───世界のアイツ/彼らの大敗絵巻───
【ケース32:弦月彰利/ザ・グレイトバトル『VS世界のアイツ』大敗絵巻】
……がちゃり。
彰利 「グーテン・モルゲン」
悠介 「へ?───って、彰利か。なんだ、寝てなかったのか?」
彰利 「ノゥ、我輩きっちり寝ましたネィェ〜」
詳しく説明すれば───5秒は寝たかな?ってところで。
まあようするにセカンドハンズフリーザーで時間をいじくった中で寝たから、
俺的には数時間寝てても周りで言えば5秒程度。
その間、部屋から外の景色を眺めておりました。
ええ、外界に憧れる物憂げな箱入り娘のように。
彰利 「寝に来たん?」
悠介 「ああ。って、丁度いいか。
その様子からすると時間操作で寝たんだろ?俺も頼んでいいか?」
彰利 「む?キミの場合、俺に頼まんでも自分で出来るっしょ」
悠介 「そんな気分なんだ。頼む」
彰利 「む……ほっほ、まあよいデショ。悠介に頼まれて嫌な気分はせんしね。
ではそこに寝転がりなせぇ。睡眠時間は如何ほど?」
悠介 「自然に任せる」
彰利 「そうザンスか。つーかキミさ、さっきまで散々寝てたのにまだ寝るん?」
悠介 「気絶と睡眠は別だ。
特に俺の場合、自然からの負担もあるからじっくり寝ないとダメだ。
身体的なものは回復しても、それがまだ身体に馴染んでない」
あ、なるほど。
彰利 「んでは自然任せで。よいかね?」
悠介 「ああ」
返事をすると悠介は畳みの上に軽く布団を創造。
そこに横になると、さっさと目を閉じた。
彰利 (んむ)
ここでようやく俺の出番さ?
彰利 「オンラブラトルドアンベルト・オンラブラトルドアンベルト……!
キリングハートで貴方を夢にご招待♪コックリーニョ付きで」
悠介 「やめぃっ!!」
彰利 「ジョークです」
ともあれ黒からセカンドハンズフリーザーを取り出し、悠介へと振り翳す。
悠介は全ての能力を切断させそれを受け入れると、さっさと眠りについてしまった。
彰利 「1……2……3……4……5」
悠介 「ん……」
ジャスト5秒!!最強!!
彰利 「魔人ブウって呼んでいい?」
悠介 「よし訳が解らん。却下」
いきなり却下されてしもうた。
まあ別に呼びたかったわけじゃないからいいんだけどさ。
悠介 「外のほうはどうだ?」
彰利 「ン───おお、終わったみたいだ。
ベリっ子ヤムヤムがこっち見てOKサイン出してる」
悠介 「そか。じゃ、行くか?」
彰利 「オウヨ」
寝に来たんなら寝てしまえばやることなどない。
だったら外に出て猛者どもや知り合い連中と馬鹿やってたほうが楽しいってもんザマス。
───……。
……。
で、外に出て見ると───
豆村 「親父っ!悠介さん!───すンませんッしたァーーーッ!!!!」
いきなりみずきに謝られた。
しかも勢いよく頭を下げられて。
いきなりのことでよく解らんかった俺は、
とりあえず顔を上げたみずきのフェイスに拳をマゴシャアとプレゼント。
みずきは鼻血を撒き散らしながら気絶した。
彰利 「やっちまったぜ……」
悠介 「お前な……謝ってきた息子にいきなり顔面パンチって……」
中井出「しかもその後の文句が魔界闘士SAGAの神を殺したあとの言葉って……」
彰利 「イブシ銀だろ」
中井出「訳解らん」
ともかく。
謝ってもらうような必要は無かった筈だから、お門違いってことでのナックルだ。
大体俺は人に謝られるのはあまり好きじゃない。
だからこれでOKね?
彰利 「で……彼ら彼女らはどったの?」
スピムと放心してる民たちを指差す。
なんつーか、感動巨編ドラマを見終えて心にぽっかりと穴を空けてしまった様子だ。
ハマれるゲームをクリアした後、って認識でも多分合ってる。
中井出「感動したんだと。普通に考えたらどうやっても見れない感動人生巨編だからな。
しかもそれが現実として起こったものだとあっちゃあ放心もするだろ」
『特に月の家系関係者の放心度量は相当だ』と続ける提督殿。
その顔はなんだか嬉しそうだった。
理解者って意味では、原中の猛者どもは相当なレベルで俺達を受け入れてくれている。
だから、今はその嬉しそうな顔が素直に嬉しいと感じられた。
中井出「つーかあれ見て感情が動かないヤツは人間じゃねぇ」
彰利 「や、我らの時点で人間じゃないし。俺は黒で悠介は竜だし」
映像の大元が人じゃないんだったらあまり意味の無い喩えだよね、うん。
中井出「細かいツッコミはいいって。それより途端にやることが無くなったわけだが……」
彰利 「やること?そげなもん、我ら原中が集まればどうにでもならぁな。
つーわけでゼットの服を買いに行こう」
チラリと黒衣を纏ったゼットを見る。
死神、神に覚醒してからずっと着ていた死神の黒衣だ。
モードチェンジで服が出現するのは素直に嬉しいことだけど、
それはつまり普段着が無いのと同じなわけでして。
中井出「そんなの、晦にでも創造してもらえば───」
悠介 「いや待て中井出。こういう時こそ日頃稼いでる金を使う時だ。
というか久しぶりに買い物くらいしたい」
中井出「うーわー、なんつーか人の言葉とは思えないなそれ」
『普通生きてりゃ買い物するだろうに』と続ける提督。
しゃあないじゃない。悠介の場合、創造に慣れてる所為で買う必要も無いんだし。
それに買い物するより創造したほうが頑丈だし節約にもなる。
……まあその節約は既に度を過ぎ、
豪邸が即金で買えるほどになってしまっているわけじゃけど。
悠介 「提督、忘れたのか。俺達ゃ既に人じゃない」
中井出「ああ、そっか。そうだった」
真穂 「そこで納得しちゃうんだ……」
彰利 「まあまあ真穂さん。我ら原中は誰よりも情に厚い戦闘集団。
細かいことでぐずっていては周囲に示しがつかんのですよ」
真穂 「情に厚い戦闘集団ってどんな集団なのかなぁ……」
『ツッコミどころ満載だ』と眉間を痛める真穂さん。
まあ他の原中と違って少々のTPOを心の中に保っている真穂さんですから当然か。
ちなみにTPOを保っていないのは原中のお騒ぎ部隊こと、主格隊。
つまり提督、俺、悠介、丘野くん、藍田、中村、殊戸瀬、清水あたりを指す。
悠介は常識人のように見えるが、一度場の雰囲気に染まると積極的にノッてくるので。
そう。悠介は普段こそ真面目な感があるが、元は俺と同じ不良。
ノれば誰よりも快くコワレてくれる最強の親友です。
彰利 「まあそんなわけで。
考えてみりゃあ結局全然してなかったデェトとやら今ここで開始してみないか?」
粉雪 「行くっ!!」
春菜 「あっ───わ、わたしも!」
島田 「やきいも!」
彰利 「俺は貴様なんぞとデェトなんてしたくねぇ!!」
中井出「なにぃ島田二等兵貴様!貴様にそんな趣味があったとは!」
蒲田 「まさか密かに弦月を狙っていたとは!
色気の無い戦場でついには男を求めるソルジャーか貴様は!!」
島田 「んなわけあるか!!」
彰利 「まあとりあえずだ。
俺は一度でいいから腕を組んで『何処に行きたい?』とか言ってみたかったのだ」
中井出「結婚してるヤツの言う言葉か?それ」
彰利 「ちなみに提督は麻衣香嬢と腕を組んでそう言ったことがあるらしいが、
『賽の川原に行きたい』と言われて枕を濡らしたらしい。
もちろん僕らの提督はそんな彼女の言葉を泣く泣く受け入れ、
彼女を臨死させるべく愛用の鈍器を───」
中井出「持ってねぇしそもそも言われてねぇ!!」
丘野 「バイオレンスな初デートだったんでござるな、提督殿!」
中井出「聞けヒヨッ子!!お、俺だって考えてみりゃデートなんてしたこともない!」
彰利 「うそつけこの野郎!!」
中井出「なんでここで嘘つかなきゃならん!真面目に聞け!」
真穂 「原中にその言葉は通用しないと思うけどなぁ」
中井出「ぐくっ……!一瞬にして納得しちまう自分が悲しい……!!」
彰利 「まあよいじゃないの!つーわけで皆の衆!
伊藤養家堂にゼッちゃんの服を買いに行きましょう!!
我らの手でゼっちゃんを華麗に変身させるのだッッ!!」
総員 『ハワァアーーーーーッ!!!!』
彰利 「よし!さあ提督!いつもの!」
中井出「〜〜っ……ああもう解ったよ!!聞けヒヨッ子ども!!
此度の出撃は言わば戦!全力を出してゼットの服を選べ!」
総員 『サー・イェッサー!!』
中井出「さらに全力を以ってそれぞれが楽しいデートをしてみせよ!泣き言は許さん!」
総員 『サー・イェッサー!!』
中井出「皆、それぞれが楽しいと思うことをなんでも実行せよ!事後処理は晦任せで!」
総員 『サー・イェッサー!!』
悠介 「って!ちょっと待て!どうしてそこで俺の名前が───」
彰利 「よっ!苦労人!」
悠介 「やかましい!!」
中井出「それでは各自準備をし、一時間後にここへ集合!!
家が遠い者はそれぞれ転移を行使出来る者に頼んで送ってもらうように!
イェア、ゲッドラァック!ライク・ファイクミー!!」
ザザッ!!
総員 『Sir!YesSir()!!』
俺は叫んだ!みんなも叫んだ!!
悠介 「頭痛ぇ……」
そんな中でひとり、
クロマティ高校の前田くんのように両手で頭を抱えて悩んでいる悠介が居た。
───……。
……。
さて、そげなこげなで一時間と十分後。
彰利 「来ちまった……」
僕らの目の前に聳え立つは伊藤養家堂。
かつての時代、俺が“さとり”となって布団をかっぱらった場所である。
中井出「ヒヨッ子ども!財布の中身は十分だな!?」
総員 『サー・イェッサー!!』
中井出「心の準備も十分だな!?」
総員 『サー・イェッサー!!』
中井出「うむよし!では最終点検だ!晦とゼットの存在はこの場にあるか!?」
総員 『サー・イェッ───なにぃ!?』
バッと振り向き、悠介とゼットが居た場所を見た僕ら。
しかし彼らは人々が群れ為し闊歩する町の中を駆け出し、景色の先へととんずらしていた。
丘野 「な、なんという素早い動き!音も立てずにあそこまで一気に駆けるとは!
もしや忍術!?それは忍術でござるか晦殿!!」
中井出「ば、馬鹿者ヒヨッ子!感心している暇があったら捕まえるんだ!!
ここで逃げられては此度の遠出が無駄になる!!」
彰利 「Sir!ここは私にお任せください!」
中井出「むっ───弦月一等兵!?
貴様なんぞか案でもあるのか!?いいだろう!任せてやる!!」
彰利 「サー・イェッサー!!」
ババッと敬礼すると、黒からゾゾゾととある物体を引きずりだす。
そして小さく掲げ───
彰利 「ゼットを連れて戻ってこないと
貴様が楽しみに取っておいた“清酒/神楽星”を今この場で塵と砕く」
声 「タックルは腰から下ァアアーーーーーーーッ!!!!」
ドゴシャアアア!!!
声 「ぐはぁああーーーーっ!!?は、離せ晦ぃいいいいっ!!!」
遠くの景色で見事なタックルがゼットに炸裂した。
道端に倒れるモミアゲ王と黒竜王の姿は誰が見ても異様であり───
事情を知っている我らが見れば、余計に異常で異様な光景だった。
抵抗するゼットを押さえつける悠介。
さらに抵抗は続き、圧力も続く。
何故か女性陣は頬を染めながらその様子を見守り、拳を硬く握っている。
俺は小さく首を傾げながら───やがて景色が大きく歪み、
力の場が発生し始めた事実に驚愕した。
丘野 「ヒィッ!?な、なんでござるか!?身体が急に震え出したでござる!!」
遥一郎「ちょ、ちょっと待てぇえっ!!!
もしかしてこんなところでさっきの映像みたいなことする気かぁっ!?」
とか言われつつも、悠介とゼットの神が金色へと変わり、
目が真紅に染まるのをピエロEYE〜〜ンで眺めた。
凍弥 「逃げんべ」
鷹志 「んだ」
凍弥 「よし柿崎!ここでやつらを食い止めててくれ!」
柿崎 「死ぬわっ!!」
彰利 「ふむん……みさおさん、GO」
みさお「はぁ……“神魔月光刃()”」
みさおさんが刀を卍解で解放し、悠介とゼットの神魔を完全に抑制させる。
当然ふたりの状態は普通のソレに戻るが、
どっちも全力で抗うために決着が───あ、ゼットの方が何気に強そうだ。
まあゼットの場合、標準でも『黒竜王×2』の状態だからなぁ。
いくら悠介でも、それには基本で勝てない。
でもね、そこんところはあれですよゼットさん。
悠介にはまだ、神、死神の他に変身能力があるから。
丘野 「おお!再び晦殿がゼットを押し倒したでござる!」
女性陣『っ……!!』
中井出「丘野二等兵。その言い方だと女性陣が誤解するのでやめような」
清水 「けどさ、なんで押さえることできたんだろうな。
ゼットってあれだろ?過去の自分と融合したから、晦よりも基本的に───あ」
途中で気づいたのか、清水がポムと手を打つ。
遥一郎「……精霊化、か?」
彰利 「ザッツライト!さすが元精霊のホギッちゃん!頭が良いねこの野郎!!」
遥一郎「ホギッちゃん言うのはやめてくれ……
そう言うのは名前に“雪”の文字があるくせに
脳内には常時春が訪れているどこぞの触覚娘だけで十分だ」
雪音 「へぅ?なに?どういう意味かなそれ」
遥一郎「ようするに馬鹿ってことだ」
雪音 「が、が、がぁああ……っ───!!」
遥一郎「ん?が?が、なんだ?
おかしいな、ガッデムなんてもう言わないとか聞いていたが」
雪音 「がぐっ!?ガ、ガガ───ガンダムーーーッ!!!」
男性陣『───!?』
雪音 「ふゃぅっ!?」
触覚娘が叫んだ刹那、男性陣が一気に触覚娘へと向き直る。
丘野 「いかん……いかんでござる馬鹿殿!!」
雪音 「馬鹿殿!?」
丘野 「『ガンダム』は素人がおいそれと口にしていいものではござらん!」
清水 「そうだぞ馬鹿!ガンダムとは“染まりし者”のエルドラド!
素人が口に出せばたちまち知識不足で恥をかくことになるのだッッ!!」
雪音 「ば、ばばば───馬鹿ってゆーなぁあーーーーっ!!!」
丘野 「謙遜めされるな馬鹿殿!
穂岸殿から馬鹿殿の馬鹿っぷりは聞き及んでいるでござるよ!
なんでも在学中のテスト時、名前を書き忘れて赤点を取ったとか!」
雪音 「ホッ───ホギッちゃんなんてこと教えてるのーーっ!!?」
遥一郎「ん?真実を少々」
丘野 「空界に行った時、男と女とでグループを分けたでござろう?
その時に“観咲雪音の生態”について穂岸殿が教鞭を握ったのでござるよ」
雪音 「えっ!?えぇっ!?な、ななななんで!?」
遥一郎「安心しろ、おかしなことはなにひとつ教えてない。
強いて言えというならお前の頭のおかしさを教えた程度で」
雪音 「わ、わたしの生態全てが馬鹿って感じで言わないでよぅ!!」
ざわ……
総員 『え……違うの?』
雪音 「う、うわぁああーーーん!!まゆちゃぁああんっ!!」
彼女は泣いたという。
真由美「だ、大丈夫、大丈夫。馬鹿でも友達だから、ね?」
雪音 「うわぁああんフォローになってないよぅ!!ホギッちゃんのばかーーっ!!」
遥一郎「なんでそこで俺に罵倒を飛ばすんだお前は」
雪音 「元はといえばホギッちゃんがヘンなことをみんなに教えるからだもん!!」
遥一郎「ふむなるほど。それはアレか、
俺が男性諸君に振るった教鞭内容を熟知した上で言っているのか?」
雪音 「そんなの解ってるよー!ホギッちゃんは───えっと……あれ?なんだっけ?」
総員 『馬鹿だ……』
雪音 「ち、違うもん!忘れただけだもん!!
わたしが本気出したらすごいんだよー!?ほんとだよー!?」
丘野 「ではこれを一気飲みしてみるでござる!
さすれば拙者は馬鹿殿の凄さを認めるでござるよ!」
雪音 「よしゃー!一気飲みなんて余裕だよー!」
馬鹿殿、丘野くんから竹筒を受け取って一気に飲み始めるの図。
つーかあの竹筒の中身って確かゲボハァッ!!
雪音 「ぶえっ!!マ、マズッ!?なにこれ!?」
……やっぱりプロテインだったらしい。
そんな、プロテインを吐き出した観咲嬢の肩にポムと手を置いた丘野くんが一言。
丘野 「よろしくでござる馬鹿殿!!」
雪音 「う、うぐぐぎぃいいいっ!!!」
彼女は心底悔しそうに喚いた。
暴れ出したゼットと悠介無視してよくぞここまで素直に騒げるものよ……さすが原中。
真穂 「弦月くん、この状況どうするの?あの人たち止められる人なんて───」
彰利 「ほっほっほ、大丈夫大丈夫。うってつけの知り合い呼ぶから。えーと……」
手を叩き合わせたのちに大きく左右に広げ、虚空に空間の穴を開く。
黒をセカンドハンズフリーザーに注ぎ込んで使用する空間干渉能力でございます。
もちろん繋げたのは空間であり、その先には空界が。
───……。
……。
……で。
ドカバキドゴシャベゴシャドッゴォオオオオンッ!!!!
悠介&ゼット『ギャアアアアアアアアアアス!!!!』
悠介とゼットがボッコボコにブチノメされた。
吹き飛び、地面に叩きつけられるふたり。
その中心に居るのは───
ノート『存外修行は怠っていないようだが、さて───この程度ではまだまだ』
状況に合わせて地界の服を身に纏っている世界の精霊が。
俺はそげなハチャメチャな強さを誇るスッピーに近づき、オリバの如く拍手した。
ノート『……こういうことはこれっきりにしてもらいたいんだがな』
彰利 「へっへっへ、そうはいいますがね親分」
ノート『誰が親分だ』
空界に繋げて呼び出したスッピーが頭を痛めつつ返答。
相変わらずの化け物的強さで抗う悠介とゼットをブチノメーション……。
頑張って戦ったんだけど、ふたりがかりでもちぃとも敵わんかった。
彰利 「あのさぁスッピー?キミって以前、
リハビリしようとしてた悠介とドッコイの実力で戦ってなかったっけ?」
ノート『……?おかしなことを訊くな。
汝はリハビリしようとする者相手に全力で接するのか?』
彰利 「しないねぇ」
つまり、そういうことらしい。
いやまあね?実力の事実は目の前にあるから納得しろって言われりゃするわけだけど。
清水 「お……おぉおおお……!!あの晦と黒竜王があっさりとまあ……!!」
清水くんが驚愕の顔で驚いている。
や、驚愕の顔で驚くってどんなんだか知りたいが、とにかく驚いている。
ノート『さて……もう用は無いな?まったく。
地界の、それも人が屯している公共の場で
マスターが暴れていると聞いたから来てみれば。
なんのことはない、ただの厄介ごとじゃないか』
溜め息をひとつ、スッピーは俺がやるよりも簡単に虚空に穴を開け、空界に───ガシッ。
ノート『……?なんだ』
彰利 「実はね?今回はゼットの服をコーディネイトする旅にここまで来てたんよ」
ノート『それがなんだ。私に関係があるとでもいうのか?』
彰利 「ん〜〜〜……」
スッピーの腕を掴んだまま、上から下までその服装を見る。
───うむ!!
彰利 「猛者ども!折角だからスッピーの服もコーディネイトしましょう!!」
総員 『了承!!(1秒)』
ノート『そんなものは必要ない。私は好きに格好を変えられる。
それは汝も解っている筈だが?』
スッピー、自分の服を見下ろして俺に訴えかけるの図。
しかしそんな言葉は知りません。
彰利 「わたしは一向に構わんッッ!!
だってさ、世界の精霊が試着室で着替える姿ってステキじゃない?」
総員 『ゲボフッ!!?』
想像してみたのか、一斉に吹き出す猛者ども。
彰利 「というわけでゴー・レッツゴー!!大人を殺せー!ガッツじゃぜー!!」
総員 『ハワァアーーーーッ!!!!』
ノート『汝ら……あまり勝手なことを言───』
ゼット「ふっ……ふふふふふ……!!こうなれば貴様も道連れだ……!!」
悠介 「ノートォオオオ……!!自分だけ助かろうったってそうはいかないぞ……!!」
ノート『た……たわけっ!正気か汝ら!!公共の場で力の解放を───!!』
総員 『私は一向に構わんッッ!!!!』
ノート『た、たわけぇええええええっ!!!!』
……こうして。
その場に居た能力者全員での世界の精霊コーディネイト計画が始まりました。
───……。
……。
結果はまあ……散々である。
総員 『グビグビ……』
ノート『汝らな……力の使いどころというものを少しは考えろ……』
悠介のスピリッツオブラインゲートから始まり、
公共の場から隔離された黄昏の世界での攻防。
卍解出来るヤツは全員卍解して、それこそブッコロがす意気で向かっていきました。
したっけ……ものの見事に負けました。
結構いいところまではいけたと思うんどすけどなぁ……。
彰利 『フフフ……だがまだ俺が残ってるぜ?』
ノート『汝ひとりでどうする気だ』
彰利 『もちろん、皆様が気絶しているのをいいことに、全力を解放しちゃうよ?』
ノート『全力……?ほう、それは面白いな。どれだけ腕を上げたか見せてもらおうか』
彰利 『いいか、これは内緒の話だぜ?
みんなにはもちろん、悠介にもゼットにも内緒だ。僕、嫌われるのイヤだから』
ノート『それを知られれば嫌うのか?』
彰利 『いえ全然』
ノート『………』
スッピーに悲しい目で見られてしまった……。
さて、それはそれとして。
既に黄昏は緑を為す『全ての始まりにして終わりなる世界』に塗り替えられている。
悠介は既に気絶中だ、当然でしょう。
彰利 『さて、死神の鎌の能力は今まで生きてきたその歴史こそが反映される。
まあそれは今さらだよね?もちろんそれは卍解の解放の接点にもなる。
みさおの鎌は神魔に加えて奇跡の魔法が必要。
ゼットの鎌は強大な黒竜の力と神魔と奇跡の魔法が必要。
さて、ここからが秘密の話』
言いながら虚空に鎌を突き刺し、地獄の扉を開く。
彰利 『僕の鎌の中にあるステキ能力は───いったいなんでしょう』
ノート『───!汝、まさか───!』
彰利 『悠介には特に内緒だよ。僕、嫌われたくないから』
キィンッ───ガカァアアアアアアアォオオオンッ!!!!!
ノート『っ……!!』
突風が吹き荒れる。
条件を満たし、その全てを合わせた力が俺の身に齎される。
彰利 『死王の理力───“魔人冥黒結界”()』
身体に竜の波動と冥界の月の力が溢れる。
姿はまるで黒竜を模したかのように変貌し、握る拳がギシリと音を立てた。
ノート『……冥府の門を開き、
そこから竜の魂と奇跡の魔法保持者の魂を引きずり出したか。
なるほど、それらを身体に取り込めば使用条件は揃うわけだな。
だが解せんな。みさお、そして黒竜王の卍解をコピー出来たとして、
そこまで馬鹿げた力が手に入るとは思えん。
黒竜王ほどの存在の鎌を完全にコピーするのであれば、
それ相応の竜の力を吸収しなければ───……いや、まさか汝は───』
彰利 『ご名答。今の俺なら出来ると思ってね。
冥府から【レヴァルグリード】の魂を引きずり出した。
もっとも空界に生きた存在は、死ねば狭界に塵となって流されるわけだけど。
この場合は狭界に流される前の時間軸から冥府を経由して吸い出した、
って言ったほうがいいかもしれない』
ノート『…………なるほど。汝は既に死神の王であり闇黒の秩序そのもの。
ならばこそ、黒竜レヴァルグリードの魂に好まれるのも当然というわけか』
彰利 『おうよ、快く協力してくれた。
奇跡の魔法保持者の魂はもう崩れかけてたからそのまま取り込んだけどね。
なんにせよ───今度の俺はちょっと強ぇぞ?エドラドの火山獣()も目じゃねぇ』
おちゃらけた言葉を放つが、相手を見る目はふざけはしない。
緑溢れる世界を冥府の景色へと変貌させて、ゆっくりと両手にルナカオスを出した。
ノート『世界創造……いや、違うか。
溢れる力を以ってこの場に冥府そのものを引きずり出したか』
彰利 『相手の得意とする世界で戦うのは馬鹿ってもんだ。
だったら自分が一番有利に戦える世界を持参すればいい。
これは悠介の戦闘方法から学んだものだ』
ノート『故に【魔人冥黒結界】か。確かにこの場は死神にとって最高の闘いの場だ』
彰利 『そこまで理解してくれるなら話は早いね。
キミ、大人しく僕らのコーディネイト騒ぎに巻き込まれてくれません?』
ノート『断る、と言ったらどうなる』
彰利 『武力行使♪───ってことになります。
出番だ!目覚めろアモルファス!ダークセンチネル!!』
両手に構えたルナカオスに闇と影を流し込む。
するとそれに呼応するかのように二本のルナカオスが躍動し───
闇剣 『覚悟はいいかぁ!?荊棘を踏んだぞぉっ!!』
影剣 『俗事の産物どもがぁ!!塵に帰せぇっ!!』
左右それぞれの黒い剣が殺気を込めて咆哮する。
込める力はそれぞれ発現させたばかりの鎌。
即ち闇剣()ダークセンチネルに“荒天破壊す漆黒の竜王()”を。
そして影剣()アモルファスに“神魔月光刃()”を。
そして己が身を黒剣()“クレセントムーン()”とし、“影鎌繰り殺ぐ闇黒の秩序()”を。
ノート『ラインゲートか。精霊でもない汝がその名を口にするのはどうかと思うが。
なかなかどうして、良い戦闘方法を考え付いたものだ。
万象のゲートに己を繋ぎ、
その13種全ての力を引き出し戦うマスターの力とは別に、
冥界の扉をそのまま己に繋ぎ、そこから力を引き出し戦うか。
なるほど、確かに世に死者など腐るほど居る。
死者の魂の行き先に天地空間の境など無い。
ある意味で言えば、マスターのラインゲートより有能と考えていいだろう』
彰利 『そこまで解ってるなら大人しくコーディネイトされません?』
ノート『断る。既に汝が“黒の許容”の枷を完全に破壊した状態で、
冥界から来る力全てを受け入れられる存在になっていたとしてもだ。
対峙の結果がどうであれ、オモチャにされるのは好きではない』
彰利 『よく言った!咆哮しろ死王の理力!!』
黒い双剣が吼える。
それと同時に身を屈め、死気漂い冥府の大地を砕く速度で地面を蹴った。
彰利 『UUUURYYYYYYYY!!!!!!
だったらブチノメしてでもコーディネイトする!!
吹き荒べ震天の咆哮!!“魔王天衝剣”()ァアーーーッ!!!!』
飛翔する姿は黒影の弾丸の如し。
全力を以って、未だ誰も辿り着けぬ世界の精霊の妥当を俺が───!!
ノート『忘れているようだから教えてやろう。
私には“強者の理”というものが通用しない。
如何に身を鍛え、如何に頂に辿り着こうと───永劫、世界の理には辿りつけん。
何故ならば───』
ゾボボガガババシャシャァアッ!!!!
彰利 『ゲ───ハッ───!!?』
ノート『相手がどれだけ強者だろうが、私はその既存を超えてゆくからだ』
放たれた“三十矢の地槍()”が俺の身体を虚空に縫い止めた。
黒である俺には、たとえ何かが刺さろうが“止められること”など無い筈なのに。
しかもこの威力……!悠介のゲイボルグの比じゃねぇ……っ……!!
ノート『“一”が挑めばそれを越え、“千”が挑もうがそれを越える。
その“想像は既存を超越する”という理の真が私だ。
今一度その身に刻むがいい、死神王。
我が名は“全ての始まりにして終わりなる者()”。
“枷”の全てを超越した、世界を有する無の精霊なり』
ガッシャァアアアンッ!!!!
───……引きずり出した冥界が砕ける。
景色は先ほどまでの緑の世界に戻り、俺の意識はそれを確認すると混濁していった。
声 『驕りが過ぎる。力を手に入れたからといって慢心するなと何度教えた、たわけ。
続けて言えば竜の力もコピーした卍解も扱い切れてない。
これでは力に翻弄されるだけで即戦力には為り得ない。精進が足りないな』
最後に、そんなキツくてイタいけどありがたいお言葉を耳にしながら。
仕方ねぇじゃねぇの……今やったのがぶっつけ本番だったんだから……。
成功しただけでも褒めてもらいたいくらいですよ……?
ちくしょう、いつか見てろよコンチクショウ……。
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