【04:弦月彰利/春は出会いの季節】
て〜〜〜てけて〜〜〜て〜〜〜て〜て〜〜〜♪
彰利「イエイ」《ジャーーーン!》
やあ僕彰利。
今日はSO……晦神社へと続く石段からお報せするよ?
つーてももう中腹だけどね。
毎度毎度ここ登るの大変YO。
彰利「ウフフ、でも幼馴染もどきとしては、入学初日は起こして一緒に登下校!
そのためにわざわざ早朝に来たんですもの、起こし甲斐があるってもんです」
断じて言うがホモじゃないです。あたしゃ友を大事にする一人の修羅ぞ?
ただホモっぽくしてると悠介の反応が面白いからそうしてるだけザマス。
さ、そんなわけで母屋への横道に到着。
このまま石段を登り続ければ神社がござるが、べつに用はないので母屋へ。
でもたまに社務所で寝るからなぁダーリンたら。
それで何回か寝起きドッキリが失敗に終わってます。
彰利「……よし」
母屋前まで来ると、その壁に手をつけてシコルスキーばりのロッククライミング能力でよじ登ってゆく。んーでもって悠介の部屋の窓まで到着すると、きちんと悠介が寝ているのを確認。
窓にガムテープをベトベトと貼って、
彰利「あたっ」
肘打ちで窓をメシャアと破壊。
あとはガムテープのお陰で飛び散らなかったガラス片をガムテープごと回収してと。
うし、穴から鍵を外しまして、カラカラと……
悠介「おい」
彰利「はい? ───あ」
ニコニコ笑顔で窓を開けていた僕に、ふとかけられる声。
丁度ポッケにガラス片を入れていたところだったから気づかなかったが、見上げてみれば……マイダーリン。
悠介「なにを、しているのかな……!?」
彰利「ア、ヤ、エエット…………ク、クラシアンです!
トイレのトラブルなら何でもお任せ!
その名も───水道マスター! ゼノクラシアン!!」
悠介「お前の存在自体がトラブルだばかたれぇえーーーーーーーーっ!!」
彰利「《バゴシャア!》オブリバァーーーッ!!」
顔面を殴られました。ええ、綺麗な渾身ナックルでしたとも。
そしてアタイはその勢いとともに壁から吹き飛ばされ、下で待っている砂利床へとゴシャーーーンと落下したのでした。
───……。
で……。
悠介「どこの世界に他人様の家の二階の窓を破壊して不法侵入するクラシアンが居る!」
彰利「ゼノグラシアとクラシアンをかけてみたんだぜ! 格好いいっしょ!」
悠介「人の話を聞けぇえええ……!!!」
彰利「《ゴギュギュ〜〜〜!》オゴゴ〜〜〜〜……!!」
ネックハンギングツリーされました。
なんと貴重体験。
彰利「ゲッホゴホッ、ちょ、聞いてくださいよ僕の親友。
アタイはただ、キミと高校生活初日の通学路を一緒に歩きたいなと」
悠介「お前はなにか。一緒に登校したかったら人の部屋の窓を破壊するのか」
彰利「わ、若い頃なにかと壊したくなるものじゃない? ネッ☆《ヴァチーン♪》」
悠介「可愛らしくウィンクしても割られた窓は戻らんわぁああーーーーっ!!!」
彰利「《ドパァン!!》エボリィ!!」
な、殴られたァーーーーッ! な、殴ったねアンタ! おぉおお親にもぶたれたことあるのに! ……じゃあいいや。
彰利「だいじょーぶ! キミなら出来る!」
悠介「何がだこのトンガリたわけ……!!」
彰利「トンガリたわけ!? なんかかつてない斬新な呼び方された!
でも落ち着こうぜハニー! 俺の知り合いに素晴らしきガラス職人が居る!
格安で直してもらえるぜ!?」
悠介「で? その代金は誰が払うんだ」
彰利「え? 悠介《ゾブシャア!》みげーーる!!」
無言で目潰しいただきました!
い、痛い! そしてなにも見えない!
悠介「あー……窓ガラスっていくらくらいだった……?
確か、高いとこだと1〜2万は当然で……」
彰利「知り合いならば6千円!」
悠介「本当か!? って割ったお前に言われてどうして俺が喜ばなきゃならんのだ!」
彰利「安上がりってとってもステキ! つーかさ、元から少しぼろっちかったじゃない。
そろそろ張り替え時だったのよきっと」
悠介「……まあ、それは認めるけどな。割らなけりゃもっと保ってたって事実が、
どうしようもなく俺を破壊衝動へと導くんだよ……」
彰利「な、なんだって!? いかん、衝動に飲み込まれるんじゃないっ!
キミはっ……キミはそんな衝動なんかに負ける男じゃないはずだ!」
悠介「おぉおおお前が言うなたわけぇえええっ!!!」
彰利「《ヴァゴンシャアアア!!》ウゲロギャアアアアーーーーーーーーッ!!!」
空飛びました。ええマジで。
拳で空を飛べる……それはとてもとても痛いことです。
でもまあ体張ってのことなので甘んじて受けます。
痛いけど痛くない! つーかうん、窓割りはやりすぎた。
彰利「ワガガガガガ……あ、あの……ちょっと冷静になりましょ……?
ケータイとかいうのでそいつに話通すから……」
悠介「……はぁ。そりゃあな、無趣味だから今までの小遣いも溜まってて、
6千なら出せるには出せるけどな……散財もいいとこだろこれ」
彰利「パパンやママンは?」
悠介「基本的に自分でやったことは自分でって教育方針なんだよここは。
それくらい出来ないようじゃ、
神事に手を伸ばすなんて罰当たりもいいとこだってな」
彰利「ナルホロ……っと、もしもしー? え? 誰って。俺だよ俺俺!
今から言うところで6千円振り込んでほしいん───ギャアウソごめんなさい!
あのアタイ彰利です! うんそうアタイ!」
いきなり俺俺詐欺をしようとしたら、黒い笑みを浮かべた親友が拳をヴェキヴォキ鳴らしました! 怖っ! ハルちゃん顔怖ッ!! あの顔は悠介の悠と書いてハルちゃんのインスピレーションが怒りに変わったしるしなんだ! そのことで彼は別名“笑顔黒ッ!”と言われているんだ! 略してガングロって言ったらタコ殴りにされたことがあるくらいさ! しかも今日の笑顔はとびきり黒い……いったいこれからどんな行動に出るっていうんだぁあああ!!
などと一人で盛り上げてないで。
悠介「それで、相手は誰なんだ?」
彰利「ああ、うん。中井出。あいつ結構人脈持っとるから。
ほら、アタイと中井出って剣術と空手ィェー始めたじゃない?」
悠介「カラティェー言うな、普通に空手って言えばいいだろ」
彰利「まあま、ええじゃないの。んで、その門下の中にそういう知り合いが居るそうな。
ナニブン喧嘩以外は平穏で平凡な町じゃけぇ、少しでも稼ぎになるならって。
道場でそーゆーヤツと会ったんだぜ〜って、
この前エンカウントした時に自慢された」
悠介「お前ら無駄に仲良いよな……」
彰利「あらやだオホホこの子ったら嫉妬? ええぞもっとしなさいギャアウソです!
なんて怖い顔するのかしらこの子ったら!
で、中井出ー? そんなわけで窓が割れたんで注文お願いしたいんだが。
値段のほーとかどう? ……ふむ、ふむふむ。
え? 窓のサイズ? えーとね、横幅が……で、縦幅が───」
ずんわ(電話)の先の中井出に事細かに説明。
すぐに知らされた見積もりを耳にして、悠介と相談しつつゴーメッセージ。
金は……アタイとダーリンとでワリカンってことになりました。
悠介「まさか5千とは……大丈夫なのか? 店的に」
彰利「じゃーじょーぶよ。仕事もしっかりしておるそうだもの。
値段がそれなのは、本職の親父さんじゃなくて若手のそいつがやってるから。
ただし腕は確かざんす。じゃなけりゃあ紹介するわけねーデゲショ?」
悠介「……」
まあ、お前に限ってはそりゃそーだ、とぶっきらぼうに言って溜め息。
ほんに溜め息の似合う男になっちゃってまあ。
雪子さんも言ってたね、“ゆーちゃんは将来立派な苦労人になるわよー”って。
それを伝えてやったら地面に両手両膝つけてモノスゲー勢いで落ち込んだけど。
悠介「ま、なんにせよ朝からの慌しさもここに置いて、さっさとメシにするか」
彰利「オウヨ。久々にアタイが料理作ったるけぇ、悠介は木葉ちゃん起こしてきて」
悠介「あいよ」
木葉ちゃん、悠介が起こさんと起きないからね。自分の意思で。
ネタ振り……ではなく、寝た振りが上手いのですよ、木葉ちゃんたら。
さてさて、そげなことはよしとして、せっかくの早朝ざんす。
コココ……! 美味なるものには音があると言うざんす……! 音がめっちゃ鳴る料理を作ってやるざんす……!
───……。
ジュ〜〜ジュッジュッジュッジュ〜〜〜ッ!!
彰利「出でよ鳳凰!!」
ボッファァアッ!!
中華鍋で野菜を炒めつつ、無駄に炎を出して料理を作る。
オーマイコンブの鳳凰にはきっと意味なんて無かった。
彰利「タァアアンマネェエエエエエギィイイイーーーーーーーーッ!!!
目に染ィイイイみてぇええええええンもォオオーーーーーーーッ!!!
なみぃいーーーーーーーだこぉおおらぁああえてェエエィェエエーーーーッ!!」
野菜を炒める。
味付けは塩コショウ。
混ぜたならポテトを丸く握ります。
小麦粉タマゴにパン粉をまぶして、揚げたら───
彰利「酢豚です」《どーーーーーん!!》
付け合せにカリカリポテトをどうぞ。
こんがり揚がって美味ぇええぜ?
彰利「ふーむ、さっぱりしたのもなんか欲しいな。ドリンクでも作るか」
材料なら持ってきたものがございますけぇ。
なのでちゃちゃっとひと手間。
このひと手間ってやつが食卓を彩ります。
彰利「んじゃーバナナと牛乳をミキサーにかけて〜〜っと。
砂糖をちょいとだけ入れます。牛乳はてーしぼー!
メシをがっつり食いてーなら余計なカロリーは敵ッス! なのでてーしぼー!
バナナは平均100キロカロリーなので、ダイエットの良きパートナーです」
さて、二度やって出来上がったものを三つに分けて、二人が来るのを待ちます。
彰利「ウフフ、なんだか新婚さんみたい。専業主夫って実はアコガレなんだよね、俺」
暖かな家の朝を担当します。No.1のAKITOSHIです。
彰利「おっと、そろそろ占いの時間だね。テレビテレビ〜っと。はいぽちっと」
電源を入れるとパッと点くテレビくん。
チャンネルを回して目当ての局に合わせると、最近よく聞く名前のグループがCMをやっておった。
彰利「……そーいやこのエーケービーなんたらって、なんの略なんだろ」
アクババ? FF11あたりで居たモンスターの。
木葉「アーティスティック・カインズ・バードの略ですよ」
彰利「おや? 木葉ちゃん。おはよ」
木葉「はい、おはようございます彰利さん」
静かに会釈をして、自分の席へととすんと座る。
うん、今日も礼儀正しい子でございます。
彰利「で、そのアーティスティックってなに?
アーシングアタックの仲間? アイスマン?」
木葉「適当な直訳で“芸術的で種類が多い鳥”のことです。
一羽一羽の芸術的な個性が集った鳥ってところでしょうか。
もちろん冗談ですから、間違っても烏合の衆とか言ってはいけません」
彰利「うん解ってた」
木葉ちゃんがオイラにそんな親切に教えてくれるはずがなかろうモン。
で、AKBってのは秋葉原だったっけ? アキバだからAKB。
俺、最初はアクブって読むのかと思ってた。略語が多くなったね。ただの略じゃ我慢できずにとうとうローマ字で処理し始めおったわ。
彰利「木葉ちゃんさぁ……このAKBってどう思った?」
木葉「第一印象はKKDでしたね」
彰利「OK十分だ」
火事場のクソ力。略してKKD。AKB48ではなく、KKD48の殺人技。
何を隠そうアタイもそうでした。
彰利「しかしケビンマスクの鎧には驚かされたね」
木葉「真っ直ぐ投げた鎧が、まさか左右にブレながら飛ぶとは……」
木葉ちゃんはキン肉マンが好きだ。
というか、この町でキン肉マン嫌いはほぼ居ない。
町全体でキン肉マンを応援していると言っても過言ではない。
悠介「ふう、っと。もう出来てるのか」
彰利「お、悠介。出来とるよー。そっちは布団干し?」
悠介「ああ。いい天気だからな」
彰利「でさ、ケビンマスクの鎧の話をしとったんだけど」
悠介「あれには驚かされたな……」
木葉「はい」
悠介も好きです。キン肉マンは僕らの心のオアシスさ。
しかしキン肉マン以外でみんなが好きなのって、他にはあまりないんだよね。
アタイなんかは他には忘却の旋律とかが好きなんだが。
つい昨日、観咲雪音嬢の許可の下で戦った中井出に訊いてみたところ、彼は杉平さんの大ファンだとか。将軍ブロマイドをもかなり持っているらしい。
彰利(……あ)
そういやぁあの嬢はどうなったんじゃろね。
ガキャアの頃に中井出がハンケチーフを取ってやった嬢。
緑髪なんて凄まじいものを見たが、あれから十と数年。
この町で生きる中、金髪も見たし蒼髪も見た。緑髪なんてフツーフツー。
彰利「いーたーだーきーます!」
悠介「普通にいただきますって言えっていうのにお前は……」
木葉「お兄様、いただきます」
彰利「あれ? こ、このちゃん? 作ったの俺。俺ね?」
ともあれ食います。むしゃむしゃと食います。
おおう、中々よい味でございます。
悠介「相変わらず料理美味いな。朝から酢豚ってのもどうかとは思うが」
彰利「あんまりしつこくならんようにセーブはしてあるけど、やっぱキツイ?」
悠介「いや、案外食いやすくて驚いてる」
木葉「結構なお手前です」
彰利「あんがと。おかわりいる? よそるよー」
悠介「ん、頼む」
木葉「私は控えめで」
彰利「オッケー」
はいぺたぺたと。
つーか食うの早ェエエね二人とも。
俺もちゃっちゃと食ってしまいますかい。
───……。
そげなわけで登校アマス。
彰利「おっれぇ〜はジェイガァ〜〜ン! ……老騎士である!《どーーーん!》」
悠介「ファイヤーエムブレムか」
木葉「俺、という一人称でしたでしょうか?」
彰利「覚えてないや」
春の日差しがやる気を奪う。
ポッポ小学校の校歌はステキだと思う。
いや〜……眠くなるね。でもこの風は嫌いじゃない。
彰利「春は出会いの季節! こうして歩いて、新しい世界で見る景色とはいったい!?」
悠介「知らん。……しかしなんだな。
七夕町って町の中心に学校を構えるなんて、昔の人も無茶したもんだ」
木葉「そうですね。これはこれで面白くはありそうですが」
中学までは東も西も別々だったものね。
それが高校だけは中心で、西も東も同じ場所に通うってもんだからステキ。
しかもバイトが義務になっている。強制ではないものの、人生経験としてバイトってものが授業の一環としてあったりする。事情があって出来ないヤツはそのまま授業終了だ。
彰利「悠介はなんのバイトする?」
悠介「新聞配達かな。楽しそうだ」
彰利「おお、そりゃ確かに。じゃあアタイも」
木葉「私は来年までに考えておきますね。では、私はこちらですので」
悠介「っと、そっか。がんばれなー」
木葉「はい。では彰利さん、お兄様をお願いします」
彰利「ンまっかせなさぁーーーい!! ばっちり面倒見てやらぁな!」
木葉「いえ、悪い虫がつかないように監視してくださいという意味です。貴方も含めて」
彰利「あら面白い! でもまあそんなこったろーと思いました。
安心おし、アタイはあくまで親友!
そして悪い虫は俺だってつけさせたくないしね」
木葉「ええ。そういうところは信頼していますよ」
彰利「サンクユー!」
グッとサムズアップし合ってアディオス。
疲れた顔をしている悠介とともに、通学路を進みます。
悠介「どうしてあんな風に育ったかなぁ……」
彰利「ええ娘ッコやないの。アタイ独り身だから、ああいうコは羨ましいやね」
悠介「そうか? ……そうかもな。
なんだかんだで人見知りするあいつが、お前とはフツーに話すし」
彰利「うん。なんか知らんけど嬉しいのよね。好きとかそーゆーんじゃなく、
普通に話せて嬉しいって感じるのはどうしてなんだろうね」
悠介「んん……解らん」
彰利「だぁねぇ……」
別に何かが可笑しいわけでもないのに笑いながら、少し長い坂をゆく。
登った先にあるそこが、我らが七夕町が誇る大きな高等学校。
名を天の川高等学校。
案の定かと思ったヤツ、その通りざんす。
ほいで……なんか新入生歓迎係りの人が何人か待つ中で、一人棒立ちしている娘が……おがったとしぇ。
悠介「? どうしたんだろうな、あいつ」
彰利「ふむ。───って、なにやら見覚えあるお顔」
少し近付いてみる。
と、案の定知った顔でございました。
なにやら校門前で校舎を見上げ、深呼吸してらっしゃる。
名を、篠瀬夜華。剣術道場の娘さんだ。
夜華「大丈夫ー……大丈夫だ……私ならばやれる。
目標、目標は……そ、そうっ、友達…………じゅ、十人くらいは……」
……。
悠介「……あれは冗談かなんかじゃあ……ないんだよな?」
彰利「冗談とか嫌いだからね。で、対人恐怖症といいますか、まあそんな感じなんよ」
悠介「人見知りってことか?」
彰利「剣術一本で、剣術馬鹿といっても過言じゃあござらん。
剣術のことになれば舌は回るんだけど、普段はあまり人と話そうともせんよ。
必要なことだけを口にして、あとは知らんって感じの人」
悠介「なるほど」
彰利「つーわけで声かけましょ。やーほーしのっちー」
夜華「!? うなっ……!」
声をかけてみると、ホーコラビックリ。
ドカーンってくらいに肩を弾かせ、シュリンプもびっくりってくらいのバックステップで距離を取るしのっち。そしてその勢いで境界線を越えてしまい、見事成績を下げられた。まだ新入生にもなってないのに、ひどいものである。
夜華「貴様は私に何か恨みでもあるのかぁあああああああっ!!」
彰利「挨拶しただけなのになんで刀突きつけられてんの俺ェエエエエッ!!!」
涙目で顔を真っ赤に染め上げながら刀突きつける人ってフツーいねー!
でも目の前に居るのです! ギャアめっちゃ怖い!
悠介「あ−、えーと?」
彰利「しょしょしょ紹介しますしのっち!
こちら、晦神社の息子でアタイの親友の晦悠介!」
夜華「!?《シュババババッ! ───チンッ》……《ペコリ》」
彰利「ワァオ……」
モノスゲー速度で身を正し刀を納め、ぺこりとお辞儀をするしのっち。
こう見えて神事だのの類には真っ直ぐなお方です。宗教は嫌いだけど。
神や仏を信じるのではなく、これまでの労を祭るって意味での神事ね。そーゆー人の頑張りなどが好きです。人見知りしまくりだけど。
夜華「あ、あなっ、貴方が晦神社の! うぅう噂は弦月から聞いていりゅ《ガリッ!》」
……あ。噛んだ。
夜華「……聞いています。…………〜〜〜〜っ……」
うわ〜……めっちゃ痛がってる……!
そして何故か睨まれるアタイ。ホワーイ!?
悠介「よろしく。今思い出したけど、祭りの日とかに会ったことがあったよな」
夜華「…………?」
彰利「忘れたって」
悠介「まあ、ちらっと見る程度だったし仕方ないだろうな。で、あんたも新入生か?」
彰利「オウヨ。一応同い年じゃけぇ。同じクラスになれるといいね」
夜華「ご、ごめんだ。お前と居ては、私の計画がだな……」
彰利「ちなみに新入生挨拶の時、立ち上がって前の生徒の椅子に片足を乗っけて、
手を耳の傍で三回叩いてからエイジョリアンって叫ぶと、
友達がいっぱい出来るってジンクスがあるんだよ」
夜華「な、なにっ!? そうなのか!?」
彰利「うす。それが噂の“高校デビュー”といわれるものです」
夜華「こっ……高校デビュー……!
聞いたことはあったが、まさかそれがそうだとは……!」
彰利「おーけーね? きっと誰もが機会を狙ってるから、
誰よりも先にやらねば友達十人なぞとてもとても」
夜華「むぅ……奥が深いな、高校デビュー……!」
悠介「………」
悠介が呆れた顔でこちらを見ておりました。
しかしツッコムことはせず、そのまま門の先へ。
アタイもうむうむと頷くしのっちを促して、いよいよ新入生への第一歩を踏み出したのだった───!!
───……。
で。
ガタッ、ガタタッ! ぱんぱんぱんっ!! ───すぅっ……!
夜華「えぇええいじょりあぁあああーーーーーーん!!!」
新入生代表の挨拶が校長先生から言い渡された途端、離れた位置からエイジョリアン。
ちらりと見てみれば、少し興奮した様子でやりとげた顔をしたしのっちが、フスーと鼻息荒くドヤ顔をしてらっしゃった。
……その後、しのっちはセンセに注意され───
アタイは式が終わるのと同時に、顔を真っ赤にした般若によってボコボコにされた。
【05:中井出博光/我が愛と青春のララサンシャイングオッフォフォ】
離れた位置からエイジョリアンが聞こえたその日。
僕らは先生の案内のもと、ひとつの教室へとやってきました。
校舎内まで境界線が張られたこのガッコの西がわ四階最奥が僕らの教室。
最奥とは申しましても、境界線のすぐ隣って意味での奥で、線を越えればまだ教室はある。……驚いたことに、そこが弦月や晦の教室だった。
さらに言えば───
和哉「《む〜〜〜ん……!》」
フンドシ一丁の男が、俺と一緒のクラスです。
クラスメイツたちの動揺はもちろん、なんでか俺の横に当然のようにいらっしゃって、俺も動揺を隠せません。
博光「あの。なんで横にべったりと?」
和哉「うん? 知り合いだからだろう。
まだ友も居ないこの状況、知っている者の隣というのは安心出来るものだろう」
あの。そんなもん、フンドシ一丁で学校に来ることのほうが難しいと思うんですが。
どういうハートを持ってらっしゃるのか。
心臓に毛が生えてるどころかちぢれてるよコレ絶対。パーマ通り越してアフロだよ。
和哉「それにお前は悠介とも面識がある。俺としてはお前とは善き友になりたい」
博光「そりゃあ……差別とか嫌いだし、むしろお前みたいなヤツは嫌いじゃないが。
…………ふむ。じゃあいいか。俺、中井出博光。
好きなものはあんぱんで、嫌いなものは肉じゃが。
大事なものは家族で、好きな行動は努力だ」
和哉「おお、それは素晴らしいな。俺は朧月和哉だ。
好きなものは米。握り飯は特にいいな。
海苔で巻いてしばらく置いたしっとりした握りメシなど格別だ。
大事なものは俺を理解してくれる友。好きな行動は、やはり努力だ」
自己紹介を今さら始めて握手をする。
友情といふもの、確認するのは一時のみ。
確かめたのなら、馬鹿のようにただひたすらに信頼すりゃあいい。
相手が重く感じりゃあ逃げてくだろうし、面倒になれば縁を切るだろう。
まあつまり、ただ信頼してりゃあいいのだ。重くもなく軽くもない、自分が心地いい距離感で。
それが自然に、お互いで出来るようになった頃、初めて友は親友となれる。
俺はそう信じている。
……お陰で友達と呼べるやつはとことん居ないが。
博光「グオッフォフォ……!! 俺の“友”はちと重いぜぇ……!?」
和哉「望むところだ。俺は俺の好みを邪魔しないのであれば。
そして俺を受け入れるだけの冷静さがあれば、それで問題ない」
博光「冷静よりも楽しくいこう。楽しいは大事だ」
和哉「ふむ。なるほど、それは然りだ」
うむと頷くドッスィー。
でもとりあえずは制服は着てもらおうね。
───……。
そんなことがあって、現在は教室内。
きちんとバッグに入れていた制服を着用すると、ほとんど晦にしか見えない朧月が、少し窮屈そうに服を引っ張る。
和哉「んぬ……むうう……! どうも制服というものには抵抗が……!
せめて和服にならぬものか……!」
博光「そこんところは教師との交渉次第だろーな。さてとー、席順は───おおっ!
窓際後方二番目! いい席じゃないか!」
和哉「俺はその斜め後ろか」
博光「それで、この窓際最後方は───」
黒板に張られた無駄にデカい席順表を見る。
そこに書かれていた名前は───緑葉謳歌。
青春を存分に楽しめそうな名前だった。
博光「男? 女?」
和哉「順からして女だろう。お前の前も俺の前も女なんだ、そういうことだ」
博光「なるほど───お?」
とかなんとか確認していると、一人の女子がこちらへと歩いてくる。
おお緑髪だ……弦月たちと出会うきっかけになった日に会った子みたいな緑だ。
そういやあの娘、今頃どうしてるやら。
まさか目の前の娘がそうだったりしてー……って、目の前? あれ?
ぽかんとしている俺を真っ直ぐに見て立つお子。
俺になにか用があるのか、椅子にも座らず立っていた俺をじっと見つめ、やわらかな笑顔を見せてから綺麗なお辞儀をしなすった。
謳歌「緑葉謳歌。約束通り、あなたの妻になりに来ました」
………………。
博光「……お、お……あの、木吉サン……? 妻になりたいって───」
和哉「俺は朧月だが、少なくとも今の言葉は真っ直ぐにお前に向けられていたぞ」
博光「うそだよ! だって言われる覚えがないよ!? え、えーとあの!?
もしや十数年前に弦月屋敷の草原でハンケチーフを拾ったお子!?」
謳歌「はいっ……その説はありがとうございましたっ……!」
ま、眩しいッ! 素直な感謝の笑顔が眩しい!
そしてあなんでか直視できない! 僕はいつの間にか汚れてしまっていたのか!?
和哉「ふむ。つまりその礼を言いたくて会いに来たと?」
謳歌「いいえ、妻になりに。子供の頃の約束だったんです」
和哉「約束? ……覚えがあるか? 友よ」
博光「う? う、うー……?」
思い出してみる。
あの頃……あの頃は、ハッ!
【回想】
えーんえーん……
博光「むむっ!? 事件のようね!」
ある日、境界線がどこにでもきっちり張られているのかと探検していた日のことだ。
ある草原……まあ弦月屋敷の草原なわけだが、そこで泣いている子供を発見したのだ。
それが彼女。緑葉謳歌だった。
博光「どうしたの見知らぬ少女!」
特撮ものにハマっていたという時期の手伝いもあり、困った子を助けたかった俺は当然手を差し伸べた。ああハマってたとも。それも悪側に。
しかしだからって困っている子に悪を働くって気にはならなかった。
謳歌「えーんえーん……
おかあさんからもらった大事なハンカチが、風のせいで線の向こうにぃい……!」
博光「な、なんだって!? アーーーッ! こ、こんなことが……!
女の子の大事なハンカチが手の届かないところに落ちているなんて!
これは許されないことだよ! こんなことをした風はとてもひどいやつだね!
もういっそ変態だよ! 変態という名の紳士だよ!」
とは言ってもハンカチが戻るわけでもない。
しかもこのままじゃ、また風が吹けばもっと飛ばされてしまうだけだ。
だったら───と、俺は地面を蹴っていた。
蹴った先で…………困ったことにトンガリ頭と遭遇した。
───……。
その後、なんとか決着をつけてハンカチを手にした俺は、泣いている子供にハンカチを届けると任務を完了させた。
しかし無駄にジョナサンの真似をしてしまった所為でハンケチーフが血塗れになり、少女がビワーと泣き出す泣き出す!
これはどうしたものか〜〜〜っ!と悩んだ挙句、俺が取った行動とは───!
1:シラを切る。むしろ最初から血塗れだったんだと言い張る。
2:赤は情熱の印だ。もっと、熱くなれよぉおおお! と叫んでみる。
3:気絶させてハンケチーフを奪い、丹念に洗ってから返す。
4:一緒に行って、おかあさんとやらに謝りに行く。
5:新しいハンケチーフを買ってやる。
6:気絶させずにフツーに洗いにいく。ミャーズで。
結論:…………4!
……。
博光「プレゼントを汚してしまうなんて紳士の名折れだ。
大丈夫だぞお前。えーと……」
上手く言葉が出てこない。
こういう時ってあるよね。
しかしながら間が空けば空くほど気まずくなりそうなので、強行手段にでた。
そう───抱き締めたッッ! 少女をッッ!!
博光「大丈夫だぞ。泣くことなんてない。
何があっても俺がずぅっと一緒に居てやるから(謝る時にはという意味で)」
謳歌「───!」(↑これが愛の告白に聞こえた)
……あれ? なんかこいつ震えてる?
とか思ってたら、涙流したままの顔が俺を見上げた。
謳歌「わ、わたし……かみのけ、みどりだよ……?」
博光「すげぇじゃん!」
謳歌「それでいじめられてるし……」
博光「じゃあ俺がそいつらいじめ返してやる! 喧嘩強ぇえんだぜ俺!」
謳歌「ま……まもって……くれる……?」
博光「守るとかそーゆーの好きじゃないけど、やっちゃったもんは仕方ないもんな。
自分がしでかしたことは自分で責任取る。
そーゆーことを少しずつでも出来る博光であれってのがばーちゃんの教えだ。
よしっ、俺がお前を守ってやるっ!
だからお前もいじめられてばっかじゃなくて強くなれっ!」
謳歌「……! う、うんっ……!」
───そう。
それが……緑葉謳歌との初めての顔合わせだった。
その後俺は少女の家にまで行って謝って、なんだかよく解らん話になり始めて頭を痛めていたところに、緑葉ママンから「それでいいのね?」と訊かれ、ハンカチの代償的ななにかかなと思いつつ「二言はありませぬ!」と答えた。
……それが、少女を嫁に貰うことの最終確認であったことを知るのは相当あとになるわけだが……ともかくそれからの俺は頑張った。努力した。
同じ小学校だったことが解ってからは、緑葉をいじめるヤツをとことんシメまくり、仕返しに囲まれようがイジメられようが無視して、とにかくがむしゃらに楯突き続けた。
すると緑葉家に招かれることが多くなり、緑葉の両親にもいたく気に入られ、なんだか知らんが妙な紙切れに名前を書かされて、判子まで押すことになって───しかし親の仕事の都合で外国へと引っ越した彼女だったが今こうして───
……。
博光「……《だらだらだらだら……!!》」
謳歌「ただいま戻りました、あなたの妻です《ポッ》」
育つところは立派に育って、しかもかわゆくなってました。
いや、そりゃあ昔っから可愛いとは思っていたが、よもや……よもやッツ!
和哉「妻か。しかし学生の身分では」
謳歌「婚姻届けは既に完成してます。
博光さんの判子込みで、さらに博光さんと私の家族からも承認済みです」
ぺらりと出された紙はまさに───婚姻届けェエエッ!!?
おぉおーーーおおお思い出したァ! 子供ン頃なんか書かされたなとは思ってたけどまさかまさかまさかァアーーーーッ!!
博光「い、いやっ……しかし学生の身分でそんなウヘヘヘヘ」
和哉「顔がだらしもなく緩んでるぞ」
博光「はうあ紳士にあるまじき行為をしてしまった! い、いやっ……でも……マジ?
言っちゃなんだけど取柄らしい取柄もなければ、顔も平均な俺だよ?
しかも子供の頃の約束なんて、律儀に守らんでもいいと思うけど」
謳歌「いいえ。謳歌は決めておりました。必ずあなたの妻になると。
そのために外国で様々を学び、妻として相応しいわたしになったつもりです。
至らない点があれば言ってくだされば、もちろんあなた好みのわたしに《ポッ》」
博光「…………《だらだらだらだら……!!》」
ナ、ナンダロウ……! 汗が止まらねぇさ……!
大変嬉しい状況な筈なのに、どうしてこんなに……!?
謳歌「おじさまおばさま、お爺様やお婆様には博光さんの成長記録と称して、
ビデオレターまで送っていただきまして。
当然わたしも送っていたのですが───」
博光「なにそれ!? し、知らない! 僕知らないよそんなの!」
謳歌「はい。博光さんには成長したわたしを見て驚いてほしいから、
見せていないと手紙に書かれていましたから」
博光「当事者ほっぽってなに勝手に話盛り上げてんの!?
あ、あれぇ!? 僕当事者だよね!?」
謳歌「もちろんです。そしてわたしはあなたの妻です」
博光「やっ……そりゃ……」
こんな可愛い子にそんなこと言われりゃ嬉しいけどさ。
なにか罠がないかって警戒しちゃうだろ普通。
つーか妻とか嫁とか、そういうことを考えなきゃいけない時期にはまだ二年以上も早いと言いますか。もうちょっと平凡な毎日を享受シタイナーとか……その、ね? 解るでしょ?
謳歌「というわけで妻の務めとして、まずは浮気は許しません」
博光「いきなりなに!? 浮気もなにもモテたことなんてないよ僕!」
謳歌「そうですか。ではこの書物は燃やさせていただきます」
博光「!?」
スッと取り出されたもの。それは僕の部屋の本棚の後ろに隠されていた筈のジェニファーちゃん(仮名)の写真集!!
博光「えっ、やっ……! ハワワ!? ななななんでそれを!?」
謳歌「おじさまが快く男の隠しスポットを教えてくださいました。というわけで」
シュボッ! メラメラメラ……!!
博光「ジェニファァアアアーーーーーーーーッ!!!!」
ジェニファーが! ジェニファーが燃やされてゆく!
わざわざ用意したらしいデケェ灰皿みたいなものの上でメラメラと!
助け出してやりたいのに木吉さんが! 木吉さんが羽交い絞めして放してくれない!
博光「放して! 放して木吉さん! ジェニファーが! ジェニファーがぁああ!!」
和哉「とりあえず俺は朧月だが、あれはもうだめだ、手遅れだ」
そうこうしている間にジェニファーは燃え尽き、ようやく解放された俺は教室の床に両手両膝を落とし、男泣きをした。
むごい……なんてむごいことを……!
燃やさずとも、他の勇者のヒロインになれたやもしれぬのに……!
博光「くそう! なんてことするんだよぅ!」
謳歌「い、いえあの……やりすぎだとは思うのですが、
母がこれくらい言って聞かせないと、男はすぐに浮気に走ると……」
博光「ローラさぁああーーーーーん!!」
緑葉ローラ。緑葉のママンであり、外国人さん。
緑葉と同じく緑髪なんだが……もうなんというか元気なママさんだ。
おばさん言ったら殴られた経験があります。
謳歌「でも大丈夫です。博光さんの欲求は、全てわたしが……《ポッ》」
博光「ウワーイ……嬉しいはずなのにちっとも嬉しくない……それはどうして木吉サン」
和哉「俺は朧月だが、それらが許されるのが、お前が18になってからだからだろう」
博光「つまりそれまでエロ本買うことすら許されないんですね俺っ……!!
い、いやぁああーーーーっ!! 二年も不自由にすごすなんてヤだぁーーーっ!!
高校男児のエロスなめんなよコノヤロー!
いやだ! 俺はまだ縛られた生活なんてしたくないんだぁあーーーっ!!」
和哉「法律破ってそちらに走るという気は起きないのか」
博光「責任取れない小童がそんなことして、
自分はともかく相手の人生潰してちゃ世話ねーじゃん。やだよ俺そんなの」
和哉「……お前は。冷静なのか馬鹿者なのか」
博光「自分のことは自業自得だからいいの!
それに誰かが巻き込まれるのは冗談じゃねー!
だからその婚姻届けをよこしなさい! 今すぐに!」
謳歌「どうぞ。コピーですけど」
博光「チクショォオオーーーーーーッ!!!」
前略家族さま。婚約者が出来てました。いつの間にか。
そして盲目的ともとれるくらいに俺を好いてくださるこの緑葉さんに対し、俺はいったいどんな反応をすればいいのか。……いつもと変わらないね。
とりあえず家族と話をして、僕のエロスを守る戦いを───ってはうあ!? それだと俺、家族に自分の性癖などをいろいろと曝すハメにっ……!? イ、イヤァ! イヤァアーーーッ!! これはどんな罰ですか神様ァアーーーーッ!!
博光「あれ? でもチッスとかならOK? 恋人同士の青春っぽくてステキ」
謳歌「《コクリ》構わない。した時点で誓いのキスとして受け取る《ポッ》」
博光「なんか口調変わってません!? えややややっ、友達でお願いします!
むしろ自分がモテてる状況が信じられない!
これ絶対夢だろ! 汚いなさすがドリームきたない!」
だ、だが大丈夫だ、問題ない。
俺の秘密書庫は、なにも本棚の後ろだけじゃないんだぜェェェェ!!
謳歌「ところで博光。エッチな本はあれだけ?」
博光「いきなり呼び捨て!? もっと段階踏もうよ!
え、ええと、……ウ、ウンー……アレデゼンブダヨ?」
謳歌「じゃあこれとこれとこれは博光のものじゃない。燃やそう」
博光「えぇ!?」
スチャリと出されたその書物は、まさかのステファニーとアンジェラとミラルカ! おぉおおお馬鹿な! 宅の親父様でさえあれは見切れぬだろうと確信持ってたのに! つーか教授のくせに息子のエロ本スポットとか他人にバラすなよぉおお!!
ゴオオオメラメラ……!!
博光「オォオオオアァアアアーーーーーッ!!!」
夢が! 夢が燃やされてゆく! そして例によって木吉さんに羽交い絞めにされて動けねぇ俺惨状もとい参上!! やがて炭へと姿を変えてゆく愛の具現たちを、せめて合掌して涙しつつ見送った。
和哉「いや、その。なんだ。災難だったな」
博光「なはっ……なに言ってんのっ……!?
あ、あれ僕のじゃないもん! ほんとだもん!《ズヴァーー……!!》」
和哉「滝のような涙を流しながらよく言うな……」
まさか……まさか子供の頃の気まぐれなやさしさがこんな事態を招くとは……!
で、でも可愛い彼女GETだゼって喜べば少しは心が安らぎますか?
だけれどもキスをしたら夫婦確定なんです。
そりゃあ可愛いです。モロ好みです。こんな娘と結婚確定なんて嬉しいじゃないですかそりゃあ嬉しいですよ。嬉しいけどまだ僕高校生なんだよ? もっと青春を謳歌したいし、急にそんな妻ですとか言われたって……!
和哉「それで、改めて訊くが───お前らは学生の身分だ。
というか高校に上がったばかりだ。
親が認めているからとはいえ、不純な交友は認められん」
博光「ほっときゃフンドシなお前が言うなよ」
和哉「む……なるほど。理解者が居ないという意味ではあながち遠い理解でもないのか」
謳歌「それが愛。そして好きです」
博光「友達でお願いします」
これは困った。
なんか似たような状況だなーとは思ったが、これアレだ。
ゲームで似たような状況があったよ。
そして僕はそのゲームが大好きだ。愛してると言ってもいいね。他のゲームはそうでもないんだけど、どうしてだかそのゲームだけは心から愛してると言える。叫べる。
博光(ふむ)
恋人っていうよりはダチがいい。
恋人な関係をするのは18になってからで、それまではお互いを知る努力をしましょってことで。その過程で嫌われるならそれでもいい。ただし努力はする。もちろんさ。
グヘヘヘヘそして隙を見てまたエロスを購入して……!
謳歌「エッチな本を買ったら燃やす」
博光「ひどい! なんてひどい! ていうか人の心読まないで!?
〜〜〜っ……とにかく! 俺は俺として生きることを曲げない!
それに関してとやかく言うのなら、俺は恋人なんて要らん!」
謳歌「言わないよ。ただ浮気はだめ」
博光「雑誌に欲情するなって、どんだけ心狭いのアータ!」
謳歌「狭いんじゃなくて一途。子供の頃から愛してます」
博光「だから友達でお願いします!」
両の頬を手で支えながら、ポッと頬を赤らめるお嬢さんにキッパリ。
でもちっともこたえてないよこの人! なんていうタフガイ! ガイじゃないけど!
和哉「うむ。まず友達から始めるべきだろう。
友達になり、互いを知り、夫婦になるのは二年後だ。
それまでは互いに我慢をだな───」
博光「ご、ごめんだよ! 二年も禁欲なんかされたら、
僕もう本屋に行く楽しみと快感が得られないじゃないか!」
和哉「ならば俺も本気を出す時以外はフンドシにならんと誓おう。
重いものをともに背負ってこそ友というもの。貴様のためなら耐えてみせよう」
博光「俺の欲求ってフンドシと同等扱いなの!?」
つーか見てる! クラスメイツが“頼むッ……!”って顔でこっち見てる! なにこのクラスの命運を預けられたみたいな状況! 預けるっていうかある意味脅迫だよねこれ! そりゃあ俺の一言でクラスメイトがフンドシで授業受けるか否かが決まるんだけどさ! ひどい天秤だよこれは!
謳歌「嫌なら今すぐ年齢を偽ってゴールインを」
博光「ウワハァイ我慢サイコォーーーーッ!!
頑張ろうね木吉さんチックショォオオーーーーーッ!!」
和哉「……朧月だと言っているんだが」
こうして、波乱の高校生活が始まりました。
センセが来るにはまだ時間があって、その隙に緑葉さんは燃えカスを窓から風で飛ばして、やり遂げた乙女の顔になってらっしゃった。
アリーヴェデルチ、ジェニファーたち……。
謳歌「朧月さんですか。あの……博光さん。
わたしのことは謳歌。謳歌と……呼んでほしいです」
博光「あ、あれ? 口調が戻った……」
もしかして二重人格者? あらやだ怖い。
でもそれはそれで面白そうだけど、きっと違うんだろうね。
きっと興奮すると口調があんな感じになるんだ。そーに違いねー。
博光「じゃあ……まずは友達からね」
謳歌「目標は家族になること。そして愛を受け入れてもらうこと。じゅるり」
博光「じゅるりじゃねぇえーーーーーーーっ!! やだこのお子怖い!!」
和哉「うむ、よかったな博光よ。
お陰で関心を持ちたくもない者たちはこぞって離れてゆくぞ」
博光「そりゃそんな奴らは願い下げだけどね!? うう、ちくしょう……!」
世の中って怖いですね。
俺、早くもいろいろと挫けそうだよ……。
だが諦めない! それが俺達人間に出来る唯一の闘い方なんだよ!
グエッヘッヘッヘ、婚約者だろーがなんだろーが、この博光のエロスを止めることなど出来ぬゥゥゥゥ!! 今日早速近くのコンヴィニで新たなるジェニファーを買ってくれるわ……!
謳歌「……博光。ヨダレ出てる」
博光「おおっと!?
ぬ、ぬう……人にじゅるりじゃないと言いながら、これは恥ずかしい」
謳歌「……条件次第なら、エッチ本も認める」
博光「いやあの、これって認めてもらうとかそういう問題じゃない気が……」
でも、え? ほんとに?
謳歌「方法はとても簡単。
博光がわたしのことを撮って、それを本にすればいい。博光限定」
博光「嫌だよそんな生々しいの! クラスメイトの生写真集とか逆に怖いよ!」
和哉「いや。これはこれで中々言えることではないぞ我が友よ。
なんなら俺のフンドシ姿も写真集にして───」
博光「全力で要らないよ!? 誰が喜ぶのそんなの!!
木吉さんは俺の写真集とか突きつけられて嬉しいの!?」
謳歌「是非欲しい《クワッ!》」
和哉「朧月だが、まあ要らなくはない」
博光「訊いた僕が馬鹿だったぁああーーーーーっ!!」
ああもうなんだこの状況! なんで俺、男にも女にも写真集薦められてるの!? しかも自分で買うものは燃やされて!
フッ……だが甘い。俺の隠しブックは四冊だけではない……さらなるもう一冊があるのさ! しかしこの様子ではヤツは気づいていない! つーかなんで僕の家族は人の部屋に勝手に上がらせてるのかなぁ! ……あ、一応婚約者だからか。
博光(く、くそう! どうりで最近なんかニヤニヤしてるなと思ったよ!
おのれ愛する家族たちめ……!
今度トゥシューズに画鋲入れて靴箱にセットしてやる!
誰も履かないだろうけど!)
そんなくだらなくも死活問題である会話をしていると、ようやくセンセがやってきた。
今日は必要なものを渡すだけであり、それが済めば終了。
そんなこんなでトントン拍子でガッコは終わり───一応友達なのだからと一緒に帰りましょうと木吉さんや、えーと……謳歌、を誘ったのだが。
謳歌「すいません、少しやらなければいけないことがありまして。
あ、そうでした。博光さんに伝言です。
おばさまとおじさまが今日はあんぱんが安いから買い食いしていいと軍資金を」
博光「《チャリチャリンッ》マジで!? おっ……ふぉおおおおおおおおおっ!!!」
あんぱん! 奢りであんぱん! ヒャッホゥありがとう僕の両親!
たとえこれがエロス密告の償いなのだとしても、俺は全てを受け入れましょう!
や、ややや安いのか! 何個買えるかな! い、一個? 二個? さささ三個!? 三個かいやしんぼめっ!
博光「じゃあ僕いくね! ちょっぴり遅くなるかもしれないから!
もし僕の家族の誰かに会ったら伝えといて!」
謳歌「はい」
博光「イィヤッホォオーーーーーーーイ!!!」
民から安い男だと嘲笑されて十数年、博光です。
だが好きなものを好きと断ずることになんの憂いもない!
エロスは恥ずかしいですごめんなさい。
さぁああて買うぞぉ! あんぱん買うぞぉ!
一番安いのは何処だ!? サマンダールか!? アマテラスか!? それともマスタチュかコスモスか! く、くそうスーパーが四つもあるなんて反則だ! マスタチュとコスモスは東側だから行けないけど!
となるとサマンダールかコスモス!
僕は走った。まるでお小遣いを貰った子供のように、笑顔で走った。
そして食った。晩飯クエマセェンとエセ外人風に言いたくなるくらい食った。
そして───……そして。
博光「うぐっ……おぶっ……ひっく……うぇええ……」
───夜、自分の部屋で泣いた。
残った最後の砦を、笑顔で封印から解いてみれば、それがなんと木吉さんのフンドシグラビアに変わっていたのだ……。
泣いた……ああ泣いたね。両手両膝ついて男泣きしたさ。
俺は……俺はあんぱんの誘惑に負けてなんてことを……!
仕事がとっても早い未来の妻と、フンドシな友人を思い、俺はただ自分の愚かさを呪ったのでした……。
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