───冒険の書64/彼女の過去と殺人鬼さん───
【ケース222:中井出博光(再)/マリア様が覗きの罪で懲役50年をくらってる】
それから殊戸瀬は語った。
自分が殊戸瀬エレクトロニクスカンパニーに産まれ、
産まれた時から周りとは違うのだと教えられて生きてきた事実を。
周りに自分と遊んでくれる人などおらず、遊びという言葉さえ知らなかった事実を。
一日中部屋の中に閉じ込められ、
家庭教師に教えられるままに機械的に勉強を続けるだけだった幼年期のことを。
いわゆる箱入り娘ってやつだ。
実家は武家屋敷───というか、立派な家元らしく、由緒正しい血筋の分家なんだとか。
その権力といったら結構なものらしく、分家とはいえ相当の実力者だとか。
家元の名は“宮間”。
どっかで聞いた覚えがあるが、それはまあどうでもいい。
それがかつて、
彰利が秘剣ナイアガラスマッシュを当てて見せたどこぞの厳格なおっさん───
宮間剛漸って言ったか?と同じ苗字だったとしても、
それはきっと気の所為に違いない。そういうことにしておこう。
しかしそんな家系に産まれて尚、殊戸瀬のじーさんは時代の先を歩こうと、
一代で殊戸瀬エレクトロニクスを設立。
瞬く間に力を伸ばし、息子である殊戸瀬の親父に跡を託し、
やがてそれは殊戸瀬の夫となった丘野へ。
まあ丘野のことについては俺も知っているからそこのところは流そう。
肝心なのは───幼年期のことらしい。
仕事が忙しかった殊戸瀬(父)は、
実家である宮間の分家に殊戸瀬をずっと預けっぱなしだったらしい。
もちろんさっき言った通り、部屋に縛りつけて日がな一日家庭教師と勉強。
それが当然として育った殊戸瀬は孤独の意味も知らないままに生きてきた。
それでも時々“勉強ばかりさせるのも”と、
祖母である伊予さんが部屋から出してくれたそうだ。
けれど殊戸瀬は遊びの仕方も知らない。
勉強漬けだったために感情も思うように発達せず、
引っ込み思案な性格に成長してしまった。
祖母に貸してもらったお手玉を使って遊んでみるも、それの使い方さえ知らなかった。
やがて“遊び”というよく解らないものに興味を無くそうとしたその時だ。
遊んでいた庭に、見覚えの無いボールが降ってきたのは。
周りを見渡してみても誰が居るわけでもない。
けど、しばらくすると申し訳無さそうに、
ひとりの少年が植え込みの間から忍び足で現れたのだ。
何を隠そう、これがのちに我らが出会う丘野くんその人であるのだという。
ヤツは足音を極力立てないようにこっそりとアンローフルインヴェイジョンをし、
やがてボールのところまで近づいて───目の前に殊戸瀬が居るのに気づいた。
同年代、しかも同じ背格好の存在が居れば、当時のガキにしてみれば誰でも仲間。
それは丘野くんも例外ではなかったらしく、
丘野くんはニコリと笑うと殊戸瀬の手を取って植え込みの抜け穴に潜り込んだのだという。
訳も解らないままに連れ去られる殊戸瀬。
親に閉じ込められてから出たこともない家の外。
よく解らないけれど、言いつけを破って外に出ることに自然とワクワクしていた。
そして丘野くんと殊戸瀬は、地味〜にキャッチボールをしたんだという。
何が楽しかったのかは知らん。
だけど、殊戸瀬にとってそれは今まで感じたこともないほどに楽しいことで───
それから結局1、2回くらいしか遊ぶ機会が無かった丘野くんのことを、
殊戸瀬は既に忘れられない存在として焼き付けてしまっていたのだとか。
何故それ以降遊ぶ機会が無かったのかといえば、
抜け出したことが親にバレて、キツく叱られてしまったのだ。
丘野くんが自分の親に怒鳴られる現場も見てしまったため、
自分の所為で丘野くんが怒られるのが我慢ならなかったのだろう。
殊戸瀬は親が出した条件を飲み、もう外へ出ることを望まなくなった。
……まだ、小学を卒業してもいない子供の、一生懸命考えた必死の結論だった。
───それから数年が過ぎた。
いつしか完全に放任し、
仕事をするばかりで家に戻らなくなった親たちになんの感情も抱かないまま、
殊戸瀬は小学を卒業した。
行きも帰りも徒歩。
卒業式にすら来てくれなかった親への感情は、既に他人に向けるソレそのものだった。
けど利点もあったのだそうだ。
殊戸瀬は出来るだけもっと親から離れたくなって、住んでた町をあとにした。
もちろん独り暮らしというわけではなく、
実家に住んでいた頃から何かと面倒を見てくれた家政婦が一緒だった。
いや、家政婦というよりは女中そのものと言えたらしい。
殊戸瀬の家就きの侍女のようなもので、
親なんかよりもよっぽど殊戸瀬のことを理解してくれていたんだとか。
……何気に相当に仲が良かったらしいが、
殊戸瀬が高校を卒業する頃、交通事故で亡くなってしまったらしい。
一度会ってみたかったが、そればかりはどうしようも出来ない。
……話を戻そう。
そうして小学を卒業して町を出た殊戸瀬がやがて辿り着いた場所。
そこが我らが集うべき原沢南中学校が存在する馴染み深い町。
しかしやはり殊戸瀬は引っ込み思案であり、
小学の頃なんかそれこそ浮いた存在としてヘンにイジメに遭っていたと聞く。
それ以来人が苦手になっていたらしいが───
殊戸瀬は、この原中にて信じられん再会を果たした。
そう、言うまでもない丘野くんとの再会である。
殊戸瀬は脳裏に半田鏝()で焼き付けた鉛臭い丘野くんの顔を鮮明に思い出し、
勇気を振り絞って丘野くんに話し掛けた!!
だが───返ってきた言葉は“え?誰?”だったんだそうな。
うーむ……記憶の問題とはいえ、あんまりに救いが無いぞ丘野くん……。
しかしそれでも殊戸瀬の気持ちは変わらなかった。
中学時に───否。
別れ、そして会いたいという気持ちをずっと胸の中で暖めていた殊戸瀬の気持ちは、
原中に入る前から既に“比類無き恋”へと変貌を遂げていたのだ。
それからが大変だ。
ただでさえ引っ込み思案&恥ずかしがり&照れ屋&対人恐怖な殊戸瀬。
好きだという思いをなんとかして丘野くんに伝えようとするも、
染み付いてしまった“独りの時間”が大勢の中に入り込むための勇気を、
どうしても湧き上がらせてはくれなかった。
だがその時である。
俺と彰利……つーかむしろ彰利が委員長の座を木村夏子二等から奪い、
俺に押し付けた頃のこと。
迷惑部の話を持ち出したとき、中村に続くように丘野くんが迷惑部へと入部したのだ。
そう、どうせなら同じ部活に入りたい───
そう思った殊戸瀬は、なんとか勇気を振り絞って入部宣言。
精一杯冷静を保ったが、内心は呼吸が止まりそうなほど恥ずかしかったんだとか。
……あの時にそんな裏エピソードがあったとは、誰も夢にも思うまい。
ともかく入部に成功した殊戸瀬は、
内心おどおどしながらも我らのペースに自分を追いつかせようと必死だったらしい。
全然クールに見えてたもんだが、人ってのは必死になると凄いのな。
んでもってそんな状況を1年、二年と続けた時……
殊戸瀬は随分と自分が変わることが出来たのを実感できたんだそうだ。
だから自分は原中をきっと誰よりも好きで、
その原中を始めるきっかけとなった俺や彰利には相当に感謝しているんだとか。
そう言って、また泣いた。
ごめんなさいの嵐だ。
今まで酷いことを言ってごめんなさいの乱舞だ。
べつに謝ってもらう必要はなかったんだが……それで気が済むならそれでいいか?
中井出「しかしさ、お礼を言いたかったのに人をエロマニア呼ばわりって……
殊戸瀬さ、本当に昔の自分から成長できてんの?」
殊戸瀬「……してる。昔は話をすることも恥ずかしくて、口を開けば暴言ばかりだった」
中井出「……ああ思い出した。そういや劉堂に面と向かってハゲって言ってたな」
あれは驚いたな。
授業の練習をしてる劉堂教諭に向かって、
間違いを指摘するために手を挙げたところまではよかったんだが。
その際に“おいハゲ”ってハッキリ言っちまったんだよな。
劉堂教諭の涙が懐かしい。
そして殊戸瀬よ。
あれは絶対に照れ隠しの限度を越えている。
中井出「しっかし信じられないよな。殊戸瀬がイジメに遭ってたって」
殊戸瀬「………」
それから殊戸瀬は再び語った。
そのイジメッ子は元々殊戸瀬を誘おうとして話し掛けてきたんだとか。
しかしどうにもこうにも世界ってのは上手くいかないように出来ているらしく、
そこでも殊戸瀬の発作は発動。
話し掛けてきた男に辛辣な言葉を浴びせてしまったらしい。
その現場を想像するに、俺はどちらかというとその男に同情しないでもないが。
ともかくその男は怒っていろいろ言葉を放ったらしいが相手は殊戸瀬。
ちっこい頃から英才教育を受けた殊戸瀬にしてみれば、無意識下の売り買い言葉でも
そこらのクソギャアよりも的を射た言葉で畳み掛けることが出来たのだろう。
結果的に男は泣かされ、覚えてろクソとか言いつつその日は去り───
それ以降にイジメは始まった。
思うに───そのガキャア様は幼心に大人びた殊戸瀬に心惹かれてたんじゃなかろうか。
で、子供特有の“思い通りにいかないことにムキになる”が発動。
クラスを率いてイジメに走り、その淡い心は───え?卒業前にラブレター貰った?
で、某世界の女の友人の古本屋の女の子のようにその日のうちに燃やした……と。
報われないなぁ。
報われなくてもべつにいいけどね、イジメッ子なぞ。
中井出「でもようやく解ったわ。ようするに殊戸瀬、
お前ってなまじっか頭が良かった所為で、知識しか武器に出来なかったんだな?」
殊戸瀬「……自覚はないけど、多分そう」
中井出「で、その知識に感情が追いついてこない所為で止まらなくなって、
いっつもいっつも辛辣な言葉に歯止めが利かなくなると。
……何処からツッコんでいいか解らんが、とりあえず一ついいか?
お前って自分の子供にゃどういう教育してたんだ?」
殊戸瀬「…………人の貶し方と陥れ方と───」
中井出「いや……訊いた俺が馬鹿だった」
お前、それじゃあ子供の青春時代がカオスだぞ?
会社の跡継ぎになるってのに、そんなんが社長で誰が付いてくるんだよ……。
殊戸瀬「……冗談。眞人と子供たちの前だと、ちゃんとわたしはわたしで居られたから」
中井出「嘘かどうかを微妙に見破れない冗談は勘弁してくれ」
まあいいか。
あまり根掘り葉掘りするつもりもないし、話はこれくらいにして───
中井出「はぁ……結局宝箱は無かったか。
そうだよなー、あの老人、宝箱は無いって言ってたもんな」
殊戸瀬「……ありがとう」
中井出「うぇっ?な、なんだよいきなり」
殊戸瀬「この話……真面目に聞いてくれたのは眞人だけだったから」
中井出「猛者どもならきちんと聞いてくれるだろ。
我らはなにより友情という名の忠義を大事にするぞ?」
殊戸瀬「……原中だから不安だったの。
話しても冗談って受け止められるかもしれないって思ったら───」
中井出「ちゃんと謝ってくれただろ?だったらそれが真実だ。
俺ゃこれでも人を見る目はあるつもりだぞ?
そりゃ、話を聞くために脅迫紛いのこと言っちまったけど」
殊戸瀬「……原中から脱退してもらう、って話を出された時、
本当に心臓が止まったかと思った。
わたしは……このヘンテコだけど賑やかな、硬い絆のある原中が好き。
そこから外されるなんて、考えたくもない。
中学時代だって、いつ性格の悪さで追い出されるかってずっと不安で……」
中井出「……そか」
こいつはこいつで、あの冷徹の仮面の中にこんな弱さを潜ませてたのか。
外面ではああやって騒ぎまくる原中の猛者たちも、
内面にはどんな過去を持ってるかなんて解らないよな。
俺だって───……
中井出「あ……、あ、あー……えっとさ。そんでお前、高校の頃はどうだったんだ?
原中で結構人付き合いが平気になったなら、少しは───」
殊戸瀬「冬扇譚女学院には原中でのクラスメイツも何人か入ってくれたから。
だから少し余裕も持てたし、
真面目に冷静に業務をこなしていれば大丈夫って助言も貰ったから……。
そうしたらいつの間にか上級生からいろいろ任されるようになって、
2年になったら下級生からお姉さまと呼ばれるようになって、
3年になったら入学当時とは世界が180度変わってた……」
中井出「……低学年時、上級生にタイが曲っていてよとか言われて直されたとか?」
殊戸瀬「“曲ってなどいない。もしこれが曲って見えるのだとすれば、
曲っているのはあなたの心だ”って言って突き返したけど」
ええいどこからツッコンでいいやら……。
中井出「あ、あー……沈黙の令嬢以外に通り名とかあったのか?
ほら、冬女ならありそうだろ?“なんとかの君”とか“白百合のなんたら”とか」
殊戸瀬「“白薔薇様”()」
中井出「ギガァアーーーーーーーッ!!!?」
神様聞きました?ロサ・ギガンテスだって。
え?違う?あ、ああ……そう、そうか、ギガンティアね、ギガンティア……。
中井出「え、えーと……ギガンティアってなんだっけ……」
殊戸瀬「白薔薇のこと。部屋での生活が長かったから色白で……多分その所為」
ちょっと待て。そこってホントに冬女なのか?
ノリがやたらと適当な気がするんだが。
中井出「あぁ……聞いてるだけで疲れてきたが、聞かないわけにもいくまい……。
訊きたがりは嫌いだろうが、もうちょっと付き合ってくれ」
殊戸瀬「……原中を破門にしないなら構わない」
中井出「人の無理矢理脅迫犯みたいなものに仕立て上げるんじゃない。
……それで?そのノリからすると姉妹()制度もあったのか?」
殊戸瀬「あった。みんな身体目当てだったけど」
中井出「生々しい姉妹だなそれ!女子高のイメージ丸潰れだよ!」
殊戸瀬「……冗談」
中井出「……なぁ。肩車したあと九龍城落地()していいか?」
殊戸瀬「ダメ」
野郎……。
◆姉妹制度───すーるせいど
上級生のお姉さまが、学年下のおなごをきちんとした淑女に育ててあげる制度。
“マリア様がみてる”を知っている人なら悉く知っているもの。
目当てと言ったら聞こえが悪いが、導きたいと思った下級生にロザリオを渡し、
それが受諾されたらその二人は“姉妹”として認められる。
ただしロザリオを渡せるのは一人だけであり、重複は出来ないんだそうな。
ようするに高学年のオネエが下級生を躾ける制度だね。
ちなみに相撲の掛け声である“どすこい”は(略)
*神冥書房刊:『マリア様は静かに覗きたい』より
殊戸瀬「わたしにロザリオを渡そうとする人なんて居なかった。
当時は知らなかったけど、卒業する前に先生が教えてくれた。
“あなたは最初から淑女のように振舞っていたから誘いが無かった”と。
わたしはこんな性格だから、みんなから嫌われてるんだと思ってたのに……」
中井出「だよなぁ。俺もむしろそっちの方かと───痛ッ!?
ちょ、なにすんの殊戸瀬!目!指っ!目がっ!!アァアアアアッ!!!!
指が目に減り込んでギャアもうごめんなさい!ホントもう言いません!!」
殊戸瀬「……話の腰を折らないで」
中井出「あの……ハイ……マジすんませんっした……」
うう……左目が涙で滲んでる……。
でもちょっとだけ安心だ、弱気になっても殊戸瀬は殊戸瀬だ。
中井出「じゃあそのー……殊戸瀬自身が妹を作るってことはしなかったのか?」
殊戸瀬「わたしは……人を導けるほど立派じゃない。
何人かそういうことを言ってきた人が居たけど、全部断った」
中井出「ふむ……」
なるほど、やっぱいろいろあるんだなぁ。
などと納得した時だった。
チュゴォオオンッ!!《外道ジャック・リパーが現れた!!》
目の前に、どこぞのジャックさんが現れたのだ。
リパー『ヒ……イヒヒヒヒ……刻みてぇ……!』
殊戸瀬「……!降ろして、提督……!このままじゃ戦えない……!」
中井出「だめだ」
殊戸瀬「即答!?……じゃなくて!わたし、足手まといにだけはなりたく───」
中井出「アホゥめこのお馬鹿さん!!
足挫いたヤツが足手まといがどうとかで騒ぐものではないわ!!
貴様それでも軍人か!!」
殊戸瀬「うくっ……い、イェッサ……」
中井出「というわけで貴様!!」
リパー『イヒ?』
中井出「仲魔にならないか?」
リパー『………』
殊戸瀬「提督!?なにを───」
リパー『俺は外道ジャック・リパー……今後ともよろしく……』
殊戸瀬「えっ───えぇええええええええっ!!!?」
本日の教訓。
……言ってみるもんだなぁ……。
───……。
……。
殺人貴『……で?この格好はなんだよ』
中井出「うむ!それでこそ殺人鬼!いやさ殺人貴()!!」
普段の殊戸瀬からは信じられない驚きの悲鳴を聞いてから、はや5分。
俺は殊戸瀬が持っていたRPGには付き物のオモシロ装備で彼を彩っていた。
服は学生服、髪は少しクセのあるショート。
眼鏡は無かったからこの際どうでもいいや。
というわけで、これぞ夜に駆ける殺人貴、七夜志貴。
普通は悪魔に装備など渡さないが、それを打ち破る根性が原中クオリティ。
すっかりとキリッとした目になった彼は、物事に執着が無さそうに首の後ろを撫でた。
その際、片目を閉じていたのはいい仕事ですリパーくん。
殺人貴『まあどうでもいいさ。俺は刻めればそれでいい』
中井出「おう、思う存分刻んでいいぞ。その飛び出しナイフは選別だ、受け取れ」
殺人貴『ああ……これは中々いいエモノだ。好きにやらせてもらう』
目を細め、睨むような目つきのままに笑むリパーくん。
うーむ、やっぱゲーム性には逆らってみるものである。
常識なんぞはやはり破るためにあるのだろう。
そんなわけで俺はワープポイントを踏み、時の回廊へと戻った。
───途端。
丘野 「アァーーーーッ!!居たでござるーーーっ!!」
殊戸瀬「!!」《ビクゥッ!!》
目の前に丘野くんが居て、
俺におぶられてる殊戸瀬はそれはもう尋常じゃないくらいに顔を真っ赤にさせて驚いた。
藍田 「ありゃ?どしたんだ?おんぶなんかして」
殊戸瀬「っ……提督が嫌がるわたしを無理矢理……!
最近人妻属性に目覚めたんだって……!」
藍田 「提督てめぇ!!このクズが!!」
丘野 「なに考えてんでござるかてめぇ!!」
中井出「え───えぇええーーーーーーっ!!!?」
いきなりトンデモ発言をした殊戸瀬は、自分を庇うように俺の背中から降りると、
何故か泣きながら丘野くんの背後に隠れた……。
あ、あのー、殊戸瀬サン?さっきまでのしおらしいキミはいずこへ……?
麻衣香「ヒ〜〜〜ロ〜〜〜ちゃ〜〜ん〜〜〜……!?」
夏子 「ふぅうう〜〜〜……いくらエロマニアでも人妻はないだろうと思ってたのに……」
藍田 「しかもよりにもよってクラスメイツを襲うたぁ……」
丘野 「やってくれるのォォォォボウズ。ワレ、タマ要らねぇんかいオウ?」
中井出「ち、違うよ!?僕なにもやってないよ!?ホントだよ!?
殊戸瀬!?殊戸瀬ぇえ!シャレになってないから今すぐ撤回して早くゥウウ!!!
違う!違うって!ホントに僕なにもやってない!!なにもやってないよ!?
あんたら騙されてるよ!!僕、足を挫いた殊戸瀬を背負ってただけだよ!?」
丘野 「黙れクズが!!」
総員 『死ね!!』
中井出「ちょっと待てコラァ!なんで殊戸瀬まで一緒になって死ねとか言ってんの!!
キミちょっとこっち来なさい!!話があるから!!
……なんで怯えた目で俺見ながら余計に丘野くんの後ろに隠れるの!!
隠れたいのは俺の方だよもう!!わ、解ったろみんな!これは巨大な策略だぜ!?
俺が善でヤツが悪!つぶらな瞳の生き物は、みんな心に刃を持ってるもんなんだ!
だから今こそ───え?ウソつけ?ウソじゃないよ!!───クズでもねぇ!!
いいからまず俺の話を───聞く耳持たない!?
ま、待って!それはいくらなんでもヒドイ!!僕は無実だ!!
つーかなんで善意でおぶったのにこんなことになってんの!?
僕もう何が善行なんだか解ジェルァアアーーーーーーーッ!!!」
その日。
僕はみんなにボコボコにされながら、
やはり殊戸瀬がみんなの前で素直になれるようになるのは、
先が長いことなんだなぁとしみじみ思った。
そしてどうして僕を殴る姿の中にリパーくんと殊戸瀬が混ざってたのか、
是非とも誰かに教えてほしかった。
───……。
……。
……ややあって、なんとか一命を取り留めることに成功した俺は、
ちょっぴりセンチメンタルのままにリパーくんを木村夏子にトレードしてた。
中井出「ほんとロクでもねぇよなてめぇら……」
丘野 「いやははは……つい早合点を……」
中井出「“つい”もなにも、
相手が俺ってだけで誤解かどうかも確認せずに襲いかかるヤツがあるかよ……」
藍田 「しかしでありますな提督。
きっと提督も立場が逆だったらそうしていたでありましょう」
中井出「当たり前だ!見縊るな!!」
麻衣香「この場合、妻として見縊ったほうがいいのかな、見縊らないほうがいいのかな」
夏子 「妻としてなら見縊った方がよくて、
原中としてなら見縊らないほうがいいんじゃないかな」
麻衣香「そう考えるとほとほと原中ってカオスな中学だったよね……」
夏子 「今さらだねぇ……」
まったくだ。
夏子 「ところで提督さん。このジャック・リパーって……」
中井出「うむ。せっかくの殺人鬼だから、志貴くんになってもらった」
藍田 「おお、さすが」
丘野 「姿形まで似せたでござるか」
夏子 「呼び方は?」
藍田 「そりゃ───やっぱアサシンじゃないか?」
中井出「だな。志貴って呼ぶんじゃちと違和感が」
麻衣香「ランサーが居るんだから、ねぇ?」
決定した。
彼は殺人貴という名のアサシンだ。
それが決定したところでトレードは終了し───俺のCOMPの中には……アレ?
中井出「き、貴様らまさか……」
藍田 「おー、やっぱ驚いた驚いた」
丘野 「先ほど提督殿と睦月を探している時に遭遇したんでござるよ。
で、これが必要材料のもう一方、小狐丸でござる」
ピピンッ♪《丘野から小狐丸を受け取った!》
殊戸瀬「……じゃあ、わたしも」
ピピンッ♪《殊戸瀬から天沼矛を受け取った!》
中井出「………」
か、感無量?
今俺の手には全てがある。
天沼矛と小狐丸……そして天津神ヒノカグツチ!
こ、これを合成させてやりゃあ真・女神転生2におけるステキ武器、ヒノカグツチが!!
中井出「オッ……オ、ホッホッホホホホ!!?パ、パイルダー!!」
シャキィイインッ!!
俺は逸る気持ちを抑えることもせず、材料をCOMPに捻り込むと剣合成を発動!!
例のごとくメェリキキキと鳴りながら始まる剣合成!!
そして───マジュウウゥウン!!《妖鳥ケライノーが現れた!!》
総員 『厚化粧()!?』
ケライノー『───《ブチィッ!!》』
ケライノーが突然襲い掛かってきた!!
つーか今何かが切れる音が!!
藍田 「よっし夏子!早速見せてやれアサシンの能力!!」
夏子 「うん!契約者の名の下に命ずる!───来い!アサシン!!」
キュバァアアアアッ!!!───木村夏子が叫ぶとともにアサシンが現世する!
舞い降りた学生服の殺人貴は、
ゆっくりと片目を片手で覆うと小さく笑い、蒼い瞳でケライノーを見た。
アサシン『吾()は面影糸()を巣と張る蜘蛛。ようこそ、この素晴らしき惨殺空間へ』
その目は酷くやさしく、そして───狂気に満ちていた。
夏子 「10分アビリティ発動!“冥哭の泉”!!
場に出した悪魔の能力を一時的に引き上げる!アサシン!遠慮無くゴー!!」
木村夏子から溢れ出す凶々しい光がアサシンを包む!
すると景色の色がやはり反転し、その中で彼の蒼い瞳だけが鋭く光った気がした。
アサシン『逃げるなら───いや、もう遅いか』
タンッ───軽い、だが幅のある横への跳躍。
それは音こそ軽かったが、速度はまるで弾丸めいていた。
アサシン 『その魂、極彩と散るがいい』
ケライノー『!?』
ゾガガガガガガガゾフィィンッ!!
───一瞬。
それこそ刹那と唱えられるうちに、
蒼眼で凝視し烈火の如く振るわれた短刀がケライノーの中心を残した四体を切り刻む。
羽や足は数にして17つに分解され、
残された中心───顔から腰にかけてのみが地面に落ち、
その目が擦れ違っただけで自分をここまで殺した殺人貴を見上げた。
アサシン 『───しかし下手だね、どうも……。
もっと綺麗に残すつもりだったんだが……ああだが、結果は変わらないか』
ケライノー『ギ……!!』
アサシン 『“奈落より這い山河を越えて大路にて判を下す”。
ヤマの文帖によると、アンタの死は確定らしい。
───逝き先は決まったか?地獄に着いたら閻魔によろしく言ってくれ』
トンッ───
ケライノー『グ───!?』
胸に、軽く短刀が立てられた。
それは恐ろしく軽く胸に埋まり、それと同時にケライノーの身体が塵と化してゆく。
ケライノー『ナ、ナニヲシタ!!身体ガ崩レ───』
アサシン 『理解したか?これが、“モノを殺す”ということだ』
ケライノー『ア───アァアアアアアアアアッ!!!!!』
ザァッ───……!!
やがて、反転の終わりと同時にケライノーの姿は消えていた。
おお……必殺技2だ。
外道ジャック・リパーも強化されればこんなに強いのか……驚きだ。
夏子 「うあー……やっぱりTPが最大値の半分減ってる……」
で、木村夏子はといえばアサシンをCOMPに収納しつつ溜め息を吐いていた。
俺達はイイモノを見せてもらったと、ホクホク笑顔だが。
アサシンはランサーよりもノリが良かったと言えるだろう、うん。
しっかし……いやー、速かったなぁアサシン。
目にも留まらぬ十七分割だった。
中井出「よーし!こっちも剣合成が終わったぞー!!見よ!炎剣火之迦具土()!!
炎の剣だぞ炎の剣!!ステキ!なんてステキ!!ハレルヤァーーーッ!!」
そしてこの博光もとうとう、念願のヒノカグツチを手に入れたぞー!!
殺して奪い取りたいヤツぁどっからでもかかってこいオラァ!!
中井出「か、かんむりょー!!僕らの夢と希望よウェルカム!!
進もう!もっと進もう!まだまだいろいろあるに違いねー!!
つーかむしろ“ここで欲しい”と思うものをとことん手に入れよう!!
どんな困難な道でも構わねー!!」
丘野 「拙者、妖刀村正が二本欲しいでござるー!」
中井出「呪われるぞ!?」
丘野 「ぐはっ!そうだったでござる!!」
殊戸瀬「……方天画戟とブリューナクが欲しい」
藍田 「あ、じゃあ俺ジパニウムレッグが欲しいわ。足装備な」
丘野 「記念品としてハラキリセイバーとチェーンソーが欲しいでござる!!」
中井出「じゃあ呪い装備を手に入れたら全てを木村夏子に渡す方向で冒険を続けよう!!」
総員 『サーイェッサー!!』
夏子 「えぇっ!?」
丘野 「首刈りスプーンと道連れの斧は外せんでござるな!!」
藍田 「こうなりゃまた妖刀ニヒルを手に入れよう!あと妖刀村正も作っちまおう!」
中井出「頑張るぞぉーーーーっ!!!」
総員 『Yah()ーーーーーーッ!!!!』
夏子 「ま、ままま待ってぇえええーーーーーっ!!!」
そんなわけで、まだまだ我らの戦いは続くのだった。
覚悟を決めろ木村夏子よ!僕らは一蓮托生!!
我ら原中、全てを楽しむために己すらも利用する遊びの修羅である!!
その心さえ持っていれば、きっとなんとかなる!……と信じよう、うん。
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