───放浪精神『第六章◆修羅念土闘衣サイバイマン』───
───……。
聖 「……パパ?」
目が覚めた。
そしてまずしたことは、隣に居てくれる筈の人の確認。
けど───パパはそこに居なかった。
聖 「パパ……パパ?」
途端に襲いかかる心細さ。
辺りを見渡してみても、ひとりの女の人が壁に背もたれて眠っているだけだった。
外に出ようとして、草木に近寄ってみても、そこは開かなかった。
聖 「あれ……?あれっ……?パパ……パパァ……」
叩いてみても開かない。
パパも居ない。
ただ、心細さだけが自分を襲っていた。
草木の隙間から見える景色は真っ暗で、
自分が解ることは、今が夜だということくらいだった。
───……。
悠介 「……なぁにやってんだ、お前……」
適当にうろついていた時、山道の中で倒れている彰利を発見した。
その目には縦長のカサブタ。
今度はどんな彰利なんだ……?
悠介 「順当にいって……忘却の旋律のカルビン先生か……?
さしずめ、カルビン彰利か……」
確信はないが、彰利なら有り得る。
悠介 「それにしても……この世界、精神世界……なんだよな?
彰利の……にしては綺麗すぎる気がする。
時間の経過もちゃんとある上に、
なによりちょっかい出してくる彰利軍団が居ない」
不思議だ。
こいつぁ……どうなってんだ?
ここが精神世界だってのは、昨日と今日の二日で解ったけど。
しっかし……どうしたもんかね、こいつの処遇。
こいつがホンモノの彰利なら助けるべきなんだが……
また、ちょっかい彰利軍団Aだったら困るし。
悠介 「……ついつい……と」
落ちていた棒を拾って突ついてみる。
すると、ウ〜〜〜ンと唸った。
彰利 「だ、誰だ……?も、もう目が見えないんだ……。
手を、手を握ってくれないか……」
悠介 「断わる。どうせ悪巧みしてるんだろ」
彰利 「ウウ……?き、貴様はまさか……ドミトリィ・チェレンコフ……?」
悠介 「誰だよ」
彰利 「す、すまない……俺を……俺を月明かりの下へ……。
力を使い果たした所為で……力が出ないんだ……」
悠介 「───……」
ふむ。
これは、ホンモノの彰利かどうかを調べるチャンスか?
悠介 「お前、力を使い果たしたってわりには傷が痛まないんだな」
彰利 「痛ぇけどよ……へへ……。
俺がやってきたことも……あながち間違いばかりじゃあなかったらしいぜ……。
過去のしがらみから解放されてゆく過程で……
俺の傷も開放されていった……てぇ……わけ……よ……」
コトッ。
悠介 「起きろ」
ボゴッ!
彰利 「ギャア!な、なにをなさるの!?」
悠介 「いーから。とにかくお前はホンモノの彰利なんだな?」
彰利 「ギャアもう!なんかもうギャアよギャア!!なんなんじゃいくそう!
夜華さんも似たようなこと言ってたけど、俺が俺でなにが悪いのかね!!」
悠介 「確認したかったんだよ。お前のニセモノ、性質悪すぎだからな」
彰利 「……ところで……お前、誰(?」
悠介 「オマエな、普通声で解るだろ」
彰利 「君は……足音から伝わる体重55.3キログラム。
風の動きから伝わる筋肉の形状……発達途上のハイティーン。
前髪は短く毛は細い。そして呼吸音から伝わるのは……
懐かしい教え子(のものだな。……元B組の芹名ボッカ君だね」
悠介 「見当違いも甚だしいぞ、エセカルビン」
彰利 「なんだとてめぇ!カルビン先生と呼べ!
カルビン先生はカルビン先生だからこそカルビン先生なんだぞ!?」
悠介 「訳解らん」
彰利 「グウウ〜……!!と、とにかく俺を月明かりの下に……!
手遅れになる前に……!
わ、我らがサイヤ人は月が発する特殊な周波数───
ブルーツ波を身に浴びることで、大猿になるのだ……!!」
今のこの状況に、どうしてブルーツ波とサイヤ人の話が出てくるんだ?
やっぱ彰利って普通に謎だ。
悠介 「わぁったよ、連れて行きゃあいいんだな?」
彰利 「た、頼んます……で、出来るだけ急いで……」
悠介 「急ぐんだな?」
倒れている彰利の手首を引っ掴むと、走り出した。
ズガガガガガガ!!ガリガリガリガリ!!
彰利 「ちぇるしーーーーっ!!!!」
彰利のよく解らん悲鳴が聞こえる。
だが走る。
なにせ、急がなきゃならんらしいから。
スガガガガ!!
彰利 「ちえっ!ちぇるっ───ちぇるしぃいぇえーーーーーっ!!!!」
ゴガガゴリゴリズザザザザーーッ!!!!
山道特有の砂利の道が、彰利の顔面を削ってゆく。
途中途中で大き目の石や岩石が顔面に激突していたようだが……なんだ。
これだけ叫べるなら元気な証拠じゃないか。
───やがて、小さな自然の広場に辿り着く。
周りは木に囲まれているけど、真上だけが開けた広場へ。
見上げる雲ひとつない空に浮かぶのは、真円の満月。
悠介 「彰利、着いたぞ」
繋いだ手をぐいっと引っ張る。
彰利 「グビグビ……」
すると、その手の先に顔面をボコボコに腫らして、怪奇大ダコ入道となった彰利が居た。
悠介 「おお……顔面ばっかり殴られたミッキー・ロジャースみたいだ」
彰利 「グビ……グビ………………グ……」
うおっ!?やべぇ!
吹く泡にさえ力が無くなっていってる!!
俺は慌てて彰利を引きずり───月明かりが最も届く、野原の中心に彰利を寝かせた。
彰利 「……ウ、ウウ……!!ち、力が湧き上がるようだぁ〜〜〜……!!」
みるみる内に、うっすらとあった傷が消えてゆく。
彰利 「まず───月生力!」
彰利が力を込めると、消えてゆく傷が一気に塞がって消えた。
傷は最初から存在しなかったとでもいうかのように、その跡さえも残ってない。
彰利 「そして月癒力!!」
引きずった所為でボロボロに破れていた服が、瞬時に直る。
彰利 「そして最後に……あまりに残酷すぎる力故、
自ら両目に封じていた我が力……貴様にも見せてやろう!
俺に開けぬ物は無い!!開け───太平洋プレートォオッ!!!!」
開かなかった目を開くと、大地に指を付く。
すると───バッガァァッ!!
悠介 「ぉおおおわぁああっ!!?」
地面が割れ、一歩先の地面が森の木を追い越すくらいまで大きく突き上がった。
悠介 「な、なにがしたいんだよお前はぁっ!!」
彰利 「なにって……太平洋プレート」
悠介 「太平洋プレートって…………」
突き上がった地面……というか、今や壁になっているものを見る。
悠介 「……どうするんだよ、これ」
彰利 「直しましょう」
ズズズズ……ドスン。
地面が直った。
てゆうか……意味あんのかよ、おい。
悠介 「お前ほど力の無駄遣いしてるヤツ、絶対居ないだろうな……」
彰利 「あ、いや……照れるじゃないか」
悠介 「どうしてお前って無理矢理ポジティブ精神なんだよ……。
言っとくけど、ちっとも褒めてないからな」
彰利 「はっはっは、照れるなよ」
悠介 「照れるかっ!!」
彰利 「ままま、そんじゃあ俺はこれで」
すちゃっと手を軽く挙げて走り去ろうとする彰利。
その襟首を引っ掴む。
彰利 「ややっ!?なにをなさる!」
悠介 「まあまあ待てって。ちと説明しろ」
彰利 「説明?」
悠介 「説明ってゆうのはちと違うか。
お前が昨日と今日とで知ったこの世界のこと、教えてくれ。
どうしてお前、精神が確立できてるんだ?」
彰利 「どうしてって……やっぱ俺が俺であることに文句でもあるのかね!オォ!?」
悠介 「だーかーらぁ。そんなんじゃねぇっての。
あんまり融通利かないといい大人になれんぞ?」
彰利 「約300歳の俺に、何か文句でも?」
悠介 「……あー……」
そうだった。
こいつ、既にルナに匹敵するくらい生きてるんだっけ……?
悠介 「ま、いいや。あのな、それじゃあまず俺から話すから冷静に聞くんだぞ?」
彰利 「慌てちゃダメってことですか?」
悠介 「大袈裟に騒がなけりゃいい」
彰利 「……そうなん?」
…………。
───……。
彰利 「えーとつまり?俺はレオに経験と記憶を食われて……
悠介と夜華さんはそれの食いカスのサルベージをしてた、と。
そんで俺は……恐らくはその積み重ねのおかげで、童心として確立?」
悠介 「で、お前はメルティアの童心と会って、
そいつを立派に育て上げることを決心した……と。篠瀬にも会ったんだな?」
彰利 「ウィ」
アタイは悠介に物事を説明して、悠介は俺に物事の説明をした。
悠介 「過去は過去でも、メルティアの過去、か。
メルティアが経験してない未来を歩めるのは、ちと引っ掛かるけどな……」
彰利 「それは予想済みだぜ?恐らくはこうだ。
『俺達ゃ精神ごと過去に飛ばされた』」
悠介 「精神ごと……?どういうこったよ」
彰利 「ようするに、ここはメルっちょの精神世界であると同時に、実際の過去なんだ。
悠介が言うようにリヴァっちが精神干渉を手伝ってくれたとして、
もしそこにシェイドの野郎が介入してたとあれば……」
悠介 「あ……それじゃあなにか?
メルティアの精神内を、過去からやり直しさせようってのか?」
彰利 「……察しがいいねぇ悠介。
この過去のシェイドが言ってたけど、メルっちょは元は神界人だったらしい。
そして、メルっちょは禁忌を犯して堕ちた堕神。
神は堕ちると災いになるらしいんだけど、
メルっちょはシェイドに引き取られた。
そして冥界で『死神』として加工されて、災狩の存在として誕生。
災いが再び神界人になるには、『災い』を狩らなきゃならんらしいんだよ」
悠介 「災いを?どうして」
彰利 「地界にはいろいろと災いがあるだろ?悪霊とかなんとか」
悠介 「あ、ああ……」
彰利 「そういう害なるものを屠れば、『徳』が溜まるんだよ。
それを集めることで、神に戻れるとか……そんなんなんじゃないかな」
悠介 「なるほど……一応、道理は通る。けど珍しいな、お前が真面目に喋るなんて」
彰利 「メルっちょ……いや、聖はもう俺の娘だ。娘のことで馬鹿やってられっかよ」
悠介 「その割にはカルビン先生やって遊んでたんじゃないのか?」
グムッ……!
何気に核心を……!
彰利 「失礼な!遊んでたわけじゃあありませんよ!これでも苦労したんですよ!?」
悠介 「お前の苦労と太平洋プレートと、どんな関係があるんだよ」
彰利 「ウググ……!!」
それ言われたらオラ辛ェ……!
彰利 「と、とにかく!なんらかの原因があったうえで、
俺達はメルっちょの精神内に送り込まれた。
そしてその状態のまま過去に飛ばされて、
メルっちょの精神ごと過去に照らし合わせたんだよ。
だから肉体と精神が離れて、俺達は童心になってる。そうとしか考えられん」
悠介 「……お前、結構頭回るんだな」
心底感心したような声と顔で、悠介がそう言った。
そして下から上までアタイを見る。
彰利 「あのね……。キミ、アタイをなんだと思っとるんですか?
伊達や酔狂で300年近くも生きてられるわきゃないでしょうが」
悠介 「だってお前、馬鹿だし」
彰利 「否定はせん」
悠介 「いや……なんとしても否定するところだろ、ここは……」
だって馬鹿の方が楽しく生きられるしね?
ヘタに頭がいいと、要領よく生きられませんし。
……ありゃ?
でもそうすると、聖はメルっちょの童心じゃないってことよね?
誰のことも覚えてないし。
じゃ、聖はこの世界の人物で、───もしかして他に、メルっちょが居る───?
彰利 「いや、違うか」
メルっちょの深層精神は聖の中にあると考えてよろしおますね?
どうせ考えすぎたって答えが出ないなら、今はそれで段落をつけよう。
必要な時に必要な分だけ考えりゃあどうってことないだろ。
彰利 「フゥ……今日の俺は知的に行くぜ?
知鍵師カルビンを語ったからには、一日くらいは理知的でありたいだろう?」
悠介 「どうせギックリ腰になって後悔するのがオチだろ」
彰利 「ウ、ウウッ……!!」
そうかもしれねぇ……だって俺だし。
彰利 「それで……悠介はどうする?」
悠介 「俺か?俺はもうちょっと単独行動とってみるさ。
必要なものは創造出来るし、お前よりは死亡率は少ない筈だ」
彰利 「どうして死亡率で比べますかねこの人は……」
悠介 「だってさ、お前の話聞いてたら、なんだ?
どこでも漂流教室の真似してるみたいじゃねぇか。
食う物に困って、誰かを襲ってまで食い物強奪したりするなよ?」
彰利 「あ───それって俺達が高校二年の時にやってたニュースのことだろ?」
悠介 「……よく覚えてるよな、お前」
彰利 「くだらんことは覚えてるのに、大事なことは忘れる。これが人間ってもんです」
悠介 「そうかもな……」
俺や悠介が高校二年の時、そのニュースは夏に発生した。
見出しは確か、『無人島の先住民』とかゆうものだった。
無人島へ漂着した探検隊が無人島を探検中、謎の男に襲われたってものだった。
事実、テレビの中にはひとりの男……
まあ、言ってしまえば『漂流教室の飢えた子供』の顔をした男が、
探検隊を襲って食べ物を奪っている場面が映されていた。
テレビの中の男は、『逃がすなっ!あいつらの食べ物を全部取ってしまえっ!』とか、
『ワーッ!』とか『ウオーッ!!』とか、しきりに叫んでいた。
ようするに、本当に漂流教室に出てた飢えた子供達みたいな男だったわけだ。
その番組は、男が中継者を襲って終わるんだろうなぁとか思ってたんだが……
その展開は思わぬ方向に傾いた。
画面の中にひとりの少女(なかなかのべっぴんさん)が現れて、
男を追うようにして無人島の森の中へ駆けていったのだ。
それを注意しながら中継者も森へ入っていったんだが───
その画面の先で、少女が男を捕まえると───ふたりは消えてしまったのだ。
なんとも摩訶不思議な出来事だったが、
結局そのテレビは怪奇番組扱いされて終わってしまった。
彰利 「あれはあれで素晴らしい番組だったな。
人間、飢えるとどうなるか解らん」
悠介 「そりゃまあ……な。
生きたい一心で他人の食い物を奪うことくらいは考えられるけど」
彰利 「もしさ、どうしても我慢できなくなったとしてさ。人肉を食うとしませう」
悠介 「ああ。それで?」
彰利 「けどさ、そこには火を起こす道具もなにもなかったんだ。
お前ならどうする?生の人肉でも食うか?」
悠介 「絶対無理。てゆうかそもそも人肉自体を食わんだろ。……お前は?」
彰利 「さ、さすがの俺もそこまでは……。まあ、飢えてみなけりゃ解らんだろうけど」
悠介 「お前が本気で言いよどむ行為か……。実際にやるヤツが居たら怖いなぁ」
彰利 「ははっ、だよなぁ?
そんで大事な友人の生人肉とか食っちゃったらもう大変だ」
悠介 「おいおい、そんなヤツ居るわけないだろ。居たら大変だって喩えなんだから」
彰利 「おっと、こいつぁいけねぇ。ィヤッハッハッハッハ!!」
……でも、風の噂でそげなヤツが居たって聞いた覚えがあるんですよね、俺……。
まあ、噂は噂だし。
悠介 「───っと、そんじゃあそろそろ行くわ。篠瀬によろしく言っといてくれ」
彰利 「今は浅っちだぞ?」
悠介 「浅っちって……」
彰利 「浅美チャンのこと。
いやさぁ、浅っちってば俺が『浅美チャン』って呼ぶと、
しこたま嫌そうな顔するのよ。多分無意識なんだろうけど……なんかヤじゃん」
悠介 「お前ってやっぱり、子供には懐かれるけど普通に嫌われるのな」
彰利 「不思議だねぇ。ンマー、あれでしょ。アタイの高度な愛は───そう。
生きるためのウソを飾り過ぎて、心の翼で飛べなくなった人には通じないのよ」
悠介 「どっかで聞いた言葉だな……」
彰利 「気にすんな。で、もう行くんか?」
悠介 「ああ、『俺』が居るかどうか調べに来ただけだったんだ。
で、来てみればちゃんと『俺』が居て、それにべったりなルナが居た。
正直、自分とはいえそのまんまの姿のルナが……
俺以外の誰かにべったりなのを見たら、やりきれなかった」
彰利 「あらら……自分に嫉妬?」
悠介 「かもな。……少なからず、お前の気持ちが解ったよ。
自分の大事なヤツが他の誰かと結婚してるってのは辛いことだ」
彰利 「お前はまだいいよ……。俺なんか、自分ですらないんだぞ……?」
悠介 「……すまん、察するよ」
粉雪の顔を思い出して、とんでもなく嫌な気分になった。
この時代の粉雪も、既に誰かと結婚しちまって───子供まで出来ている。
しかもその子供が、椛の父親ときたら……辛くないわけがない。
誰が悪いわけでもない。
死んじまって、粉雪をひとりにさせちまった俺が悪い。
そう考えたら───やっぱり。
彰利 「なぁ悠介ー……」
悠介 「うん?」
彰利 「俺ゃあよ、絶対生き残るぜ?
たとえ無様でもどんな方法を使ってもレオに勝って、元の時代に戻る」
悠介 「……そか」
彰利 「だから引き続き、サルベージよろしく!」
悠介 「……あのなぁ。少しは自分でなんとかしようって思わねぇのか……この馬鹿」
彰利 「バカとはなんだコノヤロウ!!俺ゃ聖のことで頭いっぱいなんじゃい!
目的を違えることなぞ不許可!!
粉雪を愛すのはレオを倒せて元の時代へ帰れたらの話!
解ってくれ!ぼくだって辛いんだ!」
悠介 「辛いのは解るが……その顔はやめろ」
彰利 「ウウッ……」
やばいぞ……この世界に来てからというもの、漂流教室の真似がクセになってる。
悠介 「とにかく、俺はもう行くから。あんまり人に迷惑かける行為はするなよ?」
彰利 「ンマー!なんですかその言い草!
風太の時代に飛んだ時、真っ先に団子屋に迷惑かけたのが誰だったか、
今この場で鮮明に語ってくれやがりましょうか!?」
悠介 「ぐあっ……!よ、余計なことを覚えてんじゃねぇっ!!」
彰利 「さっきも言ったでしょうに……。
くだらんことは覚えてるのに、大事なことは忘れる。これが人間ってもんです」
悠介 「だとしても忘れろっ!!」
彰利 「ヘンッ!自分のことを棚にあげて、人にばっかり注意するからいけないんだっ!
いいか高松くん!ぼくはもう勝手にさせてもらうことに───ゲェーーッ!!」
お、恐ろしい……!
ああJOJO、おそろしい(……!!
何が恐ろしいって、ぼくまでみんなと同じようにあの中へとびこんでいって……!!
同じことをしそうになるんだっ!!───って、だから違う!!
いつの間にか、気づけば漂流教室の真似をしている自分が恐ろしいんだっ!!
……いや、別に困るほどのことでもないからいいんだけど。
よし解決!
彰利 「というわけで、俺は聖の様子を見に行ってくる」
悠介 「あー、いけいけ。なにかの真似をしてるお前に付き合ってると、
精神がいくつあっても足りゃしない」
彰利 「へっ、口の減らねぇガキだぜ……」
悠介 「独眼鉄の真似してる暇があったら、さっさと行け。俺も行くから」
彰利 「いや、なんつーか……今のが独眼鉄だって解る方もスゴイと思うけどね、俺」
そう言いつつも、互いが思い思いの方向へと歩きだした。
けど、その歩は一度止められる。
悠介 「あ───そうだ、彰利」
彰利 「んあ?どしたん?」
振り向いた先では、悠介がこっちを見ずに背中越しに喋っていた。
悠介 「俺は───どんな方法を使ってでも、お前を助けるからな。
いつか……いや。どの時代でも、命をかけて俺を救ってくれたお前に賭けて」
彰利 「……───悠介」
悠介 「それだけだ。じゃあな」
彰利 「───ああ、じゃあな」
やがて歩き出した悠介に軽く笑みをこぼしてから、俺も踵を返した。
なんとかなるさ、俺達の未来。
───そう、きっと夢は開く。
俺の開夢(って名前は、そうゆ意味を込めて名付けられ───
彰利 「誰が開夢だこの野郎!!」
悠介 「うおっ!?な、なんだよいきなり!」
彰利 「へ?あ、あー……なんでもねぇでゲス」
悠介 「……?」
首を傾げて、踵を返す悠介を見て溜め息を吐いた。
少し考えものですなぁ、アタイの全自動戯言発生思考回路も……。
そげなことをブツブツと呟きながら、
出来るだけ月明かりが差しこむ場所を選びつつ、
神社の境内目指して、のォ〜〜ホホんびりと歩き始めた。
───……が。
声 「───……ぁああん……!!……ぁああああん……!!!」
聞こえた泣き声に、大きく地を蹴った。
あまりの勢いに地面と空気が『ギャオッ!』という音を出したが、それは俺の愛ゆえに!!
彰利 「おのれ許さん!誰だか知らんが、よくも聖を泣かせてくれおったわ!!
犯人見つけ出して素っ裸にして、
大樹の上でドラゴンカードゲームじいさんのかめはめ波をやらせてやる!」
クォックォックォッ!いっとくが並大抵の恥ずかしさじゃねぇぜ!?
でもおなごをそげな刑にかけるわけにもゆきますまい。
この刑は男限定である!
おなごには───そうじゃのう、鬼塚デコピンの刑で。
彰利 「聖ィーーーッ!!」
山道を一気に駆け上り、滝壷の崖をロッククライミングし、神社の境内を駆け抜ける!!
そして大樹部屋の草木を開け放ち、その中で泣いていた聖を抱き締めた。
彰利 「ど、どうかしたのか!?なにがあったのかね!?
聖を泣かせたのは誰!?どなた!?
そげなヤツ、このアタイが極刑を下してくれる!!」
そう意気込んでいたアタイだったが、
返ってきた返事は俺の予想を遥かに上回る言葉だった。
聖 「パパぁ……どこに行ってたの……?心細かったよぅ……」
彰利 「ゲゲェエーーーーッ!!!!!」
え……じゃあ、なに?
アタイが傍に居なかったから……心細かったから泣いてた、と……?
彰利 「ウ、ウウウーーッ!!」
やべえ。
アタイ……とんでもないこと言ってしまいましたよね?
『おのれ許さん!誰だか知らんが、よくも聖を泣かせてくれおったわ!!
犯人見つけ出して素っ裸にして、
大樹の上でドラゴンカードゲームじいさんのかめはめ波をやらせてやる!』……とか。
え……?だって……え?犯人俺じゃん……。
浅美 「もう……どうしたんですか聖ちゃん……。
あんなに泣いたら悠介さまに迷惑が……」
彰利 「……浅っち」
浅美 「え?あ、戻ってたんですか。
───あれ?校務仮面はどうしたんですか?服もきちんと着てるし……」
彰利 「俺……男───否。漢として、自分で言ったことくらいは守りたい」
浅美 「……聞いてませんね。って……はい?なんの話で───」
彰利 「そしてなにより、聖の親として……ウソツキ男では居たくないんだ……」
浅美 「だ、だから……なんの話なんですか?
さっきから、なんだかとっても嫌な予感がするんですけど……」
彰利 「俺は今から漢になる!罪を償うのだっ!!」
浅美 「罪って……」
彰利 「ゆ、許してくれっ!聖、今までのぼくを許してくれっ!悪かったっ!」
聖 「パパ……?」
聖に大友くん風に謝ると、俺は着ていたものを全て脱ぎ捨てた!
浅美 「ひやぁっ!?きゃぁあああーーーーっ!!!!!」
聖 「わわっ……」(ぽっ)
彰利 「チョエエエェェェーーーーッ!!!!!」
そしてそのままの状態で大樹を駆け上り、その頂上へと君臨する!!
彰利 「ココォオ〜〜〜……」
そこで波紋の呼吸をした後───ドラゴンカードゲームじいさんのかめはめ波を真似た。
彰利 「ホィジィシィハイシャァ〜イ♪ユゥエィリィエィリィエィハァ〜〜♪」
フィイジィシンハァシャ〜ウェ〜エイ♪ウェエレェハァ〜ウィ♪」
ドシューーーン!!
彰利 「ドォ〜ラゴォンカァ〜ドゲェ〜ムゥ〜♪」
ドシューーーーン!!
その儀式のお蔭で羞恥心は吹き飛び、俺はある意味で悟りを開いたのだった。
彰利 「ふっ……ふふふはははは!!ィヤッハッハッハッハ!!───絶景!!
聞くのだ青海人(よ!これぞ『人』である!!」
両手を広げて、その先の夜景を眺めて叫ぶ。
彰利 「何も着飾らぬ原子の存在!!何者も及ばぬ絶対的な力!
そして───初めて知る屈辱的な敗北!……なに言いたいんだ俺」
謎だった。
けど反省は続けます!
彰利 「今こそ───雨でも台風でも吹雪でもなんでも来いだ!
それぐらい来なけりゃ───反省じゃあねぇぜ!?」
声 「なにやってるんですか!馬鹿なことはやめてくださいって言ったでしょう!?」
下の方から声が聞こえたが、これは聖に対する謝罪ッッ!!
解るかねッッ!!やめるわけにはいかんのだよ私はッッ!!
彰利 「浅っちよ!聖を頼みますよ!俺はまた、ここで一日を過ごすのだ!!」
声 「迷惑だからやめてください!」
彰利 「頼む浅っち……俺を……漢にしてくれ……」
声 「なんですかぁっ!?聞こえませんよぉっ!?」
雰囲気を出すために声を小さくしたら、どうやら聞こえなかったらしい。
彰利 「聖……今日は浅っちと眠るんじゃ!俺は今日───漢になる!
今日はじいやがおらんでも……平気じゃな!?」
声 「パパ……う、うんっ!!わたし、パパに迷惑かけないよっ!」
彰利 「迷惑なんかじゃあねぇーーっ!!
明日からはいくらでも甘えんさい!よいね!?」
声 「あ───うんっ!!」
その声を最後に、ふたりが大樹部屋に入る気配を感じた。
そして俺は構える。
彰利 「さあ来い自然よ!もう一度勝負だぁーーーっ!!」
自然攻略第二回目!
聖の気遣いを胸に秘め、勝利を確信したうえで、俺は叫んだのだった!!
───……。
彰利 「ま〜た吹雪だよ……」
そう呟いたのは、それから間も無くでした。
彰利 「ち、ちくしょう自然この野郎!!
俺に恨みでもあるのかコラ!なんで勝負だって言ったら吹雪くんだ!?オウ!?
なんか間違ってるって思いません!?思うよね!?ねぇ!?」
なにやら悪戯心を感じるんですよ、この吹雪に!
もしや神!?
い、いや……神というよりは、更に穏やか、更に能天気……!!
そげな気配を感じるぜ……!?
まるで、いっつもニコニコしてそうな風が、空と結託して俺を嘲笑うかのように……!
彰利 「お、おのれぇーーーっ!!俺は負けんぞぉーーっ!!」
ぞぉーーっ!!
ぉーーっ!
ぉーー……
───翌朝。
吹雪の治まった朝……
今度は聖が、大樹のてっぺんで凍っているフルティンのアタイを発見した。
聖 「───パパッ!?」
駆け寄ってくる聖。
俺も視界のみはハッキリしているため、それだけは確認できた。
でも体は凍ってて、しかも麻痺中。
どうにもならんし喋れもせん。
我ながら、よく生きてる。
彰利 (聖……助けておくれ……聖……)
聖 「パパ……死んじゃったの……?」
彰利 (死んでませんよ失礼な!)
聖 「パパ……」
ガコッ。
彰利 (ややっ!?)
聖が、凍ったアタイを持ち上げた!
なんとまあ……さすが神であり死神でもあるおなご!
腕力もさすがの如し!
彰利 (でも……どこ行くんでしょうね)
聖は俺を抱えた状態で空を浮き、山道付近に降り立った。
そして何を思ったのか、おもむろに地面を掘り出した。
彰利 (蟻の巣でも掘っとるんかね)
謎でした。
けどその土がかなりの大きさに掘られた時、
なんとなく……的中率100%な嫌な予感が頭をよぎる。
やべぇ……なんかやべぇ!
聖 「パパ……」
倒してある俺の頬を撫で、やがてガコォッと持ち上げる聖。
そして掘った穴に俺を───イヤァアアーーッ!!!ど、土葬!?
待って!まだ生きとるよアタイ!待って!イヤァーーッ!!!
───などと心の中で叫んでも届く筈もなく。
俺はやがて……土中の住人となってしまった。
───しかし、そこに起死回生の策はあったのだ───!
土に埋められたことで、凍っていた俺の体は少しからず溶け始めていた。
埋めてくれた場所が陽のあたる場所だったことが幸いしたのだ。
メキ、メキメキ……
彰利 (動く……動くぜ!!)
埋められてから数十分後、俺の体は完全に自由を取り戻していた!
酸素の云々はもちろん、月然力でなんとでもなりました。
息を吐く際に、土とかが口に入ることも何度もありましたが。
さあ、今こそ誕生の時!
彰利 (ふんっ!ぬおお……!)
自分の上にある土を押し上げるようにもがく。
ボコボコという音とともに、ゆっくりと外気に触れるアタイの体。
嗚呼……これが蝉やカブトムシの気持ちなのか……!
俺……今誕生してるよ……生命の息吹を感じてるよ……。
でも土からの誕生って言ったら、やっぱあれでしょ?
彰利 「ギギ……」
土から産まれた俺が、まずしたこと。
それはサイバイマンの真似だった。
───どしゃっ。
彰利 「ウィ?」
物音がした方向を見てみる。
すると……腐るほどのストックがあった北海ミルクパンを抱えていた聖。
彰利 「ギギ……?」
って、もうサイバイマンはいいか。
彰利 「ひじ───」
聖 「う、うあっ……あ、ぅう……!!」
彰利 「……アレ?」
なにやらとんでもなく怯えられてんですけど?
浅美 「バケモノめっ!聖ちゃんに触るなっ!!」
シュキィンッ!
彰利 「ギギギーーーーッ!!?」
横から突然の襲撃!
そこには刀を振り回した浅っちが!!
バケモノとな!?おのれ、人が生命の神秘を感じてるところに!
そりゃあフルティンでうろうろしてるのはヘンだろうけど、
しょうがないじゃ───アレェッ!?
───ふと見下ろした自分の体。
それは、どう見ても土中戦士っぽい格好だった。
彰利 「うお……泥まみれじゃねぇか……」
裸で凍っていた所為でお肌に水滴がついていて、
しかも吹雪の所為でぬかるんでいた泥が体全身にくっついたらしい。
彰利 「これは……」
これではまるで……修羅念土闘衣じゃあねぇか。
……やらねばなるまい。
こんなチャンスを無にするわけにはいかねぇ。
彰利 「オレ、サイバイマン!オレ、オマエ、ブッチギリ!!」
浅美 「え、えぇっ!?」
震える手で刀を持つ浅っちには恐怖もなにも感じません!
さあ行きましょう!!
彰利 「修羅念土闘衣!そして必殺のォオオーーーーッ!!!
ボンバァーーータックルゥーーーッ!!!」
ドットットットット───
泥だらけの体で、規則正しいリズムをもって浅っち目掛けて走る!!
浅美 「わ、わぁーーっ!!」
突然の行為に驚いたのか、浅っちは一目散に逃げ出した!!
甘い!甘いわ!
そげな足下が覚束無いダッシュでこのボンバータックルから逃げられるか!
浅美 「ひぇっ!?あ、あわわぁーーっ!!」
彰利 「むっ!」
浅っちの動きが止まった!
───勝機!!
彰利 「ボンバァーーーーーーータックルゥーーーーーッ!!」
浅美 「ひやぁああっ!!ま、ままま待っ───」
ドグシャッ!
浅美 「ひゃんっ!!」
彰利 「へ?ゲ、ゲェーーーッ!!」
浅っちをボンバータックルで吹き飛ばした刹那、無情な景色が広がった。
そう、浅っちが立ち止まった理由───それは、その先が───滝壷だったからでした。
浅美 「やーーっ!いやーーーっ!!!」
彰利 「ギャアアアアーーーッ!!!!」
グ、グムーーッ!このまま落下したら凄まじいダメージで気絶してしまうーーっ!
なんとかせねばーーっ!
───その時だった!突如何者かの声が聞こえてきたのは!
声 『変身だ!おまえのメタモルフォーゼを使って反撃するんだーっ!!』
彰利 「そ、そうだ!わたしにはそれがあった!ΩメタモルフォーゼNo.8ーーー!!」
しかし効果がなかった………。
彰利 「ゲーーーーーッ!!ゲーーーーーッ!!
わ…わたしの変身機能は外界にある建物・樹木・生物・機械など、
目に見える風景に対して敏感に反応するのが特徴!
し…しかしそのわたしの変身ターゲットである外界のすべての風景を
このような巨大パラソルで覆われてしまっては、
もうどうすることもできーーーーん!」
てゆうか前にもこんなことしてませんでしたっけ!?
嗚呼!こげな馬鹿なことしてる間に水面が───
───がぼしゃああああーーーーーーん!!!!
……その後、激しく冷たい冬の滝の水の中。
泥が流れたアタイは産まれたままの姿で発見された。
水の冷たさと外気の寒さに震える浅っちだったが、
水辺に浮かぶサイバイマンの正体を知ったことで当然の如く激怒。
手に持った刀で裸のままのアタイを容赦無く切り刻みまくった。
薄れゆく意識の中……ああ、やっぱ夜華さんの来世だなぁと思った瞬間でした───
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