───ささやかな結婚式と胸囲の彰利ランド───
───デゲデデッテデェーーン!!
マキィーーーン!!!
彰衛門「闇を照らす霊訓!!今すぐ婚儀始められるぜ!?
というわけで夜華さん!琥珀球と翡翠球の用意を!」
夜華 「あ、ああ……」
ゴゾォと、夜華さんが琥珀球と翡翠球を小僧と椛に渡してゆく。
何処にあったん?と訊くと、神社の蔵にあった、と。
彰衛門「では───ただいまより双子山の伝承に基づき、
ここにあるふたつの球と二振りの刀の御名の下、婚儀の儀式を行う!」
ハワァーーーッ!!
観衆が猛った!!
悠介 「お前、立ち直り早過ぎ」
彰衛門「フッ、生憎このワシは……強ェエのよ」
悠介 「まあ、そうだろうけど」
彰衛門「まあまあそげなことどうでもよかギン。
婚儀始めようぜ?みんなが待ってるぜ?楽しい時代が待ってるぜ?
人生はちゃんこ鍋だ!涙は隠し味さ!
チャーハンバーガスパッ長寿庵ころ餅肌のお嬢サンドウィッチクワサビ!!
ピリリッダンスダンスハッピーダンス!!」
悠介 「わーった、わぁったからクッキングパパを繋げて歌うのヤメろ」
彰衛門「オウヨ!───それでは。双方、前へ」
俺の言葉に、球を持ったふたりが前に出る。
途端、騒いでた若い衆も黙りこくる。
球は小僧が琥珀球、椛が翡翠球を持っている。
彰衛門 「双方、その球を自身とし、人に委ねる覚悟はあるか」
凍弥&椛『はい』
彰衛門 「では、球を差し出しなさい」
ふたりが球を渡して、一歩下がる。
彰衛門「霧波川凍弥。前へ」
凍弥 「……はい」
小僧が一歩前へ出る。
彰衛門「我、儀式を司りし者として、この球を汝に授ける。
汝、その球を汝の心とし、受け入れる勇気はあるか」
凍弥 「はい。その心、我がもとへ」
彰衛門「よろしい。では汝に翡翠球を授ける」
凍弥 「はい」
小僧が翡翠球を受け取り、一歩下がる。
彰衛門「朧月椛。前へ」
椛 「はい」
椛が一歩前へ出る。
白無垢姿の椛は、まるっきり別人のように見えた。
彰衛門「我、儀式を司りし者として、この球を汝に授ける。
汝、その球を汝の心とし、受け入れる勇気はあるか」
椛 「はい。その心、我がもとへ」
彰衛門「よろしい。では汝に琥珀球を授ける」
椛 「はい」
椛が琥珀球を受け取り、一歩下がる。
この儀式ってのは互いが持った球を自身と喩えて、
交換することで相手を受け入れるって儀式だ。
嗄葉の時代の時に何度か見たから知ってます。
まあぶっつけ本番だから正直緊張しますが。
彰衛門 「互いの球の交換により、汝らが汝らを受け入れたことを証明する。
ここに、ひとつの夫婦の誕生を証明しましょう」
凍弥&椛『───ありがとうございます』
そして、ふたり同時に俺に頭を下げる。
この儀式が、どうしてふたりと一番仲のいい者が執り行うのかはここにある。
今まで世話になった人へ、頭を下げるからだ。
彰衛門「───さ。清めの酒です。口に含み、互いに飲ませなさい」
凍弥 「うぐ……」
椛 「凍弥先輩」
凍弥 「わ、解っちゃいるけど」
そう。
この儀式の最も恥ずかしいところ。
それはこの、互いに口移しで酒を飲ませるところだ。
ふたりが口に酒を含み、キスをして口の中で酒を交換する、といった儀式。
まあようするにだ。
観衆の前でここまでやれば、恥ずかしいことなどもう無いだろうという試練だ。
彰衛門「さあ、なにをしているのです。ここで逃げ出したらおめぇ……アレだ。
アルティメットチキン野郎だぜ?」
凍弥 「チキン言うなっ!」
彰衛門「だったらホレ、含め。椛はスタンバってるぞ」
椛 「凍弥先輩、どうぞ」
凍弥 「うう……」
彰衛門「それから椛。もう『先輩』はいいだろ」
椛 「あ……そうですね。これでわたしたち……夫婦なんですから」
凍弥 「うぐぐぐぐ……」
彰衛門「小僧……まさかおめぇ……アレか?
その気が無かったのに婚儀まで持ち込んだのか?」
凍弥 「そ、そんなことあるかっ!やってやる!」
小僧がぐいっと杯の酒を口に含む。
それを見て、椛も頬を染めつつも酒を口に含む。
彰衛門 「よろしい。それでは、清酒の交換を」
凍弥&椛『───……』
夕日が沈みかける前、綺麗な赤い光が屋上に差し込んだ。
そして、その屋上に伸びる影が近寄っていき、やがて重なる。
浩介 「おめでとさーーーん!!」
浩之 「同志ィイイイイーーーッ!!このペン本気で落ちぬぞぉおおーーーっ!!!!」
佐古田「離婚しないように頑張るッスよーーー!!」
メル 「なんだか……涙が止まりません……」
柾樹 「これから大変だろうけど……なんとかなるだろ。な?」
夕 「うん、きっと。だって、わたしたちの子供だもん」
柾樹 「叔父さん……どうか、あいつを見守ってやっててください」
みずき「やれやれ……学生結婚とは……」
深冬 「いいじゃないですか……青春はそういうものです」
粉雪 「おふたりとも、幸せになるのですよ……」
来流美「いきなり呼び出して結婚式だなんて……勘弁しなさいよね。
無茶できる歳じゃないんだから……」
柾樹 「まーまー、こんな時くらい顔見せないで、なんのための家族だよ母さん」
葉香 「まあ、門出とまでは行かないが……せいぜいの祝福はしてやるべきだ」
悠介 「予定から相当ズレたけど、まあ……おめでとうってとこか」
夜華 「楓さま……うう……!なんと凛々しく美しい……!」
ルナ 「夜華っちって結構涙もろいのね」
悠介 「……椛が関わることだけ、な。だってのに泣かすことが出来る彰利は相当だ」
ルナ 「あー……気持ち、解るかも」
ルヒド「彼の性格は特殊だからね。おめでとー、かーさん」
ルナ 「……呑気なものねぇ」
若葉 「……呑気なのはあなたでしょう」
ルナ 「うあ……そういえば来てたんだっけ、義妹」
若葉 「義妹と呼ばないでいただけますか?
いつになったってあなたがおにいさまの嫁だなんて認められません」
木葉 「そうです」
ルナ 「うーわー……歳とっても変わらないのね、あなたたちって……」
水穂 「……あの、お久しぶりです」
ルナ 「あ、ミナっちじゃない。ハオ♪」
春菜 「へー……椛ちゃんも大きくなったね。って、平均から言えばちっこいけど」
悠介 「そういうことは解ってても言うもんじゃないぞ」
女五人『───…………』
悠介 「……な、なんだ?」
若葉 「え───えぇっ!?おにいさま!?」
木葉 「お兄様が……」
春菜 「もしかして隠し子!?悠介くんの血筋!?うあー、似てるねー!」
水穂 「まさかお兄さん、この歳になってルナさんと───」
ボカボカボカボカッ!
水穂 「いたたたたっ!!」
若葉&木葉&春菜&ルナ『ヘンなこと言わないのっ!!!!』
ほっほっほ、なにやら悠介サイドが騒がしいが、まあ無礼講ということで。
てゆうか……あの人たちも変わらんなぁ。
春菜 「ねぇ、わたしの家の娘と結婚しないっ?」
若葉 「なっ!なにを言うんですか!この子はわたしが養子に!」
木葉 「姉さん、抜け駆けは汚い」
悠介 「あのなぁお前ら……」
ルナ 「あのね、コレは紛れも無い、正真正銘の晦悠介よ?」
若葉 「───はい?」
ルナ 「ちょっとした事件が原因でね、若返ったの」
春菜 「え……それじゃ、え……?」
ルナ 「だからぁ、このオトコノコは悠介なの。解る?」
女四人『───………』
沈黙。
そして、弾けるように開口。
春菜 「悠介くん!再婚する気ない!?」
若葉 「おにいさま!わたしの家に養子に!」
木葉 「お兄様、わたしと駆け落ちしましょう」
水穂 「あ、あのあの、お兄さん、わたしの家に……」
ルナ 「わっ!こ、こらーーっ!!ゆーすけはわたしのだぞーーっ!!」
ズビシィッ!!
ルナ 「いたっ!?」
セレス「だったら、わざわざ余計なことを言わないでください」
ルナ 「あっ───ネッキー!」
セレス「まだその呼び方をしやがりますか……」
ルナ 「なにするのよ痛いじゃない!吸血鬼のクセにデコピンの調整も出来ないの!?」
セレス「吸血鬼は関係ありませんっ!!」
悠介 「は、ははは……───はぁ」
───さて。
様々な言葉、様々な拍手が飛び交う中で。
小僧と椛は今、ようやく───長い長い約束を果たした。
……そんな感じがした。
まずは、なんにしても……
彰衛門「おめでとさん」
そう言うことで、俺はひとつの達成感を感じた。
───ドクンッ……。
彰利 「……お?」
……ふと、自分の中の何かが脈打った気がした。
───もしや愛!?
凍弥 「ありがとう、彰衛門」
椛 「ありがとう、おとうさん」
彰衛門「へ?あ、あー……椛、待った。その『おとうさん』、もうやめてくれ」
椛 「え……?」
彰衛門「小僧と椛も夫婦になったし、それにもう椛には親が居る。
それなのに俺を『おとうさん』って呼ぶのはなんか変だろ。
俺の目的はこれでひとつ潰れたし、
あとの目的が終われば───俺は現代に帰るから」
椛 「そんなっ……ずっとこの時代に居てくれないの!?」
彰衛門「……あのね。俺にも俺の時代があるのよ?
だってのにこの時代にずっと居るわけにはいくまいよ」
椛 「でも……!」
彰衛門「最初っから決めてたことだ。
レオの存在なんて気にもしてなかった時は、
椛が結婚したら帰るつもりだったけどな。けど……状況が変わった。
俺はレオを倒したら、現代に戻るつもりだ」
椛 「そんな……」
凍弥 「それは、どうしてもか?」
彰衛門「お前も椛を好きになったんなら解るだろ?
好きな人を必要以上に放っておけるかよ」
凍弥 「───……そう、だな」
彰衛門「あ、そうそう、小僧に言っておかねばならんことがある。
精霊野郎とあの撲殺女が天界に行くそうだ」
凍弥 「え───そうなのか?」
彰衛門「ああ。多分、しばらく帰ってこないぞ」
凍弥 「───……そっか、解った」
小僧は頷いた。
けど、椛は納得がいかないように俯いている。
彰衛門「……椛。帰るのはもう、決めたことだ。それに、もうお前はひとりじゃない。
俺を頼らなくても強く生きていけるし、頑張れる。支えてくれる人も居る。
だったらもう、俺は必要ないんだ。……解ってくれ」
椛 「……帰るまでは……」
彰衛門「うん?」
椛 「帰るまでは……おとうさん、って……呼んでもいいよね……?」
彰衛門「ダメじゃ」
椛 「!!」
彰衛門「ウソじゃ!」
椛 「っ!」
彰衛門「それもウソじゃ!!」
椛 「っっ!!」
彰衛門「やっぱウソじゃ!!」
凍弥 「遊ぶなっ!」
彰衛門「ややっ!?おっとこりゃ失礼。
しかしな椛。結婚してまで俺をそう呼ぶのはどうかと……」
声 「おとうさーーん!」
と、そんな時。
ふと聞こえた声に振り返る。
ミント「おとうさんっ、かっこよかったよっ」
リーフ「…………!」(こくこくこくっ!)
彰衛門「おお、そうかいそうかい。じいやのステキな場面、見ててくれたのかい」
ミント「うんっ」
リーフ「おと……さん、かっこいい……」(ぽっ)
彰衛門「ィヤッハッハッハ!!照れるじゃないですか!
ィヤッハッハ、ィヤァッハッハッハ───ハァアッ!?」
───殺気!?
彰衛門「………」
おそるおそる振り向いてみる。
すると、その先にはうるうるした目で顔を真っ赤にしながらアタイを睨んでる椛の姿が。
───極死。
刹那にそんな文字が頭の中に浮かび上がった!!
椛 「その娘たちはいいのに……どうしてわたしだけはダメなの……?
その娘たち……誰……?その娘たちが居るから……わたしはいらないの……?
ひどいよおとうさん……わたしを捨てるの……?」
純粋な嫉妬からくる凄まじいオーラだ……!
彰衛門「勘違いしてもらっては困るッッ!!この娘ッ子たちは楓巫女と同じ孤独の身!
だからじいやが親代わりになったまでだッッ!!
だがなッッ!それも今日で終わりなのだッッ!!
捨てるとかの問題ではないッッ!!
貴様は既にじいやが居なくてもやっていけるのだッッ!!」
体を微妙に揺らしながら叫んだ。
これぞ、バキ効果。
彰衛門「椛。お前はもう俺の手を離れた。
だからこそ、俺が傍に居ないほうがしっかり者になれるんだ。
俺が現代に帰ることはなにがあっても変わらない。
なら、あとはお前が強くなればいい。もう、俺なんかを見て育つな」
椛 「〜〜っ……でもぉっ……!」
彰衛門「小僧。椛を、頼んだぞ」
凍弥 「当たり前、だろ?」
彰衛門「フッ……愚問だったな。───さぁ!もう一度惜しみない拍手を!!」
ハワァーーッ!!!!
観衆がそれぞれに騒ぎ。
小僧と椛の姿が、その喧噪の渦に隠れて見えなくなる。
彰衛門「───さ。それじゃ、思いっきり遊ぶか」
ミント「うんっ」
リーフ「う……ん」
元気に頷くミントに、小さく頷くリーフを小脇に抱え、アタイは空を飛ぶ。
ほんに、冥月刀ってば用途多彩です。
二振りもあれば、月空力の微妙なコントロールも楽々簡単ですよ?
彰衛門「ミント、リーフ、どこに行きたい?」
ミント「えと……『ゆーえんち』ってところに……」
彰衛門「遊園地?」
リーフ「レイルさまが……教えてくれたの……」
彰衛門「そーかそーか。よっし!
そんじゃあ背中に乗れ!しっかり掴まっとるんじゃぞ!」
ミント「うんっ」
リーフ「は……い……」
彰衛門「レディィイッ───ンゴォオオオオーーーーッ!!!!!」
ゴゴッ───チュゥウウウウウウウウンッ!!!!
片手に一本ずつ持った冥月刀から月醒力を放ち、その反動で吹き飛ぶように空を飛ぶ!
おお速い!なんたる速さか!
───てゆうか、このヘンに遊園地なんてあったっけ?
───……ありました。
けど名前が……
ミント「……なんて読むの?」
彰衛門「……胸囲のワンダーアイランド……彰利ランド……かな」
驚いたぜ……自分の名前と同じランドがあるとは……。
しかも見出しが『100人の彰利がキミを地獄へ誤招待!』とかゆうものだし。
なんだろ……。
なぁ〜んか、心の中で心当たりがあるようなないような見出しだ。
大体、なんで『胸囲』で『誤招待』なんだ?
彰衛門「一応……今月中は創業50周年感謝で無料らしいが……」
そんな前からやってるのか?
すげぇよコレ……。
しかもそれだけ長くやってるってことは、この文字は誤字じゃないってことだ。
リーフ「………」(くいくい)
彰衛門「む?なにかね?……え?入る、って?」
リーフ「………」(こくこく)
彰衛門「マジか……?キツイッスねそれ……」
何気に見出しの端っこに小さく、
『アツアツカップル撲滅計画、いつでも実施中』とか書いてあるんだが。
まあ、入りたいってゆうなら止めはしないけど……。
───さて。
入った途端大後悔した。
彰利1「ヌォオオオオ!!!!」
どかぁああん!!
A男 「うわーーっ!!」
信じられないくらいに存在する謎の着ぐるみを着た生物が、
カップルの邪魔をしまくっているのだ。
どうやらあれが『彰利』らしい。
それだけでナルホドと納得してしまった。
たしかにこれは、アツアツカップルを撲滅出来る。
彰利2「こいつ、お前の彼女?……すげぇ趣味してんな」
B男 「なっ……!なにを言うんだ!こんな顔でも愛があれば平気さ!!」
B子 「そんな……!やっぱりヘンな顔だって思ってたのねーーっ!!?」
B男 「ああっ!B子ぉーーーっ!!!」
ひとカップル、さっそく破局。
……なんとなく読めてきた。
この彰利ランドが潰れない理由が。
おそらくここは───
彰利3「おやいらっしゃい。キミらは……うむ、カップルではないね!
カップル以外に手を出すつもりはないから、存分に楽しんでいってくれ!
さあいらっしゃいいらっしゃい!
こここそまさに!真のカップルを決める聖地だ!
この彰利ランドを乗り越えられた者こそ、真の愛情を確かめられるのだ!!」
……そういうことらしい。
この彰利ランドに来るカップルどもは、
我こそが真のカップルだと知らしめたいんだろう。
……馬鹿だと思うのは俺だけですか?
B男 「くそう!よくもB子を傷つけたな!くらえ!」
ボゴシャア!
彰利2「ギャーーッ!!」
ドサッ。
彰利3「アアッ!彰利2が!……死んだ!!」
B男 「えっ……そんな!殴っただけだぞ!?」
彰利4「くそ!よくも彰利2を!
みんな、あいつをやっつけるぞ!身包みを全て剥いでしまえ!!」
B男 「ウ、ウワーーーッ!!」
彰利1「ワーーーッ!!」
彰利3「ワーーッ!!」
彰利4「ウオーーーッ!!!」
B男が彰利達に追われてゆく。
そしてその隙に彰利2は起き上がり、他のカップルに絡む。
……うーむ、凄まじい場所だ。
ミント「みんな喧嘩してるよ……?」
彰衛門「喧嘩ではない……あれは愛の試練なのですよ?」
リーフ「そう……なの……?」
彰衛門「うンむ。最近の若いモンは結婚したら離婚ってのが多いからな。
それを考えればここで別れるのもいいのかもしれぬ」
ミント「そうなんだ……」
彰衛門「危機に陥れば、相手の弱さも強さも見えてくる。
それを考えれば、確かにここは聖地かもしれない」
リーフ「聖地……?」
ふい、と、リーフさんが視線をずらす。
と、そこでは───
彰利1「ワーーッ!!」
彰利3「ワーーーッ!!!」
彰利4「ウオーーーッ!!!!」
ドスガスベスボスドゴボゴ!!
B男 「ギャーーーーッ!!!!」
彰利が数人がかりでB男をボコボコにしていた。
彰衛門「…………聖地?」
自分の言葉が薄れゆくような状況だった。
───……おばけ屋敷。
D子 「きゃあっ!どこ触ってるのよ!!」
D男 「ば、ばかっ!俺じゃ───」
ずぱぁああああん!!!
またひと組、破局。
───……不思議の国のノリス、体験場。
彰利10「さあ!ぼくがキミの恋人だよ!」
彰利11「いやいや、ぼくさ!」
E子 「え?えっと……」
E男 「馬鹿かてめぇ!なんで迷うんだよ!俺だろうが!鈍臭いんだよてめぇ!!」
E子 「むっ───!なによ!いきなりいろいろ言われたから驚いただけじゃない!
それなのにそんな言い方ってないでしょ!?もう知らないっ!」
……破局。
───……コーヒーカップ。
ぐるぐるぐる……!!
リーフ「あう、うう……」
ミント「もっと回して〜♪」
彰衛門「ぬおおおおおおおおお!!!!!」
ゴヒュヒュヒュヒュヒュン!!!!
シュゴオオオオオ!!!!!
リーフ「や、ううう……!!」
ミント「きゃ〜〜〜っ♪」
彰衛門「はっはっはっは───む?」
ひとつのコーヒーカップの前に彰利が立っていた。
凄まじい形相だ……。
まるで、コーヒーカップを楽しむドリアン海王の前に現れた末堂厚のようだ。
ドゴォッ!!
F男 「ウワーーッ!!」
F子 「キャーーッ!!」
うわっ!なんちゅうやっちゃ、蹴りよった!!
しかも蹴った方向に滑るようになっていたらしく、
蹴られたコーヒーカップが滑ってゆく。
そしてそのFカップルを乗せたカップが壁に当たり、Fカップルが放り出された。
F男 「な、なにしやがる!!なんだよてめぇ!」
彰利18「彰利会館三段───末堂彰利って者だ。
加藤彰利とは同期の桜──共に砂を噛んだ間柄だ──今日は死んだっていい」
F子 「な、なに言っちゃってンのこいつぅ〜〜!
ケンちゃん!やっつけちゃってよ!」
F男 「お、お……おおっ!」
F男が立ち上がる。
てゆうか加藤彰利って誰?
と考えて、さっき一番最初に殴られた彰利2を思い出した。
……別にF男、関係ねぇじゃん。
彰利18「っしゃあああああっ!!!!!」
ボゴシャア!!
F男 「ブゲェエーーッ!!」
F子 「ケ、ケンちゃーーん!!」
彰利18「ハハハハハハハハハハ!!!!ハハハハハハハハハ!!!!!
こんな弱ェエエエやつと一緒に居てなにを偉そうに!
ケンちゃ〜〜ん、やっちゃって〜〜ってか?」
F子 「う、うう……!」
彰利18「やめとけやめとけ、
お前みたいなチャラチャラしたヤツとこいつとで、
長続きするわけないだろうが。
それともなにか?金を巻き上げるだけが目的で付き合ってたんか?」
F子 「そ、そうよ……そうじゃなくちゃ、誰がこんなヤツと!」
彰利18「はい破局っと。また彼氏作ったらいらっしゃい」
F子 「くっ……!覚えてなさいよ!!」
また破局。
なんてゆうか……言葉で誘導するのも上手いなオイ……。
シュゴォーーーーッ!!!!
ミント「きゃーーーっ♪」
リーフ「う、ううう……!!」
彰衛門「えーがーおウールトーラーゼェットで〜〜〜っ♪
今日もアイヤイヤイヤイヤァーーーイ!スパーキング!!」
ジェットコースターのループでぐるぐると回る。
フオオ、この体にかかるGがたまらねぇYO!!
そんなことを思ってる間にも、
先頭に座り騒ぐ俺達の後ろの座席では、戦闘で騒ぐカップルが居た。
三人乗りの座席にはカップルと彰利が座り、当然真ん中に座るのが彰利なのである。
アタイ達はカップルではなかったことが幸いして、彰利の乱入はなかった。
C子 「きゃーーっ!怖いーーーっ!!」
彰利5「怖かったら俺の手を掴んでろ!」
C男 「てめぇっ!C子は俺の彼女だぞ!!」
彰利5「その彼女になにもしてやれない貴様が何を言う!」
C男 「てめぇがそこに座らなけりゃなんだって出来たんだよ!!」
彰利5「なんだって出来た……?
もしや貴様、この後彼女を酒で酔わせて、
ベッドインする気だったのではあるまいな!!」
C子 「え……?」
C男 「ば、ばばばば馬鹿言うなっ!
なんでお前にそんなこと言われなきゃならねぇんだよ!!」
彰利5「キミのポケットに明るい家族計画が」
C男 「ごわっ!?な、ち、違うぞC子!俺は本当にそんなもの持ってきてない!!」
C子 「C男さんの……ばかぁあああああっ!!!!」
C男 「そ、そんな───!」
ひとカップル、破局。
その後ろでも、次々と破局していってるらしく、泣き声とか怒声とかが飛び交ってる。
ああ、まあ……なんてゆうか……。
自分がカップルを撲滅させようとしたら同じことをしてそうな気がして、
滅法恥ずかしかった。
───……。
彰利5「ふー、撲滅した撲滅したぁ〜っと」
彰利6「やはり破局流ジェットコースターはやめられませんなぁ」
どうやらジェットコースターに乗っていた全てのカップルが破局したらしく、
男女が離れて去ってゆく。
……寂しすぎる姿だ。
彰利7「おっと、そろそろ暗くなるぞ。パレードの用意すっぞ」
彰利8「おうっ!」
ジェットコースター彰利が走り去ってゆく。
その後には、破局して傷つきまくった男が数人残されるのみだった。
……嵐のようなワンダーランドだな、オイ……。
どちゃんちゃどちゃんちゃちゃかちゃーちゃーん♪
ミント「わー、綺麗〜♪」
リーフ「っ♪っ♪」
さすがにパレードともなるとそれなりに綺麗なものになった。
ところどころの地面に、
黒くこびりついた液体のようなものがある気もするが……無視だ。
俺はなにも見なかった。
彰衛門「……あれほど居たカップルが、僅か数人になってるよ……」
ミントとリーフが花火やパレードに夢中になってる中、
俺はただ冷静に、破局したカップルどもを憐れんだ。
ドンッ!バラバラバラ……!!
花火が散る。
それは正直に綺麗だなって思った。
けど、その花火が文字になった時は流石に泣けてきた。
『今日の撲滅カップル数:3542組』
それが文字だ。
周りの数少ないカップルは手を取り合ってマジ泣きしてるし。
ほんと、どういうワンダーランドだよここ……。
『胸囲』ってゆうのだって、結局は彰利の胸囲がゴリモリマッスルだったってだけだし。
でもまあ……ミントとリーフも楽しんでくれたみたいだから、いいか。
彰利リーダー「えー、皆様!よくぞここまで堪え凌ぎました!
あなたがたは確かなカップルの称号を得られたことでしょう!!
だがしかし!カップルと愛とはまた違うもの!!
これから連れ添う人も居れば、共に暮らす人も居るでしょう!
そしてその暮らしが息苦しくならないためにも!!
ここで、今まで隠していたことを告白しましょう!!
それを受け入れてこそ、真のカップルとなるのです!!」
……うあ、そうきたか……。
彰利リーダー「ちなみに告白できないヤツは、
今ここで立っていることがまぐれだったってことにすぎません。
早々と退場してください、邪魔です」
そこまで言いますか?
いや、俺も言うとは思うけどさ。
………………しばらく、ボソボソと話す声や、一気に大声で語ってしまう声が聞こえた。
しばらくしてバチーーン!とか馬鹿ぁっ!とかゆう音とか声が聞こえたが───
ふた組だけ、寄り添うように抱き合っているカップルが居た。
彰利リーダー「おめでとうございます!!そこのふた組のカップルには、
彰利ランド認定、『真・カップル紋章』を進呈します!!
これを見せれば、全国のマサクゥルドナルドで無料でメシが食えます!
ただし、一日一食のみ!無くさない限り永久に使えます!!」
ワァーーッ!!!!
100人の彰利が拍手を贈る。
そしてそのふた組のカップルは紋章を受け取り、仲良く手を繋いで帰っていったとさ……
ミント「……『かっぷる』を認めてもらうのって大変なんだね……」
リーフ「うん……」
てゆうか……あの真・カップル紋章欲しいな……。
永久にマッサ(マサクゥルドナルドの略)で一日一食食えるなんて……ステキじゃない。
───ヒュキィンッ!
彰利ランドを出たところで、空から光が降ってきた。
アル 「さ、天界に戻る時間だぞ……って、お前か」
彰衛門「あちょッス」
ミント「もう、時間なんですか?」
アル 「ああ。規則違反してまでお前らを地界に降ろしたんだ、解ってくれ」
リーフ「………」(……こくん)
ミント「それじゃ……おとうさん」
彰衛門「ああ。元気でやるんじゃぞ?」
ミント「うんっ」
リーフ「ばい……ばい……、おと……さん」
彰衛門「うむ、リーフさんも元気でな」
……きゅむ。
抱きついてきたふたりを抱き返してやり、しばらくその温かさを感じた。
そして……どちらともなく離れる。
アル 「……いいか?ふたりとも」
ミント「はい。あまり一緒に居ると、離れたくなくなっちゃいます……」
リーフ「………」(……こくん)
アル 「そっか……それじゃ───」
彰衛門「なあアンタッ!ふたりのこと、幸せにしてやってくれなっ!!」
アル 「───当たり前だ、言われるまでもない」
───ヒュキィンッ!!
……そして、あっさりと。
俺の目の前で必死に涙を堪えて笑ってたふたりの少女は、天界へ帰っていった。
彰衛門「……幸せに、なるんじゃぞ……」
俺はもう真っ暗な空にそう呟くと、トボトボと公園へ向けて歩き出した。
Next
Menu
back