───殺人鬼の最期───
───……。
デイヴ『フッ!!』
ブオッッ!!
蝶のように舞い───
デイヴ『チィッ!上手く避けたな!』
蜂のように刺す(!!
ベゴシャア!!
デイヴ『ぶはっ!?』
攻撃を避けてから、デイヴの顔面にストレートパンチ一閃。
これぞ伝説のマホメド・アライ戦法。
その戦法のためか、タフなデイヴが一パツでスッ飛んだッッ!
デイヴ『………』
彰利 「あら……」
殴られた場所を拭いながら、デイヴがアタイを睨みつけてきた。
デイヴがブチ切れた…………。
ああなってからのデイヴは厄介だぞ……。
デイヴ『……さっきから人のことをデイヴデイヴ言いやがって……』
彰利 「あ、あら!?声に出てた!?」
デイヴ『バッチリとなっ!!!!』
彰利 「キャーッ!?」
デイヴが疾駆した!
アタイはそれに合わせて掬(い上げるようなアッパーカットを狙う!!
しかしあっさりとかわされた。
彰利 「ゲゲェエエーーーッ!!!」
デイヴ『このタゴサクがぁーーーッ!!!!』
彰利 「キャッ───キャアアーーーーーッ!!!!」
ドカベキゴスボゴドカボカドゴベキガンガンガン───!!!
───……。
彰利 「グビグビ……」
デイヴ……悠介にボコボコにされたアタイは、泡を吹きながら倒れていた。
すると悠介がハァと溜め息を吐いて、アタイの手を掴んで起き上がらせた。
彰利 「げっほ!……グ、グウウ……」
悠介 『ったく……ふざけなけりゃお前の勝ちだってのに……』
彰利 「無茶言うでね!!
アタイはダメージ蓄積されるけどそっちは再生無限でしょうが!
それでどうやって勝てと言うかねッッ!!」
悠介 『ああ、そりゃそうか。ま、なんにせよ胸貸してくれてサンキュ。
お蔭でスッキリした。……大体、お前に遠慮するなんて俺らしくもなかった』
彰利 「当たり前だこの野郎。
アタイは遠慮とか同情とかされんのが一番嫌いなんですからね。
それを一番の親友にやられてみなさい、相当ショックですよ?」
悠介 『ははっ、悪い』
彰利 「……つーか……もう気が済んだのかね?」
悠介 『ああ。お前への無駄な同情もなにもかも、全て捨てるよ。
俺達は友達で、互いが互いであるみたいに振る舞ってればいい。
自分に遠慮するヤツなんて居ないんだからな。容赦なくぶつかれる』
彰利 「オウヨ」
うむうむ、これでこの世界でのやるべきことも一件落着ぞ。
彰利 「あ───ところで悠介?
お前と喧嘩したことは、お前の本体も覚えてるものなんか?」
悠介 『いいや。俺はただの精神にすぎないからな。
本体はお前と喧嘩したことは元より、この世界のことなんか解らない』
彰利 「……そか。ようするに貴様がしっかりすりゃあ本体もしっかりするって訳ね」
悠介 『そういうこった』
ふむふむ……。
では、あとは帰るだけじゃよね?
彰利 「んじゃ、アタイはこれで帰るけぇのう」
悠介 『───待て。お前に贈り物がある』
彰利 「贈り物?……なんじゃい」
悠介 『お前の傷薬になればいいと思うけどな。ほら』
悠介はイマイチ理解出来ないことを言いながら手を光らせ、アタイの頭に触れた。
ま、まさかマインドアサシン!?
彰利 「貴様!俺を殺す気か!」
悠介 『な〜にを勘違いしてるんだ馬鹿。
俺の深層意識の記憶を見せてやるって言ってるんだよ』
彰利 「なんとなっ!?」
パキィン!
彰利 「ギャア!?」
景色が弾けた気がしました。
アタイは自分の意識が遠ざかるのを感じ、なんとか意識を強く持った!
彰利 「グ、グウウ〜〜〜!気を抜くと気絶してしまいそうだ〜〜〜っ!!」
悠介 『気絶を促してんだから素直に気絶しろっ!!』
彰利 「なんと!?それならそうと早く言いなさい!」
悠介 『……はあ』
濃度の高い溜め息を吐かれてしまった。
そうこう思っている内に意識は薄れ、アタイはその場に倒れた。
───………………。
そしてその景色を見る。
母親の先にある景色を。
石段を登ってきた悠介は、人々を殺し続ける影を見た。
その影は俺だった筈だ。
なのに、そこに居たのは俺ではなく……漆黒の着衣に身を包んだ死神だった。
その顔に憎悪を感じる。
そいつは間違いなく、レオ=フォルセティーそのものだったから。
見たことなんてないけど、理解出来る。
こいつは俺の中に居る死神なんだと。
レオは悠介を見つけると、まだまだ殺し足りないといった感じで地を蹴った。
悠介へと飛翔し、その大鎌のような腕を振り下ろす。
けど、その腕は自分を貫く。
この場面だけは記憶通り。
だが───レオは舌打ちをしてから鎌を出現させて、その場の『運命』を断ち切った。
その断ち切られた運命は屈折し、有り得ない未来を歪ませて作り上げた。
ようするに……俺が家系の者を殺戮し、悠介をも殺そうとしたという未来を。
記憶までもでっちあげ、その場に居た全ての者の見るもの全ての事実を書き換えたんだ。
なんてデタラメな能力の鎌だろう。
あいつはああやって、世界の秩序を破壊しながら生きてきたってことだ。
『自分は助からない』なんて運命まで破壊した末、悠介に月癒力まで使わせた。
滅茶苦茶だ。
けど……これで全ての辻褄が通った。
俺の腕に見える赤は、血の色なんかじゃなくて───
覚醒したばかりのレオが無茶な能力の発動をしたための反動だったんだ。
現に、レオは自分の手を汚すようなことはしなかった。
殺す際は返り血すら浴びず、手に血など付着しない。
そして、子供の俺の能力がてんで開花しなかったのは……
そんなレオを押さえつけていたためだったんだと理解する。
レオ=フォルセティーは、前世の頃から俺にしがみついていた死神。
家系の重みを知り、闇を背負うように生きていた月永の中の死神。
そいつは魂にしがみつき、転生した弦月彰利に寄生するように生き───
母親を殺され、ショックを受けた弦月彰利の隙をついて覚醒。
……その景色に映る全てのものを否定し、大地に降り立った。
悠介も俺も、誰が悪かったわけでもない。
悠介は作り変えられた運命に巻き込まれただけ。
俺は自分の内なる死神に踊らされていただけ。
全ての元凶は───レオにあったのだ。
でも、そんなことは知っていた。
俺はそれをレオの所為にして逃げるなんてことをしないつもりでいたし、
その心もレイヴナスカンパニーに行った時に、更に確固なものにした。
けど───悠介がそれを証明してくれた。
『殺したのは俺じゃない』と。
ただそれだけのことなのに───
俺の体は呪縛から解き放たれるのを待っていたかのように……
自分の体が、どこか軽くなるのを感じていた……。
そしてこの時……俺が異常なほどに『運命を嫌った理由』が解った気がした。
俺は潜在的に許せなかったんだ。
自分の中にある、運命を左右できる死神の存在が───
───…………。
彰利 「………」
ふと目覚めると悠介の姿は無く。
ただ心配そうに俺を見る椛と、
目覚めた俺を見て小さく溜め息を吐く小僧を見ながら体を起こした。
そして……体の『傷』が減っていることに気づく。
彰利 「……そっか」
なんだかんだで、やっぱり俺はあの事件のことが一番重荷になってたんだろう。
今まで消えていった傷の中で、一番体が軽くなったって実感した。
彰利 「っし!」
俺とレオは、もう個々の存在になっている。
それが確認できただけでも十分だ。
ただ入れ物が無いために、レオは俺の中に居るだけ。
死神が地界の存在になるためには、地界の存在の魂が必要だ。
そしてレオがその魂として選んだのが俺の魂。
レオはいつか、俺を殺しにかかるだろう。
それこそ、『死神』というだけの存在になって俺の目の前に現れてまで。
今は俺の中で俺の経験を食いながら成長している過程……といったところだ。
彰利 「……いいさ。どの道、いつかはぶつかるってゆうなら……」
その時は、全力を持ってブチノメす。
問題は……『死神』が自分の中から出ていくってことは、
俺の中から死神寄りの月操力が無くなるってことだ。
攻撃系統は全部持ってかれるだろうなぁ。
彰利 「……いやいやいや、マイナス思考はこの際ダストシュートだ。
問題なのは、それに対抗できるかどうかだ」
なにせ、相手は世界を丸ごと変えちまうような鎌を持ったバケモンだしなぁ。
……うむ!今はそげなことを考えるのはやめませう!
それよりも───
凍弥 「なあ彰衛門……この世界、歪んできてる気がするんだけど……」
彰利 「奇遇だな、俺もそう思ってたところじゃい」
椛 「もし歪みきっちゃったらどうなるのかな……」
椛がくいっとアタイの服を掴んで見上げてくる。
アタイはそんな椛に微笑んでやり、その頭をやさしく撫でてやると───
彰利 「死にますじゃ!」
爆弾発言を発表した。
凍弥 「恐ろしいことをキッパリ言うなよ!」
彰利 「やかましい!口論するよりも走れ!」
椛 「で、でも……何処から来たのか解らないよ……?」
彰利 「ゲゲッ……」
ぐるぅりと見渡してみても、うっそうと広がる草原のみ。
こりゃあおめぇ、アレだ。
絶体絶命一歩手前ってやつですか?
彰利 「リ、リヴァっち〜〜っ!?」
声 『解ってる。凍弥が今向いてる方向を真っ直ぐ進め。
そこに凍弥が降り立ったゲートポイントがある。そこが一番近い』
彰利 「オーライ!」
凍弥 「よしっ!」
椛 「いきましょう!」
アタイ達は全力で駆け出した!!
凍弥 「って!!ちょっと待てぇーーーっ!!
家系の身体能力に付いていけるわけないだろうがぁーーーっ!!」
彰利 「ええい手間のかかる小僧じゃわい!!」
ガッシィッ!!
小僧を抱え、アタイは更に加速した!!
凍弥 「ま、まだ速く走れるのかよ……!家系ってとんでもないな……」
彰利 「黙っとれ!舌噛むぞ!」
ザクッ。
彰利 「いたやぁーーーーっ!!!」
凍弥 「注意して一秒も待たずに噛むなよ!!」
彰利 「や、やかましゃあーーーっ!!」
凍弥 「うわっ!唾飛ばしながら叫ぶなっ!血が混ざってる!」
彰利 「当たり前じゃあ!こちとらヒューマンぞ!?血が出るのは当たり前ぞ!?」
椛 「ふふふ……っ」
全力疾走の中での小僧との口論を見て、椛は穏やかに笑ってました。
余裕ですなぁ〜。
───……。
声 『よし、そこでいい』
彰利 「ここじゃね!?」
ズシャアと立ち止まる。
そこはただの神社の境内のようだったが、空から光が降りている場所があった。
彰利 「この光の中か?」
声 『ああ、そこで待機しておいてくれ。今、精神を回収する』
彰利 「オウヨ!」
ズズッ……
彰利 「おやっ!?」
ズズズ……!
凍弥 「影……!?」
光の傍に、また影が現れた。
それは予想通り逝屠のカタチを象ると、俺達を見てニヤリと笑った。
逝屠 『逃がすかよ……。お前らはここで死ね』
手には刀。
狂ったような顔で俺達に歩み寄り、その手を振り上げる。
声 『───ブラスト』
消してやろうかと思ったが、それを思う前に光が疾走った。
───ゾボォッ!!!
逝屠 『ゲハッ!!』
飛んできた光に貫かれ、逝屠の体には巨大な風穴が開いた。
光が飛んできた先には───黒衣を纏ったひとりの男。
一目で、そいつが死神だと実感した。
死神 『もういいだろう、汝は潰(えろ。
貴様はこの世界に相応しくない。───“黄昏を抱く創造の世界(”』
死神を中心に、景色が変貌する。
景色が景色を塗りつぶすように広がり、
やがて───境内だった場所は黄昏の草原へと姿を変えた。
逝屠 『フヒヒヒ……!!俺を殺すか、死神……!!』
死神 『殺す?勘違いをするな、堕落者よ。汝は死ぬのではない、消滅するのだ』
逝屠 『あ……?消滅だと?馬鹿言うなよ死神さんよ。
俺はこの世界じゃあ無限の存在だ。悠介の中に住みついた存在だからな。
お前が何度殺そうが、俺は死なねぇんだよ』
ズリュッと、逝屠の体に空いた風穴が再生する。
逝屠 『お前がどうして今まで俺を殺そうとしなかったのかは、つまりそういうことだ。
俺は死なない。だからお前も殺そうとしなかった。
だから俺が殺してやるよ、ルドラ……!』
ルドラ『───』
逝屠 『知ってるぜ?アンタは発現数が少ない所為で、まだ存在が確定してないんだろ。
だから精神の中でしか存在出来ない。
本来蝕むべき宿主に協力なんかしてるから、
死神としての存在が薄れるんだよマヌケが』
ルドラ『薄れているかどうか……汝の力を持って確かめてみればいい。
私は動かん。ただ───』
逝屠 『言われるまでもない───お前は今すぐ消えろ!』
ヒィンッ───ザゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォンッ!!!!!
逝屠 『───ア……、?』
ルドラ『ただ、創造すればいい』
一瞬だ。
飛びかかった逝屠に向けて、宙に創造された幾つもの光の槍が放たれた。
逝屠は全身を貫かれ、既に虫の息だ。
恐らく訳も解らない内の出来事だったに違いない。
逝屠 『あ……、なんだ……?再生、しな……』
ルドラ『“死生担う毒巨槍(”。
残念だったな、その槍で貫かれた傷は、その槍でしか治せぬものだ』
逝屠 『そんな……、悪夢だ……!こんな、規格外の、能力が……』
ルドラ『汝と宿主とでは、背負ったものの重さが違うということだ。
勘違いしているようだから忠告しようか。
私が汝を消さずにいたのは、汝の存在が宿主の意識を強固にしていた故だ。
汝の存在が表に出ることを宿主は嫌っていたからな。
そうなればおのずと気を張り、人としての成長が望める』
逝屠 『───じゃあ……』
ルドラ『ああ、宿主はもう十分強い。そうなれば、枷になる楔も必要ではない。
では、有言実行させてもらうとしよう。なに、刹那に終わる。抗うな』
逝屠 『ヒ───!』
ルドラ『“三十矢の地槍(”───ゲイボルグ』
俺達が立っている光の柱が輝きを増し、やがて転移される頃───
死神のマントの中から眩い光が放たれた。
純粋なる輝きを秘めた光の槍は幾つもの光の矢へと砕け、逝屠に振りかかった。
逝屠 『ヒ、ア───アァアアアアアアアアアッ!!!!!!!』
───それで、生き抗っていた殺人鬼の歴史は……幕を閉じた。
───…………。
彰利 「むはっ!?」
ハッと気づけばリヴァっちラボ。
どうやら何事もなく戻ってこれたらしい。
小僧も椛も、もぞもぞと起きあがるところだったし。
彰利 「しっかし……あの逝屠が抵抗も出来ずに……」
おっそろしい死神じゃったわい……。
ルドラ、っつったっけ?
ヤツとだけは戦わない方がいいだろう。
どこでも『創造の世界』を展開できるヤツと戦ったら、逝屠の二の前になるだけですよ?
幸い、悠介とは友好的らしいから安心だけど……
彰利 「………」
チラリと、眠っている悠介の顔を見る。
彰利 「……本人は知っとんのかね、ルドラの存在……」
いや、多分知らんでしょうな。
精神の悠介と仲がいいってだけかもしれんし。
彰利 「なんにしても……疲れたぁっ……!」
ボテッ。
一度起こした体をまた寝かせ、アタイは少し寝ることにした。
精神行動がかなり疲れることだってのを実感した体験でしたよ……。
リヴァ「眠るのか?」
彰利 「ああ。3時のオヤツの時間になったら起こしてくれ」
リヴァ「ああ、解った。凍弥とそこの女も眠るといい。
今回は精神へのダメージが多かった。休まないと響くぞ」
凍弥 「解った」
椛 「はい……」
リヴァ「特にお前だ、検察官。ダメージ受けすぎだ」
彰利 「自覚しとります……」
体が思うように動かんし。
彰利 「では、おやすみなさいマウス」
リヴァ「……よく解らないけど、おやすみ」
そしてアタイは、泥に浸かるように眠った。
意識はあっと言う間に睡魔に飲まれ、意識が消えていったとさ……。
───…………。
悠介 「う……いっつ……」
ちょっとした頭痛を感じて目を覚ました。
最初に見えたのは見覚えの無い天井。
だが、起き上がってみれば、そこがリヴァイアの部屋だということが解った。
リヴァ「起きたか」
悠介 「ああ……って、あ、あら───?」
どさっ。
起こした体から急激に力が抜けた。
俺は自分が寝転がっていたであろう寝台に倒れ、目をパチクリした。
リヴァ「まだ起きれる体じゃない。少し休め」
悠介 「俺……どうなったんだ?」
リヴァ「倒れた。原因はもう、彰衛門と凍弥と女が片付けた」
悠介 「ん───ああ、なるほど」
いつか俺が彰利の中に入ったのと同じような状況か。
リヴァ「しばらく眠れば治る。精神が弱ってるからな、すぐに眠れるぞ」
悠介 「精神の弱りと眠気がどう繋がるのかは解らんが……
ま、お言葉に甘えることにするよ」
リヴァ「ああ、そうしろ」
倒れたまま動かない体に、当然の違和感を感じながら目を閉じる。
すると大した間もなく、俺の意識は消え失せた。
───…………。
彰利 「我、極めたり」
ニヤリと笑って目を開いた。
体を……動かしてみると───なんの抵抗もなく、既に完治したことを感じた。
彰利 「フッ……まるで死の底から甦ったサイヤ人の気分だぜ」
とかなんとか言ってる内に、他の面々もモソモソと起き出した。
……せっかく俺が特別であることを自慢しようとしてたのに。
悠介 「お……彰利、か……おはよ……」
彰利 「寝惚け気味かね?」
悠介 「あー……ちとボ〜ッとするが……気にするな」
彰利 「そかそか」
ボ〜ッとしてはいるが、
アタイを見る悠介の目が以前よりももっと楽なものになっているのを感じた。
フッ……頑張った甲斐があったってもんだぜ?
悠介 「あー……なんか知らんが……体が軽くなった気がする……」
彰利 「重荷だったんかい……失礼なやっちゃなぁ」
悠介 「……?」
なにか言ってくれようかと思ったが……ま、いいさね。
これで負い目の一切無いフレンドぞ。
……さてと、起きたことくらいリヴァっちに報告せねば。
彰利 「リヴァっち〜……は、どうやらおらんようだな」
ぐるりと見渡してみても、リヴァっちの姿がなかった。
どこに行ったのやら。
凍弥 「う……頭痛ぇ……」
椛 「ズキズキします……」
ふむ、小僧と椛もハッキリと起きたようだ。
彰利 「小僧、椛、リヴァっちが何処行ったか知らん?」
凍弥 「……俺ずっと寝てたから解らないけど……」
椛 「わたしも……」
悠介 「俺が起きた時はまだ居たんだけどな」
ぬう、ここから推理するに……フッ、そうか、便所か。
悠介 「……どうせ便所に行ってるんだろ、とか思ってるだろ」
彰利 「ゲゲッ!?何故それを!?」
悠介 「ややこしいようで単純だからな、お前は。
奇行に走る時はなにしでかすかまるで解らんけど」
彰利 「珍獣のような見解ですな……」
悠介 「似たようなもんだろ?」
彰利 「そうかもしれん」
さて、納得したら腹が減った。
リヴァっち探しはあとにして、まずメシでも食しますか。
アタイはリヴァっちラボのドアに手をかけ、ガチャっと開け放った。
───すると、眼前に広がる、ここよりもファンタジーっぽい……工房?
全員 『───……』
そこに居た全員が固まった。
なんてゆうか、ここは本当に地界ですか?と訊ねたくなるような場所だった。
彰利 「どうなっとんじゃい……」
凍弥 「彰衛門、その横の文字、なんだ?」
彰利 「横?……オウ」
ドアの横の壁に、妙な張り紙があった。
……が、とてもじゃないが読めやしない。
ただ辛うじて、その文字の中に数字っぽいものが混ざっているのが解った。
2と4、だな。
彰利 「なんだと思うかね?」
悠介 「んー……解らん。ドアに関係したことだとは思うが……」
アタイが疑問を抱いてると、ゾロゾロと他の三人もドアの前に来た。
そして一緒に検討。
椛 「これ……空界文字なんでしょうか」
悠介 「恐らくは。地界にこんな文字はないだろ」
彰利 「いや、マサイ文字かもしれん」
悠介 「……何気に、体育祭の時の借り物競争を根に持ってないか?」
彰利 「そんなことねぇぜ?だってホラ、俺って寛大だから!」
メキメキメキメキ……
悠介 「解ったから、ドアノブを強引に捻るのはやめろ」
彰利 「オウヨ!」
凍弥 「この数字、なにかの回数なのか方位とかなのか……」
椛 「ちょっと解りませんね……」
悠介 「回数にしたってなんの回数だかも謎だ。
更に、リヴァイアが戻ってくるかその数字の謎を解かない限り、出られやしない」
それは困る。
アタイは腹減ってるのよ?
外に出て、人気たこ焼き屋『メッサーノ』のたこ焼きを食すんだ。
あの佐古田とかゆうおなごの言葉を信じるわけじゃないが、
食してみたいことは確かナリ。
彰利 「うっしゃあ!この謎……俺が解くぜ!?」
悠介 「期待はしないが迅速に頼む。長い間、家を留守にするとルナがヘソ曲げる」
凍弥 「俺はガッコ行きたいし……」
椛 「わたしも学校が……」
彰利 「フッ、任せたまへ!ドアといえば開けるモノ!つまり!
この4と2の数字は、その回数分開ければどこかへ繋がるに違いねぇ〜〜っ!!」
ガチャリガチャリガチャリガチャリ。
アタイはドアを開けたり閉めたりした!
……しかし意味がなかった。
彰利 「なんで!?───ハッ!
もしやドアの横に書いて、ドアが怪しいと思わせるトラップ!?
ならばドアを開ける装置かなんかがこのラボのどこかにあると見て間違いない!」
アタイは黙って傍観する三人を促して、それっぽいものを探した。
そして───見つけた。
彰利 「ああ、コレなんかステキそうじゃない。
一見、自爆装置のスイッチのようにも見える」
悠介 「……実際、自爆装置なんじゃないか?」
彰利 「そげなことはない。これはきっと、アタイたちを外へと導く希望のスイッチよ?」
凍弥 「けどさ、思いっきり強化ガラスっぽいものでシールドされてるじゃないか」
彰利 「きっとシャイなのよ」
悠介 「全然意味が解らんが」
彰利 「ならば男として問おう!!
貴様らは男として、こげなスイッチを押したいと思わんのかねッッ!!」
悠介 「馬鹿野郎!押してみたいに決まってるだろうが!!」
凍弥 「男という生物をナメるな!押してみたい!!
こう───敵に基地に侵入されて、自爆に追い詰められた司令官みたいに!!」
彰利 「お、お前達……」
俺は……俺はひとりじゃなかった!
よし……!
男三人の思いを込めて、今こそこのスイッチを───!!
凍弥 「けどさ、そんな真っ赤なスイッチをこの状況で押すのはちょっと───って!」
悠介 「ちょっ───待て彰利!最期まで聞───」
彰利 「我が軍に───栄光あれ!!」
ごしゃあん!!
アタイは軍指令官よろしくといった感じに声を上げ、
強化ガラスごとスイッチを殴りつけた!!
その瞬間、状況に自爆を強いられた軍指令官の気持ちが解った気がした!!
彰利 「キャアアーーーッ!!!エ、エクスタシー!!」
悠介 「ああっ!やってみたかったのに!」
凍弥 「彰衛門!ここは普通ジャンケンだろっ!?」
椛 「……そういう問題じゃないと思うんですけど……」
ビーーー!!ビーーーッ!!!
椛 「わっ……!?警報なってますよっ!?やっぱり危険なスイッチだったんですよ!」
彰利 「………」
ガタッ……。
椛 「お、おとうさん……?」
アタイは椛の言葉を冷静に聞きつつ、ゆっくりと三人に向き直った。
彰利 「……ここは間も無く爆発するだろう……。
キミたちは脱出しなさい。この基地と滅ぶのは、この老兵だけで十分だろう……」
そして、ビッと敬礼する。
悠介 「クッ……酔ってやがる……!!」
凍弥 「ああっ……!俺もやってみたかった……!!」
とか言いつつ、ビッと敬礼する悠介と小僧。
椛 「……あの……っ!?
その『脱出口』がないからこんなことになったんですけど……っ!?」
そんな中、かつてないほどの疲れた顔をした椛が顔を俯かせ、カタカタと肩を震わせた。
彰利 「今までよく、この軍に尽くしてくれた───感謝する」
悠介&凍弥『指令官殿……!』
ノリに乗ったアタイ達はガッシと抱き合い、ホロリと涙を流した。
───が。
椛 「なにが───指令官殿ですかぁあああああっ!!!!」
状況に馴染めなかったらしい開祖殿がブチ切れた。
彰利&悠介&凍弥『お、おわぁーーーーーっ!!!!!』
目が深紅に染まり、髪が銀色へと変異する修羅が居た。
その修羅、滅びゆく我が軍の基地を背に、我らを屠る。
フッ……所詮、男のロマンはおなごには理解されないということか……。
彰利&悠介&凍弥『ぎょよわぇあよぉあおがぁああああああああっ!!!!!』
バゴボゴドグシャボゴシャドゴォンバゴォンギシャアアアアアン!!!!!
───さて。
結局アタイ達は、椛に殺されかけながらも───
工房が爆発する寸前に戻ってきたリヴァっちに救われ、鈴訊庵に出ることが出来た。
が、その直後に工房は大爆発。
リヴァっちの魔導研究資料がオシャカになってしまった。
そのことについて、珍しく激怒したリヴァっちに説教されること三日。
腹が減ったからメシにしようと申し出たのを断わられること32回。
ようやく説教が終わる頃には、
アタイ達はロマンよりも食い気を目指して駆け出したのでした。
ちなみにドアの横に書いてあった文字は、
どうやらノックの回数を示したものだったらしい。
二回ノックで出口が鈴訊庵に繋がり、
四回ノックで空界の魔導工房に繋がるんだとか。
なんにせよ、これで小僧や椛の関係も元の鞘。
アタイ達にまた、今まで通り日常が訪れた。
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