───大蒜───
もぐもぐ。
もぐ。
ずずっ……。
もぐもぐ。
……ごくん。
ふう、味噌汁が美味。
悠介 「……で?どうしてお前がここに居るんだ?」
彰利 「愛ゆえに」
悠介 「どうでもよくないから言うが、お前が前の席に居ると食いにくいんだが」
彰利 「いやいや、別に邪魔しに来たわけじゃない。
せっかくだからこれもどうだ?今日の弁当だ」
爽やかな顔をして、コサッ、と弁当の蓋を開ける。
彰利 「レタス盛だ」
悠介 「………」
彰利 「あれ?食わないのか?美味いぞ?」
シャリシャリ。
水洗いしてありそうなレタスをそのまま食う目の前の男性。
悠介 「お前……味付けは」
彰利 「邪道」
この前も言っただろう?と続ける。
言われたけどさ。
悠介 「はぁ、まあいい。
それよりお前に訊きたいことがあるんだ」
彰利 「スリーサイズはダメよ」
悠介 「寝言は寝て言えド阿呆。若葉と木葉のことだ」
彰利 「……悪いけど、それは話せない」
悠介 「……お前もか……」
彰利 「いつか時が来たら話すよ。それまでは俺からは言えない」
悠介 「………」
彰利 「ちなみに俺、更待先輩殿とは前に一度会ったことがあるんだよ。
……まあ、むこうは忘れてたみたいだけど。
でも最近になって俺を見る目が変わったからなぁ、
多分思い出したんじゃないかな」
悠介 「俺が訊いてるのは妹達のことだが」
彰利 「……あ、やっぱ逸れてくれない?」
悠介 「ふたりとも変なんだよ。
お前のこと話すと必要以上に怒るし。
で、そのことをみんなに訊いても知らない、教えられないの一点張り。
どうなってんだ?一体……」
彰利 「悪いな悠介。こればっかりは今教えるわけにはいかないんだ」
悠介 「……そか」
期待してなかったとはいえ、やはり妙な気分だ。
冷め気味のカツ丼をたいらげ、席を立つ。
悠介 「……ふむ、帰るか。お前はどうする?」
彰利 「ん」
大きめの弁当箱いっぱいに広がるレタス盛を見せ、シャリシャリと音を鳴らす。
ノルマを達成していないから、まだ居る、とのことだ。
悠介 「じゃあな」
軽く手を挙げて学食をあとにした。
…………。
……再び屋上に出る。
空を見上げて深呼吸して、腰を落ち着かせる。
フェンスの上にとまる小鳥のさえずりが、俺の耳をかすめていた。
悠介 「……隠し事の巣窟か……」
自身にも隠し事がある以上、自分だけ聞こうというのがそもそもの間違いだ。
『隠している』というのは『聞かれたくない』というものの同義語だと思う。
それは決して他人に踏み込んでほしくない領域ではないだろうか。
少なくとも俺はそう思っている。
たとえそれが自分の未来を危うくすると思ったとしても、
それはそれで構わないと今でなら頷ける。
悠介 「…………」
溜め息を吐いて、屋上のドア横の梯子を上り、その上に寝転がる。
見上げた空。
眺める蒼空。
飛行機が鳥のように、空に境目を作る。
もちろん境目なんてものは存在してなくて、俺がそういう見方をしただけだ。
この世には……目には見えないものがある。
それは感情だったり風であったり。
そして……人であるモノと、そうでないモノ。
自分はそれを見たことがあって、それをバケモノと思って後悔して。
でもそんな日常の中でいろいろな出来事に出会って、笑って、泣いて。
時には血を吐いたりもしたけど、それもまた今は笑い話だ。
怒りがないと言えば嘘になる。
だけどそれ以上に、今の状態が好きな自分が居たりする。
時々に思う。
子供の頃にあの親が居なければ、
俺はこうまで恐怖に免疫は出来なかっただろう、と。
人生、何が起きるかなんて。
何が悪いことなのかなんて、本当に最後の最後まで解らないものだ。
それはそれで良くも悪くもない。
それが自分にとって納得の出来るものであれば、俺はそれで構わない。
他人に笑われたって、自分で納得出来れば相手の意見なんて必要じゃない。
それなら俺は、勇気を持って『人』として生きよう。
いつか時が来て、一緒に居てくれた人にさよならを言う日が訪れたなら、
胸を張っていられるように……。
…………。
……。
……空が、静かな風を運んでいた。
ぼくの頬を撫でるように吹いては、
やがて見えない形を変えて、また別の何処かを目指して当ても無く消えてゆく。
ぼくはそんな風をもう何度も眺めてきた。
その度に消えかけた日常を手繰り寄せて、小さく泣いていた。
初めて涙を拭ってくれたのは誰だっただろう。
初めて頭を撫でてくれたのは誰だろう。
ぼくがぼくであることを教えてくれたのは……いったい誰だったんだろう……。
気がつけば自分が住んでいた場所は燃えていて、
崩れてゆく景色を見て、ぼくは泣いた。
幸せだった筈なのに。
心が、そう言って泣いていた。
『もう、あの頃には戻れないのかな』
「無理だよ。ぼくらはもう、あの時のような子供じゃない」
『子供かどうかなんて関係ないよ』
「そうかな」
『だって、ぼくはこのままででもお母さんとお父さんに会いたい』
「ぼくは会いたくない」
『どうして?』
「……ふたりは死んだよ。死んだんだ。
それがどういう意味か、ぼくらは知っている」
『そうだよ、会いたいんだ。だから……』
……一緒に死のうよ……
悠介 「うあぁあああああああああああああっ!!」
目を見開いて飛び起きた。
悠介 「……っ! はっ、ハーッ!ハー……ッ!」
イヤな夢。
自分と同じ顔をしたヤツに殺される、イヤな夢を見た。
悠介 「同じ顔……?いや……」
同じじゃなかった。
少なくとも、俺はあそこまで狂気に満ちた顔なんてしてない。
小さく開いた口からは小さな笑い声が聞こえて、
その目は正気なんか保ってなくて、どこを見ているのかすら理解できなかった。
悠介 「…………」
時々見る夢だ。
少年の顔に見覚えはない。
ただ、とても哀しそうな顔をしているんだ。
見覚えなんて……。
悠介 「……!?」
ふと、ひとりの男に面影がダブッた。
悠介 「あ……あき……と……し……?」
その少年の顔。
あいつが悲しそうにする時の顔に似てるんだ。
でも記憶の名前と一致しない。
思い出せないくせに、それだけは確信できた。
悠介 「っ!ぐ……痛っ…………」
頭が悲鳴をあげている。
ここから先は思い出すなと。
きっと後悔すると、必死に叫んでいる。
もしかしたら。
そう、考えたことがある。
俺が恐怖したのは母親にバケモノを投影した時ではなく、
この少年の……
声 「もしもし?」
悠介 「うわぁあああっ!!」
突然聞こえてきた声に、慌てて逃げ出す。
春菜 「あ、悠介くん?どこ行く気?」
悠介 「あ、え?せ、先輩?」
春菜 「……なんだと思ったの?」
悠介 「俺に何か用?」
春菜 「なんかさ、あのふたりに関わってから悠介くんて冷たくなったよね」
悠介 「俺はいつでも常温41℃加工」
春菜 「冗談はいいからさ」
悠介 「……先輩だって結構なもんだぞ」
春菜 「うん、自覚はあるよ」
わぁ、認めちゃった。
春菜 「ところで……」
ずい〜っと周囲を見渡す先輩。
春菜 「なにやってたのかな、こんなところで」
悠介 「寝てたみたいだけど」
春菜 「みたい、って……自覚は?」
悠介 「空を見上げてたら、生きる喜びをふと感じまして」
春菜 「アンパンマンみたいな思考回路なんだ」
ヒドイことを言ってくれる。
人様をあげな首が取れても取りかえれば動けるようになるヤツと一緒にしないでくれ。
春菜 「で……ホントに寝てただけ?」
悠介 「こんなところで他になにが出来るっていうんだよ」
春菜 「…………」
悠介 「…………」
春菜 「……梨、食べたりしてないよね?」
悠介 「そういうことですか」
呆れながらも梨を一個創造して、先輩に渡す。
先輩はそれを極上の笑顔で受け取り、そして首を傾げた。
春菜 「いう」
悠介 「ほい」
言われる前に果物ナイフを渡す。
春菜 「……絶妙なタイミングだね」
悠介 「よく言われる」
春菜 「言われないでしょ」
悠介 「さすが、解ってらっしゃる」
再び寝転がり、空と直面する。
そしてもう一度考える。
だけど喉に出かけた言葉は空気へと変わり、もう自分の傍には無かった。
悠介 「…………はぁ」
溜め息が出た。
最近疲れがたまっているのかもしれない。
悠介 「……なあ先輩」
春菜 「ふぇ?なにかな」
シャリシャリと音をたてている先輩を見る。
悠介 「自分の存在の意味って、考えた時あるか?」
春菜 「んー……難しい質問だね」
悠介 「そうでもない」
春菜 「……それもそっか。あるよ、わたしにも」
悠介 「…………」
春菜 「わたしはね、ずっと自分の力の所為で周囲から嫌われてきたんだよ。
みんな幽霊とか嫌いなのに、それを退ける力すら怖がってた。
いつだってひとりっきりで、外出も学校以外許されてなかった」
悠介 「……厳しい家系だったんだな」
春菜 「うん、でもね、仕方なかったんだよ。
大きすぎる力は災いを呼ぶって、ずっとそう言われてきたから。
でも……ある時ね、わたしはそれを破った」
悠介 「破った?」
春菜 「昔のことだよ。
小さな頃、唯一友達でいてくれた女の子が居たんだよ。
いつも笑っていて、わたしはその子の笑顔が大好きだった。
でもね、わたしは友達なんか作っちゃいけなかったんだよ。
そう……おじいさまの言うことを聞いておくべきだったの……」
悠介 「先輩……もしかして」
春菜 「あ、ううん、それは違うよ。
いくら大きすぎる力でも、わたしは人を殺したりなんかしないよ。
……でも、もうその子、死んじゃったんだけどね」
悠介 「え?原因は?」
春菜 「交通事故。前の冬の時だったらしいよ。
信号無視して轢かれちゃったって、ニュースで言ってた。
……ホントはそうじゃないのにね」
悠介 「へ?解るのか?」
春菜 「少なくとも、そんな子じゃなかったよ。
ちょっとボケ者チックだったけど」
悠介 「……わからないな」
春菜 「なにが?」
悠介 「だってさ、先輩はその人の成長した後のことなんか解らないだろ?
どうしてそう言いきれるのかな、って」
春菜 「解るよ、ずっと友達だったもの」
先輩は、本当に嬉しそうに笑った。
心からの笑み。
春菜 「確かに突然の引越しで別れちゃったけど、
それでも信じていられる子だったんだよ」
悠介 「なんか、子供に向けていうようなセリフだな」
春菜 「だって子供みたいな子だったもん。
なにかやっても、どこかぬけてたし。わたしより誕生日早いのにね」
悠介 「…………そっか」
視線を戻し、空を見上げる。
悠介 「なぁ先輩」
春菜 「なにかな」
悠介 「俺もひとつ答えるから、先輩もひとつ答えてくれ」
春菜 「ホモ男子のことはダメだよ」
悠介 「あ、ああ、彰利のことじゃないから」
春菜 「スリーサイズもダメ」
悠介 「んなこと訊くか」
春菜 「わっ……何気にショック……」
悠介 「どうして友達作っちゃいけないって思ったんだ?」
春菜 「……別れが辛いからだよ」
悠介 「別れ?」
春菜 「うん。何も言わずに引越しちゃったから……。
本当はわたしのこと嫌いだったのかな、って……ずっと考えたよ。
でもね、一通の手紙でわたしは救われたんだよ。
事実を知った時、わたしは嫌われてなかったって気持ちでいっぱいだった。
新しい友達も出来たって書いてあった。
それが嬉しかったのに……でも、それが一番辛かった。
独り善がりの思考、ってやつだよ。
わたしだけの友達だなんて、昔のわたしはそう考えてたんだと思う。
それに気づかせてくれたのがあの子。
だから……わたしは返事を一切書かなかった。なのにね……」
悠介 「…………」
春菜 「あの子ね、何通も何通も手紙くれるんだよ……?
何日かにあった出来事とか、友達のこととか書いてさ……。
それでね、必ず最後に『またね』って書いてあるの」
悠介 「先輩……」
春菜 「結局、一度も返事も書かないでいて……あの子、居なくなっちゃった。
時々ね、思うんだよ。友達ってなにかな……って」
悠介 「……どんな状況でも一緒に居てくれる人のことじゃないのか?」
春菜 「……そうだね。でも、それは傍に居なくちゃ成り立たないことだよね。
だとしたら……離れた時点でもう友達じゃないのかなぁ……」
悠介 「それは……違うと思うけど」
春菜 「本当の友達はひとりでいいって思ってるよ、わたしは。
自分のことを話しても逃げないで、嫌わないでいてくれる人。
そういう意味では、悠介くんはわりと好きだよ」
あははっ、と笑顔で言ってくれる。
悠介 「からかうな」
春菜 「別にからかってなんかないよ、うん。わたし真剣」
くすくすと笑う先輩。
悠介 「説得力に欠ける行為だぞ、それは」
春菜 「いいよいいよ、別に説得しようってわけじゃないから」
悠介 「先輩、もしかして楽しんでるか?」
春菜 「うん、面白かったよ」
過去形だ。
かなり、してやられてしまった。
春菜 「じゃあ簡潔にいこうか。楽しんだし」
悠介 「……なんか理不尽だ」
春菜 「一度友達を作るよね」
悠介 「うん?あ、ああ」
いきなり切り替えられると困るな。
春菜 「そうするとね、次の人にも同じことを望んじゃうんだよ。
自分ではそれに気づかずに、それはエスカレートしてゆく。
その頃の自分が、もう一度あの頃に戻りたいって言って泣くんだよ。
その結果……無理なことをやらかして、嫌われる」
悠介 「……いまいちよく解らんけど」
春菜 「つまりね、ある人にはその子しか友達が居なかった。
その子と一緒に居る時間は楽しくて、
だけどもうその子は居ない。だから、次の場所を探す。
それまで友達っていう関係に恵まれなかった人は、
楽しいものが当然だと感じちゃって、それで張りきりすぎたんだよ」
悠介 「……馬鹿?」
春菜 「そういうこと言っちゃだめだよ。
その人は何も知らなかったんだから。
それに喩え話であっても、わたしにも当てはまるんだから。
大体、訊いてきたのは悠介くんだよ?」
悠介 「あ……悪い」
素直に謝った。
なんかツッコミたかったんだが、先輩があんまり悲しい顔をするもんだから。
春菜 「あ、別に変な誤解はしないでね。
わたしにも当てはまるって言ったけど、
わたしはあの子以外に友達なんて要らなかったんだから」
悠介 「あ、それは解る」
春菜 「だよね、悠介くんも似たようなものだと思うし」
悠介 「なんでか、嫌われてる友人だけどね」
春菜 「……しつこいね」
悠介 「自分でもそう思う」
春菜 「さて、じゃあ今度はわたしが訊く番だね」
悠介 「先輩、見てごらん……月が輝いている……」
春菜 「まだ夜じゃないよ」
悠介 「先輩、夕日が綺麗だよ」
春菜 「まだ夕焼けも無いよ」
悠介 「…………」
春菜 「…………」
悠介 「ギャア!腹痛がッ!」
春菜 「ええっ!大丈夫!?楽にしてあげよっか!?
破魔矢と渾身能力パンチ、どっちがいい!?」
悠介 「喜んで答えさせていただきます」
春菜 「いい子いい子〜♪」
なでなでと頭を撫でられた。
春菜 「好きな子とかっている?」
悠介 「幸せにすると言った相手なら」
春菜 「……誰?」
悠介 「ルナ」
春菜 「いつの話?」
悠介 「子供の頃」
春菜 「わー、手が早いんだね」
悠介 「誤解しないでくれよ、そんな意味で言ったんじゃないと思う」
春菜 「自信は?」
悠介 「……ぐ」
春菜 「わー、手が早いんだね」
悠介 「言い改めないでくれ、頼むから」
春菜 「さてと、それじゃあ帰ろうかな」
悠介 「今何時?」
春菜 「はい」
腕時計を見せてくれる先輩。
悠介 「……なんで夕焼けじゃないんだ?」
春菜 「空が蒼いからだよ」
悠介 「なんでこの時間で蒼いんだ?」
春菜 「夕焼けじゃないからだよ」
悠介 「どうして夕日が出てないんだ」
春菜 「それはお前を食べるためさー」
ごすっ!
春菜 「はうぅっ、な、殴った、今かなり本気で殴った」
悠介 「まあ、空の気紛れだろうな。じゃな、先輩。俺帰るから」
春菜 「うわわ待ってよ、せっかくだから一緒に帰ろうよ、家同じなんだし」
悠介 「梨、まだ残ってるぞ」
春菜 「歩きながら食べるよ」
悠介 「…………」
溜め息を吐いて、屋内へのドアを開ける。
その後ろには梨を持った先輩。
春菜 「ねえ、悠介くん」
悠介 「んー……?」
春菜 「腕とか組んだら、恋人みたいに見えるかな」
ごすっ!
春菜 「きゃっ!」
ごすっ!ごすっ!
春菜 「いたっ!いたっ!」
ごすごすごすっ!
春菜 「いたっ!痛いよ悠介くんっ!」
悠介 「つまらないこと言ってないでさっさと帰ろう先輩」
春菜 「……ここまで殴っといて『つまらない』って……救われないよぅ……」
涙目になりながら頭を押さえ、それでもついてくる先輩。
そんなこんなで俺と先輩は屋内へと戻り、階段を降りて廊下へ───
声 「あーっ!」
……降りた途端、なにやら聞こえる声。
見れば、直線状になった廊下のむこう側に、ひとりの少女が立っていた。
肩には何かを乗せている。
水穂 「センパイじゃないですかーっ」
パタパタと駆けて来る。
やがて俺と先輩の前に立ち止まり、息を整える。
悠介 「知ってる人?」
春菜 「え?知らないけど」
水穂 「……センパイ」
春菜 「悠介くんこそ、どうなの?」
悠介 「初めまして、晦悠介です」
水穂 「センパイぃ……」
泣きそうになる水穂ちゃん。
悠介 「軽いカナディアンジョークだ」
ポンポン、と頭を撫でて言う。
悠介 「で、どうしたんだいゴンザレス」
春菜 「……すごい名前なんだね」
水穂 「水穂ですっ!なんてこと言うんですかセンパイ!」
春菜 「えーと、なんの用かなゴンザレスちゃん」
水穂 「…………………………」
春菜 「冗談だよ」
悠介 「そんなどうでもいいことよりダメだろ?俺なんぞに声かけちゃ。
それこそ全生徒に加え、教師一同からも嫌われるぞ」
春菜 「……『どうでもいいことより』はあんまりだと思うよ……」
先輩はイジケている。
水穂 「怖い人じゃなければ問題なんてありませんよ。
それにボク、けっこう強いんですよ」
ぼかっ!
水穂 「うえぇ……」
悠介 「泣いてしまった、どうする先輩」
春菜 「無言でいきなり殴るのはどうかと思うよ」
悠介 「いや、その強靭さを調べたかったんだ。研究者として」
水穂 「……あ、センパイ、ひとつお願いがあるんですけど」
悠介 「なるほど、立ち直りは早い方だ。
プラス思考がしっかりしている証拠だな」
水穂 「このハト、取れないんですよ」
悠介 「そういうハトだし」
水穂 「…………取ってくださいぃ……」
悠介 「いきなり泣きつかれてもな」
水穂 「民の視線が痛いんです、
離そうとしてもタコ足みたいに服を掴んで離さないし、
窓を開けて、出ていくように促しても離れてくれないんですよぅう……」
悠介 「先輩、どうしよう。この子マジ泣き」
春菜 「せっかくだから送ってってあげれば?
わたしはどうせ、腕すら組んでもらえずに殴られる、
何処にでも居るようなしがない先輩ですから」
ああっ!殴ったこと根に持ってる!
悠介 「梨で2個」
春菜 「どうしよっか」
目にも留まらぬ速さで俺の目の前まで来て微笑む先輩。
悠介 「いいかい水穂ちゃん。
そのハトはキミの言うことならなんでも聞くようになっている。
だからキミが命じれば」
水穂 「もう何度も命じましたぁぁああああ……。
でもダメなんですよぉおおおお……」
情けない声をあげてわんわんと泣く。
ホントに高校生ですかアータ。
水穂 「お願いですからボクの肩から離れてくださいぃいい……」
ハト 「…………」
耳を傾けて首を傾げる。
悠介 「…………」
春菜 「……ねぇ、悠介くん。これって」
悠介 「安心しろ水穂ちゃん、こいつはちゃんと『聞いて』いる」
春菜 「……やっぱり」
水穂 「はう……そんなオチは嫌いですよぅ……」
悠介 「……すまん、消し方は俺にも解らん」
水穂 「え……えぇーっ!?ど、どうするんですか!?
ボクこんな格好じゃ授業受けられませんよっ!?」
悠介 「そこんところは努力と根性と腹筋で乗り切ってくれ」
水穂 「そ、そんなこと言わずに助けてくださいぃい……!
死ぬ時は一緒って約束したじゃないですかぁああああ……!!」
悠介 「してないぞ」
春菜 「楽しそうだね」
悠介 「一度眼科検診を受けることをお勧めする」
春菜 「いやだよ」
悠介 「水穂ちゃん、安心してくれ。
そいつは不老不死だから半永久的にキミの肩から離れないぞ」
水穂 「どこらへんに安心出来る要素があるんですかぁ!
それってもう絶望的な結論ですよぅ!」
悠介 「ちなみにコルトパイソンで頭を吹き飛ばしても、
血管やら細胞やらがウジュリと破片に伸びて、結合して復活を」
水穂 「ひぃいいいっ!!」
水穂ちゃんは本気で泣いている。
春菜 「その時点でもうハトじゃない気がするね」
悠介 「奇遇だな、俺もそう思ってたところだ」
水穂 「ボ、ボク、オカルトは好きですけど……
そういうスプラッタなのダメなんですぅう……っ」
悠介 「平和の象徴と謡われたものが、よもやスプラッタにまで進化するとは」
春菜 「退化だと思うよ」
悠介 「それじゃあ俺達帰るから」
春菜 「じゃあね、えーと、水穂ちゃん」
水穂 「あ、はい。それでは……って待ってくださいぃい!」
がしぃっ!と、しがみついてくる。
水穂 「なんとかしてください!このままじゃ家にも帰れませんよぉ!」
ああ、本気の目だ。
本気で困ってる。
泣いてるし。
悠介 「よし、おにいさんがなんとかしてあげよう」
春菜 「ひとつしか違わないけどね」
はしっ!
悠介 「むっ」
春菜 「そう何度も殴られないよ」
悠介 「あ、梨」
春菜 「えっ!?どこどこ!?」
ごすっ!
春菜 「はうっ!……うぅ、古典的な痛みが……」
悠介 「はい、それでは虎を創造してみましょう」
水穂 「虎……ですか?」
悠介 「はい、虎です」
春菜 「虎って虎?あのガオオッってアレ?」
悠介 「他に虎が存在するなら俺が会ってみたい」
春菜 「わたしも」
悠介 「さぁ、とりあえず水穂ちゃんの肩にとまっているハトを食し殺す虎が」
水穂 「わわゎぁああああっ!!ままま待ってくださいぃいいっ!」
悠介 「うん?」
水穂 「このハト、わたしの肩から離れないんですよっ!?」
悠介 「だから」
水穂 「そうじゃないんですよぅ!
虎に退治させるとなると、わたしの肩が怪奇特集に……っ!」
悠介 「…………」
春菜 「…………」
先輩と目を合わせた。
悠介 「じゃあライオンにしてみるとか」
春菜 「あ、それだねきっと」
水穂 「はぅうっ!進歩してませんよぉっ!」
悠介 「これ以上俺にどうしろと」
春菜 「あ、わたし『ニュースの林』見たいから先に帰るね」
悠介 「おっと、今日は買出しに行くんだった。それじゃあ」
わしっ!
悠介 「…………」
水穂 「置いてかないでくださいぃい……」
本当に情けない声で泣く娘ッ子だな。
悠介 「……じゃあ、今日は家に泊まりに来るか?」
水穂 「え……」
春菜 「えぇえええええええっ!!!??」
悠介 「先輩驚きすぎ」
春菜 「知らなかった、悠介くんてそういうコがタイプだったん」
ごすっ!
春菜 「だぁっ!し、舌噛むところだったよぉっ!危ないよ悠介くんっ!」
水穂 「あ、あの、それは助かりますけど……大丈夫ですか?」
悠介 「なにが?」
春菜 「ヤボなこと訊いちゃダメだよ」
悠介 「ヤボって……」
水穂 「あの、若葉さんと木葉さんが許可するかどうか」
春菜 「……貞操じゃないの?」
悠介 「俺以外は外せない猿ぐつわが出ます」
ポムッ。
キュッ。
春菜 「はふふっ!?はふほ、ふーふへふん!ほへはふひへほ!(」
悠介 「やかましいから黙ってて、先輩」
春菜 「はふふ……」
水穂 「あのふたりと対立するのはさすがに……」
悠介 「大丈夫だろ、むしろ歓迎されると思うぞ。
俺には期待しないで欲しいけど」
水穂 「……思ってたんですけど、どうして人と距離を置くんですか?」
悠介 「この能力の所為」
水穂 「……それ、怖い能力なんですか?」
悠介 「人が持ち合わせていない力っていうのはね、
他人にとっては恐怖でしかないんだよ。
それは持ってみた人じゃないと解らない。
だから、軽い気持ちで干渉するのはやめてほしい」
水穂 「………」
春菜 「ほへはほーはへ(」
悠介 「理解者が居てくれたとしても、それはその人の見解であって、
全ての人間が受け入れられるものじゃない。
だから、俺は一部の人にしか本当に心を開いたりしない」
春菜 「ふふ、ははひほ(」
悠介 「先輩、少し黙って」
春菜 「………ふぇひ(」
悠介 「と、いうわけで。俺はこうして話してはいるけど、
キミに心を開いたりはしていない。
能力を見せたのだって、嫌って欲しかったからだ。
でも……まあ、それでハトがこうなったわけで。
それでいろいろと試す時間が欲しい。だから家に来てくれ」
春菜 「ああ、そういうこと。って、あ、あれ?喋れる」
悠介 「ああ、外した」
水穂 「……ひとつ、訊いてもいいですか?」
悠介 「なんだ?」
水穂 「ボクは『理解者』になれないんですか?」
悠介 「ああ無理だ」
水穂 「………」
春菜 「悠介くん……」
悠介 「こればっかりは、能力を持っている人じゃないと本当の理解は出来ない」
春菜 「悠介くん、もっと他に言い方ってものが……」
悠介 「先輩、悪いけど俺、もう軽はずみな心に振りまわされるのは嫌なんだ。
知ったふうな口を利かれるれるのも嫌だ。
馴れ馴れしくされるのも嫌だ。
なにより、自分の力で人が傷つくのが嫌なんだ」
水穂 「……ボクには、どうあっても理解出来ないっていうんですか……?」
悠介 「そうだ」
水穂 「だ、大丈夫ですっ!だってボク怖くなんかないですし!」
悠介 「それはまだ全てを見てないから言える言葉だ」
水穂 「平気です!言えます!
だって……え、えーと、だって、ボク、センパイ好きですからっ!」
悠介 「………………へ?」
春菜 「え…………?」
ワシッ。
水穂 「はわわっ!?」
声 「ほう……それはそれは……随分と初耳な発言ですね……」
水穂 「はぁあ……!!そ、そそそその声はぁぁあ……っ!!」
ぐるりと、鷲掴みされた頭がひねられる。
水穂 「ひぃいいっ!!わわわ、若葉さんに木葉さんんっ!!」
悠介 「あれ?ふたりとも帰ってなかったのか」
若葉 「ちょっと委員会に呼ばれまして。
ええ、ホント、今回ばっかりは呼ばれて良かったですよ」
木葉 「まったくですね。こんなことが聞けるなんて、運がいいとしか」
水穂 「いえあのこれはその……」
姉妹 『水穂、答えは家でたっぷり聞かせてもらいます。
道中、思いつく限りの出来の良い言い訳を考えておくことね』
くっくっく、と小さく笑うふたり。
微かだが『まぁ、無駄でしょうけど』という言葉が聞こえた。
ハナっから許す気などないということか。
そしてズルズルと引き摺られてゆく水穂ちゃん。
水穂 「い、嫌ですぅううっ!!は、離してくださいぃいいっ!!
好きっていったって、別にそういう意味じゃないんですよぉおおっ!」
本気で涙声になって抵抗する水穂ちゃん。
その抵抗も虚しく、彼女は自分の帰路ではなく、
俺達の帰路を引きずられることになった。
…………。
水穂 「はぁ……す、すごい石段ですね……」
正直な感想。
水穂 「で、ここ、登るんですか?」
正直な質問。
悠介 「あきらめてくれ」
水穂 「………」
絶句。
悠介 「足腰鍛えられるぞ、一日30往復すれば将来的にはマッスルだ」
水穂 「そんなの憧れないです」
悠介 「そらそうさなぁ」
春菜 「わたしだったら自殺ものだけどなぁ」
悠介 「心配しなくても先輩なら十分握力とか強そ」
ワシッ!!
悠介 「ごぉああっ……!じょ、冗談です……!ごめんなさい……!
冗談ですからアイアンクローは……!ず、頭蓋がぁあ……!」
小声で謝る。
春菜 「わたしが強いのは家系の所為だって言わなかった?」
悠介 「いや、なんかもう、聞いてはいたんだけど今ので何を信じるべきか解らなく」
ドムッ!
悠介 「おぶぅっ!」
春菜 「なにが、解らないのかなぁ?」
悠介 「いや、すべて理解しました。
だから力込める時に能力を上乗せするのは止めてください……」
春菜 「あれ?そうなの?」
悠介 「あれ?って、気づいてなかったのか?」
春菜 「……無意識なのかな。よく解ったね、悠介くん」
悠介 「一度、大きいの脇腹にもらってるから、痛みの質でなんとなく」
春菜 「なるほど」
若葉 「談話を繰り広げてないでさっさと行きましょう」
悠介 「若葉、そう言うときは『さっさと』じゃなくて『早く』だ」
若葉 「……すいません、おにいさまの口調が伝染したようです」
俺の所為なのか?
というかアレを談話で済ませますか。
悠介 「まあいいか、行くとしよう」
トコトコと石段を登ってゆく。
…………。
200段近く登った時点で水穂ちゃんがぐったりしてきた。
悠介 「よくここまで頑張った。あと500段くらいだ」
水穂 「え……えぇえっ!?」
悠介 「さすがに冗談だが」
水穂 「勘弁してくださいよぅ……」
…………。
水穂 「………」
水穂ちゃんが喋らなくなった。
…………。
水穂 「……」
完全に沈黙。
もはや呼吸以外のなんの行動もしていない。
石段に身を任せ、息を荒くしている。
若葉 「だらしないですね」
木葉 「運動不足です」
悠介 「そう言うな。下界ではこれが普通だと思うぞ……今の世の中なら」
木葉 「それではどうしますか?」
悠介 「ふむ……おお、そうだ」
あいつのことだ。
一番下から上までのロープも備えてあるかもしれない。
悠介 「……ふむ、探す価値はありそうだ」
思い立ったらすぐ行動!
さて、この坂茂みあたりに……って、いきなり見つけた……。
えーと、これを手繰り寄せて……よし。
悠介 「ほい、木葉。これを水穂ちゃんに縛って」
木葉 「……なんですか?これ」
悠介 「縄文時代のエレベーターorエスカレーターってところか」
木葉 「縄文?」
悠介 「あ、いや。縄文は忘れてくれていい」
木葉 「はあ……」
若葉 「さあ、縛りましょう」
木葉 「楽しそうですね、若葉姉さん」
若葉 「荷造りとかって好きですから」
ぎゅぎゅーっ!と、これでもかと叫べるほどにキツく縛る。
途中、水穂ちゃんが『ぐぇえ』と、
カエルが踏まれたような声を出したことを付け加えておく。
悠介 「いいか?」
木葉 「なんだかよく解りませんけど」
若葉 「とりあえず、いいと思います」
悠介 「よし、じゃあ」
もう一方のロープに手をあてて輪を作り、
『ナイフが出ます』と、イメージを弾かせた。
……ぶちり。
で、ロープは切れましたとさ。
その後の展開といったらもう。
水穂 「ひぃいいいぃぃゃぁああああぁぁぁぁぁぁ──────……………………」
水穂ちゃんは、アッと言う暇も無く星になりました。
幸い命に別状は無かった。
彰利め、まさか衝撃吸収マットを用意していたとは。
考えてやがる。
いやしかし、ロープが途中で切れるようになっていて良かった。
いくらマットがあっても……ねぇ?
ロープが切れてないんじゃ滝壷目掛けてゴー・トゥ・ヘルさ。
悠介 「命があってよかったね」
水穂 「か、帰してください……ボクをここから帰してぇ……」
水穂ちゃんは本気で泣いている。
悠介 「まあまあ、ほんの逆バンジーと思えば」
水穂 「呼吸困難の時にやるようなものじゃないです……」
悠介 「そうか、まあそれは忘却の彼方へすっとばすとして」
水穂 「ええっ!?そんな、ヒドイですっ!」
悠介 「ようこそ、ここが若葉と木葉の家、晦家だ」
ぼかかっ!
悠介 「アウチッ!」
若葉 「その言い方はやめてくださいと何度言ったら解るんですか?」
木葉 「ここの主はお兄様でしょう?」
悠介 「よし、俺が持つ権限を……若葉、お前に」
コパーンッ!
悠介 「キャーッ!」
若葉 「ああもうっ!どうしてこの口はこう、相手に対して失礼なことしかっ!」
悠介 「ああっ!俺の携帯スリッパを!!」
木葉 「今日こそは家族であることを完全に認めてもらうしかありません!」
悠介 「え?あの、おい?」
若葉 「まあ若葉!こんなところに婚姻届が!」
木葉 「あら姉さんたら奇遇です!でも判子がありません!」
若葉 「まあ困ったわどうしましょう!」
木葉 「……血印で十分ですよ」
ボソリと呟く木葉。
悠介 「なっ!?いやちょっと待て!お前らなに考えて!」
若葉 「はい、と」
ポム、と若葉は判子を押した。
悠介 「なんで判子携帯してんのさお前!大体、婚姻届にしたって」
若葉 「さ、おにいさま」
シャキン!と光るはカッターナイフ。
で、指に切り目を入れられたうえに腕を掴まれる。
木葉 「次はお兄様の番ですよ〜……」
ふたりがかりで俺の親指を婚姻届けに向わせようと躍起になっている。
木葉 「印……!」
若葉 「印……!」
印……!じゃないだろがっ!
悠介 「落ち着けふたりとも!兄妹で結婚なんて出来るわけ」
若葉 「解ってるじゃないですか」
悠介 「へ?」
木葉 「その事実が自分の中に存在している内は、
『家族じゃない』みたいなことは言わないでくださいね」
悠介 「え?あ……あれ?」
ハ……ハメられた……?
若葉 「こんなものに騙されるなんて、よっぽど動転していたんですね」
ひらひらと先ほどの婚姻届けを……あぁっ!?
悠介 「テスト用紙……!?」
木葉 「ウブです」
木葉が小さく笑う。
悠介 「………おのれらぁあああああああああああっ!!!!」
若葉 「きゃああっ!悪いのはおにいさまの方ですよーっ!」
木葉 「暴力反対です!暴力は古来より許されぬものと」
悠介 「俺が許す!一度でいいから殴らせろ!」
若葉 「ひゃああっ!木葉ちゃんどうしよう!絶体絶命!」
木葉 「お兄様!いくらなんでも殴るのはどうかと!」
悠介 「ここの主は誰ぞぉおおおおおおおおっ!」
木葉 「ああっ!職権乱用!?」
若葉 「普段なら喜んでいる言葉が、今なら存分に嬉しくありませんっ!」
水穂 「職権かどうかも謎ですし、文法がなんか変ですよふたりとも……」
姉妹 『おだまりっ!』
水穂 「ふぇえ……」
ワシ……ッ!
悠介 「ツカマエタ……」
若葉 「あ……」
木葉 「ひえ……」
悠介 「……はぁ、もうこんなことは止めてくれよな。俺も努力はするからさ」
若葉 「……おにいさま、いっつもそうです」
木葉 「まったくです」
悠介 「スリッパと握り拳、どっちだ?」
若葉 「ど、努力します」
木葉 「もともとお兄様があんなこと言わなければ」
若葉 「はぅっ!こ、木葉ちゃ……っ!!」
悠介 「………」
木葉 「ば〜い、姉さんの本音」
若葉 「キャーッ!!なんて破滅的な追加台詞を!」
悠介 「……まあいいさ。俺自身、馴染めないのが悪いんだ」
ふたりの襟を放し、開放する。
悠介 「いい加減、家に入るか。客人に茶も出さないのは失礼だよな」
若葉 「あ、あの……おにいさま……」
気まずく思ったのか、若葉が声を掛けてくる。
俺は聞こえないふりをして玄関に手をかけ、そして開ける。
……と、そこは血の海だった。
悠介 「………」
若葉 「………」
木葉 「………」
水穂 「………」
……ぴしゃん。
とりあえず閉めた。
状況を経験から(日が浅いとはいえ)分析するに、
おそらく気がついて口内にすりおろしニンニクの味。
後、吐血を繰り返したのだろう。
ルナも口内にぎっしりとニンニクを創造されたのでは復帰できなかったようだ。
料理のように、飲み込んであれば大丈夫なのだろうが。
はぁ……。
思わず溜め息がでる。
こんな日が訪れるに至り……
本日の現時刻を持ちまして、俺もニンニクが嫌いになった。
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