───祝おう友よ!/喧噪は深夜に眠り早朝に怒号へ変わる───
【ケース371:晦悠介(再)/ストレンジャーザンパラダイスロスト】
そうして───ようやく、と言ってしまっていいのか。
祝いの場は終了を向かえ、屋敷には静寂が訪れていた。
静寂って言うのはちょっと違うな、
ところどころで酔いつぶれて寝ているやつらが寝言とか言ってる。
永田 「お得でっせ……」
岡田 「おぉお……!吸われる……!吸われる……!吸われる……!」
毎度思うんだが、あの“お得でっせ”ってのはなんなんだ?
中井出「コココ……!我を前に泥酔溺眠とは愚か……!」
彰利 「マニマニマニ……!一時の娯楽を前に満足して眠るとはなんと愚か……!」
で、そんな眠ってるやつらにせっせと悪戯書きをしてゆく彰利と中井出。
こいつらは何処まで己の楽しみに真っ直ぐなんだろうか。
悠介 「お前らなぁ……少しは片づけを手伝おうとか思わないのか?」
彰利 「馬鹿ッ……!声を小さくっ……!」
中井出「起きられては困るのだっ……!───彰利一等、そっちはどうだっ……!」
彰利 「パゴアパゴア……!飯田のフェイスにゲバルアートを完了……!」
中井出「コココ……!こっちは瀬戸のフェイスにゲバルアートを……!」
彰利 「お、おおお……!
躊躇わず率先しておなごのフェイスにゲバルとは……!さすが提督だぜ……!」
……いろいろツッコミどころ満載である。
どうしてくれようか。
ああちなみに、ゲバルアートとは、
顔にストリートファイター2で言うエドモンド本田のペイントみたいなものを書くことだ。
……そういえばエドモンド本田の顔のペイントにはなにか意味があったんだろうか。
日本晴れ?
悠介 「あんまりやってると報復がデカいぞ」
中井出「なに言ってんだ、それを恐れちゃ今を楽しめないだろう」
彰利 「それでもやっていいことと悪いことは区別してるんでご安心を。
……お、夜華さん発見。
そういやスピリタス飲ませたらひっくり返って気絶したんだっけ」
中井出「そりゃ倒れるわ」
悠介 「スピリタスって……」
確かアレだ。
ウォッカの中でも特にアルコール度数が高いっていう酒。
96度っていったか?普通に火がつく度数だ。
彰利 「今でも目を閉じれば思い出せる……あの激動の瞬間を……」
彰利が遠い目をして思いふける。
俺もそれに習うように思い返してみるが───
【ケース372:弦月彰利/シャルウィー箪笥】
ココンッ……コンッ……カショ、ショ。
櫻子 「はいはい。新しい料理よ」
彰利 「プレゼンテッドバーイ!彰利ーッ!!」
料理が随分減ってきたのを見たオイラは厨房へと駆け込み、
腕によりをかけて追加料理を作って運んできました。
運ぶのを櫻子さんと久義さんが手伝ってくれているからコトはとっとと進んでゆきます。
岡田 「ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」
田辺 「アンディーさぁーーーーん!!」
飯田 「み、見える!モスクワの大地が!!」
彰利 「……既に出来上がってんのね」
訪れた大食堂は、それはもう大変なことになっていた。
もちろん酔っ払って暴走してるのは猛者どもだけなんだけど。
中井出「え、えー、では不肖、この中井出博光が。
親戚の誕生日の祝いの場をそのー、仕切らせてもらう」
雪音 「よっ大統領ー」
中井出「うるさいっ。えー、それでは。我が親戚、橘鷹志とその妻カーシー、
そして娘さんである悠季美ちゃんの誕生の日を祝しましてっ!」
総員 『カンッパァーーーーイ!!』
シュッ───カカカカァアアンッ!!
その場に居る全員がグラスを合わせてハワァーと叫ぶ。
おお、これぞ祝いの日の醍醐味。
やっぱグラスに液体注ぐとコツンと合わせたくなるってもんだよね。
鷹志 「けど、いいんですか?久義さん。これ、高い酒なんじゃ……」
久義 「構わん構わん、構わんよ。飲まなければただの飾りだろう。
こういう日のためにとっておいたんだ。
むしろこうも元気に美味しそうに飲んでもらえるなら、
空けた甲斐もあるというものだろう、ほっほっほ」
立派なお髭をモシャリと撫でて微笑む久義さん。
じゃけんどこの酒って確か相当すると思ったぜ?
何気なく悠介を見てみれば……おお、やっぱりちと飲むのを躊躇ってる感がある。
よし、こんな時こそゼスチュアだ。ゼスチャーともジェスチャーとも言うらしいアレだ。
えーと……
彰利 《コレ、ナンボ、ヤ……》
バッバッバッ……
悠介 《1、アタマ、30、万》
ムホォッ!?30万!?
1、アタマ、って……一本あたり30万ってことよね!?
すげぇ……そげなもんを惜しげもなく開けるたぁ……
しかもこの人数に全てをってくらいの本数だよ!?
当然一本じゃ足りんし……ア、アワワ……いったいいくつ空けたんだ……!?
来流美「あ、そうそう。わたしからもお酒のプレゼントがあるのよ」
閏璃 「毒か?」
来流美「酒だって言ってんでしょうが……!ほら、これ」
コサ、ガササ……と、クルーミング大佐が長い箱から白い紙に包まれた一升瓶を取り出す。
やがて、ガサガサと取られた紙から覗くその一升瓶の正体!
それは!
久義 「ほっ……ほっほぉ……名酒、紬凪羅じゃな?」
来流美「あら、解るの?」
久義 「わしはワインばっかり集めておったから滅多には見れなかったが……ほほ、
これをこんなに手に入れるとは、
キミはなかなかいい知り合いを持っているようだな」
来流美「まあ、こっちにもいろいろコネとかあるから」
柾樹 「紬凪羅って……うわ、こんなに……?」
来流美「全部わたしが隠しといたものよ」
柾樹 「え……じゃあ家に!?いったい何処にこんなに!?」
来流美「家じゃないわよ、友の里に隠しておいたのよ。晦くんに頼んで、
とある一角だけお酒を寝かせるには最適な場所を作ってもらっておいてね」
閏璃 「融合段階の時にそんなもん頼んでたのかよ……抜け目ないな」
来流美「まあこれくらいはね」
彰利 「ほへー……」
紬凪羅ねぇ……日本酒か。
日本といえば悠介だが───あ、チラチラ見ては目ェ輝かせてる。
まるで好物を目の前に置かれて、
でも自分の物ではないから手が出せなくてもどかしい気持ちに包まれている子供のようだ。
うん、悠介の保証も手に入れた。
コレは間違い無くいいモノだ。
彰利 「ち、ちぃともらっていい?」
来流美 「いいわよ、硬いことは言わないわ。男手だけなら腐るほどあるから、
友の里にあるやつ全部持ってきたし」
閏璃 「聞いてくれ、こいつ鬼なんだ。
落としたら殺すとか言いながら、俺に5本も持たせて」
来流美 「人聞きの悪いこと言うんじゃないわよ。
アンタが勝手に柿崎くんと競い合ったんでしょ?
貴様が2本なら俺は3本だガハハーって」
柿崎 「無駄に対抗意識高いからなぁ凍弥って」
由未絵 「柿崎くんも人のこと言えないよ?
お前が3本なら俺は4本だワハハーって言って、
凍弥くんに対抗していっぱい抱えてたもん」
柿崎 「凍弥、俺はそんなこと言ってたか?」
閏璃 「いや、どうやら記憶喪失になってしまったらしい。
都合よくそこのところだけが思い出せない。
ただ来流美に脅迫されて運ばされたような記憶があるようなないような」
柿崎 「実は俺もなんだ。何者かに脅迫されて、仕方なく……」
来流美 「はいこらそこそこ、自分勝手な記憶置換してないでさっさと開封する」
閏璃&柿崎『う〜〜っす』
ウルチョンがパーシモンとガッツポーズを取る中、
俺は早速数ある瓶の中から一本を選ぶと開封。
それをグラスととくとくと軽く注ぐと、口に含んで馴染ませるように飲む。
すると───
彰利 「───わ、解る……!」
大変驚きました。
微食倶楽部の海原雄山を名乗るオイラではございますが、
これに関しては文句のつけどころが無い。
酒の味などどれも一緒じゃねぇの?とか思ってた時代が懐かしい。
酒なのにひどくあっさりしていて、まるで口の中で溶けるように味が消滅する。
後味無しのスッキリ感がまたなんともたまらない。
アルコールは確かに入っているはずなのに、この酔いが回りそうにない感覚はどうだろう。
いくらでも飲んでしまえそうな気分だ。
彰利 「悠介悠介!コレキミも───アレ?」
ウェーーーイと振り向き様に酒を奨めようとしたんだが……悠介の姿が無い。
アレ?何処行ったの?と思いきや、厨房側の方からなにやらいろいろ持ってきた。
高級料理店とかで使う、あの料理を運ぶ台車みたいなやつで。
アレ、名前なんて言うんだろうね?
しかし呼び止める暇も無くなにやらカチャコチャと取り出すと、
テーブルの一角になにやら料理のようなものを並べてゆく。
あれは───ツマミ!?酒のツマミですか!?
悠介 「日本酒を呑むならこれは譲れない」
総員 『………』
その時の彼の顔を、僕らは忘れるまでずっと覚えておこうと心に誓いました。
ルナ 「うわー……わたしにもこんな顔滅多に見せてくれないのに」
彰利 「クォクォ?そりゃテメーが愛されてねぇ証拠《ボゴス!》へぼっし!」
冗談で言った言葉が音速ナックルで返されました。
おお痛い。
鷹志 「へぇ……じゃ、ちょっと失礼して……」
彰利 「あ、ミホーク、俺にもそれ寄越せ」
鷹志 「誰がミホークだ誰が」
言いつつもこちらに寄越してくれるミホーク。
おおありがたい。
鷹志 「呑み方とかあるのか?」
悠介 「まずツマミを口に含んで味わってくれ。
で、ツマミの味が口に広がって馴染みだしたら酒を呑む。それだけだ」
鷹志 「ほほう……?《モグ……コリコリ》」
総員 『ぬう……?《パク……モニュモニュ……》』
それぞれがツマミを口に含んでゆっくりと味わってゆく。
そうして味が口の中に広がってから酒を口に含み、
これまた馴染ませるようにピキィーーーンッ!!!
総員 『こ、これはァーーーーーーッ!!
この味はァーーーーーーーーッ!!!』
通った!今俺達の中になにかが───とてもステキな、
今まで感じたことのない一本の線が通った!!
体を貫くような味わい……とでも……いうのだろうか……。
じゃなくて、ともかく体が震えるぞハート!
久義 「ほほう……これはなかなかどうして……」
総員 『…………《ボー……》』
……美味ぇ……。
やべぇ……放心するくらい美味ぇ……。
いったい……いったいこれは……?
この雄山を唸らせるこの味わいはいったい……?
彰利 「桑の実だッ!!そうだろうっ!!」
悠介 「いきなりだが違うが」
じゃあなに!?ああいや知ってしまうとつまらない!
これは謎のままのほうがなんだかいい気が!!
鷹志 「さ、酒も見事なもんだが……もっと凄いのはこのツマミだ……」
来流美「結構このお酒呑んできたし、ツマミも考えたけど……
これほどこのお酒の味を上手く引き出してくれるものなんてなかったわ……」
飯田 「いや……まいったな……。酒呑んだのに酔いが吹き飛ぶなんて……」
吾妻 「驚くくらいに美味しい……」
田辺 「や、山岡!これはなんなんだ!?」
清水 「さあ山岡くん!説明してくれたまえ!」
悠介 「誰が山岡だっ!」
なによりもまずそこをツッコむらしい。
悠介 「……悪いがこれは秘密の製法だ。
俺が今まで自分の舌で味わって、ようやく辿り着いた味。
せっかくだが教えられない」
雪音 「けちー」
閏璃 「ケチー」
悠介 「なんとでも言え、教えられんものは教えられん」
彰利 「ウヒャヒャヒャヒャ!やーいモミアゲモミアゲ《バゴチャア!》ジェーーン!!」
総員 『な、殴ったぁーーーっ!!なんとでも言えって言ったのに殴ったァーーーッ!!』
悠介 「言葉通りに受け取るなばかっ!!
大体お前はどうしてそうなんでもヘンテコな方向に持っていくんだ!!」
彰利 「バカヤロー!普通なんてつまんねぇだろうが!!
人生ってのはなぁ!平凡に非常識っていうスパイスが利いて初めて楽しいんだ!」
岡田 「そうだ!」
田辺 「その通りだ!!」
総員 『よく言った!!』
中井出「否!人生をさらなる高みに押し上げるには己自身も無茶をしなければ意味が無い!
歌えい野郎どもぉーーーーーーっ!!!」
総員 『サー!イェッサー!!』
ドンッ、デ〜ンテ〜ンテ〜ンテ〜ゲデッテ〜〜チャララララララ〜ン♪
デ〜ンテ〜ンテ〜ンテ〜ゲデッテ〜〜ン♪チャララララララ〜〜ン♪デデデンッ♪
中井出「つ〜か〜み〜かぁけた〜っ!あ〜ついぃ〜うぅでを〜ぅ!」
藍田 「振りほどぉいてぇ〜〜っ!キミは出てゆくぅ〜〜っ!」
閏璃 「僅かに震え〜〜るぅ〜〜っ!白いガウンにぃ、キミのぉぅ!
年老いたぁ〜……悲しみを見たぁっ!」
ナギー『……?なんなのじゃ?この歌は』
シード『僕が知るもんか。けど、父上はとてもいい顔で歌っている』
彰利 「よく見るんだ子供たちよ……あれが心に男を住まわせる猛者どもの歌だ……」
悠介 「いや……それにしてもどうしてあの歌なんだ?」
彰利 「さあ」
猛者どもや一部の名誉ブリタニア人を混ぜた人々が叫ぶように歌い始める。
何気なく月奏力で流した音楽に迷いなぞ見せずにノッてくるとは……流石だ。
中井出「ロッカー!ルームのぉ!ベンチでキミィはぁーーーーっ!!」
藍田 「切れたぁ!唇でぇ!そっと呟いたぁーーーーーっ!!」
総員 『You're King of Kings!!!』
呟くどころか叫んでますが。
でも面白いので音楽のテンポも上げたままにしておく。
閏璃 「かぁ〜えれぇ〜るぅ〜んだぁ……これでただのおとぉ〜こにぃ〜……♪」
柿崎 「帰れるんだ!これでぇ……かぁ〜えぇ〜れぇるぅ〜んだぁ……オォ〜〜〜ッ♪」
彰利 「来た!いくぞ貴様ら!」
ナギー『な、なに!?なにをするのじゃ!?』
シード『行く!?何処に!?』
彰利 「叫ぶんだよォーーーーッ!!」
総員 『ラァイラ!ラァイラ!ラァイラ!ラァイララァイ!!
ラァイララァイララァイララァイララァイ!!
ラァイララァイララァイララァイラ
ラァイララァアーーーーーーーッ!!!!』
デゲデデデデデッ♪
総員 『ラァイララァイララァイララァイララァイ!!
ラァイラ!ラァイラ!ラァイラ!ラァイララァイ!!
ラァイララァイララァイララァイラ
ラァイララァアーーーーーーーーッ!!!!』
あらんかぎりの魂をここに。
我らは“はじめの一歩”の鴨川ジムの皆様がするように体を大きく振って、
床に足を叩きつけるようにしてライラライラと叫んだ!!
それはもう喉が張り裂けんほどに絶叫&熱唱し、
この一瞬のためだけに生きてきたと言わんばかりに咆哮。
やがて大鐘音のエールで喉が潰れた松尾鯛雄氏のように血を吐いてもなお叫び続けた。
もちろん“はじめの一歩”のチャンピオンロード(アニメ)で
青木さんと木村さんがやっていたように、飛び上がったり跳ね回ったりするのも忘れない。
結果───ドグシャア!!
飯田 「ひぃっ!?田辺が失神したぁーーーっ!!」
岡田 「だ、だいじょ───げっほごほっ!うっ……げはっ!!」
清水 「ゲゲッ!岡田が吐血したぁーーーーっ!!」
藤堂 「お、おい清水!お前、叫びすぎで鼻血が……!」
佐東 「ウウ……!立ち眩みが……!」
それぞれが続々と転倒してゆく。
実際オイラも結構キてます。
心から魂を解放するが如く叫ぶことがここまで芯に響くとは……。
悠介 「………」
珍しく混ざった悠介も、喉と頭を押さえて蹲ってる。
ていうか床に血が滴っていることからして、どうやら喉がイカレたらしい。
でも大丈夫!あ、いや、悠介が大丈夫ってんじゃなくて、オイラが。
こげなもんはパパーと回復でハイ元通り!!
彰利 「ほっほっほ、情けないのう悠介。あれほどの導きのヴォイスで喉を潰すなど……」
悠介 「……、は、あ……ふう……ああいや、やろうと思えばもっと出せたんだけどな」
彰利 「あら?そうなん?」
悠介 「……竜人化したらの話だが」
彰利 「バインドハウリングになるからやめようね?」
ヘタすりゃ建物自体に支障が出るやもだし。
彰利 「で、竜人いえば……ゼットンは?」
悠介 「中井出にスピリタス呑まされまくって、あっちでみさおに介抱されてるが」
彰利 「どこどこイカ子さん!!───あ、ほんとだ」
あらー、見事にぐったりユーハートだ。
やっぱ竜族ってアルコールに弱いんかね。ヤマタノオロチの件もあるし。
彰利 「しかしやるもんだねえ、あのゼットに酒飲ますとは。どうやったん?」
中井出 「まず少し飲ませて様子を見る。美味いと言えば呑ませ、
不味いと言えばそんなものも呑めずになにが黒竜王かと罵倒。
見事に後者だったゼットを煽り、トドメ文句として
“みさおちゃんにこの程度の男なのかと呆れられるぞ”と言って呑ませた」
悠介 「で、浴びるように呑んだらそのままドグシャアと倒れた」
彰利 「なんっつーか……ゼットも随分と我らに馴染んできたもんだねぇ……」
悠介 「みさおと中井出のお蔭だな。ゼット自身、孤高感が強すぎるヤツだったから。
だから馴染みのあるみさおと、
凡人から少しずつ上り詰めてきてる中井出には気を許してるって感じか」
彰利 「キミはライバル視だけどね」
悠介 「お前なんて邪魔者扱いだろうが」
彰利 「………」
悠介 「………」
彰利&悠介『親友()よ……!』
中井出 「お前らってほんと、
よくもまあそこまでソリが合わない者同士なのに親友でいられるよな」
彰利 「ソリが合いすぎるのも問題ってことじゃねぇのかえ?
あたしゃ元々、辛さを共有出来る悠介だからこそオウイェイだったわけだし」
悠介 「オウイェイの意味が解らんが、そんなところだな。
なんでも遣り合えるから友達続けてきたんだ。
それこそ、友達はひとりでいいって思えるくらいに真っ直ぐに」
中井出 「いや……それって真っ直ぐなのか?」
あっはっは、ヒネクレてるよねぇホント。
言ったら殺されかねんから黙っとくけど。
中井出 「あーそれではヒヨッ子ども。
ヒロラインパワーで復活したところで、これより───」
岡田 「て、提督大変だ!」
中井出 「なにぃどうした岡田二等!」
岡田 「酒が尽きました!!」
彰利&悠介&中井出『早ぇえーーーーーッ!!』
ば、馬鹿な!だってさっき空けたばっかりぞ!?
何故ェ!?何故なのグレート!!
彰利 「貴様岡田この野郎!!いったいどれほどのペースで飲みやがった!!」
岡田 「《ギゥウウ……!!》ゴエアァーーーッ!!
た、確かに俺も飲んだけど俺だけじゃねぇーーーーっ!!
ウ、ウワバミだ!あそこにウワバミがいるんだよ!俺じゃあねぇ!
首が……首が絞まるゥウウ……!!」
彰利 「ウワバミ!?誰ぞね!!」
キッと日本酒が置いてあった場所を見る!すると───!
セレス「うふふ……ふふ……うふふふふふふふふ……♪」
浴びるようにガヴォガヴォと酒を呑むセレっちが……!!
彰利 「き、貴様!セレっちになにをしおった!」
悠介 「ばかお前っ!セレスは酒弱いくせに強いんだぞ!?まさか飲ませたのか!?」
岡田 「弱いのに強いってどういう《ギウウウ……!!》ごおおおおお……!!」
悠介にまで首を絞められた岡田くんが、
けんけん猫間軒の武闘家猿に首を絞められている弟子ウサギのような悲鳴を上げた。
しかし、セレっちが酒に弱いとは……。
悠介 「セレスに酒呑ませようとした時、
水穂が止めただろ!止めたよな!?止めたんだよな!?」
岡田 「と、と……とー……ととと……」
彰利 「キン肉マン二世のハンゾウの声真似か?こんな時に根性あるなぁ」
岡田 「ち、ちが……たすけ……」
彰利 「おお?……おお!?悠介!ゆーすけ!岡田くんの顔面が蒼白だ!呼吸困難だ!」
悠介 「俺は元気だ」
彰利 「うわっ!メッチャいい顔!!そうじゃなくて離すンだッッ!!」
岡田 「あ……あれ……?ダニエルが手招きしてる……」
彰利 「ヒィッ!?逝ったらいかん!逝ったらもうかつてのキミには戻れない!!」
とりあえず的確に頚動脈を押さえてる悠介の脇腹に
貫手をグボォと突き刺しツリーを止めると、
ゲファーリゴフォーリと咳き込む岡田くんを───
岡田 「へっちゃらさーーーっ!!」
……回復するまでもなく、平気だったらしい。
岡田 「ふはははは!騙されたなカスめ!」
悠介 「俺は最初から力など込めていなかったのだよ……」
彰利 「な、なにぃ!?俺を騙したのか!?」
岡田 「いや、正直最初はホント喋れませんでした」
あ……やっぱり素だったんだ。
悠介 「それで?なんだってあんなことに……」
岡田 「いやぁ、実際水穂ちゃんに“セレスさんにお酒はダメです”って止められたんだ。
我ら猛者どももその必死っぷりを見て“これはただならぬ気配”と諦めたんだよ。
けどなぁ……そこであの魔王がなぁ……」
岡田くんがとある一角を促す。
と、そこでタンコブから煙を上げつつ倒れてピクリとも動かない魔王サコタヨーシェが。
岡田 「いや驚いたぜ?酒呑んだ途端にエドガー発動してさ。
魔王の頭掴んで天上の隅の……ほらあそこ。
あそこに思いっきりブン投げたんだわ。ゴシャーンと」
悠介 「で、落下しても誰にも介抱されずに死んでると」
岡田 「本気で死んでりゃマズイけどさ。一応掴まれた瞬間にセット唱えてたし」
彰利 「ほんに皆様逞しゅうなりまして……」
普通なら死んでますよ?
岡田 「でまあ、エドガー来襲はそれで治まったんだけど……」
悠介 「次はセレスが出てきて酒を浴びるように飲み始めた、だろ?」
岡田 「あれ……なんだ晦、知ってんの?」
悠介 「俺もやられたことあるからな……」
彰利 「あ……あーあーあー、そういやいつだったか、
康彦さんの秘蔵の酒ってのをセレっちに全部呑まれたって……あれのことか?」
悠介 「どういう状況の変化だったんだかな……。それまでは全然大丈夫だったんだ。
けどある日突然に酒乱になったというか……はぁあ……」
彰利 「ちなみに悠介くんは当時、大人になってからありがたくいただこうって、
その時が来るのを楽しみにしていたのだ」
岡田 「けどその酒ってのを全部呑まれてしまったと」
彰利 「イエース!ザッツライ!!」
岡田 「シーユー!!」
岡田くんとともにどこぞの英会話の物真似をして手を叩き合せた。
もちろん意味など要りません。
何故って僕らは騒げればいいのですから。
楽しいってとても単純だけど、単純なだけにとても大切なものなんだぜ?
彰利 「まあそげなわけだから、オイラちょっと妻たちンところ行ってくるわ」
岡田 「おー」
彰利 「まあ酒のことは諦めめされい悠介。きっといいことあるさ」
悠介 「奇妙に励まされても気味が悪いんだが」
彰利 「え?じゃあ普段のアタイって気味がEってこと?」
悠介 「すまん、全然そんなことは無かった」
岡田 「怪人!常時不気味男!!」
彰利 「カァーーーッ!!」
岡田 「《バゴロシャアーーーッ!!》ドゥアァアーーーーッ!!!!」
大変失礼な我が同胞に愛の拳を一閃させた。
そう、あたかも“天地無用!魎皇鬼”の第一話にて天地くんが尼ヶ崎くんを殴るがごとく。
あの殴り方って微妙に不思議な気がするんだよね。かなりコークスクリュってる?
藍田 「おおっ!?岡田が飛んで来た岡田が!」
丘野 「やっちまえ!」
岡田 「えぇっ!?なんで《ドゴゴスゴスドス!!》ギャォアァーーーーーッ!!!!」
何故か、吹き飛んで猛者どもの群集の傍に滑っていった彼は、
他の猛者どもに気づかれるや否やストンピングされていた。
理由は解らんが……いや、皆様なんだかんだで酔っ払ってる所為でタガが外れてんだな。
それでも猛者どもの行動が普段とあまり変わらないのは、
皆様がそれだけ純粋に素直に生きているってことなんだろうけど。
てゆゥか……あれ?さっきまでここに居た中井出は?
中井出「モスックワァゥ!モスックワァゥ!!ゆーめ見ーるゥアンディさん!!」
藤堂 「おっさんですかぁ!?シャアですか!?オッホッホッホッホッ!!」
総員 『ヘイッ!!』
あら……いつの間にかストンピング猛者ーズとは反対側に居た猛者どもと、
歌って踊れるコサックダンスやってら。
ってことは……またウォッカ煽ったんかね?
全員顔が滅茶苦茶赤いし。
中井出「うおーーーっ!あっちぃーーーーっ!!」
藍田 「ジョワジョワ〜〜〜ッ!!これ呑むとワンチャイ様思い出すぜ〜〜〜っ!!」
丘野 「提督殿ーーーっ!そっちの景気はどうでござるーーーっ!?」
中井出「よく解らんが楽しいぞーーーっ!ウハハハハハ!!
───俺が飲んだのはスピリタスじゃないがな!!」
藤堂 「なにぃ!?提督貴様!」
中井出「次だ次ー!誰か歌えーーっ!!もっと!もっと魂の歌をーーーっ!!」
蒲田 「歌え提督ー!」
佐野 「歌ってやー!提督ー!」
中井出「なにぃ!?この博光は歌があまり得意ではないと知っての狼藉か!?」
佐野 「しゃあけど暇さえありゃ歌ってるやろが!」
中井出「よしそれならば任せておけ!何を隠そう!俺は童謡の達人だ!」
丘野 「童謡以外でござるー!」
中井出「な、なんだってーーーっ!!な、ならば貴様らも一緒に歌うのだ!
いくぞぉ野郎ども!!熱唱だーーーーっ!!」
総員 『Yah()ーーーーーッ!!!』
なんだかまた猛者どもが歌いだした。
まあいいコテ、オイラはオイラで妻サービスをば。
家族サービス?そんなの知りません。
俺は家族なんて言葉が大嫌いですから。
だから妻、息子と喩えても家族と一纏めにはしませんよ?
いやはや、実に名前を呼び合う妻と夫ってのはいいもんです。
“ああっ女神さまっ”の蛍一の親御さんたちの感性は素晴らしい。
子供にも自分を父さんとかと呼ばせずに名前で呼ばせるなど最高です。
……宅のみずきにもそれをさせようとしたんだけど、
かえって反発して親父って呼ぶようになってしもうたけど。
彰利 「はてさて」
そげなことは今はどうでもよろし。
僕は我が身、黒の中に忍ばせておいた一升瓶……紬凪羅をズチャアアアアと取り出すと、
グラスに注いで歩き出した。
もちろん紬凪羅はまた黒の中に便利に収納。
いやぁ、しみじみ思う。俺ってつくづく人間じゃねぇと。
でもまあスッピーのお蔭で、
すっかり体を死神化させたままの状態にしておくのに慣れました。
もはや人間状態になることこそが稀少となってしもうた。
だってね、人間状態のオイラってそれこそ普通の一般人男性と変わらんし。
なんて思いつつ、熱唱している……というより叫んでいる猛者どもをチラリと見る。
藍田 「あの町ィ〜!このォ〜町のォ〜!ファーストッ!フードォ〜〜ッ♪」
丘野 「マニュアルにぃ〜乗っ取りィ〜〜〜ッ!
同じセリフしぃ〜〜かぁ〜〜言えない!」
中井出「アルバイ〜〜〜ト学〜生にぃ〜!戦いを挑むゥウ〜〜ッ!!」
総員 『俺はハンバーガァア〜〜〜〜ッ!!ショオップキラ〜〜〜〜ッ!!』
デゲテテテテテテテンッ♪
相変わらずノリノリである。
というか、何故激突ハンガーガーショップ(シングルバージョン)を?
丘野 「いらっしゃいませ、こんにちわ〜〜っ♪」
藍田 「馴れ馴れしいんねや!気安ゥ声かけんな!初対面やがな!」
丘野 「ご注文を♪」
藍田 「適当ォ〜〜〜に、握ってくれ」
丘野 「いえあの、ハンバーガーのご注文を……」
藍田 「……チーズバーガー一つ」
丘野 「ご一緒に、お飲み物?それからポテト?
を、ご注文?なさいますと?セット?に、なりますが?」
藍田 「いらん!いちいち疑問系で言うな!いる時は始めから言う……」
丘野 「新発売のエビ男爵───」
藍田 「しつこい!チーズバーガーだけでええ」
丘野 「こちらでお召し上がりですか?それともお持ち帰りですか?」
藍田 「どッちも嫌ァ」
丘野 「ご注文繰り返しまーす」
藍田 「チーズバーガー一個で繰り返すな!」
丘野 「あの、お勘定は先にさせていただいてよろしいでしょうか?」
藍田 「物持ってきてからやなかったら、金払わん」
丘野 「あのー、一応お勘定は先に頂くことになってまして……」
藍田 「決まっとんのやったら始めからそう言え!
よろしいですかなんて訊くな!───なんぼや!!」
丘野 「230円になりま〜す♪」
藍田 「ほぉぅれ!一万円札じゃぁ〜〜〜い!!」
……演技に気合入ってるねぇ。
俺、テンポはシングルバージョンの方が好きなんよね。
どうにもオリジナルの方はリズムが性に合わんというか。
などと考えてるうちにとっとと歌?は続き───
丘野 「お時間3分少々かかりますので、しばらくお待ち下さい」
藍田 「そんで金取ったら人待たすんかい!
そゆこた先言ゥとけクソホンマにもぉおーーーーっ!!
責任者ァ!出てこぉーーーーい!!」
ノリのいい部分にまで差し掛かっていた。
デゲデデゲデデ!
中井出「大企業のマニュゥ〜アルにゃ〜〜ぁ結局〜〜〜勝てずゥウ〜〜っ!!」
藍田 「飲み物無しィイでッ!チーズバーガァッ!ほぉばぁってぇえ〜〜〜っ!!」
デンテンテンテンッ!!
丘野 「怒りをぶつけるゥ〜場所も無く〜!腹ァ〜癒せにぃ〜!」
総員 『トレイを〜♪ゴミ〜箱に〜♪捨てた〜〜った♪』
彰利 「………」
その部分だけ歌えればよかったのか、猛者どもは別の曲へととっとと移った。
そげな景色を眺めつつ───なんだかんだで妻たちの袂へ辿り着いたオイラは、
ギャースカいがみ合おうが結局は仲の良さそげな妻達に声をかける。
彰利 「やあ、僕のハニーたち。今日は僕が開いたパーティーに来てくれてありがとう」
真穂 「いいえ当然ですわ。ダーリンが招いてくれたのなら、
たとえ隣の部屋だろうとご近所だろうと……」
彰利 「ああ、ハニー」
真穂 「ああ、ダーリン」
粉雪 「真穂、まーほ……いきなり舞踏会始めてるところ悪いんだけど……」
春菜 「アッくんも、現れるなり冗談なんて」
彰利 「あっはっはぁ、なにを言いますか春菜。
これくらいのこと、俺と真穂さんなら朝飯前だぜ?
前日の夜食で喩えてもいいくらいだ」
真穂 「原中時代はよくこうやって遊んだもんだよねー」
真穂さんと肩を抱き合ってわっはっはーと笑う。
おおこのノリのなんと懐かしい。
群がる男子から真穂さんを守るためにやってきたこのふざけ合いだが、
なんだかんだで僕らはこの空気を好んでいたのでしょう。
今でもこうして自然に実行できることが、その事実を物語っております。
春菜 「ふーん……ね、それってどんなシナリオでやってるの?」
彰利 「え?即興ですが?」
真穂 「だって原中だもの」
彰利 「ポイントはそれが本当に愛なのかどうなのか微妙な線を突くとこですな。
ホレ、あなたを思えばとかいいながら、
隣の部屋とかご近所までしか足を運ぼうとしとらんし」
粉雪 「随分狭い愛情ね……」
春菜 「むー……じゃ、アッくん。今の順序で今度はわたしとやってみて」
彰利 「おおやる気ですな?では───」
一旦離れて、それから酒を注いだグラスを片手に輝きのニヒルスマイルとともに参上。
そして定番の文句をひとつ。
彰利 「やあ僕のハニーたち。今日は僕が開いたパーティーに来てくれてようこそ」
春菜 「いえそんな。あなたを思えば当然ですわ……」
春菜が頬に手を添えて微笑む。
おお、芸が細かいですな。
こっちの“来てくれてようこそ”は完全に無視だ。ひでぇ。
彰利 「ではシニョリーナ、僕と……一曲踊ってくださいますか?」
春菜 「ええ、もちろん……」
つ、と静かに歩み寄る俺を前に、春菜が静かな笑みを浮かべて歩み寄る。
その綺麗な顔は少し赤く、
そんな顔に集中していた俺の視線に気づいた春菜が照れくさそうにはにかむ。
やがて距離が狭まる両者……。
さあ、始めよう……。
彰利 「獅子()対……」
春菜 「餌(!!」
やがて始まる死の舞踊!!
渾身を込めて振るわれる我が蹴り!!
そしてそれを掻い潜って振るわれる春菜の拳ゴコチャア!!
彰利 「ペサァーーーーッ!!!」
顔面にモロヒットしました。
気分は郭海皇……俺はまるで弾丸のように吹き飛ぶと、
大食堂の壁にドゴォンと減り込んだ。
丘野 「オワァーーーーッ!!?」
藍田 「弦月が壁画になったぁーーーっ!!ま、まるで郭海皇のようだ!!」
春菜もね……なにもヒロラインパワー全開にして、
しかも卍解状態にまでならんでもいいのに……。
そりゃ壁にも埋まるってもんですよ……。
彰利 「生ま……れ……て……落ち……て……千と……数十……余……年……四十万日!
……武を……継続けた……誰……より……も……永く!!!
誰…………より…………………………濃く!!!───こいつよりも!!!」
藍田 「おお!郭海皇だ!郭海皇の真似してるぞ!」
丘野 「でも壁から抜け出せねーみてぇでござるぜ?」
彰利 「《ツンツン》やっ!こ、これっ!突付くんじゃありません!見世物じゃないよ!」
飯田 「ウヒョヒョヒョヒョ……おお、実は俺、ヒロラインでいいもん手に入れててよぉ」
藤堂 「ウヒヒホホ……お〜、俺もだぁ……」
吾妻 「壁が壊れたままなのはいけないわよねぇ……」
飯田 「そんなわけで取り出だしましたるは……セメント〜!」
ジャジャ〜ン♪
彰利 「ややっ!?お待ち!キッサマそれをどうする気!?」
飯田 「…………後ろに立つ少女?」
彰利 「シャレにならんからやめなさい!」
慌ててボココォと壁から脱出する。
おお怖い、危うく生き埋めにされるところですよ。
おっとこうしちゃおれん、
ここに居るとこのゾンビどもになにされるか解ったもんじゃない。
妻達が待つあの場所へと向かいましょう。
彰利 「やあ僕のハニーたち。今日は僕が開いたパーティーに来てくれてありがとう」
そして懲りずにニヒルスマイル。
バージョン・夜華さん。
夜華 「これは貴様が開いたものではないだろう」
そして素で返す夜華さん。
あの、今まで僕らの何を見てたんで?
仁美 「違う違う、違うよ夜華ちゃん。
ここではね、自分の気持ちを素直に出して、アキちゃんに対応するの」
夜華 「素直に……?対応、ですか?よく解りませんが……つまり斬れと?」
彰利 「なんで!?だがそれが夜華さんの愛情表現だというのなら僕は甘んじて受けよう。
いいかい?愛情表現ならだよ?キミが僕のことを心から愛してくれるなら」
夜華 「なっ……きゅ、急になにを言い出す!」
彰利 「ああ、愛しき人よ。まずは僕からのプレゼントを受け取っておくれ」
言って、ス……と紬凪羅入りのグラスを渡す。
すると───
夜華 「う……し、知っているだろう彰衛門……!わたしは下戸なんだ……!」
彰利 「さあ……僕を愛しているなら」
夜華 「なっ……う、……」
彰利 「さあ」
夜華 「くっ……あ、ああ……あ、いやっ……か、かか勘違いするなっ!?
ただ喉が渇いただけだぞっ!?」
仁美 「あれ?さっきお水いっぱい呑んでなかったっけ」
夜華 「それでも乾いたのですっ!!だからっ……そう、だから、
わざわざ取りにいくよりもこの酒を……!!」
仁美 「わー、顔真っ赤だー」
夜華 「ちがっ!これはっ……そう!
酒の臭いで酔っただけです!そうに決まっています!」
粉雪 「苦しい……苦しいよ夜華……」
夜華 「苦しくなどない!よこせ彰衛門っ!」
ばっ!と夜華さんが我が手からグラスを引っ手繰る。
そしてそのままの勢いでグイッと飲むと───
夜華 「うっ───!?……う、美味い……?」
顔を輝かせるように、ほぅ……と溜め息を吐いた。
夜華 「彰衛門……?これは……」
彰利 「紬凪羅というお酒ですわ。
あまり知られてない名酒中の名酒かと。ではこれを一口」
同じく黒に包んでいた悠介特製のツマミを取り出すと、夜華さんにホイと。
楊枝で差し出すと、それをおずおずとだが受け取ろうとして───
彰利 「僕を愛しているなら……はい、あーん」
夜華 「ななななっ!?《ぼむんっ!!》」
あ、真っ赤になった。
夜華 「ななななにを言うんだ貴様!!わたしは子供じゃないんだぞっ!!
食事くらい自分でできる!!」
彰利 「……僕を愛していないんだね?」
夜華 「なばっ!馬鹿を言うなっ!それとこれとは別───じゃない!
ああいや別というか別じゃないというかっ……!ああもういいっ!」
かぷっ!
彰利 「おおっ?」
真っ赤な夜華さんが、差し出した楊枝からぱくっとツマミを噛み取る。
そのまま目を閉じ、真っ赤な顔のままマッハ噛みで咀嚼する。
その間オイラはトクトクと酒を注いで、
夜華さんがツマミを飲んでしまう前にホイと差し出す。
と、もうヤケクソなのか、がばーっと一気に口に含んだ。
夜華 「───!」
したっけ、その美味さに硬直する夜華さん。
突如ふるふると震え出し、ゆっくりとこくりこくりと飲み込んでゆく。
夜華 「こ、れは……なんという上品な美味さだ……。
わたしは下戸だからと、これほどまでに美味なものを毛嫌いしていたのか……?」
彰利 「気に入って……いただけたかな?シニョリーナ」
夜華 「あ、あ……ああ……驚いたな……。
わ、わたしは……こんなにも美味いものなど飲んだことがない……」
彰利 「それは僕の親友が作ったものですよ。先ほどちょっと頂きまして」
夜華 「悠介殿が……そうか、なるほど……悠介殿は日本の文化や歴史を大事にしている。
美味い筈だ……そしてこんなにもやさしい気持ちになれる」
彰利 「ふふ、僕としてはキミが僕の愛を一身に受け止めてくれたことが嬉しいよ。
酒もツマミも食べてくれるなんて、僕はキミにとても愛されている」
夜華 「うなっ!?ばっ───か、勘違いするなと言ったろう!!
わたしはべつにそういう意味を持って頂いたわけでは───っ!!」
彰利 「シニョリーナ、ここに愛のくちづけを……」
夜華 「あ、うわっ……!?」
くいっ、と夜華さんを抱き寄せ、頬に手を添える。
やがて真っ赤な顔で狼狽える夜華さんへとズキュゥウウウウンッ!!!
真穂&粉雪『や、やった!!』
熱烈にキッスをした。
ブ厚い鉄の扉に流れ弾丸()にあたったような音……即ち波紋疾走が徹った音とともに。
さらに同じく体内に隠し持っていたスピリタスを黒を通して口に。
夜華さんの唇を舌で押し開け、一度我が舌を噛んでしまったことで、
口を閉じずに耐えてくれている夜華さんの口へと流し込む!!
夜華 「ふむぐっ!?んぐっ!?んーーーーっ!!」
突如として脳髄をハンマーで殴るような刺激が口内を満たした故だろう。
夜華さんの体は跳ね上がるように痙攣し、我が体を引き剥がそうと暴れ出す!
だがこの彰利は離れない!
それどころかハムナプトラの古代ハゲ、
イムホテップのように夜華さんの口自体に我が口を密着。
決して逃れられんように口のみを黒と化して接着し、
これでもかという量のスピリタスを流し込む!
夜華 「ぐぶっ!?こふっ!んぐっ……!」
そうなれば最早飲み下すしかないのです。
やがて夜華さんは自分の意思とは関係無しに喉を鳴らし、スピリタスを呑んでゆく。
それを確認してから僕は黒の密着を解除。
夜華さんを解放しばったぁーーーんっ!!
彰利 「オワッ!?」
真穂 「わわっ!?篠瀬さんっ!?」
……た、途端。
夜華さんは真っ赤になってその場に倒れた。
受身も取らずに背中からである。
慌てて抱き起こしてみれば……目を回して“きゅぅうう〜〜”と喉の奥から奇妙な、
だがなんともカワイイ声を出して気絶しておりました。
おやまあ……やっぱ夜華さんにアルコールはマズかったか。
彰利 「フフ、今はおやすみシニョリーナ。さてオワッ!?」
即興で作った黒のベッドに夜華さんを寝かせて、さあ他の妻にと振り向いた。
その先にあった景色は───なんとも地獄絵図だった。
藍田 「アー……」
丘野 「マー……」
藍田と丘野くんを筆頭とした猛者集団が完全に酔っ払い、
他の猛者どもや名誉ブリタニア人を強襲。
手にあるスピリタスを飲ませ、酔っ払いゾンビどもをどんどんと増やしていっていたのだ。
……ちなみに状況はといえば、現在僕と真穂さんくらいしか立ってない。
あ、いや……あっちの方に中井出と悠介が居るな。
ちなみに立ってないってのはゾンビ状態じゃないって意味ね?
彰利 「アレアレェ!?さっき粉雪、“や、やった!”って叫んでなかった!?」
真穂 「その直後に有無も言わさず襲われて……」
彰利 「うわー……」
とても嫌な状況でした。
うむむどうしたものか……。
真穂 「蹴散らせそう?」
彰利 「そらもちろん。俺が本気を出したらゼット以外にゃ多分負けんよ?」
真穂 「じゃあ───《がばぁっ!!》ひゃあぁっ!?」
彰利 「真穂さんっ!?」
瀬戸 「ン゙オォオオ……!!」
七尾 「ジアアアア……!!」
ああっ!真穂さんが酔っ払いゾンビに捕まった!
つーか瀬戸に七尾っち!?もうちょっと女っぽい声で参上しましょうよせめて!!
真穂 「わわわわわぁあああっ!!弦月くん!たたたすけてぇえええっ!!」
彰利 「真穂さんっ!今助け《ガッキィッ!!》オワッ!?僕の腕を掴むのだぁれ!?」
ゼット「クッ……クックックック……!!ツゴモリィイイ……!俺と戦えぇええ……!!」
彰利 「ギャアゼットーーーッ!?あ、あの!?人違いですよ!?よく見て!?」
ゼノ 「我とォオオ……戦えェエエ……!!」
彰利 「おわわわわ!!なんだかとってもヤバイ状況に!!真穂さんたすけてぇえ!!」
真穂 「助けてもらいたいのはこっち───あ、むぐぐっ!?」
彰利 「ま、真穂さぁーーーんっ!!」
真穂さんが酔っ払いゾンビにスピリタスを飲まされてゆく!
するとみるみる真っ赤に染まる真穂さんの顔……!
やがて───
真穂 「ンンンンンオオオオオ……!!」
ゾンビが一人増えましたとさ……。
真っ赤になって目が回ってる彼女の動きは、既にゾンビのソレと化しておりました。
彰利 「な、中井出ー!悠介ー!ヘルプス!ヘルプスミー!!」
中井出「ちょっと待ってろー!技能スキルセーブモード!!睡眠スキルのみを引き出す!」
ゴシャーン!と中井出の体が輝く!
それと同時にその手のグローブに竜巻のような風が付加され───
中井出「デアボリカルナグルファーーーーッ!!!」
ガンガガガガガガガガギシャァアアアアアッ!!!!
酔っ払いゾンビどもを殴りに殴りまくり、吹き飛ばすに吹き飛ばしまくる!
拳に渦巻く風にまで睡眠効果があるのか、
誰かを殴るたびに派手に炸裂する烈風が別の誰かにダメージを与えると、
そやつまでもがその場に倒れて眠りこける始末!
おお強ぇえ!!さすがジュィェントュルミェエエエン!!
ってそうか!酔っ払って戦う意思が薄れてる相手なら、
こういう属性攻撃や状態異常攻撃に弱い筈!
ようは眠らせちまえばいいわけだ!
そうと決まれば!
彰利 『月操力全力解放!月清力&月奏力!!“静眠の小夜曲”()!!』
マカァーーーン!!と我が体から漆黒の光を発する!
それがこの大食堂を照らし尽くすと、
酔っ払いゾンビどもが次々とその場に倒れ、眠りゆく!
おおマーヴェエラス!さすが僕ちゃん!!
彰利 「………」
中井出「………」
悠介 「………」
途端に、大食堂が静かになったとさ……。
窓の外を見れば、もうとっぷりと暗かった。
時計は深夜を指していてガキャアどもの就寝タイムはとっくに過ぎておったのじゃった。
……不思議だねぇ、騒いでるとどうして時間が経つのって早いんデショ。
【ケース373:晦悠介/ミナミコーテツ】
そんなわけで、現在に至るのだが……
思い返してみてもろくなパーティーにはならなかった。
というか、それはこの死屍累々を眺めるだけでも十分すぎる。
中井出「た〜〜〜らこ〜〜〜♪た〜〜〜らこ〜〜〜♪……あ、失敗した」
彰利 「どれ?……あっちゃあ、こりゃいかんよ中井出。どれ、オイラが……あ、失敗」
中井出「じゃ、次俺な。え〜〜…………ぐあ、失敗」
キュコキュコと、寝ているみんなの顔に問答無用で悪戯書きをしてゆく二人。
そいつらが今、誰の顔を代わる代わるにスケッチブックにしているかといえば……
服装からして永田っぽかった。
しかも失敗続きだ、物凄い顔になってるだろう。
悠介 「……はぁ」
俺の背にはルナ。
こいつも見事に酔っ払い、俺の首に抱きついたままで器用に寝てやがる。
しかも浮いてるもんだから、俺がどう移動しようが一緒についてくる。
試しに腕を外してみようとしたが───外れやしない。
どういう寝相なんだろうかな、これは。
悠介 「おーいお前ら、悪戯はそれくらいにして、そろそろ───」
彰利 「マユリ様」
悠介 「ぶはぁっほ!?」
サッ、と見せられた永田の顔を見て盛大に噴いた。
悪戯書きを見事に失敗したからだろうか、ヤケクソになって真っ黒に描かれた顔は、
輪郭の肌色を見事に残してあるためにマユリ様と化していた。
ああ……そういや俺もアレやられたっけなぁ。
悠介 「………」
うずり、と、自分らしくもなく体がうずいた。
悪戯心、とでも喩えればいいのか。
せっせと落書きを続ける二人を見て、なんだか俺も───
悠介 「……よし、俺も混ぜろ」
彰利 「───僕はキミが時々見せる、そういう思い切った行動が大好きだ」
中井出「ホレ、彰利特製黒マジックペン。カッコ油性カッコとじ」
悠介 「お前ら鬼だな……」
彰利 「前回が油性だったのに、今更水性にしてもつまらんっしょ?」
中井出「ほれ描け、貴様が思い浮かべることを素直にフェイスに刻んでゆくのだ」
彰利 「じゃあ俺次はサコタヨーシェに」
中井出「俺ゃ志摩兄弟な」
悠介 「ふむ……じゃあ俺はゼットに」
彰利 「キミ勇気あるね……」
中井出「じゃ、俺は麻衣香な」
彰利 「おお、妻とはいえ容赦なしとは流石」
中井出「コココ……!これが終われば次はナギーよ……!」
彰利 「グオッフォフォ、では俺は夜華さんに……!」
俺達は描いた。
自分の本能の赴くままに、描きたいと思ったものを連ねていった。
……のちに。
俺と彰利と中井出は目覚めた全員によってこれでもかってくらいにボコられ、
わざわざ二階の窓(俺の部屋)から窓をブチ破る勢いで外へと捨てられたわけだが。
どうしてだか、そういった瞬間が楽しくて仕方がなかった。
もしかしたら、こんな何気ない瞬間に感じる楽しいって気持ちが幸せなのかな、なんて……
そんなことを幻想した、夏の終わりが近づく日々の一景だった。
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