───無二の日常を紡ぐ災放者───
デゲッテッテデェーーーン!!
マキィーーーン!!
彰利 「闇を照らす霊訓!路地には霊が彷徨っていることが多いから気をつけよう!」
はい!吾郎さん!
……などと遊んでいる場合ではなく。
ここは陽気にいきましょう。
彰利 「あ〜……いッしッてッいンまッす〜♪(ランラ〜ララ・ラランラッラッラ〜♪)
そッしッて〜……さッよォなァら〜♪(ランラ〜ララ・ラランラッラッラ〜♪)」
路地を駆け抜けながら歌う。
時折聖に月生力を流してもらってるから、体力低下は防げてる。
でも見つかりません、蒼空院邸。
聖 「やっぱりどこにあるのか聞いたほうがよかったんじゃ……」
彰利 「私は一向に構わんッッ!!」
急ぐのだからこそ奔るッッ!!
それと同じで見つけたいからこそ探すッッ!!
コレ、人間の知恵。
などとミスター・ポポやってる場合ではなくてゴバァアアアン!!!!
彰利 「キヨスクゼットォーーーーッ!!!!」
聖 「きゃああっ!?パパァッ!!」
曲がり角に差し掛かった途端、停止もせずに突っ込んできた車に撥ねられた。
つーかどうなってんだ最近の交通状況は!!
道路を超高速で走るおなごは居るわ、
道路交通法を簡単に無視する輩は居るわ───ギュキキィッ!!
って逃げた!?轢き逃げかよッッ!!
聖 「パパッ!?大丈夫っ!?」
彰利 「グビグビ……」
普段なら追いかけて地獄を見せてやるところだったが、
あの勢いでぶつかられて生きてる方が奇跡に近いっつの……。
聖 「月生力……!」
パァアアア……!!
聖がアタイの体に月生力を流す。
傷がみるみる消えてゆく様はなかなか不気味に神秘的だ……ってどっちだ?よし不気味だ。
彰利 「元気百倍1000万パワーの全開じゃーーーっ!!」
やがて、一応傷が塞がった俺は立ち上がって構えた。
彰利 「よし聖!あの畜生を追いかけるぞ!ターミネーター2の如く!」
聖 「?……う、うんっ」
俺はクラウヂングスタートの構えを取り、地を蹴って駆ける!!
絶対捕まえてとっちめてくれるわぁああああああドバァアアアアン!!!!
彰利 「ジャンバラヤァーーーッ!!!!」
ドゴッ!ゴチャッ!ゴロゴロズシャーーアーーッ!!!
聖 「パパァッ!?」
彰利 「グビグビ……」
駆け出した途端にこれです……。
また角から走ってきた車に撥ねられた……。
しかも今度はトラックです。
運転手「け、警察沙汰は御免だ!とんずらぁーーーっ!!!」
バロロロ!!ギョキュキィイイーーーッ!!!
しかもまたとんずらって……勘弁したれや……。
聖 「あの……パパ?もうちょっと周りを見てから走った方が……」
彰利 「ぎょ、御意……」
再び傷の手当てを受けつつ、俺は少々後悔。
でもね?道路交通法違反したのはあっちであって、俺は別に悪くないと思うんじゃが……
彰利 「うっしゃ回復!よし、先を急ごうか!」
聖 「うん、あ、パパ?」
彰利 「っとっと!そ、そうじゃった」
ここでダッシュしたらまた同じハメにバゴォオン!!!!
彰利 「ジャモノメェーーーーッ!!!!!!???」
聖 「きゃぁああーーーっ!!?」
曲がり角に飛び出す以前の問題。
今度はバイクが凄まじい勢いでカーブしてきました。
ライダー「やべっ……とんずらぁーーーっ!!!!」
ブモォーーーーーッ!!!!
しかもまた当て逃げ……勘弁したれや……。
聖 「……えっと……」
彰利 「グビグビ……」
三度、ピクピクと痙攣してる俺を見下ろして、聖は状況に困惑していた。
気持ち解るけどさ、お願いだから月生力をクラサイ……。
───……。
彰利 「グビグビ……」
聖 「あうぅ……」
あれから車に撥ねられること24回、バイクに撥ねられること9回、
ママチャリに轢かれること1回、ソフトボールの硬球が頭部に当たること1回、
近所のガキが打ったホームランボールがウェポンに直撃すること1回、
坂から滑ってきた台車に乗ったマグロが直撃すること1回、
何を思ったのか飛翔してきたカラスのクチバシが頭部に刺さること1回。
天災でも降りてきたとしか思えないこの状況……
神め、いつかチェーンソーで斬殺してやる。
聖 「パパ……わたしもう疲れたよ……」
彰利 「誰がパトラッシュだコノヤロウ!!」
聖 「パト……?」
彰利 「いや、なんでもござらん……」
散々と月生力を使った聖はもうグッタリだ。
かくゆう俺も、結構ダメージが蓄積されてます。
現在は公園のベンチに寝転がってる状態でござるが……あー、よい風が吹いております。
彰利 「そろそろ暗くなるし……ここで月でも待つか。そうすりゃ楽になるさね」
聖 「うん……」
息も絶え絶え……とまではいかないものの、ぐったりしつつも月を待つことにした。
あー、どうなってんでしょうねまったく。
今日のアレは絶対にどうかしてますよ?
なんだって車に24回も撥ねられなきゃならんのだ?
まあいい、俺は寝る!もう寝ます!月よ!俺を癒しておくれ!?
……………………ぐー。
───……ドクンッ!
彰利 「熱ァッッッチィッ!!?」
自分の深淵が灼熱の温度に襲われた感触に目を覚ました。
彰利 「───!?」
その拍子に空を仰げば、その空は雲ひとつない真円の満月。
月……もう夜だったのか。
聖 「くぅ……すぅ……」
隣を見れば、聖が無防備にも眠っていた。
なんということ!
こげなところで眠ってて、もし暴漢にでも襲われたらどうするつもりかね!!
彰利 「まあそれはそれとして……」
なんだったんでしょうね、胸を襲ったさっきの灼熱。
……もしかして月操力回復した!?
彰利 「ぬ〜むりゃ!むほ〜〜〜っ!!」
残像を残しながらユラユラと手を動かして、月操力発動のイメージを……
彰利 「……少しは反応があるんだけど」
使えるってほどには無い。
結局アレかね?
反応があるってところまでは回復したから発熱したのか?
彰利 「……ま、いっか。そのうち治る。それよりも───」
チラリと聖を見て苦笑。
まだ肌寒いこの季節、服でも掛けてあげねば。
アタイは服を脱ぐと、眠っている聖に服をかけてやった。
その時にベンチの上に置かれている二振りの冥月刀が目についた。
彰利 「……ふむ」
アタイはその二振りの刀を手に取って、月に視線を戻した。
彰利 「月よ!アタイの月壊力を浮上させたまへ〜〜〜っ!!
……などと両手を挙げてくだらんことを言ってる場合でもないか。
そ〜なんだよな〜……過去、冥月刀で吸収したのは確かだけど、
月壊力……弦月の家系で存命してたのは俺だけ。
その俺から月壊力が無くなれば、
いくら冥月刀持ってたって回復するわけないんだよなぁ〜」
はぁ〜ンあ、虚しい……ン?
彰利 「……?」
なにやら月に小さな影が……って、どんどん近づいて来てる気がするのは気の所為ですか?
───やっぱ近づいて来てるって!
何者!?地球外知的生命体!?
それとも───って……
ルヒド「そんなキミに僕からのプレゼントッ♪」
彰利 「なんの演出だボケ死神!!」
飛んできたのはシェイドやったわ……。
ニコヤカスマイルで屈託無く話し掛けてきようぜ……。
なんば考えよっとや……。
ルヒド「あぁいけないなぁ。子供が寝ているのに大声は厳禁だよ?」
彰利 「音符マーク飛ばしながらいきなり現れる死神に言われたかないわっ!!」
ルヒド「まあまあ。でも───う〜ん、
『傷』が無くなるのと同時に、感情も完璧に浮上したみたいだね」
彰利 「あ〜ん?アタイの傷ならまだ残ってるんじゃねぇの?」
ルヒド「いや、キミの体からそういった波動は感じないよ。
案外、レオが最後の傷だったんじゃないかな」
彰利 「え……マジすか?」
ルヒド「こんなことでウソついてもどうしようもないよ?」
彰利 「こんなこととはなにかね!俺が『傷』の所為でどれだけ苦しんだと!」
ルヒド「まあまあ。それよりキミにプレゼントがあるんだ。
別の時代の僕からのお届けモノらしいんだけどね。
ああ、未来を開くことが出来たご褒美だって言ってたよ」
そう言って、シェイドが綺麗に梱包された箱を渡してきた。
……なにコレ……菓子折り?
ルヒド「それをリヴァイアに渡してみるといい。キミに必要なものが入ってる」
彰利 「……アタイに必要なのに、なんだってリヴァっちに渡すんじゃい」
ルヒド「渡してみれば解るよ。それじゃあ」
彰利 「え?あ、これ!お待ちなさい!」
キヒィンッ!!
待ったをかけたにも関わらず、シェイドの野郎は転移して居なくなった。
あの野郎……今度会ったら鼻に練りワサビ詰め込んで───……殺されますな。
彰利 「ちくしょ〜〜……相手が強すぎるとからかうこともままならねぇ」
こ〜ゆう時って歯がゆいよねィェ〜。
せめて体も万全、力も万全ならばやれるのに。
彰利 「……ふむ」
手にある箱に視線を落とす。
別にどうということもない箱なのだが……?
彰利 「アタイに必要なモノって……愛!?」
いやいや、そげなわけねぇよね。
だってアタイってば愛で溢れてるし。
なんてゆうかもう……押さえ切れないくらいに溢れる愛が毛根から霧になって飛んでるし。
彰利 「人間やめてる気がするけどね」
なんでしょうな。
…………よし解らん!
これは明日にでもリヴァっちに届けるとしませう!
彰利 「元となる月操力が無いから月光浴しても無駄みたいだし、
今日のところは寝ますか」
……てゆうか寒いね。
服は聖に渡してもうたし……うむ!
ここは聖を抱きしめることで温度をあげるとしようじゃないか!
彰利 「愛……」
キュム。
溢れんばかりの愛をもって、ベンチで眠っている聖を抱きしめる。
外気に触れている頬は冷たかったが、体は温かい。
しかしコレ、誰かに見つかろうものなら完璧に誤解されますよ?
警官 「ややっ!?貴様!そこで何をしている!!」
彰利 「ゲゲェエーーーーッ!!!!!」
やべぇ警察(だ!!
警官 「貴様まさかそんな幼い子にクロロホルムを嗅がせ、
あまつさえ夜の公園で襲おうとしていたのではあるまいな!」
彰利 「想像力働かせすぎですよアータ!!
と、とにかく警察沙汰は御免だ!とんずらぁーーーっ!!!」
警官 「あっ!こら!待ちなさ───」
ドシュゥウウウウン!!ズドドドドド───
警官 「早ァーーーッ!!!?」
───ファオファオファオファオ……!!
声 『そこのキミ!止まりなさい!!』
彰利 「キャーーッ!!?しつこいですよアータら!!」
全力で逃げたアタイだったが、
『二本の刀を手にして少女を担いでいる男』という捜索条件にあっさりと当てはまり、
警察に追われまくっていた。
路地に逃げ込めば白バイが来て、道路を走ればパトカー。
空を飛べれば早いというのに───チィくそう!!
───ブモモモ……ブモォーーーッ!!
白バイ「止まれぇーーっ!!止まらんとヒドイぞ!」
彰利 「ヒドイぞ!?イジメっ子ですかアータ!!」
まさか白バイの人に『ヒドイぞ』とか言われる日が来るとは!
でも止まりません。
俺は横に並んできた白バイに狙いを定め、一気に毒霧をブシィッと発射した!
白バイ「おぅわっ!?ギャーーーッ!!!」
ゴシャッ!ドゴシャアアア!!!
視界を奪われた白バイのあんちゃんが電柱にゴシャリと衝突。
クォックォックォッ!ザマァねぇ!
人の事情も知らんと、追い掛け回すからだ!!
いやまあ、いきなり逃げ出した俺も悪いんだけどね?
彰利 「でも違うっ!ぼくじゃないやいっ!
最初に誤解しまくったあの警官が悪いんだいっ!」
こちらはいい迷惑ですよ!?
というわけで止まることは許されん!
このままカンパニーに潜り込んで、リヴァっちにこれを渡そう!
これ……これを……───
彰利 「あ、あれ?」
コレ………………アレ?
彰利 「えーと……いやーーーん!!」
置いてきたぁあああーーーーーーーっ!!!!!
なんてこったい!
戻らなきゃならんってこと!?
しかもあのままじゃ身元参考品として警官に奪われた可能性大ですよ!?
いかん!これはいかんぞ!
急ぐンだッッ!!
───……ガタガタ、コサ……。
警官 「む……?勾玉(……?」
後輩 「先輩、なにが入ってたんですか?」
警官 「ああ、コレだ。コレが入ってた」
後輩 「勾玉……ですか。お土産かなんかだったんスかねぇ」
警官 「さぁな」
後輩 「あ、でも……俺結構霊感あるンスけどね、これ……相当ヤバイものですよ?」
警官 「ヤバイ?なにが」
後輩 「なんっつぅんでしょ、えっと……悪い気と良い気が混ざり合わさったような」
どがしゃああああああああん!!!!
警官&後輩『うわぁあああっ!!!?』
彰利 「おったぁあああああああっ!!!!さぁ!それを返しなさい!!
それは無知な人間が持っていていいものではありませんよ!?」
公園近くの派出所の窓ガラスの蹴りをブチ込み侵入。
さらに既に開けられていた箱を見て絶句。
休む暇も無い。
彰利 「な、なんと!貴様ら勝手に開けたのかね!?プライバシーの侵害ぞ!?」
警官 「お、お前は!わざわざ捕まりに来たのか!」
彰利 「そもそもその見解が間違ってるんだっつーの!こいつは俺の娘だ!」
警官 「なにを馬鹿な!お前みたいな若いヤツにそんな子供が居るわけがない!」
彰利 「お?なんだ?やンのかコラ!!
なんだったらDNA鑑定してもらっても構わねぇぜ!?
聖は間違いなく俺の娘だからな!度肝抜かれるのは貴様らの方だぜ!?
それでも、ン?やンのか?ン?ンン〜〜?あ〜〜〜ん?」
後輩 「……先輩、こいつ心の底からむかつきますね……」
警官 「同感だ……」
警官ふたりが溜め息をつく。
そしてそれを見逃すアタイではないのだ!!
彰利 「ツェペリ・ズームパンチ!!」
シュバッ───ゴキ、ゴキン!!
警官 「なっ!?」
後輩 「ひぃっ!?」
関節を外して腕を伸ばし、警官が持ってる箱を強奪ッ!!
関節を外す際の激痛は波紋を流すことで和らげるッッ!!
彰利 「───ッ!!───ッ!!クヒィイーーーーッ!!!!」
でも俺は波紋なんぞ使えないので大激痛。
だが───箱は取り戻した!!
中身を確認───勾玉ひとつ!
よし!箱ン中になにがあったかは解らんが、この勾玉からは大きな力を感じる!
恐らくこれでOKね!
彰利 「とんずらぁーーーっ!!!!」
警官 「ま、待て貴様!」
彰利 「轟天弦月流───」
警官 「ぬっ!?」
振り向き構えた俺を見て、警官が防御体勢をとる!
だが両の目はしっかりと俺を捉え、フェイントにかかるつもりはないと断言をしている!
彰利 「───毒霧!」
ブシィッ!!
警官 「ぬわっ!?ごわぁあああああああああっ!!!!」
そんな両の目にステキなプレゼント♪
後輩 「先輩っ!?くそぉよくも先輩を!」
彰利 「サミング!」
ドチュッ!
後輩 「キャーーーッ!?」
勢いよく向かってきた警官2に目潰し一閃。
さらに体を捻り、拳を握ってドゴンとナックル!!
後輩 「ゲウッ!!───……」
彰利 「日に二度敗れる馬鹿が居るかッッ!!!!」
一度目ですけどね?
まあいい。
俺としては後輩野郎が怪虫に襲われかけた仲田くんの叫びをしていた方が驚きだった。
彰利 「とんずらぁーーーっ!!!!!」
俺はこれほど暴れても起きない聖に若干の疑問を感じつつも、
その場からの逃走を果たしたのでした。
───……。
彰利 「………」
カンパニーに辿り着いた時、月奏力が如何にアタイの心を癒してくれてたかが解った。
彰利 「くそ……吾郎さんテーマかルパンテ−マを流したかったのに……」
デゲッテッテデェーーーン!!マキィーーン!!とか、
ドコントドコトコ♪ルパンザサァ〜〜ド♪とか。
彰利 「はぁ〜〜あ……」
気がノらねぇなぁあああ〜〜〜……。
音楽ひとつでこうも気分が変わるものか。
いや、人って凄いわ。
……人、というよりはアタイだけかもしれんけど。
彰利 「ムハァ……」
正門前に立ち、インターホンスイッチをポチリと押して反応を待つ。
いや、待とうとしたんじゃけんど……大した間も無くメイさんが映像で映された。
メイ 『どちらさまで───彰利さまでしたか』
彰利 「今晩は(Mr.ドイル」
メイ 『ドイ……?』
彰利 「なんでもございません」
正門の壁に映されたメイさんに微妙な表情を返して、白い息を吐いた。
吐いた息が白いのは外気の寒さからくるものじゃなく、鬱オーラの表れのような物である。
彰利 「メイさん、中にリヴァっち……じゃなくてリヴァイアさん居る?」
メイ 『その方でしたら鈴訊庵に魔導機材を取りに行くと言って出ていきました』
彰利 「そうザマスか。それじゃ───あ、そだ。
メイさん、聖を預かっててもらえないかな」
メイ 『はい、構いません。門を開けるので少し下がってください』
彰利 「御意」
数歩下がると巨大な門が自動で開いてゆく。
それを確認してから通ると、メイさんが正面ドアを開けて迎えてくれた。
さすがはメイさん……手際がいいなぁ。
メイ 「お待たせ致しました。聖さまをお預かりします」
彰利 「ウィ、頼んます」
メイさんは背負っていた聖をその腕に抱き留めると、ゆっくりとアタイから引き離した。
軽い重さのあった背中が外気に触れるのと同じくして俺は振り向き、
メイさんに向き直った。
やさしく聖を抱くメイさんはやはり綺麗。
月明かりに照らされ、穏やかな風に揺らされる髪がやたらと美しく見えた。
いやいや、やっぱメイさんて綺麗YO。
メイ 「……彰利さま?」
彰利 「いやいや、なんでもござらん。ジロジロ見たりしてごめんなさいYO」
メイ 「いえ、それは構いません」
彰利 「ん。そんじゃあ聖のことよろしく。俺はちょほいとリヴァっちに会ってくるから」
メイ 「はい。お気をつけて」
彰利 「ウィーッ!」
メイさんに背を向けて再び走り出す。
向かう先は鈴訊庵のリヴァっちの部屋!!
刀二本と小さな箱を手に、アタイ走った……走り続けた。
だって───
警官 「とうとう見つけたぞ貴様ァーーッ!!止まれ!止まりなさい!!」
彰利 「とんずらぁあああーーーーっ!!!!!」
角を曲がった途端に警官と出くわしたもので。
走り続けて逃げるしかなかったんですよ。
嗚呼、転移に慣れてるとこういうダッシュがもどかしい気分!!
しかも何気に足速ェ!!
彰利 「だが俺には勝てん!さらばじゃあああーーーーっ!!!!」
警官 「くっそ……ま、待てぇええーーーーーっ!!!」
遠ざかってゆく警官の絶叫を聞き流しつつ、俺はさらに走るのでした。
そう───公園を目指して!!
───…………。
彰利 「淤凜葡繻(スピン・ヘッド・ベリアル!!」
ズガガガガガガガ!!!!
警官 「ぐぎゃあああーーーーーっ!!!!!」
逆さにした警官の頭を公園の砂場に埋めてゆく!!
これぞ淤凜葡繻スピン・ヘッド・ベリアル!!
◆淤凜葡繻スピン・ヘッド・ベリアル
逆さにした相手の頭を地に埋めることを旨とする妙技。
高速で回転させることで対象を埋めるため、
相手は直立不動のような体勢のまま固まった状態で埋まる。
本来ならば相手に大きめなギザギザの輪をはめ、
そこにギザギザの一輪車の車輪を合わせ、漕ぐことで高速回転させる。
しかし彰利の技に至ってはどちらかと言えばゴースト・キャンバスに似ている。
このゴースト・キャンバスという技、
対象の頭をキャンバス(プロレスのマット)に突き刺し、
さらに相手の両足を掴み、回転を加えることで対象の首を千切る殺人技だが、
砂場で使用すれば首がもげる心配は無いというマンモスマンの技である。
*神冥書房刊『淤凜葡繻十六闘神・一輪車のアキレスの妙技』より
彰利 「淤凜葡繻スピン・ヘッド・ベリアル……完了」
馬鹿な警官ぞ。
しつこく食い下がる警官とはいつの世も影ながら始末されるものなのに……。
まあ、ドラマの中のお話ですがね?
本当に正義感の強い警官には長生きしてもらいたいさね。
彰利 「さて……」
逆さで頭だけ砂場に突き刺したまま固まってる警官を見る。
このままじゃ窒息しますな。
彰利 「気絶してくれてるみたいだし……フンッ!!」
ズボォッ!!
警官の足を掴んで、地面から頭を引き抜いた。
それからしっかりと様子を見てみるが……うむ、気絶してらっしゃる。
彰利 「お前は強かったよ。……だが間違った強さだった」
気絶してる警官をブランコに座らせ、
あたかも仕事場に向かわず公園のブランコで遠くを見つめる疲れた中年男性を演出。
彰利 「これでよし、と。あとはリヴァっちに会うだけさね」
一度頷くと、また走り出す。
警官に追われた所為で回り道してしまったがよ。
さっさと辿り着かねば。
───……。
彰利 「フハー!フハー!……ムハァ……」
さて、ようやく着きました。
鈴訊庵でござる。
彰利 「さてさて……リヴァっち〜?ちょほいと用が」
ガタタッ!
彰利 「……ウィ?」
ガタッ!ガタタッ!
彰利 「……鍵がかかっとりますが」
戸式玄関に手を掛けるがちっとも開きやがりません。
彰利 「こ、これ!開けろ!開けろオラァーーッ!!
居るんだろリヴァっち!居留守かコラァーーーッ!!」
ゴシャゴシャゴシャ!!
戸式玄関独特の音を鳴らしつつ、叩いた玄関が揺れる。
しかし反応無し。
これはまいりました───破壊するしかないようでゴワス。
彰利 「しょぉおおおおがねぇなぁあああ〜〜〜っ!!!!ってちょっと待て」
上の方はどうだろ?
もしや窓とか開いてるやもしれません。
……窓が開いてなくても鍵が開いてるやもしれませんし。
彰利 「そ、そうよね。いきなり破壊はヤバイよね」
というわけでGO!
俺は鈴訊庵の壁に点在する溝や出っ張りに手を掛け、登りだした。
これぞシコルスキー登山!……登山じゃないけど。
彰利 「ハタから見れば不審者以外の何者でもないなクラースくん」
だが細かいことは気にしません。
アタイはさらに登りゆくと、リヴァっちの部屋の部分の窓をココンッとノックした。
彰利 「竜ちゃーん、居るー?」
などとディアマイフレンズやってる場合ではなくて。
くそっ、やっぱ返事無しか。
寝てるのか、それとも工房に繋げてる所為でここからの音は聞こえないのか。
……やっちゃうよ?
やっちゃいますよ?俺……
彰利 「墨東署所属、辻本夏実さん……俺に力を!」
手にタオルを巻いて構える。
距離よし方向よし準備よし!
彰利 「ダイヤモンドナックルアタァーーック!!!!」
ゴヂンッ!!
鍵が近い部分に拳を一閃。
見た感じではヒビすら割れないが───
彰利 「……通った」
ピキッ───ガシャァンッ!!
破壊を確信すると同時に窓が割れる。
ふう、やっぱ窓破壊って言ったら夏実さんでしょう。
……壊してるのは車の窓だけど。
彰利 「ちょほいと御免よ」
カチャリ、と。
フフフ、おなごの部屋の窓を破壊し、鍵を開けて侵入……どっからどう見ても犯罪者だぜ。
彰利 「なんだろ……なにやら無性に泣きたくなってきた」
でも悪いのはリヴァっちYO!?
アタイはリヴァっちがここに居るって聞いたから来たってのに門前払いしようなんて!
その魂胆が気に食わん!
彰利 「というわけで俺、悪くない!」
レッツポジティブシンキング!
さあ侵入を果たそう!
───カラカラカラ……
彰利 「嗚呼、この窓独特の音がたまらん」
無意味に音を出すところなんて最強。
ご近所の皆様に見つかりでもしたらどうしてくれるんでしょうねぇ。
彰利 「リヴァっち〜?」
ひっそりと中に忍び込み……ああいや、
窓を破壊して音を立てた行為が忍び込みと言えるかは別としても、忍び込みということで。
彰利 「おらんたい」
リヴァっちは居なかった。
工房かな。
彰利 「やれやれ、面倒っちゃあ」
アタイはドアを開けて廊下に出ると、閉めたドアをノックしてドアを開けた。
するとそこはリヴァっちラボ。
いやはや、面倒だけどよく出来ておるわい。
彰利 「リヴァっち居るー?」
腰と背に括り付けておいた刀と箱を手に持ってラボに入る。
ラボの中はいつでも適温効果が成されており、暑くも無く寒くもない。
彰利 「リヴァ───あ、居た」
リヴァっちはラボの寝台で眠っていた。
いやはや、ちゃんと布団で寝なきゃいけねぇでしょう、こういう場合───じゃなくて。
起こすか?
でもなぁ、眠ってるおなごを起こす趣味はアタイには……
彰利 「なんつーかこう……からかって起こすなら俺的にOKなんだが、
そういうことは夜華さんにこそしたいというか」
フッ……俺も丸くなったもんだぜ〜〜〜っ。
以前のアタイだったら迷わずフェイスアートですよ?
彰利 「仕方ない、私事で起こすのは可哀相な気もするが、
アタイとしてもこの勾玉の意味は気になりマッスルし」
キュポンッ……キュッ、キュッ……
彰利 「さ、リヴァっち。お起きめさゲェエーーーーッ!!!!!!」
なんてこと!
体が!体が勝手に動いてフェイスアートを!!
な、ななな……なんてことを……!
彰利 「ノォーランドォーーッ!!俺はなんて罪を……!!」
つい意味不明なことを口走ってしまうくらいの動揺が旋律するッッ!!
あわわ……い、いや!
まずマジックを見て───よし水性!!
拭えば落ちますよ!?
彰利 「エネルは俺に好機を与えたもうた!塗ゥり塗ゥり〜♪カンタ〜ン♪」
アタイは窓ガラスを破壊したタオルでリヴァっちの顔を拭ってブフゥッ!!!
彰利 「イヤァアーーーッ!!!拭った部分が黒ヒゲ危機一髪にィーーーッ!!!!」
やべぇ!なにやら知らんが状況に抗おうとすればするほど状況がヤバイ方向に!!
しかも化粧のノリが良いリヴァっちの肌にインクが浸透してゆく!!
やべぇ死ねる!!早急に対処せねば死ねる!!
彰利 「ぬ、塗ゥリ塗ゥリ〜♪カンターン!!」
コシコシコシコシ……!!
彰利 「イヤァ落ちねぇーーっ!!落ちて!落ちてェーーーッ!!」
リヴァ「う、んん……?」
彰利 「キヤァッハァーーーッ!!!?」
やべぇ起きた!!
どうするアタイ!!閃け思考!!ここは───
1:狼髏館回頭閃骨殺で気絶旅行にご案内(勾玉の説明はまず無理)
2:サミングで視界を封じる(激怒確定)
3:毒霧で視界を塞ぐ(激怒確定)
4:地界名物インク・パックで美肌を演出中だったのだ!と説明(鏡見た途端極殺)
5:とんずら(こげなことするのって俺くらいだろうからあっさり捕まる)
結論:だっ……脱出不可能っ……!(ざわ……)
リヴァ「ン……検察官……?」
彰利 「はうあ!」
ど、どうする……!?
い、いや!狼髏館回頭閃骨殺をやって気絶させてだな!
顔の落書きを滅殺してから後日出直す、という方法も───
リヴァ「んん……?顔がヒリヒリするな……」
彰利 「ギャア!?」
しもうた!拭いすぎたか!!
で、でもこの部屋に鏡なんぞ無いし、
ここから出さなければまだ存命率にも希望が持てるというもの───!!
って……おや?リヴァっちが指に光を込めて、空中に何かを描いて……パキィン!!
彰利 「ゲェーーーッ!!!!」
リヴァっちが光(恐らく式)を描き終えると、空中に縁の無い鏡が出現!!
それを見た刹那、俺は迷うことなく狼髏館回頭閃骨殺をすべく飛翔しようとしたが───
リヴァ「───」
パキンッ……
彰利 「が、ががっ……!!」
空気が凍りました。
なんていうんでしょうね……ホラ、アニメとかの効果であるじゃない。
こう……ショック受けた時にさ、画面の色が反転するような時。
そ、そう、あんな感じですよ今。
脱出不可能の地の獄っつーんでしょうかねィェ〜……。
リヴァ「検察官……これは───」
彰利 「夜華さんです」(キッパリ)
ゲェッ……自分でも驚くくらい自然に夜華さんの所為にしてる俺が美しい!
じゃなくて怖い!
なとと思ってた俺を余所に、リヴァっちが式を紡いでデータを引き出した。
リヴァ「検索───……侵入該当者反応は検察官だけだが?」
彰利 「実は夜華さんは幽霊だったんだ」
リヴァ「……ここへの侵入は霊体であろうが引っ掛かる」
彰利 「ガルキマセラだったんだ」
リヴァ「……訳が解らないな」
彰利 「………」
リヴァ「………」
彰利 「えーとね?」
アタイは仕方なく覚悟を決め、ゆっくりと物語ることを始めた。
───……ラボの椅子に座ってゆっくりと話し合うこと数分───
彰利 「というわけでしてね?決して悪気があったわけでは……」
リヴァ「……それなら最初からそう言え。わたしは別に怒ってない」
彰利 「うそっ!?」
馬鹿な……信じられん!
普通怒るところだよね!?ねぇ!?
リヴァ「わたしは、その……検察官が遠慮無くぶつかってきてくれた方が好ましい。
どうにもお前は篠瀬とかゆうヤツにばっかり全力でぶつかって、
他の相手には一線を引いているだろ」
彰利 「そうかえ?」
リヴァ「そうなんだ。だから」
彰利 「お役御免───とは違うけど、お仕置きは無いってわけね!?
キャア!やったぜトニー!
そういうわけならリヴァっち、さっそくこれを調べてくれ!」
リヴァ「え?あ、いや、まだわたしの言いたいことがだな……」
彰利 「いや〜、一時はどうなることかと思いましたぜ?
リヴァっちが理解のある人で良かったわい!というわけで調べて?」
リヴァ「あ……あのなぁ検察官……」
彰利 「なにやらアタイにとって必要なものがあるとか言うんザマスよ。
シェイドに渡されたモンだから、無駄なものじゃないとは思うんじゃけんど」
言って、勾玉を取って見せる。
そんな時になって初めて気づいたが、勾玉は鈍い輝きを見せつつ、時折色を変えていた。
リヴァ「───!」
リヴァっちの表情が変わったのはそれを見た途端でした。
シュバッと勾玉を奪うと、それをシゲシゲと見つめだしたんです。
彰利 「リヴァっちに勾玉フェチのケがあったとは……」
………………。
彰利 「無視ですか」
リヴァっちは勾玉を見つめたまま、
意識だけが声の届かない異郷の地へと飛ばされてしまったようだった。
器用よのぅォ〜〜。
リヴァ「喜べ検察官!!」
彰利 「やったぁあーーーーっ!!ハラショー同志ザンギエフ!!」
アタイはリヴァっちの言葉を一身に受け取り、両手を挙げて精一杯の喜びを表現した!!
リヴァ「………」
彰利 「…………あ……えっと……」
でも待ってたのは憐れみのような視線だけでした。
リヴァ「………」
彰利 「え……だって……よ、喜べって言ったじゃん……。
なんで……?なんで俺、そんな悲しそうな顔で見られなきゃならないの……?」
リヴァ「………」
彰利 「………」
…………。
───……。
リヴァ「……あのな。おかしなことにコレには、
検察官が持っていたくらいの力が込められているんだ……」
彰利 「う、うす……」
空気が重ェ……。
やべ……マジで悲しくなってきた。
こういうのがギャグをハズしたヤツがよく知ってる空気なんだろうなぁ……。
リヴァ「さっきの説明で言うには、これはシェイドに貰ったものらしいな?
それも違う時代の」
彰利 「そうでゲス……」
アタイの考えでは、おそらくあの勾玉に入っているのはアタイの月操力。
ナム思考によれば俺の体もレオの体も塵ひとつ残さずに消えたらしいが、
もしその過程……散り散りになる『力』だけを吸い出されてたとしたら───?
彰利 「……ぬう」
……フフフ、あの王大人……じゃなくてシェイドという男も人が悪い。
死亡確認と言いながらもここまで手回しをしてくれるとは。
もし予想が合ってるならば、俺は力を完全に取り戻せるってことですよ?
リヴァっちに見せろって言ったのは力の移植のためだろうし。
リヴァ「……なぁ検察官」
彰利 「ウィ?なんザマス?」
しかしリヴァっちはどちらかと言うと沈んだ表情でアタイを見た。
ってことは……え?もしかして違った?見当違い?
リヴァ「もし自分の力が元に戻ったら、すぐにでも元の時代に戻るのか?」
彰利 「気分次第でゴンス。俺は俺の思う通りに動くだけだ」
リヴァ「………」
あら沈黙。
返答が気に入らなかったんかな。
彰利 「リヴァっち?それってばアタイの月操力ザマショ?
できればすぐに移植してもらいたいんじゃけんど」
リヴァ「………」
やっぱり沈黙。
……って、そうでもないらしい。
俯かせてた顔を上げてアタイを見ると、リヴァっちが開口。
リヴァ「検察官、この時代に住まないか?」
彰利 「住みません」
リヴァ「……即答か」
彰利 「即答ですよ?」
リヴァ「………」
彰利 「?」
リヴァっち、再び顔を俯かせる。
なんね?ようけ解わんちゃい。
彰利 「何度目か解らんけどさ、アタイにもアタイの時代と生活があるわけですよ。
それをアータ、気に入った場所が出来たからって帰らないってのはガキですよ?
自分の手で切り開いた未来の先でゆっくりと歳をとってゆくのが愛ですじゃ。
しからばこの時代はそれに当てはまらんのですよ。だから力をおくれ?」
リヴァ「………」
彰利 「無視ですか……」
なんだってアタイの時に限って……かどうかは知らんけど、無視する人多いんデショ。
いくらアタイでも傷つきますよ?
リヴァ「なぁ検察官。せめて……そうだ。
凍弥と小娘の子供が産まれるまでこの時代に居るってゆうことで、
段落をつけないか?」
彰利 「いやだぁ」
リヴァ「………」
やっと帰れるんですよ?
やっと大手を振って帰れるんザマスよ?
確かに子供の方は気になる。
気になるが、この時代にはもう害らしい害は無い。
聖と災狩を続けることで、この時代はもう随分と平和になったのだ。
ならば、ふたりの子供は安全な状況下で元気に産まれること間違いなしだ。
アタイが居ようが居まいが関係ない。
そうでしょう?
彰利 「この時代でやるべきことは全部やったに違いねザマス
だからアタイは帰るんザマスよ、元の時代へ」
リヴァ「……どうしてもか」
彰利 「───……どしたん?リヴァっちらしくもない。
アタイがここ……この時代に居て、なにがどうなるわけでもないっしょ?」
リヴァ「……検察官、お前はなにも解ってない。
お前のお陰で、この時代の者がどれだけ救われたか……」
彰利 「いや、実際知らんし。え?アタイ、誰か救ったっけ?」
リヴァ「……はぁ」
うわ、溜め息YO!?
語り掛けて来ておいて溜め息ですYO!?
あんまりじゃないですか!?
彰利 「……とーにーかーくー、アタイが居るからって何がどうなるわけでもねぇでしょ?
だってこの時代のことはこの時代に生きる者に任せるべきだし。
それってつまり、アタイの時代はアタイの時代に居る者達に任せられるわけで、
アタイにとってそれはまさしく宿願なわけだ。
だってさ、『傷』は消えたし『死神』も消えた。
だってのに月操力は戻ってきて、
アタイは冥月ひとりを家系に縛ることなく生きられる。これってハッピーよ?」
リヴァ「……この勾玉が月操力を封じ込めたものだなんて一言も言ってないぞ」
彰利 「なんと!?」
違うの!?
ば、馬鹿な……ば、馬鹿な……!!
彰利 「謀ったなブッチャー!!」
リヴァ「誰がブッチャーだ…………───なぁ検察官、どうしてもダメか?」
彰利 「何がかね!!」
リヴァ「この時代に残ることが、だ。
お前が元の時代に戻ったら、悲しむヤツが沢山居るぞ」
彰利 「おらんよ?だって記憶消していくもの」
リヴァ「───ッ!?」
彰利 「ウィ?」
リヴァっちが血相を変えてアタイを見る。
彰利 「……当たり前っしょ?本来居るはずの無い人の記憶を持っててどうすんの。
この時代に居るべき俺はゼノと一緒に死んだし、俺には戻るべき場所がある。
いろいろ考えたんだけどね、それならいっそ記憶なんぞ消しちまった方がいい」
リヴァ「ふざけるなっ!!」
彰利 「ウヒョオ!?」
リヴァっちの咆哮!!
アタイは驚き竦みあがった!!
リヴァ「きっ……記憶を消すだと!?検察官の記憶を忘れる───!?冗談じゃない!!
検察官───お前がその気なら、わたしはお前に力の移植なんてしないぞ!」
彰利 「力の移植!?……やいリヴァっち!やっぱそれ月操力なんじゃねぇか!!
さらに謀ったなブッチャー!!」
リヴァ「うっ……うるさい!!」
彰利 「ハヒョウ!?」
リヴァっちの咆哮!!
アタイは再び竦みあがった!!
しかしアタイはすぐに持ち直すと、リヴァっちに向けて一言!!
彰利 「わーたわーた!!リヴァっちの記憶は消さんから力よこせこの野郎!!」
リヴァ「……───本当だろうな」
彰利 「本当だともさね!!……でもさ、実際ツライよ?
自分だけが思い出持ってるのって。
他のみんなが忘れてる中で、リヴァっちはそれに耐えられるのかね?」
リヴァ「だったら……みんなの記憶も消さなければいいだろ」
彰利 「そういうわけにゃあいかねぇ。つーかさ、元々どうなるかは本人次第なんだわ」
リヴァ「……?なにがだ」
彰利 「あー……つまりさ。ホレ、奇跡の魔法ってのあるデショ?
あれと似せた記憶操作をするつもりなんですわ。
それはアタイのことをそれなりに必要としてるか、どうでもいいかで決まる。
忘れるか忘れないかはその人次第。それでええんでないかい?」
リヴァ「……そうか。どうでもいいなら覚えてる必要なんて無いからな……」
彰利 「そゆこと。というわけで力頂戴?」
リヴァ「───……解った。わたしは忘れない自信があるからな」
彰利 「ウィ、あんがとさん」
ラボの椅子から立ち上がるリヴァっちを見て、まずは一安心。
まったくねィェ〜、アタイなんぞを覚えててなんの得があるのかねィェ〜……。
───……。
リヴァ「……よし。移植は完了した。どうだ、調子は」
彰利 「ン、ちと待って」
まず月壊力を引き出すイメージを───ドクンッ!!
彰利 「うぉわちゃぁあああああああっ!!!!!」
リヴァ「うわっ!?け、検察官!?」
灼熱ッッ!!
体の中が熱い!なにコレ!?
冥月刀『───……!……!!!』
彰利 「ややっ!?」
幻聴!?なにやら冥月刀から声が聞こえたような……!
彰利 「……冥月さん?」
冥月刀『…………!!』
なにやらキンキン鳴ってます。
しかもやっぱり幻聴じゃない。
声……微量だけど聞こえとるよ。
なんで?冥月刀の声って意識のリンクが無けりゃあ聞こえないんじゃなかったっけ?
それか特殊な霊体とかじゃなけりゃ……───あ……まさか……
彰利 「ちょ……ちょっと考えてみませう。
えーと……まず俺の体や魂には、冥月刀から流れてきた『月操力』があった。
それは俺が過去の世界で家系の皆様から回収したものだったわけで、
その中には悠介の『月蝕力』もあったわけで……その」
え……?もしかしてアタイ、月壊力と月蝕力のふたつを持ってるってこと……?
その先にある力って確か───月光力!?
彰利 「URYYYYYYY!!!!」
ナルホロ!そうだったのか!
アタイ、ついに全月操力をモノにしたのね!?
だから冥月刀の声も聞こえれば、いつかは同調も可能になると!
彰利 「ウワァーーーッ!!よかった!!」
などと漂流教室やってる場合ではなく。
でも……まあ、よかった。
これで長い間、人と話すことさえ出来なかった冥月と会話をしてやることが出来る。
けど『会話』まで到達するにはまだ遠いなぁ。
流れ込んできた月操力の数々がまだ完璧に発現しきってない。
発現しきれば、その瞬間が月光力の誕生になるんだろうけど。
彰利 「…………ふむ」
……よし。
彰利 「リヴァっち!アタイ決めたよ!」
リヴァ「え……なにがだ?」
彰利 「月光力が完成するまではこの時代に居るさね!OK!?」
リヴァ「月光力……?よく解らないけど、残るんだな?」
彰利 「おうともさね!」
リヴァ「そうか……ゆっくりしていくといい」
彰利 「オウヨ!」
うっしゃあやる気が出てきましたよ!?
なんのやる気かは解らんけどとにかく出てきました!
まずは冥月と話せるようになるまで───藤巻くん!ガンバだ!
……あ、いや、藤巻と言っても藤巻十蔵ではござらんよ?
彰利 「……冥月?アタイの声が届いておるかね?」
冥月刀『……、……』
彰利 「むむむ……キィンとは聞こえるんだが、それを言葉として受け取るのが難しい」
確かに声として聞こえはするんだが、
聞き取るってゆうか……受け取るってゆうのか、とにかく難しいのだ。
冥月刀『……あき、……』
彰利 「───おお!聞こえた!」
いや!なんか嬉しいですね!
集中だ!もっと!集中!集中!集中!!
冥月刀『……、……?』
彰利 「───!」
いきなり高速で何かを語りかけられた時のような感じ。
これは……おそらくこうだ。
冥月は何かのメッセージをアタイに届けようとしているのだ!!(独断)
つまりその意味を汲んでくれということなのでしょう。
さあ、今こそその言葉を受け取ろう!
……いや待て、なんて聞こえた?
1:デカルチャー
2:アンニョンハシムニカ
3:お久ぶりです、お元気でしたか?
4:Do you know me(
5:愛羅武破壊僧・十本刀
結論:4
彰利 「オッス田沢一号生、直訳させていただきます!───出かける時は忘れずに(!!」
ドゴシャアアアアアアアアアアン!!!!!!
彰利 「ぐぎゃああああーーーーーーーーっ!!!!!!」
答えた途端に即・雷撃。
冥月……キミって娘は……
彰利 「ツッコミのレベル……覚えていこうね……」
ドサッ。
リヴァ「け、検察官!?検察官!!」
正直、ダブルでの裁きはこたえましたよ……?
まさか二振りとも月鳴の裁きを流してくるなんて……あんまりじゃないですか……。
これからこんなやりとりが続くとなると、嬉しくて泣けてきますぜ……。
……でも───
冥月刀『……お久しぶりです』
苦笑みたいに思えたけど、その声はちゃんと聞こえたから。
俺も笑って久しぶり、と応えた。
───そうして、日常はゆっくりと流れてゆく。
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