───放浪精神『第二章◆仲田くんの叫び』───
───……。
彰利 「がぼっがぼっ……」
夜華 「はぁ……」
自分でもどうして『御意』と答えたのかは謎だったが……
とにかく、これ以上ないってくらいボロボロにされた気がする。
夜華 「ここでこうしていても仕方が無い……移動しよう」
彰利 「だったらどうして殴ったの……?」
夜華 「貴様が地獄を見たいと言うからだ」
彰利 「いや……そうですけどね?」
まいったのぅ、夜華さんたら楽しそうにアタイを斬るんだもの。
もしかしてS?
夜華 「……うん?な、なんだ、じろじろと……」
彰利 「うんにゃ……なんぞ嬉しいことでもあったんかね?」
夜華 「何故そんなことを訊くんだ?」
彰利 「だって夜華さんたら妙に嬉しそうだし。もしかして金でも拾った?」
夜華 「ば、馬鹿にするな!そんなことで喜ぶか!」
彰利 「なんと!?夜華さん!貴様は今、全国のホームレスを敵に回しましたよ!?」
夜華 「ほむれす?なんだ、それは」
彰利 「チッ……カスが、そげなことも知らんでこの雄山に楯突こうとは……!
出ていけぇっ!貴様のような男の顔など見たくもないわぁっ!」
夜華 「誰が男だ!わたしは───」
彰利 「女?」
夜華 「うぐっ……」
クォックォックォッ……!予想通りに口篭もりおったわ!
彰利 「さあどうしたのかね!言ってみぃ!女かね!?それとも男かね!?
えぇーーっ!?どっちなんだい!!」
夜華 「ぶ、武士だ!わたしは武士だ!それがどうした!」
彰利 「どうもせんよ?」
夜華 「なっ……!」
彰利 「やぁねぇこの子ったら。なにを叫んでおるのやら……」
夜華 「ご、ご……!!ごごがぁあああああっ!!!!」
彰利 「ワーッ!怒った怒ったーーっ!!まったく冷静さの無い武士じゃわい!
このカス!カスが!カスめ!カスめ!!カス」
ズバシュウッ!!
彰利 「キャーッ!!」
夜華さんの刀が閃く!
アタイは怪虫に襲われた仲田くんのように叫び、
その痛みに耐えズバシュドシュザシュザクザクザク!!!
彰利 「ギャーーーーーーッ!!!!!!」
───…………。
彰利 「グビグビ……」
夜華 「はぁっ……!はぁっ……!!」
散々と斬られ、殴られ、叩かれたアタイは、ロビンのように泡を吹いていた。
痛い……痛すぎるぜトニー……。
……誰だ、トニーって。
聖 「パパ……?パパッ!?」
う、むむ……!!
あぁこの響き……最強!俺も最強!
こうなったらもう、からかうっきゃねぇでしょう!?
彰利 「ウ……ウウーッ!!」
聖 「パパ……!?どうしたの!?」
夜華 「彰衛門……?」
彰利 「ウ、ウウウ〜……西さん……ぼくはもうだめだ……。
ぼくはペストにかかってしまったのだ!」
聖 「ぺすと……?解らないよ……!」
彰利 「み、見るんだ!腕に斑点が出てきた!やっぱりペストに感染していたのだ!
ウウウーーッ!!ぼくはもうだめだーーっ!!」
聖 「そんな……!せっかく信じられる人が居たのに……!」
夜華 「彰衛門!冗談でも『もうだめだ』などと言うな!
貴様は生きるんだ!死ぬことなど許さんぞ!」
彰利 「アータがズバズバ斬るから悪いんでしょうが!」
夜華 「な、なにっ!?」
彰利 「とにかくぼくはペストにかかってしまったのだ!
そしてぼくを斬った夜華さんも、ペストに!その証拠に腕に斑点が!」
夜華 「なっ───」
夜華さんがバッと腕を見る。
するとそこには、黒い斑点が───!
夜華 「うわっ!うわわっ!?な、なんだこれは!」
彰利 「フフフ……それはまさしくペストの証……。
ペストとは感染から約五日で死に至る魔の病気よ……!」
夜華 「なぁっ……!?き、貴様!何故もっと早く言わなかった!」
彰利 「ウウ……!ぼくは怖かったのだ!
この世界に居ればいつまでも西さんのパパで居られるから!
帰るのが怖かったのだ!」
夜華 「なにを言っているんだ!その『にしさん』とかゆうのは誰だ!!」
彰利 「知らん!自分で考えろ!」
夜華 「なんだと貴様!!人が心配してやれば……!」
彰利 「なんと!?それで心配してたつもりとな!?」
夜華 「もういいっ!これもどうせ貴様の仕業なのだろう!!
もう騙されん!覚悟しろ彰衛門!!」
彰利 「へ?キャッ───キャーーッ!!」
再び刀を抜く夜華さんを前に、
アタイは怪虫に襲われそうになった仲田くんのザクザクザクザク!!!!
彰利 「ぎゃああああああああああああ!!!!!!!」
───……。
夜華 「なんだ……返り血が乾いただけだったのか……」
彰利 「グビグビ……」
夜華さんが斑点……アタイの返り血が乾いたものを拭う。
体を張った漂流教室ペスト事件は、物の見事に失敗した。
聖 「………」
夜華 「ん……なんだお前。わたしに用か?」
聖 「パパを傷つけないで……」
夜華 「なに……?」
あらやだ。
夜華さんの視線が痛いわ。
夜華 「おい彰衛門……!
貴様確か、楓さまにも『おとうさん』と呼ばせていたな……!」
彰利 「グビグビ……」
夜華 「彰衛門?」
彰利 「グビグビ……」
夜華 「いつまで死んだフリをしてるんだっ!」
ザクシュッ!
彰利 「グビィーーーッ!!!」
夜華 「貴様……!返答次第ではここで叩ッ斬るぞ……!
楓さまを悲しませる者はわたしが許さん……!」
彰利 「あの……夜華さん?アタイってば散々叩ッ斬られてるんですけど……。
これでまだ斬り足りないとでも……?」
夜華 「斬られても仕方が無いほどの馬鹿な貴様が悪い」
彰利 「バッ……バカとはなんだコノヤロウ!!」
この童心夜華さん、ヤケに気が強くありません!?
てゆうか童心とかなら『浅美』とやらが出てくるべきでは!?
彰利 「……そっか……夜華さんが圧倒的に気が強すぎるんだな……」
哀れな……。
夜華 「なんの話をしてるんだ……わたしの質問に答えろ」
彰利 「よいでしょう。まずフライパンをよく熱し、火から降ろしてから油を注ぎます。
そしてフライパンに十分に馴染ませてから卵を落とし、かき混ぜます」
夜華 「待て。だから、なんの話だ」
彰利 「スクランブルエッグの作り方ですじゃ」
ジャキ……。
彰利 「キャーッ!!」
なんと!夜華さんがアタイの喉下に刀を構えましたよ!?
こ、これはまさに伝統的なる脅迫スタイル!
思わず怪虫に襲われそうになった仲田くんの叫びをしてしまった!
でもこげなことされる覚えはありませんよ?
夜華 「貴様……わたしの質問には答えられないというのか!」
彰利 「なんの話だっけ?」
夜華 「楓さま以外の者の親代わりをしているのかと訊いているんだ!答えろ!」
彰利 「オウヨ!?オウヨオウヨ!!ザッツライト!その通りですよ!?
楓巫女に始まり、楓、椛、ミント、リーフ、そして聖。
アタイには事実上、六人の娘が居るんじゃぁああーーーーっ!!!」
夜華 「……そんなことはどうでもいい。貴様は誰が一番大事なんだ」
彰利 「粉雪」
ズバァッ!
彰利 「ギャーーッ!!」
夜華 「貴様……!楓さまが一番じゃないのか!」
彰利 「一番って言ってもどうせ斬るんでしょうが!!
アタイが一番大切にしてるおなごは粉雪ですよ!だからなにかね!」
夜華 「〜〜っ……!!うるさいうるさい!黙れ!人の気も知らないで!
懸命に貴様の経験とやらを探していた自分が惨めだ!!」
彰利 「カスが」
夜華 「くはっ!?ごっ……ごごわぁあああっ!!!」
彰利 「キャーッ!?ってまたですかぁーーーっ!!!!」
アタイは怪虫に襲われザクドクシュザクドシュズバズシャゴシャーーッ!!!!
彰利 「ギャーーーーーッ!!!!!」
───……。
彰利 「あの……いい加減にしてくれません?話がちっとも進まないよ」
夜華 「誰の所為だっ!」
彰利 「夜華さんしかおらんでしょう!まったく……こげな幼子の前で血を見せるとは」
聖 「………」
アタイの言葉をなぞるように、聖が腕にしがみついてくる。
てゆうか、もし童心の状態で月操力使えなかったら死んでましたよ?
まったく、相変わらず先のこと考えずに斬るんですから。
でも不思議と、夜華さんはどこか懐かしむようにアタイを斬ってきた。
いつもより怒りやすいのは、どうやらそれが関係しているようでゴンス。
嬉しさ爆発ってやつですか?
よく解らん。
彰利 「とにかくここじゃあ人目につきマッスル。ホレ、そろそろ人が集まってきたし」
夜華 「あ、ああ……」
聖 「………」(こくこく)
アタイは一目も憚らず、ふたりの手を取って月空力を発動させた。
向かう先は晦神社で。
───キィン!
彰利 「ほいっと、到着」
聖 「!?っ!?」(おろおろ……)
で、転移した途端に聖がしこたま驚いた。
転移は初めての体験だったんだろう。
彰利 「聖や、お主は確か……災い狩りが仕事じゃったな?」
聖 「う、うん……」
彰利 「よろしい。ならばここ以上に災いがある場所はあるまいて。
ここを拠点として、世に蔓延る悪を滅ぼすのです!」
聖 「……パパは?」
彰利 「むっ!?もちろん手伝いますぞ!?
そう……我らは今から『災狩戦隊・貴公子と美少女とカス』だ!」
夜華 「貴様……」(シャアア……!)
彰利 「キャーッ!?な、なんば刀抜いちょっとか!
ここで刺したらおめぇ……アレだぜ!?大変なことになるぜ!?」
夜華 「黙れ!毎度毎度人のことをカスだカスだと───いい加減にしろ!!」
シュヒィンッ!!
彰利 「甘いわ!」
夜華 「なにっ!?」
夜華さんの斬撃を救世主避けで乗り切る!!
注:救世主避けとは、マトリックスのネオがやってた上体逸らし避けである。
彰利 「フフフ、夜華さんよ。キミの力は見切ったよ……。
貴様のクセ……それは切る時に大抵叫ぶことなり!
それさえ気をつければ───クォックォックォッ……!
斬られることなど有り得りえないね!」
ザクシュドシュバシュドシュザシュズバシャアッ!!
彰利 「ワーッ!ウワーッ!ウッ!ウオ!アアア!!」
あっさり斬られました!
しかもその拍子に麻酔無しの盲腸手術をされた高松くんのような声を出してしまった!
夜華 「確かにな……。忠告してくれたお蔭で、随分と楽に斬れた」
彰利 「鬼ですかアンタ!」
おお痛い……!
まったく夜華さんたら、どんどんと野蛮になっていくんですもの……!
彰利 「とにかく。アタイ達はこれから、大樹の中で暮らすんですよ?
この過去での目的がなんなのかは知らんけど……
とにかく、それを成就させるまでは仲良くやってゆくのだ!」
夜華 「待て。わたしはあの大樹には入れないぞ?
開かないというのに、どうやって入れというんだ」
彰利 「じゃーじょーぶじゃい。アタイが居ればきちんと開くから」
夜華 「そうか……───なっ……ななななにぃっ!?」
なにやら突如叫ぶ夜華さん。
なんだってのよもう……。
彰利 「なんじゃよ夜華さん……。ご近所に迷惑だからちと黙りなさい」
夜華 「黙っていられるかっ!そ、それは貴様!つまり!
わ、わたしと貴様が同じ場所で暮らすということではないか!」
彰利 「そうですよ?……なにかヘンかね?」
夜華 「あ、あああ当たり前だ!貴様はおかしいとは思わんのか!」
彰利 「ンー……聖や?おかしなことでもあるかね?」
聖 「………」(ふるふる)
アタイのささやかな疑問に、首を横に振る聖さん。
彰利 「ハッ……どうよ?
これで貴様が如何に間違っていたかが解ったろ?えぇーーっ!?」
夜華 「わざわざ見下したような顔をして言うのはやめろ!!さもなくば斬る!」
彰利 「やぁねぇ野蛮人は……。よいかね夜華さん。
アタイ達が大樹で暮らすことには、なんの疑問も必要じゃないのだよ?
だってアタイが上で寝て、夜華さんと聖が下の部屋で寝ればいいんだから」
夜華 「そ、それはそうかもしれんが……!」
彰利 「ほっほっほ!口篭もりおったわ!ようやく自分に非があると認めおったか!
うわぁっはっはっはっは!!!」
夜華 「非があるか否かなど関係ないだろう!そ、それに湯浴みなどはどうするのだ!
わたしは武士であると同時に巫女だぞ!?
日に一度は体を清めねば楓さまに合わせる顔が無い!」
彰利 「合わせられるほどの顔だと思っとんのかねこのカスは」
───そう言った瞬間、アタイの目の前に刀の軌跡がズバドシュザシュドシュ!!
彰利 「キャーーーッ!!!!」
こうしてアタイは、
怪虫に襲われそうになった仲田くんの真似をしながら散々と斬られることとなった……。
───……。
彰利 「フッ……蒼空が蒼空だぜ……」
時は満ちた!
今こそぼくらの力で未来を変えてゆく時だ!
彰利 「……自分で思考を回転させといてなんだけど、まるでワケが解らんな」
いやはやまいった。
まあまずは立ちましょうか?
彰利 「よっこいせっと……。
あの……夜華さん?他の誰にも、こげなことしたらあかんよ?
マジで殺人罪で掴まるから」
夜華 「死んでも死ぬような男か貴様はっ!」
死んだら死ぬに決まってるだろうに……なにを言っとるのかね、このカスは。
とまあ、確かにここで悶着を続けても始まらんし。
彰利 「フッ……まあいい、ひとまずはこの戦いはおあずけだ。
だがな……いつか必ず第二第三の俺様が貴様を滅ぼすぜ?
その時まで精々、清楚を装っておるがよいわ!」
夜華 「装ってなどいない!わたしは清いままだ!」
彰利 「……接吻しても清楚なままなの?」
夜華 「ぐっ……そ、そうだ!体を許すまで汚れるものか!!」
む。
断言しおったよ?
けど夜華さん、大事なこと忘れてる。
彰利 「……知ってる?巫女さんて『神に仕える未婚のおなご』らしいよ?」
夜華 「それがどうした……」
彰利 「いや……夜華さんって武士なんじゃないの?」
夜華 「武士であると同時に巫女なんだっ!何が言いたいんだ貴様!」
彰利 「あれほど女である前に武士だとかほざいてたくせに……。
フッ、弱い意志よのぅォ〜〜〜ッ!!!」
夜華 「な、なんだとっ!?」
彰利 「お?なにかね?
元を正せば夜華さんがややこしいことを言うからキャーーッ!?」
ザクザクドシュズバゴギュリメギュリゴバァッ!!!
───……。
粉骨砕身。
そう、今のアタイにはこの言葉が一番似合うだろう。
さすがだ……さすがすぎるぜ夜華さん……。
彰利 「戦ばかりに明け暮れた日々……。
空がこんなに青いだなんて忘れてただっぜぃ!」
ひとまずは倒れながらそげなことを言ってみた。
が、なんの意味もなかった。
夜華 「彰衛門、貴様はしばらくそこでそうしていろ。人に心配をかけた罰だ」
彰利 「いいだろう……小僧。だがそれはワシを倒さんと……無理だな」
ザゴォッ!!
彰利 「オゲギャーーーーッ!!!!」
夜華 「なにか、言ったか?」
彰利 「耳が悪いんですかアータ!せっかくジャファーの真似したってのに!」
夜華 「ふん……それがどうした。
貴様の言う、わけの解らないことはもううんざりだ」
そう言うと、夜華さんは歩いていってしまった。
彰利 「う〜ぬ……なにを怒っておるのでしょうねぇ」
もしかしてアレか?
粉雪のことが一番大事とか言ったからか?
夜華さんの気持ちは知ってるが、アレは気の迷いだよね?
だって好きなら斬らないでしょ、普通。
昔の人とはいえ、『人を斬る』ってのはあまりいい感触じゃないだろうし。
聖 「パパ……大丈夫?」
彰利 「オウ?オウヨオウヨ!平気YO!?元気リンリンパワー全開YO!?」
聖 「?……うん。パパ、元気……。よかった……」
彰利 「うむ、これくらいじゃあじいやは死にませんよ?
だから……安心するんじゃポルナレフ」
聖 「ポル……?」
彰利 「おや、やっぱポルポルくんのことは知らんか……。
ではお見せしよう!これがポルナレフの奥義ぞ!」
シュゴォオ〜!!
アタイは倒れたままの状態で跳躍した!!
聖 「わっ……」
彰利 「ブラボー!おお……ブラボーッ!!」
仰向けの状態で空に浮き、小娘を見ながら拍手した。
そう、これこそがポルナレフ流奥義・空中浮き拍手なり!
……意味などありませんけどね?
彰利 「ほいっと」
跳躍状態から立ち直り、聖の頭を撫でた。
なんといいますか、
悠介じゃないが……誰かの頭を撫でるのって気持ちがいいもんですね?
聖 「ねぇ……パパはどんな人なの?空を飛べるし、瞬間移動もできるし……」
彰利 「む?じいやの過去を見た時、解らなかったかね?」
聖 「……怖くてずっと見てられなかった」
彰利 「うーぬ……そうですか」
確かに幼子にあれはキツイぜ?
こりゃあちょいと、キツイものを見せてしまったということですか?
いやはや、失敗失敗。
……失敗?いやいや、見せなけりゃパパって呼ばれなかったし……
彰利 「………あれ?」
いや……なんつーか、アタイってどんどん怪しい存在になってる?
幼子にパパって呼ばれて喜んでるアタイ……ヤバイ?
彰利 「グ……グウウ〜〜ッ!!ウ、ウウウーーーッ!!」
し、しかし孤独を味わっている子供の親代わりになることは悪いことじゃないよね?
うん、悪いことじゃない筈!
彰利 「よーしゃあ!聖さんや!大樹を瑞々しくしましょうぞ!」
聖 「え……どうやって?」
彰利 「クォックォックォッ……我に秘策あり!」
まず合掌。
そして右手に勇気を、左手に涙を、心に愛を込め、大樹に向けて一気に放つ!!
彰利 「奥義!月然力……超・大樹の鼓動!!」
月生力で、樹の内面を回復!
月聖力で、樹を聖域で囲み、害虫を排除するとともに、一切の侵入を防御!!
月然力で、弱々しくなった樹を若々しくサポート!!
月清力で、甦った大樹をどっしりと落ち着かせる!!
そしてバンジーガムとドッキリテクスチャーで右腕を左腕に再現!!
聖 「わぁ……」
枯れ果て、やせ細っていた大樹がみるみる内に瑞々しくなり、
その名の通り『大樹』になって過程を見て、聖が感嘆の声を漏らした。
……ドッキリテクスチャーへのツッコミはないらしい。
彰利 「でもさ、HUNTER×HUNTERのドッキリテクスチャーって変だよね?」
右腕が左腕になってたし。
ヒソカってなにやりたかったんだろ。
カストロ選手も腕ばっかり狙ってないで、顔を削り取ればよかったのに。
聖 「パパ?」
彰利 「んにゃ、なんでもござらんよ」
まあこれ以上は不問ということで。
まずは中に入れるかどうか調べねば。
聖 「わっ……」
アタイはちっこい聖を抱き上げると、
右肩に座らせるような体勢のままに大樹の部屋の前に立った。
すると、緑が戻った草木が左右に分かれ、中に入れるようになる。
……うむ、やはりこうでなくては。
聖 「どうなってるの……?」
ふと、それを見ていた聖が俺の顔を見てそう言った。
アタイはもちろんその顔に笑顔で応えた。
彰利 「ガイア、見参!!!」
それはもう、『バキ』でガイアが地下闘技場に現れた時くらいの笑顔で。
聖 「がいあ……?」
しかし真面目に訊き返されてしまった。
……何気にかなり恥ずかしかったりする。
彰利 「いやいや。ガイアは関係ないでござる。
樹を治したこの力はですな、じいやの力なのですじゃ」
聖 「パパの……?」
彰利 「うんむ。じいやは普通の地界人じゃないのです。
月操力と呼ばれる力を操れる異端者なのですよ」
聖 「げっそーりょく……?」
よく解ってないのか、かくんと首をかしげる聖さん。
うむう、やはりこういう仕草はちっこいからこそ似合うな。
ヘタに成長した『ぶりっこおなご』がやったりしたらもう、
腹が立つこと津波の如しぜよ。
彰利 「まあ、とにかく入りましょうか。夜華さんもあとで来るでっしゃろ」
聖 「うん」
聖を抱えたまま、大樹部屋(楓巫女用)に入る。
ふむふむ、中の方も完全に綺麗になっておるでよ。
蜘蛛の巣も無いし、妙ちくりんな虫もオルランドゥ(。
ムゥ!完璧じゃ!
聖 「わぁ……この部屋、なんだか気持ちいい……」
彰利 「ほっほっほ、死神属性だろうから『聖属性』はちと不安じゃったが、
どうやら大丈夫なようじゃな、えがったえがった」
この大樹には月清力や月聖力や月生力などが生きている。
早く言えば、月生力や月清力を多く詰め込んだ上から、
月聖力で上塗りするように聖域にしちまったってこと。
だからそう簡単に力が漏れて無くなる心配はないし、
中に入れば能力自体が癒し効果として現れる。
彰利 「ほいよっ、と」
肩に座らせた聖を抱きかかえ、アタイはその場に腰を降ろした。
部屋の中の木の床にびっしりと生えた草葉が、弾力をもってそれを迎えてくれる。
うーむ、なんという座り心地よ……。
こりゃあおめぇ、アレだ……市販のなんたらクッションなんてメじゃねぇぜ?
聖 「こんなに柔らかいのに……曲がってもピンって治る……」
聖がツイツイと草を曲げる。
だが、月操力で癒された草葉は、まるで形状記憶をしているかのようにピンと戻る。
このクッションを越える座り心地もそれによるものなんでしょう。
俺様最強、超最強。
彰利 「………」
それはそれとして……。
アタイの腕の中にありながらも草や葉と戯れる聖さん。
……おお、なんとめんこいことよ。
なんてゆうかほら、アレですよ。
やはり子を見守る父を超越したような感情がアタイの中に芽生えるっつーか。
成長した聖……というかメルティア嬢は、ここまで元気じゃなかった筈だ。
それは恐らく、あの『カザマ』とかゆうヤツの家に貰われて以来、
ずっと遠慮深く生きてきたからに違いねィェ。
ということは、じゃよ?
アタイがここで愛情を注ぎつつも自由なスタイルで成長させていけば……
彰利 「……純粋なままで成長できる、というわけじゃね?」
聖 「え?なに?」
彰利 「いやいや、なんでもござらんよ?」
聖 「………」(じーーー……)
彰利 「なんでもござらんって」
聖 「ねぇ、パパ」
彰利 「む?なんぞね」
ハタ、と。
アタイの目を真剣に見ている聖の目を見つめ返す。
そう、まるで───
ジョルノ=ジョバァーナがゴールドエクスペリエンスレクイエムと見詰め合うように。
聖 「あの……うんとね?わたし……パパの娘でいていいんだよね?
パパのこと……パパって呼んでいいんだよね?
迷惑なんかじゃ……ないんだよね?」
彰利 「む……なるほど、そういうことかね」
勢いとはいえ、聖も不安だったんでしょう。
向かい合わせるように抱いたその手に、聖さんの震えが伝わってきとるし。
というか、そげなこと言われて断われるわけねぇでしょうが。
彰利 「ああ、もちろんじゃよ?
聖が望むのであれば、じいやは聖の親になりましょう」
聖 「ほんと……?」
彰利 「うんむ」
聖 「甘えても……いいの?」
彰利 「あったりまえじゃあ。寂しくなったらいつでもじいやに甘えなせぇ」
聖 「ほんと……?信じて、いいの?」
彰利 「フッ……聖や?聖がどう思おうが、じいやは聖を娘と認めたんじゃよ?
後から『やっぱり嫌』なんて言っても、もう訂正しません」
聖 「……じゃあ、これからもずっと、ずぅっと、パパって呼んでいいの?」
彰利 「うむですじゃ!」
聖 「───パパァッ!」
彰利 「むっ!?」
なんと!聖が腕を広げてアタイに抱きつこうとした!
しかし聖はアタイが持ち上げている状態!
アタイが引き寄せぬかぎり、アタイには抱きつけぬわぁ〜〜〜っ!!
聖 「……パパ?」
彰利 「フフフ、アタイにチョークスリーパーをかけようったって、
そうはいかねぇぜ〜〜っ!!」
聖 「ちょ……く……?」(じわり……)
彰利 「ややっ!?」
抱きつかせてくれなかったことで、
随分とショックを受けたらしい聖が、じわじわと涙を溜めてゆく!
彰利 「よせ!やめろ!『ためる』をやりすぎると爆発するんだぞ!」
詳しくはファイナルファンタジー3をどうぞ!
って、そげなこと言ってる場合じゃねィェーーッ!!
聖 「パパ……やっぱり迷惑なんだ……」
彰利 「グ、グムーーッ!?ち、違うぞ聖!これはそういう意味ではなーーい!!」
聖 「うぐっ……ひっく……」
彰利 「───月清力展開!!」
マキィン!
アタイは聖に月清力を流し、気持ちを落ち着かせる作戦に出た!!
彰利 「───よいかな聖……。今のは、じいやの冗談じゃ。
冗談を冗談と受けとめられない娘ッ子は強くなれぬ。
じゃからじいやも、辛いが聖に冷たくしたんじゃ……」
聖 「でも……でも……甘えさせてくれるって言ったもん……。
それなのに……パパ……」
彰利 「大丈夫じゃよ……覚えておきなさい。
じいやが聖に意地悪なことをした時は、聖のためにしていることなんじゃと。
じいやは聖のことを嫌いになったりなどせんから、安心するんじゃ」
聖 「……じゃあ……ぎゅーってして……」
彰利 「なんと!?」
ぎゅーって……アレだよね?
聖……恐ろしい娘……!
まさか首を絞めてくれと頼んでくるとは……!
だが、娘の願いを叶えてやるのが親心!
心苦しいが───
彰利 「トタァーーーッ!!!」
ギュミィッ!!
聖 「きゅっ!?」
聖のスリーパーホールドをキメる!!
闇狩人もびっくりの豪腕!受けとめてみよ!
彰利 「死んでくれーーーっ!!」
聖 「パ……パ……ッ……!?」
彰利 「し、死んでくれーーーっ!!!」
グググ……!!ガクッ。
物真似師の威信にかけて闇狩人になりきっていたアタイの腕の中で、
聖が体から……くたっと、力が抜けた。
彰利 「ややっ!?アイヤーーッ!!」
しまった!
闇狩人になりきりすぎて、つい堕としてしまったがよ!
彰利 「聖!?聖や!?し、しっかりするんじゃーーーっ!!」
息はしているが、まったく動かない聖の頬をぴしゃんぴしゃんと叩く。
───物真似するにもまず、
真似をするキャラと行動をしっかりと考えるべきだと悟った瞬間でしたとさ……。
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