───骨々の巻【再】───
───……鈴訊庵・客席。
リヴァ「じゃあ、いいんだな?」
悠介 「ああ」
覚悟は出来た。
腹も据わった。
あとは───やってやるだけだ。
彰利の精神に潜り込んで───レオを倒す!
その気になれば、刺し違えたって───!
悠介 「しっかしまあ、どれだけ無茶なことが出来ても『人間』だなぁ。
腹が減っては戦は出来ぬって言うけど、今はまさにその通りだ」
現状はといえば、篠瀬は一度神社に戻ると言って出て行ったきり。
俺とリヴァイアはメシを食っている、なんてものだ。
考えてみれば、工房に篭ってから今まで、な〜んにも食ってなかったのだ。
精神内で飲食はしたが、童心ってゆう霊体みたいものが満足したところで、
肉体が満足する筈もなく───
睡眠から目を覚ました俺は、こうしてメシにありついたわけだ。
……食材もなにもかも、勝手に使わせてもらったわけだが。
悠介 「誰も居ないな。いっつもこんなもんなのか?」
リヴァ「いや。普段は黙っててもやかましいのが集まってくるものなんだけどな。
まあ凍弥はわたしの工房に寝かせているし、天界の女は天界に行ったらしい。
───けど、どうしてかな。なにか足りない気がする。
料理を用意してくれる誰かが……居たような気がするんだが……」
悠介 「……ふむ」
あまりに静か過ぎる鈴訊庵の中を見渡して、肩を竦める。
何かあった、か───
悠介 「気にならないのか?」
リヴァ「ならないと思ってるか?」
───いや、思わないな。
さっきからどこか落ち着きがないリヴァイアを見れば、気にならないようには見えない。
リヴァ「だが、今は検察官を救うことだけを考えるべきだ。
原因の解らないものを追求して、検察官を見殺しにするようなことは出来ない」
悠介 「───……見殺し?」
リヴァ「ああ、そういえば言ってなかったな。
凍弥ほどじゃないが、検察官にも後が残されてない」
悠介 「───……そうか。予想してなかったわけじゃないけどな……」
リヴァ「原因は、検察官の検察官としての存在の希薄さにある。
『記憶』と『経験』を食われて、
それを拾い集めても固定が出来なければ意味がない。
お前が集めた記憶と経験は、
わたしが精神内に作った貯蔵庫に保管されているような状態だ。
それは検察官にも少なからず影響を及ぼして、
検察官が以前のように振舞うことが出来るようにはなっている。
だがその、なんて言うべきか。……解るだろう?
検察官は生きた時間が長すぎるんだ」
悠介 「まあ……そりゃ解る。
あいつは300年くらい生きてるなんてことを言ってたけど、
あいつの性格だ……サバを読んでる可能性が高すぎる」
リヴァ「……話が早い、って言ってもいいのかどうか。
とにかく検察官は人に知られすぎている。
これはただの喩えにすぎないんだが、
基準となる存在力は人に知られた数によるんじゃないか?
『人は人に忘れられた時に死ぬ』……地界にはこんな言葉がある。
存在力ってゆうのはそれと同じなのかもしれない。
検察官は無駄に人と知り合っている所為か、人一倍に存在力が高い。
……つまり、今のままの生半可な記憶と経験じゃあそれをカバーできない」
悠介 「……よく解らないことになってきたな」
リヴァ「憶測と戯言の集合体だ。気にするな」
そう言われたってな……焦るよ。
親友に後が無いなんて言われたら誰だってこうなるだろ……。
リヴァ「いいか?今のは地界側の喩えのようなものだ。
存在力の基準なんてものは誰にも解らない。
……地界の言葉に意見するようで悪いが、
『人は人に忘れられた時に死ぬ』ってゆうのは、それこそ戯言だ。
人は誰かに忘れられた時に死ぬんじゃない。自分が自分じゃなくなった時に死ぬ。
……そんなこと、空界なら子供でも知っていることだ。
考えてもみろ、自分が自分じゃないのに、どうして生きていると言える?
たとえば記憶喪失になったとして、
そいつはそいつとして生きていると言えるか?」
……いや、言えやしない。
リヴァ「空界の考えからしてみれば、そいつはもう死んでいる。
記憶が戻った時には迎えてやりたいものだが……そうだな。
また喩えになるけど、この地界で仕事をしている者が居るとしよう。
成績も優秀、人当たりもよく万能だった。
そいつが会社を引っ張っていたと考えてもいいとする。
だが───そいつは大事な仕事を前に事故に遭い、記憶を失った。
さて問題だ。会社は記憶を失って仕事が出来なくなったそいつを必要とするか?」
悠介 「───!」
リヴァ「解るな?記憶を失ったところでそいつは殺されているんだ。
ほら、おかしいじゃないか。そんなことは地界の全員が本能として知っている。
結果として会社が潰れたとして、会社関係者は誰を恨むかな?
ああもちろん、事故を起こしたヤツをまず恨むだろうな。
けど、人間ってゆうのは黒い。
最初は事故を起こしたヤツへ、相手の見えない愚痴をこぼすだろうな。
だがそれも時間が経つと、
『どうしてあんな大事な時に事故なんて』って言葉が出始める。
なにが『人に忘れられた時に死ぬ』だ。
そんなもの、誰もがそいつをそいつと認めなければ死んでるのと同じだ。
そしてそれを思わせるのは誰でもない、記憶を失ったそいつなんだ」
……まただ。
最近のリヴァイアはひどく苛立っている。
あまり気にしてなかったが───
悠介 「……なぁリヴァイア。なんだって彰利のことをそんなに助けたいって思うんだ?」
リヴァ「───なに?……助けたくないのかお前は」
悠介 「助けたいに決まってる。
けど、お前がどうしてそこまで必死になるのかが解らない」
リヴァ「……───どうして、か……」
考える仕草を見せて、けど───肩を竦めると俺に苦笑を見せた。
リヴァ「実は、わたしにも解らないんだ。
助けたいと思うから助ける。それじゃあダメかな」
悠介 「……いや。そうだよな……助けたいから助けるんだ。理由なんてそれで十分だ」
リヴァ「そうだろう?まったく……おかしなことを訊くな、ばか」
悠介 「ばかは余計だ」
そう言って俺達は笑った。
なんだか笑うのも懐かしく思える状況の中で、
この状況で笑えるのはこれが最後なんだろうって確信しながら。
あとの笑顔はあいつを救ってからにしよう。
そう決めて───やがて俺達は立ち上がった。
───長く続き、さらに続いてゆくであろう死神との因縁に段落をつけるために。
───…………。
工房へと続くドアをくぐる。
薄暗い工房へと入り、その先で眠る姿を見据えて、大きく深呼吸を。
悠介 「───?」
……そんなことをしていた時、その視界の中で動くものが見えた。
───凍弥だ。
悠介 「凍弥……どうしたんだ、寝てなきゃダメだろ」
凍弥 「………」
悠介 「凍弥?」
様子がおかしかった。
もしや何か異常が起きたのかと思い、肩を掴んで強引に向き直らせ、その顔を見た。
悠介 「───……」
その顔は……涙に濡れていた。
凍弥 「……っ……解らないんだ……」
悠介 「凍弥?」
凍弥 「解らない……。自分の中にすごい安心感と暖かみが流れてきて……
俺は大切な……幸せな夢を見ていた筈なのに……!
思い出せないんだ……!解らないんだ……!!
俺はその人に何度も、何度だって謝らなきゃいけなかったのに……!
感謝しなきゃいけなかったのに……!
消えてゆく……無くなってしまうんだ……!」
……なにを言っているのかが解らない。
存在率の消滅の所為で混乱してるのか……?
凍弥 「悠介さん───教えてください!
ここに誰か来ませんでしたか!?お願いです!教えてください!」
悠介 「っと!おいっ、凍弥っ?」
凍弥 「お願い……します……っ!」
悠介 「………」
凍弥は……俺に掴みかかった状態で、
溢れる嗚咽に負けたかのように苦しそうに泣き出した。
暗い部屋に響くその声は本物で。
少なくとも、凍弥にとって大切ななにかが消えてしまったことは間違いなさそうだった。
けど今は───
悠介 「凍弥。体に違和感はないか?」
……凍弥の安全を確認するべきだ。
俺には凍弥が何を言っているのかが解らない。
そうなると、こうするしかない。
凍弥 「……───よく、解らないんです……。
でも……違和感なんてなくて……
いや……無い、って言い切らなきゃいけないんだと思う……。
俺には、いつも俺を支えてくれていた誰かが居て……
俺はその人に何度も何度も感謝しなきゃいけないのに……」
『その顔も、声も、なにもかもが思い出せない……』。
そう言って、凍弥は頭を抱えて泣いた。
震える肩は弱々しく、だけど───それが消えて見えるようなことはもう無かった。
確かによく解らない。
解らないけど───凍弥の涙は本物だ。
この世界の中で、誰かが消えたことは間違いじゃないんだろうって……そう思った。
悠介 「落ち着くまでそこに座ってろ。俺は……レオを片付けてくるから」
凍弥 「ッ……」
嗚咽に耐えながらこくこくと頷く凍弥を見て、俺もまた頷いた。
そして、遅れて入ってきたリヴァイアを見て頷いてみせる。
……始めよう、彰利を救う戦い───ヲォッ!?
悠介 「なっ───あ、ああっ!?リ、リヴァイア!?彰利は───何処に行った!?」
リヴァ「なに?───!?」
彰利が居ない。
まさか。
まさか───レオが覚醒した───!?
悠介 「リヴァイア!彰利が何処に行ったか解らないか!?」
リヴァ「安心しろ。こんなこともあろうかと、発信機代わりの式を纏わせておいた」
悠介 「…………そ、そうか……」
この場合は助かったが、平然と発信機を取り付けるリヴァイアに、冷静に恐怖を感じた。
出来るだけ怒らせんようにしておこう、プライベートが消滅する気がする。
リヴァ「待っていろ、今確認する」
言って、リヴァイアは指に光を浮かばせ、式を編んでいった。
やがて描かれた式が弾けた時───
リヴァ「……見つけた。検察官は晦神社に居る。
ただ───……既にレオとなって、だが」
悠介 「───!!」
嫌な予感ってのは当たるものだが……今回ばっかりは本当にビンゴすぎる。
いい予感ばっかり当たる人生ってのが欲しいな、まったく……!
悠介 「晦神社だな!?解った!───晦神社の境内へ続くブラックホールが出ます!」
すぐさまに想像を弾かせ、その渦へと飛び込む。
リヴァイアが何かを言っていた気がするが───レオが居る場所は晦神社。
そこに居るのはルナだけだ。
嫌な予感が離れてくれやしない。
俺はリヴァイアの声に聞く耳を貸さず、そのまま渦へと消えた。
───……ビジュンッ!
ブラックホールが消えると、その景色が開ける。
見慣れた景色───その中に、ひとつの異質な姿があった。
黒いマントに身を包む、漆黒を模したような死神が……そこに居た。
悠介 「レオ───フォルセティー……!」
声に気づいた闇が、ゆっくりと俺に向き直る。
髪型こそ彰利に近いものがあるが、顔の険しさはまるで違った。
初めて彰利の精神の中で見た時より───その姿がハッキリしている。
レオ 「晦悠介か。俺になんのようだ」
尋常じゃない威圧感を感じる。
生まれた種族が違うのだと言い切れるほどの力を。
まるで、抜き身の刀を喉に刺されているような息苦しさだ。
だが───ここで飲まれるわけにはいかない。
俺がしっかりしなけりゃ、彰利を救うことなんて出来やしない───!!
悠介 「っ……意外だったな。死神が自分を『俺』だなんて言うとはね……。
彰利の経験と記憶を食ったことが利いてるんじゃないか……?」
レオ 「その通りだ。今の俺は弦月彰利の経験や記憶を食ったおかげでヤツには近い。
だが、ヤツはヤツ、俺は俺だ」
悠介 「……そうか。だったら言いたいことはひとつだ。その身体から出て行け」
レオ 「───断る。と言ったら?」
悠介 「決まってる!実力行使だ!!」
レオ 「面白い。本気で来い、人間。貴様の女なら眠らせてある。存分に騒げるぞ」
悠介 「眠らせてなくても全力で行くつもりだ!覚悟しやがれ!!」
地面を強く蹴り、その闇へと向かう。
所撃───イメージを弾かせ、ブラストを放つ!
レオ 「フッ!」
しかしその光は、レオの拳で叩き落とされた。
舞う白煙。
その煙を裂くようにして、レオは疾駆してきた。
───だがそれが狙い!
悠介 「レッツ・ファイア!」
パチィンッ!どっかぁああああああああああん!!!!!
レオ 「ぐあっ!?」
勢いよく指を弾き鳴らした途端、白煙が爆発してレオを包んだ!
けどまあ、こんなものじゃあ終わらないと思うので次のイメージ開始。
レオ 「ぐっ……!これは……メリケン粉の匂い……!?」
悠介 「ご名答。障害物に当たったらメリケン粉になるってイメージだ。
粉塵爆破って知ってるか?
空中に撒き散らかしたメリケン粉に火をつけるとな、派手に爆発してくれるのさ」
レオ 「くだらん児戯───!それが貴様の全力か!」
再び疾駆。
───焦るな、冷静さを欠けば死ぬのは俺───!
まずは相手を弱体化させるんだ!
悠介 「月蝕力!」
レオ 「───!」
闇を操り、レオを包み込む。
が───ゾフィィインッ!!
悠介 「なっ───!?」
その闇が、レオの一振りの鎌によって断ち切られた。
んな馬鹿な……!
あれは死神や家系の者を蝕む闇だぞ!?
それを───!
レオ 「そう急くな。開幕したばかりだというのに終幕を望む愚考は捨てろ」
……やばい。
甘く見ていたつもりはなかった。
が、それでもレオからしてみれば甘く見ていたのかもしれない。
悠介 「まいったな……勝負を捨てるつもりはないが……」
……正直、考えなしだったかもしれない。
───……。
ドゴォッ!ガコォッ!
悠介 「くあっ!はぁっ!」
レオ 「ふははははは!!どうしたどうした!そっちは崖だぞ!」
悠介 「うるせぇっ!解ってるよそんなことは!」
光を創造してレオの視界を塞ぐ。
その隙に距離取るが───ジュヒィンッ!!
悠介 「くあっ!」
それでも正確に攻撃が来る……!
こいつの鎌、まるでバケモノだ!
切れ味が尋常じゃねぇ!
声 『ほねっほねっほねっ……梃子摺っているようだな!』
悠介 「───!その声は!」
レオ 「馬鹿め!貴様に余所見をする余裕などあるのか!?」
悠介 「!しまっ───」
ザゴシュウン!!
南無 『ほねぇえええええーーーーーーーーーっ!!!!!!』
悠介 「あ」
レオ 「うぬっ……!?」
いきなりだった。
地面から光とともに現れた骨が、レオの鎌で思いっきり斬られた。
しかも一撃で致命傷だったらしく、カラカラと崩れてゆく。
……なにしに来たんだコイツ……。
レオ 「……邪魔が入ったようだ。運がいい」
悠介 「いや……運がいいっつーか、こいつが馬鹿っつーか……」
なんにせよタイミングと出現ポイントの悪いヤツだ。
レオ 「行くぞ、人間ッ!」
悠介 「チィッ!」
再び振るわれた鎌を紙一重で避ける。
しかし、返す刃が再び襲い掛かる!!
南無 『貴様らね!少しは俺を気遣おうという気持ちは』
ザゴシュウ!!
南無 『ほねぇええええええええい!!!!!!』
カラカラ……ごしゃっ。
悠介 「………」
レオ 「………」
まただ。
せっかく再生したのに、また割って入った所為で鎌の餌食に……。
しかもご丁寧にバラバラに……。
悠介 「お前さ、何がしたいんだ?」
南無 『ほね……ほねねねね……』
ピクピクというよりはカタカタと動いてる骨野郎。
その姿を異様と思わないだけ、俺も随分と慣れたものだ……。
レオ 「邪魔をするならば殺すぞ」
南無 『ほねっ!?ほねほねほね!生憎だが俺は骨型死神よ!
崩れることはあっても死は無い!不死身とはまさに俺のためにある言葉!
というよりは、殺されてもまた復活できるのだ。
だからお前、俺には勝てんよ』
レオ 「ほう……?」
南無 『最初に言っておく。俺は誰の味方もしないぞ。
俺が見たいのは【面白(!】なものだけだからだ。
どっちか一方につくのはアンフェアだろ?』
レオ 「構わん。俺は俺を見下すような態度を取る者には容赦はしない」
南無 『ほねほねほね!人型死神風情がよくぞそこまで謳った!!さあ行け人間!』
俺の後ろに下がって背中をズイと押す骨───って!
悠介 「お前が行くんじゃないのかよ!!」
南無 『ほねっ!?何故俺がそんな面倒なことをしなければならないのだ?
戦えば十中八九勝つが、俺は面倒が嫌いなんだ。だが退屈も嫌いだ』
悠介 「じゃあ戦え」
南無 『……チッ、仕方ないほね。そこで俺の戦いを見てるほねよ?』
悠介 「あー、がんばれー」
南無 『少しは気持ちを込めて言えほね!!』
レオ 「───……」
カコッ。
骨がレオの前に立ち塞がる───にしたって、
もう少し威圧感のある立ち塞がり音にしてもらいたいものだ。
なんだよ『カコッ』て……。
まあ骨なんだから仕方ないんだが。
南無 『急遽、俺が貴様の相手をすることになったほね。
俺の名はボーン=ナム。究極の死神の中のひとりほね』
レオ 「究極の───ほう。深遠にあるという溟界の存在───骨型死神か。
相手にとって不足は無い。存分に楽しませてもらうとしよう」
南無 『ほねほねほね……!楽しむのは───この俺の方だ!!』
叫び、鎌を出す骨。
赤と黒を混ぜたような色の巨大なソレを軽々しく振り回す骨は、
不気味以外のなにものでもないなぁ。
もう、なにがなんだか滅茶苦茶だ。
南無 『ほねっ!』
ビジュンッ───バッガァアアアアアアアアン!!!!!
レオ 「ッッ……!!?」
横薙の一閃。
それは衝撃波となって、レオの頬を掠め───後ろに存在していた木々を薙ぎ倒した。
強い……!まるでフレイア並みの強さだ……!
南無 『どうしたね?かかってこないのかね』
レオ 「……これが究極の死神の力か……。まるで処刑者(の如き強さ……。
だが、それぐらい強くなくては困るのだ!」
レオが一気に間合いを詰めようと疾駆する!
だが骨は何を思ったのか、鎌を捨てて駆け出した!
ご丁寧に『カッショカッショカッショ……!』という奇妙な音を鳴らしながら。
南無 『くうう!足場が石だと着地の衝撃が直接身体に響くほね!!』
だったら浮け馬鹿。
南無 『───だが!
どこをとっても骨な俺だが、粉骨砕身の心意気でお前を打ち砕くほね!』
いや、そしたら砕けるのお前だから。
南無 『くらえ!カルシウム満点!カルボーンフェスティバル!!』
カシャッ───ドゴドドドドドド!!!
レオ 「ぐうぅううっ!!?」
走っていた骨がバラバラになり、レオの身体に突き刺さった!
悠介 「うわっ!気持ち悪っ!」
素直な意見をここに。
もう滅茶苦茶だ、シリアス感ゼロの状況が出来ちまったい……。
南無 『トドメだ!必殺───入れ歯カミカミ!!』
ガブッ!
悠介 「いだぁーーーーっ!!!」
南無 『ほねっ!?はーーん!!しまったぁーーーっ!
噛み付く相手を間違えてしまったがよ!!』
悠介 「『はーーん』じゃねぇえーーーっ!!!」
ガッシ!ガベキャア!!
南無 『ほべぃっ!?』
突然の不意打ちに頭にきた俺は、
腕に噛み付いてきた骨の頭を引っ掴んで地面に投げ飛ばした!
その際、何気にいい音を出してくれたのは面白かったことを付け足しておこう。
骨なだけにいい音が鳴った……こいつは面白い!って面白がってる場合か!
悠介 「お前邪魔!!戦う気ねぇなら帰れ!!」
南無 『ほねっ!?言っとくけど俺に家なんてねぇぜ!?だって骨だし!
それくらい解れこのモミアゲ馬鹿!!』
悠介 「だったら冥界に帰れ!」
南無 『俺この時代の住人じゃねぇから帰れねぇぜ!?そんくらい察しろボケ!!』
悠介 「じゃあ消えろ!」
南無 『不死身だから無理!!さっき言ったばっかりだろうが!
ほねほねほねっ!馬ッ鹿じゃねぇの〜〜〜っ!?』
悠介 「おぉぉぉおおおおぉぉお!!こいつほんとなにもかもがムカツク!!」
強いくせに遊びまくってて戦力になりゃしねぇ!
ほんともうなんなんだよこいつ!
悠介 「なにしにここに来たんだよお前は!」
南無 『冷やかし!』
悠介 「帰れ!!」
南無 『帰る家などない!!帰らせたいなら俺をもとの時代へ帰せ!!』
悠介 「出来るか凡骨馬鹿!」
南無 『凡骨だと!?このボーンナムさまをただの骨と言うか!
もう怒ったほね!来い!俺のボディーパーツよ!!
この男に目にものを見せてやるのだ!』
…………しーん。
南無 『ほねねっ!?ちょ、ちょいと……ボディーパーツさん!?何故来ないほね!?』
黙って、骨の頭を引っ掴むと……レオの方を向かせる。
そこには粉々にされた骨のパーツが。
南無 『ほねぇえええーーーーっ!!?話に夢中で気づかなかったぁーーーっ!!!
ひ、ひどい……なんてことを……!』
俺の手から逃れた頭骨が空を浮く。
不気味なことこの上ないが……だめだ!誘惑に勝てん!
悠介 「金属バットが出ます!!」
ポムッ。
南無 『ほね?』
悠介 「世界の王ちゃん!俺に力を!ホォーーームランッ!!」
コパキャァアアアアアアアアン!!!!
南無 『ほねぇええええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーー………………』
シュゴォオーーーーー……キラーン。
空中を漂ってた骨が星となった……。
いや、なんつーか……丁度いい場所に飛んでたもんだから、つい打っちまった……。
ヒュォオオ〜と悲しい風が吹く中……粉々に砕かれた骨のカスが飛ばされていった。
……さよなら、骨。
レオ 「……興が醒めた……が、中断するわけにもゆくまい?」
悠介 「当然だ。決着がつくまで───いや。彰利を救うまではやめるつもりはない」
レオ 「大した虚勢だ。真実にするには実力が伴わないとは思うがな」
悠介 「ッ───」
嫌なヤツだ、こいつ。
けど、それでいい。
ムカツク方がブチノメし甲斐があるってもんだ───!!
レオ 「ゆくぞ!せいぜい抗ってみろ!」
っ!?跳躍───!?
空中からなにを───
レオ 「これがなんだか解るか!」
悠介 「───?め、冥月刀!?」
レオ 「その通りだ!今の俺の力をこれで増幅したら、どうなるかな!?」
レオが両手に持った刀を振り上げて笑った。
ヤバイ───いよいよもってヤバイ。
空中じゃあ攻撃のしようが……あるか。
悠介 「ブラスト!!」
ブラストを創造して発射!
近接戦闘がダメなら飛び道具───これが戦術というもの!
レオ 「馬鹿め!そんな貧弱な光で俺が怯むか!
さあ冥月刀よ!俺の力を増幅しろ!アンリミテッドストリーム!!」
ドシュンッ!!
ふたつ構えた冥月刀の真ん中から光が発射される───が。
それはいつか、姉さんが撃っていたくらいの光の大きさだ。
レオ 「なに───!?」
おかしなことで、それに一番驚いてるのはレオだった。
ひとまずは退魔の防御壁でアンリミテッドストリームを弾いた。
レオ 「……どういう……ことだ」
冥月刀を見つめる。
そのレオの顔は、困惑のまま固まってる。
力がてんで増幅されなかったことに疑問を感じているみたいだ。
レオ 「何故だ……記憶と経験によれば、この刀は月操力を増幅させるものでは……」
俺にも解らない。
けど───もしかしたら、冥月刀は彰利以外に扱われることを拒んでるんじゃ……?
いつか言ってたよな、冥月刀には人の人格があるって。
その人格が彰利に力を貸していた……?
どうして、彰利にだけ力を貸す……?
……なんか引っ掛かる。
彰利が冥月刀を握ってたお陰で、記憶を繋ぎとめられていたことにも関係してるのか……?
冥月刀が、自分の持っている彰利の記憶を彰利に渡してた、とか……?
レオ 「───チッ!こんなものに頼ろうとした自分が愚かしい!
やはり俺は俺の力で全てを破壊してみせる!!」
悠介 「───はっ!」
馬鹿か俺は!考え事なんてしてられる状況かっ!!
よく見ろ!俺の敵を!
あいつを消すまで一切の油断もあっちゃならないんだ!!
レオ 「シィッ!!」
バズッ!!
悠介 「ぐっ!?」
くそっ!避け切れなかった!
腕をやられたか───!
レオ 「終わりだ!」
悠介 「くぅっ!?く───くっそぉおおおおおおっ!!!!」
ゴシュウウウウウン!!
ガションガションガションガション!!
南無 『ンンンン〜〜ッ!!!』
ザギャア!!
南無 『ほねぇええええええええええっ!!!!!』
悠介 「あ……」
レオ 「───……」
突然飛んできて、マーヴルVSカプコン2のラスボス(第一形態)のような現れ方をした骨が、
加減無しに思いっきり振られた鎌の餌食になった。
カラカラカラ……。
で、やっぱりバラバラになる骨。
なにやりたいんだよ、ほんとに……。
悠介 「せっかく再生して戻ってきたのに……馬鹿かお前か」
南無 『ほねほねほね!俺は自分の身体よりその場のノリを重んじる骨ほね!!
ならばこそ、シリアスな雰囲気すら破壊してみせよう!
この世界に必要なのは身体張ってノリを示す究極の存在!!
そしてその究極が俺と出ュ浮!!……ところでキミ。後ろ』
悠介 「ン?っておわぁっ!!」
ヒィンッ!!
悠介 「あっ……あぶっ、あぶっ……!!」
咄嗟に屈んだ瞬間、俺の頭があったあたりの虚空を黒塗りの鎌が通り過ぎた!
しかも髪の毛が数本、パラパラって落ちた。
あぶねぇっ……!!屈まなかったら死んでたぞ……!!
レオ 「この際───その骨など知ったことではない。
不死身と相手をしていても果てがなく詰まらん。
壁は破壊できるからこそ壁。果ての見えない壁に、壊す価値などない」
南無 『自分が弱いことを理屈づけて逃げようとしてやがる。こいつ、ザコだぜ』
スカッ。
南無 『あれっ?』
おお!骨の顔が真っ二つに!
───てゆうか……鎌を振る動作が見えなかったんですけど……?
それじゃあなにか?
その気になれば、俺なんか知らぬ間に死んでるってことか……?
南無 『ムン!』
ビッタァ!
おお!骨が気合を入れた途端、切れた頭骨が元通りに!
……いや、もういいから。
戦う気がないこいつは邪魔なだけだ。
悠介 「うりゃ」
ガキョッ!
南無 『ほねっ!?』
骨の顎の接合部分に手をぶつけるように叩く。
するとあっさりと縫合が外れ、顎が地面に落ちた。
これぞ風摩殺。
南無 『ほげっ!?』
次いで、おろおろする骨の頭のてっぺんに固めた指を落とす!
ガツンッ!!
南無 『ギャッ!』
さらに───広げた指を勢いよく振り下ろし、頭骨の頂点に落とす!!
ガツンッ!!
南無 『───!!』
ブシュッ!!
悠介 「うおおっ!?」
謎だ……。
六波返しを実行してみたら、骨だけの存在のくせに何故か血を噴出したぞこいつ。
なんだこいつ……不気味な。
しっかし……こうもあっさりと骨の縫合が外れるとは……。
ほんとにカルシウム満点なのか?こいつ。
悠介 「───じゃあ、続きだ」
レオ 「……相手をしてやる。かかってこい」
悠然と立ち、マントを風に揺らしているレオを睨みつける。
その威圧感はまるで変わらない。
……ったく、自分で来ておいてなんだが、毎度毎度嫌なヤツと戦うハメなるもんだ。
俺としてはもっと平穏な生活を望んでたんだけどな……。
ま、いまさら愚痴ったって本当にいまさらだ。
今はレオをぶっ潰すことだけを考えよう───!
───ダンッ!
悠介 「弾けろ俺のイメージ!」
レオ 「全て、塵と砕いてくれる!」
一度バックステップをしてから、助走をつけるように双方が駆けた。
止まらない。
ぶつかる覚悟で何発だって創造を繰り返してやる!
南無 『いざ!尋常に!一本目───勝負!!』
ぐしゃっ!!
南無 『ほねぇぃっ!!?』
カラカラ……どしゃっ。
悠介 「………」
レオ 「………」
急に立ち上がるもんだから、つい身体が反応して思いっきり殴っちまった……。
しかも俺とレオの拳で、骨の頭蓋骨がサンドウィッチに……。
悠介 「……あのさ。邪魔しかしない気なら消えてくれないか?」
南無 『ほほはへひほひへ、はんへひほひ!!』(ここまでしといて、なんてひどい!)
悠介 「潰れたままで喋るなよ……不気味すぎる」
南無 『ほへっ!?───フン!!』(ほねっ!?───フン!!)
パァン!
骨が気合を入れると、潰れていた頭蓋骨がいい音を出して復元。
まるで形状記憶風船みたいな復活の仕方だな、こりゃ……。
南無 『下がっていなさいペドロ。ここは私が戦おう』
悠介 「誰がペドロだ」
立ち上がり、レオに向けて殺気を出す骨。
てんで迫力がないのが悲しい限りだが、それなりの殺気ではある。
レオは……うあ、とんでもなく疲れた顔してる。
ある意味でダメージは与えているようだ。
南無 『ジャングルの平和を乱すヤツは許さぁーーん!!』
ドシュン!ドシュン!ドシュゥウウン!
悠介 「おおっ!」
予想を遥かに上回るスピードで骨が駆けた!
だがしかし……一定の距離まで走ったら走る前の場所まで転移して、
同じ場所を3回走る意味はあるのか?
……あー、そういえばTVアニメジャングルの王者ターちゃんで、
ターちゃんが『ジャングルの平和を乱すヤツは許さーん』とか言って、
何回かこんなことを繰り返してたようなしてなかったような……ザグシュッ。
南無 『ほねぇええええーーーーーっ!!!!』
……しかもやっぱり鎌の一撃でバラバラ。
ダメだ……少しでも骨に期待した俺が愚か者だった……。
レオ 「鬱陶しい……!貴様は消えろ!“運命破壊せし漆黒の鎌(”!!
この骨死神の『不死身』という絶対条件を破壊しろ!!」
南無 『ほねっ!?い、いか〜〜〜ん!』
レオの鎌が黒く光る───!
その光が何かが弾けるような音を鳴らす!
運命破壊せし漆黒の鎌……あの鎌の能力は、その名の通り『運命破壊』……!?
決められたことを破壊する鎌だなんてどうかしてるぞ……!
南無 『運命破壊せし漆黒の鎌……味わわせてもらったぜ。
まあもしこれで俺を殺しても復活するけどね?』
レオ 「なに……?」
南無 『だってホラ、俺を蘇らせるのは俺の能力じゃなくて、溟界だものほね。
俺の能力封じたって、意味のないことほねよ?』
レオ 「では、貴様は真実不死身だというのか……!」
南無 『その通りだ!さあ行くほね!カルシウム満点!カルボーン・フェスティバル!!』
バララッ───シュゴォオオオオーーーッ!!!
うあ……またバラバラになって飛んでいってるよ……。
しかもご丁寧に顔だけは俺のところに飛んできてやがるし……。
だが───
悠介 「ド真ん中!もらったぁっ!」
俺はさっき創造したバットを拾って構え、空飛ぶ頭骨に向けて思いっきり振った!!
南無 『甘いほね!』
カクンッ!
骨の一が一気に下がる!
いわゆるフォークボールというものだ。
南無 『もらった!必殺───入れ歯カミカミ!!』
が───しかし!
───シュゴォンッ!
南無 『な、なにぃ!?振られた筈のバットが消えて───はぁあ!!
ま、まさかこれは、
『ではじめ三歩』の卸内くんが銭湯さんとの戦いで見せた殺気のフェイント!?』
悠介 「ホォーーームラン!!」
メゴキャッ!!ミシミシミシ……!!
南無 『ゲェッ!動きがスローだ!痛みもゆっくりと襲い掛かって』
ゴパキィーーーンッ!!
南無 『ってそんなスロー現象なんてあるわけねぇほねぇええぇぇーーーーー…………』
……キラーン。
骨が再び星になった。
もう戻ってこなくていいからな……?
とか思ってたら、この場に奇妙な音楽が流れ始めた。
レオ 「ぬ───!?なんだ……」
悠介 「これって……」
なんだか随分前に聞いた覚えのある曲だった。
たしか───
声 『青い〜空に〜♪キミの白い骨〜♪』
がしょんがしょんがしょん!!
俺の目の前に骨が飛んできて、音楽に合わせて合体してゆく……っつーかなんだよこれ。
声 『光に〜輝〜く〜〜♪キミのド〜ク〜ロ〜がぁ〜〜〜〜っ♪』
がっしょがっしょ!!ガキッ!ガキィン!
声 『……かぁ〜ぜぇ〜にぃ〜消えてゆく〜♪肉も血潮も〜♪』
ボディーパーツが完成した。
やがて最後に、横に高速回転しながらゆっくりと空から舞い降りる頭骨部分。
南無 『白さと〜カルボ〜ンの〜♪ボォ〜〜ン=ナァ〜〜ァム〜〜〜♪』
ギュルルルルルルル……ガッシィイイイイイン!!!!
そしてとうとう、頭骨とボディーパーツが合体した!!
南無 『骨々(パーツ、プレゼン───オエェエエ……!!目が回ったほね……!!』
……そしていきなり吐いた。
どこからゲロが出てくるのかはまったくの謎だ。
しかもフラフラとふらつきながら歩き、やがて───ズリャア!
南無 『ほねぇえええええええええええっ!!!!!』
……滝壺へと落ちていった。
もういいや、あんなヤツのことは忘れよう。
悠介 「クリエイションッ!」
集中しろ集中!
骨のことなんて気にするなっ!
───ポロロロン♪ポロロン♪
集中───……って……はぁ。
声 『青い〜空に〜♪キミの白い骨〜♪』
がしょんがしょんがしょん!
声 『光に〜輝〜く〜〜♪キミのド〜ク〜ロ〜がぁ〜〜〜〜っ♪』
ガシンッ!ガッシィィイン!!
声 『……かぁ〜ぜぇ〜にぃ〜消えてゆく〜♪肉も血潮も〜♪』
フイィイィィーーー───ン!!ギュルルルルルルル!!!!!
……また骨が飛んできた。
どうせ落下したときにバラバラになったんだろうけど……本気で鬱陶しい。
なんかモーターが高速回転してるような音を出して、頭骨が回ってるし……。
あれって危ないんじゃないか?
南無 『白さと〜カルボ〜ンの〜♪ボォ〜〜ン=ナァ〜〜ァム〜〜〜♪』
ガッシィイイイン!!!ガギュギュギュ!!ガリガリガリガリ!!!!!!
南無 『ほねぇえええええええええええええええっ!!!!!!』
予想通りというか……あまりの速さで回転してたために、合体した首の骨が削れていった。
そしてやっぱりカラカラと音を立ててバラバラに崩れる骨。
悠介 「……ボーン=ナムと、
レオ=フォルセティーを吸い込むブラックホールが出ます……」
南無 『ほねっ!?』
レオ 「む───!?」
なんかもう疲れたから理力発動。
成功するだなんて思っちゃいないけど、成功すればレオだけを吸い込める。
レオ 「無駄だ。貴様より圧倒的に力が上の俺が何故貴様の能力で消えることが出来る」
悠介 「……ちぇっ、やっぱダメか……」
シュゴオオオオオ!!!!
南無 『ほねぇええええええええええっ!!!!』
ズズズ……きゅぽんっ。
悠介 「あ……」
レオ 「………」
骨が吸い込まれ、やがて消えていった。
……なんかもうほんと訳が解らず、俺とレオはしばらく無言で立ち尽くしていた……。
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