───冒険の書119/そして訪れたかつての花舞う町で───
【ケース330:晦悠介(再ゲディヒ)/ゲーテ】
町に入った途端に感じたものは、鼻をつくような異臭だった。
生きた人が何日も耐えられるような異臭じゃない相当な臭いだ。
死と肉の腐った臭い……いや、それ以上か?ともかくどうかしてるって思うほどの臭いだ。
中井出「うっ……げっ……!!」
みさお「〜〜……ひどい臭いです……!」
現に、そういう臭いに慣れていない中井出とみさおは辛そうだ。
中井出「お前ら……ぐっ……よく平気だな……!」
彰利 「まぁねぇ、死神王ですから。
それに死の臭いも肉の腐った臭いも知らないわけじゃないし」
悠介 「腐った臭いは外道先生(妖怪腐れ外道)で思い知ってるらしい。
死の臭いは言うまでもないだろ。
それに、思念が充満した狭界を駆け回ったりすりゃあ、
こんな臭い気になんかしてられなかったぞ」
中井出「あのスミマセン……俺、狭界に行ったことなどないので……」
そうだった。
行ったことが無いとこの臭いはキツすぎるかもしれない。
いや、絶対にキツい。
中井出「くうう!臭いまで精巧に再現するとは!
正直に言わなくてもこりゃキツ───ヴ《ゴポリ》」
彰利 「フオッ!?は、吐くでないよ!?吐いてる暇などありはせんぞ!!」
言いながら彰利が周りを見る。
生気が絶えたこの町で蠢く亡者どもが、
その中で生気を持っている俺達を見てノソリノソリと動き出してきたのだ。
彰利 「ギャアもう!最近ほんとアンデッドに縁があるなぁ!!なんとかならんのコレ!」
悠介 「イベントを消化する順番が悪すぎたってことだろ?
こればっかりはどうにもならないと思うぞ」
彰利 「グ、グウウ……」
ロビンが如く唸る彰利を余所に、
実際ゾンビやグールなどといったモンスターがゆっくりとこちらへ向かってきている。
最初の頃はそれこそ初心者修練所をクリアした時点でも倒せる程度の雑魚だったが、
今は完全にいじくられて強くなっていることだろう。
なによりの問題は斉王だが、今のところ見える範囲には居ない。
悠介 (……とはいえ)
この広い町の中で、
手掛かりも無しにこの町が狙われることとなった理由を探さなければならないなんて、
軽く眩暈がする思いである。
悠介 「斉王が来ないうちに確認をとっておきたいんだが───
最初の頃、ここで重要人物っぽいヤツと会ったか?」
ルナ 「んー……ねぇ悠介?それは悠介のほうが詳しいんじゃないの?
その頃は管理者側だったんだから」
悠介 「ノートや他の精霊たち、それにイセリアのことだ。
俺が作った基盤なんてもう完全に改良を加えまくってると思う。
もう俺の中の常識じゃここは攻略出来ないだろうな……」
彰利 「ウハー、条件厳しくないかい?」
悠介 「多分、壊されたからって無視しないでセントールの瓦礫の中を探せば、
情報のひとつやふたつあったんだろうけどな。
それか斉王を復活させた張本人……ノイっていったか?
そいつを探して事情を聞くことも出来た筈だ」
彰利 「グ、グウウ〜〜〜ッ!!い、言われてみれば〜〜〜っ!」
唸る彰利を横目に、吐き気をこらえてアンデッドどもを蹴散らす中井出を見る。
身の丈ほどもある双剣を思う様に振るい、
不死軍団を斬り飛ばす姿はまるで……───まあ、中井出、だよなぁ。
すまん、喩えられる言葉が見つからなかった。
中井出「お、おーい……!
話もいいけどさっさと何かを探すなりしたほうがいいんじゃないかぁ……!?」
ゼット「確かにその通りだ。ここでこう立ち止まっていても埒が明かん」
悠介 「ああ、解ってる。あくまで予想だが、
斉王がここから去らずにずっとここに留まってるってことは、
願われた邪悪ってのは人に対するものだと思うんだ。
多分そいつはこの町の何処か……斉王の手が届かない場所に隠れてる。
そうじゃなかったとしたら願われた邪悪っていうは、
この町をずっと魔窟にしておきたいって願いだとしか考えられない」
ゼット「……なるほど?つまり狙われた人間が居るか、
ここを滅びの街にしておきたいと願った者が居るかのどちらかということか。
晦悠介よ。正直な話、貴様はどちらの色が濃いと思っている」
悠介 「……人、だな。地下でもどこでもいい、
斉王の手が届かない何処かに隠れてるって思ったのが俺の中の考えだ」
彰利 「なるほどネ。んじゃあ地下がありそうなところを徹底的に?
………………エ?こんなだだっぴろい場所から探すの?」
悠介 「しょうがないだろ、情報が無いにも程があるんだ。
それに最初の頃から隠れてるんだとしたら、いい加減食料とかも底を突く」
彰利 「それはそれで、そやつが死ねば斉王も古墳に戻るから一石二鳥?」
悠介 「お前はその人間を殺したいのかたわけ」
彰利 「でもよぅ、この町の広さを見なさいよ」
彰利が俺から視線を外し、ザァッと辺りをねめまわす。
そこには呆れるくらいに広い町の姿と、群がるゾンビ集団と果敢に戦う中井出の姿が。
中井出「うおおこいつらジュノーンの兵より強ぇえ!!
ヘ、ヘヘヘヘルプ!ヘルプス!ヘルプスミーーーッ!!!」
彰利 「オオッ!これは大変だ〜〜〜っ!コマンドどうする?」
悠介 「捨て置け」
中井出「ひでぇ!!」
悠介 「すまん、冗談だ。中井出、出来るだけ引き付けておくことって出来るか?」
中井出「えっ……そ、そりゃ、なんとか出来そうだが……」
悠介 「じゃあ頼む。どれくらいか置きに交代して敵を引き付けよう。
しばらくしたら交代しに来るから、それまで敵を引き付けておいてくれ。
散々暴れれば、真っ先にここに来ると思う」
中井出「や……けどさ。なんだって俺がいっちゃん最初に───」
彰利 「お前を“漢”と見込んでのことだ……頼めるか?」
中井出「任せとけっ……!!」
それは、とてもとても輝いた返事だったという。
親指を立てて輝く笑みを見せた中井出は、双剣を強く握ると……やがては笑い出した。
中井出「ワハハハハハ!!俺やっちゃうよ!?なにせわしゃあ───男じゃけぇのぅ!!」
彰利 「うっしゃあ!ここは任せたでぇ!」
中井出「おう任された!いってこい!」
彰利 「たいした野郎だぜ……」
そうして、この場を中井出に任せて俺達は駆け出した。
きっちりとパーティーから外れ、剣を構える彼は輝いていた。
そして戦闘の意思を見せずに素通りするためか、
そんな俺達なんかより暴れまくっている中井出のところへと次々に向かうゾンビども。
で、これはこれでありがたいとそのままの勢いで駆け抜ける俺達。
彰利 「で……ホントに交代する気あるん?」
悠介 「全然無い」
彰利 「鬼だ……」
悠介 「効率問題だよ。今このパーティーで一番レベルが高いのは中井出だ。
当然ザコ退治も俺達がバラバラに取り掛かるよりも早く済む。
一点に集めてから一網打尽にする方が速いからな。
で、中井出はしかも経験値倍化スキルを持ってる。
戦えば戦うほど相手がザコになっていくんなら、
俺達があそこに残る意味なんて最初から無いんだよ」
彰利 「あ……なるほどなるほど、確かに」
ルナ 「それでも全然交代が来なかったら、あとでうるさいと思うけど」
悠介 「そこのところは適当な言い訳でも考えよう。
もちろん全力で“原因”を探してさっさと戻ればなんの問題もないんだ。
まずは原因を探してイベントを終わらせないとな」
彰利 「ふむ」
どちらにしろ中井出には引きつけ役を頼むつもりだった。
こうした方が俺達は心ゆくまで探索が出来るからだ。
……言っておくが犠牲にしたとかではなく、信頼しているからこそ任せたんだぞ?
彰利 「しかしキミもようやるね。嫌われたいんじゃなかったっけ?」
悠介 「ほっとけ。そんなことしてもしなくても結果は変わらないって理解したんだよ。
希望は持ったままのほうが楽しいもんな」
彰利 「そりゃそうだけど。希望ってなんのことかね?」
悠介 「秘密だ」
エーテルアロワノンを駆け抜ける。
それらしい場所が無いかを探し回り、家の中や家の影やらを見て回るが───
彰利 「ギャアもう!広い!広すぎる!もうちょっと狭くならなかったのかよ悠介よぅ!」
悠介 「俺に言われたって知るか!
ここを作ったのはドリアードたちで、滅ぼしたのはイドなんだよ!!
そこのところの文句はそっちに言え!!」
彰利 「アータ召喚主でしょうが!子供の文句は親に言えって言葉知らんの!?」
悠介 「知らんわ!
大体俺達は自分の責任なんて親に届けることすら出来なかっただろうが!」
彰利 「ゲゲェ言われてみれば!!」
みさお「あの……こんなところでそんな切ない話をしてる暇は無いと思うんですが……」
悠介 「や……それは解ってるんだけどな」
ゼット「手間ばかりがかかるな。いっそこの町を完膚なきまでに破壊するか?」
ルナ 「べつに止めないけど。一緒にエロっちまで崩壊するわよ」
みさお「ゼットくんそれはストップ」
ゼット「いや、俺はなにも中井出博光を殺したいわけではなくてだな」
彰利 「滅ぼされるよりも既にエロっちで通ってる方が泣きたくなると思うな、中井出」
俺もそう思う。
彰利 「それにしても、なにか手掛かりっぽいものってないんかね。悠介、心当たりは?」
悠介 「そう言われてもな……お前の方が詳しいんじゃないか?
最初の頃、ここを動き回ってただろ?」
彰利 「む」
俺の言葉に彰利が眉間にシワを寄せる。
それと同時にその場に立ち止まったため、俺達も止まったわけだが───
彰利 「俺がここでしたことって言やぁ、修練所でもらったポーション売っただけでは?」
悠介 「いや、そんなことを聞きたいんじゃなくてな」
そりゃ確かに彰利の視点で見ていたこの世界の出来事の中、
彰利がここで行ったことと言えばポーションを売った程度だろう。
あと他にしたことといえば……なにも無い。
冗談抜きで何も無いぞ……?どうすればいいのやら。
ええいヒントが少なすぎる。
しかしそれでもここがこうして残ってるってことは、何かがあるわけだ。
斉王がここに残ってずっと何かを待っている理由とか、
なんでもいいから探さなきゃいけない。
なにか無いか、何か……思い出せ。
彰利たちの会話とかの中になにかヒントは───
悠介 「……───あ」
あった。
たったひとつだけだが、ヒントらしきものが。
悠介 「彰利、ちょっといいか?」
彰利 「え?あ、う、うん……ここじゃみんな見てるし恥ずかしいから、
あっちの物陰で《バゴォッシャア!!》ウゴベビャアーーーーーッ!!!」
悠介 「い・い・か?」
彰利 「あの……はい……すんません……悪ふざけしてすんません……。
ほんの出来心だったんです……勘弁してください……」
もじもじしながら頬を染めていた彰利を遠慮無用に殴った。
すると染まっていた頬が拳の形に赤く染まった。
まあそんなことはどうでもいいんだ。
悠介 「情報屋のアルギー、知ってるな?」
彰利 「なにそれ。アルギー?知らねー……あぁウソッ!知ってる!ウン僕知ってるよ!?
だからすぐ殴ろうとするのやめようよ!ね!?アアアアルギーってあれだろ!?
あのアミノ酸の一種で……!」
悠介 「そりゃアルギニンだ!!」
彰利 「ゲゲエさすが料理好き!!伊達に妙にエプロン姿が様になってねぇ!!
オーケー冗談だ!アルギーねアルギー!思い出した完全に!
このエーテルアロワノンに居た裏路地の情報屋だろ!?そいつがどうしたの!?」
悠介 「そいつ、この町の人がここを出る時、一緒に居たか?」
彰利 「───…………アレ?そういや……って、
じゃあもしかしてそげな時からこのイベントって発動してたん!?
斉王が狙ってる相手ってアルギー!?
ノイってヤツが狙ってたヤツがアルギー!?
じゃあこの町のどっかにアルギーが居るってことかね!?
うーーーっひゃーーーっ!探すの面倒くせぇーーーーっ!!」
悠介 「盛り上がってるとこ悪いけどな、探さないとどうにもならないだろ」
彰利 「グムッ……そりゃそうだけどね。しっかしこんなだだっ広い場所を探すのか?
地図だって見て見ても、もう崩壊都市扱いされててマップに載ってないし……」
悠介 「覚えてないのか?」
彰利 「あの時マップ見てたの俺じゃなくて真穂さんだし」
悠介 「そか。じゃあtellだ」
彰利 「え?俺?」
悠介 「俺がやってどうする」
彰利 「いや……べつにどうってことないと思うんだけどね……」
ぶつくさ言いながらもtellを発信するのは流石だ。
で、届いたのかニコリと微笑む彰利。
彰利 「ヤーホー真穂さん?うんそうそう、オイラ彰利」
声 『どうしたの?そっちでなにか───』
声 『彰衛門と話をしているのか!?
話をさせろ貴様!彰衛門に言っておきたいことがある!』
声 『貴様じゃなくて桐生真穂だってば……』
声 『彰衛門!貴様いつまで奔放で居るつもりだ!少しは落ち着きをみせろ!
まったくだらしのない……!
だ、大体だな、つ、つつつ妻をほったらかしにして放浪するなど、
男子として物腰が落ち着いていない証拠なのだ……!
つまりだな、なななにが言いたいかというとだな……っ……!
わ、わわわわたしも旅にっ───!』
彰利 「あの夜華さん?オイラ真穂さんと話したいんだけど」
声 『連れ……───〜〜〜〜貴様はぁあああああっ!!!
今わたしがどんな心境で言葉を発したか解っているのか!?
今はわたしと話しているんだろう!ほ、他の女性のことなど口に───』
彰利 「え?あ、ごめん、真穂さんとの話に集中するつもりだったんで聞いてなかった」
声 『───……』
こちらまで聞こえる篠瀬の声が、ふとかなりのトーンダウンを見せた。
これは……あれだな。
怒ってるか落ち込んでいるかだ。
俺としては前者だと思うわけだが。
声 『あのー、弦月くん?篠瀬さん落ち込んじゃったけど、いいの?』
悠介 「なにぃ!?」
彰利 「夜華さんが落ち込むとな!?それは是非見てみたい!
けど、今それどころじゃねぇのよね。あのさ、今エーテルアロワノンなんだけど。
え〜っと、情報屋のアルギーが居たっていう裏路地、何処にあったか覚えてる?」
声 『アルギーって……あ〜、あの情報屋さんの話?よく覚えてたね』
彰利 「いや、俺じゃなくて悠介がね。で、覚えとる?」
声 『うん一応。こうみえて物覚えはいいのです』
tellの向こうでムンと胸を張っている桐生の姿が目に浮かんだ。
声 『えっとね、ポイントは物凄く覚えやすかったからすぐ解ると思うよ』
彰利 「そうなん?」
声 『うん。一回言えば確実に解るってくらい。じゃあ言うよ?』
彰利 「ウィ。悠介、メモメモ」
悠介 「ああ」
声 『必要無いよ、絶対。えっとね、ポイント“T260G”』
悠介&彰利『ああ、そりゃ間違えようもない』
その上覚えやすかった。
そーかそーか、その文字列できたか。
ゼット「T260G……?その文字列にはなにか意味があるのか?」
悠介 「俺達の記憶、覗いたことあるんだろ?だったら知ってる筈だ」
彰利 「そう、この文字列はまさにサガフロンティアのステキロボ、T260G。
個人的に一番好きだった主人公さ。だから間違えようがない。
で、この町のポイント、T260Gといやぁ……真っ黒で何処が何処だか解らん」
声 『噴水広場があったよね?その噴水、出っ張ってる箇所があるから、
そっちの方向とは逆に真っ直ぐ向かって。
そこに教会があるからその裏に行けばそこがアルギーの裏路地、だった筈』
彰利 「おおすげぇ……よくもまあそこまで……」
声 『丘野くんの証言も合わせての発言だけどね』
彰利 「あ〜あ、そういやあの時丘野くんがオーガメイジによって滅ぼされたんだっけ。
なるほど、そういやあの時帰りが遅かったっけ」
教会の裏か。
なるほど、教会なら他の場所よりは少しは神聖味ってやつがあるかもしれない。
だからアンデッドも近寄り辛いってやつか。
と、自己解釈を済ませると彰利がtellを切ってやはりニコリと笑む。
彰利 「まず噴水広場じゃね。そイから───」
悠介 「彰利、あ〜きとし」
彰利 「む!?なにかね!急がねば───」
悠介 「ほれ、目の前」
彰利 「あ〜ん?この教会がどうかしたのかね?」
悠介 「………」
ルナ 「………」
みさお「………」
ゼット「……視覚が腐っているのか?それとも脳が働いていないのか?」
彰利 「なにが?……って、あ、あー!あー!あー!
教会!教会ね!?うん!ね!?ハイ!ね!?」
どうしよう。
こいつ、思ってた以上に馬鹿かもしれない。
彰利 「《カアア……!》ホ、ホレなにやってんだい!裏に行くんでしょ!?ね!?」
悠介 「そりゃ行くが。顔真っ赤にして力説されてもな」
ルナ 「ホモっちってやっぱり馬鹿?」
彰利 「う、うるせーーーっ!!」
お〜、焦っとる焦っとると拍手したくなるほどの焦りっぷりだった。
と、それはそれとしてだ。
俺達は一度互い互いを見渡すように見たあとに頷き、
やがて教会の裏を目指して歩き出した。
……さて、鬼が出るか蛇が出るか。
実に前途が読みにくい状況だった。
【Side───その頃の提督】
ザゴドゴバシュドシュガンゴンガン!!
アンデッドモンスター『ウゥゲェエーーーーーーッ!!!!』
中井出 「うおおキリがねぇえーーーーっ!!助けて!助けてぇええ!!」
いったいどれほど剣を振るっただろう。
いったいどれだけ既死的存在をこの手で叩ッ斬っただろう。
だがそれでも所狭しと蠢く肉塊どもが……もう見慣れてしまうくらいに現れまくっている。
ぺぺらぺっぺぺ〜♪
中井出「うるせぇーーーっ!!こちとらレベルアップを喜んでる暇なんてねぇんだよ!
こっちの苦労も知らずにピチクパーチク囀るな!ちょっと黙ってろボケ!!
ええいくそ忌々しい!あの蒼い空までもが忌々しい!
あんなに蒼いのにぃいーーーーーっ!!
おいゾンビ!帰っていいかな!俺もう帰っていいかなぁ!!」
ゾンビ『ジアァアアアア……!!』
中井出「いいわけねぇだろ!部屋はもう蒸し風呂状態なんだよ!
なんにも知らねぇくせに知った風な口利くなぁっ!!───じゃねぇ!!
声優繋がりでキョンくんと銀さんごっちゃにしてる場合じゃねぇっての!!」
けど実際忌々しいんだからしょうがねぇだろくそっ!
一体全体どうなってんだアンデッドモンスターってのは!
いったいどっから沸いてきてんだ!?どっから産まれてきてますか!?
土からですか!?我らが母なる大地からですか!
ええいくそ!どんな肥料撒いたらゾンビが発芽すんだ!?
どんな栄養与えたらグールが花咲かすんだ!?
どんだけ水を与えればスケルトンが収穫されんだ?
中井出「農林水産大臣ーーーッ!!農林水産大臣を呼べェーーーッ!!!
今すぐ!そしてこの状況の説明を細々としてみろォーーーッ!!」
ああ、もうまともなこと考えられなくなってきた。
しょうがないだろこの状況じゃ。
四方八方、見渡してもゾンビ、見下ろしてもゾンビ、見上げてもゾンビ。
こんな状況じゃあ夢も希望も腐っていくってもんだ。
大体、アンデッドモンスターと戦うのはもうほんと勘弁していただきたい。
ああちなみに見上げてもゾンビってのは、剣で吹き飛ばしまくっているからということで。
中井出「闘技・元素の流法()!!」
さあ全力で参りましょう!
我が剣に元素の力よ宿れ!
……元素の力がどんなものかなんて知らんけど。
ゴッ───オォオゥウウンッ!!!
中井出「オッ……おおっ!?」
火円が広がる。
さらには大地から力が流れ込んでくるように力が満ちる。
さらには足に竜巻めいた風が集束し、体が驚くくらいに軽くなり───
水の力が傷を回復させてゆく!
中井出「も、もしやこれは……四大元素の宝玉の力が全部詰まってる!?」
こ、こりゃすげぇ!ビバ元素!
……しかし、それはそれとして元素自体の力はいったいどうなるのやら?
まあ振るってみりゃ解るか?
中井出「はぁっ───セイッ!!」
フィンッ───ヴィヂィッ!!ゾババフィンッ!!!
中井出「……フオッ!?」
ゾンビ『グェエエアア……!!』
振るった双剣から妙な剣閃が放たれた。
いや、放ったっていうよりは剣に付加されてるっていうか……なんて言えばいいんだ?
振るった軌跡を辿るように、
いや違うな、同時に剣の太刀筋以上の範囲を青白い光が裂くっていうのか。
そう、言うなればこれは───次元斬(小)!!
中井出「元素の精霊っていやぁ、無の精霊以外に存在する唯一の無属性の精霊……。
敵の属性に左右されず、だが確かにその威力は相当という能力……。
───見切ったぜアロマタクト!……ってこりゃ彰利のセリフだな」
ようするに元素の力ってのは四大元素を思う様引き出し、
さらに使用者自身に様々な恩恵を齎すっていうとてもお得な力!!
出来る───これなら出来るかもしれない!
中井出「ふっ……ふ、ふはははははは!!覚悟しやがれ腐乱死体どもがぁ!!」
もう貴様らの顔も見飽きたわ!
だって交代の人がいつまで経っても来ねぇんだもん!
自棄にもなるわこのドちくしょうが!
中井出「まずジークムントとジークリンデをジークフリードに変換!!」
ガシィンッ!と力強く二振りの剣を合わせ、長剣に変換!!
そしてそれを片手に身を低くして構える!!
さらに元素の力を最大まで引き出し!
身に力を!周囲に炎を!傷に癒しを!足に風を!そして剣に元素の輝きを込めて!
一気に───地面を蹴り弾く!!
中井出「アルベイン流最終奥義!!」
一気に地面を這うように跳躍!
地面を滑るように前進し、間合いが詰まったところで長剣を大きく振るってゆく!
ゾババフィィンッ!!ゾババフィィンッ!!
中井出「冥空ゥッ───!!」
ザゴシャシャァッ!!ゴバシャシャァッ!!
中井出「───斬翔剣!!」
ザゴシャシャッ!ゾバシャシャアアッ!!
横薙ぎ、縦斬り、上段袈裟斬り、振り上げ斬り、回転振り上げ斬り、斬り下ろし。
一撃に四度敵を斬り刻む斬撃計六回を放ったのち、自らを回転させて跳躍!
回転の要領で遠心力とともに次元斬の範囲を広げ、
跳躍による上昇とともに敵を巻き込んで切り刻みまくる!!
ゾバフィィンッ!!ゾバフィィインッ!!
ゾバァアアシャシャシャシャシャァアアッ!!!
中井出「おぉおおおおりゃぁああああっ!!!!」
最後の振り抜きで敵を木っ端微塵に切り刻み、
最後は格好良く空中で空間翔転移して地面に降り立つ!
空間翔転移で……って!俺転移法なんて持ってねぇよ!!
ぐわぁ格好つかねぇえーーーっ!!この技は最後の転移こそが格好いいのにぃいっ!!
◆アルベイン流最終奥義/冥空斬翔剣(完成版)───めいくうざんしょうけん
PvD(Phantasia VS Destiny)というゲームに存在した真のアルベイン流最終奥義。
きちんとPS版冥空斬翔剣もあるのだが、これを見たあとではどうにも存在が霞む。
対象を計9度斬り刻んだのち、空中で転移して地面に下りる様が特にいい。
ちなみにこのゲームは格闘ゲームツクール95で作られたものであり、
かなりやりづらい感もある。が、それに余りある技グラフィックに脱帽。
現在大絶賛公開停止中。そもそもXPでは上手く合わないため、
95ツクールゲームではコントーローラーを差しても満足に動かせない。
やりたい時はJoyToKeyというツールをご一緒にどうぞ。
*神冥書房刊:『拳で語る仁義もあるか……』より
そんなわけでドシャアと普通に降り立った俺は、
なんとも恥ずかしい気分になりながらもさらに疾駆を重ねた。
この宝玉の力は本当に素晴らしい……!
まさに近接戦闘者に作られたと言っても過言ではない能力!
これは───これはいいものだァーーーッ!!
中井出 「さあこい鈍牛!この中井出博光が!成敗してくれるわぁーーーっ!」
ゾンビジャイアント『ロガァアアアアゥ!!』
中井出 「ヒィイごめんなさい!ナマ言ってすみません!!」
どこまでも格好つかない俺だった。
だってしょうがないじゃん、怖いものはいつまで経っても怖いし。
だがこの博光、せめてゲームの中だけでも強者でありたいと願う猛者。
この剣に我が志を込め、乗り越えてやるぞ!ゾンビロード!
中井出「………」
乗り越えてもあんまり嬉しくなさそうなロードだなぁ。
ていうかいつになったら交代は来るんだろうね?
遅いなぁ、あはは。
いやいやきっとみんなも敵に襲われたりして大変なのさ。
そこんところを汲んでやらなきゃスーパーヒーローじゃないのさ。
心に愛が無ければスーパーヒーローじゃないのと同じさ。
でも早く来てお願い。
そろそろ敵の数が滅びの町に現れたアンデッドの数を越えてきてる。
やつらの食料が俺なのだとしたら、エンゲル係数なんぞとっくに超越済みだ。
いかん!いかんぞ!
これでは猫を飼いすぎて大変な目に遭っている長森さん家の瑞佳さんじゃないか!
いいやもう訳解らん!とりあえず───出来るとこまでブッ潰す!!
大丈夫!僕なら出来る!出来るから早く来てください交代の人!
またひとりぼっちで延々バトルなんて嫌だ!
俺だけイベントの事情も解らないなんて嫌だぁああ!!
【Side───End】
ガゴッ……ゴココッ……!
悠介 「ん───」
彰利 「ウィ?どしたー悠介ー」
悠介 「あ、いや……なにやら今、熱き男の叫びが耳に届いたような……」
彰利 「ダニエル?」
悠介 「それは絶対にない」
───さて。
裏路地にて巨大な重りの下に発見された地下への入り口を暴くため、
重りをゴトゴトと移動させた俺達は、
いざ下へと降りようとした時に耳に届いた男の叫びに歩を止めた。
いや、厳密に言うなら歩を止めたのは俺だけだったわけだが。
彰利 「ふむん?男の叫びね……そういや中井出はどうしてっかね」
悠介 「今の中井出ならそこいらのアンデッドには負けないだろ。
斉王相手じゃどうなるかは解らないが」
彰利 「せやね。ゼプシオンより凶悪で不死な分、
攻撃受けても無視して突っ込んでくるだろうし」
難儀な相手である。
死んでも平気だろうけど、出来れば無事ならいいが。
と中井出を心配しつつも、
交代しに行かないのはヤツならやってくれると信じているからだろう。
悠介 「信頼の押し付けって迷惑だろうなぁ」
彰利 「それが力になるならいいんでないの?
無茶なことを押し付けるだけ押し付けといて、
押し付けた本人が逃げ出すなんてことが無けりゃ」
悠介 「………」
そりゃまあ逃げ出すつもりはもちろん無いが、
どうにも含みを持たせたような言い回しな気がするのは気の所為か?
まあいいさ。
実際、中井出ひとりにあの場を任せてここに来てしまったのは事実だ。
事実は事実として受け止めなきゃなぁ……。
もうそんな行動にも慣れてしまった自分が物悲しい。
いったいいつからこんな物分りのいい自分になっちまったんだか、
我が人生ながら、ほんと呆れてしまう。
かつての自分はもっと否定論ばかりを繰り出す、
カチカチでコチコチのクソ石頭だった気がするんだけどな、はぁ。
悠介 「じゃ、行くか。モンスターとかの気配はどうだ?」
ゼット「この先にそういった邪気は感じられないな。
それ以前に貴様、そういった物は精霊である貴様のほうが感じ取りやすいだろう」
悠介 「悪かったな、力の解放しなきゃ俺はただの創造者なんだよ」
言いつつも下りてゆく。
さて、敵が居ないっていうなら待っているのはアルギーってやつだけだと思う。
しかしだ。
最初にこの町が崩壊してから相当な時間が経っている。
生きていてくれればいいが……って、生きてるだろうな。
なにせ斉王がまだこの町に……居たか?
考えてみればここに来てから、斉王の姿を見てないが……
悠介 「……まさかな」
どうせどっかで待機状態なんだろう。
それか中井出あたりと戦っているかのどっちか。
今の中井出ならなんとか時間稼ぎくらいは出来ると思う。
……って、とことんひどいな俺。
しかし原中同士では遠慮はしないと、かつて猛者どもの集いの中で誓い合った。
あの頃は俺も感情なんてものが満足に発達してなかった時だ、
中途半端なままに受け入れたりして、
しかしその実それを実行してたのは彰利に対してだけだったんだろうが───今は違う。
遠慮なく、容赦なく対応させてもらってるつもりだ。
ほんと、重くない関係ってのは心まで軽いもんだ。
もちろんそれはここがゲームの世界で、死んでも生き返れるって条件があるからなんだが。
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