───三刀───
宮間邸上空。
彰利 「……感じる……感じるわ、ダーリンのDNA……!間違いねぇ、ここだ」
ルナ 「……どうしてDNAなんて感じるのよ」
彰利 「うっさいルナっち。それに関してはツッコミを許しませんぞ。
だいたいルナっちが魂結糸を切られたりするからいけないんザマショ?」
ルナ 「それはわたしの所為じゃないわよ」
彰利 「それにっすね。俺っちはこのままひとりで兄貴のもとへジャンプしてもいいんす。
だけどルナっちがどうしてもって言うっすから連れていってるっすよ?」
ルナ 「うぐ……」
彰利 「なんなら置いていってもいいっすよ」
ルナ 「…………お、お願いします連れていってくだ、くだだ……」
彰利 「あ〜ん?なにっすかぁ?聞こえないっすねぇ〜」
ルナ 「……手、離すわよ」
彰利 「ギャアやめて!それだけはやっちゃならねぇ!
そんなことされたら今日もアイヤイヤイヤイヤーイ!スパーキング!
しかも笑顔ウルトラZなのに悟空が受け止めてくれないから落死確定!」
ルナ 「それに悠介が居る場所なら壁抜けも使って探せばいいんだし」
彰利 「まあ待つっす。俺っちに言い考えがあるっすよ。
ゴニョゴーニョ・ゴ・ゴニョラ・ゴニョリータ……」
ルナ 「ふむふむ……あ、それいいかも」
彰利 「そうっすよね!俺っち最強っすよね!」
ルナ 「それじゃあ早速降りよ降りよ」
ゴシュー!
彰利 「ま、待つっすー!まずは衣装手に入れなきゃバレるっすよ!」
ルナ 「どこにあるか解るの?」
彰利 「俺っちの嗅覚からすると……あそこの大きな屋敷の左部分っすね」
ルナ 「嗅覚って……」
彰利 「いいから行くっす!」
ルナ 「解ったわよ……」
───。
威圧感は確かにあるんだと思う。
うん、きっと。
悠介 「………」
剛漸 「………」
加奈子サンの親父さまはテーブルを挟んで目の前に座っている。
もちろん俺のこと凝視。
周りの加奈子サン付き使用人のような人も震え上がっている。
だが、そのように確かに出ているであろう威圧感は、俺には皆無だった。
ようするに普通の人の威圧感じゃあもう動じることも出来ないってわけだ。
経験ってコワイよママン。
剛漸 「で?おぬしの名は。職業は」
悠介 「晦悠介。神主をやっています」
剛漸 「ほう、神主───というと神社か」
悠介 「ええ」
剛漸 「娘とはいつから?」
悠介 「報告する理由が見つかりません」
剛漸 「ぬっ……」
加奈子 <ゆ、悠介さんっ!>
悠介 <悪い加奈子ちゃん。俺、この人と素で話してみたい>
加奈子 <そんな───!無茶です!>
剛漸 「なにをくっちゃべっておるか!
おい小僧!貴様ぁ……娘と付き合っている分際でワシに立てつくか!」
悠介 「……ちょっと待ってください」
剛漸 「なんだ!」
悠介 「娘のことが大事なのに『付き合っている』ということを、
『分際』呼ばわりするとはなんですか」
剛漸 「なぁにぃ……!?貴様!ワシはなぁ!」
悠介 「親だからってなんでもしていいわけではないでしょう。
それともなんですか?あなたにはそこまでの権利がおありですか。
ただ親だからという理由だけで」
剛漸 「ぬ、ぬぬぬぬ……!黙って聞いていれば好き放題グチグチと……!
……む?貴様、神主だと言ったな。祓い業も出来るのか?
出来るな?出来なければウソをついたことになる。
そういうわけで貴様の実力試させてもらおう」
悠介 「どうぞ、お好きなように」
剛漸 「おい岳臣!アレをもてぃ!」
岳臣 「はっ!」
岳臣(がくしん)と呼ばれた使用人のひとりが走ってゆく。
しばらく経つと、ひとつの木箱を持って戻ってきた。
剛漸 「小僧、これはワシの妻の忘れ形見だ。
これを残して妻が亡くなってからというもの、
ワシは毎夜うなされるようになった。
そこでだ。それを解消出来たのなら、少しは認めてやろうじゃないか」
悠介 「………」
箱を見る。
どうやら随分と年季の入ったものらしい。
開けようとしても何か妙な感じを残しながら、蓋は開かない。
となると……
悠介 <この箱に宿る残留思念が出ます>
呟き、イメージを弾けさせる。
悠介 「………」
そして出てきた人は、やさしそうな女の人だった。
剛漸 「……?どうした、もう降参か?」
どうやら他の人には見えていないらしい。
悠介 <……あなたは?>
女 <わたしはこの剛漸さまの妻、雅枝でございます……>
悠介 <あなたが……とすると、この箱を塞いでいるのは>
雅枝 <わたしです。……あなたになら頼めるかもしれませんね。
お願いです、この箱をわたしの墓に埋めてください。
剛漸さまに、わたしが召されたらこの箱も共に葬ってくださいと言ったのですが。
……寂しがりのあの人らしいです、
せめてこの箱だけでもと傍に置いてしまったようで……>
悠介 <そうですか……。ではうなされるというのは?>
雅枝 <ふふっ……わたしがあの人を脅しているんです。
でも起きると憶えていないみたいで>
悠介 <厄介な人と夫婦になりましたね>
雅枝 <そうですね。でも……そこまで想っていただけるだけで幸せですよ、わたしは>
悠介 <そうですか……>
雅枝 <それではお願いしますね。信じてくれないようだったらこう言ってください。
寝ぼけていると刺しますよ、と>
……微笑んで、思念は箱に消えていった。
剛漸 「おい小僧、なにを悟ったような顔をしている。ワシの話を───」
悠介 「剛漸さん。この箱を今すぐ奥さんの墓に埋めてやってください」
剛漸 「なっ───馬鹿を言うなッッ!!!貴様いきなり何を言うかと思えば!!」
悠介 「あなたに夢を見させていたのは奥さんの雅枝さんですよ。
ちょっと話してみました。
自分が召されたら共に葬ってくれと頼んだのに、って怒ってましたよ」
剛漸 「き、貴様!?何故それを!?」
悠介 「だから話したんです。それより早く」
剛漸 「黙れ!貴様の言うことなど誰が───!」
加奈子「お父様……」
剛漸 「お前は黙ってなさい!!」
加奈子「っ……!」
……むか。
悠介 「娘に向かって頭ごなしに怒鳴るとはどういう了見ですか」
剛漸 「ワシの娘だ。ワシがどう扱おうが勝手だろう」
悠介 「……日本文化好きだと思って期待したのに……がっかりだ」
剛漸 「なにぃ!?」
悠介 「……奥さんからの伝言です。『寝ぼけていると刺しますよ』」
剛漸 「───ッッ……!!」
オヤっさんの顔がみるみる内に真っ青になってゆく。
剛漸 「あ、や、ま、雅枝!許してくれ!ワシは……ハッ!」
加奈子「お、お父様?」
剛漸 「き、貴様!どうしてその言葉を!?」
悠介 「奥さんから聞きました。それじゃあお見せしましょうか。
…………雅枝さんの残留思念がその姿ごと出ます」
……ヒィイ───……ン……
剛漸 「……っ!ま、雅枝ぇっ!!」
雅枝 「剛漸さま……」
剛漸 「ワ、ワシは……ワシはお前が居なくなって……寂しくて……!」
雅枝 「剛漸さま」
剛漸 「ま、雅枝……!」
雅枝 「何故この方の言うことを信じてくれないのです」
剛漸 「え?」
感動の名シーンが突然凍りつく。
雅枝 「黙って聞いていれば、やれあーだこ−だと文句をつけて……!
せっかくわたしの代弁をしてくれたというのに、なんですかその態度は!」
剛漸 「ひっ!あ、ち、違うのだ雅枝!ワシは」
雅枝 「しかもわたしの遺言も叶えてくれずに……!」
剛漸 「は、はああ……!」
雅枝 「聞いているのですかあなたっ!寝ぼけていると刺しますよ!」
剛漸 「ひぃい!ゆ、許してくれぃ雅枝ぇ!ワシが悪かったぁっ!」
……尻に敷かれるタイプか。
加奈子「………」
悠介 「ホラ、あれを止めるのはキミの役だろ?」
加奈子「……そんなことまで?」
悠介 「伊達に神主やってないよ。ホラ、行っておいで」
加奈子「は、はいっ!───お母様!」
雅枝 「……か、加奈子っ……!」
加奈子「お母様ぁっ!」
ああ、いい場面だなぁ。
これこそ感動の名シーンってやつだよな。
……いいな、こういうのって。
……家族、か……。
やがてふたりの姿が重なってゆく。
そしてふたりは抱きつきゴシャア!!
加奈子「はうっ!」
雅枝 「加奈子!?」
……まあ、思念体ですし。
抱きつけるわけないっす。
でも結果的に喧嘩を止めたな。
すごいぞ加奈子ちゃん。
加奈子「お母様……わたし、わたし……」
雅枝 「……いいのですよ。わたしの分まで、お父さんを支えてあげなさい」
加奈子「お母様……お母様……」
雅枝 「……加奈子はいい子ね……。あなたはわたしの誇りよ……。……あなた」
剛漸 「ヒィ!な、なんだ……?」
雅枝 「……わたしが召されて以来、ずっと見てきましたが……。
よくもわたしの大事な加奈子をイジメ通してくれましたね……!」
剛漸 「あ、そ、その……!強くなってほしかったんだ!
お前みたいに育ってくれたらワシはっ!」
雅枝 「この子はか弱く純粋に育てるのですっ!!」
ガオオン!と恐ろしいまでの威圧感を放つ奥さん。
ああ、これじゃあオヤっさんの威圧感が少ないわけだ。
こんな人を奥さんにしちゃあ威厳なんて残らない。
雅枝 「…………あなた、名前は?」
悠介 「晦悠介です」
雅枝 「そう……ありがとう。
あなたのおかげで言えなかったこと、いっぱい伝えられたわ……」
加奈子「はい……まさかまたお母様に会えるなんて……」
剛漸 「……余計なことをしてく」
ギロリ。
剛漸 「……なんでもありません」
どうやらこのオヤっさん、妻がよっぽど苦手だったらしい。
でも、それでも好きだったことに変わりはないんだろうな。
……いいな、そういうのって。
雅枝 「それでは、お願いしますね。ちゃんと墓に埋めてくださいね」
加奈子「はい、お母様」
剛漸 「ま、まま雅枝ぇ〜!」
やがて奥さんの体が消えかかる頃、オヤっさんがその姿を見て泣いた。
雅枝 「泣かないでください剛漸さま。あなたがしっかりしなくてどうするんですか。
……加奈子をここまで育ててくれてありがとう。
でも……純粋さを欠かすようなことをしたらまた夢枕に立ちますからね」
剛漸 「ま、雅枝ぇぇえ〜……!!」
脅迫まで織り交ぜたような最後の言葉に号泣。
これは一応感動の場面なんだろうか。
───それでも奥さんの体は消えていった。
あとに残された木箱を大事そうに抱え、オヤっさんは泣いた。
剛漸 「………小僧」
悠介 「なんですか」
剛漸 「……ワシはまだ認めたわけではないからな」
悠介 「認めてもらおうだなんて考えてませんよ。
ようするにあなたの考え方が気に入らなかった。
人を道具扱いするその精神が嫌いなだけだ」
剛漸 「………」
岳臣 「……旦那さま。この無礼者、如何……」
剛漸 「黙っておれ。……小僧、他に何ができる。
霊魂を呼ぶだけでも祓えなければ意味はないぞ」
悠介 「祓うことくらい出来るさ。他に曰くつきの物は?」
剛漸 「……岳臣、あれを持て」
岳臣 「───は、アレでございますね」
岳臣と呼ばれた男が部屋を出てゆく。
結構なスピードだ。
そして大した間も置かずに戻ってくる。
岳臣 「旦那さま、これを」
剛漸 「ワシに近寄らせるんじゃない!呪われるだろうが!」
岳臣 「はぁ……おい小僧、これを祓ってみろ」
岳臣さんが目の前の台に骨董品のようなものを置く。
それはただの壷のようにも見えたが、
明らかに異様な部分は顔のようなものが浮き上がって動いていること。
壷 「が……あ、ぁぁあ〜……」
壷の顔はうめくように泣いている。
いや、鳴いていると言ったほうが適当だ。
悠介 「……この霊の姿が壷の中から実態として出ます」
自分でも無茶なイメージを纏め、
それでもその媒介としてその霊を巻き込んで無理矢理創造。
意外にも、それは成功した。
霊 「が……ぁああ〜……うぅぅ……ニクイ……ニクイィイイ……」
剛漸 「ギャーッ!!で、で、で、でたーっ!」
加奈子「……これがオバケですかー……初めて見ましたぁ……」
さっきの残留思念はどう見てたんですかお嬢様。
霊 「キ……キキ……キサマ……オレヲハラウノカ……!?」
悠介 「祓うよ」
霊 「オレガ、オレガナニヲシタ……オオレガナニヲヲヲ」
悠介 「未練がましいんだよ、とっとと消えろ」
霊 「ギィイ……!」
霊が逆上して襲い掛かる。
その顔面に的確にカウンターをメシャアと決める。
霊 「ギャアッ!?バ、バカナ……!オレノカラダニチョクセツフレルナンテ……!」
悠介 「憶えとけ、祓う者ってのはそれなりの腕を持ってなきゃ語れないんだよ」
霊 「マ、マテェッ!ヤメロォオッ!!」
悠介 「───裁き」
バチィイッ!!
霊 「───……!!」
……浄化完了、と。
加奈子「…………すごい、オバケを片手だけで……」
剛漸 「………………」
悠介 「それで、剛漸さん?他に何か曰く付きの物は?」
剛漸 「…………岳臣、妖刀・壊塵刀を持て……」
岳臣 「…………」
剛漸 「岳臣?どうした、早くせい」
岳臣 「ク、ククク……ク」
剛漸 「岳臣……?」
岳臣 「ソレハ承伏デキンナァ……」
剛漸 「!?」
岳臣 「ソノ願イを聞イテホシクバ、今スグレタスヲ用意」
ドバァン!
岳臣 「ギャーオゥ!」
加奈子「きゃあっ!岳臣さん!」
悠介 「………お前な、いつの間に入ってきやがった」
岳臣?「な、なにをなさるの?俺はどこに出しても恥ずかしくないほどの岳臣よ?」
悠介 「よし、だったら月蝕力で調べてみよう。
本当に岳臣て人なら消えたりしない筈だから」
岳臣?「それで気が済むのでしたら、どうぞ」
悠介 「───カオス・エクリプス……」
ブワァッ!
大きな唸りをあげて、黒い闇が広がる。
岳臣?「ギャアア本気だぁーっ!ごめんなさい許してアタイが悪かったです!」
黒い闇は岳臣?氏を包み込む。
岳臣?「い、いやっ!イヤーァアアア!まだ消えたくない!粉雪!粉雪ーっ!ギャーッ!」
───やがて闇が消える頃、その場には誰も居なかった。
それを見ていたドアの前に立つ使用人が汗をだらだら流している。
悠介 「………」
使用人「………」
悠介 「ルナ」
使用人「!!」
悠介 「……な、わけないよなぁ。ははは」
使用人「………」
安堵の息を吐く使用人。
悠介 「───カオス・エクリプス」
使用人「!!」
唱えた途端、使用人が凄まじい速さで壁へ向かって逃げる。
が、壁に衝突して怯む。
使用人「え!?うそ、やだっ!どうして通れないの!?」
悠介 「死神が通れなくなる見えない壁が出ます。……便利だろ?」
使用人「…………!!」
悠介 「さあ、断罪の時間だ」
使用人「ま、まま待ってよ悠介!ホモさん消しちゃうなんてどうかしてるよ!?」
悠介 「どうもしない。何も言わずにとっとと消えろ」
使用人「ゆ、悠介……!」
そうこう言ってる間に、闇が彼女を埋め尽くす。
彼女は何かを唱えたが、次の瞬間には消えていた。
───……。
彰利 「………………───ぁあああああああああああああっ!!!!」
ガボシャーン!
大きな唸りを上げて、水飛沫が飛び散った。
彰利 「ぶはっ!ゲホッ!ゲホーリ!ど、どこだここは!
まさかこれが噂に聞く血の池地獄!?キャアすげぇ!か、カメラは!?」
ドゴォッ!
彰利 「ギャッ!?」
ルナ 「い、いたたた……」
彰利 「おや?やあルナっち、壮健かい?」
ルナ 「ホモっち?……あ、あれ?わたし、悠介に月蝕力で……」
彰利 「ほへ?はっはっは、馬鹿言っちゃいかんよ。
あれは月蝕力に見せかけたブラックホールじゃなかと」
ルナ 「───えぇ!?」
彰利 「まあどうやら神社の滝壷に繋げてあった穴に、
我らを放るイメージでも作ったんデショ。まったく芸細かになったもんじゃて」
ルナ 「……それならひとこと言ってくれればよかったのに」
彰利 「言ったら逃げるっしょ」
ルナ 「うー」
彰利 「しかしだ。こうまで徹底してアタイらを追い出すとあっちゃあ……
ダーリンの野郎、本気じゃぜ!?」
ルナ 「………」
───。
悠介 「これが壊塵刀?」
剛漸 「そう、古より我が家に伝わる妖刀だ」
悠介 「ふむ……」
まず手に取ってみる。
途端、寒いなにかが全身に纏わりついた。
悠介 「……なるほど、妖刀ね」
動かなくなりそうな体を強引に動かし、刀を引きぬいた。
……現れたのは滑らかな刀身。
どうやら刃の周りに軽いかまいたち現象のようなものがあるようで、
触れただけでも肉が切られる。
試しに軽く振ってみた。
悠介 「───おお」
刀から輝きのようなものが散り散りと飛び、やがて戻ってくる。
悠介 「硝子の刀か!」
おおお!すげぇ!しかも呪いみたいなのがかけられてて刀身も頑丈だ!
剛漸 「硝子の刀?」
悠介 「名前通り、硝子で出来た刀です。
名無しの邪術師が鍛え上げた刀の内のひとつだって聞いてる。
3本あったらしいんだけど、その一本が家にあります。
家にあるのは滅人刀。こっちのは硝子纏いじゃなくてかまいたちだった。
振ればその風の刃が物を切り刻む。あと一本が……まあ」
彰利 「俺の家にあるのさー!」
悠介 「……戻ってくるの早いな」
彰利 「任せろ」
剛漸 「な、なんだキサマは!」
悠介 「俺の友人です」
剛漸 「ぬ……」
彰利 「で、これが断影刀。月光石って誰ぞが持ってきた石を鍛え上げたらしいんじゃが、
これのステキなところは……フン!」
───キィン!!
彰利 「……〜〜〜っ!これこれ!この光が唸る音!これが最強なのよ!」
影を断つ刀だから、切った軌道の部分が光り輝くという変わった刀だ。
ルナ 「滅人刀ってこれよね?」
悠介 「……人ン家の宝刀を勝手に持ち出さないように」
ルナ 「だってー……」
彰利 「で、我が家に伝わる断影刀の付属説明書によるとだな」
悠介 「あるのかそんなもん」
彰利 「えーと……まず3本の刀を並べます」
悠介 「ふむ」
彰利 「そして……月癒力で融合させるんだと」
ルナ 「わたし?」
彰利 「そゆこと。出来るのルナっちしか居ないし」
悠介 「俺はもう魂結糸も切っちゃったしな」
ルナ 「むう。それじゃいくよ?」
剛漸 「待て。それで何が起きるというのだ」
彰利 「それは見てのお楽しみ!
いやー、3本の内1本がどうしても見つからなくて悩んでたのよ。
彼岸達成が近い!さぁどうぞルナっち!」
ルナ 「ん……───」
ルナが目を閉じて何かを念じる。
すると刀が浮き上がり、段々と重なってゆく。
やがて───
ガカァアアアアアッ!!
大きな音を立てて、それらは融合した。
彰利 「……これが、冥月刀か……」
彰利が声を漏らして、その刀に触れる。
彰利 「………………悠介パス」
悠介 「おわっ!?ど、どうしろっていうんだよ」
彰利 「いや、どんな効果があるんかなーって」
悠介 「そんなの自分で試せよな……よっと」
キヒィインッ!
悠介 「うおっ」
鞘から引き抜いただけで透き通ったような音が鳴った。
見れば、魅了されそうなくらいに美しい刀身。
しかも造りは完全に刀だ。
昔物好きな俺にとっては……うおお!欲しい!これは欲しい!
よ、よし、彰利の言う通りだ。
まずはどんな効果か試してみなければ。
ブンッ。
悠介 「…………おろ?」
ブンブンッ!
悠介 「…………なにも起きないな」
彰利 「んな馬鹿な。ホレダーリン?アタイに貸してみ?」
悠介 「……物事を上手く出来なかった子供に対して、
俺なら出来るって顔で近寄る父親のような顔をするな」
彰利 「例えが長いよダーリソ。まあいいコテ。あ、そーれ」
ブンッ。
彰利 「………………アラホント」
悠介 「んー……あ、そうだ。月操力で融合させたんなら、
月操力をそれに流すような感じで振ってみたらどおうだ?」
彰利 「オウ、グッドアイディア。いくぜ───覇ッッ!」
ガガァッッキィイイン!!
彰利 「うわぁっ!?」
悠介 「おぉわっ!」
…………スゥ……。
彰利 「…………ダ、ダーリン……見た?」
悠介 「…………あ、はは……目、疲れてるんカナ……」
今、確かに空間が切れたような……。
しかもすごい音……。
彰利 「ダ、ダーリン振ってみて」
悠介 「あ、あ……ああ……」
チャキッ……。
悠介 「───覇ァッ!!」
ブンッ。
悠介 「…………俺の場合は何も起こらんな。
どうやら使えるのはお前だけみたいだな」
彰利 「ええっ!?アタイだけ!?アタイだけの刀!?彰利刀!?」
悠介 「……剛漸さん?」
剛漸 「あ?あ、ああ……いや、構わん。それはお主達に返そう……。
まさかとは思っていたが、晦……あの月の家系の者だったとはな……」
悠介 「知っているんですか?」
剛漸 「倭に深く精通する者なら知らん者はおらんだろう。
昔、ワシの先祖がその家系から盗みを働いたそうでな。その刀がそれなのだ」
彰利 「タオチェイ!?」
悠介 「道理で。2本とも家系の家にあったのに1本だけ無いわけだ」
彰利 「アタイが使えるのは血が濃いから?」
悠介 「そんなところじゃないか?」
剛漸 「……悠介くん、すまなかった。ワシはあなたさまが家系の人とは知らず……」
悠介 「あなたさまぁ!?よ、よしてください!
俺は敬称つけられるのが一番嫌いなんだ!」
彰利 「特に『さま』はねぇ」
剛漸 「加奈子、この話は諦めなさい。ワシ達には過ぎた血だ」
加奈子「…………はい」
剛漸 「ワシどももずっと後悔していた。その刀はワシらの恥じだった。
処分するわけにもいかず、ずっと困っていたのだ。
それを持ち主が取りに来てくれ、
しかもそんな綺麗な刀になるところまで見せてもらった。ワシは……満足だ」
彰利 「アタイも満足ー!次元刀ォーッ!」
ゴゴォッキィン!!
彰利 「エ、エクスタシー!惚れたー!目覚めたー!刀最強!俺も最強!」
……ああ、また彼が人間から離れてゆく……。
彰利 「あ、そういえば月空力をメインにして使ってたから解らんけど……
他の月操力は使えるのかしらん?まずは月然力」
バシャア!
彰利 「おお、水が!自然代表って水ですか!?
秘剣!ナイアガラスマァーッシュ!!!」
バシャア!ズドドドドドドド!!!
剛漸 「ぐわぁーっ!!」
……ドサ。
彰利 「…………や、やっちまった……」
悠介 「なにやってんだ馬鹿!」
彰利 「ま、まあまあ。月生力オープン!
これで『いやしの杖』のようにみね打ちで回復!そーりゃ!」
ゴスゥ!
剛漸 「……ッ!」
彰利 「あれ?」
悠介 「思いっきり殴ってどうする!自分の馬鹿力考えて行動しろ!」
彰利 「おっとすまねぇ。冥月刀よ、彼の者を回復したまへ〜♪」
チョンッ。
剛漸 「───!お、おおおお!な、なにかがワシの中で目覚めた!?」
どうやら回復したらしい。
彰利 「…………いいわコレ!能力増幅効果があるっすよ兄貴!
これなら───イケる!月然力よ!自然がもたらすすべてを我に!
震天裂空斬光旋風滅砕神罰割殺撃ィーッ!!」
ガオォオーン!!
彰利 「……ッ!カ、カイカーン!悩みのタネだった雷系も出来るよー!
退魔効果は無理でも、これで月鳴力に近づいたァーッ!」
ああ、またまた彼が人間から離れてゆく……。
加奈子「あ、あの……家を壊さないでください……」
彰利 「え?あ……」
見れば、調子に乗って暴れ回った彰利の所為で、部屋は結構ボロっちくなっていた。
彰利 「…………えーと……ルナっちあとヨロシク!時の剣よ!僕の時代へ!」
キィインッ!
ルナ 「あぁっ!?ちょっとー!」
彰利がクレス・アルベインの真似をして消えた。
……どこまで便利なんだあの刀。
悠介 「……それじゃ、加奈子ちゃん」
加奈子「あ、はい……今日は我が儘を聞いてくださってありがとうございました……」
悠介 「いいって。……転校するんだろ?」
加奈子「えっ?なぜそれを!?」
悠介 「……まあ、いろいろとね。お元気で」
加奈子「は、はいっ!ありがとうございました!
あ、あのっ……わたし、あの日からずっと、あなたのことが……」
彰利 「ギャアア!!」
ドシャア!!
彰利 「ダオスさまのバカーん!なにもいきなりダオスレーザー撃つことないだろー!?」
悠介 「……どこまで行ってたんだよお前は」
彰利 「ああっ、悠介、ルナっち、来てくれ!刀じゃあ倒せないんだダオスさまは!」
悠介 「え?お、おいちょ───」
ルナ 「な、なんでわたしまでー!」
キィイインッ!
──────…………
加奈子「………」
剛漸 「……気にするな。向こうできっといい者が見つかるだろう」
加奈子「……はい」
───こうして、よく解らんお見合い騒動は幕を下ろした。
彰利は思わぬ収穫に鼻息を荒くして、いろいろなことを試しまくった。
その結果、一ヶ月ほど行方不明になったのだが……
……まあ、そんなことは日常茶飯事になりつつあるこの世界だ。
もう、何も言うまい───とか言いつつ。
冥月刀で転移した先で待っていたダオスさまが、
出番の無かった姉さんだったことに気づくに至り……
俺は光輝く神屠る閃光の矢から叫びつつ逃げることだけが精一杯だった。
ああ、ダオスレーザーってこれのことだったのね……。
とか思っている刹那、隣を逃げていた彰利が吹き飛ばされて滝壷に落ちていった。
……その日はとてもいい天気でした。
───完。
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