───戦闘終了/お祭り再来の瞬間───
【ケース29:弦月彰利/戦い終わって───】
そうして戦いはダブルK.Oというカタチで終わった。
ゼットの表情には既に俺と戦っていた時の気迫は無く、
ただ穏やかな笑顔のままに涙しながらみさおに抱きしめられている。
───とまあ、そこまではハッピーだったんだろうけど。
シュパンッ!ヒュゥウウーーーー……ドグシャア……!!
彰利 「おぶぇっ!!」
悠介が完全に気絶したところで黄昏は消滅───
結果、力を使い果たして浮けなかった俺と気絶中の悠介は、豪快に大地に落下した。
彰利 「ほががががが……!!は、鼻打った……!とても痛い……!」
男1 「な、なんだぁあーーーーーっ!!?人が空から降ってきたぞぉーーーっ!!!」
男2 「顔面から落ちて鼻から盛大に血を流してるぞぉーーーっ!!!」
男3 「腕の骨が折れて腕を突き破って飛び出てるぞぉーーーっ!!!」
男4 「あ───だ、大丈夫!生きてる!生きてるぞぉおおーーーーーっ!!!!」
彰利 「人を武流豚くんみたいに言うんじゃねぇ!!」
もっとも武流豚くんの場合、こんなもんじゃ済まないだろうけど。
しかしこげな高さから落下しても“痛い”だけで済むとは……
つくづく人間やめてますね、俺。
男1 「しかしなんだって空から?」
男2 「つーかこいつらってよくここらに現れるモミアゲとツンツン頭じゃん」
男3 「お前らなにかやったのか?山吹き飛んでるじゃねぇか」
彰利 「フッ……知りたがりは長生きせんぞ」
男4 「あぁ?なんでだよ」
彰利 「何故って、しつこいと盆栽が爆発とともに消滅したことに
今さらながらに気づいたゼノが暴走するから」
ゼノ 『オォオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!?
我の盆栽ィイイイイイイイイイイイイイイッ!!!!!』
男5 「ヒィッ!?なんか空に浮いてるやつらが居る!!」
男1 「しかもなんかひとりだけすっげぇ血管ブチブチで目ェ見開いて───
やばいよ、やばいって!だめだもう……来たァアアーーーーーーッ!!!!」
怒りを露にして卍解までしてるゼノが一気に大地に降り立ったッッ!!
その顔は……うおう、マジで血管ムキムキだ。
───と、そげなゼノが気絶中の悠介の肩をがしりこと掴み、激しく揺らす。
ゼノ 『目を覚ませ晦悠介!!今すぐ!今すぐ我の盆栽を復活させろ!!』
彰利 「こ、これ!気絶中の武人に対してなんたることを!」
男1 「サイキッカーだサイキッカー!浮いてたからサイキッカー!!
絶対サイキックフォースから飛び出た男だ!!なにせ空飛んでた!」
男2 「写真取れ写真!!」
カシュンカシュン!!
ゼノ 『目障りだ俗物どもがぁああああああっ!!!!!』
野次馬ども『キャーーーーッ!!?』
野次馬ども、ゼノの咆哮に散開。
そのままとんずらし、彼らが戻ってくることはなかった。
彰利 「はふぅ……しっかし、まさかこうも見事に破壊されるとはねぇ……」
目の前に聳え立っていた筈の山、だったものを見る。
もはや巨大なクレーターが残るのみで、何度見ても山や石段は無い。
彰利 「みさお、これみさおや」
ともすれば、もはや月操力枯渇状態にプラスして、
黒枯渇状態な上に鎌枯渇状態な俺では治せん。
ここはひとつ月操力無限使用可能少女に月癒力(再生)を使ってもらって───
彰利 「………」
降りて来ねぇ。
ゼットを抱きしめたまま、なんか泣いとうぜ?
来いち言いよろうが、なんで来んとや?
聖 「なんかみさおちゃん、
ゼットさんの笑顔を見た途端、前世の記憶が鮮明に胸を打ったそうだよ」
彰利 「うわ……トキメキドキュン?それより聖や?パパの顔をちと癒してくれんかね?
それと悠介の傷とか疲れも」
聖 「パパはいいけどその人はイヤ」
彰利 「……いい根性しとるねキミも」
まあよいです。
ともかく俺は傷と疲れを癒してもらい、グンと身体を伸ばして一息つきました。
彰利 「さて、と───これからどうすっかね」
豆村 「親父!俺に卍解を教」
彰利 「やだ 聖はこれからどうする?」
豆村 「速ッッ!!断るのも次の話に移るのも早すぎだろおい!」
彰利 「うーさいクソカスが。死神になれた程度で浮かれおってクソジャリが。
元はと言えば貴様がゼットにちょっかい出さなけりゃ
こげな大事にはならんかったのではないかね?」
豆村 「そ、そんなことねぇって!大体、向かってきたのはあいつの方で───」
彰利 「死神化してたんよね?その時。だったら死神化してた貴様が悪い」
豆村 「うぐっ……で、でも強くなりたいんだ!俺に卍解を───」
彰利 「いやだぁ」
豆村 (健に似てる……ッ!!)
彰利 「とーもーかーく。まずは蒼空院邸に行きましょう。
こげなところに居たら報道人がやっかましぇ〜とよ」
聖 「パパ、わたし月癒力できるけど───」
彰利 「いや、いや、さすがにこれだけの規模を月操力だけで治すと
眩暈だけじゃ済まんから。気持ちだけありがたく頂いとくよ、ありがとな、聖」
なでなで……
聖 「う、うん……えへへ……」
豆村 「姉さんってさ、親父にはとことん甘えるほうだよな」
聖 「うーさい!」
豆村 「……なんで俺、絶対『うーさい』って言われるんだ?」
彰利 「フッ……未熟モンの貴様にゃ解らんさね。つーわけで聖、いいかね?」
聖 「うん。みんなぁ〜、ここに集まって〜!」
我輩の言葉に素直に頷いた聖が皆様を呼ぶ。
その声を聞いて両脇に夜華さんと春菜を抱えたシュバルドラインが降りてきて、
ゼノもいつの間にみずきから水穂ちゃんを奪い取ったのか、
水穂ちゃんを抱きかかえながらこちらに戻ってきた。
で、問題は───
聖 「………」
彰利 「………」
豆村 「………」
空中でラヴラヴ空間展開しとる恥ずかしい人々だ。
聖 「みさおちゃん!───みさおちゃん!?」
聖はみさおに問いかけた!!───ミス!今のみさおには届かない!!
聖 「───……」
あ、ちょっとカチンと来たらしい。
彰利 「よし、やったれ聖。解ってるな?月然力だ」
聖 「うん、解ってる」
そうしてニヤリと笑う僕ら。
隣ではやはりみずきが呆れていた。
聖 「月然力・重!グラビテーション!!」
───ドンッ!!
みさお「え───あ、あれっ!?あわぁああああああああっ!!!!!!」
ドゴシャァアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!!!
……そして地面に激突するラヴラヴ空間発生装置。
みさお「げほっ!こほっ!!だ、誰ですか今重力をかけたのは!!」
さらに僕らはラヴラヴ空間発生装置の大破を確認した!!!
彰利 「YEARァーーーッ!!!やったぜヒジーーーリ!!!!」
聖 「わたしたちの勝利だねパパ!!」
豆村 「そういう問題じゃないと思うんだけどなぁ……」
聖 「みずきっ!こういう時は全力で騒がないと損なんだよ!?」
豆村 「いや、姉さんの場合普段は凄い大人しいし静かだし、
そんなギャップに付いていけってのが無理だって」
みさお「誰ですか!!正直に言えば許しません!!」
豆村 「ダメじゃん!!名乗るだけ無駄じゃん!!」
彰利 「ちなみに犯人コイツ」
ポムス。(みずきの頭に手を乗せる音)
みさお「みぃいいいずぅううきぃいいいいい…………!!!!」
豆村 「えっ!?やっ───ち、違う!みさおさん騙されてる!あんた騙されてるよ!!」
聖 「ごめんねみさおちゃん……っ!わたし止めたのに……っ!
みずきが『空で恋する武士なんて許せない』とか言って月然力を……!!」
豆村 「姉ェエエーーーーーーーッ!!!!」
みさお「………」
豆村 「あぁあああのみさっ……みさみさおさん!?
違いますよ!?俺そんなことっ……!!」
みさお「……戦いの中で、人の警告を無視して……
戦おうとした父さまに勝てやしないなんて闘志を殺すようなことを言って……
挙句の果てにようやく再会できた瞬間を台無しに……!!」
豆村 「ひ、ひぃい!なんかみさおさんの肩越しの景色がモシャアアアって歪んでる!!
ご、ごめんなさい!なんか知らんけどごめんなさい!!
ななななんでもするから許して!!ダ、ダメ!?
じゃ、じゃあえっと───きょ、今日も綺麗だねみさおさん!
なんつーかこう!伸びたモミアゲがセクシーっつーか!!」
全員 『あ……』
豆村 「え?」
スッ……───と、無言でみずきの頭に手を乗せるみさお。
そして───
みさお「───馬鹿だぜアンタ」
豆村 「!」
謝謝、楊海王……ベッシャアア!!!!ゴキベキ、ペキ、コキン……
───……。
……。
───さて、そんなこんなでみずきが楊海王のごとくグシャグシャになってから一時間後。
我らは蒼空院邸の庭にやってきて、櫻子さんとともに紅茶をシバいていた。
ちなみに晦神社などや山々はきちんとみさおが治してくれたので問題無し。
悠介が気絶している中、
意識はあったらしいゼットと茶を囲む状態はなんか物凄く奇妙な冒険である。
彰利 「………」
まあ、ええかね?
なんかみさおさんといい雰囲気みたいだし。
俺や悠介にしてみれば暴れたりしないんだったら文句なんて無いし、
なによりこのゼット野郎、かつての狂王とは思えんほどに穏やかに笑いやがるんだもん。
これじゃあ過去のゼット坊を思い出して、ツッコミ入れることすら出来ん。
豆村 「………」
彰利 「……ふむ」
とまあそげなわけで。
俺は復活したみずきを前に、説法することにしました。
彰利 「いいかぁみずき。晦家の人々……というよりは悠介の家族だな。
悠介、みさお、深冬ちゃんに対して『モミアゲ』に関することは禁句なのだ」
豆村 「身を以って知ったけどさ……深冬もそうなのか……?」
彰利 「そうだ。ホレ、小学の時に貴様がインフルエンザでガッコ休んだ時があったろ」
豆村 「あ、ああ」
彰利 「あの時にな、ここぞとばかりにイジメられたそうだ。
その時に髪を引っ張られながら馬鹿にされたんだよ。
なんつーか、モミアゲ部分引っ張られながら
『蒼空院のここの髪、ヘンテコだ〜』って」
喩えみたいな言葉で説明するけど、
実際は深冬ちゃんの受けたイジメを悠介が映像化させて見たわけです。
ええ、話で聞くよりは見たほうがいいし、
深冬ちゃんの場合はイジメた相手までを気遣って、柔らかな表現をするだろうし。
豆村 「親父、そいつの名前教えてくれ。ツブしてくる」
彰利 「心配すんな、既にその日のうちに悠介とみさおがツブしてきた。
それよりもホレ、
悠介の家族ってなんだかんだ言ってモミアゲ長いヤツばっかだろ?
だから深冬ちゃんも自然とそこの名前がモミアゲって解っちまってな。
けど切れば家では仲間はずれになる。だから切らない。
けど切らなければイジメられる。そんな心の葛藤のうちに……」
豆村 「……うちに?」
小さく思い出したことに、どこか胸がスッキリする。
あの時の深冬ちゃんはガンバルマンだったねぇ。
……や、今もガンバルマンだけど。
彰利 「ん、完全に開き直った。悠介の言ってたこともあながち間違いじゃないんだわ。
深冬ちゃん、しっかりと芯は強かったんだよ。ヘンな話だけど、
モミアゲを馬鹿にされるってことは家族を馬鹿にされてると同義と受け取ってな。
それからはもう大変。
翌日、お前がまだインフルエンザで休んでる日にひとりで登校して、
それでもまあ、また別のヤツにイジメられたわけなんだけど───」
豆村 「歯切れ悪いなぁ、どうしたってんだよ」
彰利 「またモミアゲ引っ張られて馬鹿にされた時、とうとう“晦の血”が目覚めた」
豆村 「え……それって?───ってもしかして!
なんかその時、同じクラスのヤツらが長期入院したって話があったような……」
彰利 「そのまさか、っつーか……ようするに深冬ちゃんがキレた。
身体弱いってのにその場で行われた瞬獄殺は見事としか言いようがない。
月視力でその時の映像を見たんだが……
まあイジメッ子をボコったあとに自分も体調くずして気絶してた」
豆村 「うわぁ……」
覚醒した深冬ちゃんの様子はまさしく修羅だった。
髪を引っ張っていた小僧をクリティカルビンタで気絶させ、
さらに髪を馬鹿にしていた小僧に瞬時に近寄るとこれまたビンタ。
怯えて逃げようとした小僧に足払いをかまし、その後は地獄絵図だった。
普段は大人しい人がキレると怖いって事実の典型でした、あの映像は。
彰利 「ま、そんなわけだ。
ルナっちはともかく悠介とみさおと深冬ちゃんの前ではモミアゲは禁句。OK?」
豆村 「りょ、了解……」
説法終了。
さて───
ゼット「セシル……」
みさお「ゼットくん……」
途端に暇になった今、この甘酸っぱい空間をどうやって乗り切ろうか……。
あ、いや、俺には校外学習の続きがあるんだった。
そっちに逃げてしまいましょう。
うん、それがいい。
櫻子 「あらあら彰利さん?もうケーキを食べちゃったのね?
だったらおばあちゃんのをあげるわ。どんどん食べてね」
彰利 「え?や、我輩もう行かねばと思っとったのですが……」
櫻子 「あら、だめよ?せっかくカップルが出来たのにそれを突付かずに去るなんて」
彰利 「うわぁ……」
櫻子さん、滅茶苦茶楽しそう……。
しかも十八年経った今でも以前とあまり変わらない……どころか、
むしろ若返って見えなくもない。
やっぱマナの樹と癒しの樹の影響なのかね。
……まあいいコテ。
彰利 「えーと、ゼットや?キミこれからどうすんの?」
ゼット「───……ああ。全力を出し切ったら随分とスッキリした。
お前たちが危うく思うようなことは二度としない。
だが、そうだとしても俺は歓迎されるべき存在じゃないだろう。
このまま何処か人里離れた山奥にでも住もうと思っ───」
櫻子 「だったらここに住みなさい?」
総員 『速ッ!!』
物凄い決断力の速さだった。
ああ……そういや櫻子さんはゼットがどんな存在なのかなんて知らないしなぁ……。
ゼット「せっかくだがそれは周りが許さ───」
櫻子 「あら。ここはわたしの屋敷よ?周りの意見なんて知ったことじゃありません。
それにわたしは家族が増えるだけで嬉しいもの」
ゼット「いや、だが───」
櫻子 「───それともなにあなた。
その気は無いのにみさおちゃんにツバつけたのかしら?」
ゼット「そ、そんなことはないっ!俺は───」
櫻子 「なら決定ね♪」
ゼット「うぐっ……ぐ、ぐぅうう……!!」
総員 (凄い……伝説の黒竜王を説き伏せた……)
櫻子 「さあさ、今日はお祝いをしましょ。新しい家族が増えたことを元気に」
総員 『サ、サー・イェッサー!!』
……こうして。
僕らの中で奇妙な力関係が産まれました。
一般人<月の家系<変身可能者<卍解習得者<冥界の月<死神王<竜王<櫻子さん、と。
なにせ櫻子さんには前科……というか、
ベヒーモス族を手懐けた経験があるため、むしろ現実味がありすぎて逆らえそうもない。
猫? 「にゃー」
櫻子 「うん?あらあら猫ちゃん、もうごはんの時間?
ちょっと待っててね、今フリスキーモンプチ出してあげますからね」
猫? 「……!!」
……と、この通り。
どう見ても猫には見えないミニベヒーモス三匹がこの状態だ。
キングベヒーモスの名が泣きそうに感じるのは俺だけじゃああるまいなぁ。
しかもフリスキーモンプチって言われた時のあの目の輝き様……もう完全に餌付け状態だ。
恐らく櫻子さんに害を為す者は誰だろうと許さないだろう。
櫻子 「それにしても……この屋敷にも動物が増えたわねぇ。
最初は猫ちゃん三匹だけだったのに、今じゃ……」
ざあ、と景色を見渡す櫻子さん。
そこには普通は地界には存在しない小動物たちが存在していた。
学会に発表すれば間違い無く新たな動物図鑑が発行されることだろう。
……もちろん俺は、それを『幻獣図鑑』と書き換えるが。
ああちなみに悠介は癒しの樹の幹に寝かせてある。
その方が復活が速いだろう、ということで。
でも実際凄いよ?悠介を癒しの樹の幹に寝かせた途端、
癒しの気配とマナの気配が一気に悠介の方に流れるのを感じましたから。
悠介、マジで自然に愛されてます。
その周りには悠介を心配してか、幻獣たちがぞろぞろと集まってるし。
櫻子 「あの子たちはほんと悠介くんに懐いてるわねぇ。
おばあちゃん、ちょっと妬けちゃうわ」
大丈夫、あなたは余りある存在に三匹も懐かれてます。
などと思いつつ、蒼空院邸に入ってゆく櫻子さんを見送った。
ゼット「……何者だ、あの人は……。まるで反論が出来なかった……」
みさお「あ、あはは……櫻子さん、言葉では最強だから……」
彰利 「みさおさん、口調戻っとうぜ?」
みさお「構いません。臨機応変に変えることにしました」
彰利 「あらら……」
どうやら吹っ切ったみたいです。
まあ良い笑顔だったのでこれ以上ツッコミ入れるのはやめときましょう。
彰利 「そんでゼット。ここに住むことになった以上、
地界のことはあらかた知っておく必要があるけど───」
ゼット「問題無い。竜王として確立し、お前らとの邂逅を果たしてから
既にお前らの記憶から地界のことは知っていた。
常識の範疇は既に理解しているつもりだ」
彰利 「ほう。んじゃ、腹が減った時は?」
ゼット「食い逃げする」
総員 『………』
彰利 「なっ……なにかその目は!!哀れみを込めた目でわたしを見るなぁっ!!」
ゼットの言葉に、何故か一斉に僕を見る皆様。
民の視線がとても痛い夏の午後です。
ついついどこぞのムギーの真似をしたくなるほどに。
そりゃね、俺だって食い逃げしましたよ。
でもみさおさんだって例外じゃないのですよ?
……や、盗んだのは俺で、みさおさんには俺から与えたんだけど。
あ、そうか。だったら食い逃げしたのは事実上俺ひとりだ───ダメじゃん!!
彰利 「グ……グウウ〜〜〜ッ!!よいかねゼット氏!!
腹が減った時は自炊するか買い食いするかのどちらか!!
食い逃げは犯罪ですからやめましょう!死神王との約束だ!!」
ゼット「どの口がそんなことを言う」
ザグシャアッ!!(心にゲイボルグが刺さる音)
彰利 「……!!」
春菜 「ああっ!アッくんが漂流教室の驚いた子供のような顔に!!」
夜華 「彰衛門!?彰衛門どうした!!しっかりしろ!!
確かに黒竜王の言葉はいちいち的を射ているがそれは貴様の自業自得だろう!!」
ゾググシャアッ!!(刺さったままのゲイボルグが鏃を放ち、心をズタズタにする音)
彰利 「っ……!!」
春菜 「夜華!それフォローになってない!!
───ああっ!今度は漂流教室の飢えた子供の顔になってる!!」
夜華 「あ、彰衛門!?すまない!わ、わたしはそんなつもりじゃっ……!!」
ライン「どうでもいいがな貴様ら。あまり騒ぐな」
ゼノ 「まったくだ。今、盆栽の手入れをしている。
集中力がものを言う作業だ。静かにしてもらいたいものだな」
豆村 「ゼノさん……盆栽が直った途端にそれですか……」
ゼノ 「フン、成長を急く貴様には、
ゆっくりと成長する盆栽の素晴らしさなど到底理解出来ん。
……さてシュバルドラインよ。貴様ならこの部分、どう取る?」
ライン「ぬ……中々難しい質問をする。
私ならばこの隅を切り、全体のバランスを取るが……」
ゼノ 「ふむ……だがその場合、全体のバランスは取れても隅の美しさが欠ける」
ライン「それだ、問題は」
それだ、問題は……じゃなくて。
ああもう、なんか悩んでるのも馬鹿らしい。
俺が食い逃げしたのだって事実だし、考えても仕方ないよね。
ゼノ 「ぬう……難しいところだ」
豆村 「……?そんなの、適当に整えればいいじゃないですか」
ライン 「………」
ゼノ 「………」
ゼノ&ライン『クズが……』
豆村 「クッ……!?いやちょ、なんでクズとまで!?」
ゼノ&ライン「黙れクズが!!」
総員 『死ね!!』
豆村 「わざわざ一斉に言うなよ!!───つーかあんたらいつの間に!?」
彰利 「むっ!?ややっ!?」
みずきの言葉に振り向けば、
原中生『天海さまの命により、我ら原沢南中学校卒業生、参上しました』
そこには空界に居る筈の原中の猛者どもがゾロゾロと。
……そういや、蒼空院邸の悠介の部屋と空界が繋がってるんだもんな、
すぐに来訪できるのは当たり前か。
中井出「はっはっは、やあやあ諸君、壮健かい?」
彰利 「どぎゃんしたとよオメ、授業はどぎゃんしたと?
こがあなところで油売っとる場合じゃねーじゃろ」
中井出「馬鹿お前、特別授業の先生が地界に戻っちまってるんじゃあ勉強にならんだろ」
彰利 「ナルホロ」
丘野 「そんでもってお前らは昼寝&お茶会か……よし俺にも食わせろ」
彰利 「ふむ。今櫻子さんが新しいお菓子とりに行ってるから、まあなんとかならぁな。
座る場所は少ないが、芝生の上はべつに汚くないから座れるぞ?」
藍田 「おお、そりゃよかった。そろそろ足が棒になってたところだ」
彰利 「ありゃ?オリバもうやめたの?」
藍田 「ずっとオリバやってりゃ流石に疲れるっての……
あ、ここ座らせてもらっていいか?」
彰利 「む?そりゃ構わんが」
つい、と空いていた席を指差してスチャリと座るオリバこと藍田亮。
そしてなんの気無しに隣に入る男をチラリと見て……
藍田 「あ、ども、お邪魔しま───」
ゼット「───?」
藍田 「はっ……はがっ……が、がが、ががが……!!!」
世界崩壊を目の当たりにしたかのような顔で固まった。
そりゃそうだ、フレンドリーな態度で座った隣に伝説の黒竜王が居れば誰だって、なぁ。
原中の猛者どもは悠介の記憶の映像でゼットの顔は知ってる。
だからその顔は圧倒的で絶対なる破壊者としてしか映らんだろう。
藍田くんはまるで、
真冬の海に飛び込もうとする千代くんのようにガタガタと震えだしました。
もちろん涙も盛大に流してます。
見ているこっちが申し訳なくなるようなぐらいに怯えてます。
彰利 「あ、あー……藍田くん?実はですな」
藍田 「あぁぁああ〜〜〜……あぁああ〜〜〜……」
彰利 「………」
人はあまりの恐怖に対面すると、心底泣き出すと言います。
彼の場合、これがそうなのかもしれません。
なんかもうマジで泣きながら腰を抜かした人のように四つん這いで逃げ出してます。
中井出「?どうしたのだ藍田二等兵。オリバの二つ名が泣くような声出して。
この人がどうかしたのか助けてぇえーーーーーーっ!!!!」
で、チラリとゼットの顔を覗いた提督までもが絶叫してとんずら。
丘野 「ぬっ!?何事でござるか提督!緊急事態でござるか!?
はたまたその驚愕の足裁きは……忍術!?今のは忍術でござるか提督!!」
事情を知らない丘野くんはノリノリでした。
清水 「忍術とかじゃないだろ。多分この人がどこぞの有名人だったとか」
なんでもない風に笑いながらポムスとゼットの頭の上に気安く手を置く清水くん。
彼は有名人だとかの理由でふんぞり返る人が嫌いな故に、
どんな相手でもフレンドリーに接します。
それはそれは、眩しいくらいの笑顔だった筈です。
……まあその、気安く頭に触れられたゼットが、
コメカミをヒクヒクさせながら振り向くまでは。
清水 「あ、ほら、やっぱどっかで見た顔ほぎゃあああーーーーっ!!!!」
そして清水くん絶叫。
有名人は有名人でも、明らかに世界と次元の違った有名人が居たため、
彼は腰を抜かしてその場にへたりこんでしまった。
丘野 「どうしたでござる清水殿!敵襲───もしや敵襲でござるか!?」
丘野くんはノリノリだ。
そういや悠介の工房での簡単な実験で好成績修めたんで、結構喜んでたし。
なんか手裏剣投げる構えとか繰り返して辺りをキョロキョロ見渡してる。
殊戸瀬「……最近、忍者活劇にハマってたから」
彰利 「なるほど」
俺の心裡を察したのか、さりげなく教えてくれる殊戸瀬。
さすが奥さんだ。
殊戸瀬(……ところであそこの彼、ゼット=ミルハザードよね?)
彰利 (お───よく解ったね。しかも驚かんとは)
殊戸瀬(これでも突発的事態には慣れてるつもり。それより経緯、聞かせてくれる?)
彰利 (構わんよ。それに───うん、せっかくだ。あれだけの騒ぎを起こしたんだから、
今日を強引に暴露日にしちまいましょう)
殊戸瀬(暴露?……ああ、それってやっぱり───)
彰利 (そう。原中名物上映会でござる)
そうと決まれば話は早い。
俺は蒼空院邸に入ると受話器を手に取って、知り合い全員を呼ぶことにしました。
声 「むっ!そういえばお主は何者!?当然のように座っている故気づきもせなんだ!
正体を現すでござ助けてぇええーーーーーーーっ!!!!!」
……どこまでもノリノリな丘野くんの絶叫を聞きながら。
Next
Menu
back