─LunarCalendar〜月の輝く夜〜─ 試作でボツネタ第三弾・それは昔の…
穏やかな風が吹く、その月の日の夜。 俺は瑞穂と一緒に公園の芝生に寝そべり、空を見上げていた。 瑞穂 「こんな話、知ってる?」 悠介 「……うん?」 瑞穂 「人間に恋をした死神の話」 悠介 「いや……」 瑞穂 「その相手の人間も、その死神のことを愛していたの」 悠介 「……うん」 瑞穂 「死神は人間に強い憧れを持っていた。     彼の側を、地に足をついて歩きたいと思ってた」 悠介 「………うん」 瑞穂 「それは、その人間も知ってた。     だけど、自分ではどうすることも出来なかった」 悠介 「………」 瑞穂 「だけど、とある日。     そんな彼のもとに別の死神が現れた。     『死神を人間にする方法がある』って、彼にそう教えたわ」 悠介 「………………うん」 瑞穂 「彼もさすがに怪しいとは思ったけれど、     でも、それでなんとかなるかもと思って……。     その死神と契約をした」 悠介 「……どんな」 瑞穂 「方法は簡単なことだったんですよ。     ……命の無い者が地上に降り立つには、     どうしたらいいと思います?」 悠介 「……そりゃ単純に考え……れば……」 瑞穂 「……そう、自分の魂をその死神に譲ればいい。     『自分の魂をその死神に譲る』って、     そんな契約をしてしまったの、彼は」 悠介 「………」 瑞穂 「結果、確かに死神は人間のように歩けました。     だけど、その代償として最愛の人を失った。     すぐに魂の糸を辿れば、彼に会えたのに、     死神は糸を辿りませんでした。     どうしてだと思う?」 悠介 「やけに問題口調だな……」 瑞穂 「悠介、退屈そうだったから」 悠介 「……多分、申し訳無かったんじゃないかな。     理由はどうあれ、その彼は自分の命を売ってまで     死神の願いを叶えてやりたかったんだろう?     だから、魂を辿ればその命を捨てることに……」 瑞穂 「……そう。     そんなことを恐れて、命を追わなかった。     でも……わたしからしてみれば、     それは残酷以外のなにものでもなかった」 悠介 「え?ど、どうして」 瑞穂 「死神は、彼と歩きたかったの。     決して、慣れない体で     孤独を歩むことを望んでいたわけじゃない。     悠介なら解るでしょう?     体が不自由だったあなたなら……」 悠介 「あ……」 瑞穂 「それに気づいた死神は糸を辿ろうとしたわ。     だけど、その時にはもう、糸は切れていた。     つまり、間に合わなかったのよ。     肉体が死んでから、時間が経ちすぎていた。     魂を戻したところでまたすぐに死が待っている。     死んでしまった魂はもう使いものにならない。     だから、死神はそれを受け入れるしかなかった」 悠介 「そんな……そんなのってあるかよ……」 瑞穂 「……それから数年後。     人間になった死神は結婚したわ。     相手はもちろん普通の人間。     もちろん、彼のことを忘れたわけじゃなかった。     でも、ずっとそこに居るわけにもいかなかった」 悠介 「………」 瑞穂 「その後、子供が生まれたわ。     元とはいえ、死神と契を交わした男性は死んだ。     だけど、子供を授かることは出来たのよ。     その子供が───」 悠介 「…………」 瑞穂 「……その子供はね、不思議な力を持ってたわ。     人間の身でありながら死の世界に逝けて、     この世界にも逝き来できて。     空も浮ければ魂だって見えた」 悠介 「瑞穂……」 瑞穂 「人間になってしまっていた母にとって、     その子供の力は強すぎたわ。     結果……その子供は母親を殺すことになった。     それから、行く宛も無く、     ずっとひとりで生きてきたのよ」 悠介 「もう……いいから」 瑞穂 「人間と死神のハーフというだけで、     他の死神からは敬遠されて、     何も知らずに人間界で浮くことでも、     化け物って呼ばれて恐れられた」 悠介 「瑞穂……っ!」 瑞穂 「その子に向かう道なんてなかった。     ただ、皆が認めるような死神になればいい。     そう思って必死で頑張った。     でも……結果は変わらなかった」 悠介 「………」 瑞穂 「頑張っても、必死になって努力しても、     わたしは死の世界では異物でしかなかったのよ。     だけど……辛くても死ねなかった。     死神には基本的な寿命は無いから。     でも、人間界に居れば、     確かに『寿命』は存在した。     人間の血がそうさせてたのかもしれない」 悠介 「やめろ……やめてくれ……。     お前、今……自分がどんな顔をしてるか……」 瑞穂 「そこに居れば、成長することだって出来た。     極力、死神の力を使わないように努力しながら     わたしはずっと生きてきた……」 悠介 「……解って……るのかよ……」 瑞穂 「そしてある日、わたし宛に仕事が入った。     正直、その時はもう死神の仕事なんて     どうでもよかった。     だけど後ろ髪を引っ張られる感覚があって……     そして、悠介と会えた……」 悠介 「瑞穂……」 瑞穂 「わたし、今はとっても幸せだよ。     恨んだりもした能力だけど、     今はなら好きになれると思うの。     だって……この世界を歩けるのなら、     お母さんのように、     あなたの死を受け入れなくていいから……」 悠介 「……こ、こら……っ。それはなにか?     俺がお前のために命を捨てるとでもいうのか?」 瑞穂 「違うの?」 悠介 「うぐっ……」 瑞穂 「そっか……わたしのこと嫌いなんだ……」 悠介 「嫌いなもんか!むしろ好───」 瑞穂 「むしろ……なに?」 悠介 「かぁあっ!なんでもないっ!!」 瑞穂 「ん?ん〜?なんなのかなぁ、悠介〜?」 悠介 「……帰るぞ、ばかっ」 瑞穂 「あう、馬鹿って言う方は大馬鹿ですよ〜だ」 笑いながら、俺達は公園をあとにした。 『ボツ。誰がなんと言おうとボツ。別のカタチが出来ちゃったし』 おまけ ギャア、ルナの名前がまだ瑞穂だったころの話だ〜。 うわぁ、これはこれで見てると恥ずかしいさー。 …どうであれ、悠介だけはずっと同じだったんだよなぁ。 なんでだろ。 Menu