─LunarCalendar〜月の輝く夜〜─ 試作でボツネタ第二弾・兄貴と一緒
…………。 トントントン。 紅葉 「おに〜ちゃん、朝ですよ……」 ノックらしき音のあと、紅葉の声が響く。 悠介 「………」 目を擦りながら、布団から出る。 紅葉 「お兄ちゃん?起きてますか……?」 再び紅葉の声。 悠介 「ああ、起きてるふぁ〜……」 返事の途中であくびが出て、ヘンな言葉になった。 紅葉 「朝ゴハン出来てるから、     降りてきて一緒に食べよう?」 悠介 「ああ、解った」 返事をすると、部屋の前から足音が遠ざかる。 毎朝有り難いことだ。 ハンガーに掛けておいた制服に着替え、部屋を出る。 悠介 「んっ……ん〜っと」 大きく伸びをしながら階段を降りる。 洗面所に行って顔を洗うと、いざダイニングルームへ。 悠介 「おはよう」 改めて朝の挨拶をする。 紅葉 「おはよう、お兄ちゃん」 柚葉 「ああ、兄さんおはよう」 紅葉と柚葉がそれに応える。 悠介 「………」 相変わらず何もせずに立っていたら、 どっちがどっちだか解らん。 今は紅葉が料理を並べ、柚葉が後片付けをしている。 それは日常の行動のおかげで解る。 改めて、双子の妹達を見る。 悠介 「………」 俺のことを『お兄ちゃん』と呼ぶのが紅葉。 そして『兄さん』と呼ぶのが柚葉。 紅葉は料理が得意で、柚葉は物の整頓や片付けが得意。 ……こんな所くらいしか見分けがつかない。 悠介 「柚葉、今朝は……」 柚葉?「柚葉ちゃんはあっち」 悠介 「へ?あ、あら?」 紅葉?「柚葉ちゃん、からかっちゃ駄目でしょ」 柚葉?「あたしがお兄ちゃんをからかうわけないでしょ」 悠介 「………」 たまにこんなことをされると、ますます解らん。 悠介 「えっとな、今朝は調子はどうだ?」 紅葉 「元気印」 柚葉 「元気卵」 悠介 「お前が柚葉か」 『卵』と言った方へ言い放つ。 柚葉 「しまっ……」 ぼかっ!! 柚葉 「んきゃっ!」 悠介 「朝っぱらから兄をからかって何が楽しいかっ」 柚葉 「コミュニケーション万歳」 言いながら両手を掲げる柚葉。 紅葉 「万歳」 柚葉に習って、紅葉まで手を挙げる。 悠介 「紅葉……こいつのようにはなるなって言っただろう?」 柚葉 「何を言うのよーっ。     紅葉とあたしの性格は紙一重よ?」 紅葉 「それは言えてるかも……」 柚葉 「だってわたしたち♪」 紅葉 「双子ですもん♪」 ぼかぼかっ! 柚葉.紅葉「んきゃっ!!」 悠介 「馬鹿やってないで食うぞ」 紅葉 「お兄ちゃんノリ悪い……」 柚葉 「ブーブー!わらわは退屈なるぞ〜っ」 ズパンッ!! 柚葉 「あたっ」 新聞紙を丸めて柚葉を攻撃。 悠介 「食・う・ぞ!」 柚葉 「……ハイ」 ようやく頷いた柚葉を椅子に促し、朝食に取り掛かる。 悠介 「いただきます」 柚葉 「いただきまーす」 紅葉 「頂きます」 もくもくもく……。 うん、美味。 柚葉 「……ほっほぉ……紅葉ぃ、     また料理上手くなったんじゃない?」 紅葉 「え?そ、そうかな……」 悠介 「ああ、確かにそうだな。     昨日は柚葉の料理食ったから尚更だ」 柚葉 「むかっ……ゆで玉子スパーク!!」 柚葉の声に反応して顔を上げると、 ゆで玉子が飛んできた。 悠介 「サンキュ」 それをキャッチし、頂くことにした。 柚葉 「うわわ、返して……」 悠介 「悪戯した人罰」 紅葉 「天罰じゃないんですか?」 悠介 「俺が下す。だから人罰」 柚葉 「紅葉ぃ……」 紅葉 「……もう。     後悔するなら食べ物を粗末にしないの」 柚葉 「面目ない……」 紅葉から、紅葉の分のゆで玉子を受け取る柚葉。 悠介 「………」 俺も黙って、紅葉に自分の分を譲る。 紅葉 「あ……そんな、悪いですっ」 それを返そうとする紅葉。 悠介 「いいから受け取れって。     悪いと思うなら、柚葉に渡したゆで玉子を取り戻せ」 紅葉 「あう……」 柚葉 「ヒネクレてるね、オニーサマ」 ドゴッ! 柚葉 「あうぅっ!?」 悠介 「元を正せばおのれが悪いんだ馬鹿」 柚葉 「どうしてあたしばっかり殴るのさぁ……」 紅葉 「……いいなぁ」 柚葉 「へ?」 悠介 「ん?」 紅葉 「え?あっ……な、なんでもないの」 柚葉 「も、紅葉ちゃん……まさかアッチのケが……」 ガタン。 柚葉 「───ハッ!!」 俺は席を立って、柚葉に向かって歩いた。 柚葉 「あ、ウソ!ウソです!     やだなぁそんなこと本気で思うワケ」 悠介 「おだまり!」 柚葉 「は……う……勇気ある逃走!」 悠介 「逃がさん」 逃げ出す柚葉の襟首を掴む。 柚葉 「ヤだ――――っ!!」 悠介 「さて、柚葉サン?こうなったらどうなるか……     解っておりますわよね?」 柚葉 「……兄妹愛を育む」 悠介 「否定します」 柚葉 「三人で旅行に行く」 悠介 「否定します」 柚葉 「………」 悠介 「………」 柚葉 「く……くすぐり地獄」 悠介 「肯定」 柚葉 「ヤぁ――っ!!」 悠介 「ダメ、逃がさん」 柚葉 「イヤやめて良い娘になりますだから許してぇっ」 その言葉を笑顔で却下すると、俺は柚葉を苛めかかった。 ……。 …………。 ……チ――――ン。 悠介 「御臨終です」 笑い泣くほどまでヒートしたくすぐり地獄を停止する。 柚葉がぐったりしてる。 悠介 「じゃ、行くか」 紅葉に向き直り、いつも通りに言い放つ。 紅葉 「でも柚葉が……」 悠介 「自業自得だ」 時間はあまりなかった。 紅葉 「でも……」 悠介 「………」 溜め息を吐くと、柚葉を背負うことにした。 紅葉 「わ……」 悠介 「ん?どうした?」 紅葉 「え?あ、ううん……なんでも……」 悠介 「?……まあいいけど」 柚葉の鞄を手に取り、玄関へ。 靴を履き、玄関を出る。 そして固まった。 悠介 「………」 遥かなる空からは、雨が降っていましたとさ。 紅葉 「………」 さて、どうしよう。 さっきまで降っていなかったのに、どうしてこんな……。 まあ、空の具合からすると天気雨のようなものだろう。 紅葉 「狐の嫁入り、だっけ」 ぼうっとしながら、紅葉が言う。 悠介 「狐が嫁入りするとでも言うのかネ、モミジくん」 紅葉 「……うん、きっと……ね」 悠介 「俺はそんなこと微塵にも思わないが」 紅葉 「そんなものですよお兄ちゃん」 談笑する。 悠介 「で、どうするか」 紅葉 「カサさせばいいんじゃないかな」 悠介 「……どうやって?」 紅葉 「どうって……あ」 言って、状況を復元する紅葉。 俺は柚葉をおぶっているため、両手は使えない。 悠介 「よし、提案がある」 紅葉 「なんでしょう」 悠介 「こいつを捨てていこう」 紅葉 「却下しますね」 悠介 「何故ですか、解説のモミッちゃん」 紅葉 「わたしやお兄ちゃんが違っても、     柚葉はこれでも皆勤なんですから」 悠介 「……そうだっけ」 紅葉 「無関心なんですね」 悠介 「当然よぅ!我は自由を誇りに生きる生物ぞ!」 紅葉 「じゃあ訊くけど……。     お兄ちゃんにとって、自由ってなに?」 悠介 「お前達で遊ぶこと」 紅葉 「……ひどく矛盾してるって気づいてる?」 悠介 「あたぼうよぅ!我は矛盾を糧に尊ぶ者ぞ!」 紅葉 「さっきと答が違います。     はっきりしてください」 悠介 「まったく、俺と1対1になると凛として……。     兄さんは悲しいぞ」 紅葉 「それとこれとは話が別です」 悠介 「………」 まいったな。 紅葉に嫌われてるのかな、俺。 悠介 「じゃあ、答だ。     自由と矛盾なんてものは紙一重だ。     光と影が背中合わせなように、     何かを成さんとするなら     そこに矛盾が生まれるのは当然のことだよ」 ぶっきらぼうに答えて、柚葉を持ち直す。 悠介 「満足したか?じゃ、行くぞ」 紅葉 「え?あの……」 悠介 「なんだよ、このままじゃ遅刻するだろ?急ぐぞ」 紅葉 「あ……えと、カサ……」 悠介 「俺のカサはこいつで十分だ」 再び柚葉を構える。 カサにしては範囲は小さいが、 別に濡れたところで気にはならない。 悠介 「肺炎にだけはなるなよ柚葉」 無理難題を柚葉に言って、俺は走った。 ドゴッ! 悠介 「おぶぅっ!」 途端、膝蹴りを頬に喰らう。 悠介 「なんだ、起きてたのか」 柚葉 「くすぐり程度で気絶しますかっ!     馬鹿言ってないで降ろしてよ、もう……」 悠介 「ダメだ」 柚葉 「なんでぇ」 悠介 「俺はこのカサがいい」 柚葉 「人をなんだと思って」 悠介 「だからカサ」 ドゴッ! 悠介 「おぶうっ!」 再び膝が入る。 悠介 「……こうなったら意地だ。柚葉、傘を持て」 柚葉 「はぁ、やっと降ろす気に」 悠介 「バカたれ!アホたれ!焼肉のたれィ!     貴様はカサを持つだけでいいんだよ」 柚葉 「……はいぃ……?」 悠介 「チッ、仕方の無い奴め。ほら」 上手く屈んで、傘を取る。 悠介 「持て」 柚葉 「う、うん」 悠介 「さあ、行こうか」 柚葉 「待って」 悠介 「ならぬ」 柚葉 「このまま行く気!?」 悠介 「?……おかしなこと訊く奴だなぁ。     決まってるじゃないか、そんなこと」 柚葉 「降ろしてっ!」 悠介 「暴れると噛みつくぞ」 柚葉 「あう……」 黙った。 悠介 「よし!レッツゴー!!」 そして俺は大地を蹴った。 悠介 「ぶわっ!冷てっ!ちゃんとさせ馬鹿っ!!」 柚葉 「こんな体勢でさしても     兄さんに届くわけないでしょう!?」 悠介 「科学の進歩でなんとかしろ!」 柚葉 「それこそ無茶よ馬鹿兄貴!!」 悠介 「……貴様、今の状況を理解していないようだな」 柚葉 「な、なにさ」 悠介 「エアプレンスピンとデスパレーボム、どっちがいい?」 柚葉 「誠意を持って、ささせて頂きます」 悠介 「うん、たいへんよろしい」 そして再び駆けた。 それを追うように紅葉が走る。 …………実に奇妙な光景だった。 教室。 いつものように朝はやかましいことこの上ない。 でもまあ、これが無ければ朝の学校って感じはしない。 これはこれで大事な刻だろう。 歩きながら騒いでいる生徒を横目に、 俺は昇降口へと歩く。 ちなみに言うと、雨は途中で止んだ。 その時を待っていたかのように柚葉が 『あぁれ――っ!!チカンよ誘拐よ――っ!』 などと叫びやがったのです。 俺は驚くべきスピードで柚葉を降ろし、ゲンコツ。 で、現在に至るわけである。 ふう。 悠介 「現代のシステムは効率悪くてイカン」 意味もなく愚痴ってみました。 ええ、意味はありません。 さぁて、また会いましたね上履きさん。 今日も一日よろしゅうたのんます。 カチャッ……。 …………。 目に映る白い封筒。 封をしてある紙筒なのだから封筒だろう。 なにも郵便局に出すものばかりが封筒じゃない。 手紙ともいえるだろうが、封筒でいいだろう。 悠介 「……ま、まさかこれはッ!!」 世間一般で言い寄らすばいラヴレトゥァー!? は、春ぞ!! ついに我にも春が!! なんて喜んだりはしないけど。 いや、なんとなく初めての体験だから嬉しい気もする。 するけどさ。 相手がモンスターだったら泣くしかないじゃない。 どうしようかね。 いや、とりあえず見るだけ見てみよう。 カサカサ……。 俺は内心、漢字で書くと恋文と書くとは、 どんなことが書いてあるものなのだろうと 素敵に無敵に胸が高鳴っていた。 いざ、開帳!! …………。 『果たし状』 大きな文字でした。 わあ。 こんな激烈的衝撃を受けるラブレター、見たことないや。 『これを見たら校舎裏に来られたし』 なんだか凄くムカツいてきました。 行ったろうやないのドチクショウ……!! 履き代えようとしてたばかりの靴を履き直し、 俺は校舎裏へと走った。 一体何処の誰だ! こんな血も涙も無いことをする奴ァ! やがて校舎裏に辿り着く。 声  「ふふふ、待っていたよ呼逆くん」 そしていきなりの声。 悠介 「誰だ!」 声  「フフフ……」 不適な含み笑いを醸し出しながら、男の姿が現れる。 男  「やあ、呼逆くん」 悠介 「山伏……」 クラスメイトでした。 悠介 「悪戯にも程があるぞ、どっか別の奴を標的にしろ」 山伏 「それは無理だね。     なぜなら、僕が用があるのは貴様だからだ!」 悠介 「なんでさ」 山伏 「……ッフン、貴様を倒して     紅葉くんとラブな関係になるためさ!」 悠介 「そうか」 山伏 「そうだ」 悠介 「よし、うん、よぉぉぉぉぉっく解った。     なるほどねー、うん、そうかー。     ところでな、山伏」 山伏 「フフ、なんだボンクラ」 悠介 「一発殴らせろ」 山伏 「え?」 悠介 「よくもそんなくだらない理由で     人様呼び出してくれたなこの野郎……」 山伏 「ま、待ちたまえ!ぼ、暴力は良くないよ!?」 悠介 「暴力じゃない、指導だ。     大体果たし状ってのは     もっと味のある封筒に入れるもんだろ馬鹿」 山伏 「な、なんだ?もも、もしかして     春が来た〜とでも思ったのか?あはははは!     美しい時間をプレゼントしちゃったな〜!」 悠介 「……よし、こうしよう」 山伏 「は?」 悠介 「殴るのは無しだ」 山伏 「お、おおお、ナイス名案!」 ゴパァアン!! 山伏 「もぎゃあっ!!」 『春』の代わりに『張る』をプレゼント。 張る:はる 叩く、引っぱたく。    相手の頬を叩くことの意。とてもイタイ。 めくるめく春の瞬間がそこにあった。 山伏 「あ……あああ……!!」 山伏の目が俺を見据える。 山伏 「ぶ、ぶぶぶ……ぶったな……!!     親にも叩かれたことないのに……!!」 悠介 「ああ、ぶったね」 山伏 「あ……」 悠介 「なんだよ、やるか?」 山伏 「兄貴……」 ポッ、と頬を染めて俺を見る山伏。 悠介 「は!?」 山伏 「知らなかった……。     呼逆がこんなに漢らしかったなんて……」 その時俺は、悪寒というものを初めて体験した。 山伏 「兄貴ィイイッ!!」 ガバァッ!と山伏が襲いかかる。 悠介 「ち、近寄るなボケェッ!!」 俺の拳が奴の頬をボギャァッ!!と捉える。 カウンターで思い切り決まった。 山伏 「おふぅう……さすが兄貴……いいパンチしてる」 悠介 「……ッ!」 寒気倍増。 おふぅうってなんだよ!おふぅうって! 『怪しくなってきたのでボツ』 おまけ この時はまだ苗字が確定していなくて、しかも双子姉妹の名前も違っていた。 呼逆って苗字は凄まじい。 これから月の家系だのなんだのを加え、ルナカレが出来ましたとさ。 Next Menu