───冒険の書109/VS不死王ジュノーン───
【ケース315:弦月彰利/不死王ジュノーン】
ザザザザザッ───ザァッ!
不死王ジュノーンは、案外簡単に見つかった。
滅びの町という名前に変わっちまったこの町は相当広く、
けど“きっとここに居る”と目星をつけて駆けたその先に───そいつは居た。
ついた勢いを殺すように立ち止まった俺達はアンデッドシールドを解くと、
様子を見るように距離を取りながら一体の敵を睨みつけた。
滅びた町の、朽ち果てたような教会。
そこにそいつは居たのだ。
並ぶロウソクに無人の椅子の列。
ぼんやりと薄暗い広い空間の中、ステンドグラスは夜の月明かりのみを身に受けていた。
そう、時は既に夜。
雲ひとつ無い空から降りる月は、ゲームの中だってのに俺の中の月操力の力を強化させた。
ジュノーン『………』
ジュノーンは眼前に来た俺達を見ても何も言わない。
ただ教会の奥で床に剣を突き立て、柄の上に両手を重ねた状態のまま俺達を睨んでいた。
いや、睨んでいるという感覚も真実かどうか解らない。
何故ならジュノーンの顔は分厚く凶々しい仮面めいたヘルムに覆われて、見えないのだ。
彰利 「不死王が教会でお祈りか?ご苦労なこったなぁ」
ルナ 「え?不死でも信仰に厚いヤツが居てもいいんじゃないの?」
彰利 「そうかえ?」
なんて軽い会話もここまでだ。
ジュノーンが動き出した。
剣を右手に持ち、構えらしい構えも取らずにゆっくりと歩いてくる。
彰利 「やる気ってことかね」
ゼット「“あれ”がヤツの構えだ。
先に言っておくが、生半可な攻撃などヤツには通用せんぞ」
彰利 「OK!」
正直強そうには見えない。
かつてのソニックブレストも相当な威力だったが、それもあの頃だったからこそだ。
今では喰らったところでそうダメージは受けないと思う。
……もっとも、こいつがゲームの在り方に則ってレベルアップしてなけりゃの話だが。
ジュノーン『ル───オォオッ……!!』
ヒュッ───ドゴォンッ!!
悠介 「っ───!?ちぃっ!」
───速い!動きはあんなに遅かったってのに、剣を振るうあの速さはなんだ!?
剣の軌跡があとになって解るくらいの速さだ……。
しかもあの地面の抉れ様を見るに、相当な威力と踏んで間違いない。
ゼット「御託は要らん!一気にカタをつけるぞ!」
彰利 「解ってらぁ!」
ゼットが竜人と化し、俺はオーダーを発動。
みさおが神魔を解放し、ルナっちが鎌を解放。
が───
ジュノーン『ルガァッ!ガァアッ!!!』
ヒュオドゴォン!ガゴォン!バゴォン!ゴコォンッ!!!
悠介 「はっ!くっ……づっ……!!」
ジュノーンは俺達には見向きもせず、悠介のみを狙い攻撃を繰り返していた。
気の所為かさっきより速度が増している。
振るう剣も弾かれ、悠介はどんどんと追い詰められてゆく。
おっ……おいおいおい……!こんなヤツと最初の頃に出会ってたのか……!?
ゼット『フン、一番近い者にしか目が行かないのか?
死人の王とやらも所詮は他の死体と同じか!』
一瞬でも驚愕に染められた俺の横を、ゼットが飛翔して突っ込む!
やがて飛翔の勢いをそのままに、バケモノめいた斧を渾身とともに振るう!!
ルオバガガゴバシャォオンッ!!!
ジュノーン『───……』
だが、それはどんな悪夢か。
確かにジュノーンは吹き飛んだ。
けど今の一撃は胴体が千切れててもおかしくないくらいの一撃だった。
しかしジュノーンはそう、“吹き飛んだ”のだ。
あれだけの一撃を、鎧がヘコんだ程度で済ませていた。
ゼット『チッ……やはりか。ヤツをバケモノと呼ぶのなら、あの鎧自体が既にバケモノだ』
彰利 『ぬ?以前も戦ったんよね?その時はどうだったん?』
ゼット『鎧ごと吹き飛ばしてやった。それこそ殺すつもりで何度もだ。
だがあの鎧は“生きている”。壊しても壊しても再生するのだ』
うへぇ……生きた防具か。
しかも再生機能付きときた。
確かに吹き飛ばされ、平然と起き上がったジュノーンの鎧は……
ヘコんでいたというのにそれがジワジワと治っていっていた。
ルナ 『手を休ませずに戦えってこと?』
みさお『はい、恐らく』
厄介な相手だ、の一言に尽きる。
今まで三国相手に生き延びてたわけだ。
彰利 『……悠介?』
いざ、と一歩を進めようとした俺だが、
敵の行動が止まったというのに黄昏の解放をしない悠介を見て踏みとどまる。
どうした、と声をかけたが……
返ってきたのは『対面してからずっと嫌な予感がしてる』という言葉だけだ。
それは黄昏を創造することが危険なのか、
それともジュノーンと全力で戦うことが危険なのか。
だがそんなことを言っていても相手は倒れちゃくれないのだ。
俺とゼットは顔を見合わせて頷くと、
みさおの強化版神魔月光刃の力により“鎌”の力を上昇させ、一気に飛翔した!
彰利&ゼット『オォオオオオオオッ!!!!』
ゴォッ───ドッガァアアアッ!!!!
ジュノーン『ル……オォ……!』
出現させたルナカオスと、ゼットの黒緋の大斧がジュノーンを斬りつけ吹き飛ばす。
通常攻撃では全力の振り切りだったっていうのに鎧はただヘコんだだけ。
そのヘコみもやがてすぐに回復するのだろう。
───だが、それは相手が立ち止まっていればの話だ!!
彰利 『月切力!』
より斬れるようにとルナカオスに月切力を込め、立ち上がる不死王の胸部を斬りつける!
だがそれでもガギィンと、
とても硬い金属をブッ叩いたような音だけが響き、破壊の音は訪れない。
バカげた硬さだ……どうかしてやがる!
ゼット『止まるな死神!幾度でも連ねろ!』
バガァォオンッ!!!
ジュノーン『───、ルォオ……!!』
再び振るわれる斧の一撃がジュノーンを滑らす。
激しい音が鳴ったっていうのに吹き飛ばずに耐えたジュノーンは、
ゆっくりと剣を持ち上げ───ぶつかるように突っ込んだゼットへと振り下ろす!!
ゼット『ぬうっ!』
ガゴキャァアアッ!!!
ゼット『ぐっ……!ぬあああっ……!!』
彰利 『───!』
みさお『なっ……』
ゼットはすかさず斧で身を守った……が、
その威力は見ただけでも圧倒されるほどの破壊力だった。
あのゼットが顔をしかめ、苛立たしげに苦しんだのだ。
レベルの倍化によってゼットのレベルは1200あたりだ。
だがそれでもあの一撃だ。
これは……ちとヤバイんじゃねぇか?
ゼット『たわけがっ……!ホウケるな死神!
貴様、慢心を克服した次は恐怖に怯えるつもりか!?』
彰利 『───!』
……そうだ、なにやってんだ俺は。
こんなところでうだうだ考えてる暇なんかがあるくらいなら、がむしゃらに突っ込め!
彰利 『フルブレイク解放……全月操力の反発作用をルナカオスに流し込み、剣とする!』
迷うな!全力をキメろ!
相手がどんな野郎だろうが、怯えもせず慢心もしない!
ずっと挑戦者で居るつもりで、意識が誰かの上に立つことなどないように努めろ!!
そして───強敵には最大の力を以って応える!!
彰利 『“魔人……極光剣()ァーーーーッ”!!!』
詰める!
間合いを爆発的な疾駆と飛翔にて詰め、
零距離に至ると全力を以って黒の極光剣をジュノーンのヘルムへと振り下ろした!!
ジュノーンは咄嗟に反応しようとしたが、その行動をゼットに殺され、
シュガァッキヂガガガガギィイイイッ!!!
ジュノーン『ギッ───ガァアアアアッ!!!!』
顔面へのダークネスキャリバーを避けられずに直撃を喰らった!!
弾け飛ぶ火花と闇の光!
その威力に耐え切れず、やがて吹き飛ぶ不死王の体……!
彰利 『……!どうだ!?』
ロウソクをひっくり返し、教会の壁を破壊し倒れたジュノーン。
だがやはりそんなものかとばかりにゆっくりと起き上がり……!
彰利 『あ───ん……?』
だがそこに異変があった。
あれだけ強固だった鎧……いや、兜か。
それにヒビが入り、やがてそれががしゃん、と無造作に落ちた。
───夜の暗い教会。
ロウソクが消えた景色の中、がしゃり、がしゃりと歩く不死王の鎧の音だけが響く。
薄暗い景色でも見えるのは黒の特権か。
他のやつらは気づいてない事実が……確かにそこにあった。
王と唱えるにはまだ若い、剣士と呼ぶにはおそらく筋肉もそう無さそうな───
そんな、破壊された黒き死仮面の下の表情が、
やがて月明かりのステンドグラスの下にさらされ───!
悠介 「───!」
ルナ 『え……?』
みさお『え……あ……?そ、そんな……!』
その場に居たゼット以外のやつらは驚愕したのだろう。
他のやつらより先に驚愕した俺は、みんなの驚きの声や表情に少しは冷静になれた。
だが……視線の先、ステンドグラスから漏れる月明かりの下に居た不死王は、
本来なら敵と呼べるような相手ではなかったのだ。
……いつからだ?
いつからその姿で───いや、そんなものはきっと最初からだ。
黒き死仮面の下の顔……その顔は俺達がよく知る少年の顔だった。
道理で何処に行ってもこいつの姿だけは見なかったと───!
悠介 「……柾樹……!!」
───霧波川柾樹。
ヒロライン初期、死人の森のイベントで俺達を守った人物が、不死王としてそこに居た。
そこにどんな経緯があったのかなんて知らない。
死人の森に残されたあいつが、
どんな出来事の果てにあんな姿になってしまったのかも解らない。
だが俺達を睨むその眼光は、確実に俺達の知る霧波川柾樹の目ではなかったのだ。
それはそうだ。
じゃなければたった一人でエトノワールの兵を退けることや、
ランダーク王国を一人で滅ぼすことなど出来なかっただろう。
……こりゃランダーク王も浮かばれねぇな……国ひとつを滅ぼした不死王の正体が、
こんなひょろっちぃまだまだ子供なヤツだったなんて最悪だろう。
彰利 『操られてる、って考えるべきか……?なんにせよ戦いづらくなっちまった……』
悠介 「あの鎧が生きてるっていうなら、あの鎧に操られてるって考えるべきだ。
戦いづらいかもしれないが、やるしかない。覚悟、いいか?」
彰利 『俺はいつでも。それよりお前こそ大丈夫なのか?』
悠介 「やるからには全力だ。相手が柾樹……プレイヤーなら、殺しても死にはしない」
みさお『ですが父さま……相手に不死要素がある限り、そう簡単には滅せられません。
それはつまり、長引けば長引くほど柾樹が苦しむことに……』
悠介 「……ああ。だから全力で叩き潰す」
悠介が黄昏を解放し、ルナっちと同化する。
なるほど、それこそ鎧を木っ端微塵にするつもりで全力でかかるってわけか。
ゼファー『じゃあ───いくぞ!』
全員 『応ッ!!』
ゼファーの掛け声とともに、俺達は一斉に駆け出した。
向かう先には一体の標的───今すぐ目ェ覚まさせてやる!覚悟しやがれ柾樹!
【ケース316:ゼファー/アンデッドタイクーン】
トトトンッ───ダンッ!!
地面を蹴り弾き、宙を滑るように飛翔する。
向かう先にはフルフェイスヘルムが吹き飛び、
顔を剥き出しにした状態の不死王ジュノーン───否、霧波川柾樹。
散々たる顔馴染み、なんだかんだでちっこい頃から知ってる相手だ。
だがそんな相手だろうが今現在は敵でしかないのだ。
向かい合ったからには───全力で潰す!!
ゼファー『はぁああああっ!!』
ルフォンゴギィインッ!!!
ゼファー『っ……』
相手の剣さえ破壊するつもりで振るったラグが、無造作に構えられた剣に受け止められる。
だがそんなもんは予測の範疇だ、一撃で仕留められるなんて思ってない!
ゼファー『しゃらぁっ!!《バゴォッ!》づっ───!?』
だが、相手もそれを見越しているのは道理。
戦闘において、先を見ようともしないヤツに勝機など永劫訪れやしないのだ。
放った蹴りは膝目掛けて構えられた肘によって軋み、それだけでなく掴まれた。
彰利 『ゼファー!一端体勢立て直せ!おぉらぁっ!!』
ヒュオガギィンッ!
彰利 『んなっ《ドガァン!!》げっはぁっ!』
ゼファー『ぐあっ!!』
そうして掴んだままでの俺の足を振り回し、
ルナカオスを篭手のみに弾かれた彰利へと衝突させられる。
だが痛みを感じている暇もなく、衝突による一時的な、本当に刹那的な間隙を突き、
柾樹は俺と彰利の顔面を左右の手で掴むと、
ゴゴォオンッ!!!
彰利 『ぎっ───ぐあぁあああっ!!!』
ゼファー『がっ───!?』
抗おうとする俺達を強引に速度の波に乗せて教会の床へと叩きつけた!
───混濁する視界。
しこたまに撃ちつけた後頭部が脳を揺らし、まともな思考を働かせるのを許可しない。
くそっ……どうなってやがる……!動きがさっきまでとはまるで別物だ……!
みさお『父さま、母さま───!くっ……!柾樹!あなたは───!』
ゼット『下がっていろ、セシル』
みさお『ゼットくん……でも!』
ゼット『晦悠介がああも簡単に潰されたんだぞ。お前では敵うべくもない』
みさお『う……くっ……!』
ゼット『……そこで強化と回復を頼む。危険だと察知したら逃げろ』
混濁する思考と視界の中、
思考は聞こえる会話や俺目掛けて剣を持ち上げる柾樹の姿が入り交ざってハッキリしない。
だがこれを振り下ろされれば対した抵抗も出来ないままに潰されるのは目に見えて明らか。
くそったれ……!イメージを糧とし戦う者にとって、頭は完全な弱点だ……!
まとまらない思考も、ドロドロになったように揺れる視界も、
なにもかもがイメージの邪魔をする。
動け、動かなけりゃこれで終わっちまう。
俺だけならまだしも、ルナまで巻き込んで終わっちまう。
そりゃあここはゲームの中だ、死ぬわけじゃない。
けど、こんな一方的なやられ方なんて納得出来るもんか……!
動け……って……!!くそぉっ!!柾樹の剣が、もう振り下ろされ───!!
ガギシィィインッ!!!
柾樹 『───……グ……!?』
ゼット『何を寝ている晦悠介!さっさと立って構えろ!!』
───いや。
振り下ろされた剣を、ゼットの斧が斬り弾いた。
ゼファー『ゼッ……ト……?』
ゼット 『それしきで動けなくなるようでは底が知れる!俺に勝利したのはまぐれか!?』
ゼファー『っ……かっ……このっ……!』
好き勝手言いやがってこのタコ……!
こっちだって現実世界と違って、本来の力なんざ出せないんだ……!
基本がゲームに則った能力なんだから、頭を強打すれば昏倒くらいするってもんだ……!
けど───ああそうだ。
そんな時に出来ることがあったじゃないか。
体は痺れてるが、思考は大分回復した。
だったら……動かない体を理力で動かして、痺れが取れるまでの応急処置とする!!
ゼファー『っ……〜〜っ───かぁっ!!』
理力を通した体を強引に奮い立たせる。
その横では身を黒にした彰利が起き上がり、ルナカオスを構え直す
大丈夫なのか、とは訊かない。
彰利は黒だ。
万全の状態を黒に記憶させてあるのだろうから、
脳震盪を起こそうが一端純粋な黒になったのちに記憶している人型に戻れば、
そんなものは正常に戻っているのだろう。
まったく羨ましい体質だが、受けたダメージまでは回復出来やしない。
ゼファー『……いけそうか?』
彰利 『いけるさ。いって、とりあえずアイツを思いっきりブン殴る』
ゼファー『殴るなら鎧だけにしとけ。柾樹を殴るのはそのあとだ』
彰利 『……何気に、殴ることには賛成なのね』
ゼファー『自己犠牲の果てがこんな姿なんて認めたくないだけだよ』
手に力を込める。
神経は痺れちゃいるが、それをイメージで繋げて無理矢理に。
我が深遠は創造にして雷。
人が電気信号で動いてるっていうなら、それを動かすイメージを流すのは容易い。
ゼファー『───よし!いこう!』
彰利 『おう!』
彰利とともに地面を蹴る。
元々が浮遊している状態のゼファーモードでは、
軽く勢いを付ければ滑るように宙を走れる。
それは浮遊が出来る彰利も同じで、
ゼットの一撃で大きく離れた柾樹へと二人で一気に突っ込む!
ゼファー&彰利『だぁらぁあっ!!』
振るう一撃は渾身に!一切の遠慮無く振り切る!
ヂギィインッ!!!
柾樹 『ッ───ク……クハハハハハ!!!!』
だが耐えやがった。
ゼットの一撃を左腕の篭手で受けたまま、右手一本で構えた剣で全力の一撃を……!!
そして笑うのだ。
狂気としか思えない表情で、愉快そうでいて全てがつまらないという矛盾だらけの顔で。
柾樹 『脆弱の……極み……こんなものか……』
ゼット『馬鹿を言うな。これでは済まさん!!』
斧を受け止められたままの状態のゼットが口を歪ませる。
そして唱えるのだ。
かつて、俺がそうしたように。
ゼット『神魔、解放───!!』
みさおから送られる死神強化の光を一身に受けたまま、解放するは神魔の力。
その、“純粋な力”が解放された時、
受け止められたままだった斧が柾樹を大きく吹き飛ばす!
柾樹 『───、……』
だが表情は変わらない。
それどころかより強く剣を握ると、無表情のままに床を蹴って襲い掛かってきたのだ!
ゼット『ぬっ───!?』
その速度はやはり、最初の頃の鈍足な動きとはまるで違う。
振るう剣はもはや瞬速の域を越え、刹那にゼットの前髪数本を切り落とした。
柾樹 『ハ───ハハハ、ハハハハハハハ!!!!』
ヒュフォンフォンフォンフォガギゴギヂギガギバギィンッ!!!
ゼット『チッ!なかなかやる!───だが!!』
ルオッ!バゴシャォンッ!!!
柾樹 『……、───』
物凄い速度で振るわれる弧や点。
速度は異常なほどに速い。だが───純粋な力でならゼットが勝っていた。
散々手数で責められたゼットだったが、
一撃を見舞い相手を吹き飛ばすことで体勢を立て直したのだ。
しかし吹き飛ぶ柾樹は地面に剣を突き立て、それ以上吹き飛ぶのを阻止すると───
ようやく愉快そうに……ぎしり、と笑ったのだ。
だがその表情も束の間のものだろう。
すかさず詰めるように彰利が飛翔し、
フルブレイクを込めた黒い極光剣を柾樹へと振り下ろしたのだ!
彰利 『ぶち貫けぇええーーーーーっ!!!』
ゾガァッフィィイインッ!!!!
───クリーンヒット!
柾樹は避けることも出来ず、魔人極光剣で肩から脇腹にかけての斜め一直線を裂かれ───
ザゴォンッ!!
彰利 『えっ…………ご……ぼぉっ……!?』
……た、っていうのに。
柾樹は平然とした表情で彰利の喉へと剣を突き刺し、
まだ体に極光剣が刺さっているにも関わらず、
裂かれたほうの肩をベキバキと強引に動かして彰利の顔面を掴み───
ドゴォオンッ!!!
彰利 『ぎあぁっ!!!げはっ……ぐ、あっ……!!』
やがて、再び床へと叩きつけた。
柾樹 『ハッ……ハハ、アハハハハハハ!!!!』
教会に、歪んだ声調の柾樹の笑い声が響く。
それを耳障りそうに聞くゼットは舌を鳴らし、倒れもがく彰利を見て呟いた。
ゼット『チッ……!どれだけ斬りつけようが怯みもしないと言っておいただろうが……!
それであのザマか……!つくづく愚かしい!』
やがて疾駆する。
俺ももう体は落ち着いた。
故にゼットに続くように飛翔すると、その勢いのままにイメージを解放して詰める!!
ゼファー『紫電の加護をここに!“雷神剣”!!』
ラグに付加させるのはヴィジャヤのイメージ!
距離を詰めた上で振るう一撃は、彰利の一撃によって崩れかけた鎧をさらに砕き、
さらに俺より先に疾駆し斧に力を溜めていたゼットが全力で振るう一撃が、
柾樹の足部分の鎧をその足ごと消し飛ばした!!
柾樹 『───、……ク、クククハハハハ……!!』
足を無くし、地べたを這うことになっても柾樹は笑う。
……どうかしてる。
不死王に体を乗っ取られたからってこうまで変貌するか……?
───なにかおかしい。
いくらこれがゲームだからって、ノートがここまでの残酷なことを許可するか?
たとえイドがそれを願ったとしても、そんなものは他の皆が止めるはずだ。
じゃあ……これはいったい……?
ゼット 『晦悠介!貴様までホウケる気か!』
ゼファー『───!』
そうだ。今はそんなことは問題じゃない。
本体としてここに、憑かれた柾樹が居るのだ。
だったらそれが答えであって、精霊たちがどうとかよりもよっぽど現実的だ。
理由がどうであれ目の前にこうして憑かれた者が居るのなら、
それをなんとかするのがプレイヤーってもんだ。
ゼファー『───』
だったらさっさと終わらせる!
いくらゲームの中だからって、
足が吹き飛ばされても体が千切れようとしてても笑って戦いに挑むヤツなんて見たくない。
こんなの、同じガキどもが見たらどうにかなっちまう。
ゼファー『“伎装弓術()”!!』
ラグを弓にする。
右手に持っていたそれを左手に持ち替え、
空いた右手には月夜の黄昏に満ちる全ての力を込めた雷神槍を。
狙う的は動けやしない。
だが相手は不死王だ……どんな無茶をして動くかなんて解らない。
だったらイーグルアイで一手先を視ながら詰める!!
ゼファー『───疾ッ!!』
キンッ───ギガァアッチュゥウウウンッ!!!!
大気さえ捻り穿つ雷を纏った槍が、動けない不死王へと飛翔する!
それを見た不死王は流石に危険を感じたのか剣を突き立て、
腕の腕力だけで体を移動させようとするが───
彰利 『ゲホッ……!……ハッ……させっかよ……!』
柾樹 『───!』
彰利が伸ばした影が不死王の動きを固め、そこに固定した。
それをどうにかしようと蠢こうが───なにかをするには既に、全てが遅すぎた。
ゾガヂガガォオオオンッ!!!!
柾樹 『ギッ……!!』
彰利 『っ……やったか!?』
半身が吹き飛んだ。
それも、袈裟斬りにされた方向とは反対側の体を。
故に脇腹までもがえぐれた時、肩から脇腹まで奔っていた傷が繋がり、
上半身と下半身が分離する……!
みさお『うっ……!』
みさおが目を逸らした時、
柾樹の上半身がドチャリと血飛沫を撒き散らして教会の床を赤く染めた。
だが───ためらうな。
相手は……柾樹じゃない!不死王ジュノーンだ!
ゼファー『ゼット!キメろ!』
ゼット 『言われるまでもない!!』
不死王の動きは彰利が封じたままだ。
あの状態なら、残りの鎧部分を破壊すれば終わる!!
柾樹 『ハッ……ハ、……ゴボッ……グブハハハハ……!!!』
あんな状態でもまだ笑う不死の王は異常としか思えなかった。
だがこれで終わる。
ゼットが飛翔し、神魔竜人の渾身を込めて振るう大斧の一撃で!
いや、終わる筈だったのだ。
ズッガァアアアアンッ!!!!
かくして巨大な斧は振り下ろされた。
だが───肝心の破壊すべき鎧も、柾樹の姿もそこには無かった。
なにが起こったのか解らない。
転移?いや───そんなものじゃない。
じゃあ他にどう説明をつけろという?
相手は彰利の黒によって地面に貼り付けにされていたっていうのに。
柾樹 『ゲブッ……グッ……ゲヒッ……フ、ッハハハハハ!!!』
ステンドグラスから漏れる月明かりの下、不死王は居た。
血まみれの顔を歪ませて笑う姿はまるで悪魔的。
しかもその姿はみるみるうちに回復してゆき、血肉や鎧までもが再生されてゆくのだ。
ゼファー『どうなってやがんだ───!?彰利!』
彰利 『い、いやっ……解らねぇ!!確かに……確かに捕まえてた筈なのに……!!』
彰利の黒での捕獲は生半可なことじゃ抜けられない。
それはルナが使う壁抜けの要領と同じで、
壁に半身を埋められれば動けなくなるのと同じだ。
単純に考えるヤツなら力さえあれば破壊出来るだろうとか思うのだろうがそれは否だ。
壁に身を埋められるっていうのは、五体満足の状態で埋められるわけじゃない。
自分が壁に埋まっていってるっていうなら、壁も自分の身に埋まっていってるのだ。
つまり体の機能なんてものは壁によって殺される。
体の中身がコンクリートな人間が腕を動かせるか?否だろう。
つまりあの捕獲にはそれだけの効果があったっていうのに───!
ジュノーン『我……破壊セシ者……』
やがてフルフェイスのヘルムまでもが再生した死者の王が狂ったように走り出す。
当然、俺達に向けてだ。
俺達はそれを迎撃するために構え───トンッ───!
ゼファー『え……?』
後方で物音。
まるで足が床を軽く蹴ったような音。
気づけば眼前には不死王の姿など無く、
ギバシャア、と硬いものを貫き引き裂く音が耳に届いた。
振り向けば───
ゼット 『くっ……がっ……!!』
みさお 『ゼッ───』
ジュノーン『ルゥウウガァアアアアッ!!!!』
ヒュオッ───ドゴバガッッシャァアアアンッ!!!!
みさお『うあぁあああっ!!』
ゼット『がっ───』
みさおの前に立ち、盾になるように胸部を引き裂かれたゼット───
そして、無造作に投げられたゼットがみさおを巻き込んで教会の壁を破壊し吹き飛んだ。
どういう速さだ……!?高速移動だとかそんな次元じゃ───!
彰利 『こんのっ《ドボバガシャアッ!!》ぎあぁあっ!!』
ゼファー『彰利!?』
立ち上がり、駆け出そうとした彰利が腹部を殴られ、
そのまま持ち上げられ弧を描いて反対側の地面に叩き落される。
俺もすぐさま飛翔し加勢に向かうが───妙な確信があった。
斬ったところで通用しない、と。
考えろ───どれだけキツイ条件が揃おうが、これはゲームの筈だ。
だったらジュノーンを不死としてる要素がどこかにある筈で───
ジュノーン『ギシィイッ……!!』
ゼファー 『───!』
歯を喰いしばりながら口を開き、重苦しい息を吐き出す不死王。
その行動で思考から戻ってきた俺は、今はまずこの一撃に力を込めることに決める。
魔物の頭蓋を加工して作ったようなヘルムから覗く目と口が怪しく歪む度、
どうしてか嫌な予感ばかりが絶えない。
けど立ち向かったからには全力で突き進む!!
ゼファー『“吼竜剣”()!!』
既に剣と化しているラグを振り被り、最高の一撃をキメる!!
余力なんて知るか!全力を以って鎧ごとブッ潰す!!
柾樹には災難なことかもしれないが、これで終わってくれれば一息はつける筈───!
ジュノーン『クハァアアッハッハッハッハッハ!!!ハァアッ!!!』
高らかに響く歪んだ声調の笑い声。
やがて突き出される剣が振り下ろされる剣を受け止めようと……───!?
ゼファー(剣じゃない!?───手!?)
無造作に出されたのは剣ではなく鎧に固められた手だった。
どうかしてるとしか言いようがない。
自慢なんて死んでもしてやらないが、
それでもこれは、少なくとも今の俺の全力を込めた一撃だ。
それを手一本で受け止めようなんてあんまりに馬鹿げてバガァッチャア!!
ゼファー 『───!!』
ジュノーン『ギィッ!!ギ……キハハハ……ハハハハハハ!!!!!』
ラグを金色に染めるエクスカリバーが、
不死王の左手を篭手ごと破壊し、さらに腕をも削ってゆく。
だがそれだけでも驚愕の域には達していた。
そう……“篭手ごと”だ。
つまり篭手は既に崩壊し、これを受け止めているのは剥き出しの手だけなのだ。
それなのに少しずつしか斬れないばかりか、腕を斬る速度がどんどん低下して……!
ゼファー『っ……ちょっと待て……!なんの冗談だよこりゃ……!!』
多少なり、自信がなかったわけじゃない。
けどこれが現実だ。
やがてラグはエクスカリバーの輝きを無くし、俺の全力は左手一本で……受け止められた。
ゼファー『っ───くっ!《ガクンッ!》なっ……!?』
だったら一端離れるべきだと、ジュノーンの腕を蹴り離れようとしたが───
腕を裂いて埋まったラグが、どういう冗談か抜けもしなければビクとも動かない。
ジュノーン『ヒアァアアアアアッ!!!!』
ゼファー 『しまっ───《ザゴシャアンッ!!》げはっ……ぐ……!!』
渾身を以って振るわれた大振りの一撃が、俺の腹部を大きく引き裂く。
その一撃が致命打になった。
俺とルナの同化は解け、ダメージを請け負った俺はその場に崩れ、
ルナは少し離れた場所にふらふらと降り立つ。
そしてジュノーンは───俺を一度見下ろすと、もう動けまいとでも踏んだのか、
まだ満足に動けるルナへ向けて疾駆を始めた。
悠介 「───!」
させるか、バカヤロウ……!!
ギリッ、と歯を軋ませた俺はブラックホールを創造、
ルナの前に転移しバゴシャォオオオオンッ!!!!
悠介 「ぐあぁあああああああっ!!!!」
ルナ 「っ───!あっ……悠介!?」
ルナを抱き締め、盾となり───蹴り飛ばされ、教会の壁を破壊して外まで吹き飛んだ。
悠介 「げっ……げはっ……!が……!」
くそっ……内臓イカレたか……!?
上手く呼吸が出来やしねぇ……!!
ルナ 「悠介!?悠介!!」
無様に地面に転がる俺を、腕から抜けたルナが揺する。
今は揺するのは勘弁してもらいたいんだが……どうせ言ったって聞きやしないだろう。
それにしても……くそ、どういう強さだ……。
体がもう動きやしねぇ……このまま突っ込まれたらそれがトドメに───
ルナ 「あっ……!」
ジュノーン『……ぎ……しぃいいいい……!!』
いや……不死王はもうそこに居た。
綺麗な満月が空にある滅びの町の景色の中、そいつが俺目掛けて剣を───
ぺぺらぺっぺぺ〜♪
悠介 「───!!」
ヒュオザゴォンッ!!
ジュノーン『……?』
悠介 「…………!?」
間一髪……!急に力が篭った体は途端に動くようになり、剣をすぐに避けた。
けど……戦いの最中でレベルアップ……?なんだって……?
ジュノーン『そこで……黙って死んでいろ……』
悠介 「…………」
どうだって構わない。
動けるなら動けるなりに、何処までだって抗ってやるだけだ!
悠介 (とはいえ……)
ここまでの戦いを考えれば、
どれだけ足掻こうが結局はさっきの蒸し返しになるんじゃないか……?
悠介 (………)
ルナ (……!)
だがひとまずは、魂結糸を通してルナに合図を送る。
ひとまず撤退だ、と。
もちろんルナを逃がす口実であって、俺は時間稼ぎのためにここでこいつを迎え撃つが。
悠介 「けど……ハハ、どうやって責めたもんかな……」
冗談じゃない。
動きや構えの全てが最初に見た頃とは別物だ。
既に俺にのみ向けられた殺気は、他への集中など無意味だと断ずるが如しだ。
ぺぺらぺっぺぺ〜♪
悠介 「……?な、なんだぁ!?」
何がなんだか解らない。
ただ……またレベルが上がった。
そして……それにつれ、何かが近づいて来てるような───
ギガガチュゥウウウウウン!!
バガァアアガガガゴォオオオンッ!!!!
ジュノーン『クガァアアアアアッ!!!?』
悠介 「へ……?」
突然だった。
町の遠くの景色が光ったと思ったら、
巨大な光が建物を破壊しながらジュノーンを飲み込んだ。
その威力たるや、あれだけ強靭だった不死王の鎧ごと、
簡単にジュノーンを吹き飛ばすほどで……
ヒョ〜〜〜ッ……ドゴゴシャバキメキャドシャグシャメキャア!!!
悠介 「うおわっ!?なっ……なななっ……!?」
次いで、この場に降ってきたのはゾンビやグール、
スケルトンやタクシムのところどころの部位。
それも地面に激突すると塵と化し、
また……ぺぺらぺっぺぺ〜と俺にレベルアップを知らせる。
次いで聞こえるのは物凄い騒音と、
声 「ぬぅううぉおおっしゃあああ!!ラストミイラブッ殺ォオオオッ!!!
オラオラオラオラどけどけどけどけぇえええええっ!!!!」
という怒号めいた絶叫。
やがて現れたそいつは───!!
ジュノーン『グ……グググ……!!』
中井出 「───!ジュノーン!?それに晦も……」
中井出だ。
グミを噛み、輝く長剣でミイラのようなものを串刺しにした中井出がそこに居た。
ジュノーン『グ、オオオオォゥウ……!!ガァアッ!!』
中井出 「───!」
悠介 「気を付けろ中井出!そいつ、半端じゃなく───」
ガギィッ!ギヂィンッ!!
ジュノーン『グッ……!?』
悠介 「強……!?」
半端じゃなく強い、と言おうとした。
だがこちらの攻撃を悉く弾いてきたジュノーンの攻撃を、中井出は逆に弾いて見せたのだ。
中井出「状況がよく掴めてねぇけど……ようは残りはお前だけってことだな!?
いくぜジークムント!ジークリンデ!!」
ジャギィン!!という音とともに中井出の武器が双剣へと変異する。
すかさず疾駆する中井出は、とても剣術使いとは思えない無骨な剣の振り方で迫るが───
ヴフォン───ジャガガガガギィンッ!!
ヴフォフォンフォンフォンフォジャガガギガガガギヂギィイインッ!!!!
ジュノーン『ガッ!ガッ……!?ルガァアアアアッ!!!!』
振るう巨大双剣が十ニ閃と化し、
いくらジュノーンが高速で捌いても足りないくらいの剣戟を一度に連ねてゆく。
正直……驚いてる。
中井出がジュノーンを押しているのだ。
剣の振り方なんてきっと未熟。
体捌きだって我流もいいとこの、まるで隙を殺せてない動き。
だっていうのに、その必死に挑戦しようとする姿がとても眩しく見えた。
ジュノーン『……!図に、乗るな……!!』
振るわれた剣に、ジュノーンが手を伸ばす。
俺と戦っていた時と同じだ───手で剣を止めて、敵を斬るあの技とも呼べない戦法……!
悠介 「中井出!だめだ!それに剣を合わせるな!」
中井出「なにぃ!?───構わず斬る!!」
悠介 「おわぁ馬鹿野郎ォオオーーーーーーッ!!!」
人の忠告いきなり無視しがった!
しかもやっぱりジュノーンは中井出の剣を左手で受け止め───!
ゾガガボガガガガガォオオンッ!!!!
ジュノーン『ギッ……!?グオオォオオッ!!!』
ばっ……爆発した!?
斬った先から爆発が起きて、受け止めるどころか内部から破壊されて……!
中井出「鬼人化のリミットは残り52秒……それでケリをつける!!」
仰け反るジュノーンへと中井出が追撃の疾駆を進める。
だがそこはジュノーンだ。
傷を負ったからといっていつまでも仰け反っていたりはしない。
そのままの状態から一転して無造作に剣を振るい、完璧に中井出の体へと刃を───!
中井出「スピードポイント!アァンド爆弾パチキィッ!!」
ゾンッ───バンガァアアッ!!
ジュノーン『───、……!!?』
悠介 「あ……」
そうだ。
中井出にはそれこそ戦法なんてない。
剣の鍛錬なんてしてなかったし、体術だってそうだ。
だけど勝とうとする信念と楽しもうとする信念の中には、
実力者では予測不可能な行動が山ほどある。
頭突き然り、ジャイアントスウィング然り……戦法もなにもない。
あれが中井出の戦闘スタイルなんだ。
一気に加速してそのまま敵の顔面に頭突き。
一瞬でも怯んだ相手の攻撃を避けて、次に取った行動とは……双剣を輝かせることだった。
中井出「“精霊斬”()!!」
間合いを詰め、双十ニ閃の剣を全力で振るう中井出。
当然ジュノーンはそれを剣や篭手で受け止めるが、
その先から連ねる剣の数だけ剣閃が放たれる。
ジュノーン『……!?』
これでは防御など出来はしない。
いや、元々防御など知らないような振る舞いだったジュノーンが、
中井出の攻撃力の高さに驚いているのだ。
俺だって驚いてる。
あの剣の強さ故なのかは知らない。
でもここまで武器を鍛えるのは相当大変だったに違いない。
ジュノーン『チ……!!』
ジュノーンが後退する。
距離を取ってペースを取り戻す気だ。
悠介 「中井出!休むな!そのまま───」
中井出「───12!“義聖剣”()!!」
悠介 「っ……!?」
突っ込め、と言おうとした矢先、
まるで距離を空けてくれるのを喜ぶかのような中井出の能力の解放。
光輝いていた双剣を一本の巨大長剣に変えた中井出は、
それを振り被ると無造作に、なんの躊躇いも無くジュノーン目掛けて放った───!!
中井出 「“エクスプロードブレストォオーーーーーーッ”!!!」
ジュノーン『……!唸れ……剣風……!ソニックブレスト……!!』
だがジュノーンの反射速度も馬鹿げてる。
放たれ、物凄い速さで飛翔する炎風の剣閃目掛け、
自分も剣閃を放つことで相殺しにいったのだ。
それはよほどの威力だったのか、炎風の剣閃の威力をかなり殺し、
せっかく当たったというのに対したダメージにはならなかった。
ただ目の前には物凄い爆煙が発生し、なにも見えなくなって───
声 「───荒廃の世の“自我”()、斬り裂けり」
ただ声が聞こえ、やがて風が渦巻く音とともに……
声 「二刀流居合い!“羅生門”!!」
キィンッ!!
ゾガァッフィズバシャォオオオンッ!!!!
ジュノーン『ルガァアアアォオオオッ!!!!』
悠介 「…………!!」
目の覚めるような一撃だった。
あれほど離れているっていうのに、
爆煙ごとジュノーンを切り裂いた一撃はさらに大爆発を起こし、
ジュノーンを物凄い勢いで吹き飛ばす……!
ジュノーン『ガッ……グ、グ、オオ……!オォオオッ!!!』
───だが、まだ終わりではなかった。
ジュノーンは吹き飛ばされた反動を利用し、教会の壁を蹴ると───
なんと物凄い勢いで中井出目掛けて剣を構えて飛んで来たのだ。
当の中井出はふう、と息を吐いて、まるで戦いが終わったみたいに……!
悠介 「中っ───」
中井出「───8、7、6……5」
いや。
息を吐いたのはひとまず落ち着くため、だったのか。
グミを噛み、双剣を長剣に変えた中井出はゆっくりと、
勢いよく飛んでくるジュノーンに向けて長剣を構え───
中井出「ブッ飛べカラミティー!!“極光吼竜閃()ァーーーッ”!!!」
とんでもないくらいの眩く巨大な極光を放ち、
飛んでくるジュノーンを逆に押し上げ、吹き飛ばす!!
ジュノーン『グッ……ガ───ア……!!ガァアアアアアアッ!!!!』
ギガァアガガガチュゥウウウウンッ!!!!
声 『───……!!』
極光に飲まれたジュノーンは断末魔のような絶叫をし、
光の中で体を崩されていきながら───やがて夜の空へと消え去った。
中井出「───2、1。……終了だ。
って言っても、羅生門撃った時点で鬼人化なんて消えてるけど」
……終わった、のか?
そう思うのと同時に、“トリスタン軍撃退に成功した!”というナビメッセージが届いた。
ああ……つまり、終わってくれたのだ。
そう理解すると、やはり同時にドシャアという何かが倒れる音が耳に届いた。
見れば、全力の全力を出しすぎた中井出がHPTP1状態のままピクピクと痙攣。
倒れた状態のまま、ボクハコノチキュウガダイスキデシタとか言って幻覚を見ていた。
悠介 「な、中井出!?大丈夫か!?おいしっかりしろ!おい!!」
なんにせよ……終わってくれた。
予想以上の強さに散々と参ったが、終わってくれた。
中井出に感謝だな、とか思いつつ覗いてみた中井出のレベル。
それは、たった今倒したジュノーンの経験値も含めてレベルアップした現在では───
悠介 「…………1329?」
既に時の人となれるんじゃなかろうかと思うほどのレベルだった。
すげぇ、マグニファイ使えば黒竜状態のゼットとも戦えそうだ。
いったいどれだけのアンデッドモンスターをコロがしてきたのやら、
なんだか無性に気になるところだった。
けど……なんにせよ疲れた……せっかくだ。
朽ちちゃいるけど邪魔だけは入りそうにないこの場所で、少し休んでいこうか……。
そう思いながら俺はその場にどしゃりと倒れた。
眠気はまったくなかったが、少し休みたかったのが本音だった。
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