───死祭───
それは体育館を出て間も無くのことだった。
ルナ 「ゆーすけーっ!」
がばしっ!
悠介 「オワッ!?」
ルナ 「んふふふ〜、み〜つけた♪」
悠介 「ル、ルナ?」
ルナ 「?……なに?」
悠介 「あ、いや……」
そっか、引っ込んだか。
ああ良かった……。
───ん?
『見つけた』?
ルナ 「ところでさ、悠介」
悠介 「は、離れろっ!」
ルナ 「むっ!させるか!」
ぎゅむっ!
悠介 「ぐはぁあ……っ!ばっ……!骨が……軋む……!」
ルナ 「───ママって呼んでくれる?」
は、謀ったなブッチャー!
くそぅしまった!
逃げられな───!?
悠介 「……!?」
ルナ 「───瘴気……?」
フレイアも異様な空気に気付いたのか、空を見上げる。
ルナ 「この気配───死神ね」
悠介 「なにっ───!?」
ルナ 「間違い無いわ。
死神が黄泉とこの世界を繋げる時に発生する気配と同じだもの。
まず間違い無く死神が訪れる。しかもどうやら話で解決は無理そう」
悠介 「ど、どうすると!?」
ルナ 「悠介は相手が殺しに来るならどうする?」
悠介 「それ相応の仕返しをするけど……まさか!」
ルナ 「そ。やられると解ってて大人しくやられるほど馬鹿じゃないわ。
ターゲットは多分、わたしとゼノとルナ、そして魂結糸で繋がってる悠介ね」
悠介 「俺も!?」
ルナ 「覚悟を決めなさい。相手を消滅するだけの覚悟をね」
悠介 「んなこと言われたって……!
月蝕力しか使えない上にこの能力、月の家系にしか効かないんだぞ!?」
ルナ 「月蝕力でしょう?なら安心じゃない。十六夜の家系を消飲したんでしょう?」
悠介 「しょう……いん?」
ルナ 「飲み込んで消す、消飲。もう飲んだなら大丈夫。
その家系の能力使える筈だから」
悠介 「なっ───!」
嘘だろ……!?
これってそういう力だったのか……!?
悠介 「………」
バチィッ!
悠介 「うわっ!」
ルナ 「ほら、出来たじゃない」
悠介 「…………!」
なんて力だ……冗談じゃない……!
人を飲み込んで、その力を吸収するだって……!?
な、なんなんだよコレ……!
ルナ 「悩んでる暇はないわ!来るわよ!」
悠介 「ちっ───くしょぉおおっ!」
フレイアの見つめる方向を凝視する。
何もない空間。
見つめればただ、その先の景色が見えるだけ。
だが、その景色が歪む。
ルナ 「───ハンターの2位、ジェルフォリクス=リヴァンス……ジェルね?」
ジェル「いかにも、ジェルフォリクスである」
ルナ 「なんの用?見ての通り、楽しんでるんだけど」
ジェル「ルナ=フラットゼファー……いや、フレイア=フラットゼファー。
貴女は居てはならぬ存在だ。ここで消えてもら───」
ボンッ!
ジェル「ギッ───!?」
ルナ 「……フン、ハンターの2位ごときがしゃしゃり出たところで勝てると思ったの?
せめてゼノくらいは強くなってから出直しなさい。
───もっとも、身の程知らずのあなたはここで消えるけど」
ジェル「───……!!」
ジュワァッ!
ルナ 「……まったく、鬱陶しいったらないわ」
悠介 「………」
ルナ 「悠介」
悠介 「え……?あ……」
ルナ 「簡単に存在を消すわたしは怖かったかしら?」
……怖いとかの問題じゃない……!
ゼノがハンターのNo.1として、さっきのヤツが2位なら強かった筈だ……。
それを、たった2回。
たったそれだけ手を振っただけで……!?
どうかしてる……!
ルナ 「悠介、後ろ」
悠介 「!!」
死神 「死ね」
───電磁場!
バチィッ!
死神 「ガァッ!」
悠介 「……!は、はぁっ、はぁ……!」
ルナ 「お見事。初めてのわりに、よく電磁場を作り出せたものだわ」
───無我夢中だった。
どうやった、と問われたらたまたま出来たって言うしかないくらいだ。
ルナ 「監視者ね?あなたが来たってことは勝てぬ戦はしないってことかしら」
死神 「黙れ、これは使命だ。居てはならぬ存在を抹消するのは使命なのだ。
一度消えた身で何故、この世界に存在することが出来る。
矛盾は消さねばならぬ。消えろ、消えてしま」
ボンッ!
ルナ 「……理由はどうあれ、存在しているものを存在していないと言う奴は嫌いよ」
悠介 「……なあ、ゼノは大丈夫かな」
あっさりと消された死神が少し哀れに見える中、これで終わったかと考える。
答えは多分、心配している通りなんだと思うけど───。
ルナ 「大丈夫でしょう。
ハンターに1と2の境があるとしても、
その境がハンパじゃないから今までゼノも消されなかったんだし」
悠介 「いや、もしイレイザーってやつの2番が来たら……」
ルナ 「……それはちょっとマズイわね」
悠介 「ええっ!?」
ルナ 「悠介、行くわよ掴まって!早く!」
悠介 「え!?あ、ああっ!」
むにっ。
ボガァッ!!
悠介 「いてぇっ!」
ルナ 「どこ掴んでるのよっ!」
悠介 「今のは不可抗力だろっ!?お前が急かしたりするから!
それよりお前が殴るな!頭ヘコむかと思ったわ!」
ルナ 「ああもうっ……!」
悠介 「うおっ!?」
フレイアは俺を抱きかかえて空を飛んだ。
悠介 「お、おいっ!男がこの体制ってすっごい情けないんだが!」
ルナ 「そんなこと言ってる場合じゃないの!
イレイザーの2位っていうのはちょっと手に負えないのよ!」
悠介 「なに……?」
ルナ 「イレイザーは全体的な能力がハンターを超えた者のことを云うの!
ゼノもハンターの位なんてとっくに超越してたけどハンターのままでいた!
その理由がなんなのかは解らないけど、
そうなるとどっちが勝つかなんて解らないわ!
ゼノがハンターを超越しててもイレイザーの2位───
ヴァンゲルツ=ゲートルより能力が高いとは限らない!」
悠介 「どうでもいいけど死神ってスゴイ名前の奴ばっかりだな」
ルナ 「そんなこと言ってる場合じゃないのっ!」
悠介 「解ってるっての!
ていうかお前こそゼノが何処に居るのか解って飛んでるのか!?」
ルナ 「───」
ピタッ。
悠介 「……ま、まさか、だよな?」
ルナ 「ええ、そのまさか」
悠介 「うわあぁああっ!」
ルナ 「まあ大丈夫でしょ。
考えてみればどうしてわたしがゼノなんかのことで焦らなくちゃならないのよ」
ゼノ 「まったく同意だ。貴様に心配される筋合いなど皆無だ」
悠介 「ゼノッ!無事だったのか?」
ゼノ 「無事?……まったく、敵を敵として見ない者も困ったものだ。
言わせてもらえばヴァンゲルツなど相手ではない。もう片付けた」
悠介 「早ッ!」
ゼノ 「まったく……フリーパスとやらが燃え尽きてしまったではないか。
中々の余興だったのだがな」
そこでそれの心配かよ。
口周りにソース(多分、ヤキソバかなんかの)をつけながら口惜しそうにするゼノ。
なんだか呆れるとともに笑いが込み上げてきた。
悠介 「とっ……!ところで……もう死神は居ないのかな」
ルナ 「居るわよ、ゴロゴロと」
悠介 「なぁっ?!」
ルナ 「まあ安心しなさい。
あの建物の裏で吸血鬼に皆殺しにされてるところだから」
悠介 「うわっ……またキレたのか……?あ、そういや彰利は?あいつも戦ってるか?」
ルナ 「いいえ。どうやらあのサクラって娘を回復させたのが限界だったみたいね。
今襲われたら彼───間違いなく負けるわよ」
悠介 「───!それって……月操力の使いすぎってことか!?」
ルナ 「そういうこと。ここに来る以前に既に尽きかけていたみたいだけど」
悠介 「あの馬鹿っ……!ル───フレイア!彰利の場所に連れて」
ゼノ 「ここは我が行こう。純粋なる敵が居なくなるのは我としてもつまらぬ」
言うや否や、ゼノは猛スピードで視界から消えた。
悠介 「だ、大丈夫かな……」
ルナ 「ヴァンゲルツを消せたなら現時点での黄泉には勝てる奴は居ないわ。大丈夫よ」
そんなに強かったのか、あいつって……。
戦ってた自分が馬鹿に思える……。
ルナ 「……あ、そうそう」
がしっ!
フレイアが空を掴む。
と、そこからズルゥリと黒い物体が───って死神!?
死神 「ぬう……貴様の横を通過することは愚かな賭けだったか……!」
ルナ 「ウィルヴスに伝えなさい。
せこせこやるくらいならかかってこい、ってね。喜んで相手になるわ」
死神 「ほざけ、黄泉を見限った貴様らがウィルヴス様に意見とは片腹痛いわ」
ルナ 「そう。ならそんな痛むだけの片腹なんていらないわね?」
ゾボッ!
死神 「がはっ───!?」
ルナ 「伝言さえ出来れば用は無いわ。
あなたたち意思の無い死神を見ていると気持ち悪いの。消えなさい」
死神 「……この痛み、憶えておくぞ」
ルナ 「返り討ちよ、バーカ」
スゥ……。
死神が、消えた。
悠介 「───ウィルヴスってのは?」
ルナ 「ウィルヴス=ブラッドリア……死神を統括してる馬鹿死神よ。
その次のお偉いさんがシェイド=エリウルヒド。
ルナが悠介の記憶を封印するために訪ねた死神よ。
って言っても彼も暇な人だから頼まれたらなんでもやるわ。
記憶操作や記憶の植付け、果ては殺人や同属殺しまでもね」
悠介 「………」
ルナ 「まあ間違ってもふたりとも来ないから。
馬鹿な戦いはしないやつらだから大丈夫よ。特にシェイドはね」
悠介 「強いのか?そのふたり」
ルナ 「───」
俺の質問に、フレイアは顔を険しくさせる。
ルナ 「……強いわ」
そして出てきた答えは予想を上回る寒気を感じさせた。
ルナ 「ウィルヴスは伊達や酔狂で死神統括者を名乗っているわけじゃない。
実際に強いからこそそういうことを公言できるし、統括も出来る。
わたしとぶつかって───そうね、わたしが三人居れば勝てるかも」
悠介 「……そんじゃあゼノとセレスと力を合わせれば勝てるんじゃないか?」
ルナ 「かもね。シェイドが向こうに助力しなければ」
悠介 「なるほど、そいつは随分な気紛れなヤツなわけだ」
ルナ 「そゆこと。じゃ、降りますか」
悠介 「ああ」
スー……トン。
悠介 「ふう」
ルナ 「それで話は戻るんだけど」
悠介 「戻る?なに?」
ルナ 「ママって呼んでく」
ドシュゥン!ズドドドドーッ!
ルナ 「───え?」
俺は逃げた。
全力で逃げた。
ルナ 「えっと……あ、ま、待ちなさいっ!」
おお、この吹き抜ける風のなんと心地よいことよ。
願わくばこのまま見つかりませんように───
彰利 「……イヤー、タスカッタワー」
ゼノ 「思ってもないことは言わぬことだな」
彰利 「ソンナコトネェゼー?オレサマカンシャシマクリダゼー?」
ゼノ 「……フン」
彰利 「それよか何事よいきなり。なんか人質に任命されそうになったんだけど」
ゼノ 「実力では勝てぬと判断してのことだろう。力が無いのなら粋がるな。死にたいか」
彰利 「やかぁしい、俺だって好きで力消沈させてるわけじゃないんだよ。
逝屠を消した後に悠介に触れられてからというもの、
なぁ〜んか力が押さえられちまってなぁ。まあ二日も寝てれば治るだろうけど」
ゼノ 「───」
彰利 「ウィ?どした?」
ゼノ 「上だ」
彰利 「上?おお、誰コイツ」
ゼノ 「ハンターの5位、マルス=ベルグリオだ」
マルス「久しいな、ゼノ」
ゼノ 「ハンターが仕掛ける前に気取られるとは、愚かだな」
マルス「違いない。だが負ける要素は」
彰利 「彰利サミング!」
トチュッ♪
マルス「ぐあぁああああああっ!!」
彰利 「さてさて奏でようか、癒しの調べを。月奏力───」
ゼノ 「む───?」
楽器も無いのに流れる曲。
誰のでもない、弦月彰利という者の力が奏でる調べが、その場を支配する。
彰利 「───うし、多少強引だけどこれで少しずつ回復する筈だ。
ああ、それまで時間稼ぎよろしく」
ゼノ 「時間稼ぎ───?」
彰利 「この曲さ、演奏者を回復させることに長けている他、
───実は、人であらざるモノを呼び寄せる効果もあるんですわ」
ゼノ 「───」
言ってるそばから壁や床や天井からズルズルと浮遊霊や死神やらが現われる。
ゼノ 「こっ───小僧!貴様!」
彰利 「退屈しのぎにはもってこいだろ?ガンバレー」
ゼノ 「ぬぅううう!」
悪霊 「ケヒャーッ!」
ゼノ 「チッ……身の程を知れ───ダークスライサー」
ヒィンッ!
悪霊 「ケ……?」
ゼノ 「細霧と化して消え失せよ───」
悪霊 「ケェエーッ!」
ボシュンッ!
彰利 「へぇ、あんさんにも鎌あったんかい」
ゼノ 「当然だ。他とは少々違うがな」
彰利 「?」
ゼノ 「切り刻め。この場に存在する害なる者を残さず刻め」
ギキィンッ!
彰利 「───お?」
ゼノが命令を下すと、鎌は闇に溶けて見えなくなった。
かと思いきや、闇から無数の刃が飛び出し、悪霊や死神を八裂きにしていった。
ゼノ 「我が刃は闇そのものだ。
我が手を下すまでもない、楽しめぬ相手なぞこれで十分だ」
彰利 「………」
5分と経たず、その場に静寂が訪れた。
ついでとばかりに消されたハンター5位が可哀想に思える。
ゼノ 「いつまでそうしている気だ。もう治ったのだろう?」
彰利 「いや、あともうちょいだ。まあでも、歩きながらでも回復するか」
ゼノ 「ではもう貴様だけで十分だな?」
彰利 「おう、余裕余裕」
ゼノ 「そうか。ではそこに一匹残してある。せいぜいリハビリでもするのだな」
彰利 「はい!?」
振り向けば死神さん。
ゼノ 「強さは監視者クラスだ。普段の貴様なら楽に屠れるだろう」
彰利 「その強さの基準がまず解らんが───まあいいっしょ。
さあ、どこからでもかかってきなさい」
死神 「…………人間?笑わせてくれる。ゼノ、貴様もヤキが回ったものだな」
彰利 「フェイスフラァーッシュ!」
ギシャーッ!
死神 「ぐああっ!目、目がッ……!目がァアアッ……!!」
彰利 「貴様を屠るゥ……ッ!このッ───俺の一撃ィッ!
クリティカルブレェエエエドッ!!と見せかけて貫手」
ドシュッ。
死神 「ガッ───!?」
彰利 「ア〜ンド、月聖力♪」
死神 「グアァアッ!ギャアアアアアアッ!!」
ボシュンッ!
彰利 「ホレ、ざっとこんなもんだ」
ゼノ 「腹を貫いてからの聖なる力か。内側から放たれたのでは抗いようがないな」
彰利 「ホントは六波返ししたかったんだけどね。死神に効くかどうか解らんし」
ゼノ 「よく解らんがな。その調子ならば大丈夫そうだ」
彰利 「だろ?ホレ失せろ失せろ。男が付き添いだなんて冗談じゃねぇやい」
ゼノ 「フン、言われるまでもない」
言葉通り、すぐにゼノは消えた。
彰利 「……マズったな。強がりは言ったものの……」
どうやら、さっきので限界だったみたいだ……。
ま、まあ歩けるだけマシか。
もう遅い時間だし、とっとと帰るかな……。
死神 「───……」
彰利 「───!」
たはぁ、最悪……!
どうしてこういう時にばっか死神と遭遇するかねぇ……!
俺は廊下から出てきた死神を凝視する。
なんとなく感じるところの、コイツはさっきのヤツより弱い。
頑張ればなんとかならんでもないが───
彰利 「拳だけってのが問題だよな……」
姿消されたらそれこそ対処のしようがない。
死神 「キ、キキキ、キ───」
彰利 「わぁ、しかもイッちゃってる系の死神さんだぁ」
死神 「キーッ!」
彰利 「ええいままよっ!」
ブォッ!
彰利 「あ、あらー……───!」
ハズした───ヤバッ!
死神 「キィッ!」
彰利 「まま待てー!俺にはまだやり残したことがーっ!」
死神 「キッ!?」
ピタッ。
彰利 「───お?」
あ、あら?動きが止まった───?
ああもしかして、イッちゃってはいるけど心やさしい死神とか?
死神 「キキーッ!」
彰利 「って、んなわけねぇだろーっ!!」
叫んだ死神と距離を取る。
が、何故か襲ってこない。
死神 「キ?キキ?」
なにやら首を振っている。
自分の手足を見ているようだ。
……アホ?
声 「あなたのやり残したことというのがどんなことかは知りませんが───」
彰利 「ウィ?」
若葉 「知人が死ぬところは見たくないものですからね」
彰利 「わ、若葉ちゃーんっ!」
ってことはこの死神さん、月影力で操られてるの?
木葉 「無謀の極みだクズ野郎。強がりは自分の力量を測った際にするべきです」
彰利 「裏モード!?
ていうか仕方ないじゃん、あいつに守られるなんてしゃらくせぇやい」
木葉 「それで死んじゃあ元も子もねぇだろうがボケが……」
彰利 「あ、あのさ木葉ちゃん……その喋り方、やめようよ……」
死神がゴシャーッ!と物凄い勢いでバレエ式大回転を強制されている中、俺は意見を
木葉 「やかましいです、貴様に指図される憶えはねぇですよ」
彰利 「うう……」
結構キツイんだけどなぁ。
そう思って落ち込む。
そんな状況においても、死神はゴシャーアーッ!と勢いを増している。
死神 「キ……キキーッ!」
ゲフゥッ!キラキラキラ……
若葉 「キャーッ!?」
大回転していた死神が吐いた。
おお、死神でも吐くのか。
まあ考えればアレだな、黄泉って世界があるとして、
その住人がこの世界に来るならこの世界の断りを少しは守らなきゃならんのだろう。
ならその守る部分をなりそうにないことで落ち着かせたわけか。
そら吐くわな。
未だ吐きながら大回転している死神を前に、
俺はなんだかそいつが他人に思えなくなってきた。
でも他人だからいいや。
死神 「キッ!キ───」
ゲフゥッ!ゴフゥッ!えれえれえれ……
どしゃあ。
あ、死んだ。
痙攣しながら嘔吐を続ける彼の周りが危険地帯へと変貌する。
彰利 「今のうちに悠介達と合流しよっか」
若葉 「仕切らないでください」
彰利 「いや、俺はただ助言を」
木葉 「いきましょう姉さん」
彰利 「こ、木葉ちゃ〜ん……」
急ぎ足でさっさと行ってしまうふたりを追いかける。
……はぁ、どんどん居場所が無くなっていく気がするのはアタイだけですか?
───校門に辿り着くと、そこにはみんなが居た。
春菜 「おかえり、悠介くん」
悠介 「ただいま。姉さん、どこ行ってたんだ?」
春菜 「出店巡り。途中で死神が出てきたからウサ晴らしもしたけど」
……ああ、そういやフレイアから逃げてる最中に光の矢が空に飛んでったっけ……。
もう感覚掴んだのかな。
覚えたてだっていうのによくやるよ。
ルナ 「……?あのさ、なんかわたし、ここに来た憶えがないんだけど」
…………
ルナ 「悠介?」
悠介 「ルナ、だろうな?」
ルナ 「なに言ってるの?当たり前じゃない」
悠介 「こやつの名は?」
ルナ 「ゼノ=グランスルェイヴ」
悠介 「こやつの名は?」
ルナ 「ホモっち」
彰利 「本名訊いてんでしょう!?俺いつからホモっちが本名になったの!?」
悠介 「こやつの名は?」
ルナ 「ネッキー」
セレス「殺しますよ……」
悠介 「……よし、ルナだ」
ルナ 「ねーねー、なんのこと?どうしてわたし、こんなところに居るの?」
ゼノ 「安心しろ小僧、フレイアは来たる時まで休むそうだ。
力を蓄えておかねばウィルヴスが来た時に対処出来そうにないと」
ルナ 「……あ、そういうこと?フレイア起きたんだ」
悠介 「親を呼び捨てか?」
ルナ 「親っていうよりは原型って言った方が型にはまるのよね。
だから母親とか、そんなものじゃないのよ」
……フレイアはそうは思ってなかったみたいだけどな。
いや、あれはあれでただ単に俺をからかっていただけとか……?
悠介 「ルナ、もしフレイアに『ママって呼んで』とか言われたらどうする?」
ルナ 「対面出来るなら間違い無く殴るわ」
うおう……。
若葉 「おにいさま、それよりも帰りましょう。この学校の生徒に迷惑がかかります」
悠介 「直接俺達が悪いわけじゃないのになぁ」
木葉 「そうです、全てはそこの死神が悪いのです」
ルナ 「な、なんでわたしだけ見て言うのー?」
水穂 「……また何か違法をやってのけたとか」
ルナ 「うぐっ!ち、違うわよ!そんなことしてないわよ!」
根に持ってるなぁ水穂。
散々振り回されたから、その仕返しか。
ゼノ 「神社へ移動するのか?今度はそこが戦場になるのだぞ?」
悠介 「他者の持ち物破壊するよりはマシ。それに死神とかも来るとは限らないだろ」
ゼノ 「ふむ……」
悠介 「んじゃ、帰りますか」
一同 『おーっ!』
こうして波乱万丈?な文化祭は終わった。
ていうか終わりにした。
どうしてこう楽しい時ってのは邪魔者が入るものなのか、俺はそういうことを知りたい。
幸い負傷者が居なかったってことだけはOKってことにしないとな。
例の如く少々疲れながら帰路を歩いていると、ふとルナが空を見て言った。
ルナ 「あ、瘴気が消えた」
と。
ルナも感じてたってわけか。
どうやら死神さん達は諦めてくれたらしい。
そんなことを考えていると、今度は彰利が思い立ったように足を止めた。
悠介 「どした?」
彰利 「いや、そういやさぁ」
悠介 「ああ」
彰利 「……雪子さん、全然見かけなかったなぁ……」
悠介 「あ゙……」
今頃思い出した。
まあ会ったら会ったで面倒は避けられなかったんだが、
最初の頃は挨拶するくらいはしようとか考えてた。
うん、考えてた。
ところがドッコイ、さらりと忘れてしまってました。
彰利 「……よし、俺達は文化祭には行かなかったぞ?」
悠介 「そ、そうだな。行かなかった」
いくら彰利でも、ここまでしてしまえば訪れるのは怒号だと予感していた。
ようするにどれだけ大人になったところで、怒られるのが好きなヤツなど居ないのだ。
悠介 「いや、いっそどこかへ逃げてやりすごすのもアリだぞ」
彰利 「しかしそうなるとマッスル物語が」
既に謝るどころじゃなくなっている自分達もなかなか面白いと思える最近。
とりあえず俺達は今の暮らしが崩れない程度の平穏を保ち、笑いながら歩く。
先の見えない物事で悩み続けるわけにもいかず、結局は死神の件もすぐに忘れた。
───そんな季節の中。
再び面倒事が訪れることなど、この時の俺は微塵にも気付いてなかった。
ていうか気付ける方がどうかしてるのだ。
神じゃあるまいし先読みなんて出来るわけがない。
それがどうして。
……まさか、彰利があんなことになるなんて……。
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