───冒険の書66/ようこそ異常空間───
【ケース225:豆村みずき/エナジーは発しないがダッシュはする】
ドドドドドドドド!!!
刹那 「これは凄い猛攻です!
我らがヒュー・ハドソン校が誇る英雄、ジョナサン=ジョースター!
なんと三人にしがみつかれながらも進んでいるーーーーっ!!!」
豆村 「進んでいるゥじゃねぇーーっ!!ホレパス!!」
刹那 「あいよぉっ!!」
パッシィイイ〜〜〜ン!!
刹那が、投げた卵を見事キャッチ!!
そしてAGIにステータスの全てを注いで走る走る走る走る!!
ペリカン『グワェッ!!!』
ペリカン『コワェッ!!!』
ダック 『グワァーーーッ!!!』
それを追うのはもちろんアヒル系の皆様!!
だが無駄だねぇ〜〜〜っ!!気をつけるべきは平原ダックのみ!
やつにさえ注意し、卵をパスしながら逃げりゃあ危険なんざねぇ〜〜〜っ!!
刹那 「師匠!ヘイパス!!」
アイルー『任せるニャ!!ゴニャア!』
パッシィイ!!
刹那選手、平原ダックに襲われそうになったところでパス!
彼はすぐさま振るわれる棍棒を回避し、再び走り出す!!
ウヒョオ、この緊張感がたまらねェYO!!
見てるこっちもヒヤヒヤもんだぜ!
アイルー『ゴニャァアア〜〜〜ォオ!!!』
トカカカカカ……!!
刹那 「遅ッ!!師匠遅ッ!!」
アイルー『うるさいニャ!!』
刹那 「ヘイビーン!!」
豆村 「解ったぜ〜〜っ!!そりゃあーーーっ!!!」
刹那 「ニュフーーーッ!!」
これ以上ないほどにヒート!
全力で地面を蹴り、AGIをマックスにして平原ダックウォリアーに接近!
そして刹那と頷き合うと同時にベイダーのビッグバン・クラッシュを見舞う!!
ドボス。───しかし全然効いていなかった。
効果音もショボさ満載だったし。
あれってホントに威力あるのか疑いたくなるよね。
刹那 「くそうならば足払い!!」
豆村 「樫の木三本をへし折る俺の蹴りを受けろ!!」
ベッチィッ!!───ドグシャア!!
ダック『グワッ!!』
刹那 「よっしゃ倒れたァーーーッ!!」
豆村 「よし今だ!皇流古武術!腕ひしぎ十字固め!!」
刹那 「それ皇流じゃねぇだろ!!」
そうは言いつつももう片方の羽なのか腕なのか解らん手を取って、
腕ひしぎをやってくれるやさしい友人。
豆村 「フ、フフフ……走り出したんならな、猫よ。
男は決して振り向くもんじゃあねえ……」
刹那 「覚悟とは。決して折れぬ覚悟とは、そうして鍛えられてゆくものだぜ……」
豆村 「い、行けぇーーーっ!!必ずその卵を孵すんだぜっ!猫ォーーーッ!!」
刹那 「ワッハハハハハ!!忘れるなよ!俺の名は裕希刹那!
生まれ変わったらまた桜風舞う男塾で会おうぜーーっ!男塾万歳ーーーッ!!」
豆村 「……とは言ったものの、
猫の野郎気にせず景色の果てまで走っていっちまってるが」
刹那 「所詮猫の意識なんて気紛れで出来てるんだな……」
ダック 『グワア!!』
ペリカン『ガアッ!ガァッ!!』
豆村 「うわっ!?な、なにをするだァーーーッ!!」
刹那 「や、やめろ!それは装備とかじゃなくて───やめてぇええ!!
服盗まないでぇえええっ!!!」
豆村 「後生やぁ!後生やからパンツだけは堪忍やぁ!!」
刹那 「い、いややぁあーーーーーーーーっ!!!!!」
……その日、僕らはペリカンに着ている物を全部盗まれ、
しかもそのあとにダックに容赦なく撲殺され、
素っ裸で教会に降り立つという英雄的な行動を強制された。
しかもその瞬間を丁度教会に居た原中の女性メンバーに見られ、
叫ばれるよりむしろからかわれまくったのは、我が人生における最大の生き恥であった。
───……。
……。
柴野 「へー、それでそんな格好で教会に降り立ったんだ。あ、わたし柴野冴香。
“しばの”、じゃなくて“しの”ね。よく間違われるのよね、困ったことに」
三月 「わたしは二階堂三月()」
美奈 「で、わたしが桜美奈()。今ではミナ=サクレイルって呼ばれてる」
沢村 「わたしは高校の水泳部でエースだった沢村陸()」
神楽 「わたしは高校の女子バスでエースだった神楽祐海()」
水島 「わたしは高校の陸上部でエースだった水島美空()。よろしく」
陸海空『三人揃って原中の陸海空()!!』
豆村 「可哀相なくらい名前と得意スポーツがバラバラッスね……」
陸海空『何故ってそれが原ソウル。常識だけでは語れない』
それでいいんかなぁ。
豆村 「で、姐さんがたはここでなにを?」
柴野 「普通〜に冒険中」
刹那 「へぇ〜……あ、ジョブ聞いていいすか?」
総員 『我ら原中、敵に背を向けることなどせぬ修羅である』
豆村 「ようするに全員戦士なんスね……」
すげぇ、回復役無しかよ。
ほんと異常空間だよな、原中って。
俺も是非、その時代に産まれて一緒に騒いでみたかったわ。
豆村 「で、小さな疑問点いいすか?なんでまた名前に反したスポーツを?」
沢村 「なんでって……その方が面白いでしょ?」
豆村 「面白いって理由だけっすか!?」
神楽 「名前がそうだからって同じスポーツを選ぶなど三流三流」
水島 「そんなの、石島土門が土星の指輪を装備するが如し」
沢村 「実際こうやって、名前とは違うものをやったら上手くいったわけだし」
つまり親が名前のつけ方間違えたんすね。
でもこの人達のことだから、得意スポーツに関連する名前をつけられたところで、
絶対に違うスポーツやってたんだろうな。
それで上手くいくかは二の次なんだろう。
水島 「で、えーと……ビーンっていったっけ?」
豆村 「何処の外国人だよ俺!!豆村!豆村みずき!!」
柴野 「あぁそっか。じゃあその豆なキミ、今ヒマ?」
豆村 「忙しいッス」
柴野 「暇じゃないとその“皮の腰巻”没収するわよ」
豆村 「邪鬼ですかアンタ!!これとったらすっぽんぽんじゃないすか!!
ただでさえジャングルボディ状態で恥ずかしいってのに!!」
刹那 「あぁ確かに……裸に皮の腰巻って思いっきりターちゃんだよな」
しみじみ納得されても困るなぁ。
豆村 「う、うぐぐ……ま、まず用件を!じゃなきゃ頷くことなど出来ません!!」
水島 「だめ」
豆村 「うわひでぇ!!」
水島 「暇か暇じゃないかを今すぐ唱えよ!いや、暇だと言いなさい!!じゃないと」
豆村 「構わん!!産まれたままの姿になろうが俺はまず用件を聞く!!」
柴野 「おお……妙なところで漢だね豆っち。
それでこそ弦月くんの息子。その意気に免じて───」
豆村 「おお!用件を教えてくれるんすね!?」
柴野 「んにゃ?腰巻返してもらうだけだけど」
豆村 「ゲェエエーーーーーッ!!!
お、鬼かてめぇ!!ここは教えてくれるべきとこだろ!?」
三月 「ごめんね〜、ビーンくん。……我らは既に普通の反応では満足など出来ぬのだ」
豆村 「漢らしぃいいーーーーーっ!!?あっ!ヒィ!!腰巻に触れないでください!!
俺のウェポンが飛び出しますよ!?そ、双方ともにただでは済まねーー!!
わ、わわわ解りましたごめんなさいウソついてました!!暇です!もう暇です!!
産まれたままの姿でいいなんてウソですごめんなさい!」
刹那 「暇だけど、暇だとなにが起こると?」
柴野 「実はわたしたち、盗賊団やってるの」
平然となに爆弾発言しとんのですかアータ。
豆村 「盗賊団って……六人だけで?」
三月 「一部を除いた原中の全員で」
豆村&刹那『うわぁ……』
豆村 「ってちょっと待った!あんたら普通に冒険してるんじゃなかったのか!?」
柴野 「だから貴様は豆だというのだビーン……」
豆村 「みょ、苗字は関係ないっしょ!!」
柴野 「つまりね?“普通”の感覚なんて人それぞれで違うのよ」
豆村 「………」
刹那 「………」
豆村 「俺達ってまだまだ普通だったんだな……」
刹那 「だな……」
月の家系とは別の意味での異常空間か……中学生の感性じゃねぇだろそれ。
柴田 「というわけで盗賊団に入らない?」
豆村&刹那『あ、結構です』
キッパリと断った。
商売屋が盗賊なんて警察沙汰にはなってもシャレにはならんし。
豆村 「実は俺達、鍛冶屋やってるんすよ」
刹那 「師匠も居て、まだ免許皆伝もらってないから他にうつつをぬかすわけには……」
神楽 「そなの?」
水島 「じゃあ通達だけでいいや。もし提督に会ったら、
盗賊団やってるから参加しに来てって言ってたって伝えといて」
豆村 「素直にtellしたほうがいいんじゃ……」
沢村 「tellが届くならやってるんだけどね。
他の猛者たちには届いたんだけど提督だけは一切届かないのね。
晦くんには断られたし、清水くんたちと真穂は自分達のことで忙しいらしいし、
弦月くんは時の大地で子供二人とルルカを拾ったとかで忙しいらしくて」
豆村 「親父が?また面倒ごとに首突っ込んでんのかな」
刹那 「知らんけど」
柴野 「じゃ、よろしくね。わたしたちはアジトに戻るから。
解ってると思うけど、NPCには他言無用よ?」
豆村 「クックック、どうしようかなぁ……これを教えてやりゃああんたらはお縄に……」
神楽 「そんなに十字架背負いたいなら実力行使で腰巻剥がすけど?」
豆村 「OK言いません!!」
神楽 「ん。それじゃあわたしたちはこれで」
ゴシャーーーーッ!!
彼女らはキョロキョロとしてるNPCから逃げるように、凄まじい速さで去っていった。
男 「あぁすまん……ここらに女6人がここに来なかったかい?
なにやらタンスを漁られたみたいで……」
豆村 「向うに逃げていきました」
男 「ありがとう!」
さらにソレを追うようにして、男が駆けていった。
刹那 「うーむ……ターちゃんスタイルの男二人に普通に話し掛けるとは……」
豆村 「ある意味ヘンな人だったな……」
いやまあそれは忘れておくことにしよう。
まずは服をどうにかして、猫の店に戻らないと……。
【ケース226:弦月彰利/クルーエル……ウェービング】
ソレは約21分前くらいの出来事だった。
ノースノーランドにて再び中井出たちの情報を得て、
時の大地に辿り着いた僕が時の大地にて迷子になって、
さらにかなりの時間が経ったのちにようやく時の神殿に辿り着き、
そこまで来てから地図見りゃよかったと落ち込んだ時。
その神殿の奥に人影があるのに気づいたのである。
彰利 「YO〜、どうしたんだいベイベ」
もちろんアタイは手を奇妙な形に曲げ、
ヘラヘラしながらクネクネウネウネと奇妙な踊りを踊りながら話し掛けた。
なにがもちろんなんだか解ったもんじゃない。
彰利 「知ってるかい?アイドリングをストップしないと、
ヒップホッパー達が歌いながら風に乗って止めに来るんだよ?
正直保険金CMの前例があるから、
CMやってる人自身がアイドリングストップしてるのか、
僕としては怪しいことこの上無しなんだけどね」
ドリアード『………』
少年 『………』
ルルカ 『ゴエ?』
首を傾げられてしまった。
彰利 「あぁ〜〜〜今、ひっかぁりをゥ浴び〜な〜が〜ら〜〜〜〜っ今♪
向っかぁいかぁぜのっなぁか♪
ブリーズィーなっ、空〜気ィがっ、よゥろこゥびをゥはぁ〜こゥぶ♪
アイドリィング・ストォップ!!」
仕方なく歌いながら奇妙なダンスと手の動きを披露。
最後に手を前に突き出して決めポーズをとってみたが……なんだろ、
物凄く冷たい目で見られてる。
彰利 「あの……もういいです。で、キミ中井出と一緒に居た娘ッ子だよね?
こんなところでどしたの?」
ドリアード『……なんでもないのじゃ』
彰利 「ふーーーん……捨てられた?」
ドリアード『!!《ビクンッ!》』
あ、反応した。
もしかして……マジですか?
彰利 「ほっほえ!そうかえ!捨てられたかえ!そりゃひでぇ有様だえ!」
ドリアード『す、捨てられてなどいないのじゃ!わしは───』
彰利 「では何処へ行ったんだえ!?えぇ!?説明してみろえ!!」
ドリアード『う……う、うぅう……ヒ、ヒロミツは……
わしに自分の好きにしろと言ったのじゃ……。
そのヒロミツがわしを置いていくわけが───』
彰利 「それじゃあ彼らは何処に行ったんだえ!?
そしてなんでキミ達だけが残されたんだえ!?」
ドリアード『そ、それは……』
彰利 「それはつまりえ!貴様が捨てられたに他ならないえ!!」
ドリアード『そんなことないのじゃ!ヒロミツはわしを捨てるなんてことしないのじゃ!
これはっ……今はただっ……』
彰利 「んえ?なにえ!?言ってみろえ!!
もしやお使いにでも行ってるだけとか言うんじゃないだろうなえ!!
それで貴様はどれだけ待ってるっていうんだえ!?」
ドリアード『っ……〜〜……うくっ……うっ……』
泣いてしまいました。
だがこの彰利は挫けない!!
彰利 「それみたことかえ!所詮貴様は捨てられたんだえ!!
付いてこいと言ってはみたけどえ!結局邪魔になったんだえ!」
ドリアード『う、うそじゃ!ヒロミツが……ヒロミツが!』
彰利 「大体貴様はそのヒロミツに何をしてきたんだえ!?
迷惑かけてばっかりだったんじゃないかえ!?
それじゃあいくら仏の提督でも邪魔になってくるえ!!」
ドリアード『う、あ……あ、ぁああ……!!』
彰利 「もう諦めるんだなえ。ここに居たって彼らは帰ってこないえ」
ドリアード『うっ……うくっ……』
ドリアードさんは現実から逃げるように頭を抱えて俯き、
やがて声を上げて泣き出してしまいました。
だがそれでもこの彰利は言葉の猛攻をやめませぬ。
銀髪少年 『……好き勝手に言ってくれるな。父上は僕らを置いて何処かになどいかない』
彰利 「ほっえ!言うのぅえ!!
だがもしその理由が貴様の成長への期待からだったらどうするえ!?」
銀髪少年 『───なに?どういう意味だそれは』
彰利 「貴様を置いていった理由がえ、
そろそろ親離れしろという理由だったらどうするえ?」
銀髪少年 『それは……いや、騙されないぞ!大体貴様は何者だ!』
彰利 「───我は神なりえ」
両手を広げてエネルのように。これは基本。
銀髪少年 『神……?何故語尾に絶対“え”をつけてる』
彰利 「面白いからだえ。それで貴様は理解したかえ?
貴様らは捨てられたのだえ。解るかえ?」
銀髪少年 『そんなものは解らない!父上が戻ってくればそこに真実は───』
彰利 「だからえ。貴様らは捨てられたんだえ。ここで待ってても誰が戻るものかえ。
そこでだえ。キミたちにひとつえ、道をあげるえ」
銀髪少年 『道……?』
彰利 「そうだえ。キミ達がここからどう動くかだえ。
キミ達……いやえ、キミは感じる闇の波動からして魔王と見受けるえ。
そのキミが父親から望まれることはなんだと思うえ?」
少年魔王 『………』
彰利 「そうだえ、立派な魔王になることだえ。解るかえ?立派な魔王になればえ、
その時こそ貴様の父親は貴様を迎えにくるんだえ」
少年魔王 『立派な……』
彰利 「彼はキミの成長を誰よりも深く望んでいた筈だえ。
それはドリアードえ、キミにも言えたことだえ」
ドリアード『ひくっ……っ……わしにも……?』
彰利 「捨てられたくらいで情けないえ。
その寂しさに勝って強くなることこそ中井出の願ったことだえ。
彼はキミにも強くなることを望んでいた筈だえ」
ドリアード『───!……そ、そうだったのじゃ……それなのにわしは……』
うおう、あてずっぽで言ったのに当たったようだ。
だがこれは……好機!そう好機!
いまこそ好機!全軍打って出る!!
彰利 「そんなわけだからキミたちに力をあげるえ!
特にドリアードさんには色濃くだえ!」
ドリアード『な、なに……なにをする気じゃ……!』
彰利 「力を与えるんだえ!“影鎌繰り殺ぐ闇黒の秩序()”!!」
影からルナカオスを引きずりだし、それを拳装備に変換すると漆黒の翼を4枚生やす。
うむ準備万端!!
ドリアード『っ……!?ま、魔物!?おぬし魔物か!?』
彰利 『ノー違う!俺は原中が誇る猛者が一人!!弦月彰利!!
今日は故あって、中井出から貴様らのことを頼まれてやってきた!!』
ドリアード『ヒロミツから……本当か!?』
彰利 『ウソじゃ!!』
ドリアード『なっ……』
彰利 『だが間違うな!キミ達に成長の機会をあげるというのは真実!!
よいかね!?キミ達はこれから魔王となるのです!!
子供な貴様らが成長するには大きな目標を手に入れるっきゃねー!!
だから貴様らは魔王になるのだ!!』
ドリアード『馬鹿を言うな!』
彰利 『馬鹿とはなんだコノヤロウ!!』
ドリアード『おぬしを罵倒したわけではないのじゃ!わしが言いたいのは、
自然の象徴であるわしが魔王になどなれるわけがないということじゃ!』
彰利 『だから俺の力をキミに分けるゆゥとろうがオォ!?
ともかく受け取れ!!ンンンンンンンン〜〜〜〜〜〜ッ!!!
ハァアアアーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!』
ドリアード『!な、なにをするか無礼者めぇっ!!
わしの頭を撫でていいのはヒロミツだけなのじゃーーーっ!!』
彰利 『頭に触ってるだけでしょうが!お黙れぃ!!』
言いつつも力の流し込みはやめません。
やがてさらさらとした精霊の法衣がゆっくりと黒く染まってゆくのを見ながら、
僕は満足げに頷いたのです。本当です。
つーか密かな衝撃告白を聞いた気がします。
このおなご、中井出に相当懐いとるのゥ。
見るからにひねくれてそうなお子様なのに。
いったいどうやって懐かせたんだ、中井出よ。
彰利 『ほい終了!』
ドリアード『……!法衣が黒く……!』
彰利 『うむ!我が力はなによりも深い闇の黒!染められぬものなど……無いよね?』
ドリアード『…………わしは……どうすればいい?どうすればヒロミツは戻って……』
彰利 『その甘さを捨てるのです!
魔王となって、甘さを捨てて誰にも頼らず生きられるようになって初めて、
彼らは帰ってくるでしょう!!』
ドリアード『本当じゃな!?本当に───!』
彰利 『彰衛門ウソつかない!つーわけでさあ一緒にいきましょう!』
少年魔王 『僕も行くべきか?』
彰利 『イグザクトリィイイ〜〜〜〜〜……(その通りでございます)』
少年魔王 『……まあいいさ。それがウソでも父上が言ってた言葉は本当だ。
僕は立派な魔王になって、そして───』
ルルカ 『……ゴエ?』
彰利 『うむ、キミにも闇のパゥワーを授けよう。
オンキリキリバサラウンバッタ……バァーーーーッ!!!』
なにやら大きなルルカさんの頭に触れ、闇のパゥワーを流し込む。
するとどうでしょう!
あれだけ明るかった羽毛が、全て黒く染まってゆくじゃあございませんか!
髪の色や肌の色を染めるのは好きではないこの俺だが、ここんところは目を瞑ろう。
そういう仕様になってるんじゃあどうすることも出来ん。
彰利 『これで黒ルルカのでっきあがりでぃ!ルルっち、ちょほいと翼広げてごらん』
黒ルルカ 『ゴエッ《バサァッ!》───ゴエッ!?』
彰利 『うむうむ、見事翼も変異しておるでよ。いいかねルルカくん。
僕らの世界では黄色い鳥が黒くなると空を飛べるようになるんだ。
だからキミもそうなるように細工しただけ。OK?』
黒ルルカ 『ゴエゴエ《コクコク》』
彰利 『そんなわけでお二方!これより黒ルルカに乗り、闇の王国に行きますよ!』
ドリアード『闇の……』
少年魔王 『王国……?』
彰利 『そう!完成したとの報せが届いたんでね!
あとはそこで魔王となる修行をするだけだ!
付いてくるかはもちろん自由!だがここで待っても中井出たちは来やしねー!
さーあどうする!ここで決めねば僕はキミ達をここに置いてゆく!!』
黒ルルカ 『ゴエッ』
彰利 『黒ルルカくんは既に来る気満々だ!
つーかむしろ何かから逃げ出したい雰囲気満載である!』
主人が殊戸瀬だからかね。
クォックォックォッ、彼女には結構振り回されたからねぇ。
たまにはこんなのもいいデショ。
少年魔王 『……僕は行く。父上のような立派な魔王になるために』
彰利 『え?……中井出って魔王だったの?』
少年魔王 『なに?』
彰利 『ああいえいえなんでもござらん。で……そっちの娘ッ子は?』
ドリアード『わしは……───っ……行くのじゃ!一度決めたというのに、
ここでまた迷っていてはヒロミツや森人に合わせる顔がないのじゃ!』
彰利 『おお……』
久しぶりに志高き娘ッ子に会った気がする。
あっしの娘たちと来たら、
それはもう大人になるにつれてどんどんとヒネクレ者に……いったい誰に似たんだか。
彰利 『よし!では行こう!黒ルルカくん!三人一緒で大丈夫かね!?』
黒ルルカ『グェヴァヴァヴァ……!!ゴェエエォァアアアゥウ!!!』
バサァッ!!───バサァッ、バサッバサッ……!!
彰利 『おお、マジで飛んだ!それでは新たなる旅路へレッツゴー!!』
うむ!素晴らしきかな、仲間の勧誘!
あとはこのまま完成した獣人要塞に戻れば全て解決!!
クォックォックォッ……中井出よ、貴様の慌てふためく顔が目に浮かぶわ!!
───……。
……。
そんなわけで現在。
僕は柴野さんからのtellを受け、ちと忙しいことを通達。
なにやら盗賊団に入らんかー言われたンやけど〜……まさか原中の猛者どもが結託し、
盗賊団になっていようとは。
俺としては皆様で獣人勢力を作りたかったんだが……誘ってみるか?
彰利 『えーと……tell:柴野冴香、と……───モシモシィ〜……?』
声 『はいもしもしー?もしかして気が変わった?』
彰利 『変わった!というわけでキミ!我らとともに闇の王国を復興させんかね!?』
声 『闇の王国……?なにそれ』
彰利 『うむ、魔王様と獣人王を主とする王国。
黙っておったけど俺と悠介、獣人勢力なんよ』
声 『えぇっ!?そ、それ本当なの!?』
彰利 『ウム!獣人はいいぞぅ!人間襲えるし、アイテムも堂々と盗める!
まあもちろん警備団とかと遭遇したら逃げるっきゃないが……
それでもスリルと楽しさは盗賊団には負けちゃいねー!
あ、ちなみに獣人装備に身を包んでる時は普通の勢力のtellは一切排除される。
獣人装備を外せば誰からのtellも受け取れるけどね』
声 『え……じゃあもしかして提督さんも獣人勢力?今全然tell繋がらないんだけど』
彰利 『それがよう解らんのです。ただ子供二人とルルカ残して蒸発しおってね?
まあともかく獣人になるなら拒みませんよ?
そのまま敵勢力に居るのなら原中の名にかけて容赦無く襲いますが』
声 『うん、ちょっと待って。───みんなー、
弦月くんから獣人勢力に入らないかって誘いが……え?入る?……即答なんだ』
彰利 『OK?』
声 『迷うことなく一瞬で。わたしも別に異存は無いし。何処に行けばいい?』
彰利 『今何処におる?』
声 『エコナ平原の近くの山。そこにアジトがあるの』
彰利 『エコナ……おーおーあそこね。OK、すぐ行くわ』
ひとまずtellを切って、と……。
あとはまずオルクヴィレッジに行って、人数分の獣人装備を貰ってきて……
そっからアジトとやらに行ってと───うーむ面倒だな。
よし、ぱぱーっと転移で行くかぁ。
そんなわけで。
ドシュドシュドシュドシュンッ!!
彰利 『ハラシュウ』
転移を繰り返した俺は、エコナ草原近くの山に辿り着いた。
彰利 『だれぞ!だれぞおる!!』
アジトらしき洞穴に向かって叫んでみました。
つーかこんなところにアジトって……草で隠されてはいるけど、入り口がバレバレでは?
などと思っとったら、ガササッ……と入り口の草が動き───ささやくような声が。
声 「……合言葉は?」
彰利 『アフロと軍曹』
声 「よし入れ」
彰利 『合ってんの!?』
いや……なんつーか……さすが原中。
パサリとどかされた草の奥へと、促された。
……ちなみに案内人は佐野清一くんだった。
某温泉好きの手ぬぐい男の一文字足らずの男である。
顔に火傷の跡はないよ?腕にサソリ型の火傷ならあるけど。
その所為でアンゼルモというあだ名をつけられてる。
佐野 「ようこそ、戦闘民族の世界へ」
彰利 『柴野さんに聞いたんだけど、今やみんな戦士だって……』
佐野 「おお。我らは戦闘民族。戦士として、全てを薙ぎ払う猛者である」
彰利 『うおう』
どうやらマジらしい。
彰利 『ではこれが約束の獣人装備ね』
佐野 「おうサンクス。あぁそうだ、先に訊いとくけどなにかルールとかあるのか?」
彰利 『大事な人だろうが、人間と遭ったら絶対に襲い掛かること。
ちなみに俺は自分の妻たちを一番にコロがしたりしたが』
佐野 「おおさすが」
さすがと言われても。
とか思いつつも前を歩く佐野くんのあとを歩き───
やがて、僕らは明かりのある場所に辿り着いた。
なんとそこには、原中生徒の大半がごっそりと存在していたのだっ……!!
灯村 「おお、弦月じゃないか」
島田 「ようこそ、我らのアジトへ」
彰利 『ありゃ?灯村と島田も一緒なのか』
島田 「おう。トコトコ歩いてたら勧誘……じゃないな、誘拐された」
灯村 「最初は何事かと思ったね。もしや人身売買の組織にでも捕まったのかと思った」
島田 「袋を顔に被されてボディーブローだしなぁ……」
彰利 『てんぎゃんだろそれ』
佐野 「その通り。ちなみに実行したのは蒲田と中村だ」
島田 「容赦一切されなかったなぁ……」
灯村 「威力が高すぎて内臓出るかと思ったし」
彰利 『はは……』
やっぱヒロラインでも原中は原中か。
そりゃそうだよなぁ、こやつらが場所が変わったくらいで性格まで変わるわけがないし。
俺は案内されるままに石造りの椅子に腰かけ、露明石に照らされた洞窟内を見渡した。
島田 「ところで弦月、なんだよその翼。新手の芸人道か?」
彰利 『いやいや、これはレヴァルグリードの翼ですわ。
一応五頭まで吸収出来たから、それを示すために羽根だしてるんだ』
灯村 「へぇ〜……あ、でさ、魔王とかいうのはどうした?一緒じゃないのか?」
彰利 『オウヨ。魔王様はオルクヴィレッジ。今で言う“魔王殿()”に置いてきた。
魔王の息子ってことらしくてね、イーヴィルバーグにかなり気に入られとるよ。
おまけでドリアードとルルカも仲間になったんで、面白くなってまいりました』
灯村 「ほうそうか。そりゃ面白い」
彰利 『ところでキミたち、今なんレベル?』
佐野 「フフフ、我らを甘く見るなよ弦月。我らは既に100に辿り着いている。
なにをするにもまずレベル。俺達は冒険よりもまずレベル上げを優先し、
こうして平均100レベルに到達した。
故にこれからいろいろ冒険しようかどうかを話し合ってたところさ」
100っすか……随分上がってるのぅ。
俺だってまだそこまで上がってないってのに。
あぁ、ちなみに僕のレベルは94です。
これでも結構戦ってたつもりだったんだがなぁ……。
灯村 「ちなみに我ら、徒党を組んでも経験値は減らないシステムを利用して、
敵を集団リンチでコロがしまくったからこんなレベルなわけで」
島田 「武器は未だにグレートソードである」
彰利 『えぇええーーーーーーっ!!!?』
神様……ここに馬鹿どもが居る。
でも一緒だったら俺もそうしてただろうと断言出来るところも原中クオリティ……。
島田 「いやぁ、愛着はあるけど武器を支給してくれるんなら大助かりだ。
そろそろ敵の身体に刃が通らなくなってきててねぇ」
彰利 『グレートソードで今まで斬れてたのがどうかしてるんだよ……』
灯村 「まあまあまあまあ、いーから装備してみようぜー!」
島田 「俺ヤグード!」
佐野 「俺もヤグード!」
灯村 「あ、俺もヤグード!」
中村 「……んお?弦月来てたのか───おおこれが獣人装備か!俺ヤグード!」
蒲田 「よっしゃあ俺もヤグード!」
皆川 「ヤグード!」
永田 「ヤグードだ!」
飯田 「ヤグード!」
彰利 「……なんでみんなヤグードなん?」
総員 『獣人ゆぅたらヤグードやぞ!?』
そうですか?まあいいや。
ともかく皆様がヤグード装備を選び、足りなくなった獣人装備を持ってきて……
気が付けば、洞窟の中はヤグードのアジトになっていた。
あー……懐かしい異常空間だ。
俺も自分用のヤグード装備をすると、モフゥと安堵の溜め息を吐いた。
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