それは昔の物語。
当時のわたしは何も知らないお子様で、
知っているものといえばくだらないママゴトだった。
時々に思う。
自分は何のためにこの家系に産まれたのだろう、と。
いつだってつまらないと思っていた。
こんな道はいらないと思った。
なんの為に生き、そしてなんの為に死ぬというのだろう。
自分にはそれが解らなかった。
そうして、自分は生きてきた。
それがわたしの生きる糧だったから。
なんの為にこんな能力があったのか。
どうして嫌われなくちゃならなかったのか。
それさえも、わたしの中では答えに至らず……霧のままだった。
そうして生きていく中……中学3年の秋に。
わたしはひとりの少年に出会った。
それは小さな噂だった。
ニ年生の男子生徒。
その子が何も無い所からハトを出したりするのだという。
ただのマジックじゃないかと、その時は笑ってみせたけど……
そのことを話す人は皆、どこか胡散臭そうな顔をしていた。
みんながみんな、ただの噂だろうとは言っていたけど。
だけど……自分にも特別な能力があったから、簡単に噂だとも思えなかった。
……会ってみて。
名前を聞いて、わたしは驚いた。
いや、納得したのかもしれない。
確かに親族の者なら、特別な能力があってもおかしくない。
この人となら、解り合える気がした。
けど、彼が最初に見せたのは小さな拒絶だった。
当然だろう。
わたしだって自分の力を知られた後に、傍に居てくれる人など居なかった。
相手の能力がハトを出すだけだと言っても、
それはタネがあるから受け入れられるわけで、
タネも無しに生き物を出すことは普通の人にとっては異形の力でしかない。
だから、わたしはこの孤立を望む少年と友達になりたいと思った。
自分の家系を自らの言葉で明かし、そして友達になろうと、と。
彼はそう言って手を差し伸べるわたしを見て、悲しい表情をしたのち、
その場で能力を見せてくれた。
何も無い指で作った輪から一羽のハトが飛び出て、わたしの肩に留まる。
その突然の出来事に、わたしは小さな悲鳴を上げてしまった。
あっ、と思った時にはもう、遅かった。
そうなることを予想していたような悲しい笑い声。
少年は言う。
軽い気持ちで俺に近づかないでくれ、と。
その言葉は、自分の中に本当に染み入る言葉だった。
かつて、友達だと思っていた人に自分の能力を教え、そして嫌われた事実。
そして、そのことを皆に言い振らされた事実。
わたしも言ったことがある。
軽い気持ちでわたしに近づかないで、と。
だから、その言葉を放つ孤独の意味がわたしにはよく解った。
だから、その場を去ろうとする少年の手を掴み、こう言った。
びっくりしただけだよ、と。
でも、あくまで返ってくるのは拒絶の言葉。
ああ、本当にひとりで抱えてきたんだ。
そんな少年に親近感を覚える。
こんな感情は本当に久しぶりだ。
大丈夫、怖がらなくてもいいよ。
わたしもひとりだから。
気がつけば、そんな言葉を口にしていた。
その時、彼の拒絶が少し緩んだ気がした。
……と、ここまでは良かった。
良かったのに……ひとりの男子生徒が現れた。
その男子生徒は目の前に居る少年に親しそうに声をかける。
誰だろうと思った時、彼が自分で自己紹介を始めた。
……と、友達?
そう、自分は少年の友達だ、と言う。
そっか、ひとりじゃなかったんだ。
……そっか。
その時だ。
頭の中でなにか、黒いものがちらついたのは。
人が苦労して分かち合おうとしてたのに、あっさりと友達だと言う。
早く言えば……嫉妬と言えるのだろうか。
友達が居るというのに、わたしは受け入れてくれないという事実に腹が立った。
……その後の展開といえば……。
あまり思い出したくないとはいえ、かなり恥ずかしいものだった。
多分、目の前で少年の肩に手を回し、
あからさまに親しそうに話す男子生徒に対抗したんだと思う。
気づけばわたしは、孤独である筈だった少年の腕に抱き着いていた。
少年は何が起きたのか解らないといった顔をしたあと、
徐々に状況を理解、把握したのか、顔を真っ赤に染めてゆく。
……あ、カワイイ。
なんてことを思う自分も、自身の顔が灼熱しているのを感じる。
それは本当に静かな学園生活の中の風景で。
自分にはまだ、そんなことが起きる時間が訪れるんだという事実がとても嬉しかった。
他の誰でもない、この少年とだからこそ、分かち合える瞬間。
そんな事実が頭の中で弾けた途端、わたしは本当に久しぶりに声をあげて笑った。
少年は未だに恥ずかしいのか、おろおろするばかり。
恥ずかしさも手伝って、わたしは半ばヤケクソになって笑い続けた。
視線の傍らでは「俺の悠介に何すんだ」とか叫んでる男子生徒。
なんかもう、気持ち任せにいろいろ見せびらかしてやった。
悔しかったのか、男子生徒はもう片方の少年の腕に抱きつき、わたしと睨み合った。
……本当に懐かしい、騒がしいけど楽しくて、穏やかな日常。
やがて思いきり深い溜め息を吐いたあと、少年は手を差し伸べようとする。
が、男子生徒がそれを許さなかった。
空いている頭で頭突きをして、男子生徒を黙らせたあと、
改めて観念したように、後悔しないって約束出来る?と訊ねてくる。
もちろんわたしは自信をもって頷いた。
それからわたし達は学校での時間を共に過ごす。
相変わらず男子生徒は邪魔だとか思ったりもするけれど、毎日はとても楽しい。
……何か、涌きあがる感情をおぼえた。
もっと一緒に居て、笑いたいな、と。
そしてその次の瞬間には行動を起こしていた。
と言うのも、悠介くんの言葉がきっかけだったのだけど。
なんでも毎日、自分は料理当番やら掃除やらをしているのだと。
家政婦さんでも居ればなぁ、などと軽い冗談を言う。
それに、わたしは名乗りを挙げた。
わたしとは反対側の悠介くんの隣で、
同じく名乗りを挙げようとした男子生徒を独断と偏見と実力行使で黙らせ、
わたしは悠介くんに詰め寄った。
彼はというと、本気にされるとは思ってなかったのか、
あっけにとられて、でもすぐに口を開く。
妹達が許せば、是非お願いしたい、と。
……結果からしてみれば、それはひどく悲しい勝利だった。
確かに採用はされたものの、何か納得がいかない。
わたしが作った料理を目の前の兄妹が食べた途端、状況は落ち着いた。
涙目で席を立つ悠介くんと、何故か無二の親友に出会ったような顔をする双子の姉妹。
……まあ、結果良ければ全てよし。
こうしてわたしは晦の家の家政婦さんとなりました。
───さあ、頑張ろっか。
ここがわたしの、新しいスタートラインだ───……
───能力───
声 「あ、悠介……気がついた……?」
そんな声に、俺はハッとする。
聞こえた弱々しい声は足元からだった。
悠介 「ル、ルナッ!?」
ルナ 「ご、ごめんね、人間には魂結糸の儀式は……
負担がかかるって言い忘れてた……」
倒れたルナを踏みつけてるのは間違い無く吸血鬼のセレスさん。
暴走してるけど。
ルナ 「まいったわ……。伊達に千年生きてないわね……。
再生能力が尋常の領域を遥かに越えてるのよネッキーったら……」
言って、大鎌を出現させ、セレスの足を切る。
音も無くその鎌は通り、セレスの足はその場に倒れた。
ルナ 「くぅっ……!」
その隙にルナは俺の傍に身を逃がす。
悠介 「……ま、まじかよ……!」
が、俺はそれどころじゃなかった。
目の前に起きている現象はどうとも言えない。
本当の意味で『化け物』。
悠介 「……っ!!」
さっき倒れたと思った足は既に切断面に付着し、その傷の痕すら残していない。
さてどうしよう。
頭の中はパニックしながらも冷静だ。
幼年期の出来事って貴重だよな。
こういう事態に少しは免疫が出来てるみたいだ。
で、だ。
少しは距離を取ってはみたものの、これからどうしろと。
って、そうだ。
悠介 「ルナ……。打開策があるって言ってたよな?」
ふと思い出した。
ルナ 「あるけど……なんかあまり期待できそうにないのよね」
悠介 「なんでもいい!教えてくれ!」
ルナ 「ん……ニンニク」
なるほど。
そうか、その手があった。
悠介 「よっしゃあ!ニンニクがうひょおおおおおおおっ!!」
出そうと構えた瞬間、セレスが唸りをあげながら跳びついてきた。
それをルナが弾き、なんとか体勢を整える。
ルナ 「どう?出来そう?」
悠介 「……いや、こりゃ無理だわ……」
今は助かったが、次出そうとしたら胴体と首とがお別れしてしまうかもしれない。
それほど、ニンニクに対して敵意を込めている。
ルナ 「まいったわね……どうしよう……って、あ、あれ?」
ルナが妙な声を出す。
悠介 「な、なんだ?どうかしたのか?……って、あら?」
俺もそれにならった。
理由としては、目の前の不自然な状況。
先ほどまでその場に居た吸血鬼のセレスさんが居なくなってるではありませんか。
悠介 「どうなってんだ一体……」
ルナ 「……っ!?悠介!後ろっ!」
悠介 「へっ?」
バッ!と後ろを振り向く。
そこには……
悠介 「き、霧ぃっ!?」
霧が集結して、人の形を作り上げてゆく。
悠介 「な、なんでもアリってか!?卑怯だぞチミィッ!!」
非難の言葉を挙げてみても無意味だった。
ヤバい状況なのにイマイチ緊迫感に欠けるのはどうしてか。
今はそんなことを考えてみました。
ルナ 「ゆ、悠介!!」
悠介 「今度はなんだっ!」
その場を大慌てで離れ、ルナに向き直る。
と、ルナの視線は青い空。
悠介 「?」
見上げた先にはコウモリ。
……まさか。
まさかねぇ。
なんてことを、コウモリが俺に向かって飛んでくるまでは考えていた。
悠介 「うわぁああああっ!!もろ吸血鬼じゃないかっ!」
霧はダミーだったらしく、すぐに消えた。
ルナ 「悠介っ!!」
ルナがコウモリを撃墜しようと前に出る。
ルナ 「っ!?」
が、その動きが止まる。
ルナ 「な、なにっ!?」
動きを止めたのは、彰利だった。
フットボーラー並のタックルを駆使し、ルナの行動を止めた。
ルナ 「なっ!なにするのよ離しなさいよ!
わたしに触れていいのは悠介だけなんだからねっ!!」
どさくさに紛れてなんか妙な誤解を招きそうなことを言ってる。
ルナ 「はぁぁああなああせぇえったらぁああああ……っ!!」
力を振り絞って彰利を引き剥がそうとする。
が、離れない。
ルナ 「う、嘘……。
いくらハーフだからって、死神の力が人間に負ける筈……!」
そうだ。
なんかおかしい。
俺がルナと会って、逃げ出した時……床に押さえつけられた時だけど、
どんなに抵抗しても動けなかった。
いや、確かに彰利は妙なパワーがあるけど、それでどうにかなる力じゃ無かった。
と、いうことは、だ。
ルナ 「……あ」
ルナが愕然とした声をあげる。
ルナ 「魅了されてる……」
彰利の目を見て、そう言う。
ルナ 「もう!なんなのよこの馬鹿ヒューマンはぁっ!!
助けるんじゃなかったぁっ!この馬鹿!変態!離しなさいよ!!」
悠介 「横文字は癖だぞルナ〜」
ルナ 「それどころじゃないわよぉっ……って悠介!」
悠介 「急かしてくれるな!今逃げながら策を練っている!」
全速力で逃げながら考える。
おう、そうだ!
悠介 「これがあった!くらえぃゃあっ!!」
コパァァアアアアン!!
ポケットに入れておいたスリッパを思いきり振り下ろした。
朝、ルナを叩いたスリッパだ。
こんなこともあろうかと携帯してた甲斐があった。
コウモリは地面……と言うよりは石畳に叩きつけられ、少しフラついている。
やるなら今だ。
イメージしろ悠介……!
ニンニクだ!そしてそれを奴に悟られてはいけない!
膨らんだイメージを弾けさせようとしたその時、
コウモリが人型になり、襲いかかってきた。
悠介 「ひっ……!」
動こうとしても間に合わない。
相手の方は俺が防御しようとする行動よりも遥かに速く、
正確に俺の喉もとを狙う。
……ッ!!死ぬ!!
死ぬ覚悟なんて決めてやらない。
でも、殺されると思った瞬間、吸血鬼の体は大きく吹き飛ばされていた。
悠介 「……え?」
見てみれば、セレスは遠くにあるご神木にめり込み、ぐったりとしている。
悠介 「……は、はぁあ……」
助かった……んだよな。
そう理解すると、俺はその場にしりもちをついた。
悠介 「助かったよルナ……」
そう声にして、振り返った。
ルナ 「………」
が、ルナはまだ彰利と格闘中だった。
アレ?
じゃあ……
声 「やほー、元気してるかな?悠介くん」
そんな声に思いきり振り向く。
悠介 「せ、先輩!?」
春菜 「うん、麗しの春菜先輩ですよ〜」
言って、おどけてみせる。
悠介 「え?あれ……!?あ、あれ、先輩が……!?」
春菜 「他に誰か居る?」
悠介 「………」
ぐるぅりと周囲を見渡しても、ルナと彰利くらいしか居ない。
春菜 「アンダスタン?」
悠介 「……信じるしか、ないってわけね……」
知らなかった。
まさか先輩がこんな『馬鹿力』だったなんて。
春菜 「……悠介くん?今……とてつもなく失礼なこと思わなかった?」
悠介 「ごめんなさい、思いました。
そしてもう思いませんからその握り拳は勘弁して」
彰利な気分だ。
春菜 「素直でよろしい。
言っておくけど、わたしのは腕力じゃなくて能力だからね。
そこらに居る吸血鬼や死神や馬鹿力男子ホモ生徒と一緒にしないでね?」
悠介 「死神って……見えてたのか先輩!」
春菜 「ごめんね、無害そうだったから、あえてとぼけて見せたんだけど……」
悠介 「………」
してやられた。
確かに、親族の中には極稀に強い能力を持った者が生まれるとか、
そんなことを訊いたことはあったけど、まさか先輩がそうだとは……。
春菜 「こんな変な能力持ってるけど、出来れば嫌わないでね。
もう孤独を感じるのだけはイヤだから……」
怯えたような顔で言う先輩。
そっか。
この人も自分の能力の所為で孤立してたんだ……。
悠介 「何言ってるんだよ先輩。
その力のおかげで今、俺は助かったんだから。
感謝することはあっても嫌うことなんてないよ」
春菜 「悠介くん……」
ルナ 「あぁ!ちょっとそこぉっ!なにいい雰囲気出してるのよっ!
悠介はわたしを幸せにするんだから!離れなさいよっ!!」
春菜 「……あ、そうだった。
悠介くん、あの死神さんとはどういう知り合いなのかな」
悠介 「ん……昔、小さいころに命を救ってもらったんだ。
そして今も、彼女が居ないと俺の命は消えてしまう。そういう関係」
春菜 「死神が人間を助ける……?」
ちらりとルナを見る先輩。
春菜 「やさしい死神なんだ」
悠介 「独占欲、強いけどね」
ルナ 「……!話はそこまで!来るわよ!」
悠介 「え?」
言われて、ご神木を見てみる。
が、そこにはセレスの姿は無い。
悠介 「し、しまった!つい談話してしまったぁっ!」
春菜 「しっ!静かに……!」
悠介 「え?あ、うん……」
先輩は手に持った長いバッグのようなものを石畳の上に置き、
それを開け、中のものを取り出す。
春菜 「……しょ、っと」
取り出したものが何かと言えば……大きな弓だった。
それを構え、長い破魔矢を握る。
悠介 「せ、先輩……?まさかそれで……?」
春菜 「まさかもなにも、そうだけど」
悠介 「無茶だ先輩!相手はとんでもなく速いんだぞ!?
それに何処に居るのかも解らないのに」
ボカッ!!
悠介 「アウチ!」
春菜 「黙って。気が散る」
悠介 「………」
先輩の集中力が極限まで高められていくのが、なんとなくだけど解る。
神経を研ぎ澄ませ、相手の行動を読み取ろうとしている。
気の所為か、破魔矢が光っているように見える。
……完全な沈黙が訪れた。
まるで先輩が自分の領域を作ったかのように、あたりの空気が凍る。
止まっていた息を吸おうと思った時、風も無いのに落ち葉が空に舞い上がった。
春菜 「! そこっ!!」
小さな音と共に、破魔矢が風を裂く。
そして……バッガァアオオオオォォォォンッッ!!!!!!
セレス「グゥォォオオオオオオオオオオッ!!」
セレスの姿が見えたかと思うと、その体は大きく吹き飛ばされていた。
春菜 「うん、上出来」
先輩はふぅ、と息をついたあと、セレスが倒れている場所まで歩いていった。
セレス「ウ……グゥゥ……」
セレスはガクガクと震えている。
先輩が恐ろしいというわけでは無く、おそらく破魔矢に込められた『力』のためだろう。
なんにせよ、落ち着いてくれればこちらもやりやすい。
悠介 「俺の血液が少しずつ出ます」
指で穴を作り、そこから自分の血液を出す。
もうひとつのイメージで、自分の血を血管内に創造するのも忘れない。
春菜 「………」
悠介 「ん?どうかしたか先輩」
春菜 「ハト以外にも出せたんだ」
悠介 「ああ、俺も気づいたのは最近なんだ」
春菜 「ん〜……ね、悠介くん。気づいてる?」
悠介 「なにが?」
春菜 「やっと敬語、やめてくれたね」
悠介 「え?あ、言われてみれば……」
なんというか、あまりに衝撃を受けたから、そんなことに気を使う余裕が無かった。
悠介 「しっかしなぁ……」
セレスの口に血を流しながら、ぼやいてみた。
春菜 「どうかしたの?」
悠介 「先輩ズルいぞ。そんな力があるなんて聞いてなかった」
春菜 「……怖かったのが第一だよ。
見せて、怖がられたらどうしよう、って。
場合が場合だから使っちゃったけど……うん、後悔はしてないかな」
悠介 「そりゃ良かった。助けてもらって後悔されても困るしね」
春菜 「あはは、それもそうだね」
ふたりして笑った。
ルナ 「ちょっと〜……。笑ってないでなんとかしてよ〜……」
彰利 「ああ、女人のフローラルな香り……」
ルナ 「! あなた正気に戻ってるんじゃない!離れなさいよ!!」
ごしゃっ!!
彰利 「ぶべいっ!いきなり何故ッ!?」
ルナ 「悠介〜!」
空を飛んで、俺の傍までやってくる。
が、そこまでだった。
春菜 「ハイ、それ以上近づかないでね死神さん」
破魔矢をルナの眉間に突きつけ、にっこりと微笑む先輩。
ルナも突然のことだったのか、対処できなかったみたいだ。
春菜 「最初に言っておくね。
家系がどうこう言うのは好きじゃないけど、
わたしは異形退治の家元、そしてあなたは死神。
争いたいわけじゃないけど、それは変わらないからね。
もし害を成すと理解したその時は……」
ヤバイ。
目がマジだ。
いつもの、ぼけ〜っとした表情じゃない。
ルナ 「わたしを消したら悠介も死ぬけど?」
春菜 「……それもそうだね。
じゃあ、休戦ということにしようかな」
ルナ 「ちなみにそこの暴走吸血鬼のネッキーを消滅させるなら協力するけど」
春菜 「それは無理だよ。
悠介くんの体の中に、彼女のヴァンパイアウィルスの結晶があるの。
多分、彼女が死んだら溶ける仕組みだね」
悠介 「……はぃいっ!?ちょちょちょちょっと待て先輩!!
それって本当と書いて」
春菜 「マジと読むよ、残念だけど」
悠介 「………」
ルナ 「ネッキー……送り込んでないとか言ってたクセに……」
春菜 「どっちにしろ、自分達の力を使うことは無くなるんだから、
それでいいことにしないと」
悠介 「……冷静だねぇ、先輩……」
こちとら、衝撃かなんかでウィルスが溶けだしたりしないかと心配でしょうがないのに。
春菜 「……だといいんだけど」
ふと、先輩がよろめいた。
悠介 「先輩……!?」
春菜 「あ、大丈夫だから。
それより、ちょっとお願いがあるんだよ……」
悠介 「え……?」
…………
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