───喧嘩───
───朝である。
しかしながら…………。
眠いしダルイ。
こんな日は休みたくなる。
というか停学中に十分すぎるほど休んだんだが。
しかし今日は行かねばならない。
別に行かなくたっていいでしょうに、妹ふたりときたら……。
───再現VTR───
若葉 「お、おにいさま、明日はとうとう文化祭ですねっ!」
悠介 「あ、俺行かないから」
若葉 「なぁっ!?」
木葉 「なんでですかっ!」
悠介 「あんな人がごった返す催し物、誰が好んで参加するか」
若葉 「い、嫌ですっ!おにいさまと出し物めぐりをするんですっ!」
悠介 「行かないもんは行かないのっ」
若葉 「わたしは今日この日のために、
おにいさまと同じ学校に入学したんですよ!?」
悠介 「そりゃ言いすぎだ」
若葉 「そうだとしても!楽しみにしてたのは本当なんです!」
悠介 「なにがどう楽しみなんだ。別に俺が居なくたって」
木葉 「……接客」
悠介 「え?」
ボソリと、木葉が呟く。
悠介 「木葉、なんて言ったんだ?」
木葉 「さあ、知りませんねぇ」
悠介 「………」
若葉 「行きましょうよぅ!」
悠介 「だーめ、行かない」
木葉 「どうしても来ない気ですか?」
悠介 「気ですよ?」
木葉 「……フッ」
悠介 「……な、なんだその笑みは」
木葉 「水穂に、あのことバラしますよ?」
悠介 「あのことって?」
木葉 「若葉姉さんの着替えを覗」
悠介 「わーっ!わーっ!うわーっ!!」
木葉 「……依存は?」
悠介 「謹んで行かせて頂きます」
木葉 「はい、決まり」
ボカッ!
木葉 「はうっ!」
若葉 「あ、ああああ姉の恥ずかしい思い出をタネに、
おにいさまを脅すとはなにごとですかっ!」
木葉 「この際文句は言いっこなしです」
若葉 「そういう問題じゃないでしょう!」
喧嘩を開始する妹ふたりを横目に、俺は深い溜め息を吐いた。
嗚呼、なんでこんなことに……。
───再現VTR終了───
……はぁ。
思い出しての溜め息も何度目だろうか。
だが可愛い妹達の頼み()を無下に断るわけにも……いきたい。
断るわけにもいかない、なんて言いたくないなぁ。
ああ、先行き不安……。
ぼやきながらも制服に着替え、部屋をあとにした。
ふと、窓を見て呟く。
悠介 「……どうしてこんなにいい天気なんだ」
一思いに雨でも降ってれば……!
なんて憎悪が生まれる。
そしてさらに溜め息。
ルナ 「朝から美味しいね、今日の悠介」
そこに現れたる影ひとつ。
ルナ 「そんなことはどうでもいいね。悠介、遊ぼ?」
いきなり現れてなにを口早に話を進めますか。
悠介 「悪い、今日は文化祭があって無理だ」
ルナ 「ぶん……なに?」
悠介 「文化祭。各クラスや学年で売上を競うものだ」
あながち間違いではないと思う。
ルナ 「ふーん……ね、だったらそれ、わたしも」
悠介 「……いや、来てもいいけどさ。空は飛ぶなよ?
あと、あらかじめ姿も現しておけ」
ルナ 「え?見えてもいいの?」
悠介 「客として来る分には構わないよ。侵入者としてなら追い出すけど」
ルナ 「やたーっ!悠介の学校に行けるー!」
悠介 「やたー!ってなんだ。やたー!って」
ルナ 「すぐ行くの?」
悠介 「まあ……準備には少し時間がかかるからな。だから午後くらいに来い」
ルナ 「午後ね。何時くらいがいいかな」
悠介 「………………いいや、お前姿消して一緒に来い」
ルナ 「いいの?」
悠介 「なんか最近、お前ともゆっくり話してなかった気がするしな」
ルナ 「…………!」
なんか衝撃を受けている。
今にも飛びついて来そうな雰囲気だ。
ルナ 「悠介、こういうの、幸せっていうのかな」
悠介 「あほか、こんなものが幸せだったら日常が幸せだらけだろうが」
ルナ 「むー……」
悠介 「じゃ、行くか」
ルナ 「そだね」
適当な話をしながら、俺とルナは家を出た。
悠介 「待て」
ルナ 「んぅ?」
ルナが変な声を出して止まる。
悠介 「朝食を食してなかった」
ルナ 「いいじゃん、行こう」
悠介 「お前は俺の陰気食したからいいけどさ」
ルナ 「じゃあ、創造したらどうかな」
悠介 「……そっか、そだな」
妹達や先輩の分は、各自で用意してもらうことにしよう。
悠介 「ハトが出ます」
ハトを出す。
悠介 「よーし、動くなよー?」
ルナ 「食べるの?」
悠介 「食うかっ!」
ルナ 「じゃあ、どうするの?」
悠介 「伝書鳩、って知ってるか?」
ルナ 「それくらい知ってるわよぅ」
悠介 「こいつの足にこの手紙をつけて、と」
文面をイメージし、創造した手紙をハトの足に括り付ける。
悠介 「よし、じゃあ如何なる手段を用いてでも、
若葉か木葉か先輩にこの手紙を届けるように」
ハトがこっくりと頷く。
悠介 「よし、いいコだ」
玄関へとそのハトを飛ばせ、俺は石段を降りていった。
ルナ 「あ、待ってよ悠介」
その後をルナが追ってくる。
悠介 「ふう……」
何の気無しに、空を見上げる。
その空は、本当に晴天だった。
逆から読めば天晴れ。
実にアッパレである。
ルナ 「ねーねー悠介」
悠介 「んー……?」
ルナ 「文化祭って楽しい?」
悠介 「人が集まるから俺は嫌いかな。でも、楽しくはあると思いたい」
ルナ 「むう、難しいんだ」
悠介 「そうだなぁ」
ルナ 「悠介は何をやるの?」
悠介 「喫茶店。言ってなかったっけ?」
ルナ 「どうだっただろ。忘れちゃった」
悠介 「お前なぁ」
苦笑する。
やっぱりこいつは死神らしくない。
ルナ 「……やっと笑った」
悠介 「ん?……うん……」
ルナ 「最近さ、わたしと一緒に居る時って笑ってくれなかったから」
悠介 「一緒の時間自体が少なかったからな」
ルナ 「それもあるけど」
悠介 「うん……」
流すように。
だけど、しっかりと彼女の言葉を聞きながら、石段を降りてゆく。
ルナ 「………」
悠介 「………」
それからしばらく無言の時間が続いた。
特に喋ることもなかったけど、それ以外の何かがあったのも確かだ。
ルナ 「ねぇ、悠介」
そんな沈黙を先に破ったのはルナだった。
悠介 「うん……?」
ルナ 「もしさ、わたしが……」
悠介 「……うん」
ルナ 「………」
悠介 「………」
ルナ 「ん、やっぱりいいや」
悠介 「そっか」
ルナ 「ん、いいんだよ」
悠介 「……そっか……」
ルナ 「………」
そしてまた、静かな時間が訪れた。
ひとり分の足音だけが、石段の音を奏でる。
ルナは宙を浮きながら、ただ幸せそうに、俺の傍らで微笑んでいた。
………………。
…………。
……。
ようやく、石段の終わりが見えてきた頃。
横の方を謎の影が飛んでいった。
悠介 「えっ!?」
慌てて振り返る。
彰利 「ゲェエエーーーーーーーッ!!!!!!!」
彰利だった。
未だアフロの彼が、ロープを使って飛んでいったのだ。
あっという間もなく、彼は視界から消えていった。
悠介 「………」
ルナ 「………」
多分、『一緒に行こう?ダーリン』とか言いに来たんだろうなぁ。
俺と目が合った時のあの悲しそうな目。
あれはあれですごく哀れだった。
しかも、しばらくして爆発音が響く。
恐らくどころか確実に、先輩と妹達に見つかったのだろう。
どこまでも救われないヤツだ。
悠介 「……行くか」
ルナ 「……そだね」
溜め息がほとばしった。
まあなんにしても、さっさと行くことにしよう。
あいつなら大丈夫だ。
………………。
…………。
……。
学校に辿り着く。
いつ見ても変わり映えのしない学校だ。
周りに居る人間の目が冷たいのも変わらない。
だが、これが俺の日常だ。
むしろ心地がいい。
声 「あ、せんぱ〜いっ!」
……筈だったのになぁ。
聞こえた声に、心地よさなど全てが無に消えた。
水穂 「おはようございます、先輩」
悠介 「………」
振り向くまでもなく、相手は水穂ちゃんだ。
それと、高崎さん。
高崎 「おはようございます」
悠介 「…………えっと」
俺、確かに言ったよな。
学校では声かけたりしないでくれって。
……もしかして話が通じてなかった?
い、いや、俺はちゃんと日本語で話したぞ。
通じない筈が無い。
と、いうことはだ。
悠介 「えーと、どちらさまでしたっけ?」
彼女らがきっと別人なのだ。
水穂 「あの、どうかしたんですか?」
悠介 「………」
自分が恐ろしく馬鹿に見える。
というか馬鹿だ。
悠介 「ああ、確か中国でお会いした『ニシ』さん」
高崎 「違います」
なにぃ、ニシさんじゃないとすると誰だ。
ルナ 「……悠介、いつの間に中国に行ったの?」
悠介 「夢の中でちょっとな」
水穂 「え?夢?」
悠介 「いや、こっちの話」
……そっか、ルナは今、見えないんだったな。
声も聞こえないのか。
悠介 「あ、あのさ、俺言ったよね?学校では話し掛けるなって」
水穂 「ここ、学校じゃないですから」
うわあ、屁理屈。
悠介 「あ、あのねぇ、生徒達が居れば一緒でしょうが……」
水穂 「あ、そっか。ごめんなさい」
反省しているようには見えなかった。
勘弁してくれ。
水穂 「せっかく会ったんです。一緒に行きましょう」
気軽にあっさりととんでもないことを言ってくれる水穂ちゃん。
悠介 「一緒にって……今の昇降口までの距離、解ってて言ってる?」
水穂 「距離は問題じゃありません。一緒に行ったかが重要なんですよ」
悠介 「………」
ああああああ……人々の視線が冷たいものから謎の視線に変わってゆく……。
あーあー、どうせ俺が人と仲良くするのは変ですよう。
俺だって好きでやってるわけじゃないんだぞ?
そこんとこよろしく。
なんて思ってみても視線が変わるわけじゃない。
それどころか、冷たいどころか絶対零度級に冷たくなってゆく。
あいつらのことだ。
どうせ、俺が脅しているって、そういう見方しか出来ないだろう。
それが答えだ。
悠介 「……いや、今日はダメだ」
水穂 「え?どうしてですか?」
悠介 「えーと、ひじょ〜ぅに申し上げにくいんだが」
水穂 「はい……?」
悠介 「ここにルナが居る」
水穂 「!!」
顔面蒼白。
凄まじい勢いで、水穂ちゃんの血の気が引く。
水穂 「はっ……はうぅ!!はうぅううん!!」
そしてしきりに辺りを見渡す。
悠介 「ああ、今俺の肩に居るから」
水穂 「!」
水穂ちゃんは間合いをとった。
高崎さんもそれに習う。
悠介 「今日はこいつに付き合うことにしたからさ、大目に見てやってくれ」
言って、歩いてゆく。
水穂 「あ、先輩っ?」
水穂ちゃんが声をあげる。
しかし、追ってくることはなかった。
なんて思っていた時だ。
男 「おい、おめえ……」
悠介 「ん?」
ガラの悪そうな男が、俺の行く道を塞ぐ。
男 「おめえだろ?へんな力があるやつってなぁ」
悠介 「……はぁ」
まただよ。
こういうヤツが居るから学校ってのは嫌なんだ。
男 「あぁん!?なんだぁ!?人が喋ってんのに溜め息なんざ」
ドフッ!
男 「おうっ……!?」
悠介 「うるさいから黙ってくれ」
横に逸れて、先に進む。
が、その肩が掴まれる。
男 「てめえ……!いきなり腹殴るたぁいい度胸してんじゃねぇか」
そりゃどうも。
男 「ちょっと裏まで来いよ。たっぷり恐怖を味わわせてやっからよぉ」
悠介 「恐怖、ね……」
やっぱり溜め息が出る。
恐怖ってのはそう軽々と口にしていいもんじゃないんだよ。
水穂 「せ、せんぱ……」
高崎 「……あ……」
後ろから駆けつける水穂ちゃんと高崎さん。
悠介 「あー、大丈夫だから。
この親切な人が道を教えてくれるだけだよ。
早く教室いきなさいな」
水穂 「で、でも……」
男 「こんのやろォ……!女とヨロシクしやがって」
悠介 「あーぁはいはい、さっさと裏ぁ行きましょうねぇ。
ほら、とっとと歩く。もたもたしない」
男 「あぁ!?上等だコラァ!」
悠介 「……キミみたいなヤツが日本に居るっての、なんか面白いよな」
男 「あぁ?」
悠介 「番長って呼んでいいかい?」
男 「てめぇ!ナメてんのか!?」
悠介 「そういう時は『おんどりゃあ!なめとんのかい!』だ」
男 「るっせぇ!いいから来やがれ!」
悠介 「遅れてるのはあんただ」
男 「なんだとコラァ!」
悠介 「『なんじゃとぬしゃあ!!』だ」
男 「俺に指図」
悠介 「『わしに指図すんじゃねぇ!』」
男 「こ、この野郎ーっ!!」
悠介 「あー、うっさいうっさい、いいから行けボケ者」
ズリズリと背中を押す。
なんなんだこいつは。
水穂 「せ、先輩……?」
悠介 「夕飯までには戻るって彰利に伝えといて」
水穂 「え?あ、はぁ……」
意味不明を水穂ちゃんに伝え、いざ校舎裏へ。
…………。
……。
男 「てめぇ!」
悠介 「『おんどりゃぁ』」
男 「なにを悟ったような顔してんだ!あぁ!?」
悠介 「『なに悟った顔しとんのじゃ!ぬしゃあ!』」
男 「こ、この野郎……!」
悠介 「それで?なんの用だよ先輩殿」
男 「用だぁ?ただてめえがこの高校で、
俺以上にデカイ面してんのが気にくわねぇんだよ!」
悠介 「……?」
なんのこっちゃ。
男 「いいか?ここを怯えさせんのは俺の役目だ。
てめえなんかがどう怖いのか、俺が実験してやるのよ」
悠介 「……ふぁあ……ああ、そういうこと」
男 「アア!?んだコラァ!俺様の話にアクビなんぞ出しやがって!」
悠介 「回りくどいからだろぉ……?さっさと言えってのまったく……」
男 「てめぇ……満足に帰れると思うなよ……?」
悠介 「えーと、どっちが?」
男 「お前がだ!」
悠介 「なんで」
男 「俺がこれからボコボコに殴るからだ!」
悠介 「誰を」
男 「お前をだ!」
悠介 「どうして」
男 「気に入らねぇからだ!」
悠介 「誰が」
男 「お前がだ!」
悠介 「どうして」
男 「いい加減にしろこの野郎!!」
悠介 「なんだ、もうちょっとくらい付き合ってくれてもいいじゃないか」
男 「うるせぇ!死ね!」
悠介 「……ひとつ、いいか?」
男 「なんだ?命乞いか?」
悠介 「馬鹿相手にそんなことするか」
男 「なっ……!」
悠介 「あんた、死にそうになったことってあるか?」
男 「あるわけねえだろこの俺様が!喧嘩で俺に勝ったヤツなんざ」
悠介 「ああ、自慢話なんて聞きたくないの。
まあ、そうだろうなぁ。死に直面すること自体、珍しいからなぁ」
男 「な……なんなんだよてめぇ!」
悠介 「………」
あんたこそなんなんだ。
男 「てめぇ今すぐ死刑だ!」
なんかなぁ。
話をさっさと切り上げて襲いかかってくるなよなぁ。
悠介 「えーと、頭冷やしてもらうか。冷水が出ます」
指で作った穴から、水を出す。
男 「ぶわっ……!?な、なんだこりゃぁ!」
悠介 「頭冷えましたか先輩殿〜」
男 「こ、こんなトリックで俺を倒したつもりかよ!」
再度襲いかかってくる男。
こういうサッパリしたヤツにこそ、穏やかでいてほしいんだけどなぁ。
悠介 「車海老が出ます」
車海老(冷凍)を創造する。
ざくっ。
男 「いぃってぇええ!!」
出した途端、男が殴りかかってきたので、見事に刺さった。
車海老の頭部分はよく刺さるのだ。
この痛みは経験者にしか解らん。
男 「こ、この野郎ーっ!」
この人、さっきからこの野郎ばっかりですな。
しかもまた殴りかかってくるし。
悠介 「あのさー、平和的に話し合わないか?」
男 「てめえとする話なんかねぇっつってんだよ!」
悠介 「言われてないけど」
男 「うるせぇんだよ!」
悠介 「ああ、あんた大声出せばなんでも解決派の人か」
男 「ああ!?んンだよ!」
悠介 「……まともな返事くらい返してくれ」
男 「っせぇ!」
悠介 「えーと……車海老が出ます」
車海老(冷凍)を再び出す。
そしてまた刺さる。
男 「ぐっ……!!」
悠介 「あのさぁ」
男 「てめぇ!なにガッコに冷凍海老持ってきてんだよ!なめてんのか!?」
なんか論点ずれてるし。
ふむ、海老は嫌いか。
男 「てめえやっぱり死刑だ!」
悠介 「タラバガニが出ます。背を向こう側にして」
ポム。
ごしゃぁっ!!
男 「うっぐぅぁああ……!!」
カニの甲羅を殴って苦しむ男。
というか本気でなんなんだアンタ。
男 「てめぇ!カニなんて持ち歩いてんじゃねぇよ!」
いや、そこって気にするところか?
もっと気にするべきことがあるじゃない。
どっから出したか、とか。
男 「殺す!」
悠介 「………!」
殺す、と言ったヤツには容赦の必要はない。
それなら、とる行動は簡単だ。
悠介 「月鳴の裁き……」
拳を受け止めて、思いきり念じた。
その後の彼は……まあ、語る必要もない。
煙出しながらもピクピク動いてるんなら生きてる。
悠介 「こいつを治す薬が降り注ぎます」
そう言って薬を振りまく。
しばらくして男は元気になったが、俺を見ると逃げ出した。
悠介 「そうそう、それが普通の反応ね」
うん、やっぱりこうでなきゃなぁ。
水穂 「せ、せせせせ先輩!!」
なのに、どうしてこの娘ッコはこうかなぁ。
水穂 「さ、さっきの人は!?」
悠介 「え?ああ、あいつなら……」
水穂 「さっきの人、わたしの兄なんだ、って恵ちゃんが!」
悠介 「……はい?」
高崎 「えーと、ひとまず……すいませんでした」
悠介 「どういうこと?」
高崎 「た、多分、学校一の噂を持つ先輩と一緒に居る、
だなんてことが心配になって、それで襲いかかったんだと……」
そういえば、男を見たときに『あ……』とか言ってたしなぁ。
水穂 「そ、それでその男の人は!?」
悠介 「振りかかる火の粉は根絶やしにしないといけないんだよ水穂ちゃん」
水穂 「え……えぇええええええええええっ!?
ま、まままさか殺してしまったんじゃ」
悠介 「殺すかっ!」
高崎 「見ての通り、ああいう兄ですから……。
行動の全てが不器用なんです。そのくせ喧嘩ばかり強くて」
水穂 「で、でもさ」
高崎 「え?」
水穂 「番長みたいだったあの人を倒した今、先輩が……次期番長……?」
高崎 「あー……」
悠介 「……冗談じゃないぞ」
今日は朝から妙なことが起きる。
なんとかならんのかこの状況……。
…………。
……。
……教室。
自分の席につき、眠るような体制をとる。
ああ、ダルイ。
なんてことを思いつつも、どうしても耳に入ってくる言葉。
『なぁ、聞いたか?晦のヤツ、3年の高崎を無傷でKOしたらしいぞ』
『うわ、マジかよ!3年の高崎って言やぁ、喧嘩で無敗の熊男だろ!?』
『やっぱあいつは怖ぇよなぁ……』
なんて言葉。
実に嫌な噂だ。
彰利 「うらぁあああああっ!!」
ドガシャァーン!
生徒A「うあっ!?」
生徒B「な、なんだっ!?」
彰利 「てめぇら人が大人しく聞いてりゃぁ図に乗りやがってぇええっ!!
何も知らないお馬鹿さんが何をほざく!
そこになおれ!このゲスどもがぁあああああああああああっ!!」
彰利が暴れ出した。
というかいつの間に来てたんだ彼奴めは。
彰利 「裁きを申し渡す!!
うぬらは我が愛しの親友、悠介をなじった罪において打ち首獄門!!」
生徒C「な、なんだってんだよ弦月ぃ!
お前おかしいぜ!?怖くねぇのかよそいつのこと!」
彰利 「ならば訊ねる!うぬらは悠介の何を知っていて、何が恐ろしい!?」
生徒A「は?そりゃきまってんだろ?えっと……なぁ?」
生徒B「え?あ、ああ……」
生徒C「………」
ブチリ。
嫌な音がした。
彰利 「てめぇら一発殴らせろ!今日の俺は一味違うぜ!?
今日という今日は堪忍袋の緒が切れやがった!」
生徒A「なんだよ!お前やっぱおかしいぞ!?みんな怖がってんじゃんかよ!」
彰利 「……弁解する気もねぇってのかい?いいか!?俺はなぁ!
徒党を組めばそれが正しいだなんて思ってるやつが一番嫌いなんだよ!」
ドカッ!
生徒A「かっ……なにすんだよてめえ!」
彰利が人を殴った。
そんなことするヤツじゃなかったのに。
やがて始まる喧嘩。
3対1では多勢に無勢だ。
それどころか、彰利の意見に反対する輩が集まってきて、そいつらまでもが加勢する。
……徒党を組めば、それが正しいって?
……ふざけろ!
悠介 「彰利!俺も加勢する!」
彰利 「待ってましたそのお言葉!」
生徒A「へっ!丁度いいや!お前は一発殴ってやりたかったんだ!」
悠介 「おーぉ、そりゃ残念でしたねっ!」
ドボッ!
生徒A「うはっ……!」
悠介 「生憎と、修羅場には慣れてるんですよこちとらァ!」
生徒D「てめぇ晦ぃ!」
悠介 「はいなんですかぁっ!?」
生徒D「むかつくんだよお前!」
悠介 「そりゃ是非、理由を聞きたいね!」
生徒D「理由なんかあるかよ!」
彰利 「うーわー、すげぇ矛盾」
生徒D「う、うるせぇな!ぶっ殺すぞ!?」
悠介 「………」
彰利 「………」
彰利と頷き合う。
悠介 「水が出ます」
自分から馬鹿生徒共へと、水を振り浴びせる。
生徒E「ぶわっ!?」
生徒F「なにしやがんだてめぇ!」
悠介 「殺すと言ったからには、それなりの覚悟が無きゃ……なぁ?」
彰利 「ああ、そうだとも」
悠介 「手加減の必要は無いな。月鳴の裁き!」
水に向かって、雷を弾かせる。
……パシィッ!
小さな音と共に、青白い光が弾ける。
それと同時に、クラスメイト達が倒れてゆく。
彰利 「ぎゃあああああ!」
そして彰利も。
悠介 「遊ぶな」
彰利 「あ、バレた?まあなんにせよ、我らの勝利ぞ!友情万歳!」
悠介 「お前、なんかしたっけ」
彰利 「生徒Aを殴りました」
悠介 「まあいいけどさ」
周りを見渡すと、クラスに残る襲ってこなかったヤツらの視線が冷たい。
当然の結果だ。
ルナ 「やっちゃってよかったの?」
今まで何も言わなかったルナが、ようやく口を開く。
悠介 「いずれはこうなってたさ。卒業する時くらいにね」
彰利 「そうそう、まだ一年以上もあるけどさ、売られた喧嘩は勝ってこそ」
悠介 「今日はお前が売ってた気がしたんだが?」
彰利 「だってあいつら俺様の悠介の悪口を」
悠介 「真顔でそういうこと言うなよな……」
彰利 「あ〜あ、これで文化祭もおじゃんだなぁ」
悠介 「こんな日もあるよ」
彰利 「お前さぁ、もうちょっと諦め悪くしたっていいんじゃない?」
悠介 「んー……じゃあどうする気だ?」
彰利 「フフフ、俺に考えがある」
悠介 「却下」
ルナ 「却下」
彰利 「ええっ!?なんで!」
速攻で却下する俺とルナに対して、アフロなあんちゃんが講義する。
悠介 「人間が回復する霧が出ます」
その講義をまったく無視し、とりあえず生徒達を回復させる。
悠介 「屋上行こう、ここじゃあいろいろ邪魔だろ」
彰利 「あ、ちょっとストップ。この話には皆の協力が必要なんだ」
悠介 「みんな?」
彰利 「若葉ちゃんと木葉ちゃんと更待先輩殿と水穂ちゃんに恵ちゃん。
それと吸血鬼さんと死神さんのこと。雪子さんには俺が言っておいたから」
悠介 「なにをする気だ」
彰利 「俺達で店を出すのさ!」
悠介 「メイド喫茶以外なら」
彰利 「………」
悠介 「………」
彰利 「もちろんだ」
悠介 「その間はなんだ」
彰利 「俺の魂の叫びを押さえたものだ」
ルナ 「ネッキーも呼ぶの?」
彰利 「お願いしていいかな」
ルナ 「んー……ま、いいか。
悠介の嫌がることはしないって言ったもんね」
悠介 「それ、今の状況で何か関係あるか?」
ルナ 「ホモっちのお願い聞くのは悠介との約束があるからってこと」
ああ、そういうことか……。
彰利 「ホモっち……」
ルナ 「じゃあちょっと行って呼んでくる」
そう言うと、ルナは壁抜けをして外に消えていった。
彰利 「……なあ、俺ってそんなにホモチックか……?」
彰利の悲しそうな質問に対し、俺は大きく頷いて肯定した。
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