───冒険の書70/計り知れないギガ野郎───
【ケース241:弦月彰利(再)/黒毛和牛の怪】
───つーわけで戦力分析をしてみることにいたしましょう。
彰利 『おーいキミたちー!そういや武器強化してきたー!?』
総員 『してねー!!』
彰利 『しろ馬鹿ぁあ!!支給されただけの手ェ加えてない武器で、
いくら秘奥義だからってミノタウロスに大ダメージ与えられるかタコー!!』
凍弥 『よ、よし!俺も手伝う!───無限流、無限砲!!』
ゾゴォッフィゾバシャアッ!!
ミノタウロス『グゥウッ!!?』
佐野 『オッ……おお!!効いとる!効いとるでぇ!!この調子ぃやぁ!!』
飯田 『武器って大事なんだな……これからビシバシ鍛えよう!!』
総員 『おうさーーーっ!!』
彰利 『うっしゃあ狙うは両腕!ともかくあの凶器を振るえないようにするのだ!』
相手がミルだということは教えないほうが皆様のためだと思います。
だから敢えてこのまま続行!!
蒲田 『一等兵だからって命令すんな!!』
飯田 『そうだコノヤロー!!』
彰利 『こんな時くらい素直に頷こうよ!!』
みんなヒドかった。
だが言うだけで前に出ないのは男ではない!!
俺は一気に足を踏み込むとブラックオーダーを解放!!
まだラストジョブに入っていない今だからこそ出来るもの全てを出し尽くす!!
彰利 『界王拳ンンーーーーーーッ!!!』
身を包む黒が朱白く輝く!
これぞ、武器に左右されないジョブの反則技!!
この裏技に気づいてる人がどれだけ居るかは知らんが、
俺は気づいてからはずっと使っております!
彰利 (───あれ?でも待てよ?コレが出来なくなるということは、
ビッグバンかめはめ波も使えなくなるってことじゃあ───)
い、否!このゲームの中で、ゲームとして使おうとするからダメなんだ!!
ビッグバンかめはめ波は元々鎌の力を終結させて放つ技!
だったらアビリティがどうとかなんて関係ねぇ!
なんでこんな単純なことに今さら気づくんだ!
彰利 『うおおやっちめぇえーーーーっ!!!!』
総員 『おうさーーーっ!!』
突撃を開始せよ!
みんなの力を合わせれば、きっと勝てる筈さ!!
彰利 『オォーーーラァッ!!』
バゴォッシャアッ!!
ミノタウロス『グォゥウッ!!』
ミノの脚にSTRマックスナックルをブチ込み、
バランスを崩したミノをさらに殴り、蹴り、破壊する───!!
界王拳とブラックオーダーにて強化された我が肉体は、
この一時のみ限界を超えた力を見せる!
彰利 『右足は任せろ!!そっちは───』
総員 『獣人閻魔さまーーっ!!
我らに獣のごとき力強さを与えたまえ〜〜〜っ!!───マグニファイ!!』
ゴンファンシャンシャンシャァアアアン!!!!
総員 『グゥォオオオオゥウウッ!!!!』
《猛者どものマグニファイが発動!!バーサク状態になった!!》
彰利 『キャーーーッ!!?』
TPを使い果たした彼らが次に選んだ戦法は、なんとマグニファイだった。
多分効果もなにも知らないで使ったんだろうけど、結果がこれである。
原中の猛者どもは白目を血走らせ、
口から蒸気のような息を吐きつつミル・ミノタウロスに襲い掛かる!!
ああもうどっちが敵だか解ったもんじゃねぇ!!
総員 『ホガァアーーーーーーーッ!!!』
ゾガァン!ゾブシャザギィンゴギィンザシャア!!
暴走する皆様がミル・ミノタウロスを斬りまくる。
だがミル・ミノタウロスもそれに負けじと目を血走らせ、
巨大な斧を遠慮も無しに振るってゆく!!
ゴゥンッ!!ゾバァッシャアッ!!!
総員 『グギャァアアアーーーーウゥウ!!!』
彰利 『ヒィイ!!既に人間がダメージ食らったような声じゃねぇ!!』
猛者の群れが一気に吹き飛ばされる。
だが痛みを感じないのか、それこそ本気でバーサーカーになったように、
着地と同時に咆哮しながら地面を蹴る。
ミル・ミノタウロス『───!?』
そうなれば、そう簡単には負けはしない。
なにせこの集団だ、いくらミル・ミノタウロスが強者だとしても、
ここまで敵が多いと思うように動けもしないのだ。
そして暴走状態となった猛者どもは、
防御なんぞ無視で全力以上の全力を以ってミル・ミノタウロスを攻撃するだろう。
さっきまでとは攻撃力も違ってくる。
そして、そんな敵に攻撃されまくってくれば、いい加減腹から下に気が回りすぎる。
彰利 『下に気ィ取られすぎだ!!
ストック解除!!“錬気”と“常に溜める”を解放する!!』
ミル・ミノタウロス『!?』
彰利 『ぶっ潰れろぉおおっ!!闘覇-滅-“降龍”!!』』
ドゴォッチュゥウウウウウウンッ!!!!
その隙を逃さず、飛翔した上空から練りに練った気の塊を溜めた力とともに落とす!!
振り切った脚から放たれるソレは、流星のようにミル・ミノタウロスの額に激突した!!
ミル・ミノタウロス『グォオオオオゥウウウッ!!!!』
浩之 『仰け反る貴様にこの一撃!!巨大ハンマー奥義!“大旋風”!!』
ブォゥンブォゥンドゴバギャアアッ!!!
額で弾けた錬気がミル・ミノタウロスの視力とHPを奪った頃、
散々と回転していた双子の片割れ2が巨大なハンマーを脚目掛けて全力で振り切る!!
そうすることであれほど屈強に立っていたミル・ミノタウロスは転倒し、
倒れたその額目掛けて跳躍の落下とともに鈍器を振り落とすのは双子の片割れ1。
それからは休むことなく集団リンチで───とうとう、ミル・ミノタウロス撃墜は叶った。
ギギィイイイピピピピピピンッ♪《それぞれのレベルが上がった!!》
彰利 『うおう……一体倒しただけでこのレベルの上がりよう……』
総員 『───ハッ!?我らはいったいなにを!?』
で、戦闘終了とともに正気に戻る猛者ども。
どうやら一度発動すると戦闘終了まで暴走しっぱなしらしい。
それはそれとして、たった一体で2レベルアップとは……ミルの名は伊達じゃないね。
なんて思ってたら、さっさと座ってHPとTP回復に専念する猛者ども。
戦闘についての会話は座ってからするものだと決めているらしい。
俺もさっさと座ると、ストックの確認だのなんだのをしてホクホクと顔を綻ばせる。
おお、やはり旅はいい。
なんつーの?向上心というか克己心というか、ともかく上を目指そうと思えるよ。
まあ死神の力だのなんだのなんてもう★五つで限界なんだけど。
あとはレベルを上げて───…………ありゃ?なにやら頭に引っかかるものが……
彰利 (……限界……限界ねぇ)
そんな簡単に限界決めていいんかな。
確かにもう鎌の力とかは卍解にまで上昇させたし、
ゼットやみさおの鎌の力も“影鎌繰り殺ぐ闇黒の秩序”に随分馴染んできた。
しかし……なんだろ。
ここに来る前に悠介と殴り合って、何かを掴みかけることが出来た気がするのに。
ざわっ……!!
彰利 『───お?』
最近思考に耽ることが多くなったな、とか思っていたときだった。
座っている獣人姿の俺達の一番外周、その外回りの猛者どもがざわりとどよめいたのだ。
HPもTPも回復したことだし、それを確認しようと俺は立ち上がった。
そして───その、明らかに危険な存在を見るに至った。
───大きさはミル・ミノタウロスをさらに一回り巨大にしたような馬鹿げたデカさ。
肌は黒く、目は赤黒い。
両手で持っている巨大な斧は、中心についている煌く戦斧石を基盤として、
マシンカートリッジに流れる回路のような線がたくさんついている。
回路のような線は戦斧石にこもる輝きを刃の部分に流し、
ただでさえ悪夢のような凶器をさらに鈍く輝かせることで凶々しく見せていた。
彰利 (………)
静かに、コクリと喉を鳴らした。
刺激しないよう、“調べる”を発動。
それにより解った、相手の名は───ギガノタウロス。
強さは……計り知れない。
つまりこいつは───ミノタウロスのノートリアスモンスター……!!
ちょ、ちょっと待て……!ミルでさえ結構梃子摺ったんだぞ……!?
それをお前、いきなりノートリアスって……!
あ、い、いや、とにかく刺激しないように……!!
猛者どももみんな沈黙を守ってる……!
発言、及びなにかしらの行動は命取りになるって解ってるんだ……!
し、静かに……!息を殺して、むしろ相手が興味を無くして去ることを願いつつ……!
だって、気配だけでどれほど格上なのか解るもの……!こいつは───
佐古田『───あ。結局さっきの牛から斧取れなかったッス』
ギガノ『───!!グモォオオオオゥウウッ!!!!』
総員 『キャアアア!!馬鹿ァアーーーーッ!!!』
佐古田『え?なにッス?───ギャアなにッスこのバカデカい牛!!松坂ッス!?』
凍弥 『ナチュラルに黒毛和牛思い出してんじゃねぇこの馬鹿!!!』
嗚呼なんてこと!
ひとり気づいてなかった空気の読めない馬鹿魔王が、
地獄への片道切符を強制的におごってくれやがった!!
嬉しすぎて涙が止まらねぇYO!!
彰利 『ぜ、全力でブッコロがせぇえ!最初っから全力!余力なんて残そうと思うなぁ!』
総員 『い、言われるまでもないわぁーーーーーっ!!!』
それぞれが強化アイテムやアビリティ、
スキルを使って己を高め、STRマックスにて剣閃を放ちまくる!!
二発までしか撃てないが、それが終わったらすぐにパイングミを噛みまくってまた放つ!!
もちろん俺も全力だ。ビッグバンかめはめ波を惜しむことなく放ち、
大ダメージを与えてもなお生きているギガノタウロスをさらに、
死神の特種スキルのアルファレイドで狙い撃ちしまくる。
だがそれでも───!!
ギガノ『ルガァアアアォオオゥッ!!!!』
ルオゾガゴバドゴゾフィガバシャアッ!!!!
大勢 『ギャアーーーーーッ!!!!』
物凄い速さで突進してきたギガノタウロスは、
剣閃を受けながらも巨大な斧や腕や脚を振るって次々と猛者どもをあの世送りにする。
HPは全力で責めたことが効いたのか、半分以下まで減らせてる。
だが決定打となる攻撃がないのだ。
気づけばたくさんあったアイテムは底をつき、次々とコロがされてゆくのみ。
これは……なんだ?悪夢か?
あれだけ居た我が勢力が、こうもあっさり……!!
飯田 『ち、ちっくしょおがあああああっ!!!!』
ブォンッ!!ギヂィンッ!!
飯田 『なっ───!?は、刃がとおら《ゾブシャアッ!!》げはぁっ!!』
剣を振るった飯田が、逆にコロがされて光となる。
ギガノタウロスの皮膚の硬さはまるで、よく出来た防弾ガラスのソレだった。
生半可な攻撃では傷つけることも出来ず、向かっていってもカウンターでコロがされる。
……まるで兵器だ。
飛竜ともタイマン張れるんじゃないかというくらいに。
だが───負けたくない。
せっかくここまでダメージを与えたのだ、これで負けたら話にもならない。
けど負けたくないって思ってるだけじゃなんの解決にもならない。
負けたくないと───勝ちたいと思う今の俺に出来ることはなんだ?
ただこうして秒を刻むごとに滅ぼされてゆく仲間を眺めるだけか?
───違う。
俺はそんなものを見る趣味はないし、
負けたくない、勝ちたいと思う限りは諦めることなどしたくない。
だったら思い出せ。
俺は悠介との殴り合いでなにを掴みかけた?
なにを思うことで、力をあそこまで引き出せた?
この世界では“死王の理力”は使えない。
けど、そんな力に溺れなくても俺に出来ることはまだある筈なんだ。
これはゲーム。
けどスッピーがゲームの中で相手の自由を奪うのなら、そこに確かな意味がある。
自分の力を掴みかけているって言ってた悠介と俺の違いはなんだ?
あいつはこの、力を規制される中で悟れるものがあったという。
だとしたら。
死王の理力を封じてまでスッピーが俺に望む成長ってのがある筈なんだ。
───考えろ。
俺にはなにが足りない?真面目さ?勇気?悠介にあって俺にないもの……?
それは───……越えてゆこうと思う心?
けど俺には“超越”なんて能力も“凌駕”なんて能力も無い。
だから俺は俺に出来る努力をして、月操力も死神としての力も限界まで───……限界?
彰利 (……待て。今、またなにか引っかかって───)
限界……能力の壁。
そんなものが何処にある?
目に見えない壁になんの意味と価値がある?
そして───そんなものを作っているのは誰で、何を以って越えてゆける?
彰利 (───!!)
パズルのピースがゆっくりとはまってゆく。
───そうだ。
俺は悠介との殴り合いで、ゼノっていう運命に立ち向かっていた自分を思い出した。
その頃の俺は今みたいに平和になんて溺れてなくて、
ただ先にある未来を夢見て己を高めていた筈だ。
自分の力不足に泣いて、それでも立ち上がって、自分に出来ることをしてきた。
その先になにがあった?
俺はいろいろな月操力を手に入れて、ゼノを倒すことが出来て、
そして───それまで見ることも出来なかった未来へと辿り着けたんだ。
彰利 (いっつも思ってた。“なにかを越せることが出来るあいつが羨ましい”って。
でも羨ましがるだけで、俺はなにかをやったか?自分で勝手に限界作って───
それを越えようとしなかったのは俺なんじゃないのか?)
越せない壁なんてない。
少なくとも、それを何度も見せてくれたヤツを俺は知っている。
そしてなにより、“越せぬ壁など我が身にあらず、我が意思こそが無限の自由”。
その詩を作ったのは俺の前世だ。
それを俺が否定してたら、それこそ俺の前世と───あいつの前世に会わせる顔がねぇ!!
彰利 (越えてゆけ。必要なものは全て揃っている。
足りなかったのは俺の中にあるものに気づけなかった俺自身───!)
限界なんて無いのだと。
幻想は無駄ではなく、枷を破壊するための大切なイメージなのだと。
理解しろ、我が意思、我が身、我が歴史よ───!!
かつてこの身は運命を越えた!
そこにはあいつの未来を守るという確かな意思が存在し、
我が歴史は人の枷を越えて黒に至った!!
なにを迷うことがあった!考えるまでもなかったんだ!
意識するより、伝えられるより、理解するより先に、この身は既に───!!
彰利 『限界なんてない……!!越えようとする意思があるのなら、
枷を破壊する度にいつまでだって成長出来るんだ!!』
人であることなんてとうにやめた。
月の家系であることを受け入れ、そうして成長した自分がここに至ることが出来たのだ。
そうだ……何かを守れるのなら人間じゃなくてもいいとあいつが言ったように。
俺だって、馬鹿をやっていられる未来を守れるためなら、どんな姿になろうが構わない!!
ギガノ『ルグォオオオオオッ!!!』
彰利 『───!!』
目の前に巨大な黒雄牛が迫る。
振り被る巨大な斧は削岩機以上の破壊をその場に齎し、一撃で俺を破壊するだろう。
避ければダメージはないだろう───だが逃げようとは思わなかった。
何故なら、勝利への道は既に俺の中にあって、
あとはそこに至るための枷を俺が破壊すればいいだけのことなのだから。
彰利 (月操力、死神の力、鎌の力───その全てを一箇所に!!)
ビギィッ!!
彰利 『づ……ぅ……っ!!』
冥界の回路が灼熱する。
視界が砂嵐に襲われたかのようにざあざあと濁り、だがそれでも集中は止めなかった。
彰利 (満たし、さらに満たす───!!)
ステータスの全てはVITに。
攻撃力も素早さも今は要らない。
ただ、一撃でも相手の攻撃に耐えバゴシャォンッ!!!
彰利 『ぎぁっ───!!!』
空を飛ぶ。
弾かれるように、弾丸のように空を飛ぶ俺は、
しかし身を捻ると地面に着地し、数メートルを滑った。
ギガノ『───!?』
その姿をどう受け取ったのか。
ギガノタウロスは、自身が蹴り飛ばした俺を見て刹那に動きを止める。
だがそれこそ刹那。
次の瞬間を唱えるより早く地面を蹴り、他のやつらのように死なない俺へと駆けてくる。
彰利 (……ッ……!!)
冥界の───死神の回路が躍動する。
もう限界だと。
今まで唯一鍛え上げてきた回路が、
今までこれほどまでに行使しようとはしなかった限界を超えようとし、
俺に無理だ無理だと泣き言を届ける。
だがそんなものは無視する。
回路が焼ききれて燃え尽きるならそれまでのこと。
今はその壁を越えなきゃいけない時であり、
泣き言なんて聞いていられる状況じゃないんだ。
それでも泣き言を言いたいなら───周りにあるもの全てを使ってから言いやがれ!!
ビギィッ!!
彰利 『ギッ……!!』
視界がスパークする。
だがそれでも回路にさらに力を注ぎ込む。
けど一か八か、なんて賭けはしない。
確信を以っているからこそ力を加熱させ続ける。
───俺は死神の力を極限まで高めたつもりでいた。
けどそれは悠介だって同じであり、
神魔霊竜人の時のあいつは冥界の回路の他に幾つもの世界の回路を持っていて、
さらにそれを限界以上まで高めていた。
だったら───?
そう、俺には大して使われてない回路と備えられてない回路───
少なくとも地界空界神界空界の分、空きがある筈だ。
俺が極めたつもりでいたのは死神の回路だけ。
だったら───他の空いてる場所も死神の力で埋めちまえ!!
それが出来たら泣き言くらい聞いてやる!だから今はただ集中しろ!!
彰利 (連ねるは言。連言より軌道と成す。意は創造と化し、その在り方は正に人。
無二で在りつつ無二に在らず、唯一で在りながら既に虚無。
束ねる思考は例外に堕ち、虚無なる無象は有象へ換わる。その在り方は神が如く。
越せぬ壁など我が身にあらず、我が意思こそが無限の自由。
ならばその在り方をここに示し、無限の自由を世界と謳え)
焼きつかんとする思考の中で、己が前世の言を唱える。
意識を深層に埋没させ、埋没した自分自身で回路を無理矢理開き、
空いている全ての場所に死神の回路を通してゆく。
彰利 『……ストック解除』
───既にこの身は黒であり、黒の秩序である自分に操作出来ぬ場所など無し。
故に───ゴゥゾガァッキィイインッ!!!!
彰利 『───……!!』
ギガノ『グオッ!?グッ……!!』
ここに、俺自身の超越を……完了する。
知れ、稀少なる雄牛の者よ。
我こそが“黒”という死神の、ただ一点を極めんことを望んだ最果て。
我が身は黒という死神であり、それ以外のなにものにも在らず。
彰利 『“死皇に至りし鎌獄の死神”()』
振り落とされた斧を受け止めたソレは、闇黒()の中に緋の回路を通す篭手だった。
自分の身体は既に、死を連想させる闇黒と血を連想させる緋を彩った黒衣に包まれていた。
全ての回路を死神で満たし、人であることすらも捨てることで初めて至る場所。
死神の王の中の王に至ったと確信できる故に自らをその名で刻む鎌と我が身。
鎌がその意思を以って己を死皇を名乗った時、俺の翼は八枚になっていた。
……そもそもの枷が“鎌”だったのだ。
始解だとか卍解だとか、それが限界だと勝手に思っていた。
だがそれが枷だ。
始解も卍解も、漫画から取り入れた知識であり、
向上できると信じて自分自身を高めれば、より早くここに至れただろうに。
彰利 『じゃ───始めっか。後悔の時間をお前にやろう』
困ったことにこの能力は“アビリティ”として認識されてるようなのだ。
だからあまり時間が無い。
自分の持っている力全てと、増大した死神の力全てを込めて最後の解放を為した鎌だが、
それ故に消費も激しいし活動できる時間もそう長くない。
彰利 『───よし!!』
受け止めていた武器を篭手から巨大な鎌に変える。
新たに解放した鎌自体が黒と完全に同化したカタチであるため、
どんな武器にでもカタチ作れるのはいいことだ。
ただし全ての鎌を凝縮、融合させて至らせたために、もう他の鎌への変更が出来ない。
この鎌の能力は“黒の増幅と汲々”のみ。
幼い頃より黒になることを目指し、
いつしかそれのみを鍛え上げ続けたことで至った黒という名の死神の力。
コピーした全ての鎌を昇華させ、骨子にすることで至るのが影鎌繰り殺ぐ闇黒の秩序なら。
これは鎌全てを昇華させ融合し、
さらに全ての力を込めて今出来る限界まで昇華させて骨子にする鎌の姿。
それが。
今までのものが最終形態だと勝手に思い込んでいた者が知る新たな可能性───
“死皇に至りし鎌獄の死神()”である。
彰利 『その斧、貰い受ける!!“魔神天衝剣”()!!』
ストック解除をしたことで解放されているアンリミテッドブラックオーダーの力を、
マックスにしたSTRとともにこの一撃に託す。
シュギガァッフィィインッ!!!!
ギガノ『ギッ……!?』
そうして無遠慮に振るわれた秘奥義からの派生技は、
ギガノタウロスの傷を見事にえぐるようにして飛翔した。
剣閃やビッグバンかめはめ波などによってついた傷は、確かな布石となってくれたのだ。
ギガノタウロスは落ちた自分の両腕と巨大な斧を見比べて驚愕する。
だがそれでも逃げることだけはせず───
信じられないことに、手首から先が無い腕で殴りかかってきた!!
彰利 『甘いっ!!』
ゾガシュゥッ!!
ギガノ『グガアァアォオオオッ!!!!』
即座に鎌を巨大なランスに変化させると、そのむき出しの肉に突き刺した。
そしてその痛みに怯んでいるうちに落ちた巨大な斧を手に取る。
彰利 『───おっ!?』
すると巨大な斧は人間サイズの大きさになり、
それと同時に“ギガノタウロスの斧”を手に入れたというメッセージが出た。
しかもゴージャスチックな音まで流れた。
こっちはそんな音に浸っている暇もないというのに。
ギガノ『グゥウォオオゥウッ!!!』
ゴッ───バゴシャォオンッ!!!
彰利 『ゲハッ───!!』
腕に槍を突き刺したままの蹴りが、俺を吹き飛ばす。
いくらこの身が黒になろうと、その痛みは確実に俺の中に響いていた。
〜〜〜っ……やばい、そろそろタイムリミットだ。
ブラックオーダーのアビリティが切れる。
ストックの中はさっき確認した限りでは、錬気が2ストック残ってるだけだ。
彰利 『だったらそれに全てを賭け───っ!?』
ストックを解除し、放とうとした時だった。
相手も全身全霊をかけて潰しにきたのか、
今までとは比べ物にならない速度で吹き飛んだ俺の横まで一気に駆けると、
振り上げた脚をまるで斧のように振り落とし、俺の身を踏み潰した。
バガァッッ!ゴバァアアアアンッ!!!
……覚えているのはそこまでだ。
気づけば俺はウォズトロヤ城に飛ばされていて、それで───自分が負けたことを知った。
しかもご丁寧に奪った筈のギガノタウロスの斧が無かった。
───……。
……。
ビジュンッ!!
総員 『おっしゃぁあーーーーーーーっ!!!』
だから俺は既にその場で待機していた散っていった猛者どもを連れ、
再びバルガパレスのさきほど死闘を繰り広げた場所に転移した!!
ギガノ『グオッ!?』
そこには腕が再生し、巨大な斧を持ったさきほどのギガノタウロスが。
だが気づくのがちょっと遅かった。
総員は既に全力にて剣閃を放っていて、
癒えきっていなかった傷を容赦なくえぐりまくり───
彰利 『終わりにしようぜギガノタウロス───これであの世へ送ってやる!!
ビッグバン───かめはめ波ァーーーーーッ!!!』
ギガァッ!!チュゥウウウウウンッ!!!
ギガノ『グ……ガ……!!ガァアアアアアアアッ!!!!』
STRマックスで放ったビッグバンかめはめ波が、今度こそギガノタウロスを滅ぼした。
デテーンテーンテ・テーテケデッテーン♪
デケテテ〜〜〜テケテ〜〜〜テッテッテケテーーーン♪
デンテンテケンテテンッ!!ワシャァーーーーン!!
それとともに流れ出す音楽と、再び高鳴るレベルアップの音。
それに紛れて、今度こそ我が手に舞い降りる“ギガノタウロスの斧”の姿。
皆川 『オッ───おおぉおおお!!すげぇ!!』
佐野 『ちょっ……ちょっと見せれ!!見せれーーーっ!!』
彰利 『ダメだ!秘仙丹は秘密の丸薬なんだ!!』
蒲田 『なんの意味があんだそりゃ!!いいから見せろコノヤロー!!』
彰利 『う、うるせーーーーっ!!これはボクんだい!!』
飯田 『てめぇ格闘家だろうが!斧装備出来ねぇだろ!!』
彰利 『ゲェエーーーーーッ!!だ、だがそれを言うならキミ達だって剣士だ!!』
総員 『ゲェエーーーーーッ!!!』
ショックの連続だった。
つーかみんなハイになってる。
中村 『ナビ!詳細ゴー!!』
彰利 『あっ!こ、これ!!』
皆様の熱気に圧倒されてた隙に強奪され、その詳細を虚空に映し出されるギガアクスさん。
ミノアクスは手に入らなかったが、まあこれはこれで……
◆ギガノタウロスの斧───ぎがのたうろすのおの
ハイレアノートリアスモンスター、ギガノタウロスが持つ巨大な斧。
黒と緋で彩られた美しい造型の割りに、悪夢的な破壊を齎す戦斧。
どのミノタウロス、ミル・ミノタウロスの斧よりも優れ、
斧に張り巡らされている回路のような緋い線は、黒のその身を怪しく彩っている。
斧の中でも大変貴重な武器であり、攻撃力、スキルともに信頼をおける武器。
ただしとても重く、並の腕力では持ち上げることも出来ない。
*スキル───会心:★★★★★ 超ためる:★★★★★ フルスイング:★★★★★
*潜在能力───ジェノサイドハート(HPが低いほど攻撃力UP)
総員 『鬼強ェエエーーーーーーッ!!!!』
な、なんですかこりゃ!!破壊の象徴!?
会心も超ためるもフルスイングもマックスじゃねぇの!!
ど、道理で一撃でいろんな人々が死に至るわけだ、こりゃ強ぇわ。
あー……黒でよかった。
黒操者のジョブはHPが全ジョブ中2番目に高いから。
しかもモンクを併用してるから、その分さらに高かったし。
防御力無視な上に会心の一撃出されちゃ、HPが低いヤツはそりゃ死ぬよ。
……や、攻撃受ける度に密かに月生力で回復してたってこともあるんだけどね?
……ところでこの“超ためる”と“フルスイング”って……えーとなになに?
ナビによるところでは……“ためる”の効果や“常にためる”の速度をアップさせる……?
で、フルスイングは……両手持ちで全力で振るい切った時にダメージ上昇……?
ウホッ!いいスキル……!!ジェノサイドハートと合わせるだけでも鬼強いよ……!!
それを……
総員 『………』
佐古田『さ。さっさとアチキに進呈するッス。そりゃアチキのものッスよ?』
……こんなヤツにやらなきゃならんのか。
いっそ俺、これから斧戦士になろうかな。
でもゼットとかぶるのはイヤだなぁ。
……仕方ない。
と、誰もが涙を飲んで……レアアクスは佐古田好恵の手の中に。
佐古田『ククク、これでアチキは最強の斧使いに《メゴシャアン!!》なうんっ!?』
あ、潰れた。
ニヤニヤと暗黒を煮詰めたような笑みを浮かべながら斧を装備したサコタヨーシェが、
強力な磁石に引かれるようにして地面に潰れた。
佐古田『ギャッ……ギャーーーッ!!おもおもおもももも重いッスーーーーーッ!!!
重すぎっ……ギャーーーーッ!!《メキメキメキメキメキメキ……!!!》』
……ああ。
そういや並の腕力じゃあ持ち上げることも出来ないって書いてあったな。
でも俺持てたし……もしかして装備すると効果が発動するのか?
って、そらそうか。じゃなきゃアイテムとして持っておくのに不便すぎる。
凍弥 『ば、ばかっ!今すぐ装備解除しろ!潰れるぞ!?』
佐古田『い、いやッス……!これはアチキの武器ッス……!!
アチキの目の黒いうちは……だ、誰にも……!!』
浩介 『おおそうか。では目を焼こう』
浩之 『おお、アグレッシヴだなブラザー。
眼球は焼くと真っ白に変色するという特徴を上手く掴んだ行動だ』
佐古田『ジャ、ジャレにならないごど言うなッズ……!!』
志摩 『ふはははははははは!!
まるで潰れたカエルの鳴き声のような文句だ!ざまァないな佐古田好恵よ!!』
佐古田『いぢいぢうるぜぇッズねぇ……!!』
つーか頑張るねこの魔王。
普通内臓が圧迫されすぎて呼吸困難くらいになると……あ、顔が紫色に変色してる。
どうやら呼吸困難には既になってるらしい。
彰利 『魔王、ちとSTRマックスにしてごらん?』
佐古田『いわれるまでもねェッズ……!!』
メキメキメキメキ……メキ……メ……メキ……
佐古田『ぐ……ご、ごぉおおお……!!!』
皆川 『お、おお!立った!!』
吾妻 『魔王が立ったわ!!』
佐古田『魔王言うなッス!!』
志摩 『声が戻ってしまった……なぁ佐古田好恵よ。
先ほどのカエルが潰れた声のほうが貴様に似合っていると思うんだが』
佐古田『激大きなお世話ッスよテメエ!!』
凍弥 『とりあえず女が立ち上がる時の掛け声じゃないだろ、今の』
佐古田『うるせーッス!!』
何はともあれ僕らは武器を手に入れた!!
これで戦力の幅が大きく広がった!!
佐古田『ストレングスさえ上げてれば案外振るえるッスねこりゃ』
その分防御がおろそかになるってこと解ってるのかしらね、この子ったら。
……ちなみに密かに調べてみたところ、魔王サコタヨーシェのレベルは75だった。
小僧も似たようなレベルだ。
途中参加のくせに既にここまでレベルがあるのは……結構なお手前だ。
まあ多分レベル上げばっかしてたんだろうね。
彰利 『んじゃ、この調子でどんどん行くぜ〜〜〜っ!!』
中村 『否!意義あり!!』
彰利 『むっ!?なにかね中村この野郎!!人がせっかくノってきてんのに!!』
中村 『ミノは強すぎる!効率が悪い!他のところ行こう!!』
彰利 『なにを言うのかねキミ!経験値はかなりのものだというのに!』
中村 『犠牲が出すぎだコノヤロー!!我らはともに強くならなきゃダメだ!!
いくら我らでも他人の死を糧に成長するなど言語道断!!
時にはそれもアリだが、楽しめなければ意味がないだろう!!』
彰利 『グ、グムーーー』
つーかアリなのか。
さすが原中。
皆川 『まあそんなわけだ。レベルばっか上がっても技術が無ければ宝の持ち腐れ。
そして我らにゃ技術が無い。なにせ剣閃ばっかで上り詰めたからな』
佐野 『そのための戦闘技術をこれから磨きたいと思ってる』
彰利 『……するってぇと……マジ?』
総員 『そう!これより剣術の将、リザードマンと戦いにゆく!』
剣術といえばヤツだー!と叫ぶ皆様を余所に、僕はなにやら呆気羅漢となっておりました。
確かにそれは合ってるんだが……まあいいか、レベルは後回しでも。
確かにレベルなんぞより戦闘経験がものを言うって事実は、
悠介の戦い方を見てりゃあイヤでも解る。
明らかに自分よりレベルの高い相手でも互角以上に戦えるからなぁ、あいつは。
経験した上で努力してそれを身につけるって、
とても大事なことだということを俺は思い出しました。
まったくヤんなるぜ。
いつから、何かをより学ぼうと願う必死さを無くしてたんだか、俺は。
皆川 『でさ。リザードマンってどこらへんに居るんだ?』
彰利 『ンなもん知るもんかネ』
どっかで会った気もするが、どうやら探すしかなさそうだった。
あ〜……回路に無茶させすぎたことも相まって頭痛い。
佐古田『フゥンォゥッ!!』
ゾバシャォゥンッ!!
ミニ・サイクロプス『ギエェエーーーーーーッ!!!!!』
ふと視線をずらしてみれば、
ファイヤーエムブレムのアーマーナイトのようにズシンズシンと進み、
フルスイングで小さなサイクロプスをコロがすサコタヨーシェの姿が。
その威力は悪魔の如し……おお強い。
でも75レベルくらいの腕力じゃ実戦向きじゃねぇよね、絶対。
なにはともあれ───僕らはリザードマン探しの旅に出たのでした。
小僧チームは別に用があるらしく、とっとと別の場所へと去っていったが。
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