ここしか有り得ない。
彰利 「……居るんだろ?出て来い」
彰利上等兵『イェッサァッ!!』
彰利 「お前じゃねぇって!」
彰利上等兵が手持ち無沙汰でうろうろしてる中、約束の木の上部が光った。
光はゆっくりと上から下へ降りるように、草原へとドパタタタタタタ!!!!
彰利 「ゲゲェーーーーッ!!!!」
降りてきた光に向かって、銃が乱射された!
撃ってるのは考えるまでもなく───
彰利上等兵『ウォ〜〜〜〜〜……イェッサ〜♪』
彰利上等兵だ……。
彰利 「イェッサーじゃねぇーーーっ!!何撃ってんのさアンタ!!」
彰利上等兵『押忍!あの怪しい光を撃っておりますSir!!』
彰利 「発砲待てェーーーィ!!」
彰利上等兵『だめだ』
彰利 「なんでこの時だけ『ノォサー!』じゃないの!?
てゆうかなんで『押忍』!?もう訳解らんよキミ!!」
凍弥 「どっこいどっこいだと思うけど」
彰利 「失礼な!俺はもっと状況を大事にする男ぞ!?」
凍弥 「すごくウソくさいんだけど……」
彰利上等兵『まったくだ』
彰利 「お前に言われたかないわっ!!」
そうこうしてる内に光は草原に降り立ち、人のカタチを作った。
そしてそのカタチってのは……悠介だった。
悠介 『……来る頃だと思ってた』
彰利上等兵『Sir!Yes・Sir!!(』
彰利 「お前もう消えてくれ!頼むから!」
彰利上等兵『ノォサー!!』
悠介 『………』
凍弥 「あ、あのさぁ彰衛門……?悠介さんさ、ホラ……呆れてるから、さぁ……」
小僧が恥ずかしそうにしながらそう言った。
どうやら仲間と思われてるのがとてつもなく恥ずかしいらしい。
愚かだねぇ、人間ってのは馬鹿出来る内が華なのに。
悠介 『どっちが本物だ?』
彰利上等兵『自分であります!』
彰利 「甚だしいウソだから無視しちゃっていいよ」
彰利上等兵『じ、自分に対して、冷徹なまでのこのツッコミ……ッ!!』
彰利 「フッ……冷静に考えてみれば、貴様の弱点など知り尽くしているのだよ。
貴様がどう足掻こうが、アタイには勝てん」
彰利上等兵『グ、グウウ……!』
悠介 『……戯言なら余所で言え。お前はここに何しに来たんだ』
彰利 「悠介を救いに来たんだけど」
悠介 『……ふむ。どう救うつもりだ?』
彰利 「フッ、知れたこと。
貴様がアタイに引け目を感じてることがお門違いだってことを、
今から貴様に思い知らせてやるのよ〜〜〜っ!!」
悠介 『実力行使か。いいな、そういうのは嫌いじゃない』
悠介が目を変異させる。
一瞬躊躇ったが、考えてみればここは約束の木の黄昏。
拳を交えるのに支障なんてない。
彰利 「いいぜ、いっちょ喧嘩しようか」
悠介 『この世界での【俺】は無限だ。遠慮しないでかかってこい』
彰利 「ハンッ!言われるまでもねぇよ!」
俺と悠介は向かい合い、その少ない距離を一気に潰すように爆ぜた。
ドッバォオオオオオン!!!!!
凍弥 「うおわぁぁああああっ!!!」
彰衛門と悠介さんがぶつかり合った途端、凄まじい突風が吹いた。
いや、突風じゃない……衝撃だ。
とんでもない力と力のぶつかり合いだ……!
凍弥 「だってのに……」
だってのに、ふたりの表情にあるのは笑み。
油断したら死んでしまうような攻防の中で、ふたりは確かに笑っていた。
ボンッ!
悠介 『ハッ!吹き飛んだ腕が出ます!』
ズリャアッ!
彰利 「チッ!やっぱ腕が無くなっても再生可能か!こうなったら一発デカイので」
悠介 『させるかよ───!掌破ァッ!!』
ドバァン!!
彰利 「ゲホォッ!───ぐ、っはぁ……っつ……!」
悠介 『詰めるぞ───堪えてみせろ!』
彰利 「上等!」
……馬鹿みたいに信じられない攻防が続く。
破壊されたら治し、治されたら破壊し。
ダメージを受ければ回復し、回復されたらさらに畳み掛ける。
こんなふたりが親友同士だったのが信じられないくらいに、
その攻防は想像を絶するものだった。
彰利 「シャラッ!」
ブシィッ!
悠介 『甘いんだよっ!毒霧はもう見飽きた!』
彰利 「だろうな!ほぅれサミング!!」
ブス!
悠介 『ごわぁあああああああっ!!!!』
彰利 「詰めが甘いな悠介っ!キメさせてもらうぜ───アルファレイドォオオ!!」
悠介 『月鳴力───退魔の絶対防御壁!!』
彰利 「と見せかけてナッパさんの爆裂衝撃波!!」
クンッ───!
悠介 『なっ───』
彰衛門が人差し指と中指を伸ばした状態で、それを下から上へ振り切る。
その刹那、悠介さんが居た場所の地面が炸裂して、その衝撃波が悠介さんを飲み込んだ。
彰利 「クォックォックォッ!!馬鹿め!
アタイが考えも無しに動きまわっていると思うたか!
全ては貴様が引っ掛かるようにするための伏線さ!
では参る!!アンリミテッド・ブラストサークル!!
かつて更待先輩殿にやられたアンリミテッドストリーム連発砲を準備!
さあ今こそ、かつての恐怖を心に秘めて創造開始!!
アンリミテッドストリィイイイイム!!!!」
ヒィイイ───ン……バガァッ!チュゥウウウウン!!!!
まず最初に、幾筋もの光が悠介さんに向かって飛翔した。
開祖の力を受け取った時の記憶からするに───あれはホーミング・レイ。
小さな線状の光だけど、その実体は圧縮された月醒の矢だ。
それを今度こそ退魔の壁で防ぐ悠介さんに、さらに光は飛翔する。
ホーミング・レイ、ガトリングブラスト、ブラストイングラム───
そこからアンリミテッドストリームの無限発射とも思えるほどの連発と、
その連発で相手の動きを完全に封じながらの───超圧縮の神屠る閃光の矢。
彰利 「───チェックメイトだ。貫けぇえーーーっ!!!!」
幾つものアンリミテッドストリームの中、一筋の純粋な光の矢が飛翔する。
それは退魔の壁に当たった刹那にそれを軽々と破壊して見せ、
悠介さんの体を丸ごと吹き飛ばした。
が───
悠介 『へっ……やっぱ手加減無しで戦えるってのはいいもんだ』
彰利 「へへっ、違いねぇや」
悠介さんはすぐに再生し、彰衛門と向き合った。
彰利 「いいか悠介っ!この戦いを気が済むまでやったら、
俺に対するヘンな同情はやめやがれ!いいなっ!」
悠介 『言われるまでもないっ!俺は気持ちの整理のきっかけが欲しかっただけだ!』
彰利 「うむいい返事だ!サブリガをやろう!はきたまえ!」
悠介 『全力でいらん!!』
彰利 「うわヒデェ!わざわざ恥じを偲んで創造したのに!
そんな冷たいキサマにサブリガプレゼント!!」
悠介 『いらんと言っている!!』
彰利 「うむ!元気がいいな悠介よ!サブリガをはけ!!」
悠介 『しつこいわっ!!』
……彰衛門はなにやらブルマみたいな履き物を創造して、悠介さんに奨めた。
が、尽く断わられている。
真面目にやる気があるのかどうか。
彰利 「そこで溜め息吐いてるキサマ!いい度胸だ!サブリガプレゼント!」
凍弥 「い、いらんわそんなもん!!」
彰利 「なんだとてめぇ!!てめぇ今、全国のサブリメンを敵に回したぞ!
そんな命知らずなキサマにサブリガを進呈!はきたまえ!!」
凍弥 「誰がはくかっ!自分でやってろ!」
彰利 「甘いわ!既にやっておるわ!」
凍弥 「な、なにぃっ!?」
彰衛門がバッと指差した先には、
サブリガとやらを穿いて妙な構えを取ってる彰利上等兵。
彰利上等兵『イェッサァッ!!』
てゆうかまだ居たんだ、あいつ……。
デンデデゲデ・デンデデンデ・デンデデゲデデッテーン♪
デンゲデゲデ・デンデデンデ・デンデデンデデ〜ン♪
彰利上等兵『うおーーっ!!テリー教官に続けーーーっ!!』
悠介 『───やかましい』
パチンという音。
悠介さんが指を弾くように鳴らすと、
彰利上等兵の周りに様々な色の光の群集が現れた。
彰利上等兵『ゲゲェーーーッ!!!』
その光は彰利上等兵を容赦無く射抜き続け、
粉微塵になったところで大爆発を起こして欠片も残さなかった。
……容赦ないというか、普通にくらったら塵も残らなそうだ。
彰利 「これ!そげな技があるならゼノの時に使いなさいよね!?」
悠介 『悪いな。これは創造の理力が完全に体に馴染んで、
尚且つ俺の中の死神の協力あってこその力なんでね』
彰利 「なんと!?悠介の中にもやはり死神が!?
どこじゃね!屠ってやるから出しなさい!」
悠介 『安心しろ。お前の中のレオと違って、こっちの死神は俺とは友好的だ。
害になったりはしないさ』
彰利 「なんとまあ……て、そういや悠介ってそういうヤツだったよな〜……。
なんでか死神には気に入られやすいっつーかなんつーか……」
悠介 『結論が出たなら、燻る理由もないだろ?全力で来い』
彰利 「……へへ〜♪」
悠介さんの言葉に、彰衛門がにんまりと笑ってみせた。
彰利 「開幕直後より鮮血乱舞、烏合迎合(の果て名優の奮戦は荼毘(に付(す!
廻せ廻せ廻せ廻せ廻せ廻せェーーーーッ!!!!」
彰衛門が妙な言葉を叫ぶと、悠介さん目掛けて高速回転する風の刃が飛翔していった。
悠介 『───月然力かっ!』
彰利 「ご名答!そして貴様はそれを絶対に避けられん!
言っておくが、そのウィンドカッターはヤムチャの操気弾並に追跡するぞ!
とぉーーーーーっ!!!!」
ボンッ!
彰利 「あ」
悠介 『……だったら、もう少し強靭な風を作るこったな』
彰衛門が飛ばした風は、あっさりと破壊されてしまった。
所詮、ヤムチャか。
彰利 「お、おのれぇーーっ!!
鼠よ廻せ!良心をさかしまに誕生をさかしまに世界をさかしまに!
廻せ廻せ廻せ廻せ廻せ廻せェーーーッ!!!!!」
またよく解らないことを言って、今度は風を大量に飛ばす彰衛門。
真面目にやる気があるんだろうかとか思ったけど、
この世界での戦いに真面目だとかどうかは関係ないって感じた。
凍弥 (……あのふたりがあのふたりらしく喧嘩することが、
この世界に必要とされてることなんだ)
そう思ったからだ。
悠介 『数を増やせばいいってもんじゃないっ!オォラァッ!!』
ゴッ───バァン!!
悠介さん、腕を思いっきり振って突風を創造して、彰衛門の風を簡単に消滅させた。
彰利 「ゲゲッ……!なんとまあ……!」
悠介 『手ェ抜くなよ彰利。本気でこいっ!』
彰利 「の、望むところじゃあーーっ!!」
……ふたりはまたぶつかり合う。
結構離れてるってのに、こっちにまで衝撃が飛んでくるほどの大喧嘩。
そんな光景に呆れながら、
あんな風に無茶が出来るふたりの『友情』が羨ましいって思えた。
椛 「ン……う……?」
凍弥 「あ……起きたか?」
椛 「あ、れ……凍弥先輩……?あ、きゃっ!?
ど、どうして先輩に負ぶさってるんですかわたしっ!」
凍弥 「倒れたから。立てるか?」
椛 「はい……それは大丈夫ですけど……」
椛を草原に降り立たせると、ふたりの喧嘩に向き直る。
かつて、これほどまでに無茶苦茶な喧嘩ってのは見たことがない。
って言うよりは……見れる筈が無い。
椛 「……おじいさまとおとうさん……どうして戦ってるんですか?」
凍弥 「ああ。どうやらさ、この世界でやるべきことってゆうのはね、
悠介さんの心の深淵にある『後悔』の払拭みたいなんだ。
だから彰衛門は全力でぶつかって、
そういうわだかまりみたいなのを吹き飛ばそうとしてるんだと思う」
椛 「そうだったんですか……───あ!」
凍弥 「うん?」
椛が突然、何か重要なことを思い出したように叫んだ。
そして俺の両腕を両手で掴んで、俺を見上げてくる。
椛 「あ、あのですねっ!?
おとうさんが昔、人を殺してしまったのは───
おとうさんの所為じゃなかったんです!
おとうさんがやったんじゃなかったんです!!」
凍弥 「……落ちついてくれ椛、話が見えない。
焦らなくていいから、ゆっくり話してくれ」
椛 「…………随分久しぶりに聞きました、その言葉」
凍弥 「へ?……そうか?」
椛 「はい。でも……落ちつきました」
椛はうんと頷いてから、もう一度俺を見上げた。
椛 「わたし、見たんです。
おとうさんの母親が殺されて、おとうさんが暴走した場面を。
けど、それはおとうさんじゃなかった。
その時、神社に集まってた家系の人達を殺したのは、
その時初めて覚醒した、レオ=フォルセティー───
おとうさんの中に存在する死神だったんです」
凍弥 「………」
俺にはちょっと解らないことが多いけど。
ようするに……彰衛門が殺したかもしれなかった人達は、
彰衛門じゃなくて彰衛門の中の死神が殺したものだってことだよな?
彰衛門は言葉ではどうとでも言うけど、人を殺すとかのことが大嫌いな筈だ。
だったら───
凍弥 「彰衛門!彰衛門は人殺しなんてしてないぞ!!」
彰利 「はいっ!?いきなりなんばぬかしおるかチミィッ!」
ボゴシャア!
彰利 「ヘキャアーーーッ!!!!!」
ゴロゴロズザザァアアーーーーッ!!!!
凍弥 「うあ……」
俺の声に振り向いた彰衛門は、悠介さんに思いっきり殴られた。
そして俺と椛の居る場所まで滑ってきて、
現在『グビグビ……』と言いながら泡を吹いてる。
彰利 「げっほ!……ってぇ〜〜〜っ……!!で?アタイがなんじゃって?」
……それで平気なのが不思議だ。
さすが彰衛門。
椛 「おとうさん!おとうさんが子供の頃に犯してしまった殺人は、
おとうさんじゃなくてレオがやったことだったの!」
彰利 「……なんでまた、椛がそげなことを知っておるの?」
椛 「わ、わたし見たの。この世界のおじいさまの記憶の欠片を。
丁度その景色が見えて、おとうさんは人を殺してた。
でも……その目は完全に死神に飲まれた目で、
意識は完全にレオのものだったの!」
彰利 「なんとまあ……マジすか?
……しかしの?椛……。この世界は自分のイメージを反映させるんじゃ。
これがこうだったらな、って想像ももちろんじゃ。
だから椛が見た景色は、椛が『こうだったら』って思った幻像かもしれぬ」
椛 「あ……」
彰利 「ぬか喜びさせてしまって、すまんかったのう……。
じゃが、じいやの両腕が血に染まってるだけで、答えはもう出ておるから……」
それだけ言うと、笑ってみせた彰衛門は悠介さんに向かって駆けていった。
凍弥 「椛……」
椛 「……そんなことない……。おとうさんが人を殺しちゃったなんて……ウソ……」
椛は、自分が彰衛門の助けになってやれなかったのが悲しかったようだ。
思えば、今まで助けられっぱなしだった俺達。
そんな彰衛門に恩返しがしたいと思うのは俺も一緒だった。
けど……現実はそんなに甘くない。
『もしあの時こうだったら』なんて願いは、いつだって壊されるものだ。
だけど。
希望を持つことは、決して悪じゃない。
凍弥 「椛、俺達が信じればいい」
椛 「え───?」
凍弥 「彰衛門が人殺しをしただなんてことを、俺達が信じなければいい。
俺達は彰衛門がそんなヤツじゃないってことくらい解ってる。
俺はふざけてる時の彰衛門はちょっと苦手だけど、
あいつが信用するに足りてるヤツだなんてことはずっとずっと昔から知ってた。
だからさ、他の誰が疑おうが、俺達が信じればいいんじゃないかな」
椛 「……はい……そう、ですよね。
……そうですよっ、おとうさんは人殺しをする人なんかじゃありませんっ」
凍弥 「そういうこと。だから、俺達にとっての彰衛門を信用しよう」
どこか清々しい気持ちで前を見た。
思えば、俺は自分の存在が危うくなってから、どこかで人を疑ってたかもしれない。
けど……今。
彰衛門に対するこの信用はウソじゃない。
あいつはなんだかんだ言って人のことばっかり心配するし、
かと言って馴れ馴れしくするんじゃなくて、純粋にぶつかってきてくれる。
今の俺にとって、裏表の無い自然体でのぶつかり合いは嬉しいものだったから。
彰利 「信用しよう……信用、しよう……?あの、すっげぇつまらんよ?それ」
凍弥 「ギャグじゃないって言ってるだろうがっ!!
てゆうかどういう聴力してるんだよ!」
彰利 「王様の耳はロバの耳!」
凍弥 「意味の通じる言葉を選べよ!」
彰利 「断わる!笑いとからかい大前提!それが『漢』の生きる道!!
アタイの居るべき時代には『咲桜 純』という、
漢の道を歩む男が居ると聞いた……。
その者、凄まじき『からかいの修羅』にして、
おなごにウツツをぬかさぬ『超・雄度』を持ちし者と聞いた……。
その割に女難の相がありまくるとかで、毎度女難を被ってるとか」
凍弥 「……なんでそんなに詳しいんだ?」
彰利 「いやさ、人気があるオカマ情報屋ってのがその時代の昂風街に居てさ。
たしか『美都 明』っていったか?
そいつに『オモロイ雄はいねがー!』って聞いてみたら、そいつの名前が出た」
凍弥 「………」
オカマ情報屋って……。
彰利 「一度その街に行ってみたんだけどね、なにやらすっげぇ息苦しいのね。
月詠街が『死神属性』なら、あの街は間違い無く『神属性』だ。
アタイってば死神の血が濃いからね、神系統の領域は息が詰まるのよ。
でも妙じゃのう、神属性って言ったら神界の存在の領域じゃよね?
シェイドが言うには、神界は他の世界との干渉が少ないらしいが……。
もしかしてあの街周辺にぎょーさん神が居たりして……なぁんて」
凍弥 「彰衛門、前」
彰利 「へ?ギャア!!」
ボゴシャア!!
彰利 「つぶつぶーーーっ!!!」
彰衛門、余所見をしていた所為で悠介さんの本気パンチをまともに食らった。
彰利 「うきっ!うきっ!うきぃいいーーーっ!!!」
しかも顎が砕けたようで、顎を押さえながら転倒して暴れてる。
悠介 『どうした、それで終わりか?』
彰利 「ええいまだぞ!完全燃焼にはまだ遠いわぁーーーっ!!」
悠介 『そうこなくちゃなっ!』
……で、また始まる戦い。
よくもまあ、あんな激しい戦いを続けられるもんだ。
ちょっとついていけなかった。
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