───祝おう友よ!/ジャスタウェイの脅威───
【ケース369:弦月彰利/ジャスタウェイ】
───ややって、第二回があるのかなんて知らんけど第一回ヒロライン戦争は終わった。
一部ヒロラインに参加してなかったお方の参加もあったけど、
ヒロラインで鍛えた者達がそれぞれ全力で戦うというこの祭り、
ハッキリ言って被害がかなりデカかった。
結局悠介はゼットを本気にさせることなく敗北してしまい、ルナっちも頑張ったけど敗北。
最後に残されたオイラと夜華さんと中井出で頑張ってはみたけど、
相手がゼットとゼノとシュバルドラインじゃあね……。
オイラがゼット、夜華さんがゼノ、中井出がシュバルドラインって感じで戦ったんだけど、
いや強ぇえ強ぇえ。
かなり追い詰めることは出来たんじゃけどね、魔竜化された時点でアウトだった。
レベル4倍化を現実世界でやられて、どうやって戦えってんだコノヤロー。
夜華さんも頑張っておったんだけど、
戦い方の巧みさでは一歩を先んじるゼノには勝てんかった。
……中井出はギリギリで勝ってたけどね。すげぇよ彼。ほんにこの中で一番化けたよ。
まさかシュバちゃんに勝てるとは思わんかった。
勝った時、残りHP1だったけどね。
シュバちゃんが人型状態だったからってこともあるかもしれんけど、
竜状態だったら多分極光レーザーで消滅してたね、うん。
それでも単純に計算すると、今の中井出の全ての能力値を合わせた総合的破壊力は、
当時の悠介のグングニルに匹敵すると考えていいでしょう。
なにせ竜族の鱗に傷をつけてみせたんですから。
ああいや───ちょいとお待ち?
今のシュバちゃんは当時の弱体の要因だったイセリッ子の呪縛から解放されてるわけだし、
そう考えれば今の中井出はそれ以上に強くなっているってわけだ。
そのことについてスッピーにいろいろ訊いてみましたところ、
やっぱレベルアップにはスッピーたち精霊が存分に関わっておるらしい。
そりゃね、魂を鍛えただけで竜が倒せるなら誰だってそーする。俺だってそーする。
スッピーによれば、“ヒロライン”の世界自体がスッピーが何年かに一度のみ可能とする、
あの“不可能を可能にする力”の前借りみたいなもんなんだそうな。
つまり基盤を悠介が創造し、そこにスッピーとオリジンが力を加えたってカタチになるね。
だから凡人が竜と戦えるようになったり、
悠介が苦労して通った道を努力で通過できるようにもなる。
複雑な力を上昇させるのは大変だけど、単純に“ゲームキャラとして強くする”からこそ、
複雑なことを抜きにしてもパワーアップが可能だったんだとか。
力の前借りについては喩えみたいなもんだから、ほんに前借りしたわけでもなく、
蓄積していた力を軽く解放して不可能を可能にした、と。
まあスッピーや他の精霊の力があれば、
その力まで使わんでも普通にパワーアップぐらいは出来たんだそうな。
言ってしまえばスッピーとオリジンの力だけでも十分だったくらい。
そんなもんだから俺も“そういやオリジンの能力ってなんなの?”とか訊いたんだけどさ。
創造こそ出来ないものの、元素、根源を操ったりするような精霊で、
根源に関連するものごとにおいては右に出る者無しという精霊らしいよ?
ホレ、全ての存在には根源や元素ってもんがあるっしょ?それを操れるんだとか。
根源を作り変えたり捏造したり模造したり、まあようするに───
“人の強さには限界がある”、“人は竜には勝てない”とかいった基礎を作り変えたのだ。
レベルアップごとにその理がプレイヤーに深く染み込むようにゲームの根源を作り変え、
だからこそレベルアップの度に強くなれる。
ヒロラインはそういう世界なのだそうだ。
と、ここで話はスッピーサイドに戻るわけだけど───
スッピーの“不可能を可能にする力”は
オリジンの“世界の精霊の力”と合わせて使ったお蔭で、
かなりの安定を見せてヒロラインを作り上げているんだそうで。
お遊び感覚で始めたゲームが、今やとんでもないゲームに至っている状態です。
スッピーの“世界の精霊としての力”が“不可能を可能にする力”であることに対し、
オリジンの“世界の精霊としての力”は“根底を覆す力”。
いろいろ誓約はあるんだろうけど、
俺のデスティニーブレイカーなんかよりもよっぽど凄い力を持っておるらしい。
デスティニーブレイカーは一時的に事実を破壊する能力だけど、
オリジンのはまさしく根本。
根源の時点から覆してしまうのですよ。
例えば不治の病を持った人がおるとします。
彼の病気はどんな治療法でも魔法でも治せません。
生涯を5年しか生きられないでしょうと言われた人がおがったことにしましょう。
で、だったらどうするのかといえば───産まれる以前の根底から覆してしまうのです。
ヤツは健康な状態で産まれた。
病気もなにも発症しません。
生涯を100年生きるでしょう、と。
そう考えれば“変換”に似ておるんだけど、あれは“在り方”を変えるだけ。
花を剣に変えても花は花だし、水や養分が無ければ枯れるという根本は変わらない。
でもそれを覆すのが彼の“世界の精霊”としての能力なんだそうな。
もちろんスッピーと同じで、何年かに一度しか使えないペナルティ付きらしいけど。
まーそげなわけで。
オリジンの力も手伝って、まだ何年も何十年も先にならなけりゃ使えない、
スッピーの“不可能を可能にする力”を発動させることが出来たとか。
けど、強くなりてー!と願ったり叫んだりしただけで強くなれるわけでもござんせん。
不可能を可能にする力っていっても、オリジンの補助があっての発動。
本来ならまだ何十、何百年という力の蓄積が必要なのですから。
重要なのはプレイヤーの在り方。
そう、“努力すること”です。
努力し、よりゲームを楽しむことこそ強者への近道。
何故って、敵を倒せば経験値入るし、素材で武器の強化も出来る。
強化出来ればより強い敵が居るところへ行けるし、
そこでレベルアップしたり素材取ったりすればまた強くなれるということ。
つまり……今中井出が突き進んでいる道は一番楽しく、強くなれる道だということらしい。
精霊たちも、“あそこまで純粋に楽しんでもらえると作った甲斐がある”と喜んでおるし。
……そうなんだよねぇ、今のところ純粋にヒロラインの世界を楽しんでるのって、
実は中井出くらいなもんなんだよね。
他の皆様修行ばっかだし、俺もそんなだし。
だから必然的に中井出の手にはレアアイテムやウェポンが揃っていく。
至極当たり前なことだ。
他に取る人が居ないなら、冒険してる中井出が手に入れるのは当然だ。
その結果がまあ……あの驚きの強さであるわけだ。
まあ今の彼は───
中井出「グビグビ……」
ゼットにマジバトルを挑まれて一秒で瞬殺され、回復中なわけだけど。
ヒロラインの中でなら結構頑張れたんだろうけど、
現実世界での中井出のプラス要素って属性攻撃に枷が無いことくらいだもんな。
ヒロラインによって力が抑えられてないゼットと戦えばさ、そりゃあああなるって。
しかしそっか……レベル1700くらいで空界のドラゴン相等の強さなのか。
でもシュバちゃんがアレなら、
他のドラゴンは1800〜2000レベルくらいなんでしょうね。
確か黄竜王は四方の竜の中じゃあ一番弱い的なことを言っとった気がするし。
紫竜も合わせると、四方じゃなくて五方だけど。
で……あれ?じゃあゼプシオンのレベルってどのくらいなんだろ。
ゲームの中より現実の方が強いんだろうなぁ。
きっとゲームの中のゼプシオンがかなり強く感じられたのは、
自分が現実世界と同じく、本来の力を出せなかっただろうし。
彰利 「そげなわけで、えー。はいみんなちゅうもーく」
憩 「まだわたくしの話が終わっていないですわ!」
彰利 「なにキミまだ居たの?」
憩 「きちんと説明されるまで納得出来るわけがないですわー!!
いったいどうなっていますの!?お父様とお母様が生きていたなど!!」
ちなみにお嬢はまだ残っております。
理由は今言った通り故らしいんですがね、納得したところでほんに帰るのかどうか。
閏璃 「実はそこで泡を噴いている中井出博光提督には死者を蘇生させる能力があってな」
憩 「そうなんですの!?」
閏璃 「そうなんだ!
貴様は知らないかもしれんがそいつこそがこの世に舞い降りた絶対なる神!
それ故にここに居るごんだくれの荒くれ者たちが従っているのだ!!」
憩 「なんていうことですの……!?神が本当に───」
閏璃 「ちなみに全部ウソだ」
憩 「馬鹿にしてるんですのっ!?」
遥一郎「いや、そんなことはない。何故なら馬鹿はこいつだけで十分だからだ」
雪音 「ギムゥーーーッ!!馬鹿って言ったほうが馬鹿だもん!!」
閏璃 「大丈夫だ!そうだとしてもお前が馬鹿であることに変わりは無い!」
雪音 「ムキィーーーッ!!しょーぶだぁーーーっ!!」
閏璃 「ジャンケンポン!」
雪音 「え!?あわっ!?」
閏璃 「はいあっち向いてホイ!よっしゃ勝ったァーーーッ!!」
雪音 「待ってちょっと待って!いきなりなんてずっこいよー!」
閏璃 「勝負を仕掛けられて俺が受けた!どこにズルさがある!」
雪音 「じゃあ次はべつの種目で勝負!これなら文句ないよー!」
遥一郎「じゃあこの計算問題な。先に正解したら勝ち」
閏璃 「答えは698722!!」
遥一郎「ほい正解」
総員 『このザコめ!!』
雪音 「ホギッちゃんひどいよぅ!
ここは友達としてわたしに有利な問題出してくれるところでしょー!?」
遥一郎「じゃあ今度はお前自身についての問題だ。それでいいか?」
雪音 「う、うん!それならよゆーだよー!」
遥一郎「じゃあいくぞ。“観咲雪音”!イコール!?」
総員 『馬鹿!!』
遥一郎「はい正解」
雪音 「ホギッちゃんひどいよぅ!!」
遥一郎「いや……答えたヤツもひどいとか全然思わないのかお前は」
彰利 「………」
収集がつきません。
せっかくこの僕がステキなことを話して聞かせようとしたっていうのに。
彰利 「やい聞けコノヤロー!今からオイラがステキな話を聞かせるから!」
鷹志 「とかなんとか言って、どうせろくでもねぇことだぞ絶対」
閏璃 「大体てめぇが改まった時、一度でもまともなこと話したことあるかよコノヤロー」
総員 『そうだこのクズが!!』
わあ、なんだか凄い言われよう。
平気でみんな不良っぽい言葉使ってるし。
態度も思いっきり不良のソレですよ。
丘野 「というわけでなんでござる?」
彰利 「ただ罵倒したかっただけなの!?あ、あー……ま、まあいいや。
えーとね?ほら、これからパーチーするわけじゃないですか」
藍田 「そだな。プレゼントもOKだし準備も万端。
提督が復活中で晦が修行中で空き缶さんがその付き添い、
ってこと以外は大丈夫だと思うぞ」
彰利 「あらまあ……彼ったらまた修行?」
藍田 「なんでも力不足の所為で、
体の中に収納してる幻獣やら召喚獣やらが出せないらしい。
もちろんディルゼイルも例外じゃないらしくて、
解放するための修行をするんだとか」
なぁにやってんだか……。
けどまあやっぱりオイラの知らんところで悠介もいろいろやってたみたいだね。
もちろん我らもグラウベフェイトー山でいろいろ修行することで、
様々な力をつけていっておるわけだけど。
彰利 「まあともかくですよ。パーティーする前に、ちと勢力を確認しておきません?」
藍田 「勢力?ヒロラインのか?」
彰利 「そうそう。オイラはちと故あって明かせない勢力に居るわけですが、
今のところは修練者勢力ということで」
藍田 「だったらここに居る大半がそういうことになるだろ」
彰利 「グムウ、そりゃそうなんですがね」
ナギー『わしはヒロミツと一緒がいいのじゃ』
シード『僕ももちろん父上と同じ勢力だ』
麻衣香「うーん……わたしもヒロちゃんと同じ、って言いたいところだけどね。
今は修練者勢力ってことになるのかな」
ナギー『それを言うならシードもそうなるのじゃ』
シード『う……そ、そういうことになるのか……』
ナギー『安心するがよいのじゃシード。
ヒロミツのサポートはわしがきちんとするのじゃー』
彰利 「いやほんと……随分と懐かれたもんだねぇ中井出」
藍田 「あまりろくな目に遭わされてないと思うんだけどな……」
話には聞いたことがあるけどね……闘技場の食堂で時々元提督軍が話すこととかで。
聞けば思い切り容赦無用の接し方をしているそうじゃないですか。
原中名物を実践したりフェニックスドライバーやったりと。
よくそれで懐いたままでいるもんだ。
彰利 「で、ゼットや?キミってば何処の勢力なん?」
ゼット「知らん」
彰利 「即答!?」
ゼット「何処の勢力かなんてものは俺には関係がないな。
セシルが居て晦悠介と敵対している場所。そこが俺の居場所だ」
彰利 「………」
藍田 「いや……なんつーか……」
総員 (晦も厄介なヤツにライバル視されたもんだなぁ……)
もはやそれだけでも、これからの苦労が目に浮かぶようです。
彰利 「まあ彼について苦労がどうたらは今更ということで」
藍田 「お前……素直にひでぇなぁ……」
彰利 「ノーノー、苦労が無ければ彼は強くなれませんでした。
だからきっとこれからも強くなる。僕はそう信じてる!」
来流美「それってただ晦くんに面倒ごとを押し付けたいだけなんじゃないの?」
彰利 「……チガイマスヨ?」
藍田 「うわっ!核心だこの野郎!!」
丘野 「おのれこの最低親友めが!滅!!」
彰利 「お、おわぁ〜〜〜っ!!」
適当に答えただけで、なんと周りの皆様が瞬時に敵に!
やがてこの場で巻き起こる空前絶後の妖結界バトル!
包囲も定礎も無しにただ俺という妖を皆で囲んでボッコボコにするという、
なんとも物理的で痛々しい滅が始まった!
彰利 「ひ、卑怯だぞてめぇら〜〜〜っ!」
遥一郎「やかましい!大体お前はなんでも晦に押し付けすぎなんだ!」
田辺 「この痛み!アンナの痛み!」
彰利 「誰!?」
いやしかしそりゃあまあなんでも押し付けすぎだってのは知っておりますがね。
しゃあないでしょう、人には向き不向きがございます故。
彰利 「では聞こうッッ!お嬢!貴様の言いたいこととやらを!!」
憩 「えわっ!?な……あ、なた……今あそこで……!?」
総員 『オワッ!?またいつの間にか等身大マスオ人形に!?』
フフフ、擬態さ。
オイラくらいの猛者ともなると、
黒をマスオに変えてスケープゴートにすることくらい容易い容易い、クォックォックォッ。
そういやさっきのバトルの前に中井出がマスオ人形くれって言ってきたけど、
上手く使えてたんかな。バックパックに入れるなんて無茶してたけど。
藍田 「て、てめぇ〜〜〜っ!お、俺達の話はまだ終わってねぇぜ〜〜〜っ!」
彰利 「落ち着きめされい!そのことを今更どーのこーの言ったところで無駄でしょう!」
総員 『まあ……弦月だしなぁ……』
彰利 「ぎぃいいいいいいいい……!!納得されたらされたで腹立たしいいぃい……!!」
どうせあたしゃあ責任感とかありませんよ。
解ってますよもう。
彰利 「して?結局キミは何を以って納得という形に至るのかね?」
憩 「……こうしてお父様とお母様がいらっしゃるんです、
亡くなっていらっしゃらなかったことは信じますわ。
けど何故ですの?何故カンパニーを捨ててまで……」
丘野 「決まっているでござる!!サンッ!ハイッ!!」
総員 『その方が!!面白いからだッッ!!』
丘野くんの合図に、皆々様が声を高くして唱える!
もちろんオイラも叫びました!名誉ブリタニア人も一緒になって絶叫です!
憩 「お……も、しろ……!?たった……たったそれだけで、
あそこまで大きくしたカンパニーを捨てると……!?」
丘野 「だってカンパニーつまらんでござる」
総員 『いきなりぶっちゃけたぁああーーーーっ!!!』
丘野 「目を開ければ仕事仕事、たまの休みにも仕事が舞い込んできて、
それが終われば会見だの挨拶だのマスコミがどうだの、
常時パパラッチに見張られてるし、
スクープがどうたらでプライベートも落ち着けない。
拙者はね、憩。そんな窮屈な世界に心底嫌気が差したのでござるよ……」
憩 「……だから……捨てた……?お、お母様っ!?お母様はどうお考えでっ!?」
殊戸瀬「はっきり言うわ、憩。あの世界に我ら原中が望む楽しみなんて微塵にもなかった」
総員 『ホントにハッキリ言ったぁーーーっ!!』
とことんまでに原中染まりの人々です。
面白くなかったからといって大企業を捨てる……物凄い根性。
まあ空界が企業とは無縁の世界だからこそ出来ることですな。
地界に住む限りはそう簡単に捨てられるもんじゃあねぇや。
それでも面白さを選んで捨てそうなのが怖いけど。
憩 「なんなんですの……!?さっきから聞いていればハラチュウハラチュウと……!
面白さがそんなにも大切ですか!?」
総員 『当たり前だ!見縊るな!!』
憩 「わたくしはお父様とお母様に聞いているんですの!!」
中井出「いいや黙らん!面白さを馬鹿にされてはこの博光、黙ってられん!」
藍田 「オワッ!?面白さへの罵倒を前に提督が復活した!」
閏璃 「さすが提督だ!」
中井出「いや俺キミに提督って呼ばれる筋合いが無いんだけど!?」
岡田 「さあ提督!この憐れな悪魔に魂の救済を!」
島田 「こいつ面白さを馬鹿にしやがったんだ!」
田辺 「てーーーいーーーとくっ!!てーーーいーーーとくっ!!」
猛者どもや一部の名誉ブリタニア人が、
まるでジャイアンにすがりつくスネちゃまのように中井出を囃し立てる!
というか既に悪魔扱いである。
中井出「いいかお嬢!この世は腐っている!
確かに金は必要だが、そこに娯楽が無ければ人は折れてしまうのだ!」
憩 「いいえ違いますわ。娯楽があるからこそ人は曲ってしまうのですわ。
そもそもそういった誘惑が無ければ、人は仕事に身を費やす他なくなるでしょう」
中井出「仕事だけの人生になんの面白味があるかバカモン!!
貴様は休憩も無しに仕事をしろと言っているようなものだぞ!!」
憩 「その通りですわ。選んだ仕事がそうであるなら、娯楽など忘れて働くべきです。
それを娯楽娯楽、面白味面白味と───恥を知りなさい」
中井出「普通の女の子になりたいって言ったヤツに言われたかないわ!!」
憩 「なっ……!それとこれとは話が別ですわー!!
今のわたくしはカンパニーの総帥!そのわたくしとして今は話しているんですの!
それをどうのこうのと難癖つけてくるのは不愉快です!」
中井出「おー!だったらこっちだって原中の猛者として面白味を追求してんだコノヤロー!
それをどうのこうのと難癖つけてくるのは不愉快です!」
憩 「真似をしないでくださいます!?」
中井出「断る!!」
憩 「〜〜〜……!!きいいいいっ……!!!」
藍田 「ジョワジョワ〜〜〜〜〜〜ッ!!無理だぜお嬢、諦めたほうがいい」
丘野 「ヌワッヌワッヌワッ、
我らが提督に面白さへの文句で勝とうなんざ無茶ってもんだぜ〜〜〜っ!!」
藍田 「少しは慎めサンダージョワジョワ」
丘野 「自分だって……」
憩 「お父様っ!!少しは娘の助けに回ろうとは思いませんの!?」
丘野 「馬鹿野郎!俺は原中が猛者、丘野眞人ぞ!?
その俺が何故面白味を小馬鹿にする者の助けが出来よう!
たとえ娘であっても娯楽を馬鹿にし童心を忘れるタコなど知らん!!」
総員 『このクズが!!』
憩 「そんなっ……わたくしはっ……!」
おーおー、一方的な展開になってまいりました。
つい横から口出ししてしまいそうになりますな。
ていうか口出ししようとしたら夜華さんに止められました。
なんでも、こんな状況を自分も味わったことがあるとかなんとか。
……つーことは、ああ、アレですか。
中井出「わたくしは!?わたくしはなんだ!さあ言え!言ってスッキリしてしまえ!
貴様がさっき言っていたことは全てウソか!?
カンパニーのことなど抜きにして、
普通の女の子に戻りたいのではなかったのか!」
丘野 「ちなみに拙者もしっかり聞いていたでござるから、
今更後戻りは出来ねーでござるよグオッフォッフォ」
殊戸瀬「さあ憩……あなたはどうしたいの?」
憩 「わ、わた、くしは……!」
殊戸瀬「ちなみに自分の意思じゃなく、
わたしたちのことがどーたらこーたらって理由でカンパニーを続けるならシメる」
憩 「シメ!?」
中井出「そう!重要なのはココ!ココね!自分の意思!ここテストに出るよ!?」
出ません。
憩 「自分の意志……わたくしの……」
丘野 「思えば憩には娯楽というものを教える暇がなかったでござるなぁ……。
連日連夜仕事づくめで遊んでやることも出来なかったでござる」
憩 「そんな……わたくしは仕事をしているお父様が大好きでしたわ!
たとえ遊んでくれなくても、
それがわたくしたち家族を守るための仕事だと解っていましたから!
だからわたくしはそんなお父様やお母様を尊敬して───!!
それなのに……何故カンパニーを捨てるなどとおっしゃるのです!
わたくしの夢は!
早く大人になってお父様とお母様のお手伝いをすることでしたのに!!」
丘野 「?……拙者の夢は、憩や鼎に伸び伸びと成長してもらうことだったでござるが。
そのために頑張って働いていたし、カンパニーを捨てたのも、
堅苦しい世界から子供たちを解放するためのことだったでござる」
憩 「そんなっ……!」
殊戸瀬「親の仕事を必ず継がなきゃいけないなんて誰が決めたの?
もしそんなことが常識なっているなら、わたしたちはまずその常識から壊すわ」
丘野 「好き勝手に生きてみるでござるよ、憩。
拙者たちはむしろ、そんな娘を応援するでござる」
憩 「そんな……そんなこと……おっしゃらないで……ください……!」
総員 『断る!!』
憩 「だからあなたがたには言ってませんわっ!!黙っててくださいません!?」
総員 『さらに断る!!』
憩 「ぎ、ぎぃいいいいいいいっ!!!!」
お嬢がキレた。
気丈なお嬢も原中にかかればこんなもんか……。
夜華 「ようするに、必要なのはきっかけなんだろうな。
人を散々馬鹿にして、それがどんなものでもいいからきっかけを作る。
貴様がよく使っていた手だ、彰衛門」
彰利 「いやまあ……そりゃオイラも原中の出だし……」
しかしそうか、猛者どもはそげな意志のもとにお嬢を馬鹿にしまくってたのか。
……いや、素で馬鹿にしてた部分もかなりあると思うけどさ。
丘野 「カンパニーなんて、スコーンと誰かに譲ってしまうでござるよ。
それで好き勝手に暮らすでござる。
住む場所もあんな大きな場所などやめて、
もっと小さな場所で暮らしてみるでござる。
そうでござるなぁ……閏璃殿、
友の里に空いている部屋は腐るほどあるでござるね?」
閏璃 「おお。売るほどあるぞ。従業員用に創ってもらった部屋もある」
丘野 「それはいいでござるな。そこに住んでみるのもいいでござる」
憩 「そんな……!」
丘野 「金持ちでは見えない世界がきっとそこにあるでござる」
殊戸瀬「そこで馬鹿者どもに囲まれていれば、
今よりもっと素直に感情を外に出せるようになるわ。
どこぞの頑固者だってそうだったんだから」
彰利 「あの……そりゃ俺と悠介のことですか?」
まあいいけどね……感情がなかったのは確かだし。
丘野 「では決まりでござるな!馬の骨にはカンパニーは任せられんでござる!」
中井出「おお!ならばどうする!?」
丘野 「レイヴナスに譲るでござる!どどーんと全部!」
憩 「なっ……」
総員 『なんですってぇえーーーーーーっ!!?』
憩 「正気ですかお父様!よりにもよってレイヴナスどもに───!!」
丘野 「その考え方がいかんのでござるよ!
レイヴナスは大企業の中ではかなり信頼出来る会社でござる!
予てよりの遺恨を度外すれば、これほど信頼出来る場所はないでござる!」
凍弥 「んあー……
この時代のカンパニーには関係ない俺達が言うのもなんだけど……大丈夫か?
今の時期当主候補っていったらカフェインさんだろ?
しかも候補であって、まだ当主ってわけじゃない。
それなのに話が通るかどうか……」
丘野 「恨み言を言っているのはたった一人でござるよ。
他の皆様から見れば、もう遺恨なんてどうでもいいのでござる。
むしろ許されるならいがみ合いもしたくない筈でござる。
レプリキュートヒューマンに関する情報は全てデリートさせたでござるし、
そのことについて某女性社員にも深く謝罪したでござる。
……拙者たちはそのことには関係無いと、あっさり言われてしまったでござるが」
ほへー……随分あっさりとしたお人なのか。
だったらカンパニー自体を許してあげりゃあよいのにね?
彰利 「だったらもういがみ合いはやめませう、とか言えないのかね」
丘野 「自分が忘れてしまったら、
巻き込まれて死んだ人は誰にも思い出してもらえないから、
ということらしいでござる。
きっと、何かを憎むことで忘れないようにしているだけなんでござるよ」
グムー、なるほど。
まあ、簡単に忘れられるほど楽に出来てるなら、人間苦労しねぇよね。
忘れる気が無いなら、それならそれでいいんだろうし。
丘野 「さ、どうするでござる?拙者たちはもう譲る気満々でござるが」
殊戸瀬「じーさまたちのことなら気にしないでいいわ。
権利を譲られる時、好きにしていいとまで言われてるから。
その言葉が“殊戸瀬”を継がせる者が出していい条件だから」
憩 「たった……それだけ……?」
丘野 「そうでござる。拙者もたまげたでござるよ。
義父殿は拙者が睦月とくっついたことを知るや、
簡単に総帥の座から降りたでござる。
しかもまだまだ企業について未熟な拙者に笑ってみせると、
“潰れてもいい、好き勝手にやりなさい”とだけ言ってみせたでござる」
憩 「それで……お爺様は今……」
丘野 「静かな山奥に別荘を建てて、隠居して以来ずっとそこで暮らしてるでござる」
殊戸瀬「そういえば憩も鼎も会ったことが無かったわね。
じーさまはあれでかなり奔放者だから」
彰利 「そうなん?」
丘野 「本人曰く、もう二度と事業なんてやらん、だそうでござる。
これからは自由気侭に生きるんだー、
と叫んだのは一流企業の中ではもはや伝説と化しているでござる」
総員 『うわぁ……』
すごいじーさまも居たもんだ。
ていうかじーさまっていっても殊戸瀬のパパりんなんじゃよね?
やっぱ仕事づくめの毎日に飽き飽きしてたんかな。
懸命に稼いでも生きていくだけで精一杯の世の中だもんね、
そりゃ自由に走りたくもなるか。
丘野 「では答えを聞こうでござる。
憩、貴様は自分の意思で、今なにを思っているでござる?」
憩 「……お父様は馬鹿ですわ」
丘野 「な、なんと正直な!」
ほんとにもう。
憩 「おじいさまも、好き勝手に生きろなんて継承文句をつけた方もみんなっ……!
そんないい加減な上会社に雇われている人の身になったことがありますか!?
そんないい加減な社長が何処に居ますの!?
それでももし“じゃあカンパニーを潰そう”なんて言ったら、
いったいどれだけの人が路頭に迷うとお思いですの!?」
丘野 「知らんでござる!!」《どーーーん!!》
憩 「なっ……!?お父様までそれをおっしゃるのですか!?」
丘野 「提督殿が言ったでござろう、大切なのは自分の意思だと。
自分の意思も持たないで他人がどうのと言っている社長のほうが、
ちゃらんぽらんで居るよりよっぽど危ないでござるよ。
そういう者はいざという時に対応できずに折れてしまうでござる。
いいでござるか憩。拙者はなにも社員を守りたくて事業を継いだのではござらん。
睦月と一緒に居たくて始めたのでござる。無茶も我が儘も承知。
それでも、やったこともない事業に手を染めてでも一緒に居たかったのでござる。
きっかけなんてものはそんなものであり、
拙者の意志は睦月とただ一緒に居たかったというだけ。
そこには社員の命運もカンパニーの未来も、
なにも……そう、な〜んにも含まれていなかったのでござるよ」
憩 「そんな……!それではたとえ未熟が故に没落しようが、
お母様と一緒に居られればそれだけでよかったと───!?」
丘野 「そのとおりでござる。大体未熟者だった拙者に、
睦月と社員全員を守るなんて理想が現実化できるわけがなかったでござる。
それに見ず知らずの他人を守るなんて器用な真似も、
出来るだなんて思わなかったでござるしね。
人一人が出来ることなんて些細なことでござる。
全部を守るなんてことが出来るわけでもないし、
社長が社員と同じ仕事が出来るかといえばノーでござる。
結局社長なんて存在が居なくても会社は社員の手で動いているし、
社員は自らを実績で守っていくものでござる。理解するでござるよ憩。
会社は社長が守っているのではなく、社員全員が守っているのでござる」
憩 「…………っ……」
丘野 「まあ、そりゃあ社長にしか出来ない仕事というのはいっぱいあるでござる。
その所為で帰りも遅くなったし遊んでやれもしなかったでござるが、
それでも仕事をすればするほど、
自分一人じゃ会社を大きくすることなんてできないと理解したでござる。
大事なのは人の輪。信頼出来る者と協力して何かを成し遂げること。
それが解ったからこそ、
拙者はもう会社を捨てて仲間とともに走ると決めたんでござる」
憩 「……お母様も、そうなのですか……?」
殊戸瀬「イエス」
総員 (なんで英語……?)
コクリと頷く殊戸瀬に、静かなツッコミが入った瞬間だった。
憩 「本当に……本当に譲ってしまっていいのですか……?
だって、あの会社はお父様とお母様……それにお爺様が継続してきた……!」
総員 『私は一向に構わんッ!!』
憩 「黙れと言っているのが解らないのですかあなたがたは!!」
総員 『キャーーーッ!!?』
怒られてしまった。
丘野 「拙者は構わねーでござる。
さっきも言ったように、拙者の夢は貴様と鼎が健やかに伸び伸びと暮らすこと。
それはあんな広いくせに窮屈な世界では味わえない世界でござるよ」
殊戸瀬「広く狭い世界より、狭くても広い世界。
わたしたちはそれを最後に贈らせてもらう」
憩 「狭くても……広い世界……?」
彰利 「説明しよう!広いくせに狭い世界ってのはようするに、
部屋が広いくせに見える視界は狭いという世界!
狭くても広い世界ってのは、部屋が狭くても見れるものが多い世界のこと!
金持ちってのは案外行動が限られてしまいがち!
周りにうざったいほどのスクープ求めのタコどもがおるからね。
何か問題起こせばギャアスクープ!キャア特ダネ!とか言って、
散々付け回して新聞にデカデカと載せたりニュースにしたり!」
総員 『そんな世界はクソ食らえ!!』
彰利 「この世界は腐っている!!普段はプライバシーがどうとか唱えているクズどもも、
結局は新聞やニュースを見て話題のタネとかにしてやがる!!
俺ゃ逆にそういうやつらがプライベートを載せられたりしたら
どういう反応するのか知ってみてぇくらいだわ!!
窮屈な世界など捨ててしまえ!
そして友の里の手伝いでもしながら細々と暮らすとよかろ!OKね!?」
閏璃 「俺はべつに構わんが」
由未絵「わたしも構わないよ」
鷹志 「俺も」
真由美「わたしも」
うむ!満場一致!!
彰利 「さあどうするねお嬢!」
憩 「けどわたくし……料理などやったことがありませんわ……」
彰利 「うむそうでしょうねぇ。しかしお嬢?
同条件でカンパニーの跡取りとして認められたキミの親父は、
そんな時どうしたと言ったね?」
憩 「───!」
彰利 「そりゃキミにゃあ頼る当ても好いている相手もおらんでしょう。
しかしキミにゃあ“そうなりたい”という夢があるッ!
ならばそれを拠り所にして無茶をしてみるのです!」
憩 「とりあえずあなたに指図はされたくありませんわ」
彰利 「ヒッ───ヒドイ!なんてヒドイ!!」
涙目にまでなっていたお嬢にキッパリと言われた言葉は、
僕のピュアハートをまるで黒ヒゲ危機一髪のようにザックザクに突き刺しました。
あれってさ、危機一髪もなにも、刺してる時点でアウトだと思うんだよね。
丘野 「では決めるでござるよ。憩はどうしたいでござる?」
憩 「───……はい。失礼を承知で告白いたしますわ。
わたくしは……一度、その狭くても広い世界を見てみたいですわ」
丘野 「二言はないでござるな?」
憩 「もちろんですわ」
カチッ。
彰利 「ほんに二言はねぇのね?たとえ身分が低い相手に料理を教わることになろうとも、
そうじゃねぇだろうがコノヤローとか言われようが耐えてみせると」
憩 「ぐっ……そ、それは嫌ですわ……!お、お父様っ!わたくしは───!」
中井出「ちなみにさっきの言葉はきちんと録音させてもらった」
憩 「ななぁあーーーーーっ!!?」
丘野 「同じくでござる」
憩 「お、おおぉお父様までっ!?」
藍田 「なにっ!?お前もかっ!?」
岡田 「俺だけじゃ……俺だけじゃなかったんだなっ!?」
総員 『友情だ……』
憩 「な、な、ななな……!」
ようするに原中全員にしっかりと音声を拾われたということでしょう。
愚かな……覚悟も無いのに頷くからそげなことになるのだ。
憩 「お、お父様!わたくしはっ……!」
丘野 「───」
カチッ。
声 『二言はないでござるな?───もちろんですわ』
憩 「うぐぐっ!お、お父様卑劣ですわ!このような手段で娘を……!」
声 『《キュルルッ》もちろんですわ。《キュルルッ》もちろんですわ。
《キュルルッ》もちろんですわ。《キュルルッ》───』
憩 「っっきぃいいーーーーーっ!!解った解りましたわっ!!
やめればいいんでしょうやめれば!ええもう譲ってさしあげますわよ!!」
総員 『イエーーーッ!!原中イエーーーッ!!』
憩 「くぅううっ……!!」
真顔で巻き戻しと再生を繰り返す丘野くんを前に、とうとうお嬢が爆発。
実の娘を全力でからかうとは、さすが丘野くんといったところですなぁ……。
憩 「ただしっ!ただしですわっ!あの女性社員にわたくしとお兄様は
事件とは関係無いということをしっかり言っておきなさい!
これでまだ恨み言を言われるなら逆恨みもいいところですわっ!!」
浩介 「うむ、預かろう」
浩之 「我らに任せておくがよいわ。全て同志がやってくれる」
凍弥 「俺もやめたくなってきたかも……」
浩介 「なに!?そんなことは神が許さんぞ同志!!」
浩之 「貴様にやめられたら我らが大変ではないか!!」
凍弥 「お前らってどこまでもとことん正直だよな……」
むしろ小僧はもう泣きそうだった。
大体この時代と小僧どもは関係ないのにね。
そこんところはまだお嬢に話してなかったからしゃあないっちゃあしゃあないんだけど。
中井出「うむよし!では物事も段落がついたところで───」
憩 「お待ちなさい!」
ざわ……!
いざパーチー!といったところで急に叫ぶお嬢。
なんですか急に……
憩 「まずわたくしに部屋を用意するのが先でしょう!」
彰利 「え……なんで?」
憩 「何故って……わたくしはこのパーティーには関係ないでしょう。
そんなわたくしがここに居ても、居心地が悪いだけですわ」
彰利 「ああなるほど確かに。
では───これガキャア、このお嬢を友の里へ案内しておあげ?」
柾樹 「ガキャアって……俺?」
彰利 「そうだよー、コノヤロー。つーか愚息もその仲間も、一緒についてってやれー」
豆村 「いや俺べつに友の里に用ないし」
刹那 「俺も」
彰利 「用なら今俺が作ってやったろうがー、コノヤロー。
いいからとっとと行ってこーい」
柾樹 「俺はいいっすけど。お前らどうする?」
豆村 「はぁ……まあいいけどさぁ。地獄に落ちろこの野郎」
刹那 「大人だからって子供ナメんじゃねーぞこのヒゲ!」
彰利 「あー解った解った、お小遣いあげるから騒ぐなクズども」
刹那 「ヒ、ヒゲに対するツッコミ無しでしかもクズ扱い!
しかもなんだこれ!?小遣いとかいいながらただのコケシ!?」
彰利 「コケシじゃねぇ。ジャスタウェイだ」
刹那 「ジャスタウェイ!?なにそれ!!」
彰利 「なにそれってお前……
ジャスタウェイはジャスタウェイ以外の何物でもねぇだろうが」
刹那 「だから!そのジャスタウェイがなんなのかって訊いてんですよ俺はっ!!」
ああもうやかましい子ねィェ〜。
ジャスタウェイがなにかって訊かれたらオマエ……
ジャスタウェイだとしか言えるわけねーべよ。
丘野 「いいからホレ、この睦月特製ジャスタウェイを
カンパニーの何処かにでも投げてくれば全て解決でござるから。
憩がやめるとか言わずとも丸く収まるでござるよ」
刹那 「そ、そうなのか……?」
憩 「それは本当なんですの?お父様」
丘野 「その通りでござるよ。ただし行くのはキミ、柾樹だけでござる」
柾樹 「俺……?」
丘野 「そうでござる。他の者は皆、憩を送り届けたらここに戻ってくるでござる」
刹那 「よし行ってこい柾樹っ……!」
豆村 「ジャスタウェイはお前に任せるぜっ……!」
柾樹 「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!こんなのどうしろってんですか!?」
彰利 「近場のエレクトロニクスにヒョーイと投げてくるだけでいいのさ。
その際にはえーっと……ホレ、これを被っていきなさい」
コサ、と宝具を渡す。
と、柾樹はなんだかとんでもなく絶望的な表情に包まれた。
柾樹 「これって……ただの紙袋じゃないですか……」
彰利 「失礼な!校務仮面と呼べ!!」
そう、穴開き紙袋という名の宝具である。
校務仮面にとっては命よりも大事なものさ。
というわけで半ば強引にガボサァと被せ、暴れようとするガキャアを押さえつける!
校務仮面「ちょっ……なにをっ!」
彰利 「よーく聞けガキャア!これを被ったが最後、絶対に人前で外してはならん!
校務仮面の素顔は絶対に秘密なのだ!
まあそう言っても俺の黒で作ったもんだし、
ジャスタウェイをカンパニーに投げてからここに戻ってこないと、
絶対に外れんようになってるけどね」
校務仮面「鬼ですかアンタ!!」
彰利 「ほっほっほ、そうそう、その調子で元気よく感情を表に出そうね?
そしたらおいちゃん、キミにとって大切なプレゼントあげるから」
校務仮面「プレゼント……?」
彰利 「なんだ?って聞くのはいかんことです。
知りたければジャスタウェイを投げてきんさい」
言って、コシャリとジャスタウェイを握らせる。
空き缶の口を完全に開き、ボールが半球見える程度まで押し込んで目と口を描き、
さらに缶の脇に割り箸のようなものをつけただけのようなこの物体、
実は───ジャスタウェイである。
校務仮面「いやっ、だからっ……ジャスタウェイっていったい……」
彰利 「いったいってそりゃ……あれだよお前。ジャスタウェイに決まってんだろうが」
校務仮面「………」
あ。頭抱え出した。
校務仮面状態だから非常に馬鹿っぽく見える。
校務仮面「ああもう解りましたよ。行ってきますよぅ……」
憩 「わたくし、あなたとは行動したくありませんわ」
校務仮面「俺だって好きでこんなの被ってるわけじゃない!!」
あ、怒った。
その調子その調子。
彰利 「さ、じゃあこちらもさらにパーチーのグレードを上げるために頑張りましょう」
総員 『おうさーーーっ!!』
どんよりと影を背負ったように上半身を折りながら歩いてゆくガキャアと、
普通に歩いてゆく愚息と刹那とお嬢。
平々凡々に生きたガキャアよ、世という大海を知るがいい。特にガキャア。つーか柾樹。
中井出「よっしゃあやるぜーーーっ!!歌えぃ野郎どもぉーーーっ!!」
総員 『おうさぁーーーーっ!!』
中井出「月夜の晩にィ♪」
総員 『ヤイサホォーーーーーーッ!!!』
中井出「錨をあげろぉ♪」
総員 『ヤイサホォーーーーーーッ!!!』
中井出「嵐の夜にィ♪」
総員 『ヤイサホォーーーーーーッ!!!』
中井出「帆を張り進めぇ♪」
総員 『ヤイサホォーーーーーーッ!!!』
憩 「うるさいですわっ!!なんですのその歌は!!」
総員 『そんなことは我らが訊きたいわクソゲバル!!』
憩 「クソゲバル!?」
……ちなみに。
その日の速報ニュースにて、
近場の殊戸瀬エレクトロニクスの店で爆破テロが起こったことが知らされた。
何が原因って、帰って早々激怒しながら罵声を飛ばす柾樹以外に原因は無いんだけど。
ジャスタウェイとはコケシ型爆弾であり、投げたショックで爆発するステキな物体さ。
どう見てもオモチャにしか見えない上に愛らしい表情なので、
誰が爆弾と予想出来ようか。
インターネットで検索してみれば、
同盟の一つでも二つでも簡単に見つかるくらいの知名度。
それを知らなかったガキャアどもが悪いのさ。多分。
なんにせよ爆弾事故が起こったということを理由に、
黒で象ったお嬢と坊ちゃんを事故現場に設置。爆弾事故で死亡した説と、
偽造した遺言書により全ての権限をレイヴナスに譲ったのです。
そりゃ、最初こそは“事故なのに遺言!?”と妙な話が流れてたけど、
金持ちのお嬢だから自分に何かがあったときのことも考えていたんでしょう、
という考えで纏まったらしい。
ニュースとなれば騒ぐだけ騒ぐくせに、やっぱいい加減なもんである。
そんなわけでギャーギャー喚く柾樹の首をゴキャアと折ることで黙らせ、
僕らはようやっとパーチーを開始する状態にまで至ったのでした。
え?ああ、ちゃんと鼎ぼっちゃんも友の里に送ってあるし、
事情も話したからダイジョブヨー。
おお素晴らしきかなジャスタウェイ。これも全てジャスタウェイのお蔭さ。
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