───冒険の書95/沈む大地───
【ケース289:中井出博光/ヒロミチュード2】
驚きの瞬間ってのはどういう時のことを指すのか。
そんなもんはもちろん驚いた時だと答えるもんだが、
だったら人生最大の驚きに直面した時には、
今までの驚きが果たして驚きと唱えられるほどのものだったのか。
もし言うなら、視界の先にある光景は人生最大とまではきっといかない。
いかないが、明らかに驚いたのは事実なのだ。
さらに言うなら事実には事実だが、
むしろアレに乗ってみたいという気持ちのほうが高かったのも事実で、
そこらへんは周りの猛者も同じ、嗚呼原中って風情だった。
中井出「ア、アワワー!!」
丘野 「す……《ゴクリ……》すげぇ……!」
藍田 「なんだかオラ、ワクワクしてきたぞ……!」
中井出「ぼ、ぼぼぼぼ冒険とはロマァン!!」
男衆 『旅路とは夢の道ィ!!』
女衆 『青春とはファンタジィーーーッ!!』
ナギー『ど、どうしたのじゃヒロミツ!急に騒ぎ出して!』
シード『父上!どうか……!?』
中井出「だってナギー!シード!浮遊島だぞ浮遊島!!
それが浮く瞬間をナマで見てるんだぞ!?
うおおおお!!ファンタジィーーーッ!!ファ、ファンタジィイイイッ!!
ファーーーンタジィイイーーーーーーッ!!!」
総員 『ハワァアーーーーーッ!!!』
シード『ち、父上……!?あれは見て喜べるようなものでは……!』
中井出「シードよ……それは違う。それを決めるのは見ている者だ」
藍田 「そう!そしてアレがどのような兵器だろうが恐ろしいものだろうが、
今ここで感じる感動はニセモノなんかじゃない!!」
ゴコッ……バッシャアアアアアアンッ!!!!
総員 『ほぎゃぁああああああっ!!!』
感動を言葉にした時だった。
なんと超古代都市から雷が舞い降りたのだ!!
中井出「なっ……何事ッ!?」
ナギー『雷鳴……?あの都市にそんな技術があったことなど聞いたことも……』
七尾 「はっ!!あ、あれを見て!!」
佐東 「な、なんだ〜〜〜っ!!ってゲェエエ!!!!」
中井出「う、おっ……!?な、ななななぁあああんだありゃあああああああっ!!?」
促さて見上げた空には巨大な映像が!!
しかもその映像ってのが、紛れもなく晦一等兵!!
悠介 『───諸君、ご機嫌は如何だ?なんて訊くのもヘンなもんだな。用件だけ言うわ。
これからこの世界をモンスターキングの名の下に支配することにした。
文句があるヤツはいくらでも邪魔しに来い。
ただしその場合、容赦は一切しない。死ぬ気でかかってこい』
総員 『な、なんだってぇえええーーーーっ!!?』
ナギー『ヒロミツ!?あの男はホークビクスに居た男なのじゃ!!
いったいどうなっておるのじゃ!?』
中井出「なんということを考えやがるんだ晦一等兵……!!」
総員 『世界征服は我らの役目だというのに!!』
ナギー『そういう問題ではないのじゃ!!ヒロミツ!なにか言ってやるのじゃ!』
中井出「任せろ!おいヒヨッ子ども!!」
総員 『なんでありますか!サー!!』
中井出「これは役目などというものではない!野望である!!」
総員 『はっ……そうでありました!!』
ナギー『ヒロミツ!?』
中井出「ナギー!これは紛れも無い事実!この世の征服がモンスターの手によるもの!?
否!!そんなことは否である!支配するのはこの魔王だ!依然変わらず!!
それは普通か!?否!!魔王が支配しているとかよくいうが、
支配しているのはその実、魔物なのだ!!魔王が何かをしたか!?否!!
ただふんぞりかえっているだけである!!そんな魔王に世界は手に余る!!
だから勇者なんぞに負けるのだ!!故に言おう!
今こそ魔王軍が世界を支配する時!!モンスターになど渡すものか!!」
藍田 「そうだ!」
丘野 「その通りだ!」
総員 『よく言った!!』
中井出「否!熱き原中の魂に問答など不要!!いくぞぉ野郎どもぉおおおっ!!!」
総員 『Sir!!YesSir()!!』
咆哮!!そして疾駆!!
おのれ晦め!なかなかブッ飛んだこと考えるじゃねぇか!!かなり驚かされたぞ!?
だが貴様にこの世界は渡さん!!
シード『お待ちください父上!どうやってあそこまで行くつもりですか!?』
中井出「ナギー!!タッグフォーメーションAだ!!」
ナギー『解ったのじゃー!!……で、たっぐふぉめ?とはなんなのじゃ?』
中井出「うむ!とりあえず頷くそのノリや良し!!
タッグフォーメーションAとはナギーが空を飛び、
俺がその足に掴まってそのまま空を浮遊する妙技である!!」
ナギー『おおなるほどの!でもいやなのじゃ』
中井出「何故!?」
ナギー『以前“ふぇにっくすどらいばー”とかいうのをわしにやったのを忘れたのか!?
あんなもの、もう冗談ではないのじゃ!!』
中井出「ぬう!まだ覚えてたのか!!」
あれは思いっきり失敗だったかも。
つい原中魂が発動しちまえば終わりだった。
うーむ。
中井出「しゃーない、だったら俺だけでも空を飛ぼう」
田辺 「なにっ!?出来るのかてめぇ!!」
中井出「てめぇとは何事!?まあいい、我が炎風双剣があればいくらでも天高く飛べる!!
いくぜ翔技!“覇翔斬り()”!!」
炎風の稀紅蒼剣から炎と風を巻き起こし、炎の上昇気流と風との合わせ技で空を飛ぶ!
そう、一気に!!
田辺 「お、おおすげぇ!!提督が飛んでゆく!!」
岡田 「頼んだぜ提督……!俺達の未来は貴様の手にかかっている!!」
ナギー『世界征服の未来なぞ手にかけるでないのじゃ……』
最後にそんな声が聞こえたが、それ以降は一気に大地が離れたために聞き取れなかった。
だが、辿り着くならまだ浮遊しきってない今しかない!
中井出「いっけぇええええええっ!!!」
ヂガァンッ!!ズガガガガガァアアッ!!!!
中井出「ギョエァアアアアアアアアッ!!!!」
嗚呼しかし!辿り着く前に雷によって打ち落とされた!!
しかも辛うじて見える古代都市には、
俺を見下ろして目を閉じるくらいの笑みで歯を見せるほどニヤリと笑い、
手をひらひらと揺らしてる晦一等兵の姿が!!
フッ……どうやら今の貴様はかつてまでの晦とは一味違うようだな……。
恐怖を乗り越えた花京院ではなく、生真面目さを乗り越えた晦ってとこか……?
いい顔で笑いやがる。それでこそ原沢南中学校卒業生と納得出来るくらいの暗黒の笑みだ。
だが!
中井出「この博光がただでやられると思ったら大間違いだぁあーーーーーっ!!!
ストック解除!鬼人化+鬼靭モード+背水!そしてSTRマックス!!
さらにグミを食うことでHPを回復!当てづらいがさあまいりましょう!
フルスイング“極光吼竜閃()ァーーーッ”!!!!」
ギガガチュゥウウウウンッ!!!
悠介 『なっ!?おわちょっと待てぇええええええええっ!!!!』
古代都市の人影と一緒に映像が本気で驚愕していた。
というのも束の間、人影があった場所へと巨大な極光レーザーが襲い掛かり、
巨大な爆発とともに映像は消え去った。
中井出「ふあははははザマーみくされコノヤロー!!
いいか覚えておけ晦一等兵!この世界を統率するのは貴様らではない!!
我ら原中の猛者どもだぁあああああああ《ベゴチャア!!》ゲファーーーリ!!」
丘野 「ああっ!提督殿がカッコイイこと言いながら地面に脇腹から落ちたでござる!」
岡田 「提督!?提督ーーーっ!!提……ヒィ!!提督が光になって消えてゆく!!」
田辺 「レイジングロア撃ってから落下した所為で死んでしまったんだ!!」
藍田 「提督……アンタ男だぜ。回復よりも罵倒を優先するとは……」
麻衣香「しかも落下直前に咄嗟に$袋だけはわたしに投げ寄越したし……」
総員 『うおすげぇ!!』
シード『ははははは!そうだ!どーだ!父上はすごいだろう!!』
佐東 (こやつ、提督のこととなると自分のことのように喜ぶよな……)
藤堂 (すげぇ磨り込み効果だ……)
そんな言葉を最後に、俺の最後の光はホークビクスへと飛ばされたのだった。
───……。
……。
そうして、ハッと気づけば教会。
目の前では神父の野郎がありがたい説教を開始したが、それを無視して歩きだした。
で、外に出てみれば、外はとんでもない状況になっていた。
ヂガァンッ!!ヂガガガガァアアアンッッ!!!!
町人 「うわぁあああっ!!!」
町人 「ひぃいいいいいっ!!!」
中井出「フオオ!?」
一歩外に出たら、そこには雷の雨が降っていた。
一応建物には当たらないようでヂガァンッ!!
ああいや、当たった。こりゃ怖いな。
晦の野郎、本気のようだ。
声 『ィヤッハッハッハッハッハッハ!!
逃げ惑う人類どもはまるで撹乱した蟻の行列ゥウ!!
本位に帰れぇえ……!!ボトゥムセアァーーーッ!!!』
ヂガガォンガォガォガォオオオンッ!!!!
町人 『ぎゃあぁあああっ!!!』
…………。
晦が壊れた。
ああいや、原中に染まったというべきなのか?
ともかくいつもの晦とは一線を画しすぎてる。
だって、あの晦が恥じることなくエネルの真似してるんだぞ?
これは絶対になにかがあったと考えるべきだろう。
しかしすごいな、無差別攻撃じゃないか。
中井出「ところでボトゥムセアってなんだろな」
老人 「ボトゥムセアか……今の若者は知らん名じゃよ」
中井出「うおっ!?貴様いつの間に俺の背後を!?」
老人 「かつてこの大地は海に沈んでおった。まるで、あの聖地と反比例するようにの。
ここで比例云々を出す理由は、
聖地が海面へ降りると同時にこの大地も海底から浮上したからじゃ。
故に誰も居ないこの地を魔物たちは住処とし、名付けた。ボトゥムセアと。
しかし海底沈んでいた大地じゃ、自然など育まれるわけもなく。
そこでここに自然を植え込もうと動いたのがドリアード様じゃった……」
中井出「………」
おお……なにやらペラペラ喋ってくれるぞこの老人。
もしや俺が魔王宣言したことなんて既に忘れてる?
それならそれでべつに構わんのだが。
しかし、ドリアードか。
もしかしてここの事情に詳しいのはその所為なのか?
でも……ちょっと待て?
だからってナギーのあの慌てっぷりには答えが繋がらないぞ?
べつに敵の軍勢が空に飛んだってだけなら、あそこまで恐怖するように言う必要は───
って、待てよ?“反比例”して?
じゃあ、あの聖地が浮いた今、この大地はドッゴォオンッ!!
中井出「うぉわっ!?」
老人 「……とうとうきおったか。
若いの、この島の支配などという馬鹿なことはやめておきなさい。
どうせこの島は海に沈む。なにをしても無駄なのだよ」
中井出「じいさん、あんた、覚えてたのか……?」
老人 「ふおっほっほ、あんな大胆な自己紹介をそうそう忘れるもんかね。
だがしかし、お前さん、わしの話を信じるのかね。
町の連中は誰ひとり信用しなかった、老人の戯言を」
中井出「これでも老人にはやさしい魔王なんだ。
それに、今ならなにが起こっても納得しそうだ」
なにせこの世はファンタジー。
しかし、沈むか。
信じていようがいなかろうが、ああして船に乗れるだけ乗ってる町人たちは、
結局のところ本能として沈没を予想しているんだろう。
嫌な予感ってのは当たるもんだしな。
しかしそうか。
ますますもって晦の野郎は本気か。
クフフフフ、面白くなってきやがったぜ〜〜〜っ!!
中井出「で、じいさん。あんたは逃げないのか?」
老人 「わしは生まれも育ちもこの町じゃて。もちろん逃げるわい」
中井出「………」
一瞬、目の前の老人に自分の未来を見た気がした。
まあそれはそれとしてだ。
中井出「逃げるのか」
老人 「あったりまえじゃあ。沈没と浮上の瞬間が見れるかもしれんのじゃぞ。
そのためには生きている必要があるじゃろ。というわけで死ぬわけにはいかん」
中井出「懸命な判断だぜじいさん、死んじまったらなんにもならねぇ」
ところでボトゥムセアの名を知るのが若者ではないのなら、晦一等兵は年寄りなのか?
そりゃ俺達よりかは生きた歴史も人生経験も異常なほど豊富だけど。
それでも一番生きてるのは総合で彰利か。
すげぇよなー、それだけ生きてりゃ人としての在り方だとかも薄れて、
妙に悟っちまうもんだと思ってたけど。
そこんとこは感情を手に入れるのが遅かったのが効いてるのかもしれない。
中井出「っと、ほんとに沈んできてるな」
老人 「ひぃい退却じゃーーーっ!!」
ずどどどどどーーーっ!!
中井出「うお速ぇえ!!」
今まで妙に落ち着いた雰囲気を出していたじいさんだったが、
町に水が流れ込んできたのを見ると物凄い速度で船へと駆け出した!!
さすがに町全員分は乗り切らないだろうと思っていたもんだが、
そこはさすがファンタジーの運搬船。
予想以上にあっさりと人は乗り、しかもとっとと出航しやがったのだ。
さて、ここで俺がするべきことはなんだろう。
トルネコさん根性を見せて俺も乗るか?猛者どもを見捨てて。
それとも猛者どもを呼んで物凄い速さで来てもらって乗るか?
はたまた……
中井出「フフ……もちろん決まっているさ」
人々は慌てて船に乗り込んだ!そしてもう陸から離れている。
加えてこの町にはこの博光しかおらん!!
ということは!?ということは!!
中井出「この町に残された民の私物は全部俺のモンだぁーーーーーっ!!!!」
まさしくそれが原ソウル。常識だけでは語れない。
中井出「それ急げ!AGIをマックスにして、バックパックに入るだけ詰め込むんだ!!」
俺は動いた!それはもう物凄い速度で!!
普通これは勇者の専売特許だろうが、
たまには魔王だって略奪だけじゃなくてコソドロもしよう!!
そんなわけだから民家に入ってはそこらじゅうを漁り、金目のものや金そのもの、
武器や防具などもしっかり入手!!
フフォフォ、武器屋や防具屋や道具屋め、どうやら全部は持ちきれなかったようだぜ〜〜!
中井出「よ、よ〜し!あらかた回ったか〜〜〜!」
は、いいんだが。
さて……最後にもぬけの殻となった教会に訪れてみたんだが、
大変なものを見つけてしまった。
それは石版と絵画……ともかく暗号めいたものだ。
海に沈んだこの町を描いているものなんだろうが、これがおかしい。
ところどころに海に沈んでいた形跡があって、
フジツボみたいなものが縁についていたりするのだ。
もしかしてこれ、ここが浮上する以前に描かれた絵なのか?
しかも絵の中には光り輝くなにかまで描かれていた。
これは……貴重品か武器か、それともべつのなにかか?
肝心なところが崩れてて読めやしない。
だがこの博光は諦めない!!
中井出「こういう年代を感じさせるものだ!なにかが必ずある筈!ましてファンタジー!!
ある!絶対になにかがあるぜ〜〜〜〜っ!!」
考えろ!考えるんだ博光!頭を動かせ!思考を回転させろ!
お前の頭脳はその程度のものか……!………………カラカラカラ。
見事なカラ回りだ、さすが俺。
中井出「いやしかしこの俺にも普通の人よりは発達しているものがある」
そう、それは普通ではない方向の考え方。
こうみえて謎々だとか裏トリックとかを見破るのは得意さ。
恐らくあまりに偏屈な生き方をしたためだろう。でも後悔はしていない。
中井出(こっちの絵画はお宝があるってことを示すってことにしといて、
もうひとつ……こっちの石版みたいなヤツは……)
文字が刻まれてる。
でも読めない。
中井出「ナビに翻訳機能でもないもんかな。これじゃどうにも出来ん」
と、ナビをいじくっていると……あった、翻訳機能。
誰も使ってなかったようだが、一応。
これを和訳するといったいどんなものに?
中井出「フームフムフムフフンフン、フムムー。ひかりを、てにしろ……光を手にしろ?
あっする……ちからはきぼ、うを……つかむい、し……ふむふむ」
つらつらと和訳してゆく。
それで解ったことといえば、なんとまあ味気ない、答えだった。
難しくしたつもりなんだろうが、この博光は欺けん。
光を手にしろ
圧する力は希望を掴む意思
恐れることなく突き進め
闇を照らすは輝き
されど闇に眠るものは闇にすぎない
中井出「これらが示す言葉の意味!それは───これだぁーーーーっ!!!」
絵画の一部分におもむろに拳を振るう!!
それは先ほど見た崩れて見れなかった部分にブチ当たり、コキュリ。
中井出「ギャアーーーーーーーッ!!!」
奇妙な音を鳴らした。
ば、馬鹿な!これが答えの筈だ!こんな筈はぁあああ!!
中井出「おのれこの野郎!!とんだデマカセ!してやられた!
この世にゃ神も仏もありゃしねー!!ええいどうしてくれようかこの絵画!!」
おのれよくもっ!この汚らしいアホがぁーーーっ!!
神も仏もブッ潰して……あれ?神?
中井出「………」
フと、教会の奥にある祭壇のようなものを見た。
そこにはステンドグラスと、よくある飾りがつけられた十字架。
そしてそのステンドグラスは昨夜も今も同じ場所を照らしてるような……ア、アアーーッ!
中井出「そうか!そういうことだったのか〜〜〜っ!!」
わ、解った〜〜〜っ!!
つ、つまりこの光が差すここ!
こ、この場所にこそ恐れることなく突き進めばいいんだ〜〜〜っ!!
中井出「オォリャソォーーーーーッ!!!!」
早速拳を叩き込む!
しかし先ほどの激痛が思い返されるとそれも中々難しく……
中井出「ハッ!こ、これだ〜〜〜っ!!」
すぐ近くにあった椅子を抱え、それを持って回転しながらジャンプする!!
中井出「トルネードフィッシャーマンズスープレェーーーックス!!」
なんのことはないプロレス技である。
が、持った椅子を光の差す場所へとゴワシャアと叩きつけてもてんで穴も開かない。
代わりに椅子がグシャグシャだ。
中井出「………」
これは……試練だ。
恐怖に打ち勝てという試練と……俺は受け取った。
つまりこれはきっと、拳でなければ貫通できないのだ。
勇気を以って、恐れることなく突き進め!
中井出「ダイヤモンドナックルアタァーーーック!!!」
ゴヅゥゴッシャアーーーン!!
中井出「……徹った」
拳がステンドグラスの光を受けた床を突き抜けた。
だが躊躇することなくより一層拳を突き入れる!!
中井出「───ヌウ!?」
やがて床が肩に付くくらいまで突き入れると、我が手に何かがコツンと当たる。
それを掴み、引きずり出してみると───
なんとそれは縄で結ばれた鞘に納まった二本の刀!
この小型の刀、これは……忍者刀!?
中井出「ウヌウ!これは丘野二等用ってことか!?」
あな口惜しや!
是非とも剣が欲しかったんだが……!
中井出「しかし随分と古びた刀だこと。ふんっ!!《ギヂッ!》おおっ!?
ふんっ!くがっ!ふんんぬぬぬぬぬぬぬぅう……あぁっ!!」
どうにも抜きづらい刀を、鞘から強引に抜き去ってみる。
と……
中井出「あれ……?錆び付いててボロボロじゃないか」
どこぞの円形フェイスの天地くんが思い返される言葉が口から漏れた。
そりゃね、ずっと海に沈んでたならこうなってるのも当然なんだろうけど。
名前は……ああ、やっぱり“錆びた刀”だ。
見たまんまだな。
中井出「錆びてると武器も重く感じるから不思議だよなー」
とりあえず装備してみる。
が、な〜んの力も感じない。
中井出「うーむ、こりゃ猫に鍛えてもらうしかないか」
じゃあそろそろウオッ!?
中井出「ア……ウォアァ〜〜〜ッ!!」
忘れていた!足首まで海水がせりあがってきている!
い、いや!町が沈みかけているのだ〜〜〜っ!!
中井出「いかん!早く逃げなきゃ沈んじまう!」
清く戦い戦に死ぬのは構わねー!
だが溺死や絞殺などの醜い死に方だけはごめんだ!
欲しいモンは手に入ったし、とっとととんずらだ!
中井出「って待て?沈んでるうえに船ももう出てちまったから……」
うおう。
このままじゃ逃げようがないのでは?
中井出「………」
災害には誰も勝てんか。
魔王軍が聞いて呆れるなぁと思った瞬間だった。
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