───冒険の書116/VSゼプシオン=イルザーグ───
【ケース325:中井出博光(玉再)/英雄王との三戦目】
ただひとつのネタのために命を賭ける……そんな馬鹿を知っているだろうか。
俺は知っている。
そんな馬鹿野郎どもが蔓延る空間が、僕の周りにはたくさんあったのです。
でもここに居るのは僕だけ。
そしてそんな僕は───
中井出「オラオラオラオラオラオラ!太鼓乱れ打ちじゃぁーーーーーっ!!!!」
恐怖のあまりに暴走していた。
いやいや暴走してる場合じゃねぇってばよ!ナルトアイスだってばよ!!
中井出「わわ、わぁーれはしこたま戦慄!じゃなくて!我は中井出博光!
貴公と───一騎打ちを申し込む!!」
既に申し込んであるわけだが。
それ故にゼプシオンは返事も無しに物凄い速さで間合いを詰めてきた!!
中井出「ぜやぁあっ!!《ゴガァッキィンッ!!》いがぁあうあぁあああっ!!!?」
速い上に攻撃力も高すぎとくる!こいつバケモンだよ!?
レベル100未満で戦えるような相手じゃなかった!あの頃の僕はどうかしてました!
双剣でなんとか斬り返したけど、あれは斬り返したっていうよりは逸らせたってくらいだ。
おおお……!1300レベルがあってもこの圧倒的パゥワー……!
冗談言う相手、心の底から間違えたかも……。
ゼプシオン「ぬぅううううんっ!!」
ルオガゴシャァンッ!!
ヴフォンゴガァッキイィインッ!!!
中井出「がぁっ!ぐあぁっ!!」
一撃一撃を双剣で受け止めていく……が、なんだよこりゃ……!
俺だってあの頃に比べりゃ結構強くなれたと思ったのに……!
一撃一撃で体が怖いくらいに床を滑る……!
その度にゼプシオンが助走をつけて、離れた俺へと一撃を放って……
また吹き飛ばされた俺へとゼプシオンが助走……!
迫力だけで圧倒されてて、反撃もなにも出来やしねぇ……!
中井出「くっそがぁあああっ!!武器はしっかり二刀流!!」
頭上で双剣を交差させて叫ぶ!
それとともに発動するマグニファイ……漲る力!
こうなりゃ出来るとこまでやるっきゃねぇだろ!
相手が誇りを以って突っ込んでくるなら、それを真正面から受け止めるのが剣士!
力及ばずとも、やれるところまではやってやる!
───あ、もちろん危なくなったら逃げる方向で。
中井出(ははっ……何言ってんだか。逃げられないことなんて解ってるだろうに)
覚悟───完了!
がむしゃらでもいい、無鉄砲でもいい!
英雄が俺を相手として見てくれてんだ、構えないわけにはいかねぇだろうが!
中井出「元素・火のモード!!“精霊斬”()!!」
双剣に火の属性を叩き込む!
それから双剣を六閃化させ、力強く構える英雄王へと剣閃を放つ!放つ!放つ!!
中井出「そぉおおりゃぁああああああっ!!!!」
ゾフィンシュカカカカカカカシュパァンッ!!
休むことなく12閃とともにミニ黄竜斬光剣を幾重にも放ち、
それがゼプシオンに当たる前に義聖剣()を発動!
双剣を長剣に変え、ゼプシオンへと───ボガガガガォオオンッ!!!
ゼプシオン「オォオオオオオオッ!!!!」
中井出 「う、あっ───ぉあぁああああああっ!!!?」
放つ、筈が、一気に放った12閃を避けることもせず、
真正面から向かってきた英雄の姿に心底驚愕してしまった。
爆煙を裂いて現れた巨体はところどころに確かなダメージが見られたが、
それでも物ともしない気迫のままに俺へと向かってくる!
中井出「───はっ!そ、そうだ!」
なにホウケてんだ俺は!
中井出「“ヴォルカニックレイザァーーーーーーッ”!!!!」
巨体目掛けて義聖剣を放つ!
それはそのまま突っ込んできたゼプシオンの体に確かに直撃し、物凄い爆発を発生させた。
けど油断はならない。
何故ならボファアッ!!
ゼプシオン「オォオオオオオオオッ!!!!」
彼は、真実正真正銘の英雄なのだから。
中井出「───!う、あ───!」
さらなる爆煙を裂いて現れるのはやはりゼプシオン。
地面を踏み砕き、さらなる加速を以って俺の眼前にその巨体を走らせると、
おもむろに足を踏み出し───これは!!ドッガァァアッ!!!
中井出「がっ……!?ぎあぁあああああああああっ!!!!!」
いつかの闘技場で、俺を一撃で殺したあの蹴りだった。
双剣化させた武器を盾にしたっていうのに斬られるのも無視して振り切りやがった……!
俺はいつかのように物凄い空気抵抗を体に感じながらも、
その勢いに逆らうことが出来ずにやがて壁へと───否!俺は前までの俺じゃない!
中井出「〜〜〜〜っ───“フロート”!!」
壁に激突する前にフロートを全力解放し、勢いを一気に殺した。
風船はどれだけ強く投げようが、勢いよくは飛ばない原理を利用したものだ。
やがて完全に勢いが死ぬと同時にフロートを微量に解除、床に降り立って駆け出した!
中井出「シィイイッ───!!!」
体を軽くしたまま、床を這うように走る!
その途中で双剣をゼプシオンに向けて投擲!
だがそれは弾かれ、後方へと飛んでゆく。
ゼプシオンは“いったい何を……”という顔をし、
飛んでいった双剣をチラリと見た───この時こそが狙った瞬間!!
中井出「───!セイッ!」
ゼプシオンが飛んでいった双剣に気を取られた間隙、
俺はゼプシオンの頭がある位置まで跳躍し、手元に飛んでいった双剣を召喚!!
すぐさまそれを長剣に変え、STRに全てを注ぎ込んでぇええ!!
中井出「“黄竜剣”!!」
ギシャゴバァアォオオオオオオンッ!!!!
ゼプシオン「ぬぐっ!?ぐ、おぉおおおおおおあああぁあああああっ!!!!!」
黄金の闘気がヒットと同時に四方に散らばる!
不意を突き、確実にクリティカルヒットが狙えると思った黄竜の一撃はしかし、
ゼプシオンの異常なまでの反射速度により盾で防がれていた。
あれを防ぐか、と信じられない気持ちでいっぱいになるが、今はそれよりも───!!
ギッ───バガガシャァンッ!!
ゼプシオン「ぬっ───!?」
ゼプシオンの盾が砕け、その下の篭手までもが一気に砕ける!
やがてその腕へとザゴォンッ!!
中井出「げあっ!?」
達した途端、空いていた右手が巨大な剣を振るい、俺の体を斬り裂く。
本来ならナナメに真っ二つだったんだろうが……
背負っていた稀紫槍カルドグラスが、それを食い止めてくれた。
俺は肩から鎖骨にかけてを砕かれた程度で済み、床に叩きつけられると血を吐き出した。
中井出「がっ……ぎあ……ぁ……!!い、づぅう……!!」
それだけでも意識が飛びかねないくらいの激痛だ。
これならまだ飛竜に噛みつかれた時のほうが痛みは浅かった。
くそっ……鎖骨砕かれても“程度”って思わなきゃいけない一撃ってなんだよ……!
けど今回は前回の教訓を生かして、ポケットにグミを詰めてある。
俺はそれを取り出すと数個口に放り込んで肩を回復させた。
それからすぐにジークリンデを風を発生させながら上部に振り上げ、
既に振り下ろされていたゼプシオンの剣を弾く!
ガゴォンッ!!
中井出「いっ……!!」
それだけでダメージがある……衝撃を殺しきれていないのだ。
だったら、と。
俺は再び六閃化を発動させ、幾度も振り下ろされる剣を合計十二閃で弾いてゆく!
そう……一閃で弾ききれないなら六閃だ!
ゼプシオン「フンッ!ヌンッ!!」
ブフォン!ヂガガギギィンッ!!ヒュフォンガギギギギギィンッ!!!
中井出「くっ!はっ!せいぃっ!!」
戦っているうちに恐怖なんてものはどっかに行ってしまった。
今はそれ以上に、頑張らなければ死ぬだけだという事実しか頭に残ってない。
作戦だとか策だとか、きっとそんなのは最初から無かった。
ただがむしゃらに、ただ無鉄砲でもいいから立ち向かおうと───!!
中井出「“精霊斬”()!!」
やがて、再び双剣に篭った火の光を発動させ、六閃と爆裂とともに剣を弾き飛ばしてゆく。
その威力は確かにゼプシオンを少しは驚かせるものだったらしく、
一歩だけ、衝撃によりゼプシオンが下がった。
その間隙、俺はより一層に剣に力を込め、
会心スキルとともにゼプシオンの剣を、次第に弾き返してゆく!
ゼプシオン「ぬ……!これは……!?」
中井出 「はっ……はぁっ……!はぁああああっ!!!!」
ガギギギィンッ!!ズガァンッ!!
ヂャガガギィンッ!ガギヂィ、ゾガァンッ!!
ゼプシオン「───面白い!この私を押すか!久しく見ぬ強き者よ!」
振るう、振るう振るう───!
そうだ、作戦なんてものはない!
ただがむしゃらに、ただ無鉄砲に───!
そうさ、そんなことしか出来ないのは解ってた。
無鉄砲でもなけりゃあ、そもそもこの英雄王相手に向かっていけるわけがないのだから。
中井出(剣が一瞬止まった───蹴り!)
剣がフェイントのように止まり、
その隙を埋めるようにゼプシオンの巨大な足が俺へと振るわれる!
だが俺はそれを避けようともせずに双剣を霊章に仕舞うと構え、
フロートを全開にした状態で受け止める!
───バスゥッ!!
ゼプシオン「───!?手応えがない……!?」
中井出 「宙に浮くビニール袋にゃ……
いくら攻撃したって手応えみたいなもんは無いよな!」
次にグラビティ発動!
ゼプシオンの足ごと床に下りるとすかさず力を込め、
中井出「STRマックス!ジャイアントスウィーーーング!!」
これでもかというくらい力を込め、
とっくに消えてしまっているマグニファイをストックから解除!
全力以上の全力を以って、ゼプシオンを───振り回す!!
中井出 「んっ……がぁああああああああああああっ!!!!」
ゼプシオン「ぬ、お───!?」
ヴフォンッ!ヴフォンッ───!ヴフォンヴフォンヴフォン───!!
やがてゆっくりと、だが確実に回転してゆくゼプシオン。
そんな彼が遠心力で宙に浮き出した頃、やはり全力を以って宙に投げ飛ばす!
ゼプシオン「ぬ───!?」
そうしてからすかさずグミを噛み、霊章から召喚した双剣を長剣にして構える!!
中井出「ブチ抜けぇえっ!!“極光吼竜閃()ァーーーッ”!!!!」
ギィンッ!ギガァッチュドッガァアアアアアンッ!!!
ゼプシオン「ぐぉおおぁあああああっ!!!!」
空中で身動きの取れない英雄王へ、全力の一撃を。
極光のレーザーを喰らったゼプシオンは吹き飛び、
天井に激突すると床へと地響きを起こして落下した。
一方俺は───
中井出「かっ……は……!はぁっ……!!」
HPTPとも1の状態で、眩暈さえする状況だ。
これでダメだったら……アレしかないが、それでも出来ればアレは勘弁していただきたい。
正直……次の攻撃を避けられる自信が無いのだ。
だから……頼む、今ので終わって───
ゼプシオン「ヌゥ……オォオオオオオオッ!!!」
……くれるわけ、ないよな。
くそっ!
中井出「AGIマックス!」
こうなればアレしかないのだ。
速度に全てを託し───マグニファイは残り数十秒。
この時間内になんとか出来なければヤバイ。
確かにストックにはまだマグニファイも残ってるが、残りはちと違うものだ。
ゼプシオン「ッ───ルゥォオオオオオオッ!!!!」
バァッガァッ!と音が鳴るくらいに床を踏み砕き、一気に疾駆する巨体。
その様はまるで物凄い速度で宙を駆る砲弾だ。
だがその攻撃力は砲弾など遙かに凌駕するもの。
一撃でもまともに受ければ、AGIに全てを注いだ今じゃ一撃で終わる。
そもそもHPTPは1のまま───いけるかどうかなんて解らない。
けど、やるって決めたならやらなきゃウソだ!!
中井出「決める───決める!絶対に決める!!」
英雄王が迫る!
馬鹿げた速さに馬鹿げた力を以って、思い切り振るう次弾は───剣での攻撃!!
よし!一か八かだ!
中井出「───左!」
俺から見て左上から右下へと振り下ろされるその巨大剣を、
今出せる限界の速度で左に避け、
地面に突き刺さる剣を確認する間もなくゼプシオンの腕を駆け上って跳躍!!
ゼプシオン「ぬ───!?」
中井出 「いくぜ英雄王!これで勝てなかったら───俺の負けだ!!」
STRをマックスに!HPTP1の状態でジェノサイドハートを思う様発動!!
渾身の力を込め、長剣を力強く握ってフルスイング!!
最後にストックを解除してぇええっ!!!
中井出「“殺戟斬吼刃()ァーーーーーッ”!!!!」
レイジングロアを解放!!
凄まじい波動が篭る黄竜剣をゼプシオンへと振り下ろす!!
ルガゴバァッシャアアォオオンッ!!!!
ゼプシオン「なっぐぉおあぁあああああああっ!!!!」
振り下ろした斬撃がゼプシオンを斬りつける!
刹那、眩い斬光が黄竜闘気を発し、一撃であの英雄王を吹き飛ばし壁に激突させた!
ドォッガァアアアアアアンッ!!!ガゴォンッ!ゴガガァンッ!
ゼプシオン「ぬっ……が……!」
激突した壁がその巨体以上に倒壊し、ゼプシオンめがけて落下する。
中井出「はぁ……かぐっ!」
グミを取り出して飲み込む。
しかしそう何個もあるわけじゃない。
探った限りじゃ……残り10個も無い。
ポーションは……無いな。
中井出「これでだめなら万策尽きてるな……はは」
いや、元々策なんて無かったわけだ。
ジェノサイドハート発動のレイジングロアを込めての黄竜剣は
まったくの思いつきだったし、ストックはそれ用に固めてあっただけだ。
ほんと、これでだめなら……ドッガァアアアアンッ!!!
ゼプシオン「ぬぅぉおおおおおおっ!!!!」
中井出 「うあ……」
だめだった。
倒壊した壁に埋もれたゼプシオンはそれらを吹き飛ばすと、
あんな足場の悪いところからたった一歩の這うような跳躍で俺との距離を殺し、
剣を振るってきた!
中井出「ちょっ……英雄すぎるのにもほどってもんが───!」
ヂャガァッキィンッ!!───ズザァアアアッ!!
中井出「つっ……!」
一撃で壁まで吹き飛ばされそうになる。
こっちは渾身を込めて技も重ねてようやく吹き飛ばせるくらいなのに、
あっちは素の一撃でここまで……そもそも力の基本が違いすぎる。
中井出「ちょっ、待───」
連撃が降ってくる。
まるで豪雨のように重ね撃たれる一撃一撃は、連撃とは思えないほどに重過ぎる。
風を巻き込んでは繰り出されるソレはまるで暴風雨。
斬り逸らすのが精一杯で、まともに打ち合えもしない。
くそ、どうなってやがるんだこの連撃の重さは!
中井出「つぅぁあぁああっ!!」
剣を振るう!───が、合わせる筈の相手の剣がピタリと止まる。
俺の剣はただ宙を裂くのみで、それが完全な隙に───やべっ……!
バギャァッシャアッ!!
中井出「がっ……───」
体が斜めに斬り裂ける。
千切れないのがおかしいくらいの一撃をくらい、
景色が舞う血飛沫によって真っ赤に染まる。
中井出「……、……!」
咄嗟に伸ばした手からグミがこぼれる。
それが最後通達のようなものだ。
血がばたばたと水溜りを作るとその上に倒れ伏し、血を吐いた。
終わりか……悔しいが、俺の力じゃ及ばないにも程があった。
中井出「俺は…………悪魔の…………プリンス……」
だがこの博光、ただでは死なん。
どうせ死ぬならば、始めたネタは最後まで……!
中井出「アスタラビスタ……ベ《ドゴォンッ!!》ギャアーーーッ!!!」
喋り途中にダメ押しの踏み潰しが炸裂。
俺はやすらかに息を引き取った。
───……。
……。
ズダダダダダダダダズシャアアアーーーアーーーーーッ!!!!
悠介 「うおっ!?」
彰利 「やあ。後ろから来たってことは無様に負けたってことかい?」
中井出「ものの見事に!というわけで突貫だ!
……ていうかどうしてみんな、てんで中に入って来なかったの?」
ゼット「単独で巨人王と戦おうとするお前の“男”を汲んだまでだ」
ルナ 「見事に死んだみたいだけどね」
中井出「………」
ええそうです。
これでもかってくらいボッコボコにされて死んださ。
人間は居なくなったけど教会は残っててくれたお蔭ですぐに戻ってこれただけで、
とことん力及ばずだったさ。
悠介 「で、どうだった?」
中井出「鬼強かった」
彰利 「先行き不安になるようなこと言うなよぅ」
中井出「出来るだけ全力でダメージ与えたけどさ、正直弱ってくれてるとは考えにくいな」
彰利 「マジですか?よ、よし!
ならばとっとと入って、休まれる前にダメージを蓄積させるんだ!
卑怯!?結構じゃないかネ!!僕は恐れない!
何故なら───僕には仲間が居るから!突撃ャアアーーーーーーッ!!!」
偽の友情を受け取ったアラシヤマ(パプワくん)のように吼え猛ると、
彰利が扉を開けて駆け出した!
俺達も当然その後を追ったわけだが───
ゼプシオン「ほう……また来たか。どういう原理で生きているのかは訊かん。
それは無粋というものだろう。さあ来るがいい人の子よ!
立ち向かう勇気があるのなら、我が剣はその誇りを幾度でも断ち切ろう!!」
彼はむしろ臨戦態勢で待っていた。
しかもさっきは気づかなかったが鎧の全てが砕けており、
剣のみを手にした英雄王が凛々しくその場に立っていたのだ。
もちろん裸ってわけじゃないが───その鎧が落ち居ていた場所は損壊がひどく、
鎧がどれほど重かったのかを見せ付けているようだった。
つまり、今の英雄王はさっきよりも速いということで───
彰利 「よっしゃいくぜみんな!アンリミテッド」
───ザシャアッ!!
彰利 「へ───?」
ゼプシオン「遅し」
ヒュオバゴシャドッガァアアアンッ!!!!
彰利 「ぐへぇあぁあああっ!!!」
みさお「彰衛門さんっ!?」
ルナ 「はっ……」
中井出「速ェエーーーーーーッ!!!」
それこそ一瞬で間合いを詰めて、
オーダーを解放しようとした彰利を一発の蹴りにて壁画とした。
その破壊力はやはり凄まじく、
あれだけしぶとい彰利を一撃で動けなくするくらいのダメージを与えた。
彰利 「ちょっと……待て……!速いにしても、ほどってもんが……!」
悠介 「みさお!」
みさお「はい!“神魔月昂刃”!!」
みさおちゃんが鎌を解放。
黒衣を纏い、“神、死神の力”を持つ者だけを強化させる。
つまり俺と晦は強化無し。
続いて晦がすかさず唱えた魔法が彰利のHPを回復させると、
彰利は壁から転移すると同時にオーダー解放。
晦はルナさんと同化してゼファーになり、ゼットは神魔竜人の解放をして、
それぞれがゼプシオンを見上げる。
彰利 『おっほっほ……改めて見ると……デ、デッケェエ……』
ゼファー『油断だけはするなよ。じゃないとものの数秒で終わる』
彰利 『わ、解っとらぁな!!』
ゼット 『曰く、斬竜英雄ゼプシオン。
竜族の間ではアハツィオンと同等くらいに伝説を持つ竜殺しの英雄か。
相手にとって不足はないな』
彰利 『むしろ不足なのは俺達じゃねぇかね……』
みさお 「そんなこと言ってられる相手じゃありませんよ!」
まったくである。
FF11で言うところの第二形態っぽい姿とはいえ、
防御力が下がったのは確かなんだろうけど素早さが格段に上がってる。
ていうか俺達封印の仕方訊きに来たんじゃなかったっけ!?
なんでみんな臨戦態勢なの!?
いや俺も“弱ってくれてるとは考えにくい”とか言っちゃったけどさ!
ゼファー『疾ィッ───!!』
彰利 『確かに言ってても始まらんわ!後は野となれ山となれぇえええっ!!!』
みさお 『神魔、刀の巫女が簾翁みさお、参ります!』
ゼット 『力の限り捻り潰すっ……!!』
中井出 「ち、ちちちちくしょー!!もうどうにでもなれだぁあああっ!!!」
それぞれが構え、それぞれが突貫する!
そこにはやっぱり作戦など皆無!
【ケース326:ゼファー/キングオブキングス】
───広い室内に剣戟の音が高鳴り響く。
飛び散る火花は幾重に、しかし四方から放たれる撃全てを弾くその素早さはまるで悪夢。
1を唱える刹那に幾重を連ねる連撃も弾かれ続け、
まるで傷つけることが出来ないままにとうに10分が経過していた。
彰利 『っかぁあああっ!!どうなってんだよこいつ!!』
既に二回目のブラックオーダーとなる彰利は苛立ちを隠しきれないままに、
今では剣ではなく波動系の月操力を放ち続けている。
だがその悉くが弾かれ、
弾かれた先には必ずと言っていいほど俺達のうちの誰かが居るのだ。
そう、全て狙って弾いている。
戦闘に関する知識がデタラメなくらい高い証拠だ。
どれをどう弾けばそこに居るのかを熟知している。
中井出「マグニファイ!“斬光烈空刃”!!」
キィイインッゾガガガガガギシャァアアンッ!!!
中井出「でぇええええええっ!!?」
放つ剣閃も振るわれる剣圧に吹き飛ばされるように掻き消され、
どれだけ責めても相変わらずの無敵さを誇っている。
けどこれは相手を動けなくさせるための仕掛けといえば仕掛けだ。
あとは───!
魔竜王『グバァシャァアアアアアアッ!!!』
魔竜状態となったゼットの一撃に全てをかける!
ゼプシオン「───!」
咆哮とともに放たれる極光。
ゼプシオンはそれを視認すると躱そうとするが、それは俺達で食い止める!!
彰利 『シャドウバインド!』
彰利が影を使って動きを封じ、
俺と中井出とみさおがそれぞれ魔導極光剣やバレットアームズ、
剣閃やガトリングブラストなどで食い止める。
やがて、
ズガガギシャガバゴォオオオンッ!!!
ゼプシオン「ぐぅうあぁあああああああっ!!!!!」
耳を劈く轟音とともに、ゼプシオンの体を極光が掻き消す。
眩いばかりの光の波動に飲み込まれたゼプシオンの姿は視認することが出来ないが、
魔竜化は30秒間だけ外からエナジーを取り込んでレベルを4倍にするもの。
いくらゼプシオンでもレベル2400のレーザーを喰らえば───
───ゴコォッキィインッ!!
中井出 「え───?」
彰利 「景色の暗転───秘奥義!?」
ゼファー『やばい!嫌な予感がする!ゼット!すぐに竜化を』
バガギシャゾゴォッパァアンッ!!!
魔竜王『……ッ!グォオオオアァアアアアッ!!!!』
全員 『……っ……!?』
どう唱えたら、いったい誰が信じてくれるのだろう。
あのレーザーを受けながらも、その中で馬鹿みたいな攻撃を斬り返す英雄の姿を。
破壊力なら確実にパーティ1の筈だった。
だっていうのに───何故、塵にされたのがゼットなのか。
極光の中から放たれた何かがレーザーを両断し、
終にはゼットを両断して見せたこの景色は果たして、夢なのだろうか幻なのだろうか……。
みさお 『ゼット……くん?ゼットくん!?』
ゼファー『みさお!戦いに集中しろ!』
みさお 『ですが《バゴシャォンッ!!》ッ……あぁあああああっ!!!』
バガゴォンッ!!
みさお 「あ……、───」
ゼファー『みさおっ!?』
ゼットの死に気を取られていたみさおが爆煙を裂いて現れたゼプシオンに殴られ、
壁までの長い距離を一瞬で飛び、激突した。
そのダメージ故か神魔の気配は消え、みさおは力なく項垂れ塵と化した。
彰利 『〜〜〜っ……どういうしぶとさしてんだよくそ!!こいつ不死身か!?』
そんな筈は無い。
現に、ゼプシオンは息を荒げ、フラついている。
ダメージは確かにあったのだ。
だがそれでも、ゼプシオンは竜殺しの英雄。
竜の攻撃への耐性は恐らくかなりのもので、
レーザーを割り、ゼットを一撃で殺してみせたあの一撃は竜殺しの一撃。
だとしても……一時的とはいえ、
2400までレベルが跳ね上がった相手を一撃で殺すか……!?
ゼプシオン「っ……我が誇りは……我が剣は───砕けん!!」
ゼプシオンがオリハルコンの剣を床に突き立て、俺達を睨みつける。
相変わらずの馬鹿げた強さだ。
数えられるほどしか戦ったことなんて無いが、
それでもその強さは思い出すだけでも辛さを覚えるほどだ。
誇り高く、力強い彼の英雄はここがどんな世界であろうと、
その強さをまるで衰えさせることなく、それどころかより強くなって現れた。
その理由は───恐らくこの世界自体にある。
俺達の思考を元に創られてゆくこの世界は、
恐らく敵の強さまでもを受け止めて変化していくものだ。
まして、相手があのゼプシオンならば、
かつての俺の記憶の映像を見たプレイヤー全員が彼は強いと心の底から思考するだろう。
それがこのゼプシオンの異常なまでの強さの原因だろう。
ゼファー『………っ』
もちろんそれだけじゃない。
そもそも相手はあのゼプシオンだ。
基本の時点で俺達とは違う規格外の強さを持つ。
だがそれを、もし負けたとしても敗北理由に唱えるのは馬鹿なことだ。
立ち向かったからには基本がどうなんて問題じゃない。
勝てなかったならばそれはただの実力不足だ。
過去、そんな世界を生きてきたのだ。
誇りを以って剣を持つ相手を前に逃げ出すことなんてしない。
馬鹿と言われようが、死に至ろうが、それが誇りを以って戦うってことなのだから。
中井出 「こうなりゃトドメになるまで何発でも───!“レイジング───」
ゼプシオン「オォアァッ!!!」
ザゴォッッシャアッ!!
中井出「ぎっ……あぁあああっ!!!!」
彰利 『中井出!?ちっ……くしょおがぁっ!!』
中井出が長剣化させた剣からレーザーを放った途端、
一瞬にしてその横に疾駆したゼプシオンが中井出の体を両断する。
やはり一撃でカタはつき、中井出は塵と化す。
次いで彰利がガトリングカタストロファーを放つが、
その悉くをあの巨体で、弾きもしない移動だけで躱しながら突進してくる。
彰利 『ッ……バケモンか本当に!だったら───フルブレイクッ……!!』
ゼプシオン「オォオオオオッ!!!」
アルファレイドでは無理と悟った彰利がフルブレイクをその身に溜める。
だがその間隙を縫うように剣を振るうゼプシオンの前に、彰利の体が両断───ビジュン!
ゼプシオン「ぬ───!?」
彰利 『後ろだバカ!!カァアタストロファァアーーーーッ!!!!』
否!斬りつけられ、斬滅されたと思った彰利は掻き消え、
直後にゼプシオンの背後へと出現した!
月空力での転移だ……この局面でよくやる……!
ゴォッ……!
ドォオオオッガァアアアアアアンッ!!!!
ゼプシオン「ぐ───ぉおおおおぉおおっ!!!」
景色が彰利を中心に吹き飛んでゆく!
波動として放つんじゃなく、
かつてゼノを滅ぼした広範囲破壊として放ったフルブレイクは、
まるで核爆発でも起こしたかのように黒い極光にて景色を破壊してゆく!
当然すぐ傍に居たゼプシオンもその黒い極光に飲まれ、
やがて見える景色の全てを飲み込んだ。
彰利 「かっ……は、はぁっ……!」
やがて黒の極光が薄まる頃、完全に吹き飛んだ天井の先にある蒼空の下、
ブラックオーダーが解除され肩で息を吐いている彰利の姿を確認した。
ゼプシオンは───
彰利 「はっ……はっ……ぐ……!く、くそ……!マジかよ……!」
───彰利の目の前に存在していた。
オリハルコンの剣を床に突き立て片膝はついているものの、
その目に宿る気迫はまるで死んじゃいない。
ゼプシオン「我が……誇りは……!ぬっ……ぐぅう……!!」
彰利 「……!効いてる……全てを耐えられたわけじゃないんだ……!───悠介!」
ゼファー 『ああ!解ってる!!』
力を使い果たしたらしい彰利に代わり、飛翔する!
握る手には皇竜剣。
我が心には誰にも負けぬという意思と誇りを!
ゼプシオン「……っ……ぐぅぁぁああああっ!!!」
ゼファー 『───!』
ヴファンバガァッキィンッ!!!
ゼファー『〜〜〜っ……!くあっ……!?』
向かい、だが振るわれた剣を剣で弾き、吹き飛ばされる。
どうかしてる……!弱ってるヤツの放つ剣じゃないぞこれは……!
───けどやらなきゃいけない。
ここまで追い詰めたっていうのにもし回復でもされたら、
もうダメージを与える方法なんてろくに残っちゃいないんだから。
ゼファー『イメージ!凌駕にて解放!!』
イメージを爆発させる。
自分の周りにのみ創造した場に存在する月と黄昏の世界から
力をこれでもかというくらい吸収し、さらに精霊からの汲々を容赦なく吸収。
ラグにはヴィジャヤの雷撃のイメージを叩き込み、
我が身に雷を帯びさせるほどの理力を以って───飛翔する!!
ゼファー 『いくぜゼプシオン───!全力でお前を越えてゆく!!』
ゼプシオン「我が誇り───!越えられるものなら越えてみろ!!」
ゼプシオンも物凄い気迫とともに疾駆する!
彰利のフルブレイクによって崩壊した城をさらに踏み崩し、
物凄い速度で飛翔する俺へと向かってくる!!
───臆するな!信じろ!
俺に必要なのは勝てるという自信!
強さに限界などないのだと信じ込め!壁など越えろ!枷など壊せ!
我が身は想像!我が意思は無限の自由なり───!!
ゼファー『“雷神剣”!!』
キィンッ!
ヂガァアガガゾガフィシャアォオンッ!!!
ゼプシオン「───……!!!」
衝突の時。
目を潰すような閃光が弾け、紫電とともに青白い光が飛び散った。
ゼプシオンの剣は俺の左腕を斬り飛ばし、俺の腕は弧を描いて地面に落下する。
対して俺の一撃はゼプシオンの体を肩から脇腹まで斬り裂き、
その動きを完全に止めるに至った。
ゼプシオン「ぐ……、が、ぁ……!!」
巨人の疾駆の勢いは雷神剣の一撃により止められ、
だが俺の体はゼプシオンの横を通り抜け、地面を転がった。
その衝撃で同化が解けた俺は、吹き飛んだ左肩を庇うように立ち上がり、
ルナは俺を支えるように寄り添ってくれる。
そしてゼプシオンは───
ゼプシオン「……、……」
荒く息を吐きながら、倒れることだけはしないで……やがて、
心底暴れることが出来て満足だとでも言うように、俺達に“私の負けだ”と呟いた。
それは……時間にしてみれば短かったのに、
嫌になるくらいに長く感じた戦いの終わりと勝利を俺達に齎す言葉だった。
俺と彰利はボロボロになりながらも、なにが可笑しいのか笑い───
少しして到着したゼットやみさお、中井出をボロボロの笑顔のままに迎えた。
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